日曜日, 4月 20, 2025
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またワースト1 つくば市待機児童数 県全体は減少

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写真はイメージ

県子ども未来課がまとめた昨年10月1日現在の茨城県内の待機児童数で、つくば市は104人、前年同月の116人と比べ12人減少したが、ワースト1の返上はできていない。県全体では前年同月の640人より273人減り、367人と好転した。

2020年10月1日現在

市町村別では、つくば市に次いで待機児童数が多いのは水戸市の87人、次いで那珂市の31人、つくばみらい市の30人など。このほか、牛久市、阿見町が各12人、土浦市が11人など、つくば市を含む県南地区の待機児童数は178人に上り、県全体のほぼ半数に達している。

待機児童の年齢別内訳では、0~2歳児が337人(全体の91.8%)と圧倒的に多く、9割以上を占めた。3歳以上は30人(8.2%)だった。

同課では、待機児童の発生要因の分析として、県南地域の人口増加を伏線に、共働きによる女性の就業率の向上による入所希望者の増加と、マンパワー(保育士)不足が原因と指摘している。

今後の対応については、ハード面の対策として国の保育所整備交付金などを活用し、地域の実情に応じた保育所、認定こども園、小規模保育施設の整備や、家庭的保育事業者の増加を図り、受け皿対策の拡大を進めていくとしている。

またソフト面の対策としては「いばらき保育人材バンク」や保育士修学資金貸付制度など、各種施策を積極的に活用、導入、展開し、「保育人材の確保に取り組んでいく」(同課)としている。(山崎実)

救いの歌詞物語② 罪とゆるしとマグダラのマリア 《遊民通信》14

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涙ティアーズ

【コラム・田口哲郎】

前略

『新約聖書』にマグダラのマリアという女性がたびたび出てきます。マリアというとイエスの母マリアを思い浮かべます。マグダラのマリアは聖母とは別人で、イエスに付き従った女性グループのひとりだったと言われます。ダン・ブラウン『ダ・ヴィンチ・コード』(2003年)などでイエスの妻だったという説も言われますが、詳細は分からない人です。

ですから、マグダラのマリアが聖書に出てくる罪深い女、つまり娼婦と同一視されたり、最後の晩餐でイエスに香油を注いだ娼婦だとされたり、確証はないままに、いつの間にか罪深い女に措定されてしまいました。キリスト教の長い歴史の中で、聖母マリアは純潔の象徴として、マグダラのマリアは罪の象徴として意図的に意味づけられたのではないかというのが現在の定説です。

しかし驚くことに、貶(おとし)められたマグダラのマリアはカトリックでは聖人になっています。罪深いながら回心してイエス・キリストを信じたからです。復活したイエスが最初に現れたのはマグダラのマリアだったとされています。

このマリアが最も感動的に描写されるのは「ルカによる福音書」7・36〜50です。マリアは晩餐の席にいたイエスの髪に香油を塗り、彼の足を自らの髪を涙で濡らして拭きます。イエスはマリアの帰依に「あなたの罪は赦(ゆる)されている」と言います。人間は誰しも罪の意識を負っています。悪事を積極的に行わなくても、いつの間にか犯した罪に苛まれることもある。太宰治の「生まれて、すみません」的な悲しみです。

どうしようもない悲しみはトラウマや良心の呵責(かしゃく)となり自分を苦しめます。マリアはなりふり構わずイエスの足にすがりました。イエスは想像を超える言葉を掛けます。今まで誰がマリアの苦しみに寄り添ってくれたでしょうか。差別や叱責はあっても共感はなかったはずです。孤独で八方塞がりの中でマリアは絶望していたでしょう。

イエスはマリアの罪を背負って赦しました。赦されることで、人は「生まれてよかったんだ」と思うことができます。私は、このときイエスも泣いていたのではないかと思います。乱発される免罪符では効き目はありません。人間はそう簡単に赦せません。赦せるのは神だけなのかもしれません。マグダラのマリアを想い、またひとつの詩が浮かびました。

歌詞「涙(ティアーズ)」

古びた窓から見える
場末の街

ひとりよりふたりがいいなんて
笑わせるね
夜毎変わる恋人は
さびしさだけ置いてゆく

どうして……

だけど、酒場で遭ったあの人は
私のために泣いたんだ

情けの涙に洗われて

初めて心を抱かれたの
初めて心を抱かれたの

ごきげんよう。

草々(散歩好きの文明批評家)

桜川沿いに交流拠点を 24-25日つくば 長屋門の古民家で「市」

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つくば市大、塚本さん宅=市(ichi)事務局提供

江戸末期に建てられた長屋門を構える、つくば市栄地区の塚本康彦さん宅(同市大)で24、25日、地域交流イベント「ICHI 市 in 栄」が開催される。

土浦市から桜川沿いを遡上し筑波山に至るサイクリングコース「つくば霞ケ浦りんりんロード」に沿って、古い街並みや景色の中から、休憩や交流のできる拠点を創出し、コミュニティーを醸成しようと考えられた。今回が最初の試みとなる。

主催は茨城県建築士会筑波支部(長瀨行弘支部長)。「市」の発案は、同支部内で交流しているサイクルスポーツのポタリングから始まった。

有志の一人であるつくば市の茂垣直樹さん(建築設計事務所「m・style」代表)は「将来的には小田地区や北条地区にも同様の拠点と催事を実現し、観光を兼ねて地域の特産品を知り、地元の人々と交流できる機会を創出したい」と趣旨を説明する。

市(ichi))ポスター=同

「市」は、同支部の有志が企画する。塚本さん宅の庭先を中心に飲食・物販のマルシェを設営するほか、会として日常進めている耐震・空き家相談会も催す。

約20の出展者が協力し、地元産の食材を使ったランチの提供や農作物の販売が予定されている。筑波支部ではトートバッグづくりなどの行事も準備している。

現地で設営の段取りを進める土浦市の矢口明子さん(建築設計事務所「present」経営)は「栄地区の魅力を食と農と暮らしの視点から発信したい」と意欲を見せる。同地区の歴史や文化を地域の人に話してもらう講座や、染色・草木染め体験、桜川漁業協同組合による桜川に生息するナマズの展示なども予定している。(鴨志田隆之)

◆「ICHI市 in 栄」は24日(土)、25日(日)いずれも午前10時から午後4時まで開催(雨天決行)。両日とも臨時駐車場は近隣の心福寺境内が充てられるが、台数に限りがあるため、支部は乗り合わせや公共交通機関利用を勧めている。詳しくは同会ホームページへ。

シン・住民がやって来る 《映画探偵団》42

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イラストは筆者

【コラム・冠木新市】1993年、「今度つくばに引っ越して来た新住民です」と地元の方に挨拶したら、「新住民は私で、あなたは新新住民ですよ」と訂正された。つくばの歴史を実感させられた瞬間である。だからか、2005年につくばエクスプレスが開通し、移住してきた人を見たとき、「あ、新新新住民だな」と思った。2021年の現在、中心市街地はマンションと住宅の建設ラッシュだ。私は次に来る人たちは、シン・住民なのだと考えている。

シン・住民は、AI中心のスマートシティやスーパーシティを期待する人か、自然中心の自給自足リサイクル社会を志向する人か、気になるところではある。だがそれよりも、シン・住民にとって、センタービルは老朽化した建物に映るか、歴史的文化財アートに映るか、どのように見えるのだろうか。

1983年、世界的注目を集めたつくばセンタービルの住所は、新治郡桜村大字花室字千上前1364番地で、村の中に建っていた。40年ほど前の村人はセンタービルをどう眺めたのだろうか。村の誇りと感じたのか、それとも無関心だったのか。このあたりが調査不足で盲点だった。

三船敏郞主演『七人の侍』

急に『七人の侍』(黒澤明監督)を見る気になったのは、それがきっかけだった。村人の思いを知りたかったからだ。少し見るつもりで見始めたのだが、結局3時間27分全編を一気に見てしまい、改めて世界映画史上の名作だと思った。

『七人の侍』は、戦国の世に百姓たちが侍を雇い、村を襲う野武士の群れと戦う話だ。侍のリーダーは負け戦さ続きの不運な初老の男・勘兵衛(志村喬)。他の6人もしがない浪人暮らしである。この侍たちが金にも名誉にもならない命懸けのボランティア仕事を引き受ける。表向きは侍が主人公だが、物語上は百姓が主人公といえる。侍は戦いのアドバイザーであり、戦いの主体は百姓たち。百姓たちの描写がリアルなため、侍たちの魅力が一層引き立つ仕掛けである。

中盤のクライマックスは、侍の菊千代(三船敏郞)が、百姓たちの隠していた武具を見つけ、勘兵衛に持ってくる場面。侍たちは急に沈痛な面持ちとなる。それらは落武者狩りの戦利品で、侍たちは落武者として追われた経験があった。

侍の1人が「この村の奴らが斬りたくなった」ともらす。すると突然、菊千代が侍たちに向かい、「百姓ほど悪擦(わるず)れした生きものはねーんだぜ。正直面してすぐ嘘をつく! けちでずるくて人殺しだ! だがこんなけだものを作ったのはお前たちなんだよ!」と、涙を流しながらわめきたてて百姓と侍の両者を猛烈に批判するのだ。勘兵衛の目に涙がにじむ。菊千代は百姓出の偽の侍だった。

『つくばセンター研究会』

センタービルのリニューアルを他の人はどう受けとめているのか知りたくて、『つくばセンター研究会』なる場を設けてみた。3月17日に8名集まったが、意見を聞くよりも前にリニューアルの件を初めて知った人が3入もいて驚いた。

4月4日の2回目には10名集まった。「エスカレーター2基はいらない」が私の主張だが、あってもなくてもいいという意見もあった。話題は、まちづくりや県と市の連携などへと広がったが、何よりも問題は話をする場が全然なかったことだなと思った。新型コロナがあったからかもしれないが、それを理由に市民を置いてけぼりにして、ドンドン改造計画を進めることはいかがなものであろうか。

2023年のセンタービル40周年記念に向けて、記録映画製作とつくばセンターツアーを計画中だと話したところ、参加者が「ある美術大学で40周年企画の検討が始まっている」と教えてくれた。今では旧住民となった私だが、これからは菊千代の立場で、やって来るシン・住民のための良きアドバイザーを探すつもりでいる。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

新制服の1期生80人 土浦一高付属中で初めての入学式

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決意を述べる新中学生、坪井綾南さん=土浦一高体育館

茨城県立土浦第一高校(中澤斉校長)に併設された付属中学校で初めての入学式が7日、土浦市真鍋の同校体育館で行われた。1期生は80人、高校全日制への新入生280人とそろって、新制服で緊張の式典に臨んだ。開校宣言で大井川和彦知事は「世界に目を開き、世の中の役に立つ使命感をもって努力してほしい」と励ました。

付属中学校の開校宣言をする大井川県知事=同

入学式は中学、高校合同で行われた。制服は今年度からの新デザイン、女子はネクタイ、リボンを採用するなど一新した。式では最前列に新中学生が、次に新高校生がクラスごとに並んで着席し、保護者らに見守られた。大井川知事の開校宣言の後、生徒一人ひとりの名を呼びあげての入学許可、校長式辞、新入生代表の決意表明と続いた。

中澤校長は「主体的・能動的にチャレンジするのが”一高スタイル”。中学生もいち早くこの校風を身につけ、探求心を持って学習プログラムに取り組んでいってほしい」とあいさつした。新中学生では坪井綾南さんが伝統校への入学に身の引き締まる思いを語った。

地域と世界に役立つ人材育成

1897年設立の旧制中学に始まり、創立125年目を迎える県南きっての伝統校にも「教育改革」の波は押し寄せ、併設型中高一貫教育校としての設置となった。県立中高一貫教育校としては今春、水戸一高付属中も開校しており、合わせて10校を数える。土浦一高付属中では特に「東京圏の私学などに流出していた優秀な人材を確保して」(中澤校長)、6年間の計画的・継続的な教育活動によって地域のリーダー、世界に飛び立つ人材の育成を目指すとしている。

初年度にもかかわらず、入学者選抜の志願倍率は3.1倍に達し、地域の進学ニーズをとらえた形になった。思考力や判断力をみる適性検査やグループ面接などにより「狭き門」を突破した80人の内訳は男女各40人、地域的にはつくば、土浦、牛久3市からの入学者が大半を占めた。

一貫校の指揮をとる中澤校長は同高OBで、今春赴任した。国際化を意識した「グローバルラーナーズ(Global Leaners)プロジェクト」は中高通してのテーマ。中学校では珍しい「1時限60分」の時間割を採用、あらゆる教科を通じて英語教育の要素を取り入れていくという。「中学生に60分間の集中力を求めるのは厳しいが、何事につけ早めに身につけていくことが重要になる」と共に挑戦する構えだ。(相澤冬樹)

入学式の後、各教室に向かう新中学生=同

身近にある?人生の楽園 《続・平熱日記》83

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【コラム・斉藤裕之】斜め向かいのお宅。「ハクちゃん」と名付けた白い犬との散歩から帰ってきたとき、駐車場にバックしている若葉マークの車を見守るお母さんと出会った。

「免許とったんですねえ」「そうなんですけど、娘の運転、怖くて」。車を運転しているのは、小学生のときにうちに絵を描きに来ていた女の子だ。

生活の足しにと、難色を示すカミさんを説得して絵画教室を開いたのは10年ほど前か。そして、この春に3人の小学生が卒業を迎え、最後に残ったひとりが3年生のミーちゃん。ひとりでは寂しかろうということで、この際教室を解散することに決めた。いろんな子がいたなあ。電車オタク、まんが大好き、天才、おしゃべりな男子…。

そういえば、先日、土浦で小さな展覧会を開いたリサちゃんもうちに来ていた子だ。大学で地質や気象を学び、研究のために訪れた日本や世界各地の思い出を絵にしたためて展示していた。元々の才能に加えて、彼女の見たい世界が素直に描かれていてよかった。リサちゃんは、この春から高校の理科の先生になるというが、ぜひとも絵を描き続けてほしい。

ところで、「ミーちゃん好きなテレビはなに?」と聞いたことがある。「…人生の楽園!」「あんた、シブいな!」。確かに、ミーちゃんは絵を描くのも好きだけど、マッチを擦って薪(まき)ストーブに火をつけたり、木をくべたりするのが大好き。ミーちゃんには、この教室は「小さな人生の楽園」だったのかもしれない。

「食べられる粘土細工、ピザ」

コロナの影響も重なってか、都会からやや近郊のゆったりとした環境に生活の拠点を移す傾向があるとか。また若者の間で小屋暮らしや1人キャンプなんてのも流行(はや)っているそうだ。ペストが流行ったときのように、つまり人間回帰、「ルネッサンンス!」的な時代の流れの始まりか。

さて、最後の教室の日。ミーちゃんのリクエストと卒業生の門出を祝って、教室の名物となった「食べられる粘土細工、ピザ」を薪ストーブで焼くことにした。そもそも子供たちに絵を教えようと思ったこともないが、美味しいピザは必ず一度は食べさせた。なんともふざけた絵画教室だった。

こうして、なんとな~く、サイトウちゃんの絵画教室はお開きとなったわけだが、ミーちゃんの心残りは野良だったハクちゃんが懐いてくれなかったこと。

春の始まり。暖かい日差しの中、ハクちゃんと散歩に出かける。「サイトウちゃーん!」「はて、どなた?」。ハクちゃんを優しく撫(な)でるうら若き女性、それはミーちゃん。そんな日が来るといいね、ハクちゃん。楽園は意外に身近にあるのかもしれない。(画家)

車いすから見た世界を描くライター、川端舞さん

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川端舞さん

「障害者として堂々と生きていきたい」

そう話すのは、重度障害のあるライター、川端舞さん(29)だ。NEWSつくばでコラム「電動車いすから見た景色」を連載、市民記者としても活動し1年が経った。介助者のサポートを得て営む一人暮らしは11年目を迎えた。ありのままの自身の経験や日々の出来事を発信し、障害について考えるきっかけを読者に投げかける。

言語に障害があっても話していい

言語障害のある人は、「(自分は)話さないほうがいい」と思ってしまうことがあるという。自身も言語に障害のある川端さんは、積極的に発言することで、誰もが気楽に話せる社会を作ろうとする。

原稿執筆のため資料をあたる

川端さんは生まれつき脳性まひによる障害があり生活に車いすが欠かせない。手足とともに口の筋肉や舌がうまく動かないことから、思うように発音することが難しい。会話によるコミュニケーションへの悩みを、以前は書くことで補っていた。荷物を出しに行く郵便局や買い物先の商店で、緊張する胸の内を隠しつつ、必要なことを書いた紙を相手に差し出した。話を聞いてもらえないのではないかと心配する言語障害のある人は多いという。だから川端さんは「会話」にこだわる。

「初めから聞き取れないと諦められることが一番辛いです。私が話しているのに、介助者と話し始めてしまう人もいます。『話してるのは私なのに』って思いますよね。聞き取れなければ、気を使わずに何度でも聞き返してもらえたらうれしいです」

朝、介助者と自宅を出る準備をする

群馬でがんばってきた

群馬県出身の川端さんは、周囲のサポートを受けつつ地元の普通学校に通った。教室に障害のある生徒は川端さんだけだった。重い障害のある多くの子どもは特別支援学校や特別支援学級に通学し、一般生徒と分けられるからだ。

「周りに迷惑をかけてはいけない」「友達に手伝ってもらってはいけない」と学校で教師に言われていた。川端さんの言葉を聞いてくれない教師もいた。周りに迷惑をかけたくないから「言語障害のある自分は話しちゃいけない」と思ったし、「障害者は勉強ができないと見捨てられ、普通学校に通えなくなる」と本気で思っていた。

歩行器を使う小学生の川端さん。「頑張っていた時代です」と振り返る

一生懸命勉強し、筑波大学に進学した。筑波大は障害のある学生へのサポートが整うことから母親も勧めていた。進学を機に大学宿舎で一人暮らしを始めた。福祉事業所から派遣される介助者が家事をサポートし、大学では学生同士が支援し合う制度を利用した。ただ、人の手を借りるのが嫌だったから、大学の制度は使わなくなった。「自分のことは自分でやらなければいけない」という考えが、川端さんを縛っていた。

「障害のためにできないことがあるから学習で補わないと、どの会社にも雇ってもらえず、お金も稼げない。つまり社会で生きていけない」と思っていた。大学卒業後は大学院に進学し同大で勉強を続けた。

大学院時代、半年休学してアメリカへ留学した。部屋には友人から送られた色紙が飾られている

つくばで出会った自立生活

「なんで一人で食べてんの? そんなの迷惑だからやめろよ」

衝撃的な一言だった。川端さんが現在メンバーとして活動するつくば市の「自立生活センターほにゃら」を大学院時代に訪ねて食事について話した時、重度障害のあるほにゃらメンバーから投げかけられた言葉だ。自立生活センターとは、障害者の生活を支援する当事者団体で、障害者が運営の中心を担う。

自立生活センターほにゃらの事務所

それまで川端さんは、スムーズではない自分の手を使い食事をとっていた。時間がかかっても、自分のことは自分でやるべきだと考えていたからだ。だがここでは「できないことは自分でしなくていい」というのだ。大事なことは、自分で行動を決めること。それを介助者に伝えて代わりにやってもらえば、障害者が自分でしたことと変わらない。それが「自立生活」なのだという。そして、こうも言う。

「川端さんが自分で食事をとることで、他の障害者もできないことを自力で無理してやる状況が続いてしまうでしょ?」

真逆の価値観だった。

食事介助によって周囲と会話する余裕ができた

ほにゃらのメンバーとなった川端さんは、「どんな障害があっても、自分らしく暮らせる社会」をつくる活動に関わり、自立生活する大勢の重度障害者と出会った。健常者の中で生きてきた川端さんにとって、初めてのことだった。

知的障害のある人との出会いは、群馬時代の同級生を思い起こさせた。同級生は特別支援学級に通学していた。普通学級の川端さんは当時「勉強できる自分は、彼(彼女)とは違う」と差別していた。「私は授業についていけないと見捨てられる。見下される側になるという恐怖感を抱いていました」と当時を振り返る。

普通学級に通っていた高校のクラスメイトとの思い出

多様な障害のある人々と出会い「学校の勉強だけがすべてではない」と気付いた。そして、「苦手なことは周囲に手伝ってもらえれば、どんな障害があっても社会で生きていける」と思い至ると、自分の心を縛っていた恐怖感から解放された。

障害当事者として活動に力を注ぐため、大学院は退学した。同じ教室に障害のある子どもとない子どもが一緒にいられる環境こそが、全ての子どもが無条件に「ここにいていい」と安心できる場所だと考える。そんな社会が当たり前の社会にしたいと思い活動を続けている。

大学院を辞めたときに送られた「退学証書」

自分もお金が稼げると自信がついた

昨年10月、川端さんの取材に立ち会った。その日は車いすに乗る障害者やその支援者ら約40人がつくば市内をデモパレードし思いを訴えた。パレードが終わり、川端さんが参加者にインタビューする。ゆっくり丁寧に質問を投げかけ返ってくる言葉を介助者がノートに書き取っていた。伝わりにくい言葉を介助者が「通訳」することもあったが、川端さんが自分の言葉で対話するのが基本だ。記事は自分でパソコンに打ち込むこともあれば、介助者が代筆することもある。こうして書いた記事は、翌朝にNEWSつくばのサイトで公開された=2020年10月1日付

パレード参加者にインタビューする川端さん

記事を書くことで、川端さんの手元に原稿料が入る。ライター業は川端さんにとって、定期的な報酬を得る初めての仕事だ。「仕事を評価してもらうのがうれしいし、自分もお金が稼げると自信がついた」と話す。だが、働き稼ぐという当たり前の営みは、重度障害者にとって簡単なことではない。介助制度の問題が立ちはだかるのだ。

つくば市内にて

川端さんのような重度障害のある人が社会活動を送るには、介助者の存在がかかせない。だが、現在の公的介助派遣制度は、その利用を就業中は認めていない。だから川端さんは取材中、1時間1200円の介助費を自費で介助者に支払っている。極端な話、お金がなければ働くことができないのだ。現在の制度は、重度障害者から働く機会を奪うという、極めて大きな問題をはらんでいる。

昨年、国は市町村の裁量で就業時の介助者派遣を認めた。だが、さいたま市のように実施する自治体はあるものの、全国的にはほとんどない。ほにゃらはつくば市に実施を呼びかけるとともに、経過モニタリングしている。

自宅で原稿を執筆する

コロナ禍でも自分らしく生きる

川端さんの生活に周囲のサポートは欠かせない。人と人が触れ合うことが感染拡大につながる新型コロナウィルスは、生活の根底を揺るがした。感染は自身の健康にも大きな影響する。

「実家に帰るべきだろうか?」

不安とともに、そんな思いが湧いてきた。だが、こう思い直した。

「いや私にはここで築いた生活がある」

「私にはここで築いた生活がある」

つくばに来て11年がたつ。群馬の両親も年齢を重ね体力が落ちた。実家で両親の介助を受けるのは心配だ。そして何より、親元を離れて来たつくばには、友人や地域の人と送る生活と仕事がある。それは自分が周囲と関わり築いてきた、代わりの効かない居場所なのだ。

「住み慣れた街で、いつも通りの生活をしたいと思っています」

コロナ禍にあって川端さんは、そう話す。

そして、ライターとしてこれから伝えていきたいことをこう話す。

川端さんの自宅にて

「障害者が特別な人じゃなくて、普通の人なんだって思ってくれたらいいなと思ってます。テレビで取り上げられる『頑張っている障害者』ばかりじゃない。私たちも普通の人なんだっていうことを伝えたいと思っています」 (柴田大輔)

➡川端舞さんの記事とコラムはこちら

書評「人新世の資本論」《雑記録》22

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【コラム・瀧田薫】斎藤幸平氏著の本書の核心は、旧来のマルクス理解を根底から覆し、エコロジーの視点からマルクスを解釈し直し、そこからさらに進めて、「人新世」(人類の経済活動が地球を破壊する環境危機の時代)を克服する方途、さらには豊かな未来社会に至るための実践論(「脱成長コミュニズム論」)を引き出したことにある。

読後感を一言でいえば、「宮沢賢治にこそ読んでもらいたかった1冊」であるということだ。宮沢と斎藤には時空を超えて共通する一つの思いがある。

すなわち、資本主義が追求する効率、利潤、経済成長を、環境破壊、労働疎外(個人は経済活動を担う歯車と化す)そしてコモン(共同体や共有財)解体の原因であると断じ、格差や生きづらさを生む資本主義社会から脱して、豊かな人間らしい生活と環境を求めようとする、その一点において両者は同じプラットフォーム上にある。

もちろん本書の狙いは、都市の生活や最新テクノロジーを捨てて農耕共同体社会に戻ることではない。21世紀の現実と向き合い、環境危機を克服し、「持続可能で公正な社会」を実現するための唯一の選択肢として、「脱成長コミュニズム」が提唱されているのである。そのことを確認した上で、宮沢の思想を本書読解のための補助線とする方法、その有効性を指摘したいと思う。

「人間と環境」に関する新しい知見

本書に対する批判の代表的な例は、「脱成長を標榜(ひょうぼう)する文明に繁栄などあり得ない」とする主張であろう。それに対する斎藤の反論については、本書を読んでいただくとして、それとの関連で、宮沢における「定常状態」(経済成長のない均衡状態)理解について簡単に触れておきたい。

バリ島は土地が肥沃(ひよく)であったことから、島民は朝夕それぞれ2~3時間働くと、その日の残りは絵画、彫刻、音楽、ダンスなど、それぞれの好む創作活動に当て、そのパフォーマンスを神へのささげものとすることで、日々の安息を得ていたとの事例報告がある。つまり、バリ島共同体をいわゆる「定常状態」に近いものとして理解した例である。

宮沢は、彼の著書「農民芸術概論」、その他において、このバリ島に強い関心を寄せている。ちなみに、井上ひさしは「バリは農業と芸能と宗教の島である。大切なのは、一人一人の人間がそれぞれ農業人と芸能人と宗教人との三つの人格を一身に兼ねていることで、宮沢賢治が見たらおそらく涙を流してよろこんだであろう」(エッセイ「演ずるバリ島」)と書いている。

井上は、1人3役をこなすバリ島人の生き方に、宮沢における「理想の人間像」を重ね合わせていたのだろう。ともあれ、今後、宮沢の思想と斎藤における「脱成長コミュニズム」思想が対比され、そこから「人間と環境」に関する新しい知見が生まれれば、それは21世紀を生きる人々にとってこの上ない贈り物となるだろう。(茨城キリスト教大学名誉教授)

つくば市長の名誉毀損提訴を検証する《吾妻カガミ》103

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つくば市役所正面玄関サイド

【コラム・坂本栄】今回も五十嵐つくば市長の名誉毀損(きそん)提訴問題を取り上げます。というのは、前々回の「つくば市長の名誉毀損提訴を笑う」(3月1日掲載)に多くのアクセスがあり、関心の強さを実感したからです。3月の市長会見も、提訴は「表現の自由」に照らして違和感があると問う複数の記者に、五十嵐さんは「(ミニ新聞の市政批判)記事はフェイク(虚偽)だ」と応じ、ホットなやりとりになりました。

市長批判記事は「フェイク」?

この問題の概要、原告=五十嵐さん、被告=ミニ紙「つくば市民の声新聞」発行人・亀山さんのコメントについては、本サイトの記事「つくば市長の五十嵐氏 名誉毀損で元市議を提訴」(2月17日掲載)をご覧ください。五十嵐さんのSNSや訴状によると、提訴理由は、数多くの虚偽の内容を記載し、正しい情報を伝えずに選挙に重大な影響を与えた、ゆがんだ情報による選挙結果は自治体を混乱に陥れる―ということです。

私は先のコラムで、この件について3つの視点を示しました。1つは、政治家たるもの記事には言論で対抗すべきであり、裁判沙汰とは市長らしくない、と。2つ目は、名誉毀損訴状の最初の箇所(総合運動公園用地返還公約の未達を指摘する記事への反論)は明らかに「逃げ」の論理で構成されている、と。3つ目は、「表現の自由」抑制を是とするような訴状の論述は看過できない、と。

以上、おさらいです。以下、記者会見で「フェイク」の例として挙げた「谷田部給食センター建設計画」についての記事が、本当に虚偽なのかどうか検証します。

市長の政治力不足が明らかに

ミニ新聞は「前市長の計画を破棄し、新たに再設計を行い、県からの『補助金なし』に切り替えてしまった」とリポート、給食センターが市の予算だけで建てられたと指摘しました。これに対し訴状は、県に予算を付けるよう要請したが、補助金の交付が認められなかった―と反論しています。つまり、最初から「補助金なし」だったのではなく、結果として「補助金なし」になったという主張です。

いずれにしても「補助金なし」だったことは事実ですから、「フェイクだ」と騒ぐような話ではありません。それよりも、訴状の論述によって、五十嵐さんには(県からおカネを引っ張ってくるという)市長に求められる政治力の不足が明らかになりました。訴状で自ら名誉を毀損してしまい、何か冗談のような話です。

また記者会見では、同様の提訴を前市長も行っていたと、前例があることを強調しました。確かに、病院経営者だった前市長が、市長時代に市営病院を廃し、自分の病院に患者を誘導した―といった趣旨のビラがまかれ、前市長は発行者を名誉毀損で訴えました。しかし、その内容は市政を利用して個人的利益を図ったという中傷であり(判決は前市長側の勝訴)、市政の出来不出来を点検したミニ新聞の記事とは別物です。(経済ジャーナリスト)

終盤追い上げも届かず アストロプラネッツ ホーム開幕戦

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7回を2安打と好投した先発の濱矢(撮影/高橋浩一)

プロ野球独立リーグのルートインBCリーグが開幕した。茨城アストロプラネッツは4日、水戸市見川町のノーブルホームスタジアム水戸でホーム開幕戦を迎え、栃木ゴールデンブレーブスに4-5で敗れた。追い掛ける展開から9回裏に1点差まで詰め寄ったが、あと1本が出なかった。

開幕投手を務めたのは1年目の濱矢廣大。昨年、横浜DeNAベイスターズで戦力外となり、茨城から再起を目指す28歳だ。この日は7回を投げて2安打に抑えたが、6四死球と制球が乱れた。四球や野手のエラーで走者を出し、許した安打が2本とも適時打になるという展開だった。「栃木は好打者ぞろいなので、際どいところを攻めていかないと打たれる。小さなミスを修正し、精度を高めていきたい」と試合後、次の登板での挽回を誓った。

8回裏1死一・二塁、宮本が左中間へ2点適時二塁打(撮影/高橋浩一)

4点を失って迎えた8回裏、ようやく打線が奮起を見せた。池田瞳夢(在籍3年目)と上田政宗(四国リーグ香川から移籍)の連続安打で一・二塁とすると、宮本のこの日2本目のヒットが左中間を抜き、2者生還。

9回表にもう1点を失うが、茨城の勢いは衰えない。山中堯之(つくば秀英高、共栄大卒)と池田貴章(四国リーグ高知から移籍)の安打から満塁押し出しで1点を奪い、さらに吉本光甫(霞ケ浦高卒)の二遊間を破る適時打で1点差に迫る。だがここで後続を断たれ、結果4-5で試合終了。

9回裏1死満塁、吉本が右前へ適時打を放つ(撮影/池田充雄)

今季主将を務める大場駿太は「いい投手の投げ合いで、こういう試合では1つのミスが敗因になってしまう」と振り返り、「序盤劣勢でも気持ちが落ちず、終盤で力を見せられた。ここから逆転できるチームになっていければ」と、昨季との違いをアピールした。高校の後輩である吉本の活躍については「高卒1年目だが練習生から上がってきた。そのハングリー精神は尊敬している」と讃えた。

初采配となったジョニー・セリス監督は「開幕の緊張はあったがいい試合ができた。最後は逆転したかった。次はもっとバッティングを見せたい。リラックスしてエンジョイベースボールをすれば結果が出せると思う」と話した。(池田充雄)

開幕セレモニーで挨拶する大場主将(撮影/高橋浩一)

先生はセラピスト つくばの陶芸工房に新学期

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講師の大久保シェリルさんから手ほどきを受ける=つくば市吉瀬、KISEポッタリィ

休止していたつくば市吉瀬の陶芸工房に、再び火がともることになった。4日から体験教室をスタートさせたKISE(キセ)ポッタリィ(根本陽子代表)。新任の先生はアートセラピー講師でもある陶芸作家、大久保シェリルさんらで、ウィズコロナの時代に、粘土と向き合う豊かな時間を提供する。

体験陶芸は手びねりがメーン。初心者向きにコイル(ひもと作り輪に積んで器状にする)、ピンチ(粘土の塊をくりぬく)、スラブ(板状の粘土を成形する)についてそれぞれ手ほどきする約2時間の工程。経験者向けにロクロのコースも用意した。

体験の後、陶器は乾燥期間をおいて素焼きし、釉薬(ゆうやく)を塗って仕上げるまで3~4週間程度かけて制作者の元に届く。毎週土・日曜に午前・午後の2回(要予約)開催するほか、会員になると毎週水曜日の午後2時間程度、工房を利用できる。

指導陣には水井純子さん(写真右)と中村久美子さんが加わる

代表の根本さんによれば、「コロナ禍の1年、心静かに土と向き合う趣味として陶芸熱が次第に高まるのを感じた。約4年休眠させてしまった施設(陶芸舎)があったので、まずは初心者向け、少人数制の体験陶芸から再開させることにした」という。

ドリームズ カム トゥルーの場所

体験陶芸の指導には3人の女性講師があたるが、中心になるのは大久保シェリルさん。かつて陶芸舎の施設を利用し制作に励んでいたこともあったが、土浦市宍塚のアトリエに拠点「HEARTH(ハース)」を構えて活動するようになった。

米国ネブラスカ州出身、ニューメキシコ大学の修士課程で美術教育とアートセラピーを専攻していたとき、筑波大学出身のご主人と出会い、結婚して来日した。主に英語講師として働き日本在住は28年になるが、近年では筑波大学で「アートセラピー入門」を担当する。患者が描画などの芸術表現を通じ、心身の健康を取り戻す療法の日本では数少ない専門家だ。

その陶芸との付き合いは、高校生のときにロクロに触って以来で40年になる。最近は「練り込み」という技法に興味を持って作品を作っているが、身近に使える窯を探して陶芸工房再開の話を聞き再訪した。「ここにはスラブローラーっていう成形機もあれば、木から切りだした長いテーブルもある。何でもそろっていて、まさにドリームズカムトゥルー(夢は叶う)の場所」と講師を買ってでた。

大久保さんは「粘土に触っていると地球の柔らかさを感じる」といい、体験陶芸を通じその気持ちよさを多くに伝えたいと語る。

体験陶芸の開催日程や料金など詳細はKISEポッタリィのホームページまで。講師や生徒の作品を展示、販売するオンラインストアも設けている。(相澤冬樹)

住民意向は概ね好意的 独自の「つくばアプリ」開発 スーパーシティで説明会

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スーパーシティ構想について説明する(奥左から)森祐介・市政策イノベ―ジョン部長、五十嵐立青市長、鈴木健嗣筑波大教授=宝陽台公民館

国が進めるスーパーシティ国家戦略特区の指定を目指しているつくば市は3日、高齢化率が高い小田と宝陽台の2地区を対象にスーパーシティ構想の住民説明会を開催した。2地区とも、住民の受け止めは概ね好意的だった。説明会で市は新たに、市独自の「つくばアプリ」を開発し、同アプリを使って、インターネット投票や自家用車に頼らない移動支援サービスなどを展開する計画を明らかにした。

小田と宝陽台地区は、国の指定を受けた場合、AIやビッグデータなど先端技術を活用した事業が展開される市内4地区のうちの2カ所。住民説明会の開催など住民意向の把握は、国の応募要件の一つとなっている。

市総合教育研究所(旧大形小)体育館で開かれた小田地区対象の住民説明会の様子=3日午前、つくば市大形

小田地区の説明会は約30人、宝陽台地区は約50人が参加した。五十嵐立青市長、森祐介政策イノベ―ジョン部長のほか、同構想全体統括者(アーキテクト)の鈴木健嗣筑波大教授らが説明にあたった。

自動運転一人乗り電動車(シニアカー)などを活用した移動支援のほか、自宅で遠隔診療を受け処方薬を移動スーパーで受け取る事業、普段の食事や運動習慣、病院の受診歴などのデータを提供し、その人に合った食材の自動配送を受ける事業、災害時に避難所が開設されたかや現時点の収容人数などが分かる避難所・被災状況の可視化事業などについて説明があった。

小田地区では参加した住民から「周辺部は幹線道路以外、整備されておらず、段差があったり、ぬかるんだり、道路から自宅の玄関まで距離があったりする。一人乗り電動車は安全に走行できる車両か」などの質問が出た。宝陽台では「電動車は一人乗りだが、(介助が必要なため)2人でないと行動できない人がいる。2人乗りにはできないか」「スマホやタブレット端末は貸し出すのか」などの質問や意見が出た。「避難所の場所の周知が不十分」「防災無線が何を言っているのか分からない」など日ごろの市政に対する意見も出た。

宝陽台公民館で開かれた宝陽台地区の住民説明会の様子=3日午後、つくば市宝陽台

一方、スーパーシティに指定されれば、データ連携基盤を通して複数の分野で住民のデータが共有されることから、個人情報保護に関する質問も出された。質問に対し市は「個人情報の保護やプライバシーポリシー、倫理面での配慮も事業者に求めていきたい」などと答えるにとどまった。

国に応募するにあたって市は、個人情報保護やサイバーセキュリティ確保のほか、実証実験やサービス実装のスケジュール、事業を実施する主要な事業者候補、事業の費用や負担する主体、事業を実施した場合の経済的社会的効果などを説明しなければならないが、この日の説明会で、住民への説明はなかった。

市は、スーパーシティ特区に採択されれば、それぞれの地区でどのような事業を展開するか、地区住民による区域会議で詳細を決め、基本計画を策定するので、その際に説明したいとしている。合わせて住民投票や自治会または議会などでの決定など、住民の意向確認も求められる。

「つくばアプリ」今年度に利用開始

新たに開発する「つくばアプリ」については、多分野のデータを共有するデータ連携基盤の開発と合わせて、つくばスマートシティ協議会が開発している。2021年度中に一部利用できるようにする予定で、スマートシティ構想のサービスが利用できるようにするほか、4地区以外の住民も利用できるよう、例えば、子育て世代の場合、保育所の入所手続きを知らせたり、予防接種の接種券をアプリで配信など、その人に合った市の情報を発信する機能を備えるという。

スーパーシティは4月16日までに国に応募する。採択されるのは5自治体程度で、結果は6月ごろ出されるという。現時点で25~30自治体くらいが応募するとみられており、倍率は5~6倍になる。(鈴木宏子)

➡スーパーシティの過去記事はこちら

「混迷する世に立ち向かえる力付けて」筑波学院大学で入学式

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望月学長を前に宣誓する新入生代表の鈴木瑞穂さん(中央)=3日、筑波学院大学大教室

筑波学院大学(つくば市吾妻)で3日、入学式が催され、2021年度の新入生161人が緊張した面持ちで式典に臨んだ。

望月義人学長は、4月から経営情報学部に国際教養クラスを新設することに触れ、大学で身に着ける教養について「本を読む、ゼミや卒業研究、地域交流や友人たちとの交流などを通じて、ベースとなる教養をまず身に付けてほしい」と話した。

さらに海外の国々では軍隊とデモ隊が衝突するなど国際情勢が揺れ動いていること、日本国内でも新型コロナ感染拡大の終息にめどがついていないことに触れ「混迷する世の中の動きに我々はただ茫然と立ち尽くすわけにいかない。確かな教養力に根差す対応力を発揮するため、自身の全人格を賭けて立ち向かえる力を付けていただきたい」と式辞をのべた。

橋本綱夫理事長は「161人全員が、筑波学院大学で学んでよかった、最高の4年を過ごすことができたと思えるように教職員全員が支援をしていく。最高の4年を送れるように、自分の頭で行動して考え、相互にいい影響を与え合っていただきたい」とあいさつした。

これを受けて、新入生代表で福島県須賀川市出身の鈴木瑞穂さん(清陵情報高校卒)は「東京家政学院の建学の精神、KVA(知識の啓発、徳性の涵養、技術の錬磨)を継承した筑波学院大学で、知識・徳・技術を体得し、豊かな個性と知性を磨き、社会に貢献できる人間として羽ばたけるよう精進したい」と宣誓した。

新入生161人のうち留学生は52人。式典は、新型コロナ感染防止のため新入生と教職員のみで行われ、保護者の出席はなかった。新入生は入り口での検温と手指のアルコール消毒を行ってから入場、1席ずつ開けて着席し、会場は換気のため窓を開けた。(伊藤悦子)

英教育専門誌が見解発表 外国人学生数問題 平行線のまま 筑波大

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筑波大学正門

筑波大学の教職員有志でつくる「筑波大学の学長選考を考える会」(顧問・指宿昭一弁護士)が、「(同大は)指定国立大学法人の申請にあたって、水増しした外国人学生数を文部科学省に報告していた」と指摘している問題で、世界版と日本版で異なる外国人学生比率を掲載した英国の教育専門誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)」(英タイムズ紙発行)は3月18日、この問題に対する見解(ステートメント)を発表した。

見解は「THEは筑波大学と共同で、世界大学ランキングに提出されたデータを理解し、今後のデータにどのような学生を含めるべきか提案するために作業を行った。私たちは、今後提出されるデータが我々の公表している定義に沿った一貫したものになると確信している。我々は今回の結果として筑波大学のランクに重大な影響が生じることはないと考えている」とした。

見解に対し、考える会は「THE社が、筑波大学に対し、定義上含めるべき学生のみを外国人学生に含めるよう勧告したことを明らかにした」ものだと述べた。

日本版と世界版に掲載された各大学の外国人学生数の比率を示した図表。考える会、緊急会見時資料より作成。筑波大学の差は他大学に比して大きい

同大は昨年10月、指定国立大学法人に指定された。考える会は、指定国立大学法人の申請にあたって、「外国人学生数を水増しした」などと指摘、永田恭介学長はその責任を取るべきだとして、3月23日、萩生田光一文部科学相宛てに「次期学長に選出された永田恭介学長を再任用しないよう」に求める要望書を提出した。

他方、筑波大は「THEに提出した外国人学生比率の計算方法には大きな問題はなかった」との姿勢を現在まで崩していない。

問題となっているのはTHEに掲載された外国人学生比率(外国人学生の人数を全学生数で割り100を掛けた値)だ。世界版では同大の外国人学生比率は20%だが、日本版では12.60%で、実に7.4%もの違いがある。

考える会は「世界版においては本来含めるべきではない種類の学生を算入することによって、恣意的に外国人学生の比率を多く見せようとしているのではないか」と指摘する。

一方、同大学長補佐室長の池田潤教授(大学執行役員)=当時=は「最大の差を生み出しているのは『データの報告形式の差』。例えば、世界版では外国人学生の総数を報告し、日本版では学年別の人数を報告する。この際、学年という考えを持たない交換留学生が日本版からは漏れてしまう。形式の差がある以上は、数字上の差が出るのは当然のこと。恣意的な判断によるものではない」と反論した。

大学側の主張に対し考える会は「大学が示した計算根拠の表は、いかにして恣意的な水増しを行ったのかを丁寧に説明しているように読める」と批判する。「THEはフルタイム(通常のカリキュラムを受ける学生)ではない学生については、フルタイムの学生と比して数値を減ずることとしている。しかしながら筑波大学は単位の取得が出来ない『研究生』や他大学に所属をする大学院生で筑波大学では研究指導を受けるのみの『特別研究学生』を1人分として計算に入れている。これはTHEの示す基準に則っているとは到底言えない」と指摘する。

算出根拠のうち非正規生について区分別に示した表。1人当たりの割合が1の区分は、フルタイム学生と全く同じに数えていることを表す。18日の筑波大学定例会見の事前資料および、筑波大学発行の「留学生のためのガイドブック(p.15)」から作成

考える会が3月23日に文科相に提出した要望書は、THEのステートメントを受けたもの。要望書では「学長選考会は永田学長を『人格が高潔で、学識が優れ』『国立大学法人筑波大学の卓越性を高めることができる』として再選したが、その決定の正当性は失われているのだから、再選は適当ではない」と述べている。(山口和紀)

FTE換算について たとえば、通常4年で取れる学士を8年かけて長期履修し取得するような場合には、0.5人と換算するべきであるとされる。このように、パートタイム学生の数をフルタイム学生の数に相当するように標準化することを、FTE(Full-Time Equivalents=フルタイム等量)換算と呼ぶ。

1月以降インフルエンザ感染者ゼロ つくば・土浦保健所

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2019年から2021年3月までの土浦保健所とつくば保健所管轄内の定点医療機関におけるインフルエンザの定点報告者数を示したグラフ。日付は週の最初の日を表す。2020年冬から2021年春にかけては流行がない(県発表資料から作成)

インフルエンザの感染者が今シーズン、激減している。つくば・土浦保健所の定点報告では、今年1月4日から3月21日(第1週から11週)までの感染確認者はゼロだった。一方、昨年同期間の定点報告数は、つくば保健所が1543人、土浦が1592人だった。

つくば保健所の入江ふじこ所長は「新型コロナウイルス感染症の予防対策として実施されているマスクの着用や手洗い、手指消毒が、インフルエンザの感染者減少にも影響していると考える」とし「新型コロナの水際対策の強化により、通年でインフルエンザが流行する亜熱帯地域からの渡航が制限されているため、流行が起きにくくなっていると思われる」と話した。

インフルエンザの定点報告は各保健所が所轄する定点医療機関からの報告によって行われる。定点医療機関はつくば保健所管轄内で11施設、土浦保健所は11施設がそれぞれ指定されている。1月4日から3月21日まで、つくば・土浦保健所の定点医療機関で、インフルエンザの感染者が全く出ていない。

今年、全国で1月4日から3月14日(第1週から第10週)までに定点報告された患者数は555人。昨年の同期間(2019年12月30日から2020年3月5日、第1週から第10週)の定点報告数は全国で55万0752人だったから、前年のわずか0.1%だ。厚生労働省は、この時期までインフルエンザが流行入りしないのは、現在の方法で調査を始めた1999年以降初めてだとしている。

例年インフルエンザは11月下旬から12月上旬にかけて流行が始まり、1月下旬から2月下旬にピークを迎え、3月頃まで流行が続く。しかし、新型コロナの感染が拡大した今シーズンは、様相が一変した。(山口和紀)

新教育長に入野浩美氏 土浦市

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土浦市役所

土浦市は1日、人事異動の辞令を交付した。2012年10月から8年半、教育長を務めた井坂隆氏が任期途中の3月31日付で退任し、新教育長に前県教育庁総務企画部長の入野浩美氏(60)が就任した。

入野浩美土浦市教育長

入野氏は高崎経済大学経済学部卒。県教育庁福祉厚生課長、文化課長、総務課長などを歴任し、3月31日、県職員を定年退職した。水戸市在住。任期は井坂前教育長の任期の来年9月末まで。

新設のこども未来部に初の女性部長

機構改革は、出会いから結婚、妊娠、子育てまで切れ目のない支援をワンストップで行うため子育て支援関係業務を集約し、こども未来部を新設した。同部には同市初の女性部長となる加藤史子・前保健福祉部障害福祉課長が就任した。

ほかに、コロナ禍における経済対策やまちづくりの重点施策推進のため、都市産業部を産業経済部と都市政策部に分割再編した。防災力向上と災害発生時の迅速で適切な対応を図るため、総務課危機管理室を防災危機管理課として独立させた。文化財の保護、活用や文化芸術活動の推進を図るため、文化生涯学習課を分割し文化振興課を新設などした。

機構改革により、7部5局44課22室体制から、9部5局47課19室体制になる。消防職を除く職員の異動総数は462人(昨年度は339人)。

管理職に女性を積極登用し、主査級以上の女性管理職の割合は2020年の22.4%から新年度は24.2%になった。(鈴木宏子)

図書館長に武藤知子前シティプロモーション室長

4月1日付け人事異動は以下の通り。カッコ内は前職。敬称略。

【部長】
▽総務部長(教育部長)羽生元幸
▽こども未来部長(保健福祉部障害福祉課長)加藤史子
▽産業経済部長(都市産業部農林水産課長)佐藤亨
▽都市政策部長(都市産業部長)船沢一郎
▽教育委員会事務局教育部長(総務部長)望月亮一

【参事】
▽産業文化事業団事務局常務理事(スポーツ振興課長兼武道館長)根本卓也

【課長】
▽市長公室秘書課長(秘書課長補佐兼秘書係長)浅川邦子
▽総務部防災危機管理課長(建設部住宅営繕課長)皆藤秀宏
▽総務部人事課長(課税課長補佐兼土地係長)武井衛
▽総務部納税課長(都市産業部都市計画課長補佐兼まちづくり推進室長)福澄雄祐
▽市民生活部環境保全課長(建設部公園街路課長兼駅東・駅西駐車場管理事務所長)室町和徳
▽保健福祉部社会福祉課長(社会福祉課長補佐兼社会福祉係長)福原守
▽保健福祉部障害福祉課長(国保年金課長補佐兼国保給付係長)小池政幸
▽保健福祉部高齢福祉課長(市長公室秘書課長)塚本浩幸
▽保健福祉部健康増進課長(高齢福祉課長)水田和広
▽こども未来部こども政策課長(こども福祉課長)菊田宏巳
▽こども未来部こども包括支援課長(保健福祉部こども相談課長)中川光美
▽こども未来部保育課長兼子育て交流サロン館長兼こどもランド館長(総務部人事課長補佐兼厚生係長)野中佑起男
▽産業経済部商工観光課長兼勤労青少年ホーム館長(都市産業部商工観光課長兼勤労青少年ホーム館長)羽成健之
▽産業経済部農林水産課長(建設部水道課長)黒須清一
▽都市政策部都市計画課長(都市産業部都市計画課長兼りんりんポート土浦館長)飯泉貴史
▽都市政策部都市整備課長兼駅東・駅西駐車場管理事務所長兼りんりんポート土浦館長(保健福祉部社会福祉課長兼特別定額給付金対策室長)平井康裕
▽都市政策部建築指導課長(都市産業部建築指導課長)櫻井良哉
▽建設部住宅営繕課長(教育委員会事務局図書館長兼土浦市民ギャラリー副館長)大貫三千夫
▽建設部下水道課長(下水道課長補佐兼工務係長)滝田昌曉
▽建設部水道課長(建設部下水道課長)和田利昭
▽教育委員会事務局生涯学習課長兼青少年センター所長(市民生活部環境保全課長)佐賀憲一
▽教育委員会事務局図書館長兼土浦市民ギャラリー副館長(市長公室広報広聴課長補佐兼シティプロモーション室長)武藤知子
▽教育委員会事務局文化振興課長兼市民ギャラリー館長(文化生涯学習課長兼土浦市民ギャラリー館長)中澤達也
▽教育委員会事務局スポーツ振興課長兼武道館長(総務部納税課長)大橋博
▽議会事務局次長(議会事務局次長兼総務係長)天貝健一
▽農業委員会事務局長(保健福祉部健康増進課長)羽成信明

雑草は強い? 弱い? 《続・気軽にSOS》82

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【コラム・浅井和幸】自然農法という手法を使って農業を営んでいる、あるユーチューバーの動画がありました。そこでは、「雑草とは弱いものなんだ」というニュアンスのことを話されていました。

はて?何のことやら?となりますよね。ちょっと気を抜くと、あっという間に生い茂る雑草。草刈りをしようが、除草剤をまこうが、駆逐することは難しいことは周知の事実でしょう。アスファルトやコンクリートを打ち破って生えてくる雑草。屋上だろうが屋根の上だろうが、お構いなしの強さです。

農業は雑草との戦いだという言葉も、どこかで聞いた気がします。そのような雑草を、どうして弱いと表現したのか、先ほどのユーチューバーに話を戻します。

雑草が弱いと聞くと驚くけれど、では、その雑草を一種類だけ種から植木鉢で育ててみてください。結構これが難しくて、なかなか育ってくれないものなのです。ある特定一種類の雑草が育つ環境を、人工的に作ることの難しさなのだろうと推測できるわけです。

つまり、私たちが、家庭菜園、農業、庭や道路の整備などで苦戦を強いられる雑草は、その環境でよくて育つ種類の草が育っているということです。雑草同士も自分が生き延びるため、子孫を残すために、早く芽を出したり、早く高く伸びて日に当たったりなど、いろいろな生存競争をしています。

たまたま、そこに適応している草ひっくるめて、人間の価値観で見た目が悪いとか、食べられないとかで、邪魔な草を雑草と呼んでいるわけです。たまたま育った草を、種類の区別なく邪魔だと一緒くたに捉えているから、「雑草は強い」と感じてしまうらしいのです。

弱者の中の弱者が強者に勝つ

どこかで聞いた話でうろ覚えですが、私達の周りにある雑草は、森などでの生存競争で負けた弱者である(だったかな?)ということです。

海で暮らしていた魚の祖先は骨がなく、その中での弱者が川に逃げ、ミネラルが必要なので骨を作って蓄えた。川でも生存競争があり、川での弱者が海に逃げ、骨があるために早く泳げるなどの利点で、もともといた骨のない魚に打ち勝ったという話に似ていますね。

弱者の中の弱者が、もともとの強者に勝つという生存競争の妙です。私たち人間は強くなりたい、頂点に立ちたい、よりよく生きたいという願望があります。その中で、自然界では食物連鎖の頂点に立つ大型肉食獣が、ことごとく絶滅の危機に直面しているという話には考えさせられます。

弱者とカテゴリーされる方が生活困窮し苦しんでいる一方、テレビや新聞では強者であるはずの偉い人たちが連日の謝罪会見。弱者と強者、被害者と加害者。生存競争で、敵対か、協力していくのか、それぞれが自由に生きていけばよいのでしょう。

生き方は人の好き好き。ここまで書いてきて、私の好きな言葉の一つに「君子、和して同ぜず」がふと思い浮かびました。ま、別に君子になる必要もなく、私は愚者のまま生きていきますが…。(精神保健福祉士)

民間へ、また市場調査開始 旧総合運動公園用地でつくば市

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旧総合運動公園用地=つくば市大穂

住民投票で計画が白紙撤回された旧総合運動公園用地(つくば市大穂、約45ヘクタール)の民間利活用を目指しているつくば市執行部は1日、民間企業などから活用意向やアイデアを聞く2回目のサウンディング型市場調査を1日から実施すると発表した。

2月に五十嵐立青市長は、一部を防災拠点として公共利用する案を議会に説明したばかりだが、今回の市場調査では、敷地全体の一括活用も含めて、一体的利活用または分割しての一部利活用について、事業イメージ、手法、地域や市全体への波及効果、市に期待する措置などを、企業などに示してもらう。

市公有地利活用推進課によると、市場調査の対象は、法人または法人のグループ。参加申し込み期間は5月21日まで。

6月に結果概要を公表し、市議会調査特別委員会に報告した上で、市として同用地の利活用策を検討するという。

市場調査は2017年度に実施したが、その後、市場動向に変化が見られることから、改めて調査することで、同用地の市場性を把握したいとしている。民間利活用の手法について五十嵐市長は2月時点で、売却だけでなく貸し付けなどもあり得るとしていた。

旧総合運動公園用地をめぐっては、2017年度の市場調査の後、「利子負担を減らしたい」などとして五十嵐市長は19年3月、用地を一括売却する方針を出した。66億円で購入された用地を、事業者1社が40億円以上で一括購入し物流倉庫などを建設する提案が出されたが、住民説明会で異論が噴出、市議会が調査特別委員会を設置し、民間売却案はいったん凍結となった。しかし議会も利活用方針を打ち出せないまま、昨年11月に改選を迎えた。

改選直後の昨年12月、テレビ番組にリモート出演した五十嵐市長は「一部は防災倉庫に活用して残りは民間に売却したい」などと発言。一方、市議会は改選後の新議員で改めて調査特別委員会を設置し、2月に五十嵐市長を呼んでテレビ発言の説明を求めた。五十嵐市長は3割を防災拠点として公共利用、残り7割を民間活用する案を示し、サウンディング調査を実施したい意向を示した(2月20日付)。

一方、利子負担を減らすことについては、2020年度の3月補正で約53億円、21年度当初予算で約9億円を、市が市土地開発公社に無利子貸し付けをして返済することが決まり、24年3月の返済期限を1年前倒しして返済し、利子負担を減らす道筋を付けたばかりだった(2月4日付)。

これに対し市議会調査特別委員会は、作業部会を開いて、利活用方針について議論している最中という。(鈴木宏子)

➡総合運動公園問題の過去記事はこちら

まちづくり会社1日設立 「情報を小出し」課題指摘も つくばセンタービル

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まちづくり会社が入居し、1階で貸しオフィスを運営するつくばセンタービル

つくば駅周辺の活性化を目指す、まちづくり会社「つくばまちなかデザイン」(内山博文社長)が1日、登記申請を完了し設立された。市が筆頭株主の第3セクターで、まちづくり法人として市長から都市再生推進法人の指定を受ける予定だ。一方、3月議会では「(つくばセンタービルの)リニューアルの全容が今になっても明らかでない」「情報を小出しにしている」など、課題を指摘された中での船出となる。

新会社は、事務所をつくばセンタービル内に置き、1階で貸しオフィスを運営するほか、センター地区に立地する企業や団体で構成する「つくばセンター地区活性化協議会」の事務局を担う。

市は同日、新会社のアドバイザーとして、筑波大学システム情報系の藤井さやか准教授と、同大芸術系の渡和由准教授の2人が就任予定だと発表した。2氏はいずれも、市中心市街地のまちづくりをするために必要なエリアマネジメントについて検討する「つくば中心市街地エリアマネジメント検討委員会」の委員を務めた。

ほかに新会社は、つくばの研究機関や企業などで構成する筑波研究学園都市研究交流協議会に入会し、つくば中心市街地まちづくり調査検討委員会に参画して意見交換をするという。つくばエキスポセンターとの連携に向けて、同センターを運営するつくば科学万博記念財団とも意見交換を開始したとも発表した。

一方、3月議会では、市が所有する1階アイアイモールの店舗と廊下部分約2470平方メートルと、地下駐車場約3660平方メートルを、市が新会社に6月から賃貸することなどが明らかになり、「情報を小出しにしている」などの指摘が出た。新会社は、1階の店舗と廊下の一部を改修して、その人に合わせた働き方ができる貸しオフィスなどを整備して運営する。さらに地下駐車場を運営して事業収入を得る。新会社の経営基盤をつくるため、市がさらなる面倒を見ることが新たに分かった形だ。

今後の工事スケジュールについて市職員から退職派遣される小林遼平専務は、夏ごろから(現在の1階店舗部分などの)解体工事に入りたいとしている。(鈴木宏子)

➡まちづくり会社の過去記事はこちら

子ども版 意思決定支援ツール作成目指す 筑波大 名川講師ら

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トーキングマットを使って会話をする様子。左が延原稚枝さん

障害者や子どもなど、自分の気持ちをうまく表現することが難しい人に対し、本人の思いを引き出し、意思決定を支援するときに使われるツールがある。イラストが描かれたカードを使って会話を深める「トーキングマット」だ。子ども版トーキングマットを作りたいと、筑波大学人間系の名川勝講師が代表理事を務める「日本意思決定支援ネットワーク(SDM-Japan)」(新潟県)が、クラウドファンディングに挑戦している。

思いを引き出す

トーキングマットは1998年にスコットランドで開発され、現在、ヨーロッパやオセアニアを中心に広まっている。知的障害や学習障害、認知症など、コミュニケーションや記憶保持が難しい人に対し、本人が生活の中で何を大切にしたいと思っているかを、周囲の支援者が理解したい時などに使われる。

例えば、好きな活動について話したいときには、「映画鑑賞」「スポーツ」等のイラストが描かれたカードを本人に渡し、その活動が好きか嫌いかを分類しながら、マットの上に置いてもらう。その後、その活動のどのようなところが好きかなどを聞きながら、会話を深めていく。カードを見て話すことで、会話のテーマが明確になり、具体的な情報を引き出せたり、本人が抱えている問題を発見できたりする。

昨年のクラウドファンディングで作成された日本語版トーキングマット

これまで英語版しかなかったため、同ネットワークでは、昨年3月にクラウドファンディングをおこない、カードや説明書を翻訳した日本語版トーキングマットを約100セット作成した。また、支援者がトーキングマットを使うための基礎研修も4回開催し、約40人が研修を修了した。現在、日本でも福祉や教育現場で障害のある子どもや成人に対して使われ始めている。

筑波大学大学院博士後期課程1年で、同ネットワークのメンバーでもある延原稚枝さんは「昨年のクラウドファンディングで、日本でもトーキングマットについて多くの人に知ってもらうことができた」と話す。

子どもにも意思決定支援を

昨年作成した日本語版は全年齢が対象で、子どもにも使うことができる。しかし、英語版には子どもとの会話を深めることに特化したトーキングマットも作成されており、今回、子ども版の作成を目指す。子どもの生活や教育に、より焦点を当てたもので、同じテーマでも発達段階に応じてイラストが異なるなど、子どもがリラックスして話せるように工夫されている。

「意思決定支援は知的障害など障害者のための支援だと思われがちだが、障害のない子どもでも、自分で何かを決めようとすると、十分に意見を聞いてもらえないことも多い。子どもにとっても意思決定支援は重要」と延原さん。

ヨーロッパでは「子どもの権利条約」で謳われている子どもの意見表明権を大切にしていて、子どもが自分の考えを表現しやすい方法としてトーキングマットが使われているという。学校で自分の進路を考える場面や、入院中に治療を安心して受けられているかを確かめる場面、罪を犯した少年に今後の人生について考えてもらう場面などで活用されている。

「現在、日本では障害福祉や特別支援教育の分野で使われることが多いが、子ども版を作ることで、児童福祉や少年司法分野でも、子ども自身がどのように生活していきたいかを考える機会が増えれば」と、延原さんは話す。(川端舞)

◆支援募集期間は4月19日まで。クラウドファンディングはこちら