土曜日, 12月 27, 2025
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スタッフ向け介護予防体操講習会を開催 つくばの高齢者施設

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体操の実践を交えながら行われた講習会。左端は大田仁史医師

介護スタッフ向けの介護予防体操講習会が5日、つくば市大砂の特別養護老人ホーム「まごころの杜つくば」(大島弘行施設長)で開かれた。地域住民の健康寿命の延伸を目指し、セキショウグループの社会福祉法人関耀会(筑西市、葉章二理事長)が、介護予防体操の普及に取り組む NPO 日本健康加齢推進機構(水戸市、理事長・大田仁史 県立医療大名誉教授)と共催した。

「知って得するシル・リハ体操~老人ホームで実践と講義~」と題した講習会で、県内の医療機関や介護施設にも参加を呼び掛け、同施設のスタッフのほか、県内各地から介護士や介護福祉士、管理栄養士など20人が参加した。

講師として、シルバーリハビリ体操考案者で同機構理事長の大田医師(89)があたり、実践・座学を含め90分の講習会となった。前半は施設の入所者6人も加わり体操の実技が行われた。後半は介護スタッフ向けの実践的な座学と実技となった。

県内の65歳以上の高齢化率は31%で、全国平均を1.7%上回る。シルバーリハビリ体操は、道具を使用せず、時間や場所に関わらず取り組むことができる介護予防体操で、大田理事長らは県内で、体操を普及する指導士養成に取り組んでおり、約20年間で1万人の指導士が養成されているという。

大田理事長は、どうして体操が必要なのかという理由から分かりやすく説明し、「しがみついても立つことが大事」「出来ることはやれる限りやる」「関節や筋肉のケアが大事」など、具体的でわかりやすい言葉で話した。

ひたちなか市の医療施設「フロイデひたちなかメディカルプラザ」から参加した管理栄養士の實松加奈子さん(42)は「おでこを押すなど、今までなんのためにやっていた体操かわからなかったことが先生の説明でよくわかり、運動機能の理解が深まった。この知識をもとに、今後は地域医療のために役に立てていきたい」と感想を述べた。

太田医師は「この体操は県立医療大学の院長だった時に考案した。高齢化社会が加速する中、さらに普及してもらえればありがたい」と語った。(榎田智司)

武蔵も洞窟に籠もった 「ひきこもり」その4 《看取り医者は見た!》31

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写真は筆者

【コラム・平野国美】前回(11月2日掲載)は、「ひきこもり」の要因として、家屋の構造や町の在り方もあるのではないかと、述べました。もちろん、原因はそれだけではないでしょう。

教科書的に言えば、①ストレス:仕事や学校・家庭で受けるストレスが原因で社会との関わりを避けるようになる、②トラウマ: 過去のトラウマが原因で社会との関わりを避けるようになる、③社会的な孤立:友人関係や家族との関係が希薄、または障害によりコミュニティーから孤立してしまう、④身体的な問題:病気や障害が原因で外出が困難となり孤立する―などが考えられます。

つまり、個人の資質と社会や時代の文化背景が複雑に絡み合って、起きているのではないでしょうか。中には、「ひきこもり」から脱却させるのがよいのか、分からない事例も多くあります。この辺りは、私の中でも整理がついていません。

宮本武蔵は熊本市近郊の金峰山にある洞窟に籠(こ)もって「五輪書」を書きました。これも、今風に「ひきこもり」と表現するのか? 籠もって自己を鍛錬していたとすれば、リスペクトされるべきでしょう。今、部屋に籠もってゲームに溺れていたら、批判されることなのか?

「生きづらさ」を感じる現代、価値観が単一化され過ぎたことも問題なのだと思います。今の時代、学歴に価値観を見出そうとするのが普通の親だと思うのですが、他にも様々な価値観があるのに、見えていないのではないでしょうか。

野山に消えた子は?

90代になる患者さんに、「昔は、いわゆる引きこもりはいなかったのか?」と尋ねたところ、興味深い答えがありました。「病気やある種の感染病にかかり、家で過ごす子はいた。それ以外にも、登校拒否的な子供は結構いた」と言うのです。

「戦前は、学校を休んでも大騒ぎにならなかった。続けて休むと、先生から誰か様子を見て来いと言われたが、安否確認のようなものだった。ただ、一緒に学校に登校する途中で、消える子はいた」。その子たちは家に帰るのか?と聞くと、「いや、家には居場所がなかったでしょう。野原や森あるいは川に行って、1人で過ごしていた」

私が不思議そうな顔をしていると、「やつらは私たちには便利でね。腹が減ったときなんか、彼らの後をついていくと、木の実や魚など食べ物が手に入って、非常に助かった」と言うのです。

野山に消えていく子供たちも、生きていれば、目の前にいる患者さんと同い年。その後の人生の軌跡は分かっているはずです。「その子たち、その後はどうなったのでしょう? 就職はできたのでしょうか? 社会からドロップアウトした状態で過ごしたのでしょうか?」と聞いたところ、意外な答えが返ってきました。続きは次回に。(訪問診療医師)

議長に黒田氏、副議長に小森谷氏 改選後初のつくば市議会開会

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議長に選任され就任あいさつをする黒田健祐氏=つくば市役所議場

常任委の副委員長全員が新人に

改選後初のつくば市議会12月定例会議が5日開会し、議長に最大会派、つくばクラブの黒田健祐氏、副議長に市民ネットの小森谷さやか氏が選任された。

委員会委員の選任も行われ、常設されている総務文教、福祉保健、市民経済、都市建設の4つの常任委員会の正副委員長ポストを、いずれもつくばクラブ、市民ネット、公明などの与党系会派が占めた。改選前は野党系会派である第2会派が委員長職の一つに就いていた。

副委員長は4つの常任委員会いずれも与党系会派の新人が選任された。ベテラン市議の一人は「4つの常任委員会の副委員長ポストすべてを、議員になったばかりの新人が占めるのは聞いたことがない」と話す。

本会議では五十嵐立青市長の所信のあいさつの後、議長選が行われ、黒田氏と山中真弓氏(共産)が立候補した。議員28人全員による投票の結果、27対1で黒田氏が選任された。黒田氏は「諸先輩方がつくってきた議会改革の流れを途切れさせることなく、さらなる推進をしたい。議会基本条例の検証、委員会の事務調査の活性化などを、議員の意見をていねいに伺いながら前に進めたい」などと所信表明した。副議長は小森谷氏以外に立候補はなかった。任期はいずれも慣例により2年間となる。

12月定例会議の会期は26日までの22日間。2日目の6日は五十嵐市長が議案22件、報告4件の計26件を提案する。一般質問は13、16、17日の3日間行われ、28人中24人が質問する予定。

改選後の新たな会派は以下の通り。計10会派のうち6会派は一人会派。◎は代表。敬称略。
つくばクラブ(8人)=◎小久保貴史、伊藤文弥、小村政文、黒田健祐、神谷大蔵、五頭泰誠、木村清隆、塩田尚
Nextつくば(7人)=◎飯岡宏之、田代優、市原琢己、樋口裕大、中村重雄、木村修寿、塚本洋二
つくば・市民ネットワーク(4人)=◎小森谷さやか、川田青星、川村直子、あさのえくこ
公明党つくば(3人)=◎渡辺峰子、梅沢尊信、篠内幸代
創生クラブ(1人)=高野文男
日本共産党つくば(1人)=山中真弓
つくばチェンジチャレンジ(1人)=川久保皆実
新・つくば民主主義の会(1人)=酒井泉
ワニナルつくば(1人)=青木真矢
縁粋会(1人)=榊原アリーゼ

委員会の構成は以下の通り。◎は委員長、〇は副委員長、敬称略
総務文教委員会=◎木村清隆(つくばクラブ)、〇渡辺峰子(公明)、樋口裕大、山中真弓、小森谷さやか、飯岡宏之、塩田尚
福祉保健委員会=◎小村政文(つくばクラブ)、〇伊藤文弥(つくばクラブ)、田代優、篠内幸代、川久保皆実、川村直子、木村修寿
市民経済委員会=◎あさのえくこ(市民ネット)、〇梅沢尊信(公明)、青木真矢、酒井泉、中村重雄、黒田健祐、神谷大蔵
都市建設委員会=◎高野文男(創生クラブ)、〇川田青星(市民ネット)、榊原アリーゼ、市原琢己、小久保貴史、五頭泰誠、塚本洋二

議会運営委員会=◎塩田尚(つくばクラブ)、〇神谷大蔵(つくばクラブ)、渡辺峰子、あさのえくこ、小久保貴史、木村修寿、塚本洋二、飯岡宏之
広報広聴委員会=◎川久保皆実(チェンジチャレンジ)、〇青木真矢(ワニナル)、川田青星、梅沢尊信、小村政文、中村重雄、山中真弓、小森谷さやか
予算決算委員会=◎木村清隆(つくばクラブ)、〇篠内幸代(公明)、委員は議長を除く全27人

(鈴木宏子)

2025入試と筑波高の可能性《竹林亭日乗》23

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【コラム・片岡英明】12月になり、受験生も学習に熱が入ってきたころだが、今回は今年度に進学コースを設置した筑波高校を中心に、来年度の県立高校入試について考えたい。

受験生の中間層が私学に流れ、県立高校の2極化現象が起きていたが、県は県立高の魅力アップを図っている。それが、つくばサイエンス高校普通科と筑波高に進学コースを設置する動きである。筑波高の魅力アップは県の県立高づくりの新しい流れといえる。

物価高と私学の高学費のために県立志向が強まり、地元の県立高がそれにどう応えるかが問われている。私学に勤めていた私は、私学助成の増額で保護者負担を軽減し、公私が学費でなく教育内容で選ばれる時代の到来を期待している。

来春、下妻一高の募集定員は1学級減の5学級となる。削られた学級分の生徒はどこへ行くのだろうか? 下妻二高への流れ起き、それに明野高の募集停止が加わり、受験生の間に大きな波が広がるのではないか? その受け皿に、進学コースを設置した筑波高がなるのか? この点がつくばの25年入試のひとつのポイントだ。

この高校の新しい芽

11月28日、筑波高を訪問して校長・教頭先生と懇談し、主に学び・青春・進路の3つの点でお話を伺った。

(1)学校の現状:ここ3年間で在校生が201→212→231と増加。今年は1年生が89人で、進学コースは11人だが、ビジネスコースの志願者が募集定員を越えた。昨年は入学4人以上の中学は5校だったが、今年は秀峰筑波18人、大穂18人、桜8人、下妻東部8人、新治6人、豊里5人、谷田部東4人、竹園東4人―と、8校に増加。125号線沿線を中心に入学地域が広がった。

(2)学習の工夫:ビジネスコースは週30時間、進学コースは火曜・木曜7時間の32時間授業。注目したのは、ビジネスコースも小規模校の特徴を生かして国数英で分割授業やTT(ティーム・ティーチング、複数教員による協力的指導)を行っている点だ。また、全教員が関わる学び直しの時間(TSI)が1年~3年に設定され、ていねいな個別指導を通して学習スイッチが入り、生徒から分かった・楽しいという声が聞かれるという。 

(3)盛んな課外活動:ホームページにたくさんの楽しい写真が載っているが、文化祭や他の行事、そして「つくばね学」で地域に出て、地域の方との交流する姿に笑顔があふれている。北条の祭りへの参加やガマ口上などもユニークな体験である。来年は入学者が増え、部活や行事も豊富になると思った。

(4)進路の可能性:少人数と個別指導の充実で成績も伸びているが、つくばね学の探求が筑波高生の進路を切り開いている。最近、大学も総合型選抜が増えている。これは「自己推薦書に何を書くか」が重要で、失敗も含めて豊かな自分づくりや学びの体験があるかが問われる。地域とつながる体験は、そこでの問いを深めることを通して進路を開く可能性を持っている。

北条の街との絆

筑波高に行くと、いつも北条の街づくりとの絆を感じる。筑波高が地域にとって必要な学校となり、幅広く生徒を受け入れ、現在の定員3学級が4学級になる日は近いと感じた。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

チャリティーサンタ 夢を届けに今年も街へ

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チャリティーサンタつくば支部代表の会沢さん(中央)、ボランティアスタッフの井上さん(左)と原さん(右)

クリスマスイブの12月24日にサンタクロースにふんしたボランティアが各家庭を訪問し、プレゼントを届ける「チャリティーサンタ」が今年もつくばで実施される。一般家庭のほか、経済的な理由や病気などでクリスマスを楽しむことが難しい家庭にも手を差し伸べる企画で、2008年にNPO法人チャリティーサンタ(東京都千代田区)が立ち上げ、昨年までに全国33都道府県で5万人以上の子どもたちにプレゼントを手渡してきた。つくばでは同つくば支部ができた17年から活動みが始まり、「子どもたちに愛された記憶を残す」を合言葉に、社会人や学生のボランティアが今年も夢を届けに街に出る。

2018年から活動に参加する同つくば支部代表の会沢和敏さん(60)は、プレゼントを受け取る子どもの笑顔が心に残ると言う。「私たちも最初は、家庭を訪ねる際に不安や緊張があるが、子どもの純粋な笑顔や、家族の絆を感じる場面に出会うときに、こちらが豊かな気持ちになる」とやりがいを話す。

経済的困難を抱える家庭にも

会沢さんは、つくば支部代表(当時)で創設者の工藤咲希さんを取り上げた新聞記事を読み、経済的な理由でクリスマスを楽しめない家庭が身近にあることを知り、活動に加わった。「クリスマスにはそれぞれの過ごし方があっていい」とした上で、「それでもプレゼントを用意できない家庭の子どもには、クリスマスが厳しい1日になる。楽しみたいのにできないという家庭に対して、なんとかしたいと思った」と振り返る。

チャリティーサンタでは、事前に応募があった一般家庭を訪問し、各家庭が用意したプレゼントを事前にサンタクロースにふんしたボランティアが受け取り、子どもに手渡す。家族から聞き取っていた情報を元に作成した子ども宛てのメッセージも伝える仕組みだ。一方、経済的な困難を抱える家庭に対しては、参加する一般家庭から募る3000円の協力金を元に団体がプレゼントを用意する。集めたお金は、団体の「ルドルフ基金」として無償訪問のための運営費や国内外の子ども支援などにも充てられる。

団体ではその他に、様々な困難を抱える子どもに本を贈るために全国の書店と連携してスタートした「ブックサンタ」や、洋菓子店との協力で誕生日にホールケーキを届ける「シェアケーキ」などの支援企画を行っている。つくば支部では、地域で開かれる子ども食堂などとも協力し、物語を読み聞かせる「パネルシアター」やダンスイベントなども実施している。

サンタクロースにふんするボランティアスタッフたち(NPO法人チャリティーサンタつくば支部提供)

ボランティアとして今年から活動に参加する筑波大4年の原悠子さん(21)は「貧困問題への関心から、つくば市内の子ども食堂の活動に関わったのが参加のきっかけ。ワクワクしている子どもの様子を間近に見ると、こちらが幸せな気持ちになれる。私が子どもの時に、両親が一生懸命、私を楽しませようとしてくれたクリスマスは、特別な日。自分も何かしらの形で子どもたちに喜んでもらいたい」と思いを語る。同じく、ボランティアの同大1年、井上もえなさん(20)は「大学入学前に『ブックサンタ』を書店で見たのがきっかけ。私が大好きだった本の思い出が、今度は違う子どもの思い出になるかもしれないと思いブックサンタに応募した。同じ団体が行うチャリティーサンタにも関わりたいと思った」と話す。井上さんは、途上国の貧困問題に関心があると言い、地域でのボランティア活動を通じて、将来は国際的な子ども支援活動にもつなげていきたいと目標を語る。

つくば支部では今年20人のボランティアによるサンタクロースが、応募があったつくば市や周辺地域で暮らす約20世帯にプレゼントを届ける予定だ。普段は市内の民間企業に務める会沢さんは、仕事の傍で続ける活動について「子どもたちにとってクリスマスの経験はほんの一瞬の体験。だがプレゼントを手渡される時に感じる豊かな気持ちは、子どもたちの中で大きい出来事になりうる。その豊かな気持ちが心に残り、将来彼らが作る未来へつながる何かのきっかけになれば」と言い、「誰かの幸せが誰かの幸せになる、思いがつながるのがこの取り組み。参加する学生たちも含めて、この活動に関わるすべての人が楽しく豊かな時間を過ごせたら」と語る。(柴田大輔)

サンタを呼びたい家庭、受付中

◆NPO法人チャリティーサンタつくば支部では、今年のクリスマス当日のボランティアフタッフの募集は締め切っている。来年度の募集は、2025年10月ごろから受け付ける予定。サンタクロースを呼びたい家庭の募集は受付中。詳細は、団体ホームページへ。また同団体つくば支部では、その他の活動に関わるボランティアスタッフを募集している。問い合わせはメール(tsukuba@vol.charity-santa.com)で。X(旧ツイッター)インスタグラムで情報を発信している。

おいしいベーコンの焼き方《ことばのおはなし》76

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【山口絹記】オトナになってからというもの、朝食を抜くことが多くなった。小難しい理由があるわけではなく、ただ朝が苦手なのだ。とはいえ、30代も半ばを越え、少し健康にも気を配らねばと思い、今年になってから朝食を作るようにしている。

基本的にはベーコンと目玉焼きにトースト、それからヨーグルトだ。これにコーヒーかオレンジジュースがつく。いつもたいてい同じようなメニューだ。

朝からメニューを考えるのが面倒、というのももちろんあるが、実はもう一つ理由があって、祖母が昔作ってくれた朝食を再現したいと試行錯誤しているのだ。ベーコンと目玉焼きとトーストに再現もなにもあるものか、と言われそうなのだが、これがどうにもうまくいかない。

そもそも、素材をそのまま焼くだけ、という料理はたいてい難しい。素材そのものに味が左右されるのはもちろんだが、ただ焼く、という調理法は存外、奥が深い。

サッと作る料理がおいしい

祖母は自分でも公言していたように、あまり料理が好きな人ではなかった。面倒だとケンタッキーやスーパーの刺身を買ってくることも多く、長時間キッチンに立っているタイプでもなかった。

しかし、「こんなものでいいかしら」とサッと作る料理がどうしようもなくおいしい。そして仕上がりは昔ながらの喫茶店のような安定感である。

いろいろなお店でベーコンを買ってきて比べてみたり、しまいには実家から当時祖母が使っていた鋳鉄(ちゅうてつ)の重いフライパンまでもらってきて試しているのだが、いまだにあの味にたどり着けないでいる。安定感とも程遠い。

カリカリのベーコンに、半熟の目玉焼き、たっぷりとバターののったトースト。私が作って朝食に出すと、こどもたちは無言で黙々と食べている。いつか私の味が思い出される日も来るのだろうか。コーヒーを飲みながら、朝からそんなことを考えたりする。(言語研究者)

鳥インフルエンザウイルスを迅速に検出 国環研発ベンチャー第1号

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判定法や機材について説明する大沼社長=国立環境研究所

国立環境研究所(つくば市小野川、木本昌秀理事長)に、初の研究所発ベンチャーが誕生した。株式会社組織の「野生動物医科学ラボラトリー」(大沼学社長)で、鳥インフルエンザウイルスの病原性検出をはじめ、野生動物の各種疾病に関する検査や研究、技術開発を専門とする。先月末、法人登記を完了し、新年1月6日から事業を開始する。

同社は、国環研の生物多様性資源保全研究推進室長が社長となり、資本金100万円で立ち上がった。国環研で開発された鳥インフルエンザウイルスの迅速な検出と病原性判定技術を活用し、感染拡大の早期警戒や防疫対策に貢献するとしている。

野鳥などからの高病原性鳥インフルエンザウイルスの感染は近年、世界規模で拡大しており、哺乳動物への感染事例も見られるようになった。感染症は養鶏産業への経済的な被害をもたらすばかりではなく、生物多様性へも影響を与えかねない脅威となっていることから、環境省では発生を把握するために、野鳥における高病原性鳥インフルエンザの監視活動を恒常的に行ってきた。

鳥インフルエンザを疑われる野鳥の死骸から採取された検体はこれまで、自治体などを通じ国環研に持ち込まれ、病原性の判定を行っていた。検体を卵に接種してウイルスを増やした上で判定するため、従来は最終的に10~14日間かかっていたという。この作業が迅速化できれば、地域の感染拡大の早期警戒や効果的な防疫対策の立案につながることから、大沼室長らが技術開発に取り組んだ。

その結果、卵で増やす過程をなくす2つの判定法を確立した。1つは遺伝子配列の情報から病原性を判定する方法で、3日間で鳥インフルエンザに特徴的な遺伝子配列まで確認できる。もう1つは蛍光色素によって病原性を判定する技術で、1日で陽性か陰性かを判定できる。蛍光色素による判定だと遺伝子データまでは取れないが、これまでの試験で100%の判定精度を得ている。「普通の実験室レベルで判定できることから海外の技術支援などにも使える」と大沼室長はいう。

迅速なウイルスの検出と病原性判定についての技術開発は、ほぼ研究の余地がなくなったことから、社会実装を目指しての企業化を図った。これまでも今後も農水省の所管となる養鶏場での防除には関与しないが、動物病院経由でペットなどの病原性の判定には応えていきたいとしている。

国環研では先にベンチャー支援規程を制定しており、第1号として同社を認定した。研究所内に事務室・研究室を確保し、判定機材の貸与などで企業活動を支援する。支援期間は5年とし、半年ごとに事業が適正に進められているかモニタリングを行っていくとしている。

同社によれば、来年1月から3月にかけては助走期間で、検査スタッフとして当初1人を雇用する。4月以降の初年度については200件ほどの利用を見込んでいる。利用料金は、遺伝子データ提供を含む判定で1検体当たり3万3000円(税込み)になる想定だ。(相澤冬樹)

今年は5人がプロ入り 筑波大蹴球部

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左から、ロアッソ熊本に内定した半代、湘南ベルマーレの田村、大宮アルディージャの福井、ジュビロ磐田の角、水戸ホーリーホックの沖田の各選手

筑波大学蹴球部からプロ入りする5選手の合同記者会見が2日、つくば市天王台の同大大学会館で開かれ、各人が抱負を語った。蹴球部は今季、関東大学サッカーリーグ1部準優勝、全日本大学サッカートーナメント3位、天皇杯本戦では2回戦で当時J1首位の町田ゼルビアをPK戦で破るなど、輝かしい成績を残した。選手たちの次のステージでの活躍が期待される。

J1ジュビロ磐田に内定した角昂志郎選手は東京都生まれ、FC東京U-18出身。身長165cmと小柄だが、圧倒的なスピードと局面を打開できるドリブルが武器のサイドアタッカー。ユース世代の日本代表歴も豊富。「先輩の三笘薫選手(英ブライトン)は同期の山川哲史選手(J1神戸)との1対1で高め合ってきたと聞いて、自分も福井啓太選手との自主練で攻撃の強さを磨いた。自慢のドリブルを発揮しチームを勝利に導きたい」と話す。

J1湘南ベルマーレに内定した田村蒼生選手は千葉県生まれ、柏レイソルの下部組織に9年間所属。圧巻のテクニックで、昨年度の関東リーグベストイレブンに選ばれたサイドハーフ。「狭いところに入ってドリブルでこじ開けてくる、相手にとって嫌な選手」と小井土正亮監督の評。「もっと相手に嫌がられる、ピッチ内で怖い選手になりたい。自分のプレーで会場を沸かせ、もっと見たいと思ってもらえるようになりたい」

J2水戸ホーリーホックに内定した沖田空選手は千葉県生まれ、鹿島アントラーズユース出身。フィジカルの強さを生かし、スピードとパワーでねじ伏せる攻撃的サイドバックだ。今年度は水戸の特別指定選手として、鹿島とのプレシーズンマッチ「いばらきサッカーフェスティバル」などにも先発出場。「縦の推進力が自分の強み。『苦しい状況でもあいつに預けておけば、一人で何とかしてくれる』とチームに思ってもらえる選手になりたい」という。

左から福井、半代、田村、角、沖田の各選手

J2ロアッソ熊本に内定した半代将都選手は宮崎県生まれ。高体連の名門、熊本県立大津高校出身。プレー強度の高さと機動力を誇るパワー系のFWだ。好きな選手は岡崎慎司(元日本代表)。小柄だが誰よりもハードワークして点が取れる。本当はアルバレス(アルゼンチン代表)と言ったら小井土監督に「ふざけるな」と言われたそうだ。「これからもハードワークと強度にこだわり、ゴールやアシストなどの数字も出せるようになりたい」

J3大宮アルディージャに内定した福井啓太選手は埼玉県生まれ、大宮の下部組織に9年間所属。正確なロングフィードやビルドアップ、スピードなども併せ持つ現代的なセンターバックだ。「5人中で一番苦労してチャンスをつかみ取った選手。主将としてトップチームはもちろん部全体をまとめてくれた」と小井土監督。「相手の次のプレーを予測する力など、対人の守備が強み。1年目でスタメンに定着しチームを引っ張るのが目標」と話す。

例年は12月下旬に開かれていたこの合同記者会見だが、今年から全日本大学サッカー選手権大会(インカレ)の開催方式が変更されたことにより前倒しされた。同大会で筑波大はグループステージから出場する(初戦14日、会場は福岡市黒崎播磨陸上競技場 in HONJO、対戦相手は未定)。決勝は28日、宇都宮市の栃木県グリーンスタジアム。プロ内定の5選手らも4年間で最後の日本一のタイトルを目指す。(池田充雄)

物事の要因は一つじゃないよ《続・気軽にSOS》156

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【コラム・浅井和幸】私が代表をしているNPO法人があります。不登校・ひきこもり・ニート問題の解決を目的に活動をしている法人です。そこには、様々な立場の様々な悩みが持ち込まれます。

そこに、ある不登校の中学生の子どもの親からの相談がありました。小学校の時からの不登校で、暴力も少し出始めて、壁にも穴が開いているとのことでした。全てはこの子のせいで家族関係も悪くなり、仕事もうまくいかないとのことでした。全ての原因はこの子にあると。

因果応報という言葉があります。原因があるから結果があるということです。一つの結果はたった一つの原因からなっていると捉えすぎているなと、私は常日ごろ感じています。自分以外の何か一つの悪いところを責めてしまう気持ちも分からなくはないのですが、実際問題として、生活の中で起こる現象はたくさんの要因が絡まって起こってきます。

会社を辞めれば楽になれる。日本だから駄目なんだ。茨城だから駄目なんだ。フィンランドは幸せな国だから、そこに生まれたら自分は幸せだったのに。親が自分を生まなければよかったんだ。結婚さえできれば幸せになれる。金さえあれば何でもできる。

これらは、余裕がないとき、多くの方が感じたり口にしたりすることでしょう。きっかけさえあればという考えも、一つのよい原因があれば全てはよくなるという思い込みからくるものだと思います。ビックバンさえなければ、地球さえなければ、悩みなんてないのにと考えてもしょうがないですよね。

必要条件と十分条件

物事には必要十分条件というものがあります。例えば、ポークカレーは、豚肉・カレールー・水・調理器具・調理でできると仮に定義します。この5つの材料がそろったときにポークカレーが存在するので、どれか一つが抜けてもポークカレーは出来ません(玉ねぎやニンジンなどがあった方がおいしいというのは別の話です)。

豚肉があればポークカレーだとか、水があればポークカレーだとかと話すと、違和感がありますよね。それぞれの物や動きは必要条件ですが、十分条件にはならないのです。十分条件は、ポークカレーならば調理されているとか、ポークカレーならば豚肉が入っている(溶けているもあり?)です。

今現在起こっていることは、どのような材料で出来上がっているのか、大きな影響力がある要因は何かということを捉えることは大切なことです。ですが、もう一つの考え方として、今ある結果が次の材料の一つになるんだという考え方も持てるとよいですね。

あまりおいしく出来なかった肉じゃがの残り物にカレールーを足すと、おいしいポークカレーができるかもしれませんよ。砂糖を入れ過ぎたとか、じゃがいもに味がしみ込んでいないとか、過去の悪い要因を探し出すだけでなく、今あるものに新しい要素を加えることでおいしくなるかもしれません。

また、待つだけでも、じゃがいもに味がしみ込むという改善策があるかもしれませんね。ときには、あえて何もせずに待つことが良策であることもあります。(精神保健福祉士)

関彰商事とハノイ工科大 スポンサー契約更新し寄付金贈呈

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スポンサー更新契約にサインするハノイ工科大のタン学長(左)と関彰商事の関社長

高度外国人材 日本企業での活躍を期待

関彰商事(本社 筑西市・つくば市、関正樹社長)つくば本社で2日、同社が包括連携協定を結ぶベトナム・ハノイ工科大学とのスポンサー契約更新の調印式と、同大が学内に新設する、日本とベトナムの文化交流施設「越日スペース」建設に向けた寄付金の贈呈式が催された。同大からはフィン・クェット・タン学長ら関係者3人が出席し、タン学長は「多くの学生が日本企業で活躍できることを期待している」と述べた。

関彰商事は2016年にハノイ市に事務所を開設し、日系企業への就職を目指すベトナム人と企業を結ぶ「セキショウ ジョブ フェア」をグループの人材派遣会社セキショウキャリアプラスが毎年開催するなど、日本国内企業やベトナムに展開する日系企業に向けたベトナム人の高度外国人材紹介をしてきた。その他にシステム開発、ベトナム進出を検討する日本企業に向けたコンサルティングサービスなどを事業展開している。ハノイ工科大とは、同大への支援を目的としてスポンサー契約を2018年に締結し、同大内でジョブフェアを開催するなど関係を深めてきた。

来社したタン学長らを関彰商事に勤務するベトナム人社員らが迎えた

ハノイ工科大学は、1956年に設立されたベトナム初の技術系総合国立大学で、同国の工学部系大学で最難関とされている。学生数は4万人以上を数える。1学年600人余りが日本語を学び、11月2日と3日に同大で開催されたジョブフェアには2000人以上が参加するなど、日本への関心が高いとタン学長は話す。

「越日スペース」は、より多くの学生が日本に関心を持てるようにと、同大が設立70周年を迎える2026年の開設へ向けて建設が進められる。2階建ての建物で、日本語学習や関連セミナー、文化交流などのイベントが開催される予定だ。

タン学長は「関彰商事とはジョブフェアを始め学生の募集、採用だけでなく、同社が得意とするスポーツアナリスティックやAI分析などの分野で共同研究、開発に取り組むことができれば」と展望を話すと、同社の関社長は「これまでは外国人を採用することで社内に盛り上がりを生む時代だったが、これからは一緒に研究していく時代」だとし、「(日本では)就職希望が東京に集中している。地方に外国の優秀な方に就職してもらいたいという動きは相当活発になる。ハノイ工科大と関彰の関係がさらに深まることを心から期待している」と思いを述べた。(柴田大輔)

減収額は土浦市28億円 つくば市52億円 「103万円の壁」引き上げで試算

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土浦市役所(左)とつくば市役所

所得税の支払いが発生する「103万円の壁」を178万円に引き上げた場合の自治体財政への影響について、土浦市の安藤真理子市長は2日開かれた定例記者会見で、市税収入が約28億円減収になるという試算を明らかにした。一方、つくば市によると同市は約52億円の減収になると試算している。

103万円の壁については、国民民主党が基礎控除などを178万円に引き上げると主張し、石破茂首相が11月29日開かれた衆参本会議で「(2025年度の)税制改正の中で議論し引き上げる」と所信表明している。これに対し全国の自治体の首長からは影響が大きいとする意見が出されている。

土浦市(人口約14万人、今年度一般会計当初予算約576億円)の場合、減収の28億円は今年度予算ベースで個人市民税の約30%、市税全体の12%を占める。地方交付税についても約3億5000万円の減収が試算されるとする。

つくば市(約26万人、1118億円)の場合、減収の52億円は、個人市民税の25%、市税全体の10%を占めるという。

記者会見する土浦市の安藤真理子市長

103万円の壁の引き上げについて安藤市長は「市政を運営する上で大きな影響が出るので(財政運営を)大幅に見直さなければいけなくなる」とする一方「物価が上がる中、働く人の収入が上がり人手不足解消につながるなど市民にとって良いこともある」とし「国には、地方の財源に配慮しながら進めていただきたい」と話した。(鈴木宏子)

牛久入管問題について意見交換 市民団体が年間活動報告 土浦

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報告会で年間活動を報告する田中喜美子代表=1日、土浦市大和町の県県南生涯学習センター

法務省出入国在留管理庁 東日本入国管理センター(牛久市久野町、牛久入管)に収容されている外国人の処遇改善に取り組む市民団体「牛久入管収容所問題を考える会」(つくば市、田中喜美子代表)の年間活動報告会が1日、土浦市大和町の県県南生涯学習センターで開かれ、入管問題について意見交換した。市民や外国人ら約100人が参加した。

集会では考える会が、牛久入管の2024年の被収容者数は、年間で約50人前後ではないかと報告した。2020年のコロナ禍以前は年間で約300人前後だったことから、被収容者数は6分の1にまで減少している。

一方、被収容者は一時的に牛久入管から仮放免され一時的に収容を解除されたものの基本的に「就労禁止」の条件が課せられ、生活費に困窮しているのが実情だという。国民健康保険に加入できないため、仮放免中の外国人が病気やけがで医療が必要になった場合には、高額の医療費負担がかかりさらに生活に困窮する事例があるとの報告があった。

また考える会の会員から、昨年末から今年にかけて、成田空港で入国拒否された外国人難民申請者が牛久入管に収容された事例の紹介があった。報告によると、西アフリカや中部アフリカ諸国から正規のパスポートと正規の短期滞在ビザを持って来日した外国人難民申請者が、成田空港で入国を拒否されたが帰国を拒否したために成田の入管施設に収容。収容後に難民申請をしたが、1カ月足らずで却下されると同時に退去強制令書が発布されて牛久入管に移送されたという。

この件を受けて、伊藤しのぶ弁護士は「空港での当番弁護士制度ができればと思う」と述べ、難民申請者への空港での法的保護の必要性を訴えた。

記念講演する駒井知会弁護士

報告会では入管問題に取り組む駒井知会弁護士が「在日外国人の弁護活動を通して入管法と入管体制を考える」と題して記念講演し、今年6月10日施行された改正入管法について問題点を指摘した。「3回目以降の難民申請者に対して強制送還も可能」とした改正点に対しては「(迫害の危険に直面している人を保護する国際法上の原則である)ノン・ルフールマン原則=メモ1=違反の送還を防ぐためにも訴訟をやっていかないといけない」との姿勢を示した。

また新しく導入された、監理人による監理の下で、収容しないで退去強制手続きを進める「監理措置制度」=メモ2=については「弁護士の守秘義務と入管当局への報告義務との相反がある」と制度自体を厳しく批判した。

同会の田中代表は「今は嵐の前の静けさ。来年は大変な事になりそう」と述べ、改正入管法による悪影響が来年以降本格化することを懸念した。(崎山勝功)

【メモ1】ノン・ルフールマン原則 難民など生命や自由が脅かされかねない人々が、入国を拒否されたり、迫害を受ける国や場所への追放や送還を禁止する国際法上の原則。1951年の難民条約と1967年の議定書で成文化され、日本では難民条約を批准した1982年から発効された。
【メモ2】監理措置制度 監理人が仮放免中の外国人の生活の面倒を無報酬でみる傍ら、「就労をしていないか」「逃亡の恐れがないか」などを監視し、入管当局に報告する制度。通報を怠った場合は罰金刑などが課される。

お遊びに終わった市長退職金投票《吾妻カガミ》197

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記者会見室の電子パネルに掲載された投票結果概要

【コラム・坂本栄】五十嵐つくば市長2期目の退職金をネット投票で決めるというイベントが終わった。各種メディアでも取り上げられ、多くの市民が市長採点に参加するのではと思っていたが、投票したのは1000人強にとどまった。このユニークな試み、お遊びの域を出なかったようだ。

市民受けを狙った仕組み

投票の仕組みは記事「…市民評価で金額決定へ…」(8月26日掲載)に出ている。議会の受け取りは同「可否同数、議長裁決で可決…」(10月4日掲載)、投票の結果は同「ネット投票の評価は62.7点…」(11月12日掲載)を読んでほしい。

私はコラム191「…退職金問題の研究」(9月16日掲載)で、「採点に参加できるのはマイナンバーカード取得を済ませた15歳以上の市民に限られ、しかも市が用意したスマホ上の参入アプリを使いこなせる人だけが対象になる」「マイナンバー嫌いとネット弱者は市長採点に参加できないから、この仕組みの公平性には疑問符が付く」と指摘した。

そして、どうしても市民投票で退職金を決めてもらいたいのであれば、「無作為に抽出した市民3000人ぐらいから何点付けるかを聞き、その平均点を出して決めるべきであろう」と、非ネット・非マイナンバー方式を提案。さらに、4年前の退職金辞退も今回のネット投票も「選挙での受けを狙ったポピュリズム(大衆迎合)の手法だ」と書いた。

市長落第をギリギリ回避

トップの写真でも分かるように、投票者は1048人だけ。15歳以上の投票資格者は21万8721人だったそうだから、0.48%の有資格市民しか投票しなかったことになる。私が提案した無作為抽出3000人規模の3分の1、しかも投票動員など結果操作が可能なこの方法では、62.7点という評価そのものにも疑問符が付く。

笑ってしまったのは、10点刻みの投票者数分布だ。0点=119人、10点=52人、20点=27人、30点=41人、40点=24人、50点=90人、60点=82人、70点=133人、80点=160人、90点=101人、100点=219人。0点と100点に塊(かた)まっている。

五十嵐市長は2期目最後の会見で、投票結果の62.7点が市長選の得票率53%よりも10ポイント高かったことを強調した。有効投票率に占める自票の割合と市長の業績に対する評価点を比較すること自体、ピントがずれている。大学時代の評価方法(優:100~80点、良:79~70点、可:69~60点、不可:59~0点)を思い浮かべ、不可(落第)をギリギリ回避できたのがうれしかったのだろう。

市論操作に使えるツール

五十嵐市長は、多額の予算を投じてマイナンバーとネットを活用する投票システムを構築した。元々、市長選挙で使いたかったようだが、選挙を管轄する総務省に反対され、自分の退職金決定に流用した。上で指摘したように、投票機会の公平性に問題があるようなこのシステムでは、総務省が導入を危惧したのもよく分かる。

問題は、市の施策に対する市民の受け止め方を調べるツールとしても使おうとしていることだ。機会の公平性や回答者の姿勢に疑問符が付くようなシステムで市論を操作し、入手したデータを市政運営の理屈付けに使いたいのかも知れない。(経済ジャーナリスト)

サンガイア ホームで東京Vに連勝

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第3セット、得点に喜ぶサンガイアの川村(左)、浅野楓(中央)ら(撮影/高橋浩一)

バレーボールVリーグ男子のつくばユナイテッドSunGAIA(略称サンガイア、本拠地つくば市)は11月30日と12月1日、つくば市流星台の桜総合体育館で東京ヴェルディ(本拠地 東京都稲城市)との2連戦を戦い、両日とも3-0のストレート勝ちを収めた。これでサンガイアは5勝3敗で東地区4位。次節は7・8日、桜総合体育館でレーヴィス栃木(本拠地栃木県)と対戦する。

2024-25 Vリーグ男子(東地区)レギュラーシーズン(12月1日、桜総合体育館)
サンガイア 3-0 東京V
25-11
25-17
25-18

第1セット、スパイクを放つ松林哲平

サンガイアは10月26・27日の開幕節では3-2、3-1と苦しみながら勝った相手に、今節は2試合とも3-0の完勝。「少しずつチームとしてまとまり、仕上がってきた。2日間で違うメンバーを出して勝てたことも収穫」と加藤俊介コーチ。

セッターでは新人の森居史和が初のスタメン。正セッターの于垚辰は筑波大女子バレーボール部のコーチも務めているため今節はチームを離れ、全日本女子インカレに帯同、筑波大の大会2連覇に貢献した。

初スタメンでフル出場を果たした森居(右)

森居は昨年は順天堂大の正セッターとして活躍、だがインカレ決勝では体調不良のため試合に出られず、チームも準優勝に終わった。「去年からちょうど1年ぶりの運命の日の復帰戦。燃えるような気持ちで臨んだ。立ち上がりはボールがうまく手に収まらないなど試合勘に不安があったが、周りのスパイカーがカバーしてくれてトスを上げやすかった」とこの日の感想。「持ち味である強気のトス回しを生かし、いつもとテンポの違う攻撃をしてくれた」と加藤コーチ。

「森居が初スタメンなので、後押しできるよう頑張った。気持ちが乗っていた」と話すのは梅本鈴太郎。第1セット半ばには強烈なドライブサーブで3本のサービスエースを奪い、チームの9連続得点に貢献。他のプレーも好調だったという。

梅本はこの試合5つのサーブポイントを挙げた

サンガイアは梅本だけでなく、鎌田敏弥や川村駿介らも強烈なサーブやスパイクで得点を重ねた。「ミスをせず攻めるサーブを選手たちに求め、見事1週間で修正してくれた。サーブが機能するとブロックも絞りやすくなり、いい形で守備から攻撃に移れる」と加藤コーチ。東京Vも途中から強いサーブで対抗し、バックアタックも多用して追いすがるが、精度の差がそのままスコアに表れた。

チームトップの12得点を挙げた鎌田

架谷也斗主将は「選手一人一人の努力の結果。全員がやるべきことをやれれば勝つ自信はあった」と話し、次節のレーヴィス栃木戦については「プレシーズンマッチで敗れた相手。チャレンジャーの気持ちで向かっていく」と答えた。(池田充雄)

第3セット、相手のブロックを打ち抜く架谷主将

「キター!」 アイデアを広げて形にするための授業実施 土浦三高

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授業後に、それぞれがアイデアを書き出した「マスオ」を掲げて記念撮影をした

企業製品のデザインを手掛け、多数の特許を出願するなど独自のアイデアを形にするプロダクトデザイナーで、ベンチャー企業「発想法」(東京都港区)代表の黄慶浩さん(33)による、発想力を磨く授業「チート級の発想法体験会」が25日と28日、県立土浦三高(土浦市大岩田)で開かれた。黄さんは「新しいアイデアを生み出すには、ごみくずだと思うようなものも含めて、とにかくたくさんアイデアを出すことが大事」だと語る。

受講したのは同校普通科の1年生約120人。生徒が自ら問題意識を持ち、設定した課題や問いの解決に向けて取り組む「探究」の授業の一環だ。

この日使用したのは、黄さんが開発したA4サイズに近い用紙に横3つ、縦5つのマスが並ぶ「マスオ」という製品だ。蛇腹状に複数のページが繋がっていて、思いついたアイデアをマスに書き入れていく。生徒にはそれぞれ16ページ分が配られた。マスの大きさは、縦が約6センチ、横が約7センチ。正方形型の付箋の大きさに近い。

生徒にアドバイスをする黄さん

授業では、2035年の未来世界を想像し、黄さんが用意した課題をもとに、生徒がそれぞれ具体的な社会的な課題解決の形を考えていく。初めから一つの答えを出そうとするのではなく、思いついたことをマス目にどんどん書き連ねる。連鎖的に思考を膨らませていく中で生まれるアイデアをつかみ取るのが狙いだ。書き出すのは文章にこだわらず、単語やイラストなどなんでもいい。書き出す『量』が大事だと黄さんはいう。ページをめくらなければいけないノートでは見えにくい思考の広がりを、蛇腹にすることでいつでも一覧することができるし、離れたところにあるイメージを矢印や線で繋ぎ合わせることもできる。頭に浮かぶアイデアを付箋に書き出すと、一度に全部を見るには張り出すスペースが必要になる。黄さんが製品開発を仕事にする中で、より自由な発想を手助けするために生まれたのが「マスオ」だった。

AIが出せないオリジナルのアイデアを

「現在は、AI技術の発達により、AIが出せないようなオリジナルの発想が高校生にも求められている」と黄さん。「いきなり大きな答えを出さなくてもいい。考えるハードルを下げてもらいたい。思いもよらないアイデアが浮かんだ瞬間に感じる、『キター!』『うわー!』という喜びがある。若い人たちにもそんな、アイデアを出すこと、ものを作ることへの喜びを感じてほしい。自分が手掛けたもので人が喜んでもらえることも、自分にとっての喜びややりがい」

マス目を利用してアイデアを書き出していく

授業に参加した大海瑞希さん(15)は「自分でも思ってもみないアイデアが出てきた。またやってみたい」と言い、ラハマン・サミハさん(16)は「流れるようにアイデアが浮かんできたのが楽しかった」と笑顔を浮かべた。大山雄琉さん(15)は「初めは2、3個しかアイデアが浮かばなかったが、取り組んでいるうちに一つのアイデアから次のアイデアへとどんどん派生していき『ゾーン』に入ったような感覚になった。今回の経験を自分なりの勉強法につなげていきたい」と思いを語った。

土浦三高ではこれまで探究の授業の中で、土浦の魅力をアピールするために市内の商店を結ぶスタンプラリーを開くなど、設定した課題に対して、生徒自身が解決につながるアイデアを形にしてきた。学年主任の市川真人教諭は「自分の考えを『見える化』しながら思考が進んでいくのを実感できる。自分もやってみて楽しさを感じた。探求の授業は2年生になると、それぞれがテーマを決めて1年かけて取り組んでいくことになり、発想が大事になる。テーマを決めかねている人が多いので、その助けになれば」と語る。(柴田大輔)

つくば駅前の複合施設、開業は来春に 大和ハウス工業

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学園中央通りに架かる陸橋から見た商業ビル

大和ハウス工業(本社・大阪市)がTX(つくばエクスプレス)つくば駅前に建設している複合施設(同市吾妻2丁目)の開業が2025年4月になる。昨年6月の起工時には今年秋の開業を予定していたが(23年5月30日付)、工事の都合により半年遅れ、オープンは来年春に延びる。

地下駅のTXつくば駅上の敷地(7639 平方メートル)に建設している施設は、5階建て商業ビル(延床面積1万188平方メートル)、4階建て同社新茨城支店ビル(同 3337平方メートル)、5階建て立体駐車場(363台分)の3施設から成る。場所は学園中央通りと市立吾妻小学校の間に位置し、TX 終点・始発駅前の超一等地。

中央公園側から見た完成予想イラスト。左奥が商業ビル。左手前がカフェ。右手前が新支社ビル。右奥が駐車場(大和ハウス工業提供)

建物は先進の耐震性能を備え、環境性能を総合的に評価する指標「CASBEE(キャスビー)」でAランクを取得。3~5階のオフィス部分は一次エネルギー消費量を大幅に削減できる設計という。

店舗区画は半分が契約・申込済み

中央通り側の商業ビルはほぼ完成、現在内装工事が進んでいる。1~2 階の店舗ゾーン(賃料は1坪=3.3 平方メートル=共益費込み2万1千円)には、飲食店、学習塾、保育園、クリニックなどが入る。3~5 階の事務所ゾーン(同2 万円)には、100 平方メートル程度の小区画と700 平方メートル程度の大区画が用意されている。

内装工事中の商業ビル3階オフィス

事務所区画にはテラスが付き、入居予定テナントから好評という。建物の壁面に凹凸があり、先進都市・つくば市のイメージに合ったものとなっている。現時点で、店舗区画は約50%、事務所区画は約55%が契約・申込済みという。

商業ビル2階とつくば地下駅はエレベーターで結ばれ、地下から同ビルに傘を差さないで移動できる。また、商業ビルとトナリエクレオ(元西武百貨店)・キュート商業ゾーンは中央通りに架かる陸橋でつながっており、つくば駅周辺の回遊性が一段と高まる。

つくば市内の事業を拡大

大和ハウスグループは、戸建てやマンションなどの住宅、ショッピングセンターやビジネス ホテルなどの商業施設、工場や物流施設などの事業施設を手掛けている。つくば市内では、 研究学園駅前のショッピングモール「イーアスつくば」を運営するなど存在感が大きい。

つくば駅周辺では、商業ビル「BiVi」や「ダイワロイネットホテルつくば」を運営している。また、研究学園駅南側の日本自動車研究所の未利用地(約16ヘクタール)を1年前に取得、分譲マンション、商業施設、研究施設、産業施設などを建設するほか、中高一貫校の茗渓学園(つくば市稲荷前)を誘致する開発計画を進めている(23年10月20日付)。

◆店舗・事務所の問い合わせ先は大和ハウス工業 茨城支店 流通店舗営業所の鏑木さん、西下さん(電話029-852-6170)へ。

女人講中《写真だいすき》34

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この像には、どのような思いがこめられているのだろうか。撮影は筆者

【コラム・オダギ秀】田舎道を行くと、辻に、慈母観音さまの石像がひっそりとおわした。「女人講中(にょにんこうじゅう)」と刻銘してあるから、付近の土地の女性たちが願いを込めて祀(まつ)ったのだろう。江戸時代か明治期か。その昔は、生まれた子が乳幼児のまま亡くなることも多かったし、母体が無事お産をできず死ぬことも少なくなかった。

当時の講とは、いわば無尽講が多かった。と言っても今の人々には分からないだろうが、庶民が決して富裕ではなかった時代、人々は、なけなしの金を講というグループに出資し、抽選など講のきまりに従って全員が出資した金を順次使用できるという、共済組合のようなものであった。

当時の嫁たちは、自分が自由になるものなど持ってはいなかったが、その家がまとまった金を手にしてこられるかもしれないという名目があったから、月に一度とか講の集まりには出席できて、そこで食事などできることが、たまらない楽しみであった。そこでは自分の女としての延命を願い、我が子の健やかな成長を祈願することは、当然のことなのだった。その女性の集まりが女人講中だった。

だから、道沿いの小さな慈母観音さまには、その思いが、限りなく込められているのだった。ボクは雑草をかき分けると合掌し、写真を撮った。

思いや願いを込めた野の石仏

野の石仏には、たくさんの思いや願いが込められていることが多い。多くは仏師の手になるものではなく、近所の石工が、見よう見まね、寺のご住職などに教えられて彫ったものだ。だから、バリエーションも多く、本来の仏像制作からすると誤った像影もある。だが、それでいいじゃないか、とボクは思う。そのような像で多いのは、誰かにいかにも似ているらしい像だ。

たぶん石工さんは、亡くなった子とか像に関わる誰かを知っていて、本人に似せたかったのだろう。野仏には、そのように感じる像が多い。むしろ、それだからこそ、ほほえましい。

田畑の横や隅の藪などに、地蔵さまなどが祀られていることも多い。田畑を作っていた農作業する人々は自分たちの働く姿の見えるところに、あるいは働きながら見守れるところに自分たちの子を置き、働いていたのではなかったか。子が健やかに育つことが難しかった時代には、亡くなることも多かったろう。

それで、子を置いたその場所あたりに子どもを護ると言われる地蔵さまを祀ったのではなかろうか。同じような思いが、女人講中慈母観音さまの石像にも込められているように思う。(写真家、日本写真家協会会員、土浦写真家協会会長)

再認定に向け現地調査 筑波山地域ジオパーク

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日本ジオパーク委員会の調査員2人(左側)にジオツアー形式で地質などについて説明するジオガイド(右)ら=つくば市平沢、平沢官衙遺跡

来年1月、日本ジオパーク委員会が審査

筑波山や霞ケ浦、関東平野などを含む「筑波山地域ジオパーク」で、地質遺産など大地の遺産を保全し活用する取り組みが質・量ともに充実しているかなどについて審査する、4年に一度の再認定審査が今年行われている。審査の一環で28日から日本ジオパーク委員会の調査員2人が筑波山地域を訪れ、30日まで現地視察や関係者へのヒヤリングなどを実施している。合格しないとジオパークの認定が取り消される厳しい審査だ。審査結果は来年1月27日に出される。

28日、日本ジオパーク委員会委員で群馬県立自然史博物館学芸員の菅原久誠さんと、島原半島ユネスコ世界ジオパーク専門員の森本拓さんの2人が現地調査に訪れた。2人は同日、筑波山地域ジオパークを運営する同推進協議会(つくばなど6市の行政、市民、民間団体、専門家らで構成)のジオガイドらの案内で、つくば市平沢の奈良・平安時代の役所跡「平沢官衙遺跡」や周辺の古墳などのほか、同ジオパークの中核拠点として旧筑波東中学校校舎に昨年11月オープンした「つくばジオミュージアム」などを視察した。29日は桜川市内を現地視察、30日は書類審査などを実施する予定だ。

平沢官衙遺跡では28日、同遺跡歴史ひろばを管理し団体客を案内したりイベントを開催するなどしているNPO平沢歴史文化財フォーラムの結束芳彦理事長(71)が、日本ジオパーク委員会の調査員らに同官衙遺跡が保存されるに至った経緯を説明した。「県営住宅をつくる計画があり、遺跡が出たので、県営住宅をつくるか、遺跡公園をつくるか論争があった」とし「国指定史跡となり、今は我々地元民が管理している。年間4~5万人が来て、勉強したり、くつろいだり、散歩をしている。我々も(遺跡として残ったことを)誇りに思っている」などと話した。調査員2人からは「修学旅行も来られますか」「自ら管理しようというのは集落の中から沸き起こったのですか」などの質問が出た。

結束さんは「再認定を受けるため(推進協議会の関係者が)頑張っているので、我々も地元民が誇りに思っていることや、学校教育にも資しているということを話した」などと語った。

平沢官衙遺跡について紹介するNPO平沢歴史文化財フォーラムの結束芳彦理事長(左端)

8つの課題を指摘

筑波山地域ジオパークは2016年にジオパークとして認定された。その後2021年2月に再認定され、今回は2回目の再認定審査となる。審査のポイントは、前回4年前の審査の際に日本ジオパーク委員会から指摘された事項に対応できているかだ。

4年前の指摘事項は①ジオサイトの定義見直しに伴うサイトの見直し➁学校教育との連携③多様なジオツーリズムの在り方の検討④効率的かつ効果的な事務局運営体制の検討⑤適正な予算の検討⑥拠点施設・学習施設の連携⑦相互連携の推進及びパートナーシップの強化⑧看板や展示に関するテクニカルな課題及びアドバイスーの8つだった。

同推進協議会事務局のつくば市ジオパーク室によると、①ジオサイトの見直しについては、これまで「筑波山南麓」「桜川中流」など地域ごとに26のジオサイトを設定していたが、ユネスコ世界ジオパークのガイドラインの再定義に基づいて新たに組み直し、「地質サイト」として筑波山山頂の花こう岩など22カ所、「自然遺産」として筑波山塊のブナ林など8カ所、「有形文化遺産」として平沢官衙遺跡、桜川市の真壁の町並みなど32カ所、「無形文化遺産」としてがまの油売り口上など8カ所、「ビュースポット」として土浦市の朝日峠展望公園展望台など12カ所を今年8月の総会で設定した。伊藤祐二室長によると「これまでのジオサイトはふんわりしたエリアだったが、新たな設定では、どこからどこまでかを区切って設定している。区域を明確にしたので、今後はどう保全していくかについても取り組む」と方向性を話す。「民有地についても、地権者と一緒に保全について考える成功例をつくりたい」と意欲を語る。

8つの課題に対する取り組みとしてほかに➁学校教育との連携では、推進協議会で専門員を雇用し2021年から各学校で出前授業などを実施してきた、⑥拠点施設と学習施設との連携では、昨年、中核拠点施設「つくばジオミュージアム」を整備した。さらに⑦相互連携の推進やパートナーシップの強化では、今年2月、ジオパーク活動で得た知識をもとに、真壁石や稲田石などと呼ばれる筑波山塊の花こう岩を国際地質科学連合のヘリテージストーン(天然石材遺産)に申請し、7月にアジアで初めて認定された。認定を受けて真壁などの石材業者から「バブル以来の盛り上がり」と言われたなど、新たな連携ができたとする。

再認定審査に向けては、現地調査に先駆けて9月15日、筑波山地域の課題に対する進ちょくについて、すでに報告書と自己評価表を提出している。

伊藤室長は「まだできてない部分もあるが、4年間真摯(しんし)に課題に対応してきた。現地調査では、課題について調査員と相談しながら、今後良くなる方向で審査が受けられれば」と話す。(鈴木宏子)

水戸市・台南市友好交流都市締結使節団に参加《令和樂学ラボ》32

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台南市・水戸市促進友好交流協定締結儀式

【コラム・川上美智子】水戸市は11月22日、台湾の台南市と友好交流都市の締結を行った。米国のアナハイム市、中国の重慶市に次いで3つ目となる友好交流都市である。71名の使節団の一人として参加した3泊4日の台南市への旅は、終戦直後に生まれ、大戦の経験がない世代にとって、日本の植民地時代の歴史を学ぶ貴重な機会であった。

フィリピン海プレートにユーラシアプレートが潜り込み形成された台湾島は、東側は衝突で出来た山脈が南北に続き、西側の平地にいくつかの都市が作られている。台湾は、17世紀にはオランダの統治下、さらに1683~1887年は大陸の清朝の統治下に入り、その後の50年間(1895~1945年)は日本の統治という被侵略の歴史をもつ。

今回訪問した台南市は、清朝時代に首都として栄えた名残がレンガ造りの建造物古跡として各所に残されていた。

視察では、統治下で活躍した若い日本人の足跡をたどった。1人は今回の締結のきっかけとなった水戸市出身の飛虎将軍こと杉浦茂峰少尉である。彼は米軍との交戦で戦闘機が被弾し、台南市集落への墜落を避けて離れた畑まで飛ばし、台湾人の婚約者を残して21歳で命を落とした。

地域の人々は多数の台湾人の命を救った恩人・神として、今は街中である墜落地に廟(びょう)を建てた。訪問団は、廟内で戦前の真直ぐな若者の心に涙しながら、「ふるさと」を歌った。

もう1人は、烏山頭ダムや嘉南大圳の水利施設を造った八田與一である。この水路の完成で、この地域は豊かな農業地帯になったという。石川県出身の彼は、東京帝大土木工学科を卒業後、乗船した船が米軍攻撃で沈没し亡くなる56歳まで、30年間を台湾のダム造営、下水道建設、港建設など重要な土木事業に技術者として貢献した。

日本の技術を台湾に伝え実践した彼の偉業は、台湾の馬英九総統により八田與一記念公園として残されており、烏山頭ダムが見渡せる一角に夫妻の墓と銅像が建てられている。遠く離れた地で、志をもって厳しい仕事に捧げた八田技師の生涯には胸打たれた。戦前の日本の教育は、負の面が強調され、あまりよい印象をもっていなかったが、志高く道徳観や倫理観のある人材育成に寄与していたのであろう。

お互いの声で未来のメロディーを奏でよう

台湾は親日家が多いと言われるゆえんは、現在強く求められている非認知能力(忍耐力、自制心、協調性、意欲など)に長けた人材の活躍によるものであった。

国立台湾歴史博物館所蔵品・修身

国立台湾歴史博物館も日本人には必見の場である。原住民と外から台湾に渡ってきた人々や支配国とのせめぎ合いや共生の歴史が展示されている。日本の統治下時の教育勅語や修身などの教科書のほか、強要されたであろう日本の生活文化などが展示されている。台湾には日本から20万人を超える官僚や民間人が移住し、日本化が進められたと聞く。展示された当時の品々が我々に訴えるものは大きい。

台湾の小学生の団体が見学に訪れていたが、侵略された自国の歴史をどのように捉えるのであろうか。博物館は「お互いの声で未来のメロディーを奏でよう」と結んでいる。日本の戦争を知らない世代にも、広島や長崎だけでなく、この負の歴史をぜひ見てもらいたいと思った。

両市の友好が深まるよう、多くの県民、市民が当地を訪れることを切に願っている。(茨城キリスト教大学名誉教授、関彰商事アドバイザー)

自動車盗難被害 つくば市が全国ワースト1 住宅駐車場が5割

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自動車盗難被害に遭った剛健工業の柴田さん。盗まれた車にもドア部に会社のロゴが入っていた

自動車の盗難被害が多発する茨城県内で、県南地域での被害が顕著だ。特につくば市は、10月末時点で年間75件を数え、全国市区町村別でワースト1位となっている。県内で2番目に多いのは38件の土浦市で、両市の合計は2024年の県内自動車盗難件数461件の約4分の1を占める。県警は、市民の防犯意識を高めようと啓発活動に力を入れているが、大きな変化に結びついていないのが現状だ。

「11月9日夕方から11月10日の朝方までの間に、茨城県つくば市筑穂で盗難に遭いました」ー。

10日午後5時、トヨタ・ハイエースの写真と共にX(旧ツイッター)に情報提供を求めるメッセージが流れた。投稿したのは北海道空知郡奈井江町の土木関連会社、剛健工業(浜島剛社長)のアカウントだ。北海道からつくば市内の建設現場に出張中の同社社員が車両盗難の被害に遭った。同社の柴田大輔さん(40)が異変に気づいたのは10日早朝。滞在する市内のアパートから外を見ると、目の前の駐車場にあるはずの車がない。「まさかと思った」と振り返る。すぐに警察へ届けるも、「見つかるか分からない」と言われたと話す。

住宅地での被害が相次いでいる=つくば市筑穂

柴田さんら社員4人がつくばに来たのは今月6日。市内の工場現場で、来年4月末までの予定でフェンスの基礎や縁石ブロックの設置工事にあたるためだった。陸路とフェリーを利用し、2台の車で茨城に来た。被害にあった日、前日は休みで午後9時ごろには就寝し、10日は朝6時に起床した。車内にはドライバーやつり金具、グラインダーなど40万円相当の工具が積まれていた。盗難後は急場をしのぐため必要最低限の工具を買いそろえ、車両は再度、北海道から呼び寄せた。「会社でも盗難は初めて。全く気づかなかった。盗られたのはしようがない」と気持ちを切り替える。

夜間から早朝にかけ連日

県内の犯罪情報を知らせる県警による防犯アプリ「いばらきポリス」によると、11月だけでもつくば市内では他に▽2~3日にかけて妻木付近▽6~7日に陣場付近▽7~8日に小野崎付近▽9~10日に蓮沼付近▽11~12日に学園南付近▽12~13日の間に二の宮付近と、連日、車両盗難が起きている。土浦市内でも今月、都和、神立、真鍋などで発生している。被害に遭うのは夜間から早朝にかけて。乗用車はトヨタのプリウス、ランドクルーザーなどが、貨物車ではトヨタ・ハイエース、いすゞ・エルフなどが被害の上位を占めている。その他にアルファードやレクサスなどの高級車の被害も目立つ。県内では貨物車の被害も多く、盗難全体の約半数が住宅の駐車場などで起きている。

県警ではホームページ(HP)やSNSで啓発活動を行っている(茨城県警HPより)

茨城県は、人口10万人あたりの車両盗難件数が、2023年まで17年連続で全国1位を記録している。首都圏に近く港湾へのアクセスが良いことや、広い土地を比較的安く使用できることから盗難車を解体する「ヤード」がつくりやすいことなどが背景にあるという。盗難車は解体後に部品として国内外で販売されていく。つくばや土浦で特に被害が多い理由について県警の担当課は「被害が増えている県南や県西地域は人口が多く、相対的に車の保有台数が多い」ことだとし、犯罪グループの活動が広域化、組織化していることが検挙を難しくしていると話す。

2022年2月に福島県内で工事用車両を盗んだとして逮捕されたつくば市の自動車整備工の男ら2人は、関東、東北、東海で計280台を盗んだグループのメンバーとみられる。他に23人が同グループメンバーとして逮捕されている。また同年8月に高級車「レクサスLX」を盗品と知りながら取引し、保管した疑いで逮捕された筑西市の自動車整備会社経営の男ら5人は、大阪や愛知で盗まれた高級車約200台を引き取り輸出目的で解体した。被害総額は10億円超に上るとされる。今月7日には潮来市の男ら4人が関東5県で車両110台超を盗み、被害は約1億円に及んでいる。これらの事件は日本人、外国人を含む犯罪グループによるもので、犯行が複数の都府県に及ぶため合同捜査体制が組まれている。

防犯意識向上を

県警は「盗難場所として最も多いのは、住宅等の駐車場で全体の約5割。その他、会社や事務所、月極駐車場、工事現場や資材置き場などが続いている」とし、「犯人は物理的に時間がかかることを嫌う。バー式ハンドルロックや鍵でタイヤを固定するタイヤロックなどが有効。防犯カメラやセンターライトの設置も推奨している。複数組み合わせることでより効果的になる」と、二重、三重の防犯対策を呼び掛け、「個人では費用的に難しいこともあると思うが、防犯意識の向上につなげてほしい」と語る。