金曜日, 5月 16, 2025
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一括売却に厳しい意見相次ぐ つくば市が市民説明会 旧総合運動公園用地

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1回目の市民説明会の様子=10日、大穂交流センター

住民投票で計画が白紙撤回された旧総合運動公園用地約46ヘクタール(つくば市大穂)を、市が民間に一括売却する方針案を出したことを受けた(11月11日付26日付12月1日付)市民説明会が10日と12日開かれた。10日は午後2時30分からと7時からそれぞれ大穂交流センターで開かれ、1回目は約35人、2回目は約15人が参加した。12日は午前10時から市役所で開かれ、約30人が参加した。参加者からは「(一括売却案は)何を実現したいのかが無い」「なぜ今、一括売却かの説明がない」など、厳しい意見が相次いだ。これに対し説明に当たった五十嵐立青市長は、財政の厳しさを強調し「前に進めたい」と繰り返した。

一括売却案について説明する五十嵐立青市長(中央)

第1回目の説明会の主なやりとりは以下の通り。

参加者 (防災拠点施設を整備することについて)水、交通について質問、意見したい。水は、上水はいろいろな給水方法があるが、下水はトイレの汚物を含む下水、汚物処理どうするのか。道路がうまく使えない災害を想定すべき。ここの地点(大穂)は遠い。汚物処理拠点としての機能が必要。交通は、道路が(地震などで)割れたらどうするのか。航空によるしかない。まっ平らな広いところが必要。46ヘクタールは滑走路を確保するにはぎりぎりの広さ。ドローンで運ぶ場合もある。そういうことが全く抜け落ちている。航空は高いものを建てるともうだめ。そこを計画に入れていただきたい。

五十嵐市長 汚物処理は危機管理課から説明する。道路は滑走路確保は厳しい。ドローンの活用など災害時は様々な可能性がある。1カ所だけですべてまかなうのは難しいと思っている。ヘリポートは、このスペースがあればいくらか離着陸できると考えている。高い建物は、10階建てが建つことはない。

市部長 処理場は下横場にある。災害時はそこに流して滞留させる。市の容量の2日分をためることができる。

参加者 流路が割れたらどうするのか。(汚物を)一次的に置いておくことを一番最初に考えないといけない。

市長 市全体としてどういうことができるか考えたい。

参加者 (売却)価格設定は簿価ベース、68億円以下はないということか。(方針案では)公共施設は備蓄倉庫とか避難場所になっている。広報つくばやかわら版を読むと、最大のポイントは地域の活性化だと言っているが、倉庫だとか備蓄倉庫だとか、活性化じゃなくて空洞化を起こすような施設しか出てない。事業者はメリットがないと地域の活性化を前提にしない。地域の活性化がポイントであれば、より具体的に、どういう施設を置くんだと言うことをポイントにしてほしい。防災倉庫は、利用者が整備したものをリース契約のようにするのか。

市長 価格設定は用地取得費66.1億円と利子2.4億円を足した金額以上と考えている。地域活性化は、物流施設では雇用が生まれないというが、聞き取りの範囲だが、物流施設ができたとしたら6000人ぐらいの雇用が生まれるだろうと聞いている。働く場として大きな期待感をもっている。防災倉庫はリース契約ではなく賃貸契約。民間が整備したものを市がお借りしていくという形のもの。

参加者 用地を購入したのは運動公園をつくるのが大きな目的だった。施設の半分を売却して、後は運動施設、野球場、サッカー場、グランドゴルフ場、テニスコート、体育館などをつくる予定はないのか。小学生の孫がサッカークラブに入っている。土浦市の新治運動公園、下妻市のほっとランド・きぬに行く。つくば市には運動施設がない、ぜひとも整備をお願いしたい。

市長 当初、運動施設が目的だった。何より305億円かかると、結果として住民投票でなくなった。スポーツの拠点をつくることは必要だと考えていて、上郷高校に陸上競技場を整備する計画を立てて(大規模事業評価の)審議をしていただいている。サッカーができるスペースもできる。障害者スポーツをしやすくしたり、高齢者スポーツや、地域の皆さんが集まってスポーツができる環境を上郷高校で準備している。お孫さんにもそういう場所が出来れば使っていただきたい。

参加者 当初のこの土地は運動公園として使うため取得した。研究学園駅につながなきゃ利用価値がない。どのように道路をつくるのか。

市長 南側の道路をどうするかは、事業者からの全体計画が出てきてからになると思っている。災害の時、市の防災備蓄品が取り出せないとか、そこは(売却事業者選定の)評価項目になってくる。

参加者 市執行部、議会の怠慢ではないか。

市長 この土地について少しでも早く解決することが重要と考えている。議会から提言書をまとめていただくことができた。(一括民間売却案は)基本的には議会の提言書に沿ったものと理解している。急ぎ過ぎという意見もあるが、かなり議論を積み重ねている。前に進めたい。方向性を出していきたい。

参加者 つくばには平地林がたくさんある。木を使って、バイオマス発電をつくって、つくば地区の環境整備、林業再興を目指し、地元でつくったエネルギーを地元で使う、あれだけの土地を地元のエネルギー供給源にできないのかとパブリックコメントで提案している。将来に対する投資という意味で、一緒に環境を改善していく企業を誘致してはどうか。

市長 どうやって環境を守るか、さまざま取り組んでいる。ゼロカーボンの問題意識を持っている。街路樹も守らなきゃだめだと、工事が始まったのを止めてもらったこともある。(事業提案の中に)発電施設の提案もいくつかあった、EV(電気自動車)開発の複合施設の提案もいただいている。どの事業者も、エネルギー、環境に配慮をしないことのマイナスを理解している。どういう形になっても確実に環境に配慮する様々な工夫はされるだろうと思う。(売却先の事業者選定では)事業の中身と価格の両方で審査する。中身の審査も環境に配慮しているか審査する。化石燃料をどんどん使ってCO2を出しまくる場所にはしてはいけないと思っている。

参加者 いちはら病院のメディケアレジデンスに住んでいる。(用地の)南側を散歩コースにしている。見事な木がはえており、建物に代えられない資源だと思う。そこを生かして快適な素晴らしい散歩コースを残していただきたい。

市長 私も歩いて通っている。あの辺り、いい環境になっていると感じている。多くの企業から聞き取りしたところ、南側に病院と住宅地があり、新しくできる施設と病院との緩衝地帯にしていくことは理解を得ている。南側を全部丸坊主にすることはしたくない。そこは安心をしていただければ。

参加者 大穂で、通勤・通学時間に子供たちの誘導をやっている。通勤時間は交通渋滞となり、安全性も含め危険な状態になっている。運動公園のときも幹線道路含めて(配布資料の図面の)左側に道路が予定されていたが、今の計画では6年後と聞いている。運動公園跡地の開発では間に合わないと思ってる。全体の交通インフラを含めて早急に進めないと大変な問題になる。

飯野副市長 北部工業団地から東光台を結ぶ都市計画道路のことだと思う。(高エネ研との間の)県道213号を拡幅したら、結ばれてネットワークができる(計画がある)。県の方も、用地買収しながら北部工業団地に続く道路の事業計画をしている。未買収のところも残っているので、この事業と合わせて進めたい。

参加者 住民投票(で計画の白紙撤回)が決まった時、跡地の利用を考えないといけないよ、と五十嵐さんに言ったことがあるが、(プランは)何もなかった。(今回の一括売却方針案は)一体、何をやりたいんだろうか。何を実現したい、ということが無い。大事なことは何も言ってない。やるべきことはたくさんある。今慌てて売るんじゃなくて、市がやるのがいいのかも含めて、きちんと(市が用地を)持っている必要がある。自分たちはこういうのを実現したいんだというのが無かったら、待つ方がいい。つくば市は研究学園都市にある。つくば市は地方自治体だけれども、もっと日本全体のことを考えることを期待したい。早急に決めることは絶対に反対。

市長 つくば市がここをどうしたいか、それは明確。どういう形で地域に資するものにしていくかだが、研究所は待っていれば来るというものではない。この土地をずっと持っていることはできない。66億円で買ってしまった。運動公園の目的がなくなった。土地を返すか、有効活用するか。日本を代表するエリアは必要。それはこの土地でなく、つくば駅に隣接する(吾妻地区の)70街区。(70街区は)放っておいたらマンションに売られてしまう。つくばの最先端の研究機関のショーケースとして、国や県と一緒に整備していきたい。取捨選択するのが市長としてすべきこと。運動公園は上郷高校(につくる)。何もしたいことがないのではなくて、今回の方針案のような施設を誘致することが将来のつくば市にとってプラスになる。

参加者 反対というより(市の方針案では)何をやりたいか分からない。何をやりたいのかが出てないから困ってしまう。ここを使って何を実現したいのか、今もお話いただいてない。

市長 1期目では結論が出なかった。その時と何が違うかというと、議会が特別委員会をつくってくださったこと。1期目は議会側の意見がさまざまあった。その中で委員会として提言書をまとめてくださった。そうやって確実に進んでいる。陸上競技場も基本構想ができた。着実に進めていけると思っている。きちんと伝わられないのであればいろいろな方法を使って伝える方法をしていきたい。

参加者 水守のクリーンセンター近くに住んでいる。いい空気ではない。もしこの土地(旧総合運動公園)を利用できれば、第2クリーンセンターをつくりたい。それから半導体不足で、TSMC(台湾の世界的半導体メーカー)は(熊本県の)ソニーの敷地に工場をつくっている最中。つくばにつくってもらえればよかった。世界一有名な半導体工場を誘致していただければ活性化になる。TXの駅にも使いたい。膨大な敷地があり、駐車場もバスも入る。ぜひ検討してほしい。今つくば駅前では国の研究所の宿舎を次々に壊している。つくば市は終わりだと感じる。よし、私(市長)がやるんだと、もうちょっと市民の先頭に立ってやっていただきたい。

市長 クリーンセンターは地元の理解を得ながら(現在地の施設を)長寿命化をしながら使っている。ここにつくることは考えられない。TX延伸はいろいろな意見があるが、その先の整備費は国は出さない。整備するとした地元がやっていくことになり現実的でない。TSMCは熊本に工場をつくるが、つくばの産総研に研究開発拠点をつくる。つくばが世界の最大手に選ばれる場所であることを示すことができた。世界経済フォーラムに呼ばれて参加しているが、そこでつくばの注目度が上がっていると紹介してもらったりしている。メディアで取り上げられる回数も増えている。つくばは確実にいい方向に進んでいる。

参加者 民間の4事業者から提案があったということだが、4事業者の案は示してもらえないのか。

市課長 4事業者の提案は(配布資料の)1(工業団地等)、2(物流倉庫施設等)、3(物流施設・データセンター等)、5(EV実験場等)だが、公募したとき、4事業者が応募するとは限らないし、それ以外の民間事業者の応募を妨げるものではない。

参加者 選考はどなたがどういう過程で選考するのか

市課長 事業者の事業計画提案、価格提案の両方の観点から評価したい。いくつかの手法があるが、公募型プロポーザルが望ましい。ガイドラインに従い、評価委員を選定して、公募期間が過ぎた後にプレゼンしてもらい、評価を行って候補者が決定する流れになる。

参加者 案が示されてない。案が決まった後、再度、住民説明会を開いてほしい。つくばみらい市では70町歩の工業団地の造成が進んでいる。市でお困りであれば、具体的な案をもって県に相談いただければいくらでも力を貸す。

市長 当然、事業者が決まったら皆さんにきちんとお話する機会をつくりたい。先日も県の担当者に来ていただいて意見交換したところ。県ともさまざまな形で随時話していきたい。

参加者 問題は、46ヘクタールの公有地、66億円の購入費用、民間一括売却が果たしていいのかということ。歴史を考えてみると、URが全面買収し、平成11(1999)年に研究施設用地として不要と判断した。(前市長の)市原さんが総合運動公園用地として購入した。五十嵐さんは、URと交渉したが、らちが明かなかった。民間事業者1社に売却し地域にプラスになることを進めるというが、URに返還することが一番いい。臨海副都心のように暫定用地として使うこともできる。五十嵐さんは「URと返還交渉する」「裁判も辞さずにやる」と言った。拍手喝采した。交渉をどの程度やったのか。研究施設用地の発展余地として残しておくことが絶対必要。交渉すれば66億円は返ってくると思っている。暫定利用として地元のために使うことができる。民間事業者に売る前にURとの交渉をもう一度考えるべき。売るにあたっても一括売却が本当にいいのか、昨日(9日)の議会(一般質問)の答弁で部長が固定資産税が入ってくると言ったがちょっと違う。固定資産税は行政サービスに対する対価。地主は税金を払っているが、つくば市は土地をもっていても税金を払わないで済む。市は46ヘクタールの土地を保有コストなしにもっていける。もっとじっくり利用を考えるべき。民間売却しかないのか、民間に貸与する方法もある。売らなくも税収相当分がはいってくる。一括売却して地域にとってプラスになるのかというと、中根・金田台地区に物流施設がきたが、ちっともプラスにならない。熱に浮かされたように一括売却するというのは危険。URは(坪)1000円で買った土地を4万6000で売った。まずURと本当の交渉をやった方がいい。

市長 国の方針としてURに資産の整理をさせ、URは全国で資産を手放している。交渉は事務方とさまざまな話をした。プロセスに瑕疵(かし)があれば瑕疵を交渉の材料にしていくと徹底して調査したが、契約に瑕疵はなかった。(当時は)ソーラー(発電会社)が買おうとしていて、早く買わないと売っちゃうよとなった。URに返還は現実的でないと考えているが、仮に返還しても、URが売ります、というとソーラー発電になってしまうかもしれない。暫定利用は簡単にできない。造成費として1ヘクタール1億円かかる。(売った場合は)68億円、市として極めて大きな金額。恵まれた自治体なら別だが、現在のつくば市はそういう自治体ではない。66億の土地をそのままにしておく余裕はとてもないというのが、市長として仕事をしている実感。貸与と言ってもそう簡単ではない。民間利用だが、商業施設は筑穂に影響を与える施設にはしていかない。前に進んでいかなければならないタイミングが来ている。

参加者 財政的に厳しいのは分かる。だからこそURに元の研究施設用地に戻せと返還交渉すべき。それをやらないで民間売却と言っているからおかしなことになる。URと交渉をやったというならその内容を知りたい。

市長 繰り返しになってしまうが、先ほど申し上げた通り様々な話はしている。今、国は売却をどんどんしている状況。必要な土地は残さなきゃいけないから、つくば駅前(吾妻70街区)は2段階で売却していく。UR交渉は現実的ではない。

参加者 (研究機関や大学などで構成する)筑協(筑波研究学園都市交流協議会)に(用地活用の意向を)聞いたが何もなかったということだが、つくばの研究機関は余剰の土地を持っている。追いつけ追い越せ型の研究機関ではなく、新しい分野の研究用地が必要になる。

市長 URとの交渉内容はお話している。(質問した参加者が)納得してないだけ。市長、議員は選挙で選ばれた。議会に伝えて議会がOKと言えば、それが民主主義。

参加者 五十嵐さんは住民の力を忘れている。住民投票で8割が反対だった。それを背景に交渉してはどうか。五十嵐さんは研究状況を分からない。民主主義どうのというのは間違い。

市長 (質問した2人に)納得していただくことは難しいと考えるが、何もしないでこのままにしておくのは無責任な姿。

参加者 民主主義の原則は情報共有、対等な議論、少数議論を見逃さないこと。情報共有をしてない。

参加者 上郷高校跡地の運動公園はここと比べてどのくらいか。

市長 6分の1か5分の1、上郷高校は7ヘクタール。

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「買戻し特約は必須」 第2回説明会

2回目の市民説明会の様子

2回目の市民説明会では、一括購入した民間事業者がその後、切り売りしたらどうするのかという質問が出て、市から、10年間の買戻し特約を検討していると説明があった。主なやりとりは以下の通り。1回目と重複したやりとりは省略した。

参加者 問題は取得価格。URがつくば市に66億円で売ったことが大きな問題、どういう交渉があったのか。400メートルトラックの運動施設をつくるという話があった。そんなにかけなくても整備できる。400メートルトラックはどのように位置づけているのか。

市長 土地を取得した交渉過程は第三者の弁護士に調査していただいた。結論として、URは国から(資産の)処分を強く求められている、市は運動公園をつくりたがっている、ソーラー発電に売りますよ、市が買いたいのだったら早く表明してくださいと、価格もある意味でURの言い値になっていった。総合運動公園は305億円という大きな金額になってしまった。大きなお金をかけなくても陸上競技場をつくることができる。上郷高校に400メートルトラックがある陸上競技場を整備したい。現在、評価をしていただいているプロセスにある。高エネ南側(旧総合運動公園用地)は防災拠点としての施設にする。(防災拠点は)1カ所では心もとないので、上郷高校跡地も役割を果たしていきたい。

参加者 土地の取得の経緯は終わった話。これからどうするかを考えなくてはいけない。気になるのは(市長は)一括売却にこだわられているが、売却した後に切り売りされたら一体性は確保できるのか。最も大きな懸念だ。短冊にされて、ばら売りされたら一体性が保てるか。全体を行政がやるのは難しいかもしれないが、4分の1とか3分の1は公共活用を図り、未来永劫維持した上で、付加価値を上げてから売却する方法もある。なぜ今、全面売却しなければならないのか、そこのところの説明がない。

市長 もしそういうこと(一括取得後、民間事業者がばら売りする)が起きてしまえば市が目指している計画は実現できない。買戻し特約を設定するのは必須と考えており、公募要領の売買契約の条件にして事業者公募を行っていくことを考えている。ご懸念のことは起きない。

参加者 譲渡後を縛る契約ができるのか。一般的な土地取引でそれができれば世の中の土地問題は起こらない。

市課長 他自治体を確認している。債務不履行があった場合(他自治体では)10年間の買戻し特約が主流。

参加者 債務不履行とは、お金を払わなかった場合ではないか。

市課長 第3者に移転する場合も法的に(買戻し特約の対象になり)妥当だ。

参加者 仮にデータセンター、物流センターができたとして、流星台に行くと、あの巨大な施設は圧迫感がひじょうにある。将来につながるものなのか。

参加者 買戻し特約は学校用地ならあり得るが、46ヘクタールを全部買い戻すのは大変。買戻し特約を付けても買い戻すことは非常に難しい。

副市長 土地利用方針に沿った土地利用を将来どう担保するか、担保の仕方の一つの方法として契約上で買戻し特約をするのも一つの方法だ。期間は10年間とする。基本は地区計画、都市計画で、将来的に(ばら売りされないよう)担保できる手当てをできるように考えていくことが必要。

参加者 日本は所有者の権利が強い。地区計画で禁止することは難しい。こういうふうに利用しなさいというのも、一括売却のものについて買戻し条項は現実的に不可能。一括売却を考え直さないといけない。

副市長 担保できないと言われちゃうと、法治国家の中で、後ははない。法的なものを根拠とする。

参加者 現実的に66億円の買戻しができるのか。実効性のない計画だ。

副市長 無理だといわれても、一つの方法として(買戻し特約が)ある。

参加者 であれば、できるというなら(説明の)資料として付けるべきだ。できるというなら資料に付けなければ説明にならない。実現しようとするのであれば、実現を担保しようとする資料が出るはずだ。

副市長 土地利用方針が定まってない中、まず土地利用方針が定まらないと先に進めない。

参加者 土地利用方針は一括売却でしょう。一括売却で話をしている。

参加者 結局どうしようとしているのか。

市長 今さまざまな自治体の調査をしている。地区計画も合わせてやっていく。法の下でさまざまな検討をしている。

参加者 陸上競技場が上郷にできていけばとてもうれしい。経済的なものはとても大事。(旧総合運動公園用地に)子どもの城をつくってほしいという願いはあるが、一括売却が一番、経済的にいい。担保を法的にやるならきちんとした文書に起こせる。安心できるためには文書に起こす、文書ができたら、有効に使っていただきたい。もっと費用対効果があれば提案してもらわないと進まない。

市長 財政に余裕があればいいが、そういう状況ではない。利子を少しでも減らす努力をしている。貯金をためて返済をなんとか終えて1億円ぐらい影響を減らす努力をした。しばらく寝かせて持っておくべきだという意見もあるが、今はそういうことをしている余裕はつくば市にはない。できる限り有効に活用していきたい。建物が建てば固定資産税も上がる。建物で3億数千万円は見込んでいる。税収を増やすためにやっているのではなくて、実現をしていくことが私の使命。

参加者 今日は(市民が市の)説明を聞く場なのか、市民の意見を聞く場なのかー。都市計画はものすごく大事。中根・金田台の物流施設はあの始末だ。用途を準工業地域に変更して(中根・金田台では)現実にそういうことが起きている。買い戻し特約をつけるということだが、66億円を積むのか。それこそつくば市の財政が大騒ぎになる。一括売却はものすごく危ない。

副市長 一括売却の優位性を話したい。土地利用方針に沿った内容できちんとした土地利用を図ってくれる業者が出てくるかを(つくば市が)いかに選べるかが大変重要。家を建てる時、角に電柱が建っている土地より、まっさらな土地の方がいい。真っさらな土地の方が参加してくれる事業者が多くなる。(事業者が)プランニングしずらい前提条件を取り除くことが、選択肢が広くなる。

参加者 この話はいつもつくば市単独で解決するストーリーになっているが、県とか、近隣自治体、国などに、この土地を一緒に使ってほしい、一緒に考えようという相談はしたことがあるのか。国レベルとして、首都直下地震の防災拠点の最前線基地として使えないでしょうかという相談を内閣府などにしたことはあるか。

市長 周辺自治体とはさまざま話をしている。陸上競技場について土浦市長と整備の可能性はどうですかと話をしたけれども、それぞれ議会の皆さんがいるし、土浦には土浦の計画がある。(自治体による)共同の整備は、広域でやろうとしてうまくいかないで、プロセスだけでものすごい年月が経っていることがある。複数の主体が一体となって整備するのは20年、30年かけられるのであれば、選択肢として有効。運動公園は県に整備してほしいと繰り返ししている。

参加者 国とは話をしてないのか。

市長 国とは防災拠点の話はしてない。

参加者 防災拠点とは限らない。民間にぽんと売却するのはもったいないという印象をぬぐえない。

市長 つくば駅前の財務省がもっている宿舎跡地(吾妻70街区)はかなり交渉を重ねて2段階の入札にすると、国と共同でサウンディング調査をしている。つくばの拠点となる場所を構築していく。夢物語を語ることは大事、いろいろな連携をしていくことも大事だが、前に進めていかなければならない。

参加者 (旧総合運動公園の活用方法について)国に話したことはないということか。

市長 国会議員に随分前に聞いてみたりした。国もなかなか新しい場所をつくっていく状況にはほとんどない。県にはいろいろ、知事とも話をしている。

参加者 一括売却して地域にとってプラスになる望ましい施設を整備するということだが、何が地域にとって望ましいのか分からない。それが示されないで一括売却すると言っている。駅前の公務員宿舎用地と違って、ここは研究施設用地だ。望ましいまちが何になるか分からないのに、あまりにも楽観的だ。

市長 できることをできる限りしていく。

参加者 市議会が特別委員会を立ち上げて、こういう視点でやってくれというのが民意だと思う。(一括売却を)進めていただきたい。市がやると伐採費も相当なお金がかかる。これだけ大きい面積になると(何かあった場合)業者は日本中で信頼を失う。(一括売却して)損はない。

市長 お金の件は最低価格を68億とし、市の財源になっていく。二元代表制であり、市議会の皆さんの話はすごく大事に思っている。市議会が提言としてまとめてくださった。市民25万人が満足するとは思っていない。総合運動公園の計画も(反対)8対(賛成)2だった。それぞれにそれぞれの思いがある。全員が納得できない状況は分かるが、私は前に進めていかなければならないという決意のもとにやっている。

参加者 今の、市長がおっしゃることが心配だ。ここにいる(参加者の)大人の人たちはそれで大丈夫なの?って思って控えめにお話になっている。市長さんに自信があればいいでしょうけど、そういう事業をやったことがない。そういうことを皆さんがひじょうに心配していることが分かりますか。そこのところをもう少し謙虚にお答えいただかないと、ご返答を聞いていて心配になる。

市長 この計画が完璧なものと言うつもりはない。方針案として出して、変えるところは一緒に改善していきたい。

参加者 市長が先ほど、議会は、議会は、とおっしゃっているので議会として一言、言いたい。特別委員会の提言書は作業部会の中で意見が分かれて、一括売却したほうがいい、しない方がいいという意見があって、一括売却すべきだということを議会では出していない。11月11日に方針案が示されて、これから議会がもんでいくのかと思ったら、次の週からパブコメをやります、(議員は)意見をそれぞれ特別委員会の中で出してください、パブコメで出してくださいとなっていた。こんな乱暴なやり方はおかしいと思っていたら、今度は(12月1日発行の)市報の1面で(一括売却の方針案が)出た。市報は2カ月前に内容を決める。(市長は)議会に丁寧な説明をして進めて参りましたというが、市はこういうやり方をずっと続けてきた。

市長 山中議員のおっしゃったことが議会の総意であれば、多くの議員が不満を表明すると思う。

参加者 (土地開発公社の契約書を一部書き換えて民間売却を可能にする)契約書の議案が(開会中の12月議会に)出ている。

副市長 (契約書の議案は)今ごろ出てくるのがおかしい、白紙撤回と同時に議決をしておかないといけない。

参加者 (契約書を書き換えると)民間に転売できるという内容も入ってくる。

参加者 民主主義で一番大事なのは約束を守ること。嘘を言ってはいけない、不確定なあいまいな情報も出してはいけない。五十嵐さんが最初に約束したURとの返還交渉も、一番大事なことは(情報開示された交渉の資料には)書いてない。URとの交渉はどうでもよくて、売りたくて売りたくてしょうがないのかな。(他の参加者から出た)全国レベルの話はそれ。46ヘクタールは研究学園都市にとって研究施設用地としてなくてはならない土地。つくば駅前の土地が高いのは研究学園都市というブランドがあるから。

参加者 広大な土地を市民としてどうやって保全し生かしていくか。一番大事なのは用途指定だ。46ヘクタールもあるのだから、それを変えればいい。用途指定で土地の値段が変わってくる可能性がある。(買戻し特約は)10年保証でなく、私たちは永遠に住んでいる。研究施設用地をURがつくば市に売ったことはおかしいと思う。時間かけてでも交渉していくべきだ。もともとそういうことで研究学園都市ができている。

参加者 土地開発公社が取得していた負担金は市が清算して今、銀行からの借り入れはないということか。それを市が取得しない理由はなぜか。

副市長 取得目的がないから。地方自治法上、取得目的がない取得はない。

参加者 では売却する目的はあるのか。

副市長 現在、土地開発公社の所有地になっている。運動公園用地なら市の方で取得する。

参加者 目的が出れば取得できるということか。今は目的がないから取得できないということか。

参加者 つくば市ではなく土地開発公社がもっているのは、つくば市が取得する場合、事業をやろうとしたときに国から補助金が出るから、ということを聞いている。市長と副市長が説明しないので付け足す。つくばは研究者のまちではないけれど、研究施設あってのつくば。研究施設の発展余地がなくなったらつくばは死んでしまう。

参加者 ここは研究学園都市に残されたいい土地、そこをまず使おうとしないで、売ろうということにひじょうに違和感を感じる。何で使おうとしないのか。使おうとするためには予算がいる。予算を確保できる案を出すべき。(市長が)何をやろうとしているのかわからない。お金がほしいというのが目的のようだが、そこの土地はそういう土地ではないのではないですか。

参加者 あそこが研究用地として活用できるのであれば、長い間残っていたのでしょうか。そこで(URは)つくば市に話をもってきた、URの現状を皆さんご存知のはず。これから市民が活用していくのは膨大な拠出になる。経済的に埋めていきたいという提案でよいと思う。ぜひ前に進めてほしい。(一括売却案以外の)提案があるならどんどん出してほしい。

参加者 研究用地の発展余地をもっているから研究学園都市であり続けられる。

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参加者同士、怒鳴り合う場面も 第3回説明会

第3回市民説明会の様子=12日、つくば市役所

3回目の市民説明会は、12日午前10時から市役所で開かれた。参加者同士が怒鳴り合う場面もあった。3回目の市民説明会の主なやり取りは以下の通り。

参加者 政治家は本当に信用できない。研究所を持ってこい、はあり得ない。66億で買って2億5000万の金利がかかった。固定資産税が年7000万無くなっている。こんなことを永遠にやっていては市民のためにならない。早く売却した方がいい。伐根伐採するだけでも46億円かかる。それをどこから金を出すのか。いつまでもいつまでもあーじゃこーじゃと言わないで、あんなもんは早く民間に売っちゃった方がいい。体裁だけ考えずにつくば市民のことを思うのであれば、早く売って子供たちのために使ったらどうか。

市長 政治家の一人として少しでも信頼を取り戻せるよう様々仕事をしている。研究所用地として使われなくてずっとそのままになっていた土地。研究所を引っ張ってくるというのは現実としては無いということ。これまでの土地のプロセスは、元々国がURに売却を求めた。URはつくば市に、買うか買わないか、買わないんだったらソーラー発電にするぞといって、つくば市は半ば慌てながら買ったということが(総合運動公園事業検証委員会の)報告書で示されている。財政にゆとりがあればうれしいが、とても遊ばせている余裕はない。就任して貯金を積み上げて(借入金の)土地代は払った。年間利子3000万円だけでも大きな負担だが、(利子を前倒しで返済したため)結果として1億円ぐらい市の財政にプラスになった。これから、どの事業も精査しながら来年度予算の査定が始まる。無駄なものを削って浮いたお金で市民サービスしないといけないということでやっている。今のような話(一括民間売却)でまとめていくのがつくば市にとって必要なことと考えている。

参加者 お金の面から売却がいいと言う話もよく分かるが、しかし住民として純粋な希望だが(配布資料の)この写真を見ても分かるように(旧総合運動公園用地は)緑が多くて貴重な土地だと思う。ここをどのように市民のために使うか、お金のことは置いておいて、純粋な希望として、今、市民が必要としているのは高校用地であったり、周辺小学校では生徒が増えてパンクしているので小学校をつくる案もあるだろうし、図書館も駅前の図書館は駐車場がないので子ども図書館であったり、ウオーキングコースやマラソンコースもある。地球環境を考えたとき、森をそのまま残すこと、お金をかけてもこの場所を守る方法もある。森林保全など環境関係で補助金をもらえる方法はないのかなと思う。

市長 私も木にこだわりを持っている。就任前に街路樹が伐採される計画があったが、残した。まだつくば駅周辺に街路木が残っている。そのままだったらほぼ木は残ってなかった。森林保全のお気持ちは理解する。しかし木として持っているだけでは森林保全にならない。この土地の南側の緑を少しでも残して、散歩コースであるとか(にする)。地域住民にとって貴重な緑だと思っている。しかし管理されていないので、すべての緑がいい緑だといえない。高校や図書館は市に必要な施設だ。高校は繰り返し知事に対し、つくばの高校対策をきちんとしてほしいという話をしている。ようやくいくつかの高校、まだ一つだが、定員を増加することをしてもらったりしている。小学校は人口試算をして、大穂地区は小学校が必要になる状況ではないが、数字を見ながらやっていきたい。図書館は十分でないという話をいただいているが、市に図書館を整備していく財政的な余裕はない。土浦市は20年くらいかけ、お金も総額で100億円近くかかったと聞いている。つくば市は10年後を目途に市としての図書館の方向性をつくっていきたい。いろんなご希望がある。お金があればかなえた。現実の制約の中でやるのが高エネ研南側未利用地。必要なところに必要な整備をしていく。

参加者 計画の中にスポーツ施設は入ってないのか。地域の活性化とは人が集まること、気軽に集まること、それはスポーツ施設。市原さんが総合運動公園を提案したとき説明会があった。いろんな話があった。プロ野球の2軍がくるとか。高校野球の県大会をつくばでやってほしい。土地を買い取りたいところがあるそうだが、ぜひスポーツ施設を盛り込んでほしい。

市長 サウンディング調査では(事業提案者が)全部で12件あった。そのうち1社からスポーツツーリズム拠点の整備という提案をいただいている。ただし土地を買うのではなく、つくば市から借りたいという提案なので、つくば市は土地を持ち続けなければいけない。公募の際、一括売却とする方針だが、もしこういう事業者が、買うとか手を挙げてくれればそういう施設の可能性もあるが、全部買い取りを希望する企業にスポーツ施設は入ってない。私もスポーツがもつ価値は大きいと思っている。そういう拠点がないというのがつくば市の大きな課題。今、上郷高校跡地に陸上競技場の整備を計画している。スポーツの重要性は私が肌で体験してきた。今後もできることをそれぞれの場所でやっていきたい。

参加者 民間の経済活動がくるとき、市が稼ぐことができるかを考えると、都市計画税、固定資産税が入ってくるが、法人税が市に入るかという視点も大事。つくば市で活動しても東京に本社があって税金は東京都に収めると市が潤うことはない。そういう視点も必要。雇用を生むこともつくば市の将来を考えると必要。そういうことも考えて経済活動する法人が必要。データセンターは、すごい電力がかかる。小型原発1機分くらいの電力を使う。これをやられるとSDGsの面から、日本は火力発電がメーンなので二酸化炭素排出量が増える。データセンター等、環境に悪い経済活動をする法人は入れないという視点も必要。

市長 市民サービスのために税収を確保することは重要だと思っている。法人税はつくば本社でなくても、働いている人の数によって税金が入ってくる。東京本社の大きな企業から、つくば市に法人税をいただいている企業もある。(旧総合運動公園用地の売却は)法人税の収入にもつながる。大きいのは働く場ができること。物流施設ができると6000人くらいの雇用を生み出すことができるとサウンディング調査の企業から聞いている。雇用を生み出すことは地域活性化や地域が持続可能になるのに重要。環境への配慮は重要。公募してプロポーザルで審査する。環境への配慮がどうされているかも審査の評価対象に入ってくる。もくもくと煙を上げて環境を汚す企業がつくられることはない。多くの企業が環境に配慮して持続可能な事業をしないと企業価値を下げる。ただデータセンターがダメとは申し上げていない。

参加者 もう一度、ここの土地の原点に戻ってみたい。(配布資料の)土地利用方針の三本柱だが、「敷地の一体的整備」は異存ない、「公的利活用」もいい、「用途地域変更」だが、現在、利潤を上げなければ使えないような用途地域にしようとしている。今は研究開発用地(第2種住居地域及び第2種文教地区)だから、そこを変えてしまって、お金の問題になっている。市長さんは、研究学園都市という世界でまれな都市の市長さんになったのだから、そこまで考えていただきたい。(第1回、第2回の説明会で)用途地域や法律で縛ろうという話があったが、つくば市はそういう方法で土地の管理ができていない。農地も(用途、法律で)整備されていない実績がある。1社で購入すれば、つくば市に対して1社が対応する。つくば市は対応できない。一番心配しているのは、資本系列を調査しているのか。外国資本は欲しがる。(資本系列などを)まだ調査してないとしたら自分たちは満足に土地を扱えないということ。やるならきちんと調査すべきだ。もともとはURから高価な買い物をしてしまったことがある。つくば市が損害を受けた、市民が損害を受けたということ。今のままでいくと、もっと大きな損害を受けることになる。研究用地の需要がないとおっしゃっているが、あなたが(市長が)そう思っているだけ。例えばDX(デジタルトランスフォーメーション)をみても、中心的にやる研究所が必要。日本は技術を下で支える教育がされてない。日本は給料が安いから。そんな状況を変えようと思わなかったら研究学園都市ではない。

市長 研究学園都市としての使命を捨てることではない。

参加者 (市長の言うことが)理解できない。

市長 この土地についてはこういう利活用をするということ。つくばのショーケースとなる場所がないということに対しては、つくば駅前(吾妻70街区)につくるよう、国とサウンディング調査をやっている。DXの人材が足りてないことは明らか。私もさまざまな関係者とそういう話をしている。原点に戻ると言う話だが、研究学園都市の使命は人類に貢献することだと思っている。(つくば市は)それぞれの事業を通じてモデルをつくってやっている。この土地がなくなると研究学園都市の使命を果たさなくなるということはない。(発言者が)現役でいらっしゃったときと国の方向性が違っている。国と話ができればという状況にはなってない。

参加者 今のようなことを常識と考えていることがおかしくないかと言っている。

参加者 五十嵐さんは市民無視の政治を改めると言って市長になった。市報とかわら版で情報発信しているが、これだけ大きな問題になるといろいろな角度からの検討が必要だ。情報共有、対等な議論、少数意見を見逃さないことが必要。少数意見は、どんな革新的な意見も最初は一人だから。市報は民間のちらしと一緒に宅配(戸別ポスティング)されている。宅配でちらしを入れようとしたが、政治のちらしはだめだと断られた。やむなく折り込みで入れた。新聞を購読している人は半分しかいないので、新聞折り込みでは市民からの情報はなかなか伝わらない。市民や議員が対価を払った上で、意見広告などを(市報と一緒に)宅配できるようにしたらどうか。五十嵐さんは名誉棄損で市民を訴えているので、お互いに誤った情報を出さないようチェックしてもらってもいい。市の広報と一緒に市議会議員の広報とか、市民の意見とかを(宅配で)入れていただきたい。情報の共有と対応な議論、少数意見の尊重をぜひ実現させてほしい。

市長 政治のちらしがダメということはないと思っている。私もちらしの折り込みをお願いしてきた。事業者の判断を行政から言うことはできない。情報共有や対話は重要。情報量は市役所の方が多い。双方向で対話しながら進めている。(双方向の対話は)就任以来、一貫して続けている。(市民の意見広告などを)行政の広報と一緒に配布するのはなかなかハードルが高いのかなと思うが、皆と直接お話をすることを続けていきたい。情報が基本というのは大事にしながら取り組みを進めていきたい。

参加者 子供たちとか市民が気楽に使える用途にしたらいいんじゃないかという話があったが、子供たちを育ててきて、将来を見据えて子供たちが楽しめる場所があったらいい。つくばは小さい子が雨の日に行く場所がない。民間のゲームセンターがいっぱいだったりする。防災備蓄とあるが、トレーラーハウスとかキャンピングカーがいっぱい置いてあって、万が一のときは仮設住宅になるなどを民間に提案していはどうか。子供たちが気楽にのびのび遊べる場所が拠点としてあればいい。

市長 私も子供が4人いる。雨が降ればショッピングセンターにはあまり連れて行きたくないし、どうすればいいか苦労してきた経験がある。(雨の日に遊べる場所は)つくば市に必要だと思っている。最近は泥だらけになって遊べばいいかなと思っている。つくば市にはプレイパークがある。泥だらけになったり、全身を使って遊べる場所を順次整備していっている。(サウンディング調査には)賃借だが、道の駅、農業自然体験エリアなども提言としてある。どうなるかは別として、子供たちが全身を使って遊べる、元気に過ごせる場所が必要。どういう場所がいいか、現役の子育て世代として、意見として承る。

参加者 2,3年前、神栖の防災・多目的施設(かみす防災アリーナ)を見たことがある。アリーナみたいだったら子供たちに開放してスポーツに使える。46ヘクタールのうち、市が使えるのは4ヘクタールというのは狭いのではないか。その中にスポーツ施設があればいい。神栖の施設はカフェがあって皆が集まれる場所だった。

市長 神栖の防災アリーナはかなりの金額がかかる。現時点ではアリーナや体育館をつくることは想定してない。芝生の広場になる。上物(うわもの)の建設は考えてない。体育館をつくると数十億の整備になる。テニスコートは、つくば市は市内各地に整備されている。きちんと補修しながら皆さんの使いやすい環境にしたい。公共投資はあまりにも過大になる。

参加者 市の方では一体的な整備でやっていくということだが、公的活用は意外とできる部が広がると思っている。引っかかるのは利益追求だ。民間活用についてサウンディング型調査をしているということだが、そういうやり方もあると思うが、先のことを考えると、何のための利益追求か、何のためにお金が欲しいかがあいまいだ。他市ではブランデングを一生懸命進めて、生き残れる施策を練っているところがある。目先で、民間に任せて利益を上げるのではなく、もう少しブランディングを考えて、つくばならではのものを生かして何かやっていけないか。一次的な利益でなく、つくばならではの強みを生かす活用方法をぜひ考えてほしい。つくばは他の自治体と比べてやりやすい思う。

市長 利益を追求しているわけではない。これまでの過程が重要だ。ここに地域活性化のお題目で305億円の事業が計画されていたのを、住民がそれは違うと結論を出した。陸上競技場が(旧総合運動公園用地に)つくれないかと検討したが、最終的には上郷高校跡地になる。つくばだからこそ4社が(一括購入に)手を挙げてくれたんだろうと思っている。つくばは様々な取り組みをしているおり注目度が高い。そういった意味でつくばの特性を生かしたものになる。公共で全部整備していくのは現実的には不可能。決してお金のことだけを考えて言っているのではない。つくば全体にとってプラスになるものだと思っている。

参加者 土地利用方法の決定をこれから進めるということだが、市長の説明は防災拠点にしていくことだけ。あとのことは、全体としてこうしたいという説明がない。一括で土地業者に買ってもらうにも、土地業者任せの利用方法になっていくのではないかと不安。インフラ整備が必要になることは総合運動公園でも問題になった。もともと研究施設用地として計画されていた。商業用地や事業用地として活用されていくことや、408号の共同溝や下水道を想定したことはなかった。歩道も、左折車線をつくるため、歩道を壊さなければ左折用地がつくれない。インフラ整備がネックになるのではないか。

市長 今示しているのは土地利用方針案。先日も(市は)何をしたいか分かっらないという話があったが、従来であればこうした説明会は開かない。すっと延ばして、こういうことが決まりましたというところで説明会になる。事業計画が決まった際も説明会を開催して、より具体的な提案をしたい。次のプロセスでより具体的な話ができると思っている。インフラ整備や道路をどうしていくかは、事業者が実際にどうしていくのか、地区計画の協議で進めたい。

飯野副市長 道路拡幅とか408号線の右折、左折帯をつくるのは、どういう事業提案があっても必要になる。もっと具体的に、道路幅員をいくらにするとか、408号だけでなく西側のアクセスをどうするか必要になる。事業者提案によって発生する交通量が決まってくる。物流倉庫なら大型トラックとか勤務する従業員の車とか。事業が決まったら推計をして、それをもとに決める。現段階ではどういう土地利用がされても必要となる道路などを(方針案に)示している。

参加者 基本はこの土地の取得のいきさつが間違って、相当高い金額できていること。つくば市の負の遺産だ。いろんな意見があるが、お金があればつくば市はどんなことでもやってくれる。問題はお金がないから売るしかない。自分の懐を傷めないで、あーじゃこーじゃと同じことをやってもしょうがない。売れば固定資産税が3億ぐらい入ってくる。早めに処分した方がいい。今は7000万円の固定資産税が入ってこない。カネがなければ売っちゃえばいい。基本はカネ。カネがないから売るしかない。

参加者 観光ボランティアガイドで県内ほとんどを歩いている。つくば市の評価を聞くと、つくば市は頭脳都市だという評価。すばらしい評価がされている。

参加者 お金の問題だということだが、お金がないから苦労されているのは分かっている。しかしお金を確保するにはいろいろな方法がある。一つはURとの交渉が中途半端で終わっていること、一つは研究所だが、皆さんに声を掛けてどうしたらいいだろうかと考える機会をつくってはどうか。そういうことも試みていない。あれだけの土地を利用する計画はそう簡単につくれない。一括で売ってしまうとそういうことはできない。そう簡単に売ることをやっていただいては困る。市は収益を上げなければならない土地をもっていいいことにはなっていない。市が買った結果(URと)裁判をすることまで考えられたのですよね。五十嵐さんは5年間苦労されたが、今のような心配なことばっかりある形で進んでいいいのかな。1社に売るときいろいろな条件を付けたとしても、つくば市は実行させたことがない。用途変更、こんな簡単なことですらやってない。ましてや相手は資本系列が外国じゃないの?そういう確認はしましたか。

五十嵐 サウンディングにきた会社は分かっているが、明かせない。

参加者 何をやりたいかわからない。つくば市として何を実現したいのか。借金を返したいだけなのか。防災用地を借りるのに費用がいくらかかるかも聞けない。皆さん、それを聞けないから、いろんなこと言う。防災用地をつくるなら、お金がかからないで済む用途にして(市が)もっているべき。

参加者 3回出席して、3回で明らかになったことは、URとの交渉が十分でないこと、つくば市が何がほしいのかが明確でないこと、一括売却に伴う不安要素として土地利用が将来にわたって保証されるのか明確でないことだ。お金のことはその通りだが(将来、旧総合運動公園用地が)国レベルの新しい研究分野のためのスタートアップ支援拠点になるかもしれない。そのことを国が分かれば66億出してくれるかもしれない。その辺の交渉をやった方がいい。

以上

※3回目の市民説明会の主なやりとりを、12日付で追加しました。

「3密族」のシンボル利用 《映画探偵団》50

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【コラム・冠木新市】つくばセンタービルができる3年前、日露戦争を描いた3時間の大作、東映『二百三高地』(1980)が公開された。当時は戦争を美化する作品との批判もあったが、今では反戦映画の名作との評価が定まっている。

『二百三高地』の丹波哲郎

幾つもの名場面がある作品だが、料亭の一室で伊藤博文(森繁久彌)と児玉源太郎(丹波哲郎)が、勝ち目のないロシアとの開戦を決めるシーンが印象深い。というのも、私はこの場面の撮影を間近で見ていたからだ。撮影終了後、緊張感から解放された丹波さんが、「飯だ、飯だ」とセットから勢いよく出て行った姿を記憶している。つくばセンタービル改造問題に関わって1年半。なぜか、時折このシーンを思い出す。

現在「つくばセンタービル謎解きツアー」を開催中だ。参加者は、11月3日10人、同13日8人、同23日23人、12月4日5人―だった。12日は8人の予約がある。子どもも何人か参加し、どこが面白いのか、また来たいと言っている。建築専門家でない私は、いろいろな資料を再確認しながら、ツアーの準備をしている。

センタービル関係の資料は少ない。主なものは、「建築のパフォーマンス」(1985)、「磯崎新のディテール」(1986)、「現代思想 磯崎新」(2020)などだ。目を通した中では、「磯崎新の『都庁』」(2008)がとても参考になった。

センタービル完成後の1985年、都庁コンペの過程を記録したもので、建築界の大御所・丹下健三に、弱小組織・磯崎新チームが挑戦する話だ。当時の磯崎とスタッフの様子が手に取るように分かる。磯崎はアイデアをスタッフに投げ、その理由を説明せず、読み解かせる。謎解きを要求するわけだ。センタービルのことも想像でき、面白かった。

賞賛、賞賛、賞賛、内密、秘密、隠密

ツアーでは、これまで見過してきた発見がいろいろあった。午後になると、2階階段付近に飾られた月桂樹の彫刻が、反対側1階の壁にシルエットになって幻想的に映る。壁がスクリーン機能となっていたのだ。

また、ボランティアの方の清掃活動で、水路の稲田石の黒い模様がよみがえり、階段からエスカレータで壊される予定だった壁にまでつながっていたことも分かった。黒い模様の石の配置がパズルのように組み合わせられている。

広場に屋根やエスカレータを取り付けたり、階段を削って車を進入しやすくしたり、外壁を壊して窓ガラスにしたり、テントを張るためにタープをつける穴を開けようとしたり―。この1年半、こういったことを計画した人の心理が理解できなかった。けれども、その謎もだんだん解けてきた。

つくばには、何もない広場を3密(密集、密接、密閉)化しようと考えている「3密族」がいるのだ。にぎわいを作り出そうとしているのなら分かる。だがそうではない。3密族には、センター地区の意匠もプリツカー賞も眼中にない。ただただ、人が集まり、その人たちから賞賛を浴びたいだけなのだ。

賞賛、賞賛、賞賛…。しかも改修の進め方は、内密、秘密、隠密…。つくばのシンボルであるセンタービルはそのために利用されている。3密族の闇は深い。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

<新春つくばセンタービル謎解きツアー>
▽内容:隠された建築の謎を解きながらビルを回る
▽日時:第6回=1 月16日(日) 、第7回=同30日(日)、13時から約1時間
▽定員:10人(小中高生大歓迎)、参加費無料
▽予約:090-5579-5726 (冠木)

土浦で国内最高峰レース 11、12日 シクロクロス全日本大会

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今年3月21日、土浦市川口のりんりんポート土浦で開かれた「2020-21茨城シクロクロス第3戦土浦ステージ」

自転車のまち土浦で11、12日、荒れ地を走る自転車競技、シクロクロスの国内最高峰レース「第27回全日本自転車競技選手権大会シクロクロス」(日本自転車競技連盟主催)が開催される。会場はりんりんポート土浦および川口運動公園周辺特設コース。ハイレベルな戦いを目の前で観戦できるまたとない機会だ。

全日本選手権はその年の王者を決める大会。特に男子エリート部門はランキング100位までの選手しか参加できない、選りすぐりの強者たちによる祭典だ。優勝者には日本一の称号およびナショナルチャンピオンジャージが贈られ、競技者なら誰もが袖を通すことを夢見る。今大会の優勝者(男女エリート・U23)は来年1月、米国アーカンサス州で開催される世界選手権大会出場への道が開け、世界への登竜門にもなっている。

シクロクロスはオフロードのコースを走るヨーロッパ発祥のスポーツ。周回コースを使い、1レースが30~60分と短いためテレビ中継にも適しており、欧米では人気が高い。

茨城では過去9季連続でシクロクロス大会が開かれてきたが、全日本選手権の誘致は今回が初めて。「特に土浦はつくば霞ケ浦りんりんロードを擁し、自転車をキーワードに地域情報を全国に発信しているなどの素地があり、地域のバックアップ体制も充実している。コロナ禍で不安もあったが、選手は活躍の場を求めているし、未来を目指す若者のためにも必要な大会。困難な時代だからこそ、僕たちで受け入れようと決心した」と、大会を主管する茨城シクロクロスつくば事務局長の影山善明さん。

「全日本が首都圏で開催されること自体初めて。地方でも大都市でもない、東京への玄関口である土浦だからこそ、みんなが来やすく見やすい大会ができる。駅から徒歩5分という好立地も素晴らしい」とも話す。

今大会の見どころとして、男子エリート部門は織田聖(埼玉、弱虫ペダルサイクリングチーム)、沢田時(滋賀、チームブリヂストンサイクリング)、小坂光(栃木、宇都宮ブリッツェン)の各選手による三つどもえの戦いが予想されている。沢田は前年度チャンピオン、小坂も過去の優勝経験者。織田は昨季までU23カテゴリーで活躍、夏はスイスのロードレース大会に出場しながら国内でも多くのレースで優勝を果たしてきた。ステップアップのためにも今季はぜひタイトルが欲しいところだ。

女子エリート部門は渡部春雅(神奈川、明治大学)、福田咲絵(東京、AXシクロクロスチーム)の2強激突で、どちらが勝っても初優勝。今後このカテゴリーを担っていくのが誰になるのか、注目される一戦だ。

観戦はコース内以外ならどこでも可。舗装道路あり、芝エリアありの国内では珍しいハイブリッドコースが造られた。スタートの迫力やスピード感を味わうなら川口運動公園東側のロングストレート、アップダウンなど多彩なコースレイアウトを楽しむなら芝エリアがお薦めだ。大会本部が置かれるりんりんポートの駐車場には、飲食ブース「土浦の恵みマーケット」が設けられ、地域の人気グルメなどが多数出店する。

影山さんは「国内ではまだ認知度が低いが、一度見ると楽しいとよく言われる。スタジアムスポーツに近い感覚で楽しんでいただけると思う。ぜひ会場で応援を」と呼び掛ける。(池田充雄)

◆大会の詳細は専用サイトへ。

全国初「通信制ペット学科」開設 つくば国際ペット専門学校 来年4月

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つくば国際ペット専門学校と高橋仁校長=つくば市沼田

全国トップクラスのペット系専門学校「つくば国際ペット専門学校」(つくば市沼田、高橋仁校長)に来年4月、通信制学科「通信制ペット学科」が開設される。ペット専門学校の卒業資格が得られる通信制学科が開設されるのは、全国で初めてという。

eラーニング(オンライン授業)とスクーリング(対面授業や実習)で3年間、ドッグトレーニング、トリミング、動物看護、繁殖などを学び、専門学校卒業と同じ専門資格の取得を目指す。

eラーニングは、年間で21科目を各45時間ずつ計945時間をオンラインで学ぶ。スクーリングは年間約20日間(120時間)専門学校に来て、授業を受けたり、教育提携施設である隣接の犬のテーマパーク「つくばわんわんランド」で実習などする。

卒業までに愛玩動物飼養管理士1級、トリマー2級、ホームドッグトレーナー2級、小動物衛生看護士2級、ペットケアマネージャー2級などの資格を取ることができる。

入学対象は高校卒業見込み者や既卒者。社会人でも働きながら学ぶことができる。

同校では社会人対象の通信講座を12年前から実施してきたこと、コロナ禍の昨年はオンライン授業をいち早く取り入れ実績を挙げてきたことなどが評価され、通信制学科の開設が認可された。

同校はサンスイグループのつくば文化学園(東郷治久理事長)が運営する専門学校で、1997年に開校した。ドッグトリマーコース(2年制)、ドッグトレーナーコース(2年制)、動物看護福祉コース(2年制)、愛玩動物看護師コース(3年制)、ペットケア総合コース(2年制)の5コースがあり、通信制ペット学科は6コース目となる。県内のほか全国各地から300人を超える学生が学び、ペット業界に多くの人材を輩出している。90種500匹の犬猫がいる「つくばわんわんランド」での実習のほか、在学中の2年間、1人が1匹の子犬を育てる「パートナードッグ」制度など、他校にはないカリキュラムが注目されている。

◆詳しくはつくば国際ペット専門学校のホームページ

歴史と伝統の水戸駅《茨城鉄道物語》18

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水戸駅

【コラム・塚本一也】県内の鉄道路線巡りは全て終了したので、今回から駅舎について少し語ってみようかと思います。その初回は、何と言っても水戸駅を取り上げなければならないでしょう。

常磐線水戸駅は1889年(明治22年)1月に開業しました。歴代の水戸駅の写真がJR水戸駅の駅長室に飾られているのですが、開業当時の写真を見ると、水戸駅南口のすぐ前には千波湖の湖畔が迫っているのがわかります。つまり、現在の水戸駅南口は、ほぼ千波湖だったのです。

1889(明治22)年の開業時の水戸駅の写真

私は1996年から98年までJR水戸支社に勤務しており、水戸駅周辺の工事に携わっておりました。当時、南口はまだ開発途中であり、造成工事の最中だったのですが、そこかしこから地下水が湧き出ていました。

また、当時私が担当していた工事で、水戸駅北口の東京方面に駅ビルを増築するプロジェクトがありました。腐葉土のような軟弱地盤を相手に、地盤改良工事に悪戦苦闘した思い出があります。入社5年目でまだ駆け出しの私にとって、様々なアクシデントを乗り越えた試練の現場でした。

「おもてなしの心」を感じる駅

そんな水戸駅ですが、1985年のつくば科学万博を機に橋上化し、「EXCEL(エクセル)」という名称で駅ビルもオープンしました。現在でも、水戸線を含めたJR線が3路線と私鉄では鹿島臨海鉄道線が乗り入れており、地方都市のターミナル駅を形成しています。また乗降客数も県内最多であり、JRだけでなく県内全ての路線と比較しても、その格付けはNO.1の駅です。

私の知人でつくば市を訪れた県外の方が、次に水戸市を訪れた時に、「つくば市にはない雰囲気だ」と、感想を述べられたことがあります。

水戸市にある雰囲気とは何でしょうか? やはり「歴史と伝統」の香りではないでしょうか。水戸芸術館や県民文化センター、また建設中の市民会館などもそうですが、文化を発信しようという意気込みが感じられます。

鉄道駅舎も同様であり、茨城県を訪れたお客様をお迎えする「おもてなしの心」を水戸駅に感じます。ただ単に旅客をさばくだけでなく、にぎわいを創出したり県産品を販売したり、そういった気遣いは他の駅にはありません。これからも県都の顔として、その存在感を示してもらいたいと思います。(一級建築士)

伝統の水府提灯をアートと融合 セキショウつくばでコラボ展

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ライティングされた場内

和の灯りによるインスタレーション(空間芸術作品)「エスキャットの夢」が、つくば市二の宮、セキショウつくばオフィス1階のショールームで展示されている。関彰商事(関正樹社長)と、ビジュアルアーティストのミック・イタヤさん(水戸市出身、筑西市在住)、県の伝統工芸品「水府提灯」を制作する鈴木茂兵衛商店(水戸市、鈴木隆太郎代表)のコラボレーション作品だ。

夕刻、ショールームの天井灯が消されると、約100個の提灯から柔らかい光が浮かび上がる。形はいずれもユニークで、花のつぼみや雲、きのこを模したものなどもある。「ろうそくの炎の揺らぎをプログラムしたLED電球から、和紙を透かして放たれた光は温かみがあり、心を落ち着かせてくれる。窓辺の細長い提灯は、継ぎ足すことでいくらでも伸ばせ、デザイナーの斬新な発想が生きている」と関彰商事広報の弓野亮さん。

未来の灯りを携えて飛び立とうとする、ユニコーンとペガサスが融合した「ユニサス」のオブジェ

これらは伝統の水府提灯をアートと融合させ、現代の暮らしに適した機能を持たせた「すずも提灯」のシリーズ。ミックさんの手によるユーモラスで洗練されたデザインは、インテリアやオブジェとしても利用度が高い。2012年のグッドデザイン賞(日本デザイン振興会主催)を受賞し世界から注目を集めた。

ミックさんは1954年生まれ、多摩美術大学卒。主な作品としてニューヨーク近代美術館に永久保存された1982年創刊のカセットマガジン「TRA」、2006年から銀座松屋のクリスマスキャンペーンに採用された天使のキャラクター「スターピッド」、2012年東京スカイツリータウン・ソラマチ各所に施されたウォールペインティングなどがある。

伝統工芸の振興もライフワークの一つ。「世界各地で受け継がれてきた伝統工芸品の多くは、その地方の人々の暮らしと密接な関係を持つ。特有の風土の中で育まれ、生活の道具や用品として発達してきた。伝統工芸を守ることは自然環境の保護や人の育成など、美しい未来につながる」と考えている。

これに関彰商事も、同社が掲げる「健全な次世代を創造する」というポリシーや、SDGs(持続可能な開発目標)への貢献に合致すると賛同し、今回のコラボレーションへと発展した。「今は企業も環境や未来に向けた姿勢が問われている。見る人を楽しませるだけでない、意義を持った活動をすることが大切と考え、新たな取り組みを始めた」と弓野さん。

場内にはミックさん直筆のイラスト15点が展示、窓ガラスにはエスキャットが描かれている。昼と夜の見え方の違いも楽しめる

今回、ミックさんが新たに誕生させたキャラクターは宇宙を旅するネコ「エスキャット」。会場の窓ガラスにも、さまざまな表情のエスキャットがカッティングシートで描かれている。展示に連動するフェイスブックページでは、地球に帰ってきたエスキャットがこの星の素晴らしさを再発見する様子を、イラストとストーリーで会期中毎日更新している。イラストは自由にダウンロードし、塗り絵として楽しむこともできる。(池田充雄)

◆インスタレーション「エスキャットの夢」は12月3日(金)~2022年1月23日(日)、つくば市二の宮1-23-6、セキショウつくばオフィス1階ショールームで開催。入場無料。館内見学は午前9時~午後5時、ライトアップは午後4時30分~午後9時。

ユーザーコミュニティで伝説、走行距離63万㎞【クルマのある風景】4

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伊藤春樹さん

聚文化研究所 伊藤春樹さん 土浦

土浦市中央1丁目で街づくりコンサルタント「聚文化研究所」を主宰する伊藤春樹さん(68)は、ある自動車のユーザーコミュニティーにおいて、伝説化した人物という意外な顔を持つ。

ある自動車とは、伊藤さんが所有していたスズキエスクード。1997年式の初代モデルだ。このクルマは伊藤さんの常用、仕事用として使われ、積算走行距離63万キロを刻んだ。参考として添えると、この車種の最長不倒距離はそれまで、兵庫県に存在した58万7000キロの個体であった。ところがこの個体は90年代に既に廃車にされており、販売したディーラーの店長しか実物を見ていない。

1997年から2019年まで走り続けた

1台の車がそれほどの距離を走ることができるのか? という検証は、あとに続く誰かがやらなくてはならなかった。

伊藤さんは当時、そのような挑戦の逸話を知らない。実家のある岩手県釜石市との行き来や、主に首都圏各地の街づくりコンサルティング業務、ライフワークの霞ケ浦環境調査フィールドワークなど、必要に駆られての運用を続けていた。

「エスクードは2台乗り継いでいます。最初の1台は排気量の小さなワインレッドの車体で、パワー不足は否めなかったけれど、使い勝手が良くて私の仕事にはベストマッチだった。2台目の銀色は2000ccに拡大されて、より扱いやすくなって、長距離も難なくこなせましたね」

最初の1台をなぜ乗り換えたかと言えば、タンクローリーに追突され全損したのだという。しかし四輪駆動車としての基本性能の高さと自身を生還させた頑丈さが、同じ車種を選択させるに至った。この偶然が、伊藤さんの運転によって2012年、ユーザーコミュニティー・ESCLEV(エスクレブ)で、エスクード史上2番目に積算走行距離50万キロを超えさせた。

「走行距離には何一つ意識することはなくて、日常の足として走らせていただけですが、友人で同じ車の所有者から『あなたを探している人がいる』と知らされて、コンタクトすることになりました。そのようなコミュニティーがあることも知らなかったのです」

ユーザーミーティングでは黒山の人だかりに

ユーザー間の交流に顔を出し、そこで伊藤さんがとてつもない記録保持者だという話題で、羨望の的となっていることを聞かされた。デイキャンプの会場では伊藤さんの車に人だかりができ、エンジンルームを覗き込む者、駆動系を見るために下回りに潜り込む者が相次ぐ。

「まあちょっと驚きでした。車のオーナーズクラブというと、敷居が高いものだろうと思っていましたが、彼等はクラブではなく『部室』だと言う。参加してもしなくても自由だし、日頃は誰もいないけれど、誰かが手をあげたら三々五々集まってくる。こういうスタイルは受け止めやすかったですね」

こうして伊藤さんの車は、一躍人気者になる。しかし伊藤さんは変わらず淡々と走り続け、2019年夏に60万キロを突破した。陸送トラックやタクシーの領域だ。古い四駆にはこれを上回るものもあるが、それらはおおむね頑丈なディーゼルエンジン。伊藤さんのようにガソリン車でこれをこなすのは大変なことだ。

「故障は、それらしき前兆を感じたら即座に整備に入れてきたので、ほとんど不調を出しませんでした。それでも20万キロを越えたところでエンジンのオーバーホールは行いました。普段、気をつけていることはあまりありませんが、仕事をする上で、途中で動かなくなるのは困るので、ちょっとエンジン音がおかしいなど気になることがあるとメーカーさんにもっていきました」

それでもここまで走らせると、エンジンオイルの流出が治まらなくなった。エンジンを降ろして重整備をするか迷ったが、同年秋、63万キロで引退させることとなった。「楽しいクルマでした。自分の年齢や体力のこともあり、後継はコンパクトな軽自動車にしましたが、これも意外にエスクードのコンセプトを引き継いでいるので、フィールドワークにはもってこいの1台です」

この車種のコミュニティーというくくりで、60万キロを超えた個体は、伊藤さんのほかにはまだ1台しかいない。乗り換えてもなお、伊藤さんは伝説的な存在として語り継がれている。(鴨志田隆之)

■聚文化研究所 土浦市中央1-12-5 電話029-885-7821

終わり

「マー姉ちゃん」再放送に思う 《遊民通信》30

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【コラム・田口哲郎】

前略

連続テレビ小説「マー姉ちゃん」の再放送が始まりました。昭和54年4月2日から9月29日に初放送されましたから、42年前のドラマです。原作は「サザエさん」の作者として知られる長谷川町子さんの自伝「サザエさんうちあけ話」。長谷川町子さんの半生を姉である長谷川毬子さん(マー姉ちゃん)に焦点を当ててドラマ化したものです。波瀾(はらん)万丈の人生を明るく生き抜く姿に励まされます。

「うちあけ話」は愛読書のひとつです。中学生の時から繰り返して読んでいます。もちろん、「サザエさん」「意地悪ばあさん」など漫画の方も読み込んでいます。「サザエさん」は4コマ漫画ですが、1コマ目を見せてもらえば、2コマ以降が思い浮かびます。

かつて、東京サザエさん学会なる団体がサザエさん研究を行い、『磯野家の謎-「サザエさん」に隠された69の驚き』が出版され、1993年のベストセラーになりました。当然読んで、漫画が研究できるんだ!と感動したのを覚えています。

よく読んでいる「サザエさん」

さて、その東京サザエさん学会の代表を、当時慶應義塾大学の教授・岩松研吉郎先生が務められていました。私が1度目の大学院生の時、とある教授の退官祝賀パーティーで、憧れの岩松先生を見つけました。立食パーティーでしたので、駆け寄って、著書のファンであると告げると、先生は快く雑談に応じてくださいました。

私は読書で気づいたことを矢継ぎ早にお話ししました。マスオさんは早稲田大学出身らしいけれども、長谷川町子さんの周囲の人には東京大学の人が多いからか、サザエさんには慶應色がありませんね、とか。サザエさんは庶民派と言われますけど、時代が進んで世田谷が武蔵野の田舎から高級住宅地になるにつれて、サザエさん一家の周りは庶民っぽくなくなりますね、とか。「君、ずいぶんよく読んでるんだね」と言われ、私はにんまりとしました。

「よく読んでるんだね」という言葉は、今思い出してもうれしいのです。字の本は読むのが遅くてはかどらないけれど、4コマ漫画はとても楽しいので、いくらでも読めます。読み返すたびに、新たな発見や気づきがあります。大学院生として字の本を読む重圧にへこんでいた時に、まったく畑違いのところで褒められた(?)ことが砂漠にわいた泉のように心を癒やしてくれました。

長谷川町子さんの師匠は「のらくろ」の田河水泡(たがわ すいほう)さんです。田河さんは全国の勤労少年を励まそうと、野良犬が上等兵になっていく「のらくろ」を描いたそうです。長谷川さんはその精神を引き継いだのでしょう。「マー姉ちゃん」でも語られていました。おかげで疲れ果てた院生をも励ましてくれました。これからも長谷川漫画は愛読書です。ごきげんよう。

草々(散歩好きの文明批評家)

ちょっと変わったレンタカー店【クルマのある風景】3

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家族ぐるみでお出迎え

トーヨーレンタカー 安達博司さん 土浦

土浦市からつくば市方面に伸びる国道125号沿道には、ディーラーや中古車販売、車両修理などの自動車関連企業が林立している。その中で、土浦市真鍋5丁目の八坂通りに面した老舗の東洋自動車販売(安達忠男社長)の一角に、息子の安達博司さんが営む「トーヨーレンタカー」がある。

2011年に設立された同社はまだ若く、レンターカー会社としては後発だ。しかしここで車を借りてみると、大手の同業者にはないサービスが数多くある。初動1時間の基本料金以降は、料金が1時間刻みというリーズナブルさで、ちょっとした試乗やドライブに利用しやすい。リピーターの中には1カ月単位で車種を指名する顧客もある。

レンタル車両の一部

「用途として必要な車だけでなく、あの車に乗りたいというニーズもあると思うのです。私の場合、ディーラーの営業出身ですので、マニアックなクルマをアピールしてきました。残念ながら時代の趨勢(すうせい)で人気車種はミニバン主体になり、セダンタイプをやめざるを得なくなりましたが、SUVのエスクードなどはよそでは無い車種でしょう」

安達さんの勧めるSUVは1世代前のミドルクラスサイズだが、料金はコンパクトクラスで設定されている。オフロード四駆に対する需要が薄い、と言ってしまっては身もふたもないが、気軽に、本格的な四駆を楽しめるという点で、同店の看板と評価されている。

創業時70台近くあった車両は40台に整理した。経営は決して安泰ではない。カーシェアリングシステムの成長によって、街の各所にレンタカーが置かれている時代だが、トーヨーレンタカーでは昔ながらの手法で顧客のもとへ車両を届け、また回収するサービスを行っている。コロナ禍の影響は手厳しく、行楽控えで業績は下降しているものの、そこにサービスの糸口も見出した。

「昨年から、チャレンジ100というプロジェクトを始めました。銀イオン(Ag+)を用いた車内消臭・殺菌サービスで、100台限定で無料施工させていただいています。ようやく目標の半数までご利用いただきました」

小さなオフィスに大きな夢が

現在は新車のリース販売も手掛けている。ここでもレンタルと同様、顧客から支払い額について要望を受け、利用しやすい価格設定を決めるという。「スーパー乗るだけセットと呼んでいます。7年間定額で新車とそれにかかる車両代や、付属品、7年分の税金・車検・メンテナンス維持費がほぼ全て含まれており、お客様にはあらかじめ残額を設定していただきます」

一方で、介護用品のレンタルや電動車いすの取り次ぎも開始した。「この10年、レンタカー主体でお客様と接してきて、お客様が抱える暮らしの悩みも沢山聞くことができました。私が感じたことは、子育て世代の主婦の方々が、家事と仕事の両方を抱えて大変な思いをされている点です。高齢者の介護も、家庭においては多くの場合、主婦の負担になっています。家庭が明るく楽しい、子供たちが笑顔になる。それにはお母さんが元気でなくてはならないんだと気づきました」

安達さん自身、家族ぐるみで会社を経営する。家族の支えがあっての自分であり、仕事だと痛感している。ディーラー営業マンから独立し、50歳に至る10年間で学んだことは「問題は聞かなければ解決しない。親身になってお客様の話を聞く」という理念と、その実行だという。「自分がしてほしいことをやっていく。単純な論理です。ありがとうとお客様が言ってくださる言葉は、なによりの応援です」

店舗前のヤードでは、これから貸し出す車両を妻の路恵さんがピカピカに磨き上げている。小学生の娘や姪御さんも、同社のホームページで宣伝担当として活躍する。ちょっと変わった小さなレンタカー店は、意外と、アットホームな街の個人商店という真骨頂を守り続けているのかもしれない。(鴨志田隆之)

■トーヨーレンタカー 土浦市真鍋5-16-34 電話050-5491-1227

人生100年時代のマネープラン 《ハチドリ暮らし》8

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庭のミカンの木

【コラム・山口京子】「人生100年時代のマネープラン」というテーマでセミナーを依頼されました。そのとき、2019年に話題になった「老後2000万円問題」のことが頭をよぎりました。金融庁の金融審議会報告書に載っていた、「老後の30年間で2000万円不足する」というデータ元は総務省の2017年家計調査報告でした。

それによると、月当たりの高齢夫婦無職世帯の収入は21万円台、支出は26万円台で、ざっくり5.5万円の赤字となり、それが30年続くと計算して出した数字です。また、この家計調査によると、高齢夫婦無職世帯の貯蓄は2484万円程度となっていました。

統計数字の平均はお金持ちが「かさ上げ」するので、実態を表してはおらず、注意が必要です。また、どこの機関が、いつどんな目的で、どんな方法で、どういった対象に向けて、どのくらいのサンプル数で、調査をしたのかによって、出てくる数字は変わってきます。

ですので、セミナーでは統計数字を参考にはしても、大事なのは我が家の家計であり、我が家の暮らし方、考え方、価値観に基づいて、お金の管理や生活設計をしましょうとお伝えします。

ちなみに、2019年の家計調査では、月当たり収入が23万円台、支出が27万円台で、ざっくり3.3万円の不足。2020年は収支とも25万円台で、ほぼ赤字は解消されています。解消された理由としては、コロナ禍で特別定額給付金などにより収入が増えたこと、外出制限などで支出が減ったことなどが挙げられます。

健康寿命・働く寿命・資産寿命を延ばす

老後の収入の基本となるものは公的年金ですが、それを補完するために働く人が増えています。政府も、高齢者の就労促進のための取り組みや法律改正を続けています。人生100年時代のポイントは、健康寿命・働く寿命・資産寿命3つを延ばすことです。資産寿命についていえば、生活を支える経済的基盤の見通しを立てることです。

そのために、①足元を確認するために資産の一覧表を作成する、②生活費とライフイベントにかかる大きなお金を見積もり予算化する、③年間の収入額と支出額を出して黒字か赤字を確認しその原因を分析する、④将来を予想するキャッシュフロー表をつくり100歳になるまでのお金の流れをイメージする―ことが大事です。そうして1年ごとに家計を確定し点検してほしいとお願いします。

庭のミカンが色づき始めました。毎年、肥料もやらず手入れもしないのに実がなります。ミカンの木にもお日様にも感謝です。(消費生活アドバイザー)

筑波大教授、強制わいせつ容疑で逮捕

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記者会見を開き謝罪する加藤和彦副学長(左)ら=つくば市天王台、筑波大学

筑波大学教授が強制わいせつ容疑で7日、つくば警察署に逮捕されたとして、同大は同日、記者会見を開き「大学としてこのたびの事態を極めて重く受け止めています。被害者の女性に対し心からお詫びします」と謝罪した。

逮捕されたのは生命環境系長の男性教授(61)。今年4月から9月にかけて同大の研究室で、20代の女子学生の胸などを複数回触ったとされる。

同大によると、被害学生本人から9月28日、同大のハラスメント相談センターに「先生の研究室でセクハラ行為を受けた」などの相談があった。

10月11日、加藤和彦副学長に報告があり、加藤副学長は同日、被害学生の話を聞いた上で、男性教授に対し、被害学生とは接触せず電子メールなども送らないよう申し渡した。

その後11月2日から同大懲戒審査委員会が、双方から聞き取り調査などをしていたという。同大は、男性教授がわいせつ行為を認めたかどうかについては調査中だとしている。

一方、その後も男性教授は、他の学生に対し教育・研究の指導業務を行っていた。

男性教授は1998年、筑波大に赴任し、今年4月、生命環境系長に就任した。教員と研究生約300人を束ねる立場だったという。

加藤和彦副学長は「本学の教員が強制わいせつ容疑で逮捕されたことは誠に遺憾で、大きな衝撃を受けている。国立大学法人の教員という立場の者が、構内でかかる行為を行ったことは許されざること」とし、今後、詳細が明らかになった段階で厳正な処分を行うとしている。

同大は「これまでも法令順守や職員倫理について指導を徹底してきたが、このたびの事態を受け、全学を挙げて更なる取り組みの強化を進める」としている。

50年の味、Aセットが出迎える【クルマのある風景】2

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2代目店主の平田貴夫さんとスカイライン。20代から乗り続けるスカイラインは店の看板

和風レストラン キャニオン 平田貴夫さん つくば

「表筑波スカイラインをドライブして、下大島の古いレストランで食事をした後、うちにやってくるお客さんがいます。そういったミーティングとドライブコースがあるそうですよ」と、前回取材したノスタルヂ屋の松浦正弘店主が教えてくれた。

つくば市下大島の古いレストランといえば、「和風レストランキャニオン」に違いない。創業して50年を過ぎている。昔から国道沿いのにぎわう店舗として地元の常連客やクルマ好きがやってくる。創業者である平田和夫さんが、無類のクルマ好きだったこともあり、当時の言葉で言えばドライブインとして成功した店だ。

創業50年を超える老舗レストラン

平田さんは2018年に亡くなり、助手として厨房に入っていた息子の貴夫さん(51)が2代目となって切り盛りしている。メニューは50年の間に増えているが、ほとんど変わらない和風の洋食が出迎える。

「1970年の秋、翌年の冬に私が生まれる直前、開店させたんです。親父はもともと県職員で土地改良区の仕事をしていたんですが、突然それを辞して、土浦駅前で料理人の修業を始めたそうです。亡くなる直前まで現役のシェフでした」

先代から受け継いだメニューのうち、定番となっているのがAセット。ハンバーグ、エビフライ、カキフライの3種を4通りに組み合わせ、ひとつを選ぶ趣向は、同店の有名な料理だ。多くのクルマ好きがAセットを求めて、ときには広島県や北海道からの来店もある。

Aセットのすべて。タルタルソースも絶品

「親父はモータリゼーションを目の当たりにして、やりたいことを見出したんだと思います。かっこいいクルマ、家族連れのクルマ、陸送のドライバーに美味しい料理を提供して、自分も車談義をしたい。そういう背中を見てきたせいか、私も車が好きで…」

貴夫さんは会社勤めを経て42歳の時に実家へ戻り、厨房に立った。20代の頃手に入れた、R31、7代目の日産スカイラインが、店の前に看板のように置かれることとなった。スカイラインに乗ったのは、少年時代に見ていたテレビドラマの影響だという。「本当は6代目のR30が欲しかったんですが、今ではこのR31スカイライン一筋です。お客様が聞きつけて、同じ車種同士で訪ねてきてくれるようになり、そうなると親父はもう厨房を飛び出して話をしたくて仕方がなかったようです」

クルマ好きの来るお店という成り立ちをきっかけに、貴夫さんと仲間とで「筑波山ミーティング」を企画することとなった。これがどうやら、ノスタルヂ屋の松浦店主が話していたドライブコースの誕生らしい。

筑波山ミーティングをけん引する高槇さんと

キャニオンを訪ねた日、偶然にもミーティング立ち上げに関わった高槇健太郎さんも居合わせ、車談義が始まる。

「最初は3人で企画を立てて、6台の車が集まりました。朝日峠の駐車場を使わせていただくので、まずごみ拾い活動。そのあと互いのクルマの品評会をやって、筑波スカイラインを風返峠まで走り、八郷(石岡市)に降りて朝日トンネルをくぐって、昼過ぎにここで食事をするんです。今は30台ほどの規模になっています」

高槇さんはミーティングの様子を説明しながら、「いわゆる走り屋、暴走族と勘違いされたくない。だからクラブやチームのような型にははめず、車種も限定せず、ちょっと古い世代のクルマを好きな人たちが、来られたら来るというスタイルで年3回開いています」と付け加える。そのスタンスはとても大事なことだ。

貴夫さんは店を経営する立場上、今はミーティング現場に出かけられない。その代わりに空腹でやってくる仲間たちに温かい料理を作る。昨年はコロナ禍の影響で中止となったが、9年目の今年は、12月に開けるかどうか検討中だ。

「会えて良かった! これが当店のキャッチフレーズです。親父の口癖でした。立ち寄ってくださる人、常連になってくれた人、皆さん共通する何かがあるのだと思います。そのご厚意に支えられての51年目です」貴夫さんは目を細めながら、うれしそうに語る。来客からのオーダーが入る。やはりAセットだった。(鴨志田隆之)

和風レストラン キャニオン つくば市下大島422-1 午前11時開店 月曜定休

グローバリゼーションに新ルール 《雑記録》30

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【コラム・瀧田薫】ダニ・ロドリック氏が「グローバリゼーション・バラドクス(The Globalization Paradox)」(2011年)を出版してから、今年でちょうど10年になります。この間、「グローバリゼーション」に関する論文・著作が数多く発表・発行される中で、この本の存在感はまだ失われていません。

この書物が発行された当時、著者は世界経済の「政治的トリレンマ」(民主主義、国家主権、グローバリゼーション)を同時にバランスよく追求することは不可能で、旗色の悪くなった国家主権と民主主義を守るために、グローバリゼーションをある程度制限することもやむを得ないと主張しました。

この主張を経済学の観点から見れば、いわゆる新自由主義的論理が市場と政府は対立関係にあると考えるのに対して、金融、労働、社会保障など、国家がコントロールする諸制度が補完しない限り、あるいは政府による再分配やマクロ経済管理が機能しない限り、市場はうまく回らず、秩序あるいは社会的安定も確保できないとする考え方と言えるでしょう。

政治学においても、国家の統治能力の向上なしに持続的な経済発展は望めないとの見方が有力ですし、ロドリック氏の考えは正鵠(せいこく)を射たものと思われます。

主権国家が新たな規制枠を用意

ちなみに、10月13日、主要20カ国・地域(G20)が、先に経済開発協力機構(OECD)がまとめた新しい国際課税ルールについて支持を表明しました。

内容は、法人税の国際的な課税最低税率を15パーセントとするほか、巨大IT多国籍企業を対象にした「デジタル課税」を導入することです。なお、G20は2023年の新ルール導入に向け各国それぞれに努力するよう求めています。

この新ルールは歴史的と評されていますが、その理由は2つあります。1つは、1980年代から続いてきた法人税率引き下げ競争の方向性を逆転させようとしていること、もう1つはGAFAM(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、マイクロソフト)に代表される巨大多国籍企業への課税強化の機運を高めたことです。

これらの企業は、これまで国際的な租税回避策により利益をためこんできました。今回のルールが導入されれば、主権国家の公的サービスが財源確保に向けて大きく前進します。つまり、主権国家の側がグローバル化に対する新たな規制枠を用意することで、大きくなりすぎた富の格差を是正する分配政策への道を開いたということです。

ただし、2023年に新ルールが導入できるかどうか、懸念材料もあります。たとえば、来年のアメリカ中間選挙で、バイデン与党が大敗するとの予想があります。そうなると、アメリカにおいて新ルールの導入はまず実現しません。トランプ前大統領の「アメリカ第一主義」の復活です。

現在、バイデン政権の支持率は低迷し、与党民主党のコントロールさえままならないとの報道もあります。結局、グローバル化とアメリカの国家主権、それにアメリカの民主主義、この3要素が織りなすトリレンマに、まだしばらく付き合うしかなさそうです。(茨城キリスト教大学名誉教授)

商品はカタログや自動車雑誌【クルマのある風景】1

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レコード店のように見えるがクルマとオートバイのカタログ専門店。外観(左)と店内

サーキットのモータースポーツでもオフロードのクロスカントリーでもなく、日常にある自動車と向き合う人々は数多く存在する。ニッチ(すきま市場)とも、趣味の世界ともいえる、つくば、土浦のクルマのある風景をたずねた。

ノスタルヂ屋 松浦正弘さん つくば

つくば市花畑に所在する「ノスタルヂ屋」は、一見すると昔ながらのレコード店のように見える店内だが、ここで取り扱われているのは音盤ではない。ジャンル別、メーカー別、車種別に分類された、1950年代くらいから現代に至る、内外各自動車メーカーが販売した自動車、オートバイのカタログや自動車雑誌が商品、まさしく趣味の世界だ。

そんな品物に商品価値があるのかと言えば、興味のない人には古本以下だが、かつて乗ったことのあるクルマ、昔からほしかったクルマを手に入れた、そのような人々には至高の宝物がカタログなのだ。

店主の松浦正弘さん(69)は、20代の頃に東京・中野区で「ブックガレージ」という名の店を起こし、40年を超えてこの商売を続けている。自動車雑誌がオールドカーの特集を組み、特定車種のヒストリー記事をまとめる際、自動車会社にさえ現存しないカタログなら編集者は松浦さんのもとを訪ねる。

店主の松浦さん

「つくば市に移転してきたのは1996年のことです。僕は静岡県の浜育ちだったので、年をとったら山が近くにあって、そこへドライブできるところに住みたいなと思って」

つくば市にはかつて日本自動車研究所の谷田部テストコースがあった。近隣には筑波サーキットがあり、筑波山にはツーリングのメッカとも言うべき筑波スカイラインがある。筑波研究学園都市の成熟も見据えると、松浦さんにとって東京に次いで居を構える理想の地だった。

松浦さんはインターネットもSNSも利用しない。カタログの問い合わせは電話対応のみだ。さもなければ直接来店するしかないという、売り手市場にも見える商売を続けている。「掘り出し物という言葉があるでしょう。それは、自ら見つけ出してこその価値なんですよ。お暇なときに何度か来店していただいて、目当てのカタログを見つけ出せたら、きっとうれしいはずです」

お客を突き放しているわけではない。かかってくる電話には時間をかけて丁寧に要望を聞き、在庫の有無を伝え、取り置きする。開店休業のように見えてもそこそこの来客がある。そうなると店舗を離れるわけにも行かず、ずっと執務デスクで店番をするしかない。

「最近、寂しいと感じるのは、大量のカタログを売りに来るお客さんの傾向が変わったこと。聞けば断捨離なんです。あれほど焦がれてコレクションしていたものと離別する思いを聞くと、僕もつらいですね」

それでも人から人へ、1冊のカタログが品質を保持された状態で渡り歩いていく。それが松浦さんの密かな楽しみでもある。

貴重なカタログ起こしのポストカード(左)と松浦さんの著書

ノスタルヂ屋には、もうひとつの貴重な商品がある。70年代以前のカタログから起こされたクルマやオートバイのポストカードだ。著作権や版権に縛られた現在では、このような企画を立てることは困難だ。商品と言いながら、一定額以上の買い物をしてくれたお客にはサービスで提供してしまう。「各メーカーともおおらかな時代があったんです。私のような個人経営者でも信頼を得られて、二つ返事で使用許諾がとれましたから」

いま、店内には何冊くらいのカタログ在庫があるのかを聞いてみた。松浦さんはにこにこしながら「さて、全車種合わせて1000冊ほどはあるんじゃないでしょうか。私にも分かりません」と話す。掘り出し物を見つけるコツは、毎月企画している、特定車種や年代に限定したフェアだそうだ。普段は倉庫入りしているとっておきのカタログが、そのときだけ並んでいる。(鴨志田隆之 4回シリーズ)

ノスタルヂ屋 つくば市花畑1-12-17 営業時間:正午~午後8時  定休日:毎週木曜

市民グループがつくば市長を追撃 《吾妻カガミ》121

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つくば市役所正面玄関サイド

【コラム・坂本栄】今年5月に市民グループから「センタービル再生事業」の進め方がおかしいと指摘された五十嵐つくば市長。今度は「1期目退職金22円」はおかしいとその政治スタンスが追及されています。センタービル問題(監査請求→住民訴訟)に続く退職金問題(監査請求)。五十嵐さんの周辺がまた騒々しくなってきました。

22円市長は624万円を賠償せよ!

市に対する新たな監査請求は、五十嵐さんが2016年の市長選挙で掲げた公約「市長特権の退職金廃止」をめぐるものです。実際は、退職金ゼロは制度上無理と分かり、議会で特例条例を通してもらい(2020年9月18日)、最少額の22円を受け取りました。市民グループ(代表=酒井泉さん)は「自分を犠牲にして市民のために尽くす市長」像を市民の間に広げることを狙った選挙戦術と批判。公職選挙法上も問題があると主張しています。

退職金問題の監査を求めて、市に出された文書(11月16日付)のポイントはいくつかあります。その内容を紹介する前に、議論になっている数字を押さえておきます。退職金受け取りに備えて市が自治体職員退職金プール組合に払い込んだ金額=624万円、規定による1期分の市長退職金=2040万円―です。

ポイント1は、市長は22円しか受け取らず、市が払い込んだ624万円はムダになったのだから、市は市長に624万円の損害賠償を求めよ―。その2は、退職金制度では2040万円もらえることになっていたのに、受け取らなかったのだから、市は退職金プール組合に払い込んだ624万円を返してもらえ―。その3は、そもそも22円条例が問題なのだから、市は同条例が違法であることを認めよ―。いずれも面白い視点です。

順番が逆になりましたが、ポイント3の違法性は、公職の候補者は寄付行為をしてはいけないとしている公選法199条3に照らして、22円退職金は市に対する寄付(金額は624万円マイナス22円)に当たるから違法だ、という主張です。監査結果はどうなるでしょう? センタービル問題の方は、コラム113「五十嵐つくば市長 今度は被告席に」(8月16日掲載)をご覧ください。

つくば市民は市長に軽く見られた?

この問題についてはコラム91「つくば市長の退職金辞退に違和感」(2020年10月5日掲載)でも取り上げ、「五十嵐さんは選挙での『受け』を意識して、2016年の市長選で市長退職金廃止を公約、20年の市長選を前に公約を実行に移したのでしょう。廃止公約が市長選ではプラスに働き、公約を守らないとマイナスに作用すると判断したようです」と指摘しました。言い方は違いますが、市民グループの先の受け止め方と同じです。

退職金辞退は一種のポピュリズム(大衆迎合的な政治スタンス)であり、つくば市民は五十嵐さんから軽く見られたのではないでしょうか?

ある市長からこんな話を聞きました。五十嵐さんが22円退職金について記者発表(2020年6月5日)する直前、SNSの県南市長情報交換欄にその旨通告があったが、他の市長からは「賛」はもちろん「否」のコメントも出ず、白けムードが漂ったというのです。皆さん、対抗馬にこんな公約を出されたら、施策を競うべき選挙が歪(ゆが)んでしまうと思ったようです。(経済ジャーナリスト)

つくばの市街地にイノシシ出没

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つくば市学園の森に11月下旬に設置された注意喚起と情報提供を呼び掛ける看板

つくば市の市街地にイノシシが出没している。11月初旬から12月初めに天久保4丁目、学園の森、天王台付近で相次いで目撃された。農村部ではイノシシによる農作物被害が大きな問題になっているが、街中でイノシシが目撃されるのは同市で初めてだ。市や警察は連日パトロールを実施している。現時点で被害の報告はない。

市鳥獣対策・森林保全室によると、11月4日、松塚と古来で目撃された。その後、7日に筑波大学近くの天久保4丁目の住宅地で目撃され、20日と21日には学園の森の商業施設周辺で目撃された。11月25日から12月4日には天王台で目撃された。

大きさなどは不明だ。これまで市内各所で目撃されたイノシシが同じ個体なのか、別の個体なのかなども分かっていない。

目撃場所付近では、市と警察などが巡回を続けているほか、学園の森付近では目撃場所近くにわなを設置している。3日までにまだ捕獲されていない。

「初期段階の対策重要」

農研機構畜産研究部門 動物行動管理研究領域の平田滋樹上級研究員。右の画像はイノシシの頭とあごの骨

つくばの街中にどうしてイノシシがいるのか。農研機構畜産研究部門 動物行動管理研究領域の平田滋樹上級研究員は「いつ、どこから来たのかは分からないが、イノシシは平地の休耕地や平地林、やぶなどが好適地。つくばは市街地でも豊かな自然が広がっているので、市街地でイノシシが目撃されても不思議ではない」と話す。平地林ややぶなどで、ススキやクズの根っこ、ドングリなどを食べているという。

目撃した場合の対応については「イノシシは警戒心が強い。石を投げたり、犬をけしかけたりなどは絶対せず、その場からそっと立ち去ってほしい」と話す。

一方「初期段階でどれだけ早く対策をとれるかで、その後の増え方が変わってくる」とし、住民ができることとして「目撃したら、日付けと時間、どっちに行ったかをメモし、行政に通報してほしい」とする。情報がたくさん集まれば集まるほど、居場所を絞り込むことができる。

さらに、えさを置いたり、飲食容器のごみを捨てると知らず知らずのうちに餌付けになってしまったり、人を恐れなくなってしまうので、餌付けやポイ捨てをしないことが重要だと強調する。

イノシシはどこに食べ物があったか覚えていて、目撃場所周辺に再びやって来ることがあるという。草が茂っていると茂みに隠れて、急にとび出してくる恐れがあるので、目撃場所付近では草を刈って茂みを減らすことなども対策の一つになるという。

市内では2018年1月、同市沼田のつくば霞ケ浦りんりんロードで住民2人が相次いでイノシシに襲われ、けがをする事故が発生している。

つくば市内の市街地でイノシシを目撃した場合の連絡先は以下の通り。
市役所鳥獣対策・森林保全室 電話 029-883-1111
つくば警察署  電話 029-851-0110

やっかいな「完璧主義」《続・気軽にSOS》98

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【コラム・浅井和幸】心理相談をしていて、頻繁に出てくる自己評価に「完璧主義」というものがあります。「自分が苦しいのは完璧主義だからです。それが悪いのは分かっているのですが、やめられないんです」という感じですね。

きっと元気なころは、完璧に仕上がるようにやり抜こうという強い意志で、様々な物事に対処してきたのでしょう。そして、それがうまく機能していた。しかし、そうそう完璧に物事をやり遂げられることが続くとは限りません。

そのうち、完璧じゃなくても物事を先に進めなければいけない場面に出くわすでしょう。それは、締め切りなのか、体力なのか、技術なのか、認識なのか―何かしら有限の壁にぶつかります。

何とかできる範囲で仕上げようと、適当なところで切り上げられればよいのですが、できないと心身ともに疲労が蓄積されていきます。その疲労のため、完璧にやり遂げようではなく、完璧にできないのであればやらないという考えや行動につながります。心身のストッパーが効いて、考えや行動ができなくなる状態です。

「なんとかなるさ」「適当に行こう」

それを、さらに無理して動いたり考えたり、完璧を目指すと、疲労は限界を超えます。過ぎた完璧主義は、オーバーワークになりやすいといえるでしょう。そうすると、心身にダメージを負い、適応障害やうつ病などの病を発症するかもしれません。

オーバーワークを一要因としてパニック障害となり、パニック発作を起こすかもしれません。パニック発作には、動悸(どうき)、手足の震え、発汗、息苦しさ、吐き気などが生じ、時には死んでしまうかもしれないという恐怖に襲われることもあります。

これらはある特定の場面で起こることがあり、人によって、飛行機に乗ること、車の運転をすること、テスト、舞台やプレゼンなどで緊張する場面で起こります。

それが繰り返されると、その場面を思い起こすことで発作が出ることもあります。明日仕事で飛行機に乗らなければいけないと考えるだけで、動悸が激しくなり、過呼吸を起こし、死んでしまうのではないかという恐怖に包まれるという状態です。

これらは自分1人で直そうと思えば思うほど、症状が悪化しやすいものです。適切な薬物療法と精神療法を受けるようにしてください。1000人に6~9人の人がパニック障害になるともいわれていますので、珍しい病気ではありません。

恥ずかしがらず、そして怖がり過ぎずに、病院や保健所、精神保健福祉センターなどに相談してみてください。茨城県には無料相談所があります。パニック障害は厚労省のページが分かりやすいと思います。

そして、次の呪文を唱えてみてください。「大丈夫、なんとかなるさ」「大したことない、適当に行こう」。(精神保健福祉士)

電子顕微鏡でミクロの世界体験 土浦一高で科学実験講座

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熱心に電子顕微鏡の走査画像に見入る生徒たち=土浦一高科学実験室

県立土浦一高(中澤斉校長 生徒数911人)の産学連携科学実験講座が3日、土浦市真鍋の同高科学実験室で行われた。電子顕微鏡の日本電子(本社・東京都昭島市)の理科支援チームが走査型電子顕微鏡(SEM)を持ち込んで指導。生徒たちは3時間にわたる講義と実習で「ミクロの世界」に没頭した。

日本電子CEOの栗原権右衛門会長が同高OBという縁で、実現した電子顕微鏡体験の機会。昨年予定されていたがコロナ禍で中止となり、2年越しの開催となった。定期テストの最終日午後に組まれた日程で希望者を募り、付属中学校の生徒13人と高校1年生19人、2年生1人が参加した。

栗原会長自ら来校し、「岸田内閣は科学技術立国をいうが、それを支えるのは、人材と電子顕微鏡などの観測装置だ。こうした機会を増やし、若い人たちの間で進んでいるという理科離れに待ったをかけたい」と後輩たちの授業を見守った。

後輩たちに科学の志を説く栗原日本電子会長(右)=同

電子顕微鏡の構造や見え方についての講義を受けた後、生徒たちは顕微鏡写真を見比べるグループ、教室に持ち込まれた卓上型のSEMを操作して実地に観察するグループなどに分かれて、ミクロの世界を体験した。短い波長の電磁波で物体を観察する電子顕微鏡は単色の画像となるが、拡大・縮小したり、焦点深度を変えるだけで多彩な驚異の世界が展開する。

同高では生徒たちがチームを組んで行う探究学習活動があり、「マイクロプラスチック」を研究テーマにした1年生のチームは事前に霞ケ浦で採集した試料を濾紙(ろし)でこしとり、乾燥させて同社に送っていた。試料は検体となって実験室に持ち込まれた。

検体は1000倍に拡大すると様々な物体がクローズアップされるが、プラスチックかどうかは容易に特定できない。SEMは対象を限定すると、瞬時に元素分析まで行ってしまう装置で、生徒たちは表示を見ながら「炭素が多い」「どうも鉄みたいだ」と走査を繰り返し、画像をプリントアウトした。

高校1年の澤出愛美さんは「これがあやしいってところまでしかいけなかったが、とても貴重な体験ができた。今回のデータをもとに専門家の意見を聞いたりして成果をまとめていきたい」と語った。探究学習活動は来年3月に成果発表が予定されている。(相澤冬樹)

つくば駅前にチャレンジショップ2店オープン

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弁当店を出店した宮崎絵美さん(左)と古着店を出店した岡本萌実さん

つくば駅前の商業施設キュート1階とBiViつくば2階に3日、古着店と弁当店がそれぞれオープンした。市内での新規出店や創業を目指す若者を後押しする市のチャレンジショップ事業で、来年2月末まで期間限定で出店する。

自分に合うおしゃれをコーディネート 古着店

古着店は、筑波大学理工学群社会工学類2年の岡本萌実さん(20)が代表を務める「リリー・オブ・ザ・バレイ(Lily of the valley)」で、約90平方メートルの店舗に、ジーンズやジャケット、シャツ、スカート、ワンピースなど1着3000円から6000円の普段着約300点が並ぶ。中高生や大学生など若い世代がターゲットで、アクセサリーやバッグなどもある。

岡本さんは秋田県出身。服が好きで、高校1年の時から、自分が着ている服を写真に撮り、コーディネートのポイントと共にインスタグラムでほぼ毎日紹介してきた。大学に入ってからはアパレル会社から依頼を受け、はやりの服を紹介したり、コーディネートの相談に乗ったり、服を貸し借りする市内の大学生同士のLINEグループを立ち上げるなどしてきた。友人から服のコーディネートを頼まれることも多いという。

ファッションへの愛が高じ、着られてない服を次の持ち主に届けて服を循環させ、さらにファッションの相談に乗りながら、昨日よりちょっぴりおしゃれになれる場所をつくりたいと、市の事業に応募し出店した。

古着店を運営するスタッフは筑波大生17人。古着などを購入する資金は、岡本さんが知人らを集めて事業提案し約100万円を集めた。スタッフが千葉県内などの古着卸業者に買い付けに行く。

店名のLily of the valleyは、すずらんを意味する。花言葉は幸福の再来で、着られなくなった服を次の持ち主に届け再び幸福にするという願いを込めた。

岡本さんは「その人に合う色やコーディネートを提案したい」とし「古着好きだけでなく、自分に合う色や自分に似合うおしゃれが分からない人も気軽に来て、相談してほしい」と話す。来年夏には筑波大近くに古着店を出店する計画もある。

野菜の味を発酵調味料で引き出す 弁当店

弁当店は、今年3月、埼玉県からつくば市に移住してきた発酵料理家の宮崎絵美さん(38)が経営する。店名は「森と海のおべんとう」で、市周辺の農家が栽培した無農薬野菜を、宮崎さんが、みそや麹(こうじ)、酒かすなど発酵調味料で料理した手作りの弁当と惣菜を販売する。

店舗はBiViつくば2階の約25平方メートル。3日の弁当のおかずは、白菜とカリフラワーの鶏ブロス煮込み、切干大根と豚の甘酒アラビアータ、ブロッコリーソースのフワとろ卵焼き、熟成ビーツと有機ニンジンのサラダなど。ごはんは合鴨農法で栽培した白米に黒米を混ぜた。

つくば市と守谷市内3カ所の農家から仕入れた野菜を、栄養素などが逃げないよう、水を使わず野菜に含まれている水分だけで無水調理し、野菜本来の味を引き出しながら発酵調味料で味付けする。

弁当は8種類のおかずが入った1200円(税込み)のものと6種類が入った850円(同)の2種類で、おかずと惣菜は、季節ごとに変わる。水、木、金曜の週3回、弁当は1日限定40食を販売する。

宮崎さんは千葉県出身。大学を卒業後、外資系の広告代理店に勤めた。深夜まで働きづめの日々を10年ほど続けたが、30歳手前で体と心のバランスを崩し、自分は何のために生きているのか、自分の時間の使い方を変えたらもっと人を幸せにできるのではないかと考えるようになった。母親ががんを患った時期とも重なり、大事なのは自分の健康と家族だと、32歳のとき会社を辞めた。

その後、千葉県いすみ市で、自給自足の生活を送りながら暮らすグループに参加し、1年間ほど住み込みで農業をしたり、発酵調味料作りを学んだり、カフェを手伝うなどした。食を一生の仕事にしようと決意し、続いて南アフリカに赴きオーガニックマーケットを学ぶなどした。

帰国後は、子育て中の母親の家などに出向きケータリングや出張料理をした。しかしコロナ禍で仕事のスタイルの変更を迫られ、今年3月、もともと野菜を仕入れるため通っていたつくば市に移住した。9月からは、閉店したレストランの厨房を借りて、市内で弁当の販売をスタート。今日収穫した野菜を、明日のお弁当で出せる農家との距離感が、つくばを選んだ理由という。

これまでの活動を通して「発酵調味料を使った料理方法を教えてほしいとか、みそ作りのワークショップを開いてほしいとか、子どもと一緒に畑に行って皆で料理がしたいとか、いろいろな声をいただいた。ママコミュニティーを盛り上げ、一緒に地域をつくり上げる活動をしていきたい」と話す。

13人が応募

チャレンジショップ事業は、市がセキショウキャリアプラスに委託して実施している事業で、今年度で3年目。出店者の家賃を補助するほか、経営の専門家がアドバイスしたり、顧客や販路開拓を支援する。今年は7、8月に出店者を公募し、13人の応募者の中から、長期出店者として岡本さんの古着店と宮崎さんの弁当店、短期出店者としてほかに3人が選ばれた。今年度の事業費は約1140万円。

小春日和は「小野の里山」散歩 《ポタリング日記》3

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小町の館(左)とそば焼酎「土浦小町」

【コラム・入沢弘子】畑の小道に自転車を止めて山の稜線(りょうせん)を眺めていると、パラグライダーの鮮やかなキャノピーが降りてきました。黄金色に輝くイチョウの大木。枯れ葉色の田畑でひときわ鮮やかな枝に残る柿の朱色。時間の流れがゆっくりと感じられます。土浦市小野地区は、小野小町伝説の残る地域。なだらかな山に囲まれた日本の原風景のような眺めです。

車は観光施設「小町の館」に止め、トランクから愛車「BROMPTOM(ブロンプトン)」を取り出します。館でいただいた周辺案内マップを片手に出発です。まずは先ほど見えた大イチョウを目指しましょう。

大きな水車の横の道をハイキング姿の方々に混ざって進みます。木の下にはたくさんの石碑がありました。文字や仏像が彫られたものが並んでいます。高い石に記されたのは十九夜塔の文字。道に戻り、腰掛石・朝日峠展望公園の看板に沿って進みます。木道で沢を渡ると石が現れました。小野小町が山越えの途中でひと休みしたと言われる腰掛石。三段の階段状の平坦な石は座り心地がよさそうです。

一気に坂を下り集落沿いの道を進むと、また石碑が目につきました。二十三夜塔と記されています。道の奥に見える拝殿に近づくと、日枝(ひえ)神社でした。どうやら裏口から入ってしまったようです。以前に流鏑馬(やぶさめ)を見に来たことを思い出しました。日枝神社の流鏑馬は長い参道で行われます。満開の桜の下、鮮やかな衣装で白馬に跨る射手。走りながらではなく、立ち止まって射る姿も印象的でした。

そば焼酎「土浦小町」を購入

次は坂東三十三観音第26番札所の清瀧寺(きよたきじ)を目指します。県道199号を筑波山方面に渡り、分かれ道を清滝寺の看板方向へ行くと大きな石碑が現れました。大きくカーブする道の右側に石碑群。文字を刻んだものに加え、仏像も見られます。風化して丸みを帯びて優しい表情。薄暗い坂を上っていくと、重厚感のある山門が見えてきました。

自転車を止め石段を上ります。静寂の中で本堂に参拝。大師堂の弘法大師石像は浸食もなく、はっきりとしたお顔立ちです。戻る途中に見つけた、翠巌山向上庵(すいがんさんこうじょうあん)の石碑方向に細い坂道を行くと古い石段が出現。檀家以外の入山は遠慮くださいとの貼り紙があり、引き返します。

小町の館に戻り、そば焼酎「土浦小町」を購入。今年初めて土浦市産の常陸秋そばで醸造され、新そばの時期に発売になったばかりだそうです。石仏が気になったので調べてみたら、「土浦の石仏-新治地区編-」の図録が市立博物館と考古資料館で販売されていることが分かり、帰りがけに入手しました。

2014年発行の図録によると、小野を含む新治地区には682基の石仏が確認されたそうです。石仏の所在がわかる地区別の地図や形状の説明や写真も掲載されています。来年は、新治の里の石仏を訪ねるポタリングもいいかもしれません。

焼酎のお湯割りのグラスからは、ふくよかな香りが立ちのぼっています。仏像の穏やかなお顔が思い出され、ふわっと、温かい気持ちになってきました。(広報コンサルタント)