土曜日, 7月 2, 2022
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ユーザーコミュニティで伝説、走行距離63万㎞【クルマのある風景】4

聚文化研究所 伊藤春樹さん 土浦

土浦市中央1丁目で街づくりコンサルタント「聚文化研究所」を主宰する伊藤春樹さん(68)は、ある自動車のユーザーコミュニティーにおいて、伝説化した人物という意外な顔を持つ。

ある自動車とは、伊藤さんが所有していたスズキエスクード。1997年式の初代モデルだ。このクルマは伊藤さんの常用、仕事用として使われ、積算走行距離63万キロを刻んだ。参考として添えると、この車種の最長不倒距離はそれまで、兵庫県に存在した58万7000キロの個体であった。ところがこの個体は90年代に既に廃車にされており、販売したディーラーの店長しか実物を見ていない。

1997年から2019年まで走り続けた

1台の車がそれほどの距離を走ることができるのか? という検証は、あとに続く誰かがやらなくてはならなかった。

伊藤さんは当時、そのような挑戦の逸話を知らない。実家のある岩手県釜石市との行き来や、主に首都圏各地の街づくりコンサルティング業務、ライフワークの霞ケ浦環境調査フィールドワークなど、必要に駆られての運用を続けていた。

「エスクードは2台乗り継いでいます。最初の1台は排気量の小さなワインレッドの車体で、パワー不足は否めなかったけれど、使い勝手が良くて私の仕事にはベストマッチだった。2台目の銀色は2000ccに拡大されて、より扱いやすくなって、長距離も難なくこなせましたね」

最初の1台をなぜ乗り換えたかと言えば、タンクローリーに追突され全損したのだという。しかし四輪駆動車としての基本性能の高さと自身を生還させた頑丈さが、同じ車種を選択させるに至った。この偶然が、伊藤さんの運転によって2012年、ユーザーコミュニティー・ESCLEV(エスクレブ)で、エスクード史上2番目に積算走行距離50万キロを超えさせた。

「走行距離には何一つ意識することはなくて、日常の足として走らせていただけですが、友人で同じ車の所有者から『あなたを探している人がいる』と知らされて、コンタクトすることになりました。そのようなコミュニティーがあることも知らなかったのです」

ユーザーミーティングでは黒山の人だかりに

ユーザー間の交流に顔を出し、そこで伊藤さんがとてつもない記録保持者だという話題で、羨望の的となっていることを聞かされた。デイキャンプの会場では伊藤さんの車に人だかりができ、エンジンルームを覗き込む者、駆動系を見るために下回りに潜り込む者が相次ぐ。

「まあちょっと驚きでした。車のオーナーズクラブというと、敷居が高いものだろうと思っていましたが、彼等はクラブではなく『部室』だと言う。参加してもしなくても自由だし、日頃は誰もいないけれど、誰かが手をあげたら三々五々集まってくる。こういうスタイルは受け止めやすかったですね」

こうして伊藤さんの車は、一躍人気者になる。しかし伊藤さんは変わらず淡々と走り続け、2019年夏に60万キロを突破した。陸送トラックやタクシーの領域だ。古い四駆にはこれを上回るものもあるが、それらはおおむね頑丈なディーゼルエンジン。伊藤さんのようにガソリン車でこれをこなすのは大変なことだ。

「故障は、それらしき前兆を感じたら即座に整備に入れてきたので、ほとんど不調を出しませんでした。それでも20万キロを越えたところでエンジンのオーバーホールは行いました。普段、気をつけていることはあまりありませんが、仕事をする上で、途中で動かなくなるのは困るので、ちょっとエンジン音がおかしいなど気になることがあるとメーカーさんにもっていきました」

それでもここまで走らせると、エンジンオイルの流出が治まらなくなった。エンジンを降ろして重整備をするか迷ったが、同年秋、63万キロで引退させることとなった。「楽しいクルマでした。自分の年齢や体力のこともあり、後継はコンパクトな軽自動車にしましたが、これも意外にエスクードのコンセプトを引き継いでいるので、フィールドワークにはもってこいの1台です」

この車種のコミュニティーというくくりで、60万キロを超えた個体は、伊藤さんのほかにはまだ1台しかいない。乗り換えてもなお、伊藤さんは伝説的な存在として語り継がれている。(鴨志田隆之)

■聚文化研究所 土浦市中央1-12-5 電話029-885-7821

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