月曜日, 4月 29, 2024
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エスカレーター設置めぐり論戦 つくばセンタービル改修計画で市議会

つくば市が進めているつくばセンタービル(同市吾妻)のリニューアル計画で、エスカレーター2基の設置の是非が市議会で議論になっている。27日開かれた市議会中心市街地まちづくり調査特別委(ヘイズ・ジョン委員長)で、2基のうち、ホテル日航つくば側に計画されている1基について、費用対効果や建物のデザインを守る観点から「エスカレーターは1基だけでいい」という意見と、にぎわいをつくる観点から「2つある方がよい」という意見に分かれた。 市は「今後の詳細設計の中で、1基は設置しないことも可能」とし「議会のまとまった意見を踏まえて今後協議していきたい」とした。 エスカレーターは、つくば駅前のペデストリアンデッキとつくばセンター広場の一体的利用を促進するためとし、市が、ホテル日航つくば2階入り口そばと、旧ライトオンビル前に計2基設置する計画だ。ホテル側では、センター広場の視認性を高めるためとして、エスカレーター設置と合わせて、つくばセンタービルの壁や階段を一部壊し、階段の形状を変更する計画が進んでいる。 議会では、2基のうち1基の、ホテル側のエスカレーターについて「(2階ペデストリアンデッキから1階センター広場までの)半分の踊り場までしか設置されない。費用も8700万円くらいかかり費用対効果の観点からするともったいない。エスカレーターは一つでいい」「(同センタービルを設計した)磯崎新氏のデザインを考えると、デザインの完成度が削られる」など、ホテル側のエスカレーター設置は必要ないとする意見が出された。 これに対し「この場所をより活性化させる観点から西側と北側に二つある方が自然。北側を削るとアクセス性が削られる」「にぎわいを取り戻すことであれば、あってもいい。目的がある人は今までも(センター広場に)下りた。エスカレーターがあれば子供は興味をもって乗り降りする。にぎわいを取り戻す、活性化が目的なら、あってもいい」など2基とも必要だとする意見とに分かれた。 市は6月にも実施設計を発注する予定で、エスカレーター設置の是非は議会で引き続き審議される。 歩車分離のノバホール脇階段にスロープ 一方、27日の特別委では、2020年度に策定されたリニューアル基本計画が明らかにされた。エスカレーター2基と階段の形状変更のほかに、土浦学園線沿いのノバホール脇の階段のほぼ半分をスロープにし、イベント開催時に荷物を運ぶ車が通行できるよう改修する計画も新たに示された。 ほかに、現在のつくばイノベ―ジョンプラザと市民活動センターの場所に、吾妻交流センター、市民活動センター、消費者生活センター、国際交流機能を集約し、市民窓口と併せて設置される市民活動拠点の配置計画図などが明らかにされた。 市民の要望 どれほどあったのか 27日の同特別委のやりとりは以下の通り。敬称略 小野泰宏市議 (センター広場の)視認性を高めるためというのがエスカレーターの設置目的だが、エスカレーターは踊り場まで半分しか設置されない。価格は8700万円くらい。費用対効果の観点からするともったいない。エスカレーターは(旧ライトオンビル側の)1カ所だけでいい。 市学園地区市街地振興課長 現在は駅の方から(センター広場が)見えにくい。広場の景観やデザインを損なわない範囲で(エスカレーターは)踊り場までとする。設置しないことも今後の詳細設計の中で可能。場合によって1基のみで検討することもあり得る。 市都市計画部長 今年度(リニューアルの)実施設計を行う。2段階で考え、後から(エスカレーターの)必要性を判断してつくるというやり方と、最初から削ってしまうことも考えられる。議会のまとまった意見を踏まえて、今後、協議していきたい。 山中真弓市議 高齢者や視覚障害者の中にはエスカレーターを使えない人もいる。だれのためにエスカレーターを設置するかを考えると(2基とも)いらない。 小森谷さやか市議 視覚障害者にも(エスカレーターを)使いたい人がいる。きちんと点字ブロックを設置して、音声のアナウンスがあればいい。実際に障害がある人に現場を見てもらって意見をいただく場がほしい。 黒田健祐市議 エスカレーターは西側と北側に2つある方が自然。北側を削ると回遊性、アクセス性が削られる。この場所(センター広場)をより活性化させる視点で必要。 橋本佳子市議 費用対効果の視点は大事。エスカレーターを設置してほしいという市民の要望がどれほどあったのか。 金子和雄市議 エスカレーター2基をどのくらいの人が活用するのか、評価される基準をどのように考えたのか、それが見えない。(エレベーターを改修する等)大型の電動車いすでも使えるようになればいい。 長塚俊宏市議 黒田議員にほぼ賛成。目的がある人はいまでも(センター広場に)下りた。エスカレーターがあれば子どもが興味をもって乗り降りする。にぎわいを取り戻すことであれば、あってもいい。 山本美和市議 「(つくばセンタービルを設計した)磯崎新氏のデザインを考えると、ノバホールの入り口からセンター広場の真ん中を通って松見公園展望台までまっすぐ続く視線の中に、(エレベーターと階段を設定すれば壊されることになる)V字型の階段がまっすぐ突き抜けていく。エスカレーターがあれば便利かもしれないが、あの階段を無くしては視線が向くデザインの完成度が削られてしまう。磯崎新氏のデザインを優先するなら、ここにエスカレーターを設置するのはいかがなものか。 中村重雄市議 (ノバホール脇の階段を改修して新設する)搬入用のスロープだが、まつりつくばに出店した。(車がペデストリアンデッキに進入できる)出入口が少なくて、搬入・搬出が渋滞になる。(ノバホール脇の階段につくるスロープの幅は車両が通るには)かなりぎりぎりではないか。もう少し緩やかな傾斜にしてほしい。 課長 (通行できるのは)2トン以下の車両だが、幅は確保でき、通るに支障はない。傾斜は詳細設計で検討できる。 中村 イベント開催前は車両、イベント開催中は車いすが通れる(傾斜に)してほしい。 皆川幸枝市議 改修にあたって利用できる(国や県からの)補助金の種類や条件は。 課長 国交省から2分の1の補助金が出るが、(使えるかどうかは)施設によって限られる。 皆川 消費生活センターを入れることが補助金が出る条件になるのか。 課長 機能を集約することで補助金が出る都市構造再編集中支援事業費補助を活用する。(リニューアルの)すべての機能に補助が出るかどうか、国や県に相談しているところ。 皆川 (市民活動拠点は)公共スペースが足りないという指摘もある。配置を変えることでコミュニティスペースを広くできないか。補助金の条件はいつごろ分かるのか。(ノバホールの)小ホールは(イノベ―ジョンプラザの)2階につくり直すが、今も土日は使う人が多い。音楽イベントのスペースが足りないという声もある。貸しスペースが足りないのであれば、小ホールを運動や会議に貸し出すことなどを見込んでいるのか。 課長 片方を使ってないとき、別の用途に使うことも考えられる。ノバホールをどのように運営するかに関わっていくので、今後、調整しながら進めたい。 皆川 この計画、スペースでいいのか。運用計画と合わせてお示しいただければ。 飯岡宏之市議 (リニューアル基本計画の)新たな市民活動拠点には「①吾妻交流センター、市民活動センター、消費者生活センター、国際交流機能を統合するとともに、市民窓口を新設することで、市民交流の促進、市民サービス機能の向上を実現②音楽室、調理室の機能向上、フリースペースの拡充により、様々な市民ニーズに対応」とあるが、市民部とうまく連絡調整しているのか。 課長 市民部から必要な面積をいただき、調整を密にしながら進めている。 飯岡 吾妻交流センターを頻繁に使う市民団体との意見調整も必要ではないか。 課長 交流センターを通じて調整を行っている。 飯岡 市民説明会が無いので、その辺、心配がある。かなり手狭になるので、市民の意見を取り入れて進めてほしい。 橋本 (吾妻交流センターが集約されることで)交流センターが一つ減る。生涯学習としての位置づけを考えると、利用者の利用回数を減らすことになると本末転倒になる。市民がどのくらい影響を受けるかを説明いただきたい。コピー機や印刷機も一つになるが、うまく回るのか、利便性が担保されるのか、いろいろな団体の意見を聞いていくことは当然。 課長 吾妻交流センターが無くなるということではない、運営の中で残すこともあるし、一体として運営することもある。市民部でいろいろ検討し、それを元に(計画策定を)行っている。用途は確定ではないので、足りない部分は増やした方がいいのか、担当課と調整して進めたい。 橋本 根拠を示さないで、足りる、大丈夫といわれても困る。数字と合わせて根拠を示してほしい。 課長 大丈夫ですという意味ではない。それを今後、検討したい。 山中 だれのための改修なのか、そもそも市民の声を聞いてないことに根本的問題がある。本来、市民がどういうものがほしいのか、どんな機能が必要かを聞くべき。

《映画探偵団》41 いま、つくばは「西部劇」の舞台

【コラム・冠木新市】記念すべき第1回アカデミー賞授賞式は1929年5月16日、米国ロサンゼルスのルーズベルト・ホテルで開催され、玄関には彫刻家コディ・ヒューストン作のブロンズ像が飾られた。この像は西部劇の撮影を表現したもので、ジョン・フォード監督や14人のカウボーイスターの雄姿が彫られてある。長い間、多くのファンに愛された彫刻物だが、いまは米国には残っていない。どこに消えたのか。 実はつくば中心市街地の市民ギャラリー休憩所に無造作に置いてある。説明プレートの右上は欠け落ち、全体を白いテープで止めてある。私が『つくつくつくばの七不思議 サイコドン』(ACCS)でロケしたときには、ゴキブリの死骸を片付けて撮影した。米国から寄贈されたアート作品をこのままにしておいてよいのだろうか。 C・イーストウッド監督・主演『許されざる者』 第1回アカデミー賞の翌年1930年の5月31日、後の大スターで名監督クリント・イーストウッドが生まれた。現在90歳になるが、監督・主演の新作に取り組んでいて生きる映画史ともいえる。イーストウッドは日本、欧州で映画作家として認められ、米国では遅れて評価された。最後の西部劇と言われた『許されざる者』(1992)で第65回アカデミーの作品賞と監督賞を授賞した。この作品は正義とは何かをめぐって一筋縄ではいかない内容となっている。 ウィリアム・マニー(クリント・イーストウッド)は冷酷な殺し屋だったが、3年前に亡くなった妻のおかげで改心し、幼い息子と娘を育てている貧しい農夫だ。そんな彼のもとに若い男から殺しの誘いがくる。ビック・ウィスキーという町で、若い娼婦の顔が牧童から滅多切りにされた。娼婦たちは保安官のリトル・ビル(ジーン・ハックマン)に訴えるが、軽い刑で済ませる。怒った娼婦たちは貯えなどをはたいて1000ドルの賞金を作る。マニーは牧童殺しの仕事を昔の仲間を誘って引き受ける。 保安官のビルは町での拳銃所持を禁じ、自分1人で家を建て、強固な信念で町を守る一見正義を体現する人物に映る。しかし威圧的で過剰な暴力をふるい、流れ者やグズを下劣と見なしている。保安官助手に言わせると、ビルの建てている家は歪んでいる。町に入ったマニーは、ビルから殴り倒され瀕死(ひんし)の重症を負う。そして顔に傷を負った若い娼婦の看病を受ける。マニーは若い娼婦を心根の美しい女性だと見ていることが分かってくる。 「中心市街地リニューアル」は是か否か 『広報つくば3月号』が発行された。「つくば中心市街地の魅力づくりが本格化します」「つくばセンタービル・センター広場のリニューアルを進めています」と、初めて内容が市民に発表された。市のホームページでチェックしていない市民にとっては、いきなり号外のように感じたのではなかろうか。 「スマートシティ」や「スーパーシティ」のニュースは次々流れてくるが、中心市街地リニューアルの件は1年近く伏せられてきた。これから、強引にセンター広場の階段は壊され、エスカレーター2基が付けられる。アイアイモールは変形し、窓ガラスは全部取り替えられ、イノベーションセンターには意味のないテラスが造られる。 私はぜひ知りたい。つくば市議会議員が『許されざる者』を見たとしたら、保安官のビルを支持するのか、改心したマニーを支持するのか、を。いま、つくばセンターでは文化をめぐって「西部劇」が繰り広げられている。アカデミー記念の彫刻はセンタービルのホテルロビーに置くのがふさわしいと思う。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

《映画探偵団》41 いま、つくばは「西部劇」の舞台

【コラム・冠木新市】記念すべき第1回アカデミー賞授賞式は1929年5月16日、米国ロサンゼルスのルーズベルト・ホテルで開催され、玄関には彫刻家コディ・ヒューストン作のブロンズ像が飾られた。この像は西部劇の撮影を表現したもので、ジョン・フォード監督や14人のカウボーイスターの雄姿が彫られてある。長い間、多くのファンに愛された彫刻物だが、いまは米国には残っていない。どこに消えたのか。 実はつくば中心市街地の市民ギャラリー休憩所に無造作に置いてある。説明プレートの右上は欠け落ち、全体を白いテープで止めてある。私が『つくつくつくばの七不思議 サイコドン』(ACCS)でロケしたときには、ゴキブリの死骸を片付けて撮影した。米国から寄贈されたアート作品をこのままにしておいてよいのだろうか。 C・イーストウッド監督・主演『許されざる者』 第1回アカデミー賞の翌年1930年の5月31日、後の大スターで名監督クリント・イーストウッドが生まれた。現在90歳になるが、監督・主演の新作に取り組んでいて生きる映画史ともいえる。イーストウッドは日本、欧州で映画作家として認められ、米国では遅れて評価された。最後の西部劇と言われた『許されざる者』(1992)で第65回アカデミーの作品賞と監督賞を授賞した。この作品は正義とは何かをめぐって一筋縄ではいかない内容となっている。 ウィリアム・マニー(クリント・イーストウッド)は冷酷な殺し屋だったが、3年前に亡くなった妻のおかげで改心し、幼い息子と娘を育てている貧しい農夫だ。そんな彼のもとに若い男から殺しの誘いがくる。ビック・ウィスキーという町で、若い娼婦の顔が牧童から滅多切りにされた。娼婦たちは保安官のリトル・ビル(ジーン・ハックマン)に訴えるが、軽い刑で済ませる。怒った娼婦たちは貯えなどをはたいて1000ドルの賞金を作る。マニーは牧童殺しの仕事を昔の仲間を誘って引き受ける。 保安官のビルは町での拳銃所持を禁じ、自分1人で家を建て、強固な信念で町を守る一見正義を体現する人物に映る。しかし威圧的で過剰な暴力をふるい、流れ者やグズを下劣と見なしている。保安官助手に言わせると、ビルの建てている家は歪んでいる。町に入ったマニーは、ビルから殴り倒され瀕死(ひんし)の重症を負う。そして顔に傷を負った若い娼婦の看病を受ける。マニーは若い娼婦を心根の美しい女性だと見ていることが分かってくる。 「中心市街地リニューアル」は是か否か 『広報つくば3月号』が発行された。「つくば中心市街地の魅力づくりが本格化します」「つくばセンタービル・センター広場のリニューアルを進めています」と、初めて内容が市民に発表された。市のホームページでチェックしていない市民にとっては、いきなり号外のように感じたのではなかろうか。 「スマートシティ」や「スーパーシティ」のニュースは次々流れてくるが、中心市街地リニューアルの件は1年近く伏せられてきた。これから、強引にセンター広場の階段は壊され、エスカレーター2基が付けられる。アイアイモールは変形し、窓ガラスは全部取り替えられ、イノベーションセンターには意味のないテラスが造られる。 私はぜひ知りたい。つくば市議会議員が『許されざる者』を見たとしたら、保安官のビルを支持するのか、改心したマニーを支持するのか、を。いま、つくばセンターでは文化をめぐって「西部劇」が繰り広げられている。アカデミー記念の彫刻はセンタービルのホテルロビーに置くのがふさわしいと思う。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

《映画探偵団》40 つくばセンタービルを展望する

【コラム・冠木新市】「今日、真に躍動している中心的存在は科学と政治である。アートと建築は端の方に追いやられ、あたかも余分なもののように感じられる」(世界的建築家・アレッサンドロ・メンディーニ) 世界的な建築写真家・二川幸夫が「つくばセンタービル」にほれ込み、完成から10年後に全40ページの写真集『GA69』(1993年刊)を出版した。18~19ページに見開きで、ノバホール側から見たセンター広場とホテルの全貌が写しだされている。そして、ページ真ん中の奥の方にポツンと小さな「展望塔」が見える。 中心市街地の松見公園に立つ高さ44.4メートルの展望塔は、菊竹清訓の設計で1976年6月1日に開設された。外観から地元では「栓抜き」と呼ばれていたが、展望塔という素っ気ない名称になり、40数年前のつくばの雰囲気をよく伝えている。 この塔に登ると、筑波山とつくばセンター地区が一望できる。不思議なのは、センター地区のセンタービルに視線が向いてしまうことだ。展望塔が出来てから7年後、1983年6月10日に完成した高さ44.85メートルのセンタービル。この2つは一直線でつながっている。同じ時期の6月に完成、ほぼ同じ高さ、素っ気ない名称から、設計者・磯崎新は展望塔をリスペクトして、センタービルを構成したことが理解できる。 『GA69』には、メンディーニが文を寄せている。「何世紀もの歴史が凝縮した未來主義的エジプトスタイルが、たった一つの広場の回りに集められて、建築史の百科事典的シンボルになっている。それは俯瞰(ふかん)的な広い視野の中で作り上げた『信念』のユートピアと言うべきもので、そのユートピアは、現代の不安定さと混沌から類型的、様式的、制度的に保証する限りなく権威ある流れに反するものである」。 市川崑監督『おはん』の2人で1人 私がつくば市に越してきたのは1993年。写真集刊行と同じ年である。センタービルと展望塔の間に、デパートの映画館、新刊書店、レンタルビデオ店、図書館、美術館、喫茶店、古民家、市民ギャラリー、プラネタリウムなどが集まっていて感激しきりだった。 なかでも、展望塔近くに何軒も連なる古本屋街には何度となく通ったものだ。この2つの建築を結ぶ空間は、歴史と未來の物語が輝くアートゾーンだと思った。いや今でも思っている。 センタービルが出来た翌年、『おはん』(市川崑監督)という映画が公開された。古道具屋の幸吉(石坂浩二)が、ほとんど自己主張しない女房おはん(吉永小百合)と嫌いになったのでもないのに別れ、上昇志向で気の強い芸者おかよ(大原麗子)と一緒になる。しかし、ふとした拍子におはんと寄りが戻り、ラストではおかよと暮らすことになる。一人の男性が二人の女性の間を行ったり来たりする話である。 どちらの女性を好むかは人によるが、市川監督は二人合わせて一人の女性として描いた。地味ながら渋い作品に仕上がっていた。センタービルと展望塔の間を歩くと2つの建築物が一体であると感じられ、この作品がよみがえってくる。 今、センタービル広場の一角が破壊されようとしている。ホテル側にエスカレーターを設置するために、階段を造り替えてしまうからだ。そのため、展望塔に向いた壁が取り壊される。だが、その壁には人間の目の形をしたデザインが施されてあるのだ。広場中心にある噴水を見るこの目の形が無惨にも壊されてしまう。 ほかにも、「広場窓ガラス全部の取り替えが決まっているよ」とある人が教えてくれた。初耳だった。オープンハウスの説明会では聞かなかったからだ。つくば市は予算が余り、使いみちに困っているのだろうか。無駄遣いをして文化財を改造するのはよした方がよい。 あと2年でセンタービルは40周年を迎えるが、『GA69』を携えてつくばを訪れる建築愛好家がいたら、あまりの改造ぶりを見て涙を浮かべるに違いない。展望塔は、つくば市役所と市議と科学と政治を優先する市民の行為をジッと見ている。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

《映画探偵団》40 つくばセンタービルを展望する

【コラム・冠木新市】「今日、真に躍動している中心的存在は科学と政治である。アートと建築は端の方に追いやられ、あたかも余分なもののように感じられる」(世界的建築家・アレッサンドロ・メンディーニ) 世界的な建築写真家・二川幸夫が「つくばセンタービル」にほれ込み、完成から10年後に全40ページの写真集『GA69』(1993年刊)を出版した。18~19ページに見開きで、ノバホール側から見たセンター広場とホテルの全貌が写しだされている。そして、ページ真ん中の奥の方にポツンと小さな「展望塔」が見える。 中心市街地の松見公園に立つ高さ44.4メートルの展望塔は、菊竹清訓の設計で1976年6月1日に開設された。外観から地元では「栓抜き」と呼ばれていたが、展望塔という素っ気ない名称になり、40数年前のつくばの雰囲気をよく伝えている。 この塔に登ると、筑波山とつくばセンター地区が一望できる。不思議なのは、センター地区のセンタービルに視線が向いてしまうことだ。展望塔が出来てから7年後、1983年6月10日に完成した高さ44.85メートルのセンタービル。この2つは一直線でつながっている。同じ時期の6月に完成、ほぼ同じ高さ、素っ気ない名称から、設計者・磯崎新は展望塔をリスペクトして、センタービルを構成したことが理解できる。 『GA69』には、メンディーニが文を寄せている。「何世紀もの歴史が凝縮した未來主義的エジプトスタイルが、たった一つの広場の回りに集められて、建築史の百科事典的シンボルになっている。それは俯瞰(ふかん)的な広い視野の中で作り上げた『信念』のユートピアと言うべきもので、そのユートピアは、現代の不安定さと混沌から類型的、様式的、制度的に保証する限りなく権威ある流れに反するものである」。 市川崑監督『おはん』の2人で1人 私がつくば市に越してきたのは1993年。写真集刊行と同じ年である。センタービルと展望塔の間に、デパートの映画館、新刊書店、レンタルビデオ店、図書館、美術館、喫茶店、古民家、市民ギャラリー、プラネタリウムなどが集まっていて感激しきりだった。 なかでも、展望塔近くに何軒も連なる古本屋街には何度となく通ったものだ。この2つの建築を結ぶ空間は、歴史と未來の物語が輝くアートゾーンだと思った。いや今でも思っている。 センタービルが出来た翌年、『おはん』(市川崑監督)という映画が公開された。古道具屋の幸吉(石坂浩二)が、ほとんど自己主張しない女房おはん(吉永小百合)と嫌いになったのでもないのに別れ、上昇志向で気の強い芸者おかよ(大原麗子)と一緒になる。しかし、ふとした拍子におはんと寄りが戻り、ラストではおかよと暮らすことになる。一人の男性が二人の女性の間を行ったり来たりする話である。 どちらの女性を好むかは人によるが、市川監督は二人合わせて一人の女性として描いた。地味ながら渋い作品に仕上がっていた。センタービルと展望塔の間を歩くと2つの建築物が一体であると感じられ、この作品がよみがえってくる。 今、センタービル広場の一角が破壊されようとしている。ホテル側にエスカレーターを設置するために、階段を造り替えてしまうからだ。そのため、展望塔に向いた壁が取り壊される。だが、その壁には人間の目の形をしたデザインが施されてあるのだ。広場中心にある噴水を見るこの目の形が無惨にも壊されてしまう。 ほかにも、「広場窓ガラス全部の取り替えが決まっているよ」とある人が教えてくれた。初耳だった。オープンハウスの説明会では聞かなかったからだ。つくば市は予算が余り、使いみちに困っているのだろうか。無駄遣いをして文化財を改造するのはよした方がよい。 あと2年でセンタービルは40周年を迎えるが、『GA69』を携えてつくばを訪れる建築愛好家がいたら、あまりの改造ぶりを見て涙を浮かべるに違いない。展望塔は、つくば市役所と市議と科学と政治を優先する市民の行為をジッと見ている。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

クレオ、今春オープン 商業とオフィスの複合施設に つくば駅前

【鈴木宏子】つくば駅前の商業施設クレオ(つくば市吾妻)が今春リニューアルオープンする。クレオを取得した日本エスコンによると、旧西武棟の1~3階は商業フロア、4~6階はオフィスなどの業務フロアとなる。 クレオ旧西武棟は2017年2月末に西武百貨店が撤退して以来、空き店舗となっていた。4年を経て中心市街地の新たな商業施設が始動する。一方、旧イオン棟跡は2022年11月の入居開始に向け18階建て218戸のマンション建設が進む。 当初、20年秋のオープンを目指していたが、新型コロナの影響で商業フロアに出店予定のテナントの足並みがそろわなくなり、半年遅れとなる。一方、4階オフィスは一足早く、2020年11月から入居が始まった。 商業フロアは、1階がスーパーマーケットとデパ地下型の食の専門店街。2階は家電、家具、衣料品など生活関連用品と教育施設。3階は体験型アミューズメントとスポーツ施設となる。計30~40店が入り、県内初出店の店も多いという。 オフィスとなる4~6階は3700坪(約1万2000平方メートル)と大規模。今後、IT系や外資系企業のほか、研究開発型企業の入居を進めていきたいとする。まだ空きスペースが残っており、入居企業を募集している。 さらに旧イオン棟跡に建設中のマンション2階にもカフェを新たにオープンさせる計画だ。 「よりファミリー層寄りに」 日本エスコンは、2018年12月に隣接の商業施設キュートとモグ、19年3月にクレオを取得しており、建設中のマンションと合わせ「商・食・住一体の複合開発により、新しいにぎわいを創出し、暮らしやふれあいをつくる」としている。 新しい商業施設の名称は「トナリエ クレオ」「トナリエ キュート」「トナリエ モグ」となる。商圏は近隣地域で、同社開発事業本部東京商業開発部の庄司元康マネージャーは「暮らしをサポートし、地域の人に喜んでいただけるようにしたい」と話す。客層のターゲットは「よりファミリー層寄りとなる」とする。 一方つくば市は、隣接のつくばセンタービルのリニューアル計画や、中心市街地の活性化を目指すまちづくり会社の設立計画などを発表している。中心市街地のまちづくりについて日本エスコンは「ぜひ市と連携を取りたい」としている。 クレオをめぐっては、18年9月に五十嵐立青市長が、まちづくり会社をつくって土地と建物を当時の持ち主の筑波都市整備から取得する計画を発表したが、市民説明会で異論が相次ぎ、議会の理解も得られなかったことから、五十嵐市長は取得を断念した。その後、日本エスコンが取得し再開発を進めてきた。

議会から違和感相次ぐ「市民活動よりオフィスに重点?」 つくばセンタービル改修

【鈴木宏子】つくば市中心市街地活性化の担い手として、同市が来春設立予定のまちづくり会社(地域運営会社)と、同まちづくり会社がつくばセンタービル1階アイアイモール部分と4階吾妻交流センターを改修して貸しオフィスとして運営する事業計画について、五十嵐立青市長は25日、市議会12月議会閉会後開かれた議会全員協議会で説明した。 議会からは、4日にようやく示された、つくばイノベーションプラザ部分1~3階を新たな市民活動拠点にするというリニューアル計画と合わせて「市民活動よりオフィスの比率が大きいと感じる」「高齢者、障害者、中高生など、幅広い世代や多様な市民が集える場なのか」「日本エスコンが開発する商業・業務の複合施設クレオとの連携を図るべき」「磯崎新氏の思想が込められた建築にエスカレーターはいるのか」などの意見が相次いだ。 一方、市が当初検討していた、市所有の地下駐車場と1階アイアイモールの床の区分所有権を、まちづくり会社にあげて現物出資する案について五十嵐市長は、現物出資と賃貸を比較した結果、賃貸することが望ましいとした。現物出資に対しては、12月議会一般質問でも、まちづくり会社が破綻したらどうなるのかという懸念が出ていた。五十嵐市長は「破綻した場合(地下駐車場と1階アイアイモールの)区画がつくば市のものから第3者にわたる可能性があるため」だとした。 議会での説明によると、1階アイアイモール2500平方メートルには、シェアオフィス約1300平方メートルとコワーキングスペース約400平方メートルが整備される。改修費は約2億7300万円で、来春設立される地域運営会社が改修工事をし、利用料をとって貸しオフィスを運営する。吾妻交流センター部分もシェアオフィスにする計画だが、センタービル内の他の場所と等価交換する場合もある。 シェアオフィスの利用料は1坪(3.3平方メートル)月額1万3000円、コワーキングは1人月額1万3000円で貸し出し、5年目の想定として、シェアオフィスは9割、コワーキングは個人40人、法人20社強が利用し、貸しオフィスの利用料収入と駐車場利用料収入として年間約1億1500万円の賃料収入を想定しているとした。 まちづくり会社7つのプロジェクト まちづくり会社の出資者は、市が6000万円を出資するほか、沼尻産業、関彰商事と、AIのベンチャー企業LIGHTz(ライツ)が各3000万円を出資する。ほかに数社が出資予定で、資本金計2億円と7000万円の融資を受けて資金計2億7000万円でスタートする。ただし7000万円の融資の保証や担保等をどうするかについて市は明らかにしなかった。 社員は7人程度で、社長はまちづくり事業に精通している人を当てる、市から2人、ほかの出資会社から数人出向し、直接雇用は1~2人。経費のうち人件費(当初)は年2400万円で、市から出向の2人の人件費は市が全額負担する。年間維持管理費は計約6830万円。 地域運営会社は、つくばセンタービルでの貸しオフィス運営のほか、中心市街地全体を活性化するため、②中央公園でわくわくする場をつくる③センター広場で人がつながる場をつくる④中心市街地全域で生活に役立つ情報を発信する⑤アプリや電子看板など情報発信のベースをつくる⑥科学を遊びながら体験できるAI学習室など子供が体験する場をつくり、ゲストハウスをつくる⑦多様な住み方を支えIot住宅などシェアハウスをつくるーなど7つのプロジェクトが示されたが、具体的に、何を、いつ、いくらでつくるのかなどの事業計画は示されなかった。 1983年に建築されて以来、初めて実施されるつくばセンタービルの本格的なリニューアルについて、全体の具体案が示されたのは今回が初めてだが、五十嵐市長は25日の記者会見で住民説明会は実施しないとした。一方、市議会は12月議会最終日の同日、「つくば中心市街地まちづくり調査特別委員会」(ヘイズ・ジョン委員長)を設置した。小久保貴史議長は「(今回出された)市執行部の提案内容についてさらに情報共有しながら、内容についていろいろ協議したい」としている。来年1月中にも同調査特別委を開くという。 「活動スペースは用意する」 25日の全員協議会のやり取りは以下の通り。敬称略。 山中真弓市議 (地下駐車場の区分所有権をまちづくり会社に現物出資しないで賃貸することになったのに)駐車場料金がまちづくり会社の収入に入っているが、どういうことか。 五十嵐市長 駐車場の利用料がまちづくり会社の収入に入る。市には、駐車場をまちづくり会社に貸すお金が入る。 山中 中央公園でのプロジェクトなど7つのプロジェクトは(今回示された)まちづくり会社の収支に入っているのか。 市長 含まれない。(収支は)順次示す。ふわっとやるのではなく、経営としてやっていく。 川久保皆実市議 (シェアオフィスが9割の入居を想定している等)稼働率の根拠は何か。 市長 周辺の同様の施設やアンケートのデータを踏まえた。 川久保 子連れで働ける環境とあるが、どういうものか。 市長 保育所と同じように子供を一定時間預けて仕事に集中したり、子供を横で遊ばせながら仕事をするスペースを用意する。 川久保 機密性の高い仕事もあり、音が漏れない個室のニーズがあるのではないか。 市長 そういう場所も用意する。 川久保 子連れで働く人が利用できる子供の月齢はどれくらいからか、授乳はできるのか。 市長 まちづくり会社で検討する。 小森谷さやか市議 コロナで就業形態が変わり、つくばに移住する人が増えているということだが、どのくらい増えているのか。 市長 正確な数字は把握していない。問い合わせはある。 小森谷 まちづくり会社に(アイアイモール部分などを)いくらで貸し出すのか。 市長 固定資産税の2.5%。(収支見通しの中の)運営コストの中に入っている。これから不動産鑑定する。かなり安い金額になる。 黒田健祐市議 (7つのプロジェクトが)重要になる。体制やイメージ、どう稼いでいくのか。 市長 天下りOBのような3セクとは一線を画す。(まちづくり会社の社長には)民間で起業した経験があり、まちづくりに精通している人を代表取締役にする。会社設立の際に、一瞬、私が社長になる場合もあるが(自分は)経営はしない。 山本美和市議 日本エスコン(のクレオ)との調整だが、情報共有し、(中心市街地の活性化のため)巻き込んでいかなければならない。センター広場のエスカレーターだが、何でエスカレーターなのか。つくば市は国際会議場から中心市街地に名だたる建築家の建築が並んでいて、思いがこもっている。つくば市民だけではなく日本のまちづくりに大きな意味がある。 市長 エスコン(のクレオ)は来春オープンできると聞いており、随時情報共有している。つくばセンター地区活性化協議会にも加入してもらっている。クレオとセンタービルは双子の兄弟姉妹のようなもの。エスカレーターはセンター広場の課題の一つ、1階と2階の動線に弱さがある。どこから下りていけばいいかわからない。1階と2階を結んでいくことを重要視している。(つくばセンタービルの)意匠はできる限り継承する。(磯崎新氏から)ライブなどをやる北側の階段はさわらないで継承してほしいという意思を受けている。 山本 (リニューアル計画は)オフィスや働く人を支えるという重点が大きいと感じる。クレオの中にもオフィスは入ってくる。旧ライトオンビルも(商業ビルから)オフィスになった。さらに市がこれほど入れる必要があるのか。 市長 エスコン(のクレオ)もオフィスになるが、区画が大きい。かなり大きな企業がフロアを使う。センタービルはシェアオフィスなど区画が小さい。 山本 (センタービル周辺地域の)全体としての貸しオフィスのすみわけがどうなっているのか、概要を出してほしい。 川村直子市議 (リニューアル計画は)働く人を支える重点が大きい。全世代に役立つことが重要だ。高齢者や、リタイアして元気な人が交流するという視点はあるか。高校生の娘がいるが、つくば駅は中継点になっていて、相当数の高校生がつくば駅を通る。中高生の居場所はあるか。 市長 市民活動拠点があり、高齢者が新しい活動をしてみようという場合、最初の窓口になる。中高生のフリースペースは用意しており。300平方メートルを超えるスペースになる。中高生が勉強や自習をしたり、若者が活動するスペースは用意する。 川村 高齢者が働くこと(を支援すること)も検討してほしい。中高生はフリースペース、勉強部屋を用意するだけでなく、居場所となるような、親や教師と違う大人と話をする場という視点も必要だ。 橋本佳子市議 中心市街地を活性化する団体の形態として、調整する機能と実行する機能があり、人やコトをつなぐコーディネート、専門組織が必要とある。(改選前の)中心市街地まちづくり調査特別委員会の中では、プロジェクト2のわくわくする場をつくる、プロジェクト3の人がつながる場をつくるとなるが、(今回のセンタービルのアイアイモールを改修してつくる)働く場は、それとぷつっと切れる。AI学習室とかいろいろな近未来的なものをつくるのか、会社として(貸しオフィスを)運営していくのか、にぎわい、わくわくするものをつくるのか。 市長 (会社として運営するのかという質問は)順番が逆。市民のニーズを満たし、ビジョンや戦略を実現する事業を行う中で収益を上げる。市民ニーズを満たす中で、どのような事業があるか精査して、まちづくりに資する事業を行い、適正な利益を確保する。まちのために事業がある、経営のためにあるのではない、 橋本 (イノベーションプラザ部分の)市民が活動する場についてだが、(市民には)さまざまな人がおり、高齢者や障害者も活動できる場を増やしていかなくてはならない。市民が活動する場と、働く人の場の比率をもう少し考えられないか。 市長 ニーズとして(オフィスの)スペースが必要。高齢者や、企業や研究所で働いた人が、市民活動の場から流れて働く場につながっていくこともある。障害者がフリースペースを使ってイベントを開催したり、市民活動と働く場を切り離すのではなく、副次的に、働く場がリタイア後の活動の場になる。 浅野英公子市議 人件費が2400万円ということだが内訳はどうか。男女共同参画センターをつくってほしい。新しいスペースを生かして(男女共同参画の)展示、相談機能をもたせることを実現してほしい。 市長 人件費はプロパー社員の人件費と、出資会社から出向する社員の一部を負担する。男女共同参画センターは(リニューアルにあたって)最後まで検討したが、DVなど難しい相談が多い状況なので人目に付くとかえって活用はしぼんでしまうので、市役所の中で対応していく。

1階の旧飲食店街はオフィスに つくばセンタービル改修計画 屋根は取り止め

【鈴木宏子】議会からも市民からも十分な説明がないと批判がある、つくばセンタービル(同市吾妻)のリニューアル計画について、4日、市議会全員協議会が開かれ、五十嵐立青市長はリニューアル計画概要を説明した。旧レストラン街の1階アイアイモールを働く場を支援するオフィスとし、現在のつくばイノベーションプラザ1~3階は新たな市民活動拠点とする配置イメージが示された。 一方、センター広場にドーム型屋根をとりつける計画は取り止めになった。屋根は、市が6月にホームページで「リニューアルの方向性案」を示した時点では、雨天時にもイベントが開催できるように計画されていた、市学園地区市街地振興室によると、屋根の計画に対してはさまざまな意見が市に寄せられたことなどから「デザインに配慮し取り止めた」という。同センタービルは、2019年に建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞を受賞した建築家、磯崎新氏の代表作の一つで、ポストモダン建築の代表作。 リニューアル計画によると、もともとはレストラン街だったが現在はすべての飲食店が撤退した1階アイアイモール約2500平方メートルは、働く人を支援する場とし、コワーキングスペース、テレビ会議ブース、シェアオフィスなどを整備する。子連れ出勤のサポートなど多様な働き方を支える場とし、来年3月に市と民間企業が出資して設立する予定のエリアマネジメント会社(まちづくり会社)が運営する。 新たな市民活動拠点となる、つくばイノベーションプラザ部分の1~3階約2800平方メートルには、吾妻交流センター、市民活動センター、国際交流センター、消費生活センターを集めるほか、市役所の駅前市民窓口をつくる。各センターの事務スペースのほか、現在、吾妻交流センターにある会議室、音楽室、調理室などを整備する。さらに300平方メートルを超えるフリースペースをつくり図書コーナーを設置したり、現在1階にあるノバホールの小ホールを2階に移してさまざまな利用ができるホールに改修する。 ほかに、センター広場の周囲に、2階ペデストリアンデッキから1階の広場に行けるエスカレーターを2基つけたり、センター広場の破損箇所を改修したり、イベントが開催しやすいよう電源盤を増設などする。 事業費は市が直接工事をする部分として、新たな市民活動拠点の整備が約3億3000万円、エスカレーターの設置やセンター広場の破損箇所改修などが5億7000万円の計約9億円。設計費用約1億3300万円を合わせると計約10億3800万円になる。 市は今年6月時点で整備費を約9億9000万円としていた。屋根の取り付けがなくなったのに事業費がほぼ変わらない理由について同室は、老朽化しているセンター広場の破損箇所などを改修するためとしている。一方、オフィスとする予定のアイアイモールの改修は、新たに設置されるエリアマネジメント会社が行うという。 今後のスケジュールは、来年3月までに基本計画と基本設計を策定、2021年度に実施設計をし、22~23年に改修工事を実施する。リニューアルオープンは23年度中の予定。工事は段階的に実施するため、吾妻交流センターや市民活動センターが閉鎖されることはないという。 現在4階にある吾妻交流センターを移設した跡地の活用についてはまだ決まっておらず、区分所有権を交換するか、働く場を支援する場として活用するかなどを検討している。 一方、だれがどのように運営するかや収支計画などがいまだに公表されていないエリアマネジメント会社の概要については、今月25日までの12月議会会期中に再度、全員協議会を開いて、議会に説明するとした。 「屋根取り止め さすがだが、進め方に不安」 つくばセンタービルをテーマにドラマを制作したことがあるつくば市在住の脚本家、冠木新市さんは「屋根の計画が取り止めになったと聞いて、さすがつくば市には良心があると感じた。これで世界に対して恥ずかしくない。ただ気になるのはこれまでの進め方だが、改修について情報がきちんと出されていない。これからもこんな進め方なのか不安が残っていたが、市長は広報に力を入れると言っているので、今後はそういうことがないと期待したい」と話す。 ◆リニューアル計画は、新型コロナの外出自粛要請終了後から28日まで、つくば駅前のBiviつくばイベントスペースでオープンハウスを開いて市職員が説明し市民の意見を求める。現時点で市民説明会を開催する予定はない。 ➡つくばセンタービルの過去記事はこちら ➡つくば市中心市街地の過去記事はこちら

《映画探偵団》36 センタービル改造資金13億円の使いみち

【コラム・冠木新市】つくば市議会の9月定例会で、1人の市議が「つくばセンタービル改造計画」に疑問を投げかけた。議会が終了して数日後、「いがらし立青活動報告第8号」(9月19日付)がポストに入っていた。表紙には「ソトカフェ始まりました!」、裏には「中心市街地に関する取り組み/センタービル・センター広場のリニューアル」との記事が出た。 次は、「広報つくば10月号」(10月1日付)に、初めて内容を発表するかなと想像した。しかし「ソトカフェ」と「中央公園の噴水」のことしか出ていなかった。 議会で質問した市議のチラシ(10月2日付)が投げ込まれた。「今年度中につくば市は市税6000万円投入」とのタイトルで、「アイアイモールの場所と地下市営駐車場(資産価値14億~16億円)を現物出資してまちづくり会社を設立し、貸しオフィスを運営させる予定です。まちづくり会社の経営収支も工事内容も明らかになっていません。市民の意見を取り入れ再考を!」とあった。 10月2日(金)と3日(土)の夕方5時から8時過ぎまで、ソトカフェに行き友人とビールを飲んだ。人はまばらだった。三密を避けるのだからそれはよい。しかし、あまりにも暗い空間だ。せめて照明を用意するとか、広場を囲むようにイスとテーブルを配置するとか、もうひと工夫あってもよいのではないかと思った。ビールの店も早々と店じまいしてしまった。そんな暗い空間である映画を思い出した。 マーロン・ブランドの『ゴッドファーザー』 美人の娘をレイプされた父親が、犯人のチンピラを殺して欲しいとマフィアのボス、ビト・コルレオーネ(俳優はマーロン・ブランド)の暗い書斎で懇願する。外では、陽光の下コルレオーネの娘の結婚式が盛大に開かれている。庭と家の中の明暗の対比が絶妙な効果をあげていた。これはマフィアの権力闘争と家族史を描いた有名な『ゴッドファーザー』(1972)である。 監督は『グラマー西部を荒らす』(1961)というヌード映画でデビューし、ほとんどヒット作のなかったフランシス・フォード・コッポラ。この1作で世界的監督となった。 それから1作目をしのぐ『ゴッドファーザーpartⅡ』(1974)が作られ、アカデミー賞を総なめにする。『ゴッドファーザーpartⅢ』(1990)では、コッポラの娘ソフィア・コッポラを出演させるが、娘の演技とともに批判の的となり、アカデミー賞は取れず無冠で終わった。その後ソフィアは父親のあとを継いで映画監督になり、アート系女子の評価を勝ち得る作品を何本も作った。 現在、『ゴッドファーザー』製作の内幕を描く全10話のドラマが米CBSテレビで、また監督と製作者エヴァンスとの関係を描くメイキング映画も作られているという。コッポラ自身も、『partⅢ』の導入部と終結部を作り直したファイナルカット版を12月に発表するという。 映画探偵の私にとって映画とは、企画から脚本、撮影時から宣伝公開、観客の反応、評論、その後の経過、続編など全て含むものだ。その意味で『ゴッドファーザー』はまだ進行中であり、50年近く見ている作品となる。 新作『ツクバ・センター・ゾーン』? 世界で評価された『つくばセンタービル』(1983)も映画のような作品である。あと3年で40周年を迎えるわけだが、センタービルのメイキング本や記録映画はないに等しい。 そこで1市民の提案なのだが、改造資金の13億円を使い、センタービルのメイキング映画『ツクバ・センター・ゾーン』を作ったらどうだろうか。監督はソフィア・コッポラが適任だと思う。きっと、若い女性に支持される美しい作品に仕上げてくれるはずだ。 世界的な話題にもなるし、作品はつくば市、いや茨城県、いや日本の財産となると考える。暗い空間(?)で改造計画を考えた人、いかがであろうか。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

《映画探偵団》36 センタービル改造資金13億円の使いみち

【コラム・冠木新市】つくば市議会の9月定例会で、1人の市議が「つくばセンタービル改造計画」に疑問を投げかけた。議会が終了して数日後、「いがらし立青活動報告第8号」(9月19日付)がポストに入っていた。表紙には「ソトカフェ始まりました!」、裏には「中心市街地に関する取り組み/センタービル・センター広場のリニューアル」との記事が出た。 次は、「広報つくば10月号」(10月1日付)に、初めて内容を発表するかなと想像した。しかし「ソトカフェ」と「中央公園の噴水」のことしか出ていなかった。 議会で質問した市議のチラシ(10月2日付)が投げ込まれた。「今年度中につくば市は市税6000万円投入」「アイアイモールの場所と地下市営駐車場(資産価値14億~16億円)を現物出資してまちづくり会社を設立し、貸しオフィスを運営させる予定です。まちづくり会社の経営収支も工事内容も明らかになっていません。市民の意見を取り入れ再考を!」とあった。 10月2日(金)と3日(土)の夕方5時から8時過ぎまで、ソトカフェに行き友人とビールを飲んだ。人はまばらだった。三密を避けるのだからそれはよい。しかし、あまりにも暗い空間だ。せめて照明を用意するとか、広場を囲むようにイスとテーブルを配置するとか、もうひと工夫あってもよいのではないかと思った。ビールの店も早々と店じまいしてしまった。そんな暗い空間である映画を思い出した。 マーロン・ブランドの『ゴッドファーザー』 美人の娘をレイプされた父親が、犯人のチンピラを殺して欲しいとマフィアのボス、ビト・コルレオーネ(俳優はマーロン・ブランド)の暗い書斎で懇願する。外では、陽光の下コルレオーネの娘の結婚式が盛大に開かれている。庭と家の中の明暗の対比が絶妙な効果をあげていた。これはマフィアの権力闘争と家族史を描いた有名な『ゴッドファーザー』(1972)の導入部である。 監督は『グラマー西部を荒らす』(1961)というヌード映画でデビューし、ほとんどヒット作のなかったフランシス・フォード・コッポラ。この1作で世界的監督となった。 それから1作目をしのぐ『ゴッドファーザーpartⅡ』(1974)が作られ、アカデミー賞を総なめにする。『ゴッドファーザーpartⅢ』(1990)では、コッポラの娘ソフィア・コッポラを出演させるが、娘の演技とともに批判の的となり、アカデミー賞は取れず無冠で終わった。その後ソフィアは父親のあとを継いで映画監督になり、アート系女子の評価を勝ち得る作品を何本も作った。 現在、『ゴッドファーザー』製作の内幕を描く全10話のドラマが米CBSテレビで、また監督と製作者エヴァンスとの関係を描くメイキング映画も作られているという。コッポラ自身も、『partⅢ』の導入部と終結部を作り直したファイナルカット版を12月に発表するという。 映画探偵の私にとって映画とは、企画から脚本、撮影時から宣伝公開、観客の反応、評論、その後の経過、続編など全て含むものだ。その意味で『ゴッドファーザー』はまだ進行中であり、50年近く見ている作品となる。 新作『ツクバ・センター・ゾーン』? 世界で評価された『つくばセンタービル』(1983)も映画のような作品である。あと3年で40周年を迎えるわけだが、センタービルのメイキング本や記録映画はないに等しい。 そこで1市民の提案なのだが、改造資金の13億円を使い、センタービルのメイキング映画『ツクバ・センター・ゾーン』を作ったらどうだろうか。監督はソフィア・コッポラが適任だと思う。きっと、若い女性に支持される美しい作品に仕上げてくれるはずだ。 世界的な話題にもなるし、作品はつくば市、いや茨城県、いや日本の財産となると考える。暗い空間(?)で改造計画を考えた人、いかがであろうか。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

《映画探偵団》35 つくばにはモンローがよく似合う?

【コラム・冠木新市】20年前、女子短期大学で講師をしていたとき、『モンローとヘップバーン』をテーマに取り上げた。マリリン・モンローは1926年、オードリー・ヘップバーンは1929年の生まれ。2人は同時代に活躍し共通の映画人たちと仕事をしている。初めのうち、学生の好みはヘップバーンが多かったが、講義終了時になるとモンローファンが急激に増えていった。モンロー作品の変遷を追い、演技に対する真摯(しんし)な姿勢を知ると、馬鹿な娘役は高度な演技であることが見えてくるからだ。 つくば市のイメージキャラクターに、2人のどちらかを選ぶとしたらどうだろうか。『ローマの休日』(1953)で王女に扮(ふん)したヘップバーンを大多数の人が選ぶことだろう。だが、市の中心市街地に建つセンタービルには、さりげなくモンローのイメージが組み込まれているのだ。 モンローカーブと呼ばれる外壁の曲線はいくつもある。ホテル棟のドアの取っ手のくねっとした形は、モンローを模している。また、ロビーに無造作に置かれた黒い椅子は背もたれが波うち、モンローチェアと呼ばれている。そのほか、滝の流れ落ちるステージにもモンローカーブがある。きっと、建物内部にも思わぬ所にあると思う。 ビル設計者の磯崎新は、なぜこんなにもモンローにこだわったのか。映画探偵としてこの疑問を考えてみた。モンローの代表作を俯瞰(ふかん)すると、《水》と関連している作品が多くあることに気付く。 《水》:《滝》《海》《河》 『ナイアガラ』(1953)は、腰を振って歩くモンローウォークが有名だが、物語の背景は雄大な《滝》である。『紳士は金髪がお好き』(1953)は豪華客船が舞台で、《海》の旅が描かれる。『帰らざる河』(1954)は、西部劇で不実な恋人を追い、《河》をさかのぼる話だ。『七年目の浮気』(1954)は、名無しのCMガールと中年男が主人公で、モンスター映画『大アマゾンの半魚人』(1954)の、川のイメージを活用して語られている。 改めて、《水》つながりでセンタービルを見ると、階段の降り口にある青銅の月桂樹に黄金の布が巻き付いた彫刻物(長沢英俊・作)に目がいく。これはギリシャ神話に出てくる川の神ペネイオスの娘、水の精ダフネが、太陽神アポロンのしつこい求婚を拒否し月桂樹となった姿を表現している。目立つ位置にありながら目立たない彫刻なのだが、水の精が樹に変身したものと知れば、モンロー作品の《水》のイメージと重なる。 というのも、ホテル入口の取っ手と月桂樹に巻き付いた布の色は、同じ金色だからである。いや、《水》のつながりは当然だとしても、本当は別の意味合いが強いのかもしれない。 強い者に媚びない自立した女性 モンローは、馬鹿っぽい役を押しつける映画会社に嫌気がさし、反旗を翻して女優初のモンロー・プロダクションを設立した。彼女は次のような言葉を残している。「私はかって映画界に入り、女優になるために戦ったのと同じように、自分の才能を発揮するために、戦わなければならないと悟りました。もし戦わなければ、映画という手押し車に乗せられて売り払われる1個の商品となってしまうからです」。 モンローは自由に企画を選ぶ権利を獲得し、プロダクション第1作『バス停留所』(1956)を制作する。ハリウッドスターを目指す場末のクラブ歌手チェリーは、純情でがさつな牧童に惚れられる。チェリーはしつこい牧童を拒否し続けるが、ラストシーンのバス停留所で心底から反省する牧童の姿に接するとほだされて、妻となる道を選ぶ。 モンローとダフネに共通するのは《水》以上に、アポロンを拒否したダフネ、ハリウッドに抵抗したモンロー、2人の意志の強さなのかもしれない。磯崎新は2人の女性の生き方に敬意を表し建築に引用して見せた。センタービルには、強い者に媚(こ)びないで戦う自立した女性像が秘められているのだ。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

《映画探偵団》35 つくばにはモンローがよく似合う?

【コラム・冠木新市】20年前、女子短期大学で講師をしていたとき、『モンローとヘップバーン』をテーマに取り上げた。マリリン・モンローは1926年、オードリー・ヘップバーンは1929年の生まれ。2人は同時代に活躍し共通の映画人たちと仕事をしている。初めのうち、学生の好みはヘップバーンが多かったが、講義終了時になるとモンローファンが急激に増えていった。モンロー作品の変遷を追い、演技に対する真摯(しんし)な姿勢を知ると、馬鹿な娘役は高度な演技であることが見えてくるからだ。 つくば市のイメージキャラクターに、2人のどちらかを選ぶとしたらどうだろうか。『ローマの休日』(1953)で王女に扮(ふん)したヘップバーンを大多数の人が選ぶことだろう。だが、市の中心市街地に建つセンタービルには、さりげなくモンローのイメージが組み込まれているのだ。 モンローカーブと呼ばれる外壁の曲線はいくつもある。ホテル棟のドアの取っ手のくねっとした形は、モンローを模している。また、ロビーに無造作に置かれた黒い椅子は背もたれが波うち、モンローチェアと呼ばれている。そのほか、滝の流れ落ちるステージにもモンローカーブがある。きっと、建物内部にも思わぬ所にあると思う。 ビル設計者の磯崎新は、なぜこんなにもモンローにこだわったのか。映画探偵としてこの疑問を考えてみた。モンローの代表作を俯瞰(ふかん)すると、《水》と関連している作品が多くあることに気付く。 《水》:《滝》《海》《河》 『ナイアガラ』(1953)は、腰を振って歩くモンローウォークが有名だが、物語の背景は雄大な《滝》である。『紳士は金髪がお好き』(1953)は豪華客船が舞台で、《海》の旅が描かれる。『帰らざる河』(1954)は、西部劇で不実な恋人を追い、《河》をさかのぼる話だ。『七年目の浮気』(1954)は、名無しのCMガールと中年男が主人公で、モンスター映画『大アマゾンの半魚人』(1954)の、川のイメージを活用して語られている。 改めて、《水》つながりでセンタービルを見ると、階段の降り口にある青銅の月桂樹に黄金の布が巻き付いた彫刻物(長沢英俊・作)に目がいく。これはギリシャ神話に出てくる川の神ペネイオスの娘、水の精ダフネが、太陽神アポロンのしつこい求婚を拒否し月桂樹となった姿を表現している。目立つ位置にありながら目立たない彫刻なのだが、水の精が樹に変身したものと知れば、モンロー作品の《水》のイメージと重なる。 というのも、ホテル入口の取っ手と月桂樹に巻き付いた布の色は、同じ金色だからである。いや、《水》のつながりは当然だとしても、本当は別の意味合いが強いのかもしれない。 強い者に媚びない自立した女性 モンローは、馬鹿っぽい役を押しつける映画会社に嫌気がさし、反旗を翻して女優初のモンロー・プロダクションを設立した。彼女は次のような言葉を残している。「私はかって映画界に入り、女優になるために戦ったのと同じように、自分の才能を発揮するために、戦わなければならないと悟りました。もし戦わなければ、映画という手押し車に乗せられて売り払われる1個の商品となってしまうからです」。 モンローは自由に企画を選ぶ権利を獲得し、プロダクション第1作『バス停留所』(1956)を制作する。ハリウッドスターを目指す場末のクラブ歌手チェリーは、純情でがさつな牧童に惚れられる。チェリーはしつこい牧童を拒否し続けるが、ラストシーンのバス停留所で心底から反省する牧童の姿に接するとほだされて、妻となる道を選ぶ。 モンローとダフネに共通するのは《水》以上に、アポロンを拒否したダフネ、ハリウッドに抵抗したモンロー、2人の意志の強さなのかもしれない。磯崎新は2人の女性の生き方に敬意を表し建築に引用して見せた。センタービルには、強い者に媚(こ)びないで戦う自立した女性像が秘められているのだ。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

《映画探偵団》33 つくばセンタービル 磯崎新の設計思想

【コラム・冠木新市】東京ディズニーランドのシンボル、シンデレラ城が新型コロナウイルスで休園中に改修された。シンデレラ城は、ドイツのバイエルン国王ルードウィッヒⅡ世によって創られたノイシュバンシュタイン城をモデルにしたものである。東京ディズニーランドと同じく1983年に完成した「つくばセンタービル」も、実はノイシュバンシュタイン城の影響を受けて創られている。 「狂王ルードウィッヒが純粋に快楽のために建設したこの折衷主義のあだ花、キッチュの権化ともいうべきノイシュバンシュタインは、いまでは確実にポピュリズムの核心にある。《つくばセンタービル》の複合体が独自の象徴作用をなすためには、私はキッチュ的な要素の使用も辞すまい、と考えたことも事実である」「私はノイシュバンシュタイン的なものへ接近する道を歩んでいたのかもしれない」(磯崎新編著『建築のパフオーマンス』PARCO出版局) 「こんな面白いところが、入場料もとらずに開放されているなんて、信じられない」と言った人がいた。私も30年ほど前から、毎日のようにセンタービルを眺めてきたが、見飽きないし、少しも古びないのは驚きである。晴れた日には、3棟のビルの表面がきらきら輝き、美しいかぎりだ。さらに、1000人以上入るホールがあるのに、巨大さを感じさせないのはなぜだろうか。 なかでも中央の楕円形の広場、いや、庭は実に刺激的だ。何もない空間だからである。だが、東洋的なこの庭は、西洋的な3棟の建物を際立たせている。しかし、権力、財力、名誉を求める人にとっては、廃墟をイメージするような空間は腹立たしさを覚えるのに違いない。力を暗示するシンボルが存在しないからである。 霞ケ浦を模した階段から流れる水は、つくば市の位置に相応する中央へと流れ落ちる。センタービルの空っぽの庭は、創造性を触発する器であり、水が主役なのである。私などは、崩れかけたような岩山に大魔神が埋め込まれているのではないかと、つい想像してしまう。 大映の『大魔神』ドーム屋根案を踏み壊す? 大映の『大魔神』(1966)シリーズは、1年間に3本製作された幻想的な特撮作品であった。大映の美術陣は、大魔神の大きさを4.5メートル、人間の2.5倍に設定した。そして、本建築とミニチュアの中間の精巧なセットをつくり上げた。大魔神が神聖な場所を荒らした領主に怒り、建物を破壊する。屋根瓦が崩れ落ちるシーンは、いつ見ても圧巻である。 昨年3月、磯崎新が建築界のノーベル賞ともいえるプリツカー賞を受賞し、私はつくば市民としてとても嬉しかった。さぞかし、つくば市も喜びの声を上げると思っていたのだが、ホームページで儀礼的なメッセージを出して終わりだった。オイオイ、中心市街地活性化を声を大にして呼びかけているのに、それはないだろうと納得できなかった。しかし最近、やっとその謎が解けた。 受賞と同じ時期の3月に策定された「つくばセンタービルのあり方検討業務報告書」で、なんと、センター広場にアーチ状のドーム屋根をつくることが検討されていたからである。道理で素っ気ないはずである。プリツカー賞は、つくば市にとって目障りだったのだろうか。 東京ディズニーランドは、1年前からシンデレラ城の改修計画を発表している。つくば市は、今までなぜ隠していたのか。センタービルの庭を覆い隠す屋根はなにかを物語っている。 センタービルは、つくば市民のものでも、茨城県民のものでもない。今や世界の文化財である。これでは、「世界のあしたが見えるまち」のコピーに傷がつくのではないか。このままでは、きっと世界の建築家、アーティストの批判の的になることだろう。私には、センタービルの岩山から現れた大魔神が、屋根を踏み壊す映像が見えてしまう。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

《映画探偵団》33 つくばセンタービル 磯崎新の設計思想

【コラム・冠木新市】東京ディズニーランドのシンボル、シンデレラ城が新型コロナウイルスで休園中に改修された。シンデレラ城は、ドイツのバイエルン国王ルードウィッヒⅡ世によって創られたノイシュバンシュタイン城をモデルにしたものである。東京ディズニーランドと同じく1983年に完成した「つくばセンタービル」も、実はノイシュバンシュタイン城の影響を受けて創られている。 「狂王ルードウィッヒが純粋に快楽のために建設したこの折衷主義のあだ花、キッチュの権化ともいうべきノイシュバンシュタインは、いまでは確実にポピュリズムの核心にある。《つくばセンタービル》の複合体が独自の象徴作用をなすためには、私はキッチュ的な要素の使用も辞すまい、と考えたことも事実である」「私はノイシュバンシュタイン的なものへ接近する道を歩んでいたのかもしれない」(磯崎新編著『建築のパフオーマンス』PARCO出版局) 「こんな面白いところが、入場料もとらずに開放されているなんて、信じられない」と言った人がいた。私も30年ほど前から、毎日のようにセンタービルを眺めてきたが、見飽きないし、少しも古びないのは驚きである。晴れた日には、3棟のビルの表面がきらきら輝き、美しいかぎりだ。さらに、1000人以上入るホールがあるのに、巨大さを感じさせないのはなぜだろうか。 なかでも中央の楕円形の広場、いや、庭は実に刺激的だ。何もない空間だからである。だが、東洋的なこの庭は、西洋的な3棟の建物を際立たせている。しかし、権力、財力、名誉を求める人にとっては、廃墟をイメージするような空間は腹立たしさを覚えるのに違いない。力を暗示するシンボルが存在しないからである。 霞ケ浦を模した階段から流れる水は、つくば市の位置に相応する中央へと流れ落ちる。センタービルの空っぽの庭は、創造性を触発する器であり、水が主役なのである。私などは、崩れかけたような岩山に大魔神が埋め込まれているのではないかと、つい想像してしまう。 大映の『大魔神』ドーム屋根案を踏み壊す? 大映の『大魔神』(1966)シリーズは、1年間に3本製作された幻想的な特撮作品であった。大映の美術陣は、大魔神の大きさを4.5メートル、人間の2.5倍に設定した。そして、本建築とミニチュアの中間の精巧なセットをつくり上げた。大魔神が神聖な場所を荒らした領主に怒り、建物を破壊する。屋根瓦が崩れ落ちるシーンは、いつ見ても圧巻である。 昨年3月、磯崎新が建築界のノーベル賞ともいえるプリツカー賞を受賞し、私はつくば市民としてとても嬉しかった。さぞかし、つくば市も喜びの声を上げると思っていたのだが、ホームページで儀礼的なメッセージを出して終わりだった。オイオイ、中心市街地活性化を声を大にして呼びかけているのに、それはないだろうと納得できなかった。しかし最近、やっとその謎が解けた。 受賞と同じ時期の3月に策定された「つくばセンタービルのあり方検討業務報告書」で、なんと、センター広場にアーチ状のドーム屋根をつくることが検討されていたからである。道理で素っ気ないはずである。プリツカー賞は、つくば市にとって目障りだったのだろうか。 東京ディズニーランドは、1年前からシンデレラ城の改修計画を発表している。つくば市は、今までなぜ隠していたのか。センタービルの庭を覆い隠す屋根はなにかを物語っている。 センタービルは、つくば市民のものでも、茨城県民のものでもない。今や世界の文化財である。これでは、「世界のあしたが見えるまち」のコピーに傷がつくのではないか。このままでは、きっと世界の建築家、アーティストの批判の的になることだろう。私には、センタービルの岩山から現れた大魔神が、屋根を踏み壊す映像が見えてしまう。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

個別テントなど備蓄へ 土浦市がコロナ対応避難所指針

【鈴木宏子】新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、災害発生時に避難所での集団感染を防ごうと、土浦市は新たに「新型コロナウイルス等感染症対応避難所運営指針」を策定した。6日開かれた定例記者会見で安藤真理子市長が発表した。避難所となる体育館で使用する個別テントなどを新たに備蓄する方針で、7月に開く臨時議会に諮るという。 運営指針は、避難所での「密」を防ぐため①車中泊や親せき、友人宅などに避難する分散避難を推奨する②小中学校の体育館以外に校舎の教室や公共施設、民間施設を有効活用して避難スペースを確保する③避難所では消毒や換気など感染防止対策を実施するーの3つが柱。 分散避難の推奨では、車中泊が増えることが予想されるため、避難所となっていてトイレや水が確保できる学校校庭や公園などに車中泊に適した場所を確保する。 避難スペースの確保は、小中学校の教室や公民館、保健センターなど公共施設の活用のほか、災害協定を締結している民間企業や、個室のある民間宿泊施設などとも調整する。 避難所の感染防止対策は、一般避難者向けのスペースのほかに、熱があるなど体調不良者向けの部屋と、高齢者や障害者など要配慮者向けの部屋などを別々に用意する。個別テントや間仕切り用のパーテーションなどを備蓄し、不足した場合は段ボールで代用する。すでに備蓄しているマスクや消毒液、ビニール手袋、非接触型体温計の備蓄量をさらに増やす。 運営面の感染防止対策は、避難者の体温や健康状態を確認する、消毒液などを設置する、避難者同士は2メートルの間隔を確保する、換気のため1時間に1回程度、2方向の窓を10分間開ける、手すりなどは1時間に1回程度を目安に消毒するーなどを定めている。 避難所で新型コロナウイルス感染者が発生した場合についても、保健所と連携し感染者を医療機関に移送する、感染者がいたスペースを消毒する、濃厚接触者が他の避難者と接触しないようにするーなどと明記している。 9日、市職員60人が訓練 指針策定を受けて市は、災害時に避難所に直行する役割の市職員約60人を対象に9日、同指針に基づく初の避難所開設研修会を開催する。安藤市長は「職員の研修や訓練を繰り返し実施し、より適切な運営が図れるよう防災力向上に努めたい」と話した。 まずは分散避難を推奨 豪雨や台風が増える出水期に入った現在、霞ケ浦に面し、桜川が市の中心部を流れる同市は、市中心市街地一帯が浸水想定区域となっている。 つくば市北部で浸水が発生した昨年10月の台風19号の際、同市では26カ所の避難所に最大2048人が避難し、混雑した避難所もあった。 市危機管理室によると、今回策定した新たな指針により、水害の場合、公共施設の屋内避難所は現在の25カ所から43カ所に増える。 ただし避難者同士の距離を2メートル以上確保すると1施設に避難できる人数が限られるため、同市では分散避難の推奨により、公共施設の施設内避難者数を昨年の台風19号時の半分にすることを見込んでいる。まずは分散避難の推奨がコロナ禍の避難所運営のかぎになる。 https://www.youtube.com/watch?v=HWx9Ku6zvYo&feature=youtu.be 動画はJ:COM茨城提供

【つくばセンタービル改修】㊥ 民意と距離ある計画

【鈴木宏子】つくば駅周辺、つくばセンタービルリニューアル基本計画策定費や中心市街地エリアマネジメント団体の出資金などが予算化され、市民説明会が開かれないまま、中心市街地をイノベーション拠点にしようという取り組みが始まっている。これに対し市民は、中心市街地に何を求めているのか。 市は2017年から居住者や働く人の意向調査、オープンハウス、アンケートなどで市民の意見をたびたび求めてきた。 市民意向調査結果の方はホームぺージなどで公開されている。調査の一つ、中心市街地居住者580人の意向調査結果では、住民は中心市街地に「商業や滞在型施設などが多く立地し活気にあふれている街」「文化施設や公共施設が多く立地する公的機能が中心の街」を求め、「インキュベーション(創業支援)施設」がほしいとの回答は14番目だった。 市民は生活者として中心市街地に、にぎわいや都市機能、文化を求めている。昨年12月に出された市議会の「今後のつくば中心市街地まちづくりについての提言」も市民の意向に沿ったものだ。 今年3月策定の「中心市街地エリアマネジメント検討業務委託報告書」にも市民の意向について「文化・運動施設、商業施設、子育て施設を望む意見が多い。その他高齢者、子供の居場所、市の窓口、業務機能、ホテル」などと記されており、市は市民の意向を把握した上で、今回のリニューアル案を出したことが分かる。 市の計画は民意と乖離(かいり)してないか。3年半前の前回の市長選でも、中心市街地という場所は別にして、つくばに集積する研究機関のさまざまな資源を活用して科学産業をつくり雇用を増やす科学産業都市づくりを訴えたのは大泉博子候補だったが、市民が選んだのは、総合運動公園問題の完全解決を訴えた五十嵐現市長だった。 市民の意向を市長がどう考えたかは議事録が不存在で、「市長・副市長報告案件指示事項」と題した簡単なメモの一覧表しかなく、意思形成過程を検証できなかった。 「市の顔つくば駅が効果的」 なぜセンタービルに2カ所目のイノベーション拠点をつくるかについて「つくばセンタービルリニューアルの方向性案」では「(つくばセンタービルは)店舗自体を外から視認できないこと等により不特定多数を集客する商業等の入居は難しい」などと消去法で商業機能を省いている。さらに区分所有者の意向として「ホテルオークラ(ホテル日航つくば)から、ホテル運営が厳しい状況であるため相乗効果を生むオフィス機能となることが望ましい、オフィス機能であれば相乗効果が見込めるため連携した取り組みも可能」との意見があるとも説明している。 情報開示された「中心市街地エリアマネジメント検討業務委託報告書」には、つくば市は研究機関のさまざまな資源を活用した小さなビジネスは起こっているが市に根付く企業が少ないと課題を挙げ、「市の顔となるつくば駅周辺で、資源を活用したまちづくりを表現していくことが効果的」とある。 総合運動公園の教訓どこに 「総合運動公園問題の完全解決」を最大の公約に掲げた五十嵐市長が就任直後、著名な弁護士による総合運動公園事業検証委員会を設置した。総合運動公園がなぜ白紙撤回に至ったかについて同委員会は第1に民意との乖離を指摘し、7つの提言をまとめた。①大規模事業は民意の把握を適切に行い、市民の直接的な要請に基づくものでない事業は市民への説明を十分行うこと②事業計画、基礎的検討の段階で議会への適切な報告を行うこと③財源、市の財政負担の程度について確実な財源と見通しを区別して説明することーなどだ。 同検証委の提言を受け、市は18年9月「大規模事業の進め方に関する基本方針」を策定し、市が主体となる総事業費10億円以上の施設整備事業について、①事業の進め方、必要性や効果、課題、将来への影響など市民に必要な情報提供を十分に行うなど、民意を適切に把握する②事業の客観性を高め市民ニーズに即したものとし、意思形成過程の透明性を図るーなどの手続きを定めた。 「つくばセンタービルリニューアルの方向性案」によると、センタービルの改修費用は、すべての整備を市が実施した場合は約13億6280万円、市が出資する法人が運営整備した場合は約9億8960万円かかるとある。これはセンター広場に設置が検討されている屋根や、エリアマネジメント団体が担うことが検討されている中心市街地全体のまちづくりを含まない。 事業費は全体でいくらになるのか。エリアマネジメント団体の収支見通しをどう見積もっているのか。つくばには創業支援組織が多くあり多くの取り組みを行っているが、これまでやってきたことの分析はされ、課題を明確にしているのか。なぜ民意と乖離してでも中心市街地でなくてはならないのかー。市は総合運動公園の教訓を生かし市民に説明すべきだ。(つづく)

【つくばセンタービル改修】㊤ 具体案、市民に説明なく

【鈴木宏子】つくば駅前「つくばセンタービルリニューアルの方向性案」を、市がホームぺージ(HP)で公表し、30日まで市民の意見を募集している。具体案が市民に公開されたのは初めて。 センタービル1階アイアイモールの一部に市として2カ所目のイノベーション拠点(多様な働き方を支援する場)をつくること、ノバホール西隣のつくばイノベーションプラザなどに吾妻交流センター、市民活動センターと、国際交流、男女共同、消費生活などの機能を集めた市民活動拠点をつくることなどが柱だ。センタービルのイノベーション拠点を運営し、さらに同駅周辺のまちづくりを担う、エリアマネジメント団体を新設することも検討されている。 出資金すでに予算化 一方、今年3月議会でエリアマネジメント団体を設立するための出資金6000万円と、センタービルリニューアルの基本計画策定費990万円などがすでに予算化され(3月9日付)、6月初めには同基本計画策定業務の委託業者が選定された。 工事が実施されればセンタービル建設以来のリニューアルとなるが、担当の市学園地区市街地振興室によると現時点で市民説明会を開く予定はなく、開くかどうかも決まっていない。 市はセンタービルや中心市街地で何をしようとしているのか。意思形成過程や策定過程、考え方が分かるすべての公文書を情報開示請求した。 報告書も検討委も非公表 開示資料によると、センタービルのリニューアルに向けて市内部で検討が始まったのは2018年7月。19年3月に「つくばセンタービルのありかた検討業務報告書」、20年3月に「中心市街地エリアマネジメント検討業務報告書」がそれぞれ策定されたが、内容が市民に説明されることはなかった。片やヴィジョン(18年7月)戦略(20年5月)などイメージや将来像などは公表された。 昨年7月には、エリアマネジメント団体の在り方を検討する検討委員会も設置されたが、会議は第1回目を除き非公開で行われた。 3カ所で役割分担 市が今回初めてHPで公表したイノベーション拠点(多様な働き方を支援する場)は、1階アイアイモールの一部約2500平方メートルにつくる。新施設の面積としては最大だ。リニューアル案には、働く人の交流の場、シェアオフィス、会議室などのビジネスを支援する機能等、子連れ出勤やリモートワークなど多様な働き方を支援し、働く人同士が交流できる場を整備するなどと説明されている。 市がイノベーション拠点を整備するのは、昨年9月にセンタービル近くの市産業振興センターに開設された「つくばスタートアップパーク」(年間事業費約5700万円)に次いで2カ所目となる。 名称はこれまで「イノベーション拠点」として議会に説明されてきたが、今回「働き方を支援する場」と変更された。同振興室によると、中身は議会に説明したイノベーション拠点に変わりはないという。つくば駅周辺をイノベーション拠点とする検討をしており、センタービルの考え方を分かりやすく示すため「働き方を支援」という表記にしたという。 開示資料によると、国家公務員宿舎跡地の70街区にもイノベーション施設をつくる計画がある。つくば駅周辺で計3カ所になる。3カ所の役割分担として「スタートアップパークで創業支援を行い、ある程度の大きさのオフィスが必要になったらセンタービル、さらに従業員が増えるなど企業規模が大きくなったら70街区という流れ」が検討されている。 全体事業費は不明 来年3月までに設立予定のエリアマネジメント団体には、出資金6000万円のほか、センタービルの床の区分所有権の一部を市が現物出資することも検討されている。現物出資されれば所有権がつくば市のものから、新団体の所有となる。経営がうまくいかなかった場合、センタービルはどうなるのか。市振興室によるとまだ検討されてないという。 ほかに中心市街地に新たに、こども体験施設、チャレンジショップ、賃貸住宅やシェアハウス、ゲストハウスなどの箱モノを整備し、中心市街地をイノベーション拠点にする案が検討されているが、費用は全体でいくらになるのか、エリアマネジメント団体の収支がどう想定されているのかは、市民に知らされないままだ。(つづく) つくばセンタービル 筑波研究学園都市のシンボルとして37年前の1983年に建設された。2018年6月に飲食店すべてが撤退し、現在、空き店舗が目立っている。つくば市(52.86%)、ホテルオークラ(ホテル日航つくば、38.48%)、筑波都市整備(8.66%)の3者が区分所有している。

【赤青白のサギの群れ】㊦ 「アマビエ」似? アオサギが街を飛ぶ

【相澤冬樹】鷺山のある桜川は、学園大橋下流から土浦市の中心市街地を抜けて霞ケ浦に注ぐ。サギ類は市民生活と隣り合わせで暮らす身近な鳥となってきた。それでも市街地上空を飛翔していくアオサギのいかつい姿にはなかなか慣れることができず、いつもぎょっとさせられる。 体長が1メートルほど、翼を広げると長さ150―170センチにもなる大型の鳥。後頭に黒い羽毛が伸長(冠羽)し、繋がるように眉状の黒い筋模様(眉斑)が入る。アオサギは桜川の鷺山には加わらず、周辺の里山で樹上生活をしているが、木の上にじっとたたずむシルエットが、疫病退散の妖怪として話題の「アマビエ」に似ているというものまでいる。 農研機構中央農業研究センター(つくば市)の研究員、益子美由希さん(34)を訪ねた。コロニー(集団繁殖地)を作って暮らすサギ類の生態に詳しい。茨城県内のサギについては筑波大学の生命環境科学研究科が1980年代から、コロニーやねぐらの分布を調査してきた。益子さんは学生時代の2008年から、その調査を引き継ぎ、大学院を経て今の研究生活に至るまで、調査を継続している。 調査対象にはアオサギも含まれており、県内での増加傾向を定量的にとらえた。「サギ類にかかわらず近年、大型の鳥類が個体数を増やす傾向にある。サギ類でみると、小型のアマサギ、コサギが減っているなかで、ダイサギ、アオサギに増加傾向が見られる」と自作のグラフを見せてくれた。 データは、フィールドワークで丹念に採取される。コロニー上空に小型ラジコンを飛ばし空撮を行い、緑地のなかで白い点に写った鳥の数をカウントする。地上からも飛び立つサギを種類ごとに数え、その比率からコロニーにおける6種の個体数を推定する。これを毎年、茨城県内で形成される約20カ所の営巣地で行った。 アオサギは6種中もっとも少ない個体数だったのが、近年チュウサギ、ゴイサギに次ぐ第3勢力に拡大した。論文発表済の2011年まで(2005年は空撮コロニー数が少ないため除外)をイラストグラフ化しているが、アオサギの増勢はその後も続いている。 動物食のサギに格好のえさ場 「以前は農薬散布が捕食動物の生息数の増減に影響を与えたが、今は農薬の影響は少ない。大型になるほど天敵が減って生態系のなかで優位に立つということではないか。えさ場の多い土浦周辺では増える要素が十分にある」と益子さん。 中央農研にはこの4月に移ったばかりだが、新型コロナウイルスの影響からフィールドワークに出にくく、研究者としては羽を休める日々が続いている。所属は鳥獣害グループ。今後は調査研究の対象をカモ類などにも広げたい意欲をもっている。 「サギは田んぼや畑で虫やカエル、ザリガニなどを食べて暮らす。基本は動物食なんです。土浦あたりに多いハス田は一年中水が張られ、えさが取りやすいから大好きなんだけど、植物のレンコンを食べることはない。農作物にとってはむしろ益鳥です」(益子さん) しかし、これだけ市街地に近い場所に、サギ類のコロニーが作られるようになると、周辺の住民にふんや鳴き声、臭いなどの生活被害をもたらす懸念は小さくない。 現状、サギは鳥獣保護法により、許可なく捕獲したり、巣を落としたりすることが禁じられている。カラスやカルガモを駆除の対象とする土浦市・かすみがうら市鳥獣被害防止計画にも、アオサギをはじめとするサギ類の記載はない。この先もヒトはサギとの適切な距離感(ディスタンス)を保って、お隣付き合いを続けていけるだろうか。

イノベーション施設や市民活動拠点など検討 つくばセンタービル再整備

【鈴木宏子】つくば市が2020年度に本格着手するつくばセンタービル(同市吾妻)のリニューアルについて、市は、現在空き店舗となっている同センタービル1階アイアイモールに、ベンチャー企業を支援するイノベーション施設などを整備し、市と民間によるまちづくり会社を設立して運営することを検討していることが分かった。現在のつくばイノベーションプラザとアイアイモールの一部には新たな市民活動拠点を整備することを検討している。 同市は、開会中の3月議会に提案している当初予算案に、同センタービルを再整備するために必要な機能や配置について検討する基本計画策定費(約990万円)と、まちづくり会社である官民連携中心市街地エリアマネジメント団体の設立出資金(約6000万円)を計上している。 3月議会都市建設委員会での市の答弁などによると、まちづくり会社には6000万円の出資金のほかに、市が所有している同センタービルの区分所有権の一部を現物出資することを検討している。2020年度中に不動産鑑定を実施して価値を算定する予定だ。まちづくり会社は21年3月までに設立予定で、センタービルの区分所有権の一部も市から新会社に移転される。市はその分を株式として持つことになるという。 センタービルのリニューアルではほかに、現在のイノベーションプラザに整備を検討している新たな市民活動拠点は、市の交流センターと市民活動センターや国際交流などの機能を有した新たな拠点という。さらに市の窓口の設置なども検討されている。 「あり方検討報告書」は6機能 一方、情報開示請求し公開された市の「つくばセンタービルあり方検討業務報告書」(19年3月策定)では、今後導入することが好ましい機能として、子育てママ、若者、シニア、ファミリーをターゲットとし、①シェアオフィスやインキュベーション施設などイノベーションのための「クリエイティブビジネス機能」②さまざまな人の趣味や活動を支える新たな「地域のコミュニティ拠点」③子供が遊びながら学べる施設や子育てママを応援する託児機能などを備えたシェアオフィスなど「子育て支援機能」④市役所の窓口など「市民サービス」⑤クッキングスタジオなどカルチャースクール等、市民が立ち寄りたくなる「文化機能」⑥飲食のスタートアップ事業を育てる「食の発信拠点」の6つの機能を導入することが好ましい―などとしていた。 担当する市学園地区市街地振興室は、現在の検討案はあくまでも内部検討案だとしている。19年3月策定の報告書とも異なるという。今後、市民の意見を聞いて基本計画を策定するとしている。 ➡つくば市2020年度予算案はこちら ➡つくば市中心市街地活性化問題に関する過去記事はこちら

ナショナルサイクルルートをセグウェイで つくば りんりんロードを初走行

【池田充雄】国のナショナルサイクルルートに認定された「つくば霞ケ浦りんりんロード」で18日、搭乗型移動支援ロボット「セグウェイ」の体験ツアー(つくば市主催)が行われた。セグウェイの公道実証実験はこれまで、つくば市の中心市街地や谷田部地区で行われており、りんりんロードの活用は今回が初めてとなった。 今回の会場は、つくば市小田の小田城跡歴史ひろば周辺。各回定員6人で3回のツアーが開かれた。1回の所要時間は90分ほどで、前半は広場の中で基本操作などの講習を行った。 セグウェイはアクセルやブレーキがなく、乗った人の体重移動を本体が検知し、電動で走行する。今回は公道を走るため自動車かオートバイの免許が必要だが、基本的にはだれでも簡単に操作できるという。 講習では乗り降りの仕方から直進と停止、方向転換、ジグザグ走行やスラローム走行などを練習した後、いよいよツアーに出発。広場を後にしてりんりんロードに入り、直線の道を一列になって1キロほど進む。街中を抜けて水田地帯に入ると一気に眺望が開け、行く手に筑波山が間近に眺められた。 鹿嶋市から来た寺田幸代さん(36)は「もっと難しいかと思ったが簡単に乗れて、すごく楽しかった。もっと遠くまで乗れたらよかったのに」と名残惜しそう。一緒に参加した大川文恵さん(37)も「上り坂は楽々で、下り坂も怖くなかった。インストラクターの教え方が上手で、乗れば乗るほど慣れてきた」と楽しんだ。 「馬に乗るときの感覚と似ている」と話したのは、甲冑武者姿で参加した鴨井宏児さん(48)。同会場ではこの日、地域イベント「第32回小田地区どんど焼きと小田城冬の陣」が開かれ、鴨井さんらはステージで演武を披露した。同イベントには市民ら約2000人が集まり、さまざまな催しで寒中の一日を楽しんだ。 https://www.youtube.com/watch?v=MaDylFChlm0&feature=youtu.be

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