木曜日, 5月 2, 2024
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《県南の食生活》22 ひな祭り その歴史と形

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手作り草もち

【コラム・古家晴美】今の時期、多くのスーパ―では、袋詰めのひなあられが山積みにされている。ひな祭りと言えば、どちらかというと女児のための朗らかな行事のイメージが強い。しかし、奈良・平安時代の天皇や貴族にとっては、上巳(じょうし、3月3日)は水辺で和歌を詠み、桃花酒(とうかしゅ)を飲み、草もちを食べて邪気を祓(はら)う行事を執り行う日であった。

「ひな祭り」が貴族・武家・上層の商家や農家や都市部で成立したのは、その数世紀後の室町時代から江戸時代にかけてのことだ。それ以前は人間の穢(けが)れを移した人形を水辺に流していたが、これ以降、内裏雛(だいりびな)として屋内に飾られ、江戸幕府がこの日を五節供(ごせっく)の一つに定めた。

さらに農村漁村の庶民における普及は、近代に入ってからになる。つまり、かなり新しい。県南地域でも、戦前にひな人形を所有していたのは、経済的に豊かな家庭に限られた。庶民の子どもたちはひな飾りのある家を見て回ると、その家で作られた甘酒や草もち、ひなあられが振る舞われた。

ひな飾りがない家では、親戚や仲人さん、地域の組合から贈られたお内裏様(だいりさま)が描かれた掛け軸(カケジ、ヒョージ)を飾り、自家製の桜まんじゅうや餅、草もち、赤飯で祝った。

また、初節句には、仲人や親せきなどを招いてご馳走した。特に霞ヶ浦湖岸では、特産物であるシラウオや鯉(洗いや煮つけ)などが饗されたと言う。お祝いのお返しとしては、餅や桜餅、桜まんじゅう、赤飯などを配った。

「ひなあられ」は野外での携行食

このように、ひな人形を飾るようなひな祭りは、庶民にとって比較的最近のことだ。掛け軸で代用していた家庭では、菱(ひし)餅の存在感はあまりなかっただろう。しかし、上巳で食べられていた邪気除(よ)けの草もちはアンコ入りの草もちという形で、また桃花酒はほとんどアルコール分がない甘酒という形で受け継がれ、ひな祭りの行事食となった。

ところで、ひなあられは、野外での携行食として、菱餅を砕いて作ったのが始まりだという説がある。県南地域では見られなかったが、ひな祭りに女性や子どもが磯遊びや山遊びなどに出かけ共同飲食する事例が、近年まで全国的に広く分布している。

おひな様を連れて花見や涼みに行く、あるいは河原に持ち出し、そこで煮炊きしたオヒナガユ(粥)を供え、子供たちと共食するなどの報告もある。他方、本格的な農事開始に先駆け、非日常の空間(磯や山)で1日暮らすことにより、田の神を迎える物忌みの準備をしているのではないか、との分析も興味深い(田中宣一『年中行事事典』三省堂)。

今年のひな祭りをどのように過ごそうか。まずは今晩、ひな人形を飾ってみよう。(筑波学院大学名誉教授)

「TSUKUBA新型コロナ社会学」を開講 新年度の筑波大学

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[参考ページ]https://www.osi.tsukuba.ac.jp/fight_covid19_topics/1063/

【山口和紀】筑波大学(つくば市天王台)が4月からの新年度、「TSUKUBA新型コロナ社会学」を開講する。複数の授業担当者が回ごとに講義をするオムニバス形式の授業として行われる。「世界的にも独自性の高い試み」だという。自由科目として開講され、大学院生や科目等履修生を含む、すべての学生が受講できる。

講義全体のオーガナイザーを務める秋山肇助教(人文社会系)は「特に新型コロナの影響を受けて変化する社会や科学、学問のあり方について考える学生の参加を見込んでいる」と話す。

筑波大は「新型コロナ危機に立ち向かい、その成果をいち早く社会に伝えることを目指す」として、27件の新型コロナ関連の研究プロジェクトを「大学『知』活用プログラム」として昨年始動させた。このプログラムには、医療健康分野だけでなく文化、教育、心理など幅広い分野の専門家が参加した。

たとえば、山田実教授(人間系)は「パンデミック下でも介護予防を! 高齢者がパンデミックを乗り越える秘けつを探索する」というプロジェクトを立ち上げ、感染拡大が高齢者の活動に及ぼす影響の経時的調査などを実施している。

太刀川弘和教授(医学医療系)は「健全な引きこもりはあるのか? 引きこもりから『学ぶ』新しい生活様式の在り方を逆転の発想で提案するプロジェクト」を立ち上げた。新型コロナがもたらした「国民的引きこもり状態」は、引きこもり患者にとっては好環境かもしれない。既往の患者から「健全な引きこもり方を『学ぶ』ことはできないか」と提起し、新しい生活様式を提案する研究を行っている。

総合大学であるという特色を生かした「多様な知を学生に還元するため、新型コロナが社会や科学・学問に与えた影響を扱う」のが開講される「TSUKUBA新型コロナ社会学」だという。

授業を担当するのは「大学『知』活用プログラム」に参加している10人の教員。一講義ごとに教員が入れ替わるスタイルの授業で、第1回は秋山肇助教の「COVID-19と日本国憲法」で始まり、最終回は池田真利子助教(芸術系)の「COVID-19下の創造性と芸術表現」で終わる。幅広い学問分野の教員がオムニバスで授業をするという「真の総合大学」を目指す筑波大学ならではの取り組みだ。

オーガナイザーの秋山助教は、受講する学生に期待することについて「まずは、研究者がそれぞれの専門をもとに新型コロナという大きな社会的課題の解決に向けて、様々な研究に取り組んでいることを知ってほしい。その上で、新型コロナが突き付けた社会的課題を解決するためには、多様な学問分野の知見が必要になることを学んでほしい」と話した。

《遊民通信》11 神秘体験記(2) 宍戸諏訪山

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諏訪大明神御社

【コラム・田口哲郎】
前略

以心伝心はあるのかもしれません。今回はそんなお話です。国土地理院の地形図を見るのが好きです。今どきのマップと違い文字情報は多くないですが、主要施設は地図記号でしっかり記載されています。ある日、旧宍戸町(茨城県笠間市)の地形図を眺めていました。母の実家がありなじみがあるからです。それでも地形図には未知の情報がたくさん載っています。加賀田山(かがだやま)が目に留まりました。母方の父系は武田氏です。一帯の庄屋をしていました。名字帯刀を許された家柄です。

「加賀田山がつぶれても、武田の家はつぶれない」と言われたものだと母から聞かされていましたから、山の名に覚えがあったのです。農地改革で土地を失い武田家は見事に没落。諸行無常です。諸法無我でなければ浮世を生きるのはつらいわけです。

それはともかく、加賀田山の隣に諏訪山というのがあります。山頂に神社マークがあります。そのときは何とも思いませんでした。それからしばらくした夏の日、母が朝方夢を見たと言いました。道の右脇の森に朱の鳥居があり、その奥に道が続いていた。行ったことがない場所だが呼ばれているようだったと。諏訪山の神社かな、と直感しました。朱の鳥居の有無は知りませんが、地形図を立体化すると母の夢の光景になるかも…。

興味が湧き、行ってみました。果たして諏訪山の神社の入口には朱の鳥居と長い参道がありました。母も夢で見た通りだと言います。

宍戸の諏訪大明神

草深い杉林の参道を行くと、急な石段。途中の踊り場には御手洗の石桶があり諏訪大明神と刻まれています。さらに上ると広場に拝殿があり、その奥の細く急な階段の上に板で囲まれた古ぼけた社がありました。

母は幼いころ祖母に連れられて一度きり来たそうですが、裏の山道を来たので赤い鳥居の参道は知らなかったそうです。素人目にもこの打ち捨てられたような神社がなかなかの格式であることが分かりました。後で調べたらそこは宍戸神社と言い、明治時代の一郷一社制度により近隣の平神社と合祀されたものだとわかりました。明治以前は諏訪大明神だったのです。

祖父は母の実家に婿に入りましたが、武田の家柄を誇り、信玄公を輩出した甲斐武田家の直系だと言っていたそうです。家紋は武田菱(たけだびし)です。私は旧勝田市(ひたちなか市)発祥である武田氏が宍戸に土着した末裔(まつえい)だと思っていましたが、ご先祖様が諏訪大明神を勧進(かんじん)したのなら、祖父の言に一理あります。

甲斐武田氏は信濃の諏訪大社を信仰していました。武田氏は滅亡しましたが、落ち延び伝承は各地にあります。宍戸には養福寺(ようふくじ)という天台宗の寺院があり、寺紋は武田菱です。祖父は40年前に他界しましたが、隔世の伝言のようにいろいろ分かったのは不思議です。

母の兄は調べもせず根拠なしと祖父の誇りを嘲笑したそうです。伯父と違って勘の利く私に祖父は伝えたかったのでしょう。成仏しても苦労が絶えない一切皆苦(いっさいかいく)です。羯諦(ぎゃてい)、羯諦。ごきげんよう。

草々(散歩好きの文明批評家)

筑波山神社を花と着物で彩る 27日から「百人きもの」

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2018年の「百人きもの」の様子(筑波山華やぎプロジェクト提供)

【山崎実】コロナ禍の心に華やぎをもたらしたいと、筑波山発!「百人きものーコロナ終息を願いー祈り」が、27日、28日、3月1日の3日間、筑波山神社(つくば市筑波)を中心に催される。

観光庁の「誘客多角化のための魅力的な滞在コンテンツ造成」実証事業として、筑波山華やぎプロジェクト実行委員会(吉岡鞠子代表)が、デンマーク人の世界的なフラワーアーティスト、ニコライ・バーグマンさんとタッグを組む。

バーグマンさんにフラワーアート制作を依頼し、神社境内各所に展示するほか、筑波山大御堂では、着物姿の参加者延べ約250人が次々と献花し、3日間かけてオブジェを制作するなど、花と着物で筑波山を彩る。

筑波山華やぎプロジェクト実行委員の(左から)浅野弘美さん、吉岡鞠子さん、小川原智子さん

実行委員会は40代から70代の女性5人。旅館「筑波山江戸屋」女将(おかみ)の吉岡鞠子さん、体験型エクステリア展示場を運営する浅野弘美さん、料理研究家の小川原智子さん、筑波山ガイドの浅野祥子さん、市議の山本美和さんが2018年にスタートした。

2020年秋に3回目の開催を予定していたが、新型コロナの影響で延期されていた。

番傘でソーシャルディスタンス

今年度は新しい試みとして、開催会場をすべて屋外とし、着物に番傘というソーシャルディスタンスで独自のコロナ対策をする。さらに世界的なフラワーアーティストの出演により、国籍、性別、年齢を超えてダイバーシティー(多様性)を推進し、コロナ終息を願う祈りのイベントとする。

筑波大学の学生の力も借りて、10代から80代まで、幅広い年齢層の協力を得て、イベントを盛り上げる。大御堂の階段には筑波大生がデザインしたランタン約150基を置き、ライトアップする。旅館や土産店が並ぶ門前通りにも番傘を飾って彩る。

実行委員会のメンバーは「コロナ禍で沈んだ心を癒し、華やぎをもたらし、筑波山の伝統文化を世界に向けて発信していきたい」と話し、筑波山の華やぎから、コロナで打撃を受けている飲食店や宿泊事業者の応援につながり、筑波山温泉郷のホテルに一人でも多くの人に足を運んでもらい、地域経済の活性化につながればと期待している。

◆参加費無料。ドレスコードは着物。申し込みは26日まで。詳しくは筑波山華やぎプロジェクト「百人きもの~祈り」のホームページへ。問い合わせは同実行委員会の浅野弘美さん(電話090-8722-5697)。

《続・平熱日記》80 センスの問題

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【コラム・斉藤裕之】「何が悪いんだ?」という顔でその人はそこに立っている。記者風情の質問には腹が立つのだろう。なにせ首相までやったのだから。ここまでオリンピックを引っ張ってきたのだから。私の親の世代、女性に対する物言いや女性の地位は今思えばひどいものであった。

いやほんの少し前まで自分を含めた周りもそうだった。女に負けるな、女みたいな髪型、女の腐ったような…。とにかく、男は女より優れていて、「男子たるものは」という教育を受けてきた。だから、この大柄な老人のことをとやかく言えるかと言えば、はなはだ怪しい自分がいる。理屈として分かっていても、本心から女性をリスペクトすることは容易ではない。

要するに、地雷を踏まない術(すべ)を身に着けることはできても、聖人君子のようにはなれない。いや、君子でさえも「女子と小人(しょうじん)は…」なんて言っているのだから。

ところで、2人の娘は小学校の時から柔道をやっていた。2人ともそれなりに強くて、長女は県南で優勝したこともある。次女などは県の大会で決勝までいってしまって。ここで勝つと、全国大会で秋田まで行かなければならないというのでちょっと焦ったが、いい感じの接戦で惜しくも負けてくれた。

かわいらしい女の子だと思ってつかみかかりにいくと、一本背負いでぶん投げられる。当時の映像は残っていないが、絵に描いたように男の子を投げ飛ばす姿は、我が子ながら見事だった。

しかし、2人ともそれほど好きではなかったらしく、中学で畳から降りた。実はその間にいただいた金銀のメダルが段ボールひと箱ほどもある。子供たちが巣立ってから、少しずつ不要になったものを捨ててきたのだが、その日、カミさんが引っ張り出してきたのはこの大量のメダル。

時化の日には漁を諦める

寒そうに美術室に入ってきた女子。「この真冬にスカートをはいているだけで尊敬するよ」「ですよね~!」って笑って答えてくれるが。こういう会話が許されるのは、私が人格者だからか、はたまた人畜無害な初老に見えるからか。いや多分センスの問題だ。

ある時から、女性の方が優れているのではないかと気づき始めた。医学部の入試の一件もそうだが、美術大学はずいぶん前から女子と男子の比率が逆転している。ちょうど、オリンピックでマラソンや柔道に女性が活躍し始めた時期と重なるような気がする。特に最近では、ジェンダーやマイノリティーについて世論は敏感だ。

これはとても繊細な問題なのだ。だからセンスを養う必要がある。最近メディアを騒がすのはこのセンスない人たち。そういえば、この方は文部大臣もやられたのでは…。今回の件は、「けがの功名」としてオリンピックのレガシーに。そういうセンス。

段ボールいっぱいのメダルに未練はない。さっさと燃えないゴミに出した。燃えないゴミから作ったオリンピックのメダルが陽の目を浴びる日は来るのだろうか。時化(しけ)の日には漁を諦めるというのもひとつのセンス、勇気だと思うが。(画家)

23日から解除 県独自の緊急事態宣言

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茨城県庁(イラストは「いばらきアマビエちゃん」)

大井川和彦知事は22日、茨城県独自の緊急事態宣言を23日午前零時から解除すると発表した。県内全域に出されていた外出自粛と、飲食店の夜8時までの時短営業要請は22日までで解除となる。

飲食店以外に一律20万円を検討

今回の緊急事態宣言で、飲食店以外にも大きな影響を受けた関連事業者が数多くあったことから、大井川知事は、大きく売り上げを減らした事業者に、県独自に一律20万円を支給する準備を進めているとした。支給要件は現在検討中で、詳細が決まったら改めて発表し3月中旬以降に受け付けるとした。

一方、飲食店の時短営業協力金(1日1店舗当たり4万円)は22日までとなり、1店舗当たり最大60万円を支給する。

医療機関に常駐しクラスター対策指導

県全体では先週時点で、解除の条件である、1日当たりの新規感染者数60人以下(21日時点で30.1人)、コロナ専用病床稼働数185床以下(同176床)を達成していた。しかしつくば市内の医療機関でクラスターが発生したことなどから、いったん解除を見合わせた。その後、経過を分析し、飲食関係や他県からの移動に伴う新規感染者がひじょうに少なくなっていることなどから解除を決めた。

一方、病院や福祉施設、職場などでは新規クラスターが発生しているとして、クラスター発生の医療機関に、対策を指導する専門家を常駐させる体制を至急構築し、一刻も早くクラスターを収束させるとしている。

15日から21日まで1週間の新規感染者数は、つくば市が人口1万人当たり1.39人、土浦市が同0.22人。

国の緊急事態宣言指定基準まで至らずに解除できたことについて大井川知事は「スピーディーに対応し、悪い状況の中でも収束を早めることができたと感じている」などと話した。

筑波山梅まつりは26日から開催

県独自の緊急事態宣言は1月18日発令された。当初は2月7日まで3週間だったが、今月末までさらに3週間延長された。今回、約1週間前倒しとなり、5週間かかってようやく解除となる。

開催延期の措置が26日解除となる筑波山梅まつり=つくば市沼田

外出自粛要請の解除を待って、第48回筑波山梅まつりは26日からの開催が決まった。2月13日から開催が延期されていた。会期は3月21日まで。

販売開始を延期していた県独自の宿泊促進事業第2弾「めざせ日本一」割については、国のGoToトラベルの状況を見て判断するという。

新治コミバス運行実験スタート つちうらMaaS

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コミュニティーバスに乗り込む利用者=土浦市藤沢の新治地区コミュニティーセンター前

【池田充雄】観光客の周遊促進や市民の移動手段確保を目指すつちうらMaaS(マース)実証試験のうち、土浦市新治地区でのコミュニティーバス運行実験が22日から始まった。ワンボックス型の8人乗り車両2台を使い、3月11日までの間、前後期で運行形態や乗客認証方式を変えて実施する。運行時間は午前10時~午後4時、運賃は無料。

前期は時刻表に基づき運行

2月22日から3月2日までは、所定のルートを時刻表に基づき運行する。高岡・田土部方面と沢辺・田宮方面の2ルートがあり、バス停の数は合計29カ所。各ルートを1台の車両が受け持ち、おおむね40~45分間隔で回る。

運行ルートの設定やバス停位置の選定には、スマートフォンの位置情報から抽出した「流動人口データ」を利用。住民の移動需要を予測し、人の移動が多いと思われる区域を割り出した。データからは、土浦方面への住民の移動欲求が高いことも確認できた。旧国道125号の上坂田-藤沢十字路間には、土浦駅を発着する路線バスが1日30往復ほど運行しているため、それらとのスムーズな接続を図ることで、土浦へのアクセスを高めるとともに、路線バスが通らない区域をコミュニティーバスが高頻度で回れるようにした。

後期は自由で効率的な運用

3月3日から11日までは、オンデマンド乗り合い方式の運行になる。利用者がインターネットか電話で、乗降場所(バス停名)と乗車人数を伝えると、AI(人工知能)が即時に最寄りの車両を選び、最短時間で配車する。1時間前とか前日といった事前の予約ではなく、直前の申し込みで大丈夫。配車予定時間も教えてくれる。オンデマンド方式の場合、バスは必ずしも既存ルートにはこだわらず、指定したバス停間を最も効率的な経路で走る。相乗りに際しても、柔軟なコース変更で対応するという。

このほか今回の運行実験では、乗客を対象とした認証実験も同時に行われる。前期はマイナンバーカードを使った認証で、後期は顔認証を用いる。将来はこれらの認証システムが、運賃の自動支払いや、登録者限定の運賃割引など、さまざまなサービスの提供につながるはずだ。

「新治バス」の教訓生かす

土浦市では2011年にもコミュニティーバス「新治バス」の試験運用を行ったが、このときは利用低調により2年半で廃止となった。新治地区全域をカバーする長い距離を走るため便数が少なく、待ち時間も長いという弱点があった。

だが今回はビッグデータの活用により、移動需要が多い区域を選び、なるべく小回りに走ることで、より細かい需要も拾えるようになった。またコミュニティーバスだけで完結するのではなく、路線バスのほか電動キックボードや自動運転ロボットといった小型モビリティーなど、複数の交通システムを組み合わせることで、効率化を図りつつきめ細かなサービスが提供できると期待されている。

新治コミュニティーバス出発式での記念撮影

つちうらMaaS推進協議会の関東鉄道、廣瀬貢司取締役は「高齢化や少子化が進む中、地方の移動手段確保はますます難しくなっている。多様な組み合わせから最適なものを考えていきたい。ぜひ多くの方に利用していただき、ご意見をうかがいたい」と語る。

22日の運行初日、第1便には高岡・田土部ルートで1人、沢辺・田宮ルートで3人の利用客があった。ショッピングセンター「さん・あぴお」のバス停から乗車したという20代の男性は「いろんな集落の中をぐるぐる回るので、新たな需要が見付かるのでは。免許返納した高齢者などに便利だと思う」と感想を述べた。

園児らの「アマビエ」ラッピング 土浦キララちゃんバスの撮影会

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バスのラッピングの前で、安藤市長、大山理事長にはさまれ記念撮影する小林新ちゃん(中央左)と前野ゆうりちゃん(同右)=土浦駅前

【伊藤悦子】まちづくり活性化バス「キララちゃん」をラッピングするアマビエの絵を描いた2人の園児を招き、記念の撮影会が21日、土浦市有明町の土浦駅前バスロータリーで行われた。安藤真理子市長、バスを運行するまちづくり活性化土浦の大山直樹理事長らが参加した。

新型コロナ退散を願う「アマビエ」は昨年9月、同市が行ったデザインコンテストで、応募577点の中から選ばれた(1月16日付市長賞を受賞した小林新ちゃん(5)とイオンモール土浦賞の前野ゆうりちゃん(6)の2人のデザインが採用された。ラッピングバス側面に描かれ、9日から同市内を走り出した。

アマビエラッピングのキララちゃんバス

事務局長の小林まゆみさんによると、受賞した園児の家族らから「ラッピングバスの前で写真を撮って、バスにも乗りたい」と聞いたのがきっかけ。「せっかくなら」と関係者で話し合い、記念撮影会を開催することにしたという。

安藤市長は、「新型コロナウイルスの厳しさや、マスクや手洗いの必要性をわかってもらうために、市内の園児たちにアマビエの絵を描いてもらった。これがきっかけですばらしいラッピングバスになってうれしい。2人のアマビエの絵で土浦が元気になる。コロナに負けるなという気持ちがみんなに強く響くのでは」と挨拶した。

市長賞を受賞した小林新ちゃんは「アマビエの絵を描くのが楽しかった。キララちゃんバスに乗りたくなった」と声を弾ませる。母親の明日香さん(34)は「受賞の知らせには驚いた。(新ちゃんは)絵を描くのがとにかく好きでいつも絵を描いている」と話す。

イオンモール土浦賞の前野ゆうりちゃんは「絵を描くことが好き。うれしい」と笑顔で話し、父親の三千丈さん(56)は「絵が好きな子だからよかった。初めてのことでうれしい」と語った。

大山理事長によると、アマビエデザインコンテストの報道に接し、「キララちゃんバスにラッピングしたい」と市長に申し出たところ、快諾されたという。「土浦は今、コロナで元気がないところがある。アマビエバスが市内を走って、元気になることを祈っている」と話した。

アマビエラッピングバスは、予定では6月下旬まで走行する。

《邑から日本を見る》82 ずさんな東海第2の避難計画

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麦畑を飛び立つ白鳥

【コラム・先﨑千尋】2月13日夜中の地震にはたまげた。飛び起きてテレビをつけた。東海村は我が家から至近距離。そこにある日本原電東海第2発電所がどうなのかが心配だったから。何事もないことを確認し、また寝た。

翌朝のテレビはもっぱらこの地震の模様を伝えていた。福島にある2カ所の原発には異常がなかったようだが、高速道路で土砂が崩れたり、東北新幹線が不通になったりし、けが人もかなり出た。大学受験にも影響が出ているようだ。

報道では、今回の地震は10年前の東日本大震災の余震だとか。今回は津波が起きなかったので一安心だったが、福島の人たちはさぞ肝を冷やしたのではないかと思っている。10年もたっているのに、余震だとは驚きだ。

その東海村。毎日新聞は全国版の1月31日と2月1日付で、「東海第2避難所1.8万人不足」「責任曖昧 ずさん算定」という記事を載せている。それによると、同発電所をめぐる広域避難計画で、県内の避難所が2018年時点で約1万8000人分不足していた。施設のトイレや倉庫、ステージ、玄関ロビーまで、避難者の居住スペースとして計算していたからだという。

県の基準は「避難者1人当たり2平方メートル」だそうだ。トイレや倉庫まで含めて算出しているので、実際にはもっと少なくなる。あまりにもひどすぎる計画だ。畳1枚よりほんの少し広いくらいのスペースに、台風などの水害とは違い、いつまで続くかわからない長期間の避難生活ができるのか。計画を立てた人や首長、議員の皆さんに実験してもらいたいものだ。

「事故は起きない」楽観が暗黙の前提?

原発事故に備えた広域避難計画は、原発から30キロ圏内の自治体が策定することになっている。茨城県では東海村など14の市町村が該当し、これまでに5市町が策定済みだそうだ。その計画の中身を承知していないが、コロナ騒ぎの前のものなので、現時点では役に立たないだろうと考えている。

県が昨年5月に示した自然災害の際の避難所レイアウトでは、1人5平方メートルを想定している。原発災害にこの基準を当てはめると、広域避難計画そのものが成り立たなくなる。

4年前の県知事選のとき、現職の橋本昌氏が「避難計画などできはしない」と言っていたことを思い出す。県のトップがそう発言しているのだから、私も計画は作れないと思っている。策定済みのところも、作り直さなければならないのではないか。計画策定は原発再稼働の前提となっているので、東海第2原発の再稼働はできないことになる。

毎日新聞の記事には、災害リスク学が専門の広瀬弘忠さんの「あまりにもずさん。本気度が感じられない。『事故は起きない』という楽観が暗黙の前提になっているのではないか」というコメントが載っている。

今度のような最大震度6強の地震がまた発生し、津波も押し寄せたら、10年前と同じような惨事になる。いいかげんな避難計画を策定し、犠牲者が出たら誰が責任を取るのだろうか。「東日本大震災、今も影響。余震警戒さらに10年」と専門家は呼び掛けている。今度の地震はいろいろなことを考えるきっかけを作ってくれた。(元瓜連町長)

食料求める長蛇の列に支援情報提供 つくばの無料配布会

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食料を受け取った後、アンケートに回答する参加者たち=つくば市天久保の松見公園

【崎山勝功】生活に困窮する大学生やひとり親家庭などを応援する食料の無料配布会が21日、つくば市天久保の松見公園で開かれた。昨年12月から始まり今回で4回目、回を重ねるごとに食料を求める参加者が増え、コロナ禍に伴う困窮の度が極まってきた。主催の学生応援プロジェクト@つくばーPEACE(ピース)は、会場内に相談コーナーを開設、各種支援制度の情報を提供するなどした。

食料無料配布会開始前に並ぶ行列=21日午前11時ごろ、同

午前11時の配布開始前から、学生や子ども連れを中心に長蛇の列ができ、正午過ぎまで途切れることなく約270人が訪れ食料を受け取った。主催団体によると「途中で帰った人を含めると、実際には400人近く並んだ」という。

相談コーナーは、前回の無料配布会で学生たちから「休業支援金を受け取っていない」という声が相次いだことから開設した。新型コロナによる時短営業で勤務時間を減らされた場合、アルバイトや派遣労働にも休業手当ては支給されるが、制度の周知不足は顕著だった。会場内には休業支援金・給付金の申請用紙を設置。休業支援金や大学等修学支援制度、緊急小口資金などを紹介するチラシ作成し配布した。

飲食店でアルバイトをしている筑波大の女子学生(1年)は「部活動をしているため、(午後8時までの)時短営業の影響を受けてバイトに入れる時間が減った」という。時短営業前は、部活動と時間が重ならないように時間を調整してアルバイトをしていた。また「部活動以外がオンラインのため、部活外でのつながりができない」と人間関係での悩みも抱えている。

「足のケガで膝に水が溜まっている」という男子学生の一人は、「アルバイトのシフトを減らされ、お金が足りない。そのためMRIなどによるケガの精密検査を受けられない」という。

会場には外国人も姿を見せ、ボランティアスタッフらが英語で対応に当たった。男子留学生は、奨学金や親からの仕送りで生活しているが、「母国で仕事に就けたら退学も考えている」と退学を視野に入れている。

ツイッターで配布会を知った、つくば市内の会社員女性(47)は、中学1年生の男子(13)と一緒に食料を受け取りに来た。女性は「勤務時間が減って残業が無くなった分収入が減った。食料があると助かる」と感謝していた。

同団体の冨山香織代表(39)は「(配布会を)やればやるほど切実な声が出てくる。学生さんが孤立しているので、少しでも豊かになってくれれば」と語った。

会場で食料配布ボランティアに従事した高校3年生男子(18)は「コロナ(感染)が始まって1年経つのに、未だに大変な人がいると身に染みて感じた」と話した。高校生は4月から大学に進学するが「せっかく大学に入ったのに、リモート授業ばかりで直接授業を受けられないのが不安」と不安をのぞかせた。

◆土浦でも3月6日に食料配布会

コロナ禍で生活が困窮している大学生やひとり親家庭の生活支援のため、3月6日午前10時から土浦市中村南の三中地区公民館駐車場で「学生・ひとり親支援 食料・日用品無料配布会」が行われる。昨年12月26日に同市東真鍋で開催したのに続き2回目。

年12月26日に土浦市内で開かれた食料無料配布会の様子(主催者提供)

主催する「コロナに負けるな!つちうら食料支援プロジェクト」の担当者によると「荒川沖方面にも困っている人がいる」として、今回は同公民館での開催となった。前回は、ひとり親家庭など約50人が来場し、食料を受け取ったという。

配布会の会場では、食料や日用品を無料で配布するほか、生活に困窮するひとり親家庭を念頭に、生活や労働、子育て、介護などの無料相談会も開く。

問い合わせは、事務局の土浦母親大会連絡会(電話029-824-8949)。

手作りおみくじに受験生応援メッセージ JR土浦駅 社員が企画

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「土浦駅みくじ」を考案したJR東日本社員山脇遥さん(左)と遠藤夏美さん。台の上の円筒形のケースに入っているのがおみくじ

【伊藤悦子】駅を利用する受験生を励まそう-とJR土浦駅(土浦市有明町)が設置した「おみくじ」が好評だ。「頑張れ!!受験生! 土浦駅みくじ」で、手書きで感謝や応援のメッセージがつづられている。3月上旬まで設置する。

切符売り場脇に「頑張れ!!受験生! 土浦駅みくじ」と書かれた架台を設け、上に置かれた透明プラスチックケースに、色とりどりのおみくじを折りたたみ入れている。受験生だけでなく、資格試験などを受ける社会人、家族や友人に受験生がいる人など誰でも引くことができる。新型コロナ感染予防のためアルコール消毒薬も用意してある。

土浦駅みくじ

「土浦駅みくじ」を企画したのは、JR東日本社員で同駅勤務の山脇遥さん(26)と遠藤夏美さん(26)。「土浦駅は学生の利用が多い。合格切符を作るなど、受験生応援企画は毎年実施していたが、今年は社員から感謝の気持ちを直接伝えたいという思いから企画した」と話す。

2月11日に設置を始め、最初は200枚のおみくじを入れたが、予想以上に引いていく人が多く、合い間をみては補充しているという。これまでに約100枚を補充した。

おみくじを書いているのは、みどりの窓口や改札を担当する社員たちだ。縦29センチ、横3.5センチの短冊状の色紙に、手書きのメッセージが書かれている。内容は一枚一枚異なる。どんな内容が書いてあるかは、引いてからのお楽しみにしてほしいという。

「おみくじは持ち帰っていただき不安なときなどに読み返してほしい。いつも応援している人がいるということを思い出してもらえたら」と山脇さん。

遠藤さんは「コロナ対策として、駅も電車もしっかり消毒しているので安心して利用してほしい」とし、「受験シーズンは電車に乗り慣れていない人も多い。困っていることがあったらいつでも気軽に相談して」と呼び掛けた。

石岡市から土浦市内の高校に通う男子生徒(3年生)は、「コロナ禍で大変なときに、駅の人におみくじで応援してもらってうれしい。励まされる」と感想を語った。

《沃野一望》24 正岡子規『水戸紀行』追歩(4)

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宝篋山頂からの筑波

【コラム・広田文世】
灯火(ともしび)のもとに夜な夜な来たれ鬼
我(わが)ひめ歌の限りきかせむ とて

正岡子規の『水戸紀行』を追歩する令和版テクテク珍道中(子規は自身の水戸行きを東海道中膝栗毛になぞらえている。「僕が野暮次で君が多駄八、これからは弥次、喜多よりは一段上の洒落人となりて一九をくやしがらせるとは妙々思案じゃな」とある)、牛久沼のほとりまでやってきた。沼の水面(みなも)を遠望する。

白鳥が一羽、のんびりと泳いでいる。年末のあわただしい時節、悠然と水面をすべる姿は優雅の極み。年末は、こうして過ごすのですよと諭される。

牛久沼(沼全体は、行政的には竜ケ崎市)を過ぎ、最後の鰻(うなぎ)屋を見送り、行政上の牛久市に入る。

すこしの寄り道で牛久駅にたどり着き、コンコース上にベンチを見つけ、本日二度目の休憩とする。座ったベンチの脇に、東南アジア系の若者グループが無遠慮に数人寄ってくる。理解できない言語で声高に話しあっている。彼らも、年末年始の休暇なのだろうか。子規の時代には、出会うことのなかったであろう若者たち。せかせかと煙草をすい、ザワザワと立ち去っていった。日本での年末年始休暇が、いかほどの残像を残すのだろうか。

若者グループが消え、静けさをとりもどしたベンチでたっぷり休み、ふたたび出発。子規は、藤代から土浦あたりまで、風景描写をいっさい残していない。

「雨は次第に勢を増してうたゝ寒さに堪へず少しふるへながら」歩いたので、景色どころではなかったようだ。「声をはりあげて放歌吟声を始めぬ」とある。何者が通るのだと、明治20年代の街道筋の人たちは、あきれながら見送ったことだろう。

スーパーひたち 圏央道 蜃気楼の街並

令和版は上天気。快調に土浦を目指す。小野川の橋を渡ったところで右手から、JR常磐線の線路が接近する。背後に轟(ごう)音を感じて振り返ると、スーパーひたちが寒風を切り裂き、一瞬に迫り、あっという間に去ってゆく。速い。速い、が、それが何ほどの意味なのか。子規は三日がかりで水戸へたどりついた。一方、現代のスーパーひたちは、上野から一時間半余りで水戸へ着く。スーパーひたちの轟音からこぼれおちるのは、つむじ風だけだろうか。

小野川を渡るあたりは、圏央道とのクロス地点ともなっている。高架の高速道路上を、年末のせわしない自動車の列が、ここでも時間と競争している。子規先生、スーパーひたちや高速道路の狂騒疾駆をあおいだら、何を詠嘆しただろう。

さらに歩き続ける。

やがて、ひたち野うしく駅。古い記憶ではこのあたり、一面の畑だった。科学万博見学用の臨時駅として畑のなかに突如出現したのち、「ひたち野うしく駅」として定常営業をはじめ、それにともない、駅周辺に忽然とビル群が湧きあがった。まだまだ地に足のつかない蜃気楼(しんきろう)の街並。

駅には寄らずに、そのまま国道を進む。このあたりでも子規先生、放歌吟声なされたか。当時は周辺に、民家さえなかったはず。(作家)

ごみ袋値下げ、スマートIC、コミバス運行などに着手 土浦市新年度予算案

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新年度予算案を発表する安藤真理子土浦市長=19日、土浦市役所

【鈴木宏子】土浦市の安藤真理子市長は19日、2021年度当初予算案を発表した。就任2年目となる21年度は、市指定ごみ袋の値下げ、スマートインターチェンジ(IC)設置に向けた調査、コミュニティバスの試験運行、新治運動公園多目的グラウンドの人工芝化、公立の認定こども園として土浦幼稚園存続など、公約の具体化に着手する。3月2日開会予定の3月議会に提案する。

一般会計は前年度当初比1.9%減の約497億2000万円、特別会計を含めた総額は同1.8%減の約908億円となる。新型コロナの影響で、市税収入が前年度当初比約19億円(同8.1%減)落ち込むと見込む。特に法人市民税の落ち込みが大きいとし、同46%減を見込む。一般会計が500億円を下回るのは2012年度当初予算以来、9年ぶり。

安藤市長は予算方針について「市税の大幅な減や、大規模事業に伴う公債費(市の借金)増など大変厳しい財政状況だが、ウィズコロナ、ポストコロナの新しい時代に対応できるよう、夢のある、元気のある土浦の実現を図っていく」と話す。

10月1日からごみ袋値下げ

市指定ごみ袋は、県内一高いと批判があった1枚50円(燃やせるごみ、45リットル)を、10月1日から30円に値下げする。15リットルの袋は15円から10円、30リットルは30円から20円とする。2018年10月から家庭ごみ処理有料化を開始し、計画通りのごみ減量化を達成したことから、家計の負担を減らすため値下げする。21年度は指定ごみ袋製造委託料やごみ減量化の広報啓発などに約1億3900万円を計上する。

スマートICは、約1390万円で、候補地の交通量調査や将来推計など設置可能性調査を実施する。ICを活用した地域経済活性化としてはほかに、約4000万円で、土浦北IC周辺地区に新たな産業用地をつくるための基本構想策定や立地企業が行うインフラ整備費用の一部助成などをする。

コミュニティバスは、第1号として、路線バスが廃線となり公共交通不便地域となっている同市中村西根地区で、市地域公共交通活性化協議会が運行主体となり、10月から試験運行する。21年度の事業費は約2400万円で、試験運行のほか、検証などを実施する。

新治運動公園では、約2100万円を計上し、多目的グラウンドの人工芝生化と駐車場を増設する実施設計を行う。22年度に工事着工し、23年度の利用開始を目指す。

土浦幼稚園(同市文京町)は、老朽化している園舎をリニューアルして、東崎保育所と統合し、市内初の公立の認定こども園として存続させる。新名称は「認定こども園土浦幼稚園」(定員100人程度)。21年度は約2000万円で園舎改修の実施設計をする。

ほかに、上大津地区に統合小学校を建設するため約800万円で整備基本計画の策定などを実施する。

霞ケ浦の土浦港とりんりんポート土浦に隣接する市有地に観光拠点を整備するため、約430万円で民間事業者の公募などを実施する。

予算編成後、市の貯金である基金残高は21年度末見込みで、前年度と比べ3.2%減の118億2700万円になる見込み。一方、市の借金である市債残高は同3.4%減の949億2200万円となる。

アレルギー性鼻炎治療は「見える化」から 筑波大研究チームが無料アプリ公開

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アプリ「アレルギー性鼻炎レコード」イメージ(野口恵美子教授提供)

【相澤冬樹】スギ花粉症が勢いづくシーズン、筑波大学医学医療系の野口恵美子教授を中心とした研究チーム開発による無料アプリ「アレルギー性鼻炎レコード」が19日、公開された。症状と服薬状況を手軽に記録するiPhone向けアプリで、症状の「見える化」を通じて、患者と医療者のコミュニケーション改善を図るとともに、アレルギー性鼻炎に関連するデータの集積と解析を進めていく。

アレルギー性鼻炎は国民の約4割が発症しているといわれる。国民病といえるほどだが、命にかかわることがあまりないため、定期的に通院・治療を受けている患者は少ないと見られている。新型コロナの影響で、診療に向かう足はさらに遠のいている。

「症状の適切なコントロールのためには、日常的な症状や薬の使用状況を記録し、医療者とのコミュニケーションの改善を図ることが重要」と野口教授。従来は、症状日記として患者に紙で記録してもらうことが行われてきたが、利便性を欠くなどの課題があった。

そこで、アレルギー性鼻炎の患者向けに開発したのが、症状と薬の使用状況を記録するアプリ「アレルギー性鼻炎レコード」。利用初回に、症状や服用中の薬などについて回答してもらう。病院でもらう薬だけでなく、市販薬も一覧から選んで登録できる。その後は、日々の症状(鼻水、鼻づまり、くしゃみ、目のかゆみ)と薬の使用状況について記録していく。入力は1日1回、2~3分で済む。

入力内容は、症状の変化が見やすいようにグラフ化するなどし、メール送信することができる。この「見える化」により、情報を医師と共有したり、患者自身がどんな時期に調子が悪いのか、どんな薬を過去に使用していたのかを振り返ったりできる。

使用している薬を登録して、日々の症状を手軽に記録、変化もたどれる(同)

アプリでは、利用者の同意を得て情報を収集するが、個人を特定できるような情報の取り方はしない。ただ患者が診察時にデータを持参し、医師の治療法や処方の最適化に役立てることはできる。

研究チームにとっては全国的、経時的にアレルギー性鼻炎に関連する症状や服薬状況を収集・解析することにより、より良い治療法の提案につなげていきたいとの考えがある。

アプリのURLはこちら(アンドロイドには対応していない)。

研究グループはサイト「アレルギーレコード」を運営し、専門家の監修によるアレルギー性鼻炎や花粉の飛散情報を発信している。

《続・気軽にSOS》79 成功体験のみの危険性

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【コラム・浅井和幸】人は、苦しい思いが続いたり、失敗し続けたり、人にばかにされてばかりだと、余裕や自信をなくしていきます。そうすると心がくじけて、身動きできなくなっていくものです。

ここのところ、仕事でうまくいかないことが多いなと感じている人は、だんだんと暗くなり、新しいことに挑戦しづらくなっていきますよね。幼少期からずっと暴力を受け続けると、人とコミュニケーションをとることも怖くなってしまいます。

そのような悪循環に陥っている人に対し、支援者は成功体験をさせてあげるとよいと考えます。自由に動けなくなっているのは、自信がないからだ。だから自信を持つためには、成功体験をすることが必要だと考えるのです。

もちろん、その考え方に私は賛成です。ただし、それのみでは偏った考えで、とても危険だと考えます。成功体験があったほうがよいことは、ほとんどの人は反対しないでしょう。しかし、それのみであると、失敗を恐れすぎてしまう状態に陥る可能性があります。

失敗体験から立ち直る体験

だから、成功体験と同じぐらい、失敗体験から立ち直る体験も必要なのです。ミスをしてもフォローできる感覚、けがをしても傷が治る感覚はとても大切なことなのです。成功できるという自信と、失敗しても何とかなるという余裕の両方があるときに、人は一歩を踏み出しやすいものなのです。

私が失敗から学べることもたくさんあるよと言うことがあります。コミュニケーションが苦手なある青年から質問されたことがあります。「うまく話ができずに相手を傷つけるのが怖い。もし相手が怒ったらどうすればよいですか」と。

私は答えます。「謝ればいいんじゃないかな。気を使いすぎるぐらいの君が、取り返しがつかないほど人を傷つける可能性はとても低いと思うよ。そして、そのイメージをしている相手は、取り返しがつかないほどの傷つき方をする人かな」と。

どんなに完璧にふるまったとしても、どんなに立派な素晴らしい人格や技術の持ち主でも、失敗は必ずするものです。そして、そこから学べることもたくさんあります。このような状況で、このようなやり方をすると失敗するという経験は、大きな学びのある成功体験ともいえるかもしれません。

支援者は、「どこまでの失敗ならば自分がフォローしてあげられるか」という視点も持つことが大切だと思います。今、何かに苦しみ、余裕がなくなっている人に伝えたいです。「自分や他人から、失敗や負けること、苦労することでの学びを奪わないでほしい」と。一つの枠組みでの失敗は、次の枠組みでの成功のカギになります。

とてもまずい肉ジャガを作ったとき、それで自分や誰かを責めたり悔んだりするところにとどまらずに、何が失敗の原因だったかを考えて、次においしい肉ジャガを作る知識として取り入れられるとよいでしょう。ときには、カレー粉を入れてしまって、おいしいカレーにしちゃえばよいかもしれませんよね。(精神保健福祉士)

市長の手法に異議相次ぐ 防災拠点案でつくば市議会 総合運動公園問題

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五十嵐市長が市議会に示した旧総合運動公園用地南側の防災拠点イメージ図(つくば市提供)

【鈴木宏子】つくば市の旧総合運動公園用地(同市大穂、約46ヘクタール)の利活用について検討する市議会特別委員会(浜中勝美委員長)が19日開かれ、五十嵐立青市長が、一部を防災拠点として公共利用する案を改めて説明した。一方、議会からは、市長がテレビ番組などで突然、防災拠点案を表明したことなど、市長の手法に対し、異議が相次いだ。

南側13ヘクタールに28億円で整備

五十嵐市長が説明した案によると、防災拠点は、同用地南側の約13ヘクタールに整備する。一方、東大通りや高エネ研に面した32ヘクタールは民間活用する。3割を公共利用、7割を民間活用する案だ。

旧総合運動公園用地の全体利活用イメージ図(つくば市提供)

防災拠点には、防災倉庫、ヘリポートを備えた広場、災害時がれき仮置き場、井戸、トイレなどを整備し、災害物資を備蓄したり、避難者が車中泊できる駐車場を設けたり、仮設住宅建設用地などにする。平常時は筑波山観光の駐車場として活用したり、屋外イベントを開いたり、多目的広場として活用する。造成費は約13億円、防災拠点の建設費は約15億円で整備費は計28億円とした。

一方、民間活用するとした32ヘクタールについては、再度、企業などから意見や提案を集める市場調査を実施するとした。

一部を防災拠点とする理由については、議会から公的利活用を求める意見が多かったこと、市財政に大きな負担とならないこと、2017年に実施した市役所内の公的利活用調査で唯一、危機管理課から多目的防災備蓄倉庫や駐車場、ヘリポートなどの提案があったことなどを考慮したとした。

これに対し議会からは、特別委員会で利活用を検討しているさなか、五十嵐市長がテレビ番組や記者会見などで防災拠点案を表明したことに対し、異議が相次いだ。

五十嵐市長は「決めるのは議会」と述べ、釈明に追われる形となった。

一方、終了後、報道陣の取材に対し五十嵐市長は、民間活用の32ヘクタールについて、企業の意向を聞くサウンディング調査を実施し、議論の材料として議会に示したいとした。

議会特別委の今後の進め方について浜中委員長は、各会派で構成する作業部会を設置し、市長の防災拠点案も含め、改めて利活用方針を調査検討するとしている。

防災拠点案を議会に説明する五十嵐市長(前列左)=19日、つくば市役所

「話のもっていき方、納得いかない」

19日の議会特別委員会でのやり取りの概要は以下の通り。敬称略。

塩田尚市議 ヘリポートは何機ぐらい利活用できるのか。

五十嵐立青市長 離発着は1機だが、待機できる。防災ヘリ自体、県に1機しかない。

塩田 台湾の大手IT企業がつくばに立地する。このような企業にこの場所を取得していただきたい。

市長 台湾のTSMCは世界をリードしている企業。いろいろな可能性があると思うが正式な話としては聞いていない。

塩田 茨城県が20年間凍結していた工業団地をつくばみらい市に造成する。県に買っていただいて、県が工業団地をつくる可能性もあると思う。

山本美和市議 防災拠点は立派だし、公明党は10年前から関東の防災拠点をつくろうと主張してきた。が、(五十嵐市長の)話の持っていき方は納得がいかない。(議会の)委員会で(陸上競技場案を含め)検討しているさなかに(市の)陸上競技場検討会議が立ち上がって、(上郷高校跡地と旧総合運動公園用地を)天秤にかけて結論を出すのはいかがなものか。市長は(市議会の)委員会の意見を聞くと言っていたが、差異がある。(検討会議が陸上競技場の候補地と決定した)上郷高校跡は、造成が済んでいるのですぐに着手できるという前提だが、体育館は使えない、給排水設備を設置しなくてはならない、周辺道路を整備しなくてはならないなど(考慮に入れないで)、この状態で比較していることに疑問を感じる。見える形で、市民のために一番いいものを選択しなくてはならない。

市長 陸上競技場は学校跡地で検討した際に上郷高校跡が最も適しているとされた。議会で高エネ南側未用地(旧総合運動公園用地)も検討すべきという意見があったので、考えを反映させて比較を行った。(上郷高校跡地が候補地というのは)あくまでも検討会議の位置づけなので、議会、市民から意見をいただいて、最終的に市として決定したい。(検討会議を設置した)プロセスに齟齬(そご)があったとは考えていない。

山本 (旧総合運動公園用地の一部を防災拠点にする案について)特別委員会から意見が出たからという話だが、委員会として結論を出していない。1人や数人の委員の意見が議会全体の意見だととらえること自体が間違い。(市議会の)改選があり、特別委員会を開けない中で(検討会議が陸上競技場候補地の)検討をしたことは遺憾だ。

小森谷さやか市議 ヘリポートと仮設住宅は一緒にできるものか。上郷高校体育館の倉庫はどうなるのか。

市長 ヘリが頻繁に動くのは発災直後。仮設住宅と少し時間軸にずれがある。上郷高校の体育館は耐震面が十分ではない。

橋本佳子市議 (五十嵐市長が市議会に)説明したと言っているのは、そもそも(市議会から)要望がある中で説明してきたということ。事前に積極的に(市長から説明したいという)働き掛けがあった記憶はない。報道を見て「えっ」って知り、議会に説明が不足する中で、どんどん市長とずれが生じている。丁寧な説明を考えてほしい。サウンディング調査をすると民間活用に流れていって、そこを進めて、それがまた(市議会の)委員会とずれが出ることを危惧する。とりわけ(総合運動公園用地は)現在、研究・教育施設用地と位置付けられており、研究学園都市の成り立ち、将来性を見すえて足並みをそろえていただかないと、今後も議会とずれが生じてしまう。市長として丁寧なやりとりをどう考えているのか。

市長 今まで以上に丁寧に説明したい。不十分だという指摘は甘んじて受ける。これまでもできる限り丁寧な説明をしてきたつもりだが、すべての議員とコミュニケーションができているかというと、足りないところがある。今後、今まで以上にできるようにしたい。

橋本 (防災拠点とする案は)一市長の考えとして発言したということだが、市長が話すということと、一市民が話すこととは全く意味が異なる。「一市長として発言する」と言うところからして、ずれている。しっかりと連携をとっていかないと、(特別委員会が)無駄な労力になっては困る。

市長 何をするにも決めるのは議会。そのための材料をきちんと提供したい。

山本 市長がいくら一市長の意見だと言っても、市民は、これ(防災拠点案)が市としての(利活用の)イメージだと受け止める。

市長 個人の思い付きでしゃべっているのではなく、市を代表してしゃべっている。市を代表するもう一方は議会。(防災拠点案の)資料ができたので真っ先に議会にお示した。不十分であることについては、もっといろいろな機会をとらえて説明し、今後もより丁寧にやっていきたい。

小村政文市議 防災拠点を整備する位置はなぜ南側なのか。

市長 南側が一番活用しにくいため。

中村重雄市議 (市長から出た防災拠点案は)今まで出た案の一つと考えてよいのか。

浜中委員長 今後の進め方は皆に諮っていきたい。

山中真弓市議 上郷高校跡地に(陸上競技場と共に)防災拠点をつくる案もある。離れていていいのか、いろいろな施設を考える必要がある。陸上競技場の場所が今後、変更になる可能性はあるのか。

市長 最終的に決めるのは議会だが、12月の全員協議会で陸上競技場の説明をした。高エネ研南側(旧総合運動公園用地)を使うべきという話は一つも出てない。質問が出ていないことを踏まえて、上郷高校跡がふさわしいと考えている。

山中 陸上競技場の検討はもともと学校跡地だけで検討した。高エネ研南側未利用地(旧総合運動公園用地)を検討に入れなかったことが分からなかった。今回の防災拠点案にも不信感がある。(五十嵐市長は公約のスローガンで)「共につくる」と言っているのだから、特別委員会と足並みをそろえて検討してくことを要望したい。

鈴木富士雄市議 (総合運動公園用地の利活用について)一般質問してきたが、議会の意見を聞いて進めていくと答弁があった。防災拠点案に特別反対しないが、議会と密にしながら進めていくべき。遅い気がする。

市長 遅いということだが、さっきは早いと怒られた。議会としてどうしてほしいのか、具体的にはっきり出していただければ事業を進めていける。この委員会ではっきり出していただきたい。

鈴木 遅いというのは、議会に説明するのが遅いという意味。一般質問したときは(五十嵐市長は)自分の考えを述べないで、特別委員会に任せているとすり抜けてきた。市長のもっているもの(考え)を出していただきたい。

塚本洋二市議 検討会議でも検討されたように、防災施設を備えた陸上競技場は全国にある。(市議会の)委員会でいろいろなところ見に行っている。陸上競技場や体育館に防災機能を備えた施設があった。そういった(旧総合運動公園用地に防災拠点を併設した陸上競技場をつくるという)イメージ(案)を出していただきたい。(防災拠点を整備するとした同用地の)南側が活用しにくい理由は何か。

市長 アクセス面で、南側は進入路が確保しずらい要素が一番大きい。

塚本 南側の道路は車同士がすれ違うことができないくらい(道幅が狭い)。進入路の活用がしにくい。防災拠点として使った方がいいかというとちょっとずれがある。

市長 (進入路も含めて)精査したい。

鈴木 (避難者が)宿泊できる施設は考えているのか。

市長 防災倉庫に併設することは可能だが、動線を設けたり、費用がかかる。(議会で)議論していただきたい。

久保谷孝夫市議 いろいろあるでしょうけど、作業部会をつくって、しみじみやった方がいい。

コロナ禍、美術で現実と仮想を問う 筑波大4年 松田ハルさん 都内で個展

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「取り戻された感覚(松田ハル 2020)」=松田さん提供

【山口和紀】筑波大学4年の松田ハルさん(22)が、個展「VIRTUAL ABSTRACTION(バーチャル・アブストラクション、仮想抽象)」を20日から3月14日まで都内で開催する。松田さんは芸術専門学群美術専攻版画領域に在籍している。老朽化し使われなくなった学生宿舎に作品を展示した「平砂アートムーヴメント」にも参加し、現代アーティストとして活躍している。会場は東京都墨田区のアートスペース「DOGO」。

版画とVRを融合

昨年から、新型コロナ感染対策のために人の動きが大きく制限されるようになり、美術館などではオンライン展示が当たり前のように行われるようになった。松田さんは「(自身の)卒業制作の展示会も、方法が二転三転し、いまのところ作品の画像をオンラインで見られるようにするという話になっている。そういう状況のなかで、美術鑑賞にとって(現実に対する)『仮想』とは何か」ということを問う必要があると思った」と話す。

展示は「版画」と「VR(バーチャルリアリティ、仮想現実)」を融合させた異色の作品。同一モチーフが「版画」と「VR」の両方にまたがって表現される。まず「版画」が鑑賞者の目に入るようになっており、続いてヘッドマウントディスプレイ(頭部に装着するタイプのディスプレイ)を用いて、鑑賞者がVRの世界に入っていく。VR空間には、版画と同一のモチーフの3Dモデルが設置される。

展示のキーワードは「現実」と「複製」だ。「版画がもともと絵画の複製品であり、VRは現実を複製するもの。鑑賞者はまず版画を鑑賞し、続いてVRによって現実にある版画の複製の世界に入る。そこには、現実と複製の二重性があるが、どちらにも現実と複製が混在している。それゆえに鑑賞者はその二重性に揺さぶられる」と松田さんはコンセプトを話す。

個展の名前に使われている「バーチャル・アブストラクション」はそうした二重性が獲得した新たな抽象性のことを指す松田さんの造語だ。「『真実と虚構』『現実と仮想』などのさまざまな二項対立が融解していく過程を意味するという。

「芸術専門学群という場所は東京のアートシーンからは切り離されているような感覚がある。それゆえに、多くの学生がある種のコンプレックスみたいなもの持っていて。そういう環境だからすごく自分の独自性を意識していて。それがこういう形を作っていると思う」と松田さん。

「取り戻された感覚(松田ハル 2020)」=松田さん提供。個展での展示作品に近い。

異色の展示会場

作品だけでなく展覧会場も異色だ。DOGOは、世界最小と銘打ったアートコンプレックス「文華連邦」に入居するアートスペースの一つ。わずか4坪の空間に8つのアートスペースが同居し、それらが入れ代わり立ち代わり展覧会を開いている。それぞれのアートスペースにオーナーがおり「一つが展示を行っているときは、他のスペースはお休みしている」という。

「DOGO」オーナーの番場悠介さん(21)は、松田さんとの出会いについて「2019年の『平砂アートムーブメント』に興味をもって、企画した筑波大の学生とつながった。その学生から『面白い人がいるから』ということで紹介されたのが松田さん」と振り返る。

松田さんの個展を開く経緯については「自分の出身が茨城県なので、地元のアーティストの作品をディレクションできないかと考えていた。松田さんが活動の場をさらに広げるきっかけになれば」と話す。

◆個展は2月20日(土)から3月14日(日)まで。開館は月金土日曜のみで時間は午後3時から8時。祝日は火水木でも開館。会場のDOGOは東京都墨田区文花1-12-101-103 文華連邦内。

自宅からバス停までの移動手段模索 電動キックボードで実証実験

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電動キックボードで歩行者を追い抜き、安全性などを検証する実証実験=土浦市真鍋、つくば霞ケ浦りんりんロード

【山口和紀】電動キックボードは近い将来、自宅からバス停までのラストワンマイル(最後の1区間)の移動手段を担うことができるのかー。土浦市真鍋の自転車道「つくば霞ケ浦りんりんロード」で18日、電動キックボードの走行実験が行われた。同市で実証実験が行われている、複数の公共機関やモビリティを組み合わせ、検索・予約・決済等を一元化する「つちうらMaaS」の目玉の一つだ。

実験に使われたのは常総市のベンチャー企業「KINTONE(キントーン)」の電動キックボード「モデルワン」だ。家庭用コンセントから簡単に充電することができ、一度の充電で13~18キロ走行が可能。最高時速は25キロ。孫悟空の「筋斗雲(きんとうん)に乗っているかのように移動できる」という。

今回行われた実証実験では、すれ違い、追い抜き、並走などの様々な状況を、徒歩や車いす、自転車などが通行している状況を想定し実験し、安全性や活用の可能性を探った。

自転車を追い抜く実証実験=同

現在、電動キックボードは条件を満たせば原動機付き自転車として公道を走ることができるが、自転車道を走ることは認められていない。一方、欧米ではシェアリングサービスが進むなど一般に普及している。QRコードを読み込むなどの簡単な方法で、街中のステーションから電動キックボードを借りていくことが出来るという。

同社の担当者は「欧米では、新しいことはまずやってみて、そのあと調整して法制度を作っていく。日本は安全性や活用法をきちんと確かめてから法制化という流れ。実際に自転車道を走ることができるのは、早くてもあと5年はかかると考えている」と語った。

実験を行っている関東鉄道の担当者は「バスや電動キックボードのようなモビリティを様々に組み合わせて、より良い交通システムを模索していきたい。」と話した。

《電動車いすから見た景色》15 私の中にある無意識の差別

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【コラム・川端舞】「自分はどんな人も差別しない」。そう断言できる人はどのくらいいるだろうか。私にはそんな自信はないし、「もしかしたら無意識に誰かを差別しているかもしれない」と自分を省みることができる人間でいたいと思う。

障害者差別をなくすために、障害者と健常者の関係はどうあればいいのか。健常者の立場から差別について考える研修会が、2月上旬、障害者支援団体「つくば自立生活センターほにゃら」の内部職員向けに開催された(2月16日付)。

研修会では、部落差別を中心とした差別問題を研究する、筑波大名誉教授の千本秀樹さん(71)により、部落差別の基本命題が紹介された。これは、かつて、部落差別をなくすことを目指す運動団体「部落解放同盟」が提唱したものだ。

基本命題の1つは、「社会意識としての差別観念」だ。意識的に差別している自覚のない人であっても、部落差別が蔓延(はびこ)っている社会の中で暮らしていると、無意識のうちに「自分は被差別部落出身でなくてよかった」という差別的考えを持たされてしまう。そして、この考え方がさらに被差別部落と一般大衆の距離を広げる。

車椅子利用者を排除するアパート

身近な例で考えてみる。以前、私が別のアパートに引っ越そうと思い、物件探しをしたとき、ほとんどのアパートは外観を見ただけで候補から外れた。不思議なくらい、どのアパートの玄関にも段差がある。アパートを建てた人は、障害者差別をしているつもりは全くないのだろうが、結果として入居者から車いすユーザーを排除してしまっている。

車いすで入れない場所が当然のようにあちこちにある社会では、「歩けない障害者が悪い」「自分は障害者でなくてよかった」と無意識に思わされる。本当は、車いすで生活することを想定していない社会に問題があるのだが。

このような社会に暮らしている私たち一人一人の中に、無意識のうちに障害者差別が芽生えてしまうのは仕方ない。普段は差別される側になることが多い私でも、もしかしたら特定の属性を持つ人たちを無意識に差別しているかもしれない。人間は自分の知っている範囲でしか、物事を考えられないからだ。

「ほにゃら」の研修会で千本さんも言っていたが、自分の中の無意識の差別に気づくためには、様々な立場の人と対話し、もし自分が相手に対し差別的な言動をしてしまった場合は、相手から率直に指摘してもらう。そして、その指摘を素直に受け取り、相手が自分の言動をどう感じたのかを、直接教えてもらう。それを一人一人が繰り返すことでしか、差別はなくならないのではないか。(つくば自立生活センターほにゃらメンバー)

筑波山の中身が見える! 体験アプリ「ジオ・ビュー」開発中

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ジオ・ビューを筑波山に向けて地質図を見る=つくば市神郡

【相澤冬樹】筑波山にスマホを向けると「地質」が見える—という体験アプリの開発が進んでいる。産業技術総合研究所 地質調査総合センター(つくば市東)が開発中の「ジオ・ビュー」で、15日から公募モニターによる実証実験が行われている。

アプリは、スマートフォンのカメラで取り込んだ風景に、GPSの位置情報を与えることで、地質図や観光スポットなどの情報を重ねて表示する。国内の地質情報を整備する同センターが地質図の活用法を模索する中で、スマホの普及やAR(拡張現実)技術の発達に合わせた「見せ方」をアプリで表現しようとした。

国内ジオパークになっている筑波山地域を対象に試作し、つくば市のSociety(ソサエティー)5.0社会実装トライアル事業に応募、採択された。今年度は特に「With/Afterコロナの生活スタイル」をテーマとしており、同センターは「ひとり(少人数)で楽しめる筑波山観光アイテム」になるとアピールした。

モデルルートで実証実験

21日までの1週間は、同市が募集したジオガイドやモニターによる実証実験が行われている。モデルルートを周遊し、画面構成や操作性などに関わる意見を収集し、アプリのブラッシュアップを図る狙いだ。

18日は記者団に公開され、筑波山の山容を一望できる遠景から始まり、白梅・紅梅が見ごろを迎えた筑波山梅林や筑波山神社などを見て回った。見学には同センター地質情報研究部門の宮地良典副部門長らが同行し、スマホの操作法を手ほどきしながら専門的な地質情報も解説した。

ビューポイントでスマホを操作すると、「大地の中身」である地質図が風景画面に重なって浮き上がり、見どころなど解説記事も読めるようになっている。筑波山の山体が、地質的には標高の高いところから斑れい岩、花こう岩 土石流堆積物と連なり、なだらかに平野部に至るのがよく分かる。

スマホの表示画面。地上モード(上)と空中モード(地質調査総合センター提供)

モニターからは「すごい」という感嘆の声が聞かれたほか、「スマホに不慣れな高齢者には文字が細か過ぎるところがある」などの意見があがった。

宮地副部門長によれば「ここまでくるのに約3年かかっている。要望を聞いてアプリに反映していきたいが、詰め込み過ぎになってもまずいので整理していく必要がある」という。現時点では筑波山周辺の情報しか取り込んでおらず、市販アプリとして一般に提供、普及するにはなお時間を要しそうだ。