月曜日, 12月 29, 2025
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この国の農業をどうする?《邑から日本を見る》155

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荒れ地がまもなく飼料畑に

【コラム・先﨑千尋】政府は先月27日、農政の憲法と言える「食料・農業・農村基本法」の改正案を閣議決定し、国会に提出した。同法の前身は、1961年に制定された農業基本法。経済の高度成長に合わせた法律だったが、99年に、経済と農業・農村の激変に対応するために現行の法律になった。

法の制定から25年経ち、世界では食料争奪が激化し、国内では人口減少が進んでいる。今回の改正は、食料安保の確保を基本理念に掲げ、紛争に伴う食糧危機や地球温暖化、人口減少に対応し、環境と調和のとれた食料システムの確立を目指すというもの。来年度予算の成立後に衆参各院で審議がなされる見通しだ。

改正案では、食料安保を「良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、かつ国民一人一人がこれを入手できる状態」と定義している。食料自給率のほか、肥料や飼料など農業資材の確保などを念頭に複数の目標を設定し、達成状況を年に1回調査する。また、環境と調和のとれた食料システムの確立や多面的機能の発揮、農業の持続的な発展、農村の振興、水産業及び林業への配慮も条文に盛り込まれている。

では農業の現状はどうか。

同法制定時と比べて、農業の基盤である農地面積は57万ヘクタール(12%)減少し、基幹的農業従事者は234万人から116万人と半減している(23年)。農家の手取り収入となる生産農業所得は3兆1051億円(22年)と、大企業1社の売り上げにも満たない。この間、食料自給率はエネルギー換算で40%から38%にダウンしている(22年)。

この基本法案はわが国の農業のあるべき姿を示しているのだが、掲げている「環境と調和のとれた食料システムの確保」や「多面的機能の発揮」などは、現状がそうはなっていないことを証明しているものだ。どうしてそうなってしまったのかの検証がなされなければ、為政者の希望、願望にすぎない。

農業では食えない現実

国全体の数値や法律のことはさておき、私が住んでいる地域の周りを見てみよう。やはり遊休農地が年々増えており、後継者もいない。イノシシがワガモノ顔に田畑を荒らしている。空き家も増えている。

その根本原因は何か。訳は簡単だ。農業では食えない、生活できないから。弥生時代以来、日本人は全体として米を腹いっぱい食べることを夢みてきた。それが達成できたのが1970年頃。まだ50年前のことだ。喜んだのは束の間。すぐにコメ余りになり、減反政策が始まった。米価もどんどん下がり、農水省の統計でも大幅赤字だ。

変化の兆しもある。すぐ近くで花づくりをしているI君。石岡市八郷地区で有機農業・里山農業に取り組んでいるY君。いずれも農家の出身ではない。2人とも明るい。遊休農地を借りて干し芋用のサツマイモを作付けしているK君。隣町のM農場は、昨年から牛の飼料となるデントコーンを一面に作付けしている。常陸大宮市では、市が率先して有機農業に取り組み、学校給食にも有機農産物を提供している。

県内では農業でゆったりと暮らしている地域もある。鹿行地域や坂東市岩井地区などだ。あちこちの直売所もにぎわっている。ぼやくだけでは何も生まれない。生産者が変わるだけでなく、消費者も変わらなければ、とつくづく考えている。わが国の農業がなくなれば、詰まるところ、国民全体、消費者の皆さんも困るのではないか。法律以前の話だ。(元瓜連町長)

小中学生に野球を指導 筑波銀行野球部 手本見せ、きめ細かく

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子供たちにアドバイスする筑波銀行野球部の選手(右)

関東代表、茨城代表として昨年の国体と天皇杯に出場した強豪の社会人野球チーム、筑波銀行軟式野球部が10日、笠間市の北山グランドで開かれた野球教室で、小中学生を対象に野球を指導した。

同行野球部は東日本大震災後、県内の被災地を中心に北茨城、日立市、大洗町などで野球教室を開催してきたが、新型コロナの影響で中止になっていた。子供たちに野球を指導したのは新型コロナが5類に以降後初めて。

デイサービス事業者のBESLOPE(ビースロープ)が主催し、笠間市近隣の少年団やクラブチームに所属している小中学生計約60人が参加した。

午前の小学生の部は、キャッチボール、ゴロの捕球、正確な送球、走塁の指導をした後に、チームに分かれて打撃を指導した。

筑波銀行の選手(左)から投球のアドバイスを受ける中学生

午後からの中学生の部は、技術力をアップさせるため投手には同行の選手が手本を見せて、ボールの握り、投球ホームなどをきめ細かくアドバイスした。野手には監督がバットを持って指導しながらシートノック、シートバッティング、ベースランニングを行った。

参加した水戸市のサムライベースボールクラブ、村田塁さん(小4)は「筑波銀行の選手が細かい所まで優しく教えてくれて勉強になった。楽しかった」と微笑んだ。笠間市の佐藤志武騎さん(中2)は「レベルの高い選手に教えてもらい良い経験が出来て楽しかった。今日学んだことを6月の中学校の総体に生かして優勝目指し頑張る」と力強く語った。

筑波銀行野球部監督らの話を聞く中学生(手前)

同行野球部でひたちなか市出身(水城高校、常盤大学)の根本拓真選手(25)は「楽しかった。小学生に基本を教えるのは大事なこと。口に出して教えることで自分も改めて基本の大切さを思った。地域の人に支えられているので、恩返しして貢献したいし、子供たちにはこれをきっかけに野球を楽しんで続けてほしい」と話した。(高橋浩一)

今年の高校入試 土浦一受験者が大幅減《竹林亭日乗》14

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雪が積もった筑波山

【コラム・片岡英明】県立高校入試が2月28日にあり、発表は3月12日である。今年は、土浦一高が4学級に募集減、牛久栄進高が1学級増、筑波高が進学コースを設置―などがあり、注目している。

報道によると、土浦一高は募集160人に対して受験が208人で、倍率が1.3倍と高くなった。昨年は募集240人に対して受験283人と1.18倍だったので、倍率は上がった。しかし、受験者は昨年より75人減っている。今回はこの受験者減について考えたい。

土浦一高に附属中学が設置される前の2020年は、320人の募集に対し受験したのは417人だから、今年の受験者は20年の半分である。募集が半分だから受験者減は当然で、その分、競合校の受験が増えたとの見方もある。

そこで、昨年のつくば市在住生徒の県立高進学数を見ると、多い順に、竹園高200人、牛久栄進高129人、土浦二高113人、土浦一高88人だった。ちなみに、この6年間のこれら4校への総志願者数は以下の通りだ。

<定員>
▽2020年まで: 4校とも定員320人           合計1280人
▽2021年:土浦一が中学設置で1学級減280人      合計1240人
▽2022年・23年:土浦一がさらに1学級減240人    合計1200人
▽2024年:土浦一が2学級減160人、牛久栄進が40人増 合計1160人

最近4年で、つくばからの進学者の多い県立4校の定員が120人削減されたことになる。これら定員削減に伴って総受験者数も減少している。

<4校の総受験者数>
▽2019年:募集1280人 受験者1653人 倍率1.29倍
▽2020年:   1280人    1671人   1.31倍
▽2021年:   1240人    1512人   1.22倍
▽2022年:   1200人    1549人   1.29倍
▽2023年:   1200人    1496人   1.25倍
▽2024年:   1160人    1483人   1.28倍

4校の平均倍率は毎年1.2~1.3倍とほぼ一定で、人気校といえる。そういった高校の定員削減によって、受験者が1600人台から1400人台に減少していることがわかる。

志願先変更数からのメッセージ

この受験減から、高倍率の人気校を避けざるをえない受験生の苦労を読み取ってほしい。それは、いったん出願した後の志願先変更にも表れている。

今年の4校の当初志願者数と志願先変更後の差は、竹園16人減、牛久栄進2人減、土浦二12人減(昨年1人)、土浦一14人減(昨年8人)である。

竹園は320人募集に、昨年の395人から40人増加し435人、志願先変更で16人減の419人。牛久栄進は募集が320人から360人に増加したが、受験者が449人から440人に減少。志願先変更では2名減の438人と倍率が低下し、定員増の効果が出ている。

一方、土浦一は募集が240人から160人に削減され、受験者が283人から222人と61名減少。志願先変更でさらに14名減の208人となった。土浦二は320人募集に昨年369人から430人と61人増加したが、志願先変更で12名減少し、418人。土浦一・土浦二の志願先変更数の多さから受験生の声を読み取りたい。

定員削減のために発生した高倍率を避ける動きが竹園・土浦二・土浦一で生まれ、結果として志願先変更で4校の受験者は44人減少した。土浦一には、門を狭めずに地域の伝統校として多くの受験者が集まる魅力ある学校になってほしい。

県には、人気校の定員削減が、全体として今回取り上げた4校の総受験者数の減少につながっていることを理解してほしい。また、受験生がいったん志願した高校を変更するときの心情を受けとめてほしい。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

「勇気を持って次の大きな目標へ」170人巣立つ つくば国際ペット専門学校

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記念写真に笑顔を送る卒業生たち=つくば国際会議場

つくば国際ペット専門学校(同市沼田、東郷治久理事長)の卒業式が9日、つくば国際会議場(つくば市竹園)で行われた。170人の卒業生を前に高橋仁校長は「今日みなさんは憧れの職業へのスタートラインに立った。勇気を持って次の大きな目標へと立ち向かってほしい」とエールを送った。

同校は1997年にトリミングスクールとしてスタートし、県内初の動物分野の専門学校として2006年に開校した。現在は「ドッグトリマー」「ドッグトレーナー」「ペットケア総合」「愛玩動物看護師」「動物看護福祉」の5コースと、22年4月に開設した日本初となる通信制コース「通信制ペット学科(3年制)」に約450人が在籍している。生徒1人に1頭の子犬がつく「パートナードッグシステム」や、隣接のグループ企業による犬のテーマパーク「つくばワンワンランド」(同市沼田)で実習を積める-などが特色だ。

挨拶に立った東郷理事長は「(在学中に)実際に動物にふれあいながら動物への愛情と根気を身につけられたと思う。胸を張って社会へ巣立ってほしい」と卒業生に祝辞を述べた。

答辞を述べる卒業生代表の沼田美里さん

卒業生代表としてペットケア総合コースの沼田美里さんは答辞で、学校生活を「一瞬のように感じたが、充実していた」と振り返った。「新型コロナの5類移行で、これまで規制されていたイベントが通常通りに行われ、楽しみながら学校生活を送ることができた。入学前の高校生活の大分がコロナ禍によって妨げられ、思うようにいかない生活を送ってきたが、その困難な状況を突破し再び学校という場で学べたことは、未来へ向けて力強く進むことの大切さと、今まで当たり前だと思ってきたことが当たり前ではないことを再確認するきっかけになった。多くの方の支えがあって今日を迎えることができた。私たちに真摯(しんし)に向き合ってくれた方たちに感謝を伝えたい」と力強く語った。

式典では、文部科学省後援によるビジネス能力検定3級と共に、日本国内におけるイヌの品種の認定、血統書の発行とともに、公認トリマー、公認ハンドラー、公認訓練士などの公認資格試験の実施と公認資格発行などを行っている一般社団法人ジャパンケネルクラブの別所訓理事長らから、同法人によるトリマーB、C級、ハンドラーC級、愛犬飼育管理士の合格者へのライセンス授与が行われた。式典の最後には、在学中の思い出を振り返る映像が流され、参加した保護者らからも卒業生に向けて拍手が起こった。

妖しい輝き、密林の宝石を紹介 実験植物園で「つくば蘭展」

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色や形もさまざまなジュエルオーキッド(宝石ラン)約30種の寄せ植え

10日から 500点を実物展示

約3000種の貴重な野生ランを栽培し、世界有数の保全施設として知られる国立科学博物館 筑波実験植物園(つくば市天久保)で10日から「つくば蘭(らん)展」が開催される。同園のコレクションから開花中の野生種約200点に、協力団体が育てた園芸品種など約300点を加え、約500点を実物展示する。また今展の目玉として、熱帯雨林の奥で妖しい輝きを放つ「ジュエルオーキッド」について紹介する。

ジュエルオーキッド(宝石ラン)は、葉がきらめいて見える珍しいランの総称。シュスランの仲間を中心に約800種が知られている。漆器装飾の沈金のように葉脈が際立って見えるものや、ビロードのように葉全体が鈍く輝くもの、斑点や市松模様のようなパターンが浮かび上がるものなど、多様な姿がある。

ジュエルオーキッドのパネル展示。拡大写真が、花に吸い寄せられる虫になった気分にさせてくれる

輝いて見えるのは、葉の表面にレンズ状の構造があり、そこで光が乱反射するからだという。だが、何のために輝くかは明らかになっていない。仮説はいくつかある。森の奥に射し込むわずかな光を効率的に利用して光合成をするため、強い光から葉の細胞を守るため、葉を擬態させて動物や昆虫などの食害から身を守るためーなどだ。網目状のものはクモの巣や落ち葉を模したと言われており、斑点状のものは傷んだ葉に見せかけたという説もある。

「ランの魅力の一つは多様性。世界中のさまざまな環境で暮らしており、生き様によって花の色や形、匂いなどもそれぞれ違う。一つ一つの個性を味わってほしい」と、担当研究員で植物研究部多様性解析・保全グループ長の遊川知久さん。今回ジュエルオーキッドを取り上げた狙いについては「何かにフォーカスすることで、今まで気付かなかった面白さが見えてくる。花とは違って、じっくりと眺めながら微妙な違いを楽しんでもらえると思う」と話す。

遊川さん(左)と鈴木さん

ジュエルオーキッドの展示は、正門を入ってすぐの教育棟が会場。特に約30種を集めた寄せ植えは、ラン科の栽培を担当する技能補佐員、鈴木和浩さんの労作だ。「花でも葉でもきちんとした姿を、この時季に良いコンディションでお見せするのが一番重要なこと。小さいものも大きいものも、よく見るとそれぞれに美しい。その多様性を体感してほしい」と呼び掛けている。(池田充雄)

◆「つくば蘭展」は3月10日(日)~17日(日)、つくば市天久保4-1-1、筑波実験植物園で開催。開園時間は午前9時~午後4時30分(入場は4時まで)。会期中無休。入場料は一般320円、高校生以下と65歳以上は無料。障害者手帳所持者とその介護者1人無料。問い合わせは電話029-851-5159(同園)。

展示に先立ち、植物園ボランティアに解説する遊川さん(右端)

阿見町の茨城大学農学部《日本一の湖のほとりにある街の話》21

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イラストは筆者

【コラム・若田部哲】人はパンのみにて生くるものにあらず。しかれども、パン無かりせばそも生くること能わず。

我々生き物に必要不可欠な食物。阿見町にある茨城大学農学部では、食料の生産・品質の向上改善のための様々な研究がなされています。今回、同大国際フィールド農学センターの小松﨑将一教授に、土浦市・美浦村・阿見町―3市町村連携による、生ごみリサイクルによる地域環境改善と食物生産向上の研究について、お話を伺いました。

地球温暖化対策ならびに廃棄物の抑制は、現代における喫緊(きっきん)の課題となっています。そうした中、土浦市の日立セメントでは、生ごみの発酵処理によるメタンガスなどのエネルギー生産と、発酵残滓(ざんし、残りかす)による堆肥生産を行っています。しかし、この堆肥は栄養成分バランスの偏りという問題がありました。

一方、JRAトレーニングセンターを擁する美浦村では、連日大量の馬糞(ふん)が発生し、この成分の地中への溶脱による水質低下などが問題視されていました。

生ごみ発酵残滓に糞を混ぜる

ここで、阿見町・小松﨑教授の出番です。教授は日立セメントの発酵残滓に、鶏糞・牛糞・馬糞をそれぞれ混合し、その育成効果の研究を行いました。その結果、残滓に対し50%の馬糞を混ぜることにより、コマツナの育成実験において、5.9倍の生育向上という目覚ましい成果を確認したのだそうです。

もともとの発酵残滓は、さらに2次発酵をさせれば肥料としての性能は向上するものの、そのためには新たな設備を追加せねばならず、割高なものになってしまいます。それに対し同研究は、発酵残滓に馬糞という地域資源を混ぜるだけで劇的に肥料効果を高めるという、簡便かつ地域が連携して問題を解決していくという、実に素晴らしい内容です。

実学の極みたる農学のお話は、伺いつつワクワクが止まらない、素晴しいひと時でした。余談ですが、つねづね定年退職したら、改めて大学で勉強し直したいと思っています。芸術をやり直す、経営を学ぶなど考えていましたが、農学も素敵だな…と、新たな悩ましい選択肢が浮かぶ取材となりました。(土浦市職員)

<注> 本コラムは「周長」日本一の湖、霞ケ浦と筑波山周辺の様々な魅力を伝えるものです。

→これまで紹介した場所はこちら

13カ国49人が巣立つ 日本つくば国際語学院で卒業式

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卒業証書を手に笑顔の卒業生ら(後列)=山水亭

つくば文化学園が運営する日本語学校「日本つくば国際語学院」(つくば市松代、東郷治久理事長)の卒業式が8日催された。13カ国49人の卒業生が出身国の民族衣装などの上に青いガウンをまとい、学士帽をかぶって笑顔で式典に臨んだ。

卒業生の出身国は中国、ネパール、スリランカ、ウズベキスタン、ミャンマー、韓国、イラン、ガーナなど13カ国。卒業式は同校に隣接する料亭、山水亭(つくば市小野崎)で催され、恩師、在校生、関係者らが見守った。卒業後はそれぞれ大学、専門学校、就職とそれぞれの専門分野に進む。

式典では、精勤賞、皆勤賞の表彰に加えて、筑波大学大学院システム情報工学研究群に進む中国出身のウェイ・マンマンさん(24)が難関大学合格者として表彰された。ウェイさんは2年前に来日、市内の産業技術総合研究所で働きながら同校に通い日本語を勉強した。

筑波大学大学院に進む中国出身のウェイ・マンマンさん

日本語でスピーチしたウェイさんは「学校生活は最初、日本語が分からなくて辛かったが、次第にたくさんの国の方と知り合えて良かった。異なる文化を理解し、多様性を認め、異文化に対するお互いの驚きを語り合ったりするのは、文化の成り立ちなどを理解する上で大変良かった」と語り、「現在産総研で人工知能の研究をしている。大学院でもしっかりと勉強したい。将来、日本で仕事をするか中国で仕事をするかは決めていない」と付け加えた。

東郷理事長は「昨年までは(新型コロナによる)水際対策の影響もあり卒業生が6人だったが、今年は49人とにぎやかになった。来年度はすでに71人の入学が決まっており、日本語学校の需要は拡大している。国際化する社会に役立ちたい」と述べた。(榎田智司)

V奪還へ、春季キャンプ始動 アストロプラネッツ 

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ノックを受ける投手陣

プロ野球独立リーグ、ルートインBCリーグの茨城アストロプラネッツ(本拠地・笠間市、フレンドリータウン・土浦市など)が7日、笠間市民球場で春季キャンプを開始し今シーズンに向けてスタートを切った。

2022年に南地区で優勝を果たしたが、昨年は22勝43敗1分けと最下位に終わった。チームの再建を託されたのは22年から投手兼任コーチとして在籍する巽慎悟(たつみ・しんご)監督(37)だ。「昨年は若い選手が多く、開幕当初から苦戦した。特に栃木にはなかなか勝てず、苦手な球団をつくってしまった。今年は昨年からの若い選手プラス新たな新戦力が加わったので、上手く機能すれば昨年の最下位からの巻き返しを図り、優勝を狙える」と話す。「チーム自体もすごく明るいので不安はあまりなく楽しみ」という。

選手の輪に入りミーティングする巽監督

さらに「ファンの皆さんには開幕からシーズン終了、ドラフトまで1年間楽しめる野球、分かりやすい野球、速い球を投げ、遠くに飛ばすスケールの大きな野球を見せていきたい。見に来てくれた子供たちに『独立リーグってすごい』と思わせる野球をしたい」と語った。

巽監督は08年から8年間福岡ソフトバンクホークスでプレーし24試合に登板、その後はBCリーグの栃木ゴールデンブレーブス投手コーチを経て、現在、茨城の選手兼任コーチ。今シーズンも投手兼任としてマウンドに立つ。

選手に指示をしながらノックをする巽監督

キャンプ初日は海外調整組を除く25人が参加した。ミーティング、ウオーミングアップの後に、投手と野手に分かれて練習し、続いて巽監督が自らバットを持ち実践を想定したシートノックを行った。

巽監督は、キャンプでは練習試合を多く入れたいとする。「実戦の中で自分の力をどう使うか、練習試合の中でチャレンジして、成功するところや失敗するところを何回もトライしてもらうのが目的」だ。

ブルペンで投げ込む浅野投手

昨年チーム最多となる44試合に登板した浅野森羅投手(25)は「昨年はいろんな経験をさせてもらった。右打者に対してインコースを責めきれず打たれることが多かったので、今年は真っすぐのスピードと、右にも左にも強気にインコースに攻めていきたい。自分のピッチングで打撃陣に勢いが付き、火が付くような流れをもってこられるようなピッチングをしていきたい」と抱負を語った。

昨シーズン途中からキャプテンとしてチームを引っ張り全試合に出場した坂東市出身(守谷高校)の滝上晶太外野手(22)は「全てにおいて昨年以上の成績を残し優勝してNPB(プロ野球)入りを目指したい」と意気込みを話した。

打撃練習をする滝上選手

今年のスローガンは「奪取 DASH」。 優勝しドラフト指名を目指し駆け抜ける意味が込められている。

笠間でのキャンプは4月1日まで。翌3、4日は遠征し練習試合を行う。開幕戦は4月6日、埼玉県のレジデンシャルスタジアム大宮で埼玉武蔵ヒートベアーズと対戦する。ホーム開幕戦は翌7日、ノーブルホームスタジアム水戸で、神奈川フューチャードリームスと対戦する。(高橋浩一)

集合写真(海外調整組は不在)

63カ所にミモザ彩る 国際女性デーに関彰商事

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黄色いミモザとラナンキュラスのアレンジメントを前に笑顔を見せる同社総務部の斉藤弘美主任=つくば市二の宮、関彰商事つくば本社1階受付

ジェンダー平等社会の実現願い

3月8日は国連が定める「国際女性デー」。各地で女性の生き方や地位向上について考えるイベントが催される。ジェンダー平等社会の実現を願って関彰商事(本社・筑西市、つくば市、関正樹社長)は同日、県内外63カ所の拠点や店舗に、黄色いミモザの生花を使ったフラワーアレンジメントを飾っている。ミモザは国際女性デーのシンボルとして親しまれている。

国際女性デーの趣旨に賛同し2021年からスタートした。ミモザの装飾は今回で4回目になる。飾っているのはつくば本社(同市二の宮)、東京事務所(千代田区)など9拠点と、グループ会社の自動車販売店「メルセデス・ベンツつくば」(同市研究学園)、「ポルシェセンターつくば」(同市学園の森」のほか、ガソリンスタンドや携帯電話ショップなど54店舗。

総務部の斉藤弘美主任は「彩り豊かなミモザの姿を通して、女性の活躍を願う人が増えるとうれしい。花がある空間は社員同士の会話のきっかけにもつながる」と話す。

同社は女性活躍推進の一環として、女性の積極採用や職域の拡大、管理職登用などを行っており、現在女性役員が2人、女性管理職が21人いる。このほか、子どもの授業参観や体調不良のため年3回の特別有給休暇や有給取得推奨日を設けて社員の有給取得を促すなど福利厚生の拡充も図る。女性社員の育児休業取得率、休業後の復職率はいずれも100%で、女性全員が復職する一方、女性に比べると男性の取得率は少ないという。

斉藤主任は男性の育児休暇の取得率の向上を目標に掲げ「男性社員の取得率の増加が女性の子育ての負担軽減と働きやすさにつながり、おのずとジェンダー平等社会の実現に結び付くと思う」と期待する。 

国際女性デーは1904年、米国で女性労働者が婦人参政権を求めてデモを起こしたことが起源とされており、75年に国連が制定した社会参画と地位向上を願う記念日。イタリアでは女性へ感謝の意を込めてミモザの花を贈る習慣があることから「ミモザの日」とも呼ばれている。(泉水真紀)

マルハラと言葉の豊かさ《遊民通信》84

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【コラム・田口哲郎】

前略

昨今、マルハラなる言葉が世間に流通しています。若者がLINEなどで、文末に句点の「。」をつけるのをためらい、つけられて送られてくると威圧感を感じるというもの。たとえば、やりとりの中で「わかりました。」と送ると、キッパリと言っているように思われて、怒ってるのかな?と心配されることのようです。マルハラと受け取られないように、「わかりました〜」とか「わかりました(^^)」などとソフトな印象を与える必要があるようです。

でも、文末につける絵文字に気をつけて、顔文字を並べすぎないようにしないと、おじさん構文と言われます。「おっけー!!わかったよ〜(^^)(^^)(^^)/」などとついつい過剰に飾り立ててしまうと、若者に揶揄(やゆ)されるのです。オジサンなので、末尾をデコってユルい雰囲気をかもし出したくなる気持ちはよくわかるのです。

あまりに素っ気ないとハラスメントと言われ、マルハラを回避すべく無理してテンションを上げるとオジサンぽいと言われる。どうすればよいのだという気持ちになります。

これは、日本人の繊細さが引き起こすものだとか、若者のナイーブさはいつの時代も変わらないとか、オジサン、オバサンを茶化(ちゃか)す文化は今に始まったことではない(たとえばオバタリアンの強烈なキャラクターやサラリーマン川柳の自虐のセンス)とか、理由はさまざま考えられるし、言おうと思えばなんとでも言える気がします。そしてマルハラについて何を言おうと言い古されていることの繰り返しになるでしょう。

効率化がまねく、文章の簡素化

ひとつこうした現象について思うのは、いくらコミュニケーションツールが変わっても、人間同士の意思疎通の基本は変わらないのだなということ。そして、意思疎通の表現が簡素化されて言わば貧弱になっているということです。

文末に「。」をつけるかつけないか、というミニマリズムが極まるまでに、効率化が進行しているのではないでしょうか。飾り立てることはできても、これ以上は削れないレベルで選択を迫られる。他人と関わることを省エネするために言葉を簡単にしてしまったら、最後に句点の有無にまできてしまった。

紙の手紙ならば、文末につける決まり文句は多彩です。たとえば「時節柄、どうぞご自愛くださいませ」。手紙のやりとりではよく書きますが、LINEの了解伝達ではなかなか書かない文句です。できるだけ用件のみを伝えようというのではなく、相手を思いやる気持ちが定型ながら込められています。

そうすると、「。」で締めくくられていても、マルハラだ!とはならない。心の栄養みたいなものをきちんとつけてあげれば、ひもじくはない。人間の気持ちはカンタンに済まそうとしても思い通りにはならないようにできているようですね。

ごきげんよう。

(散歩好きの文明批評家)

茨城空港の利用客、コロナ前水準に戻る【筑波総研リポート】

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茨城空港の旅客実績

筑波銀行グループの筑波総研が7日まとめた「茨城県経済の現状と展望」によると、コロナ禍の深刻期(2020~21年)に落ち込んだ県内の観光客が緩やかに回復している。

茨城空港を利用した旅客数は、20年春にほぼゼロに落ち込んだが、22年前半に急回復し、23年には月6万人前後と、コロナ前の水準に戻った。国際線が運航されるようになったことも回復に寄与した。

宿泊人数は月45万人泊に回復

コロナ前に月40万人泊前後だった県内宿泊延べ人数は、コロナの影響で20年半ばに月15万人泊近くまで減少したが、昨年11月には45万人泊までに回復した。

筑波総研は旅客数回復について、コロナの終息のほか、県が観光振興策として昨秋から開始した「茨城デスティネーションキャンペーン(DC)」効果を挙げている。県や市町村と観光業者、JRグループが連携して進めているDCが利いているようだ。

住宅着工はコロナ需要の反動で減

県内の住宅着工は減少している。23年の新築住宅着工数は、22年に比べ10.7%減り、1万6345戸にとどまった。コロナ対策で東京のオフィスにリモート業務が導入され、20~21年にはTX沿線に住宅を求める動きが目立ったが、そういった転居需要が一巡したようだ。

筑波総研は「コロナ禍需要の反動減に加え、資材高と人件費高騰による住宅価格高騰が、消費者の持家の購買意欲に影響した」と分析している。

茨城県 住宅着工件数

空き家の活用・除去が今後の課題

今後の住宅需要について、筑波総研は「中長期的には縮小していく」と予想。その理由として、①人口減に伴い世帯数が減少する、②高齢者の単独世帯化が進む―などを挙げ、今後「世帯数と住宅総数の乖離(かいり)が進み、空き家、空き室が増える」と指摘。空き家の活用・除去がこれからの課題になるとしている。(岩田大志)

学食メニューにCO₂排出量を見える化 筑波大

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筑波大学大学会館「筑波デミ」のカーボンフットプリントプロジェクトの学食の様子(筑波大提供)

筑波大学(つくば市天王台)は学生食堂のメニューに2月末から期間限定で、二酸化炭素(CO₂)排出量を表示し提供している。カーボンフットプリント(CFP)という取り組みで、食材を調達し、食事として提供されるまでに排出された二酸化炭素を数値化する。二酸化炭素排出量を可視化し、学生らが地球環境負荷を理解することで、排出量削減につなげる狙いがある。

CFPは、商品やサービスがつくられてから捨てられるまで、生産、加工、流通、消費、廃棄の各過程で排出された温室効果ガスを追跡し二酸化炭素に換算して、表示すること。

地球規模課題の解決や持続可能な未来に向けて学問領域を超えて探索する同大デザイン・ザ・フューチャー(DESIGN THE FUTURE)機構と、学生、学食提供会社などが連携し、大学会館レストラン「筑波デミ」を含む3つの食堂で2月26日から3月8日まで実施している。

同大で学食メニューにCFPを表示する取り組みは、昨年10月開催された同大創立50周年記念イベントのランチパーティーで実施して以来のことで、今回は、同大食堂を訪れる学生や教職員らに向けて、初めて期間を設けて実施する。

CFP表示されるメニューは、日替わり32種と定番10種に及び、3つの食堂で1日3種類程度の日替わり定食や丼ぶりものにCFPが表示されて提供されるほか、医学食堂や1A棟食堂ではそばやうどん、ラーメンなどの定番メニューも対象だ。

CFPの低い学食をランキング形式にして紹介するなど、学生が二酸化炭素排出量を考慮してメニューを選択することもできる。

デザイン・ザ・フューチャー機構長で同大副学長の西尾チヅル教授は「二酸化炭素排出量削減に向けては、脱炭素に関する研究など技術的に進化している一方で、消費者が食料と二酸化炭素排出量を結びつけて考える機会はなかなかない」と話す。

そこで学生が地球環境について考える場を設けるため、まずは身近な学食に目を付け、CFPを表示するプロジェクトが昨年4月から企画され始動した。

西尾教授は「将来的には、消費者によりわかりやすい表示法の模索や、継続的に、期間を設けて運用し、二酸化炭素削減につながる暮らし方の提案ができれば」と話した。

同プロジェクトには学生も参加し、ポスターのデザインや、食堂のテーブルに設置されたポップ案内の作成、CFP表示に併せてカロリーや三大栄養素表示の提案を行うなどしている。

学食メニューのCFP表示は、今年1月に東京大学で期間限定で実施された。海外では、米国、ドイツ、フィンランドなどで環境負荷の低いメニューが提供されている事例などがある。(上田侑子)

◆筑波大の学食メニューにCFPを表示する取り組みは3月8日(金)まで、大学会館レストラン「筑波デミ」、医学食堂、1A棟食堂「TSUKUBA TABLE」で実施。営業時間は午前11時〜午後1時30分まで(月〜金、現在短縮営業中)、医学食堂のみ午後2時まで営業。

病院でも増える外国人の患者《医療通訳のつぶやき》6

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写真は筆者

【コラム・松永悠】ここ1年くらい、電車に乗れば必ずと言っていいくらい、外国人観光客の姿が目に入ります。コロナによる制限がなくなって、さらに円安も手伝って、来日する海外の方が急速に増えていると実感しているのは私だけじゃないはずです。

実は、病院の中でも同じように、コロナ禍前よりも外国人患者が増えています。観光と違って、病気の治療は一刻を争うものです。がんや難病と診断された中国人患者が、藁(わら)にもすがる思いで日本の病院に来ています。

日本の医療機関で中国人患者がどんな治療を受けているかというと、例えば先端医療である陽子線治療、重粒子治療、手術支援ロボットダヴィンチなどを使って行う高度な手術などです。どれも医療機器が最先端だったり、熟練な技が必須だったりするものばかりで、今の中国では同じレベルの治療が難しいのが現状です。

医療通訳という仕事柄、私は日頃から日本の医師と中国の患者に接していて、どちらの気持ちも感想も最前線で見て、感じています。たくさんの不安を抱えながら、日本の医師にていねいに診察・治療をしてもらって、元気になって帰っていく患者もいれば、なかなか見ないケースに奮闘して、一生懸命治療法を考える医師もいます。

私の父が内科の医師でしたので、小さい頃から父からいろんな病気の話を聞いて育ちました。医師というのは人の命を救うのがもちろん仕事ですが、医学への探究心から難病や難しいケースと出会ったとき、絶対助けてあげるという仁の心と、研究したい、経験を積みたいという気持ちもたくさんあると言います。

観光地が混む、マナーが悪いと言ったインバウンドビジネスに対するマイナス意見も出ている中、病院内まで外国人が入って来たら嫌だ!という声も聞こえてきます。正直に言うと、このような意見を耳にするとき、いつも複雑な気持ちになります。

外国人患者がありがたくなる日

医療通訳を介して診察するため、どうしても診療時間がかかってしまうのは事実です。そのため医師が通常通りの診察ができず、日本人患者に割り当てられる時間が減ってしまい、一定の影響があるのは否定できません。

しかし一方で、少子高齢化が進む今、今後、患者の数も減っていくと容易に想像できます。そうなると、病院の経営も厳しくなりますし、病例の数も減っていきます。若手の医師になかなかチャンスが回って来ず、件数をこなさないと上達できない検査や手術もいっぱいあります。そうなってしまうと、医療水準が低下してしまうリスクも出てくるのではないでしょうか。

ここで考え方を変えて、しっかり外国人患者の受け入れ体制を作って、医療通訳もたくさん養成すれば、人を救いながら医師も成長して、さらに病院の経営にも一役を担うと言う流れができたら、外国人患者はありがたい存在になる日も来るかもしれません。

少なくとも、私は養成講師として、これからも良い人材を見つけて、良い医療通訳を送り出したいと思っている今日この頃です。(医療通訳)

<参考> 医療通訳の相談は松永rencongkuan@icloud.comまで。

シクロクロス全日本王者3選手、つくば市長を表敬

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表敬訪問する(左から)織田聖選手、小林あか里選手、山田駿太郎選手

第29回全日本自転車競技選手権大会シクロクロス(1月15日、宇都宮ろまんちっく村で開催)で優勝した、つくば市ゆかりの選手3人が5日、五十嵐立青つくば市長を表敬訪問した。3人は勝利の喜びや来季の抱負などを語った。

3人のうち、男子エリートの部優勝の織田聖選手(25)と、女子エリートの部優勝の小林あか里選手(22)は、市と連携協定を締結している「弱虫ペダルサイクリングチーム」に所属。男子17歳未満の部で優勝した山田駿太郎選手(15)は市立谷田部東中学校の3年生だ。

織田選手は2016年に弱虫ペダルサイクリングチームに加入。同年からつくば市内にある同チームの寮で生活し、筑波山周辺を拠点に練習活動に励んできた。全日本シクロクロスではジュニアの部やU23の部でも優勝経験があり、エリートの部では昨季に続き2連覇を達成した。

ヨーロッパ遠征から帰国した直後で疲れが取れず、ストレスで睡眠の質が悪かった中で臨んだ大会だったが、2週目でトップに立つと、2位に1分40秒の大差を付けてゴール。「連覇できて正直ほっとした。取れてよかったという安心感のほうが強い」との感想。次の目標は全日本3連覇と、ロードレースでも日本タイトルを獲得すること。

小林選手は2022年にチーム加入。夏季は実家のある長野県安曇野市、冬季はつくば市を拠点に活動している。今季はシクロクロスとマウンテンバイクでトップカテゴリー優勝、ロードレースはU23の部で優勝し、3冠を達成した。

「シクロクロスでは今まで一度も勝ててなく、万年2位と呼ばれていた。ここまで来たら後はメンタルの問題、ここで勝つために練習してきたんだという思いで臨み、勝ててめちゃくちゃうれしかった。これからは追われる立場になるが、自信を持って一つ一つのレースを大切に走り、毎回トップで帰ってこられるようにしたい。ロードレースだけはU23のタイトルだったので、来季はトップカテゴリーで優勝し、五輪代表選手にも勝ちたい」

山田選手は4歳からシクロクロスを中心にレースを開始。小5から長野県富士見町を拠点とするマウンテンバイククラブチーム「TEAM GRM」に参加、夏は月1回のペースで長野に通い、地元では小貝川リバーサイドパーク(取手市)や筑波山周辺で練習に励んでいる。「つくば周辺は平地ばかりで登坂の練習ができないが、筑波山はパワー系を鍛えられる貴重な場所」という。

今回、全日本の大舞台で初めてのタイトル獲得には「信じられない気持ちが強かった。レース中に一度ミスして後退してしまったが、自分は粘りが強み。あきらめずに走り、最後にまくって勝つことができた」

今季についてはカテゴリーが一つ上がるので、我慢の1年になることを覚悟しているという。「しっかりと経験を積み、その先の世界を目指したい」

シクロクロスは激しい坂、林間、砂場など変化に富んだコースを走行する自転車競技。県内では土浦、取手、大洗などでレースが開催されている。

弱虫ペダルサイクリングチームは、自転車漫画「弱虫ペダル」のオフィシャルチームとして2014年にシクロクロスチームを発足。2016年からはロードレースを含む総合的なサイクリングチームとして活動する。本拠地つくば市。(池田充雄)

人の幸せを語れるほどの力はありませんが…《続・気軽にSOS》147

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【コラム・浅井和幸】心理相談、居住支援、不登校・ひきこもり相談などなど、様々な相談や支援をしていると、クライアントの役に立てているのかを考えることが多々あります。

役に立つとは何か? その人の希望や目的に近づくサポートをする、苦しみや悩みを軽くする関わりをするということでしょうか。少しでも幸せに近づけるような接し方をするということでしょうか。

幸せとは何でしょうか? 何かを楽しめることや生きる余裕があることでしょうか。それとも今が楽しいことでしょうか。あるいは、死ぬ前に良い人生だったと感じられることでしょうか。

幸せになることは権利でしょうか、義務でしょうか。そして、不幸にはなってはいけないものでしょうか。

まだまだ未熟な私には答えが出ません。迷っているときは、とりあえずの今の人生観で接するしかないと考えています。今の楽しみをあまり損なわないように、それでも、もっと長い目で良かったと思えるように関わりたいと。

幸せが何かということも、何となく生活に余裕があって、ささいなことでも喜べることかなぐらいとしか考えられていません。例えば、空を見上げてきれいだなと感じられるとか、水を飲んでのどの渇きが潤ったとかが、ささいなことで喜べるということです。

人は不幸になる権利もある

繰り返してしまいますが、幸せになることは権利でしょうか、義務でしょうか? 不幸になってはいけないものなのでしょうか。どこまで他人である私が関わってよいものでしょうか。今の段階での私の答えは次のものです。

人は幸せになる権利もあるし、不幸になる権利もある。だから、ある人が不幸になりたいと考えているのに、浅井がそれを邪魔してはいけない。

結果、「浅井には、他人の幸と不幸を判断できるほどの立派な力があるわけではないけれど、自分自身も幸せに近づくだろうなと考えられる方向性は、依頼があれば出来る限りサポートする。だけど、不幸になりたいという人の権利はできるだけ邪魔をしないしようと努力するけれど、手伝うことは避ける」というのが、今の段階での私の答えです。

そこで、周りの人や環境への悪口、暴力、正義や愛の押し付け、人を悲しませたり苦しませたりすること、仕返し、自傷他害…。短期的な喜びを得たいという感覚に振り回された、中長期的な不幸を自分に呼び込む権利を行使していないでしょうか。

老婆心ながら、勝手に心配をしております。皆さんが、支えあい、苦しみや楽しみを共有し、少しでもより良い生活を送ることができることを願っています。(精神保健福祉士)

つくば、満州 地域の歴史をつなぐ写真展 土浦

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写真家の藤村健一朗さん

土浦市中央、公園ビル内のギャラリー「がばんクリエイティブルーム」で、つくば市の写真家・藤村健一朗さん(56)による写真展「ビヨンド・ザ・ウィンドウ(窓の向こう)」が3日から始まった。著しく変化する、近年のつくばの風景を独自の目線で記録する。ギャラリーがある公園ビルは戦後、旧満州からの引き揚げ者が暮らした建物で、空間からも地域の「新・旧」を体感できる場をつくっている。カラー、モノクロ21点が展示されている。

つくばの公務員宿舎を記録する

ギシギシギシ…。すり減る年季の入った踏み板を鳴らして会場の木製階段を2階へ上がると、踊り場の壁に並ぶ、つくばの街並みを写したカラー写真が目に入る。打ち付けられた板で窓がふさがれたり、建物が草木に覆われたりする無人の公務員宿舎や、取り壊された宿舎跡地に建つ真新しい住宅などだ。隣の和室にあるモノクロ写真は、歪んだ鉄骨がむき出しになっていたり、崩れた建物に鉄製の階段が引っ掛かるように残っていたりする解体途中の宿舎が写る。画面の中央には、崩れた外壁に残されたガラスと枠が外れた窓が、こちらを見つめている「目」のようにも感じられる。

以前は居住スペースだった2階和室にはつくばの写真が並ぶ

藤村さんは2020年から、新たな開発が進む筑波研究学園都市の風景を撮り進めてきた。国家プロジェクトとして誕生したこの街には、1980年までに計7755戸の公務員宿舎が建てられ、移住してきた研究者らの暮らしの場となった。今は、空き家が増えて老朽化が進むことから、全体の約7割が解体または解体の途上にある。その跡地には、真新しいマンションや住宅が次々に建てられている。県は、つくばエクスプレス沿線を「新・つくば」と名付け、沿線地域の開発とさらなる移住者の呼び込みに力を入れている。街の景観は大きく変わっている。

日米、戦後の都市開発とのつながり

藤村さんがつくばの風景に関心を持ったのは、妻と千葉県からつくば市に移住して間もない2010年のころだった。夫婦で近所を散歩していると、街のあちこちにある独特の形をした公務員宿舎に興味を引かれた。以前から、建築物や都市の風景を写真に収めてきた藤村さんは、間もなく次々に壊され始める姿を目の当たりにし「今の変化を写真で記録したい」と思ったという。

2階に展示されている公務員宿舎のカラー写真

筑波研究学園都市の成り立ちを調べると、戦後日本の住宅政策との重なりに気がついた。「戦後の日本で不足する住宅を供給したのが『住宅公団』。学園都市をつくったのも同じだった。つくばの成り立ちは、戦後日本の住宅政策とつながっている」と指摘する。

第2次大戦の戦災で多くの都市が焼失した日本は戦後、600万人を超える外地からの引き揚げ者とその後のベビーブームによる人口急増で、深刻な住宅不足に直面した。これに対して1955年に国がつくったのが日本住宅公団だった。各地に大規模な団地やニュータウンを開発し、後に筑波研究学園都市の開発を一手に担うことになる。

藤村さんはさらに、戦後の都市開発と米国の住宅政策の繋がりに行き当たる。米国では1930年代、「郊外」と位置付けられた都市の外側に、大量生産され均質化された家屋が立ち並ぶ大規模ニュータウンがつくられ始める。米国の写真史を学んだ藤村さんは、郊外の人工風景を記録する米国の写真家に引かれていく。今回の作品は、人口増加の過程で、国外でも起きていた「郊外」を巡る歴史に、現在のつくばを位置付け直す試みでもある。

旧満州引き揚げ者が残す

地域史の「新・旧」を知ることができる今回の展示では、会場も大きな役目を果たしている。その理由が、同ギャラリーが入る「公園ビル」の歴史にある。

旧満州からの引揚者がつくった「公園ビル」

同ビルは、亀城公園に隣接する長さ100メートルほどの3階建ての建物で、1階が店舗、2、3階部分が商店主の居住スペースとなり、20軒ほどが連なっている。さながら「長屋」のような空間だ。ギャラリーがある店舗には以前菓子店が入っていて、2、3階に店主が家族で暮らしていた。

公園ビルの前身は、1947年に旧満州からの引き揚げ者らが建てた「急造バラック長屋」だったと、公園ビル商業協同組合の冊子「公園ビル四十五年の歩み」にある。同誌によると、家屋は亀城公園のお堀から霞ケ浦へと続く水路(川口川、現在は暗渠)上に杭をうち建て、杉皮で屋根をふいたものだった。その後、住民が協力してお堀でスワンボートの貸し出しなどの事業を開き、50年には「公園マーケット」として同地にアーケードをつくり、翌年それを組合化、53年4月の桜まつりに合わせて、現在まで続く鉄筋コンクリート3階建ての大きな「長屋」が完成した。

「窓」の先にある自分だけの風景  

今回の展示のテーマは「窓」だと藤村さんはいう。「窓は、外の世界に目を向けるものである一方で、ガラスに反射する自分を映す鏡にもなる」。

それは、外界への視線と自己表現という、写真が持つ二つの性格との重なりでもあるという。展示は室内の1、2階を利用した2部構成。1階では、藤村さん自身の歴史につながる、家族がきっかけとなった「窓」の作品が展示され、2階には、千葉から移住した藤村さんが新しく繋がるつくばの歴史を見つめる写真だ。藤村さん自身が抱く2つの視線を、歴史ある公園ビルの建物が包み込む。

「街には成り立ちがある。人の暮らしがあって、今がある。どうしても『今』を追いがちだけど、歴史を紐解くことで、当たり前の風景の背景を知ることができる」

入り口を入って1枚目の写真に、記者は釘付けになった。それはベージュの額に収められた藤村さん宅の突き出し窓。外の光にガラスが白く輝いているため、屋外の風景を窓越しに見ることはできない。ただ、その光をじっと見ていると、突然壁に空いた異空間への入り口のようにも感じ、吸い込まれそうな不思議な感覚を覚えた。

「窓の先の景色は人それぞれ。普段見ている景色もそれぞれ異なる。ささやかですが、自分の景色に気づくきっかけになれば」と藤村さんはいう。(柴田大輔)

◆写真家・藤村健一朗さんの個展「BIYONDO THE WINDOW」は10日(日)まで。開場は午前10時~午後6時(最終日は午後4時まで)。入場無料。水曜日は定休。がばんクリエイティブルームは、土浦市中央1-13-52公園ビル。詳しくはホームページまで。

半導体戦争の主戦場、台湾から日本へ《雑記帳》57

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菜の花

【コラム・瀧田薫】2021年秋、台湾積体電路製造(TSMC)が、日本の熊本県に新工場を建設するとの報道発表があった。近年、「半導体」は石油をしのぐ重要戦略物資と化し、同時に米中技術覇権争いの最大・最高の焦点にもなっている。「半導体を制するものは世界を制する」といった言葉さえ耳にする。

そのなかで、TSMCの存在感は急上昇し、すでに世界最大かつ世界最先端の半導体受託製造会社である。そのTSMCがなぜ日本への進出を決めたのか。背景にあるのは、「地政学的要因・経済安保」の問題と「半導体関連技術のトレンド変化」である。

米バイデン政権は22年10月に「BIS(商務省産業安全保障局)輸出管理規則」を打ち出し、最先端半導体はもとより、半導体製造装置などの開発・製造に関連する物品の対中輸出を規制した。同時に、NATO加盟国、日本、韓国、そして台湾に、米国の対中政策への同調を求めた。

一方、これに先立つ20年5月、TSMCは米アリゾナ州に工場を建設することを決定したが、経済紙などは米国の圧力に対するTSMC側の苦渋の決断であると論評した。米中どちらとも友好関係を保ちたいのがTSMCの本音であった。ちなみにTSMCはその後、アリゾナで労働者の確保や地元労働組合との関係に苦しみ、アリゾナ工場での生産の開始は25年前半にずれ込むとのプレス発表である。

TSMCの日本進出については、もちろん「経済安保」も台湾有事に対する備えの問題もあるが、TSMCの側が日本進出に乗り気であった点、米国とは事情が異なる。TSMC側に半導体製造技術面で日本に対する期待があるからだ。

TSMC熊本工場建設に巨額補助金

日本国内の半導体事業はこれまで低迷続きだったのだが、半導体の製造技術にパラダイム変化が起きており、これが日本再浮上のきっかけになりそうなのだ。これまで、半導体の性能は、回路の微細化・精密化の技術に支えられて倍々ゲームで伸びてきた。しかし、このトレンドには物理的にも経済効率的にも限界が見えてきている。

これを突破する方法として浮上してきたのが「半導体材料や製造装置関連の技術革新」であるが、これはもともと日本の得意分野なのである。 

TSMCは22年6月、つくば市の産業技術総合研究所つくばセンター内に「TSMCジャパン3DIC研究開発センター」を開所した。この研究所は、3次元パッケージ技術の量産を可能にする技術開発を、日本の材料メーカーや装置メーカー、研究機関との共同研究で推進する。これを成功させて、日本の半導体事業を再生できれば素晴らしい。

問題はこの寄り合い所帯の運営をどう賄うかだ。もちろん、TSMCもただで日本に進出するわけではない。日本政府はTSMC熊本工場の建設に巨額の補助金を支出した。しかし、維持費の補助も必要になるかもしれない。防衛予算、子育て支援、福祉・介護予算、教育・研究支援、災害復興など、今後予想される財政負担は目白押しである。それらとの折り合いをどうするか、政府による説明はない。

裏金作りばかり上手な政治家にこの難問が解けるだろうか。日本の産業、経済の将来が派閥領袖の支配下にある永田町次第ということでは危う過ぎると思う。(茨城キリスト教大学名誉教授)

土浦一高・附属中校長 ヨゲンドラ氏の試み《吾妻カガミ》178

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プラニク・ヨゲンドラ土浦一高・附属中校長

【コラム・坂本栄】茨城県立高校の校長公募で採用されたプラニク・ヨゲンドラ氏が土浦一高・附属中学の校長に就任してからそろそろ1年、副校長時のインタビュー記事「キーパーソン」で紹介してから2年近くになります。2月下旬、所用で土浦一高に行った際、いま何に取り組んでいるのか聞いてきました。

国際性育成と外国留学

「キーパーソン」でも書いたように、インド出身のヨギさん(ヨゲンドラ氏の愛称)が知事と県教育委員会から与えられたミッションは、生徒の国際性育成と外国留学、それから学校改革の3つでした。

国際性育成では、この1年の間に、アメリカ、ドイツ、オーストラリア、インドネシアの学生に来校してもらい、それぞれ1~3日の交流が実現。また、国内のインド人学校を生徒が訪問、台湾の学生とはオンラインで交流したそうです。「外国の学生は自己肯定感が高いことがよく理解できたと思う」と、生徒には刺激になったとの評価でした。

外国留学(1年~半年)は、校長就任2年目の来年度に6人が予定されているそうです。留学先は、欧米のほか、オーストラリア、ニュージーランド。「海外経験をすると世界を見る目が変わる。これらの結果を見ながら今後も出していきたい」と、人数と留学先を広げることに意欲的でした。

ITシステムで進路指導

ヨギさんは日本に来てから金融系企業で仕事をしていたこともあり、学校改革には意欲的です。

「学校はいろいろな情報がすべてペーパーの世界。生徒の進路情報や教員の残業状況などが別々の書類になっており、まとまった形で見られない。この生徒はどの時期に成績が落ちたのか、そのとき学校側がどう対応したのか、などの関連が分からない。各種の情報を一覧できるような管理システムが必要だ」

「土浦一高は進学校であり、毎年(少なくとも)東大に20人、医学部に20人ぐらい入れるには(これが一番のミッション?)、ペーパー文化では結果を出せない。今の進路情報管理では、どの生徒が東大に行ける資質を持っているかよく分からないし、適切な進路指導もできない」

ヨギさんによると、昨年秋、生徒・教員情報のIT化を目指し、県教育委に青写真を提出したそうです。教育委もその必要性を分かっているようですから、早晩、土浦一高が導入する新システムが全県立高に広まるのではないでしょうか。

高1は内進と高入を分離

ヨギさんの話を聞いていて、「えっ」と思ったことがありました。附属中の1期生がこの4月に高校1年に上がりますが、その内進生(2クラス)は、高校1年で今春入学する高入生(4クラス)と「混ぜない」というのです。

内進生と高入生の分離は県教育委の指示によるもので、高1年は別々にし、高2・3年になってから「混ぜる」そうです。こういったクラス分けは土浦一高と水戸一高だけに適用され、附属中を持つ他の県立高は高1年時から「混ぜる」ということでした。

どうして内進生と高入生を分離するのか? 内進生は高1で学ぶ数学を中3で学んでおり、繰り返しを避けるというのがヨギさんの説明でした。県教育委は、土浦一高と水戸一高に絞って、附属中から入った優秀な生徒を特別に鍛える方針と言ってよいでしょう。

「起業家精神を育てたい」

ヨギさんの試みで面白いのは探求学習の重視です。具体的には「弁当工場を立ち上げ弁当を販売するといった事例研究をさせて起業家精神を育てたい」といった内容ですが、国際感覚や起業意欲が将来の仕事に必要というだけでなく、こういったセンス・マインドが生徒の進学意欲も高めると考えているようです。(経済ジャーナリスト)

<参考>

土浦一高&附属中の学校案内2024に掲載されていた3表にリンクを張りました。

出身小学校別生徒数

出身中学校別生徒数

進学先大学名まとめ

地域情報アプリ「つくばinfo」始動 市内に特化

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筑波大生のアルバイトスタッフと代表の山根和仁さん(右)=つくばローカルコミュニティ(同市天久保)

つくば市内の店や企業と、学生ら地域の人をつなぎ、双方向で広告を出したり、働く人材をマッチングさせたりする地域密着型の地域情報アプリ「つくばinfo」がプレリリースされている。4月から正式にスタートする。

合同会社ろーこみ(つくば市天久保、山根和仁CEO)が企画し運営する。インストールの必要がないウェブアプリで、市内住民に対象を絞ることで拡散しがちなネット上の情報をまとめ、ユーザー同士の新たなつながりをつくることを目指している。

すでに筑波学院大学(同市吾妻、4月から日本国際学園大学)、学園中央自動車学校(同市刈間)、NPOリサイクルを推進する会(同市吾妻、高野正子代表)などが登録している。今後さらに登録団体を増やし、発信する情報を増やしていく予定だ。サブスクリプション(定額)の有料サービス。イベントなどの情報も告知していく。

写真付きでイベント情報や求人情報などを掲載できるほか、飲食店などの活用を想定し、15分から120分で自動的に消去される短時間の「今だけクーポン」を配信する機能を設ける。客の予約が突然キャンセルとなった際や、悪天候で客足が伸びない時、閉店間近で売れ残りを割り引きしたい場合などの集客にスポット的に活用できるという。

筑波学院大はオープンキャンパスや入試などの情報を掲載する。同自動車学校は教習所で技能教習を受ける際のキャンセル待ちなどの情報を発信する。リサイクルを推進する会は、年に4回開催しているリサイクルマーケットの告知や、スタッフ募集、活動のPRなどを行っていく予定だという。

筑波大生向けにリサイクル品など販売

同アプリを運営する山根さんは、筑波大生向けにリサイクル品の販売や、エアコン、家電のリースなどのサービスを提供する店「つくばローカルコミュニティ」(同市天久保)の代表。筑波大生物資源学類の出身で、学生だった1995年に大学内でリサイクル市を開催したことをきっかけに、2001年、同店を設立した。20年以上にわたり、後輩である筑波大生たちの生活に寄り添う中で、学内で完結してしまいがちな学生の世界を広げ、外とつなげたいと考えるようになった。

大手SNSや各社ホームページで配信される情報は散逸してしまいやすいが、つくばに対象を絞って地域情報を集約し、地域の情報インフラを整備したいと構想を練ってきた。「情報がめぐることでこれまで接点のなかった人とお店、団体をつなぎ、多くの人やお店が交わることでおもしろいつくばをつくりたい」と話す。年内のアプリユーザー数2500人を目標に掲げる。(田中めぐみ)

◆「つくばinfo」の初期登録料は1650円(税込)。月額利用料は一般サークルと非営利団体は275円(税込)、飲食店は660円(税込)、飲食店以外は770円(税込)。

湖沼市民会議で霞ケ浦と宍道湖の住民が交流《くずかごの唄》136

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イラストは筆者

【コラム・奥井登美子】茨城県主催のシンポジウム「いばらき湖沼市民会議―宍道湖・中海と市民活動について」が2月17日、 宍道湖漁業協同組合の桑原正樹氏も出席して県環境科学センター(土浦市沖宿町)で開かれた。宍道湖・中海住民と霞ケ浦住民の交流は奥が深い。40年前、両方の住民がアオコ問題を提起し、「水の時代」を開いたのである。

1983年に京都で開かれた第1回世界湖沼環境会議プレ会議で、私は地域住民が始めた霞ケ浦流入河川56本の水質調査の報告をした。そして翌年、本会議が大津で開催され、佐賀純一さん(土浦市の医師)が「アオコ河童からの提言」という題で、霞ケ浦のアオコの実情を発表した。

子育て中だった当時の私には、世界中の人たちにアオコを見てもらうだけでなく、匂いをかいでほしいという強い願望があった。その日採取した霞ケ浦のアオコの水を瓶に入れて会場で披露したら、世界湖沼会議全体がアオコの匂いで騒然となった。

宍道湖・中海からも漁民がたくさん参加していたが、湖を淡水化したら水がアオコだらけになってしまい、魚が採れなくなってしまうのではないかという危機感が高まり、漁民を核にした住民運動「宍道湖中海の淡水化に反対する住民連絡会」は、2カ月間で28万人の署名を集めた。

湖の水質保全と漁業の変化

当時の友末洋治茨城県知事に依頼され、霞ケ浦の水を最初に分析したのは義兄の奥井誠一である。当時、彼は東大の「衛生裁判化学」の助教授をしていた。国鉄総裁轢死(れきし)体をめぐる下山(定則)事件、森永乳業の砒素(ひそ)ミルク事件の分析にもかかわった毒物のプロである。

兄と雑談していたとき、「僕は心配しているんだ。アオコがこれだけたくさん発生してしまうと、アオコの毒性について本気になって調査しておかないと、後で大変なことになってしまうんじゃないかと…」。

あれから40年。アオコの発生は抑えられているが、霞ケ浦名物だったワカサギは取れなくなってしまった。今回のシンポジウムでの宍道湖・中海の漁民・住民との新しいつながりが、地球全体の気候の変化に対応した湖の水質保全と漁業の変化に対応できるかどうか、双方の住民に問われている。(随筆家、薬剤師)