金曜日, 1月 28, 2022
ホーム つくば コロナ禍、美術で現実と仮想を問う 筑波大4年 松田ハルさん 都内で個展

コロナ禍、美術で現実と仮想を問う 筑波大4年 松田ハルさん 都内で個展

【山口和紀】筑波大学4年の松田ハルさん(22)が、個展「VIRTUAL ABSTRACTION(バーチャル・アブストラクション、仮想抽象)」を20日から3月14日まで都内で開催する。松田さんは芸術専門学群美術専攻版画領域に在籍している。老朽化し使われなくなった学生宿舎に作品を展示した「平砂アートムーヴメント」にも参加し、現代アーティストとして活躍している。会場は東京都墨田区のアートスペース「DOGO」。

版画とVRを融合

昨年から、新型コロナ感染対策のために人の動きが大きく制限されるようになり、美術館などではオンライン展示が当たり前のように行われるようになった。松田さんは「(自身の)卒業制作の展示会も、方法が二転三転し、いまのところ作品の画像をオンラインで見られるようにするという話になっている。そういう状況のなかで、美術鑑賞にとって(現実に対する)『仮想』とは何か」ということを問う必要があると思った」と話す。

展示は「版画」と「VR(バーチャルリアリティ、仮想現実)」を融合させた異色の作品。同一モチーフが「版画」と「VR」の両方にまたがって表現される。まず「版画」が鑑賞者の目に入るようになっており、続いてヘッドマウントディスプレイ(頭部に装着するタイプのディスプレイ)を用いて、鑑賞者がVRの世界に入っていく。VR空間には、版画と同一のモチーフの3Dモデルが設置される。

展示のキーワードは「現実」と「複製」だ。「版画がもともと絵画の複製品であり、VRは現実を複製するもの。鑑賞者はまず版画を鑑賞し、続いてVRによって現実にある版画の複製の世界に入る。そこには、現実と複製の二重性があるが、どちらにも現実と複製が混在している。それゆえに鑑賞者はその二重性に揺さぶられる」と松田さんはコンセプトを話す。

個展の名前に使われている「バーチャル・アブストラクション」はそうした二重性が獲得した新たな抽象性のことを指す松田さんの造語だ。「『真実と虚構』『現実と仮想』などのさまざまな二項対立が融解していく過程を意味するという。

「芸術専門学群という場所は東京のアートシーンからは切り離されているような感覚がある。それゆえに、多くの学生がある種のコンプレックスみたいなもの持っていて。そういう環境だからすごく自分の独自性を意識していて。それがこういう形を作っていると思う」と松田さん。

「取り戻された感覚(松田ハル 2020)」=松田さん提供。個展での展示作品に近い。

異色の展示会場

作品だけでなく展覧会場も異色だ。DOGOは、世界最小と銘打ったアートコンプレックス「文華連邦」に入居するアートスペースの一つ。わずか4坪の空間に8つのアートスペースが同居し、それらが入れ代わり立ち代わり展覧会を開いている。それぞれのアートスペースにオーナーがおり「一つが展示を行っているときは、他のスペースはお休みしている」という。

「DOGO」オーナーの番場悠介さん(21)は、松田さんとの出会いについて「2019年の『平砂アートムーブメント』に興味をもって、企画した筑波大の学生とつながった。その学生から『面白い人がいるから』ということで紹介されたのが松田さん」と振り返る。

松田さんの個展を開く経緯については「自分の出身が茨城県なので、地元のアーティストの作品をディレクションできないかと考えていた。松田さんが活動の場をさらに広げるきっかけになれば」と話す。

◆個展は2月20日(土)から3月14日(日)まで。開館は月金土日曜のみで時間は午後3時から8時。祝日は火水木でも開館。会場のDOGOは東京都墨田区文花1-12-101-103 文華連邦内。

誹謗中傷するコメントはNEWSつくば編集局が削除します。
0 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る

陽性確認者数(公表日ベース)の推移

つくば市

土浦市

スポンサー

注目の記事

最近のコメント

最新記事

高田保の「ブラリひょうたん」 《ひょうたんの眼》44

【コラム・高橋恵一】高田保は、土浦出身の劇作家、映画監督、舞台演出家、随筆家である。旧土浦町の旧家に生まれ、子供のころから気遣いができて話も面白く、同級の者以外とも交流するなど、人望が厚かったそうだ。 旧制土浦中学(現在の土浦一高)を経て早稲田大学の英文科に進み、頻繁に銀座に現れるなど生活を謳歌(おうか)したという。中学の入学試験はトップだったが、2位には阿見町出身の下村千秋がおり、その後、2人とも文筆の道に進んだ。 保は、大学在学中から新劇運動に参加。戯曲に取り組んだり、劇団の脚色、演出、小説の執筆など、幅広い分野で活動。人柄もあって幅広い付き合いがあった。 東京日日新聞(現・毎日新聞)の学芸部長だった阿部真之助から、菊池寛を顧問とした学芸部社友に、大宅壮一、横光利一,吉屋信子らとともに招かれ、活躍。彼らの文章を評して、「マクラの阿部真之助、サワリの大宅壮一、オチの高田保」と言われたこともあるという。 戦時中から体調を壊し、大磯(神奈川)に住まいを移し、晩年は、同じ大磯の志賀直哉の旧居に住んだ。 戦後、1951年の12月から、東京日日に、1日1文「あとさき雑話」を書き始め、新年からは表題を「ブラリひょうたん」に改めた。なぜ、ブラリなのか? なぜ、ひょうたんなのか?...

内臓脂肪に機能性成分 農研機構開発ミールセット、3月発売へ

超高齢社会に向け、健康維持に配慮した食事を摂ってもらいたいと農研機構(NARO、つくば市)の設計したミールセットが近く、売り出される。26日、お披露目されたのは「NARO Style PLUS(ナロスタイルプラス)」。特に内臓脂肪の低減が期待される献立になっている。 ミールセットは50%もち麦ごはん、おかず4種類、緑茶粉末から構成される。β-グルカンを含むもち麦「キラリモチ」、カテキン豊富なお茶「べにふうき」など機能性成分を盛り込んで10メニューを用意した。 機能性表示食品制度の始まった2015年から、農研機構はその科学的根拠を確認する研究を推進してきた。陣頭指揮に当たったのが食品研究部門の山本万里エグゼクティブリサーチャーで、機能性成分を多く含む農産物を使用した弁当メニューの「NARO Style」を設計。18年からは肥満傾向にある被験者を対象にヒト介入試験を行い、平日の日中1食を一定期間継続して食べることで、内臓脂肪面積の減少が認められたと報告した。特に女性がもち⻨ごはんを摂取すると、他の機能性農産物より顕著に内臓脂肪が低下した結果が得られたという。 ヒト介入試験(2017)の結果 試験開始内臓脂肪面積が100〜127㎠の被験者や女性被験者が50%もち麦ごはんを摂取すると、他の機能性農産物群より顕著に内臓脂肪面積が低下した=農研機構提供 今回の「- PLUS」は製造、販売にフローウィング(本社・兵庫県姫路市)の参画を得て、量産体制を整えた。献立は、おかずを弁当の3種類から4種類に増やした。酢鶏などをメーンに豆類を素材とした副菜を追加している。管理栄養士によれば、10メニュー平均で1食当たり584キロカロリー、たんぱく質28グラム、脂質17グラムと栄養バランスを整えた。食塩相当量は1.35グラム、通常販売されているお弁当の約2.5グラムと比べ大幅な低塩分を実現した。

関東にも降灰の影響 巨大噴火火砕流の分布図公開 産総研

南太平洋の島国、トンガで起きた海底火山の噴火で津波が日本まで押し寄せ、大規模噴火の影響が広範囲に及ぶことを示した。日本には過去10万年でトンガの噴火の100~10000倍もの爆発を起こした火山が数多く存在する。それらの巨大噴火により火砕流がどれくらい広がったのかを示す図が「大規模火砕流分布図」として産総研活断層・火山研究部門(つくば市東)からシリーズで刊行されることになり、第1号として約3万年前の姶良(あいら)カルデラ(鹿児島)の巨大噴火により噴出した入戸(いと)火砕流の分布図が25日に公開された。 姶良カルデラの巨大噴火は火山爆発指数7で、トンガの噴火の約100倍(体積比)も大きかった(上図)。シリーズ刊行に当たり新たなボーリング試料や海底での火砕流分布のシミュレーション結果も検討した結果、入戸火砕流と火山灰の総噴出量800〜900立方キロメートルであることが明らかとなった。これは従来の推定値より約1.5倍大きい。図幅では火砕流に伴う降灰分布も示しており、関東地方では10センチ程度積もったと推定されている。 関東地方では姶良カルデラ以外にも、巨大噴火による火山灰が積もっている(下図)。 関東地方に降灰をもたらした噴火と推定降下範囲。ピンク色が入戸火砕流にともなう姶良Tn火山灰、緑色が阿蘇4火砕流に伴う火山灰、青色が鬼界カルデラ起源の幸屋火砕流にともなうアカホヤ火山灰、オレンジ色が阿多火砕流に伴う火山灰の分布=同 姶良カルデラは約3万年前の噴火しか確認されていないが、鬼界カルデラ(鹿児島)は約7000年前と約9万5000年前の2回、阿多カルデラ(鹿児島)は約10万年前と約24万年前の2回、阿蘇カルデラ(熊本)は約27万年前、約14万年前、約13万年前、約9万年前の4回の巨大噴火が確認されており、いずれも火山爆発指数は7、約9万年前の阿蘇カルデラの噴火の火山爆発指数は8と推定されている。これらの火山についても順次、大規模火砕流分布図が公開される予定で、関東地方に具体的にどれくらい降灰があったかについても最新の知見が公開される。 下司信夫研究グループ長は「降下火山灰の対策については難しいところがあるが、どうやって除去するかが大きな課題になる」としている。(如月啓)

洞峰公園の薔薇とイギリス文化の香り《遊民通信》33

【コラム・田口哲郎】前略 初夏のころ、つくば市にある洞峰公園のプール棟前には薔薇(バラ)の花が溢(あふ)れます。ローズガーデンさながらの種類と本数です。この薔薇園を特に入場料を払わずに鑑賞できるのは、とてもありがたいと思います。色とりどり、鮮やかさなど、さまざま楽しめるのはもちろん、香りがとてもよいのです。あまり強くなく、かすかですが、ふわっと心地よく、非日常に連れていってくれるような匂い。デパートに売っている高級な香水を思わせます。 さて、私は夢中で写真を撮ったのですが、ある写真を見返して思わずつぶやきました。「こりゃ、イングリッシュだな」と。マリーナという品種が、プール棟のレンガ風外壁とガラス屋根を背景に濃いオレンジ色に咲きほこっています。 西洋の伝統を感じさせるレンガと近代を物語るガラスに薔薇とくれば、水戸偕楽園の好文亭に梅林といったおもむき。イングリッシュの本体もそばにありました。クィーン・エリザベス。「われらが女王陛下のために」と、どこかで聞いたことがある言葉が思い浮かぶほど、その薔薇は我こそ薔薇なりと言わんばかりに堂々と咲いていました。 クィーン・エリザベスで思い浮かんだ言葉は、シャーロック・ホームズのセリフだった気がします。19世紀、大英帝国華やかなりし時代の物語です。シャーロックは犯罪者を推理のすえ、いよいよ追いつめようと、相棒のワトスン君とベーカー街の部屋を飛び出すときにそう言います。そういえば、NHK BSでイギリスのグラナダテレビジョン制作の「シャーロック・ホームズの冒険」が絶賛再放送中です。