土曜日, 10月 23, 2021
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《映画探偵団》35 つくばにはモンローがよく似合う?

【コラム・冠木新市】20年前、女子短期大学で講師をしていたとき、『モンローとヘップバーン』をテーマに取り上げた。マリリン・モンローは1926年、オードリー・ヘップバーンは1929年の生まれ。2人は同時代に活躍し共通の映画人たちと仕事をしている。初めのうち、学生の好みはヘップバーンが多かったが、講義終了時になるとモンローファンが急激に増えていった。モンロー作品の変遷を追い、演技に対する真摯(しんし)な姿勢を知ると、馬鹿な娘役は高度な演技であることが見えてくるからだ。

つくば市のイメージキャラクターに、2人のどちらかを選ぶとしたらどうだろうか。『ローマの休日』(1953)で王女に扮(ふん)したヘップバーンを大多数の人が選ぶことだろう。だが、市の中心市街地に建つセンタービルには、さりげなくモンローのイメージが組み込まれているのだ。

モンローカーブと呼ばれる外壁の曲線はいくつもある。ホテル棟のドアの取っ手のくねっとした形は、モンローを模している。また、ロビーに無造作に置かれた黒い椅子は背もたれが波うち、モンローチェアと呼ばれている。そのほか、滝の流れ落ちるステージにもモンローカーブがある。きっと、建物内部にも思わぬ所にあると思う。

ビル設計者の磯崎新は、なぜこんなにもモンローにこだわったのか。映画探偵としてこの疑問を考えてみた。モンローの代表作を俯瞰(ふかん)すると、《水》と関連している作品が多くあることに気付く。

《水》:《滝》《海》《河》

『ナイアガラ』(1953)は、腰を振って歩くモンローウォークが有名だが、物語の背景は雄大な《滝》である。『紳士は金髪がお好き』(1953)は豪華客船が舞台で、《海》の旅が描かれる。『帰らざる河』(1954)は、西部劇で不実な恋人を追い、《河》をさかのぼる話だ。『七年目の浮気』(1954)は、名無しのCMガールと中年男が主人公で、モンスター映画『大アマゾンの半魚人』(1954)の、川のイメージを活用して語られている。

改めて、《水》つながりでセンタービルを見ると、階段の降り口にある青銅の月桂樹に黄金の布が巻き付いた彫刻物(長沢英俊・作)に目がいく。これはギリシャ神話に出てくる川の神ペネイオスの娘、水の精ダフネが、太陽神アポロンのしつこい求婚を拒否し月桂樹となった姿を表現している。目立つ位置にありながら目立たない彫刻なのだが、水の精が樹に変身したものと知れば、モンロー作品の《水》のイメージと重なる。

というのも、ホテル入口の取っ手と月桂樹に巻き付いた布の色は、同じ金色だからである。いや、《水》のつながりは当然だとしても、本当は別の意味合いが強いのかもしれない。

強い者に媚びない自立した女性

モンローは、馬鹿っぽい役を押しつける映画会社に嫌気がさし、反旗を翻して女優初のモンロー・プロダクションを設立した。彼女は次のような言葉を残している。「私はかって映画界に入り、女優になるために戦ったのと同じように、自分の才能を発揮するために、戦わなければならないと悟りました。もし戦わなければ、映画という手押し車に乗せられて売り払われる1個の商品となってしまうからです」。

モンローは自由に企画を選ぶ権利を獲得し、プロダクション第1作『バス停留所』(1956)を制作する。ハリウッドスターを目指す場末のクラブ歌手チェリーは、純情でがさつな牧童に惚れられる。チェリーはしつこい牧童を拒否し続けるが、ラストシーンのバス停留所で心底から反省する牧童の姿に接するとほだされて、妻となる道を選ぶ。

モンローとダフネに共通するのは《水》以上に、アポロンを拒否したダフネ、ハリウッドに抵抗したモンロー、2人の意志の強さなのかもしれない。磯崎新は2人の女性の生き方に敬意を表し建築に引用して見せた。センタービルには、強い者に媚(こ)びないで戦う自立した女性像が秘められているのだ。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

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