少年硬式野球 挑戦の軌跡振り返る
5月の爽やかな青空の下、牛久運動公園野球場でひときわ輝いていたのは、悔しさをにじませながらも胸を張る茨城リーグ選抜の少年たち14人の姿だった。
少年硬式野球の「JA共済杯第13回インターミディエット全日本リトルリーグ野球選手権大会」が10、11日に同運動公園野球場で行われた。茨城代表チームは選抜メンバーを編成して大会に臨み、堂々の準優勝。あと一歩で優勝を逃したものの、その奮闘ぶりは、多くの関係者に強い印象を残した。
大谷翔平も 世界目指す第一歩
リトルリーグは、国内にとどまらず世界を目指せる数少ない小中学生の硬式野球組織。メジャーリーガーの大谷翔平や鈴木誠也もこの舞台から世界に羽ばたいた。
インターミディエットのカテゴリーはリトルリーグの中でも、走者リードやけん制が導入され、より本格的な野球が展開される。対象年齢は小学5年から中学2年まで。全日本選手権優勝チームは6月に台湾で開催されるアジア・パシフィック大会に日本代表として出場。同大会に優勝すれば8月に米国で開催される世界大会の出場権を与えられる。
冬の戦いから始まった
全日本選手権に向けて茨城リーグは、県内6チーム(牛久、常陸太田、常陸大宮、竜ヶ崎、友部、小美玉)からの選抜編成で臨んだ。
2月、まずは4日間の総当たり戦で腕試し。最も勝ち星を挙げた牛久スラッガーズのスタッフ陣が、選抜チームの指揮を託された。
そして3月。中学1年(当時)の4月~8月生まれを中心に4度の合同練習を経て、3月30日、14人の茨城代表が決まった。顔ぶれは、中1が12人、小6が2人。各所属チームで主力を張る選手たちが集結し、新たなチームが動き出した。
茨城リーグ選抜メンバー
1 眞壁 陽大 中1 牛久スラッガーズ
2 飯塚龍一郎 中1 龍ケ崎スターズ
3 中島直太郎 中1 牛久スラッガーズ
4 後藤 桜雅 中1 常陸太田山吹
5 長島 岳 小6 牛久スラッガーズ
6 萩原 唯月 中1 牛久スラッガーズ
7 鈴木 心明 中1 牛久スラッガーズ
8 朝 隆晟 小6 牛久スラッガーズ
9 小澤 優智 中1 友部ジャイアンツ
10 瀧本 渚 中1 友部ジャイアンツ
11 戸塚 大智 中1 小美玉ジャイアンツ
12 御鳴佑太朗 中1 常陸大宮レッドスピリッツ
13 瀧 龍信 中1 常陸大宮レッドスピリッツ
14 阿部 俊太 中1 常陸太田山吹

千葉と前哨戦
4月中旬、千葉リーグ選抜との東関東連盟代表順位決定戦が行われた。全5試合で2勝3敗。あと1勝が届かず、茨城は東関東連盟第2代表として全国大会に臨むこととなった。
だがこの経験はチームにとって決して無駄ではなかった。対千葉で痛感した「個の力と総合力の差」を乗り越えるため、選手たちはその後の練習にさらに熱を入れた。
決勝まで快進撃

5月10日。予選リーグ初戦の相手は九州北部。先発を任された戸塚大智(小美玉)が粘りの投球で試合をつくると、阿部俊太(常陸太田)、瀧龍信(常陸大宮)へと継投し、4-2で勝利。大きな初戦白星を手にした。
続く第2戦、相手は関西の強豪・兵庫。ここで主将の萩原唯月(牛久)が覚醒する。3安打3打点の大活躍で6-3と突き放した。投げては眞壁陽大、瀧本渚(友部)が“翌日も登板可能な20球までのリレーで3回まで2失点と試合を作った。4回から7回までは中島直太郎(牛久)がロングリリーフで試合を締め、予選リーグを2勝で通過した。
そして11日、晴天スタジアム美浦で行われた準決勝では、ワイルドカードで勝ち上がった兵庫と再び激突。御鳴佑太朗(常陸大宮)の2ランなど、打線が奮起し11-1の5回コールド勝ちで決勝へと駒を進めた。

決勝は再び千葉
午後、決勝戦の舞台は牛久運動公園野球場に戻る。相手は、前哨戦で惜敗した千葉選抜。投手陣総動員で挑んだが、千葉の強力打線を前に苦戦を強いられた。
結果は4-13の敗戦。準優勝という結果は、輝かしい戦績であると同時に、“あと一歩”の悔しさがにじむものでもあった。
監督の吉田明宏(牛久)は試合後「千葉の投手力は折り紙付き。どう打ち崩すかを考え、練習してきた。差を見せつけられた形になってしまったことが残念」と語った。主将の萩原も「一緒に台湾に行きたかった」と言葉を詰まらせながらも、「もうちょっとできたかなという思いがある」とチームメートを見つめた。
今回の全国大会では、14人すべてが打順に組み込まれる全員連続オーダー制での戦いが求められ、限られた打席とチャンスの中で結果を出す難しさと向き合った。

茨城の底力見せつけた
準優勝は、悔しい結果に違いはない。しかし茨城リーグ選抜は、結成からわずか1カ月半という短期間でここまでチーム力を高め、強豪千葉に真っ向勝負を挑んだ。その軌跡は、彼らの努力と結束、そして“茨城”の底力を見せつけるものだった。
敗れても、夢は終わらない。この舞台を踏んだ14人が、再び“世界”を目指す日が、きっとやってくる。