【相澤冬樹】筑波山にスマホを向けると「地質」が見える—という体験アプリの開発が進んでいる。産業技術総合研究所 地質調査総合センター(つくば市東)が開発中の「ジオ・ビュー」で、15日から公募モニターによる実証実験が行われている。
アプリは、スマートフォンのカメラで取り込んだ風景に、GPSの位置情報を与えることで、地質図や観光スポットなどの情報を重ねて表示する。国内の地質情報を整備する同センターが地質図の活用法を模索する中で、スマホの普及やAR(拡張現実)技術の発達に合わせた「見せ方」をアプリで表現しようとした。
国内ジオパークになっている筑波山地域を対象に試作し、つくば市のSociety(ソサエティー)5.0社会実装トライアル事業に応募、採択された。今年度は特に「With/Afterコロナの生活スタイル」をテーマとしており、同センターは「ひとり(少人数)で楽しめる筑波山観光アイテム」になるとアピールした。
モデルルートで実証実験
21日までの1週間は、同市が募集したジオガイドやモニターによる実証実験が行われている。モデルルートを周遊し、画面構成や操作性などに関わる意見を収集し、アプリのブラッシュアップを図る狙いだ。
18日は記者団に公開され、筑波山の山容を一望できる遠景から始まり、白梅・紅梅が見ごろを迎えた筑波山梅林や筑波山神社などを見て回った。見学には同センター地質情報研究部門の宮地良典副部門長らが同行し、スマホの操作法を手ほどきしながら専門的な地質情報も解説した。
ビューポイントでスマホを操作すると、「大地の中身」である地質図が風景画面に重なって浮き上がり、見どころなど解説記事も読めるようになっている。筑波山の山体が、地質的には標高の高いところから斑れい岩、花こう岩 土石流堆積物と連なり、なだらかに平野部に至るのがよく分かる。
モニターからは「すごい」という感嘆の声が聞かれたほか、「スマホに不慣れな高齢者には文字が細か過ぎるところがある」などの意見があがった。
宮地副部門長によれば「ここまでくるのに約3年かかっている。要望を聞いてアプリに反映していきたいが、詰め込み過ぎになってもまずいので整理していく必要がある」という。現時点では筑波山周辺の情報しか取り込んでおらず、市販アプリとして一般に提供、普及するにはなお時間を要しそうだ。