住民投票で計画が白紙撤回となったつくば市大穂の旧総合運動公園用地46ヘクタールについて、五十嵐立青市長は11日、用地全体の開発プランを募集し、望ましいプランを提案した民間事業者に一括売却する新たな土地利用方針案を11日開かれた市議会高エネ南側未利用地調査特別委員会(浜中勝美委員長)に示した。今年2月時点で、約13ヘクタールに防災拠点を整備すると表明していた公的利用については、4.26ヘクタール以上に大幅縮小となった。
一括売却する理由について市は、民間企業などを対象に今年4、5月に実施した意向調査(サウンディング型市場調査)の結果、敷地全部を買い取りたいとした民間事業者が4者あった、意向調査で示された事業内容はいずれも実現可能性が高い、複数の事業者がばらばらに整備するより一つの事業者が全体をプランニングした方が合理的で有機的なつながりをもたらす―などとして、一括売却し全体を一体的に整備することが有効な手法だとした。
全部を買い取りたいとした4事業者の提案内容はそれぞれ▽工業団地として整備しつくば市に進出を計画している企業に賃貸または分譲する▽物流、倉庫施設などに特化した集合団地を整備し、災害避難施設ゾーンを併設する▽物流施設、データセンター、アメニティ施設、公共施設等を整備する▽次世代EV(電気自動車)実験場やエンジニア養成のための学校を建設し、データセンターも併設するーの4案。
望ましい役割や機能としては、市議会が今年6月に提言した①つくばならではの資源・特性を十分に生かせる②市民ニーズに対応し地域活性化に貢献する③災害に強いまちづくりに寄与する④市民のコミュニティ形成に寄与する⑤観光や産業振興に寄与するーの5項目だとし、4事業者からの提案はいずれも適合するとした。
防災拠点は民間が整備、備蓄倉庫を市が賃借
一方、防災拠点の整備については、備蓄面積2400~2600平方メートルの防災備蓄倉庫と、4ヘクタール以上の防災多目的利活用広場を、売却先の民間事業者に整備してもらう。防災倉庫は市が賃料を払って借り受け、備蓄品の保管と、支援物資の受け入れや一時保管をする。
広場は、平常時は地域に開放して芝生広場や駐車場などとして利用できるようにし、災害時は自衛隊や消防、警察の活動拠点や、車中泊による避難場所、がれき置き場などとする。さらに災害用の水源として飲料用の深井戸と生活用の浅井戸を広場に掘り、断水時には井戸水で利用できるトイレを整備する。耐震性の貯水槽も備える。広場の管理運営は民間事業者が行うが、災害時は防災拠点として市が無料で利用できるようにするとした。開発行為などによって整備する場合、緑地や公園、広場などを整備しなければならないことから、緑地などを防災広場に充ててもらうという。
用途地域については、旧総合運動公園用地は現在、研究・教育施設用地として位置付けられ、第二種住居地域及び第二種文教地区に指定されていることから、工場など多様な用途の建物が建てられる準工業地域に変更し、第二種文教地区の指定をなくすとした。
ほかに、商業施設を建てる場合、周辺の商圏に影響を及ぼさないよう、延床面積3000平方メートル未満とするなどの地区計画の策定を検討しているとした。商業施設はカフェやレストラン、美容室などを想定し、住宅や遊戯施設などを制限することなども検討しているとした。さらに用地の南側は病院や住宅が立地しているため、緑地などで緩衝地を設けることが望ましいなどの条件も検討している。
道路や下水道に8億円
周辺道路や上下水道などの整備については、道路は、国道408号からの直接乗り入れは不可とする。一方、大型トラックの走行が想定されることから、高エネルギー加速器研究機構に接する北側の県道213号を、現在の幅12メートルから18メートルに拡張する。さらに国道408号と県道213号の交差点に左折車線を新設し、右折車線の長さを延長するほか、上下水道などの整備をする。
道路や上下水道整備に伴う市の負担額は概算で、下水道の整備が約7億7000万円、右折車線の延長が3000~4000万円の計約8億円程度を想定している。左折車線の新設と県道213号線の拡幅はいずれも旧総合運動公園用地を削って整備するため事業者に負担してもらう方針だとした。
16日からパブコメ
今後のスケジュールについては、16日から12月15日までパブリックコメントを実施し、12月10日と12日に計3回、大穂交流センターと市役所で住民説明会を開く。12月下旬に結果を議会に報告するとした。
一方、公募や売却の時期について五十嵐市長は取材に対し「スピード感をもって取り組むが、議会や市民の意見をいただいて議論を積み重ね、スケジュールを決めたい」とし、時期の明言を避けた。売却価格については「市に損失を与えない簿価(取得価格である66億円)をベースに適正価格で売却する」とした。(鈴木宏子)