【コラム・坂本栄】つくば市の職員が、春まで属していた職場のいい加減な仕事振りを内部告発。新聞なども大きく報道する騒ぎになっている。この職員は、市管理部門への公益通報、市議会への請願、市監査委員への住民監査請求の3ルートを使い、実態解明と業務是正を求めている。
元社会福祉課の職員が議会に提出した請願書(下欄参照)を読むと、課内の様子がよく分かる。少し補足しながら引用すると、以下のような場面が出てくる。
現場のリアルな笑える場面
▼課内業務に問題があると管理職に指摘したら、「逆ハラスメント(上司いじめ?)だ」と言われ、その問題が隠蔽(いんぺい)されてしまった。
▼生活保護受給者の家を訪問したとき、担当者が暴行を受けるという事件が起きた。そのあと、市危機管理官(警察出身)による護身術講座があり、「間合いを取る、バインダーやペンで応戦する」と教わったが、現実的な対応とは思えない。
▼難しい生活保護ケースを議論する場で、管理職は「これは感覚の問題」と法令に基づく対応を無視したり、一度決めた保護開始を「取り下げさせろ」と命令したり。これでは福祉行政の体を成していない。
▼案件を法令通り処理したら、管理職から「法令通りにしか動けない職員は必要ない」と言われた。先輩からは「君も生活があるだろ。長いものには巻かれとけ」と、不適切処理に同調するよう諭された。
▼管理職席の後ろにある金庫から現金を取り出し、生活保護受給者に支給していた。ケースワーカーによる現金支給はダメなことを管理職は知っていたから、「記録に書いてはいけない」と指示された。
▼働いても、特殊勤務などの手当てがもらえない環境。暴行を受けても自分で身を守るしかない環境。法的正当性より管理職の感覚が勝つ環境。不正を指摘すると「村八分」を受ける環境。
▼管理部門の総務部にも、市としての最終的な自浄作用を期待して(今春)公益通報をした。しかし、受理までに3カ月以上もかかり、その後も不適正事案は改善されていない。
ガバナンス力が足りない市長
こういった実態はこの課だけなのか。他の部署も似たり寄ったりなのか。役所や企業には組織に流れる文化があり、類似の事例が他部署にもあると考えるのが自然だろう。
しかし、五十嵐立青市長、議会の対応を見ていると、問題解明を先に延ばしたいようだ。公益通報に対する調査について市長はあと半年ぐらい(通報から起算すると1年)かかると言い、請願を受けた議会特別委員会(長塚俊宏委員長)は市の調査結果待ちの構え。市長も議会も、この問題が市長・市議選挙(10月27日投開票)で争点になるのを避けているようだ。
1部署の実態調査に告発から1年もかかるとは驚きだ。集中してやれば2~3週間もあれば十分だろう。議会も市の報告書待ちとは驚きだ。関係者から直接聴取する能力もないらしい。今回の騒ぎによって、市長のガバナンス(管理)力不足、市議会のチェック(監視)力不足が明らかになった。つくば市政はかなり深刻といえる。(経済ジャーナリスト)
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▼市職員による議会請願書(8月22日付)
▼市によるミスの公表関連
・特殊勤務手当など未払い(5月9日掲載)
・生活保護受給者に過払い(7月20日掲載)
・過払い金、国に請求せず(8月21日掲載)
▼職員による内部告発関連
・生活保護行政で議会請願(9月3日掲載)
・生活保護問題で監査請求(9月7日掲載)
・市職員請願は継続審査に(9月13日掲載)