日曜日, 4月 28, 2024
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放射線治療装置をリニューアル《メディカル知恵袋》1

【コラム・大城佳子】筑波メディカルセンター病院(つくば市天久保)の医療従事者がこのコラムを担当することになりました。少し難しいかもしれませんが、皆さまのご参考になればと思っています。 放射線治療とは 放射線治療は手術や薬物療法と並び、がんの治療の中で重要な役割を果たしています。放射線治療はその名前の通り放射線をがんに照射します。放射線が当たったがん細胞はDNAに損傷を受け、死滅していきます。陽子線や重粒子線も放射線治療の一つです。当院では最も一般的なX線を使った治療を行っています。 X線はレントゲンやCT検査に用いられています。レントゲン検査の際に何の刺激も感じることなく、すぐに終わってしまうのと同様に、放射線治療も痛みや熱を感じることなく、短時間で終了します。体への負担が少ないことが放射線治療の最大の利点です。 そして放射線治療は「病気を治す」という根治目的以外にも、症状を良くする緩和照射、例えば、がんの痛み止めや麻痺の予防、止血などにも効果を発揮します。ですから、放射線治療はがん治療において幅広い効果を期待できます。 一般的にがん細胞は正常細胞に比べて放射線に対して弱いため、毎日少しずつ照射をすることにより、正常な細胞を回復させながら、がん細胞だけを死滅させることができます(図1)。そのため、放射線治療では一般的に平日毎日の通院が必要です。 新しくなった放射線治療 近年、より高精度で効果的、そしてより副作用が少ない治療を目指して、放射線治療技術は目覚ましい進歩を遂げています。 当院では2015年以降、強度変調放射線治療(Intensity modulated radiotherapy : IMRT)を導入しています。これは「機械から出てくるビームの強さを変えて、避けたい臓器の線量を下げて、目的の腫瘍(しゅよう)にたくさん放射線を当てる」という治療です。当初は前立腺がんの治療にのみ利用されていましたが、最近は肺や骨盤など、様々な部位の照射に応用しています。 これにより、これまで治療が難しかった症例が治療できるようになったり、より副作用を少なく治療できるようになったりしています。 今回(2023年10月)、新しい放射線治療の機器(リニアック)が稼働します(写真)。通常の放射線治療に加えて、より高精度な治療に特化した仕様となっています。 小さな脳転移に対しては定位照射が適応となることが多いです。定位照射とはピンポイント照射ともいわれる治療です。小さな腫瘍に対して、大きな線量の放射線を少ない回数で照射することにより、強い効果を発揮します。これまで、複数個の転移に対して定位照射を行う場合は、一個ずつ治療する必要がありましたが、新リニアックでは一度に複数個の転移を治療することができるため、治療期間を短縮することができます(図2)。 また、近年では背骨(脊椎)の転移に対しても、定位照射を行うとより進行を抑えることができ、高い効果が期待できることが報告されています。しかしながら、背骨の中には太い神経の束である脊髄があり、たくさんの放射線が脊髄に照射されてしまうと副作用により麻痺が生じてしまいます。そのため、定位照射は非常に難しく、再照射も困難でした。 しかし、新リニアックには背骨の定位照射に特化したソフトが導入されたため、これまでに比べて定位照射のハードルが下がり、再照射が可能になる機会も多くなります。 最近の放射線治療 日本では歴史的背景から一般的に放射線に良い印象は持たれていません。しかしながら、医療で用いる放射線はその安全性が確立されています。また、一昔前は放射線治療=治らないという時代もありました。しかし、わずか10年前と比べても、現在の放射線治療の技術は格段に進歩し、より効果が高く、より安全になっています。 放射線治療の方法は様々です。ここにご紹介した高精度照射ではなく、古典的で簡単な放射線治療が最適な場合もあります。茨城県は通常のX線治療のみならず、筑波大学に陽子線治療、つくばセントラル病院にサイバーナイフを有しており、非常に放射線治療機器に恵まれています。 当院では、必要があればこれらの近隣施設をご紹介し、それぞれの特性を生かしながら、地域全体で、できるだけ速やかに、最適な治療を提供していきたいと考えています。(筑波メディカルセンター病院 放射線治療科診療科長) 【注】この記事は筑波メディカルセンター病院広報誌「アプローチ89号」でもご覧いただけます。

永田氏再任へ 筑波大 学長選考行わず

筑波大学(つくば市天王台)は24日、任期満了に伴う次期学長予定者に、現学長の永田恭介氏(70)が決定したと発表した。学長選考は行わず、学長選考・監察会議(議長・河田悌一元関西大学学長、学内・学外委員各10人で構成)の再任審査により決定した。再任後の任期は来年4月1日から2027年3月31日までの3年間。文科相が任命する。 同大の学長選考要項によると、学長の任期が満了する時は、学長候補者の中から新たな学長の選考を行うことになっている。一方、再任される場合の任期が新たな中期計画期間にまたがらず、現学長に再任の意思がある場合は、学長選考は行わず、学長選考・監察会議が再任の審査をすることになっている。 今回、現学長が再任された場合の任期は第4期中期計画期間(22年4月~28年3月の6年間)内にあり次の第5期計画にまたがらないこと、永田氏から再任の意思が示されたことから、新たな学長の選考は実施しなかったという。 再任審査にあたって同会議は5月24日と9月20日、手順の確認と検討を実施、さらに永田氏から提出があった業績調書と所信表明書に基づいて10月24日、永田氏と面談した。 審査の結果、永田氏は人格が高潔で学識に優れ、大学における教育研究活動を適切かつ効果的に運営する能力を有していること、情熱と実行力を有し、ビジョンを明示しながら中期計画を策定・推進し、大学の卓越性を高めるーとして次期学長予定者に決定した。 永田学長は東京大学薬学部薬学科卒、国立遺伝学研究所助手、東京工業大学生命理工学部助教授、筑波大学基礎医学系教授などを経て、2013年4月から同大学長を務める。 前回、2020年の学長選考では、永田氏の再任をめぐって、最長6年だった学長任期の上限が撤廃されたこと、教職員の意見聴取で対立候補の得票数の方が多かったことなどから、同大の教員有志らでつくる「筑波大学の学長選考を考える会」(共同代表・竹谷悦子、吉原ゆかり教授)が選考プロセスの正当性を問う声を挙げている(20年10月21日付、23年3月27日付)。

土地の守護精霊「ゲニウス・ロキ」《訪問医は見た!》5

【コラム・平野国美】今日は、最近知り得た知識を駆使して、お話をさせていただきます。テーマは「地霊(ちれい)」です。オカルトの姿を見せられるかと、嫌な予感をされる方も多いと思います。NEWSつくばも、コラムニストの人選を間違えたと悔やんでおられるかもしれません。でもご心配なく。職業柄、スピリチュアル、オカルトとは一線を引いております。 この地霊とは、ローマ神話における土地の守護精霊ゲニウス・ロキ(genius loci)の和訳で、大地に宿る精霊や霊的存在を示す言葉なのです。やはり、スピリチュアルかとお思いでしょうが、今の欧米では「土地の雰囲気」や「土地柄」を意味し、本来の守護精霊を意味することはなくなっています。 ノスタルジアという単語が、元はホームシックのような精神科用語であったのが、今は「過去に対する懐かしさ」を意味するようになったように、言葉の意味が変遷したのでしょう。 叱られてしまいますが、学者が設計した計画都市は面白くありません。かつての学識者が私の患者さんとなり、うそか真実かわかりませんが、飛行機から見たレニングラード(現在の名称はサンクトペテルブルク)のような風景の都市を造りたいと語っていた記憶があります。 「つくばシンドローム」という言葉 職住一体型の計画都市=つくばの黒歴史として、「つくばシンドローム」という言葉を覚えている方もあるかと思います。提唱者は、筑波大学医学系の名物教授であった小田晋先生です。 小田先生は、授業で「人間にとって街路は曲がりくねっていなくては駄目。真っすぐなんてありえない。駅前だって、赤提灯があって、ちょっと酔って、電車に30分ぐらい乗って帰らなくては、職場から家へのリセットができない」と、学者らしからぬ話をされていました。しかし、先生は大事な公衆衛生の話をされていたのだと、今、思います。 その後、つくばから東京駅へのバスの運行、そして、つくばエクスプレス(TX)の開通によって、こういった問題は解消されていったのです。つくばに限らず、政治家や都市工学の専門家は機能的な街を提示します。TXは通ったものの、この街には多様な居場所がまだ形成されていないと思うのです。逆に壊されたかも…と。まだ、「地霊」が宿っていないかも知れません。 地霊ゲニウス・ロキとは何でしょうか? 秘められた時間や歴史を大衆が織り込んでいくこと? 私は、上の写真のネオンサインとかに「地霊」を感じます。見慣れた永谷園のネオン、姫路駅前の揖保乃糸のネオンに。ああ、ここへ来たのだと気づかせてくれるパワーを感じます。これを見つける感性も必要なのだと思うのです。(訪問診療医師)

土地の守護精霊「ゲニウス・ロキ」《訪問医は見た!》5

【コラム・平野国美】今日は、最近知り得た知識を駆使して、お話をさせていただきます。テーマは「地霊(ちれい)」です。オカルトの姿を見せられるかと、嫌な予感をされる方も多いと思います。NEWSつくばも、コラムニストの人選を間違えたと悔やんでおられるかもしれません。でもご心配なく。職業柄、スピリチュアル、オカルトとは一線を引いております。   この地霊とは、ローマ神話における土地の守護精霊ゲニウス・ロキ(genius loci)の和訳で、大地に宿る精霊や霊的存在を示す言葉なのです。やはり、スピリチュアルかとお思いでしょうが、今の欧米では「土地の雰囲気」や「土地柄」を意味し、本来の守護精霊を意味することはなくなっています。 ノスタルジアという単語が、元はホームシックのような精神科用語であったのが、今は「過去に対する懐かしさ」を意味するようになったように、言葉の意味が変遷したのでしょう。 叱られてしまいますが、学者が設計した計画都市は面白くありません。かつての学識者が私の患者さんとなり、うそか真実かわかりませんが、飛行機から見たレニングラード(現在の名称はサンクトペテルブルク)のような風景の都市を造りたいと語っていた記憶があります。 「つくばシンドローム」という言葉 職住一体型の計画都市=つくばの黒歴史として、「つくばシンドローム」という言葉を覚えている方もあるかと思います。提唱者は、筑波大学医学系の名物教授であった小田晋先生です。 小田先生は、授業で「人間にとって街路は曲がりくねっていなくては駄目。真っすぐなんてありえない。駅前だって、赤提灯があって、ちょっと酔って、電車に30分ぐらい乗って帰らなくては、職場から家へのリセットができない」と、学者らしからぬ話をされていました。しかし、先生は大事な公衆衛生の話をされていたのだと、今、思います。 その後、つくばから東京駅へのバスの運行、そして、つくばエクスプレス(TX)の開通によって、こういった問題は解消されていったのです。つくばに限らず、政治家や都市工学の専門家は機能的な街を提示します。TXは通ったものの、この街には多様な居場所がまだ形成されていないと思うのです。逆に壊されたかも…と。まだ、「地霊」が宿っていないかも知れません。 地霊ゲニウス・ロキとは何でしょうか? 秘められた時間や歴史を大衆が織り込んでいくこと? 私は、上の写真のネオンサインとかに「地霊」を感じます。見慣れた永谷園のネオン、姫路駅前の揖保乃糸のネオンに。ああ、ここへ来たのだと気づかせてくれるパワーを感じます。これを見つける感性も必要なのだと思うのです。(訪問診療医師)

国連難民高等弁務官、筑波大で学生らと意見交換

来日中のフィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官が20日、つくば市を訪れ、筑波大学(同市天王台)で学生らと意見交換した。 グランディ氏はまず、公募で集まった約40人の学生や留学生を前に講演し、「中東、ウクライナ、エチオピアなど世界の難民は大変厳しい状況に置かれている」とし、「難民問題の解決はさまざまなグループが共に手を携えて連携をとること」だなどと話した。日本については「大変重要な寄付国であり、ソフトパワーの重要な国だ」などと述べた。 学生からは、日本政府の難民受け入れ数の少なさについての質問も出た。グランディ氏は「日本は多数の難民を受け入れている国ではないが、状況は変わりつつある。ウクライナからの避難者を難民としてではなく避難民として受け入れるなど、少しずつ国を開いている」などと話した。 緊迫しているイスラム組織ハマスとイスラエルとの衝突については「中東で10日前から起きている暴力にショックを受けている」とし、「ガザでは薬、水、あらゆるものが足りない。まずは停戦を実現しなくてはならない」などと強調した。 グランディ氏は2016年に国連難民高等弁務官に就任した。就任前の05年から国連パレスチナ難民救済事業機関の事務局次長、10年から14年まで同事務局長を務めていた。 今回、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)を支援する日本国内の様々な機関へのお礼や今後の連携強化に向けた意見交換、日本が共同議長国を務め12月にジュネーブで開催される第2回グローバル難民フォーラムへの後押しを依頼するため来日した。 つくばでは20日午前、つくば市役所を訪問し五十嵐立青市長と懇談後、筑波大に移動。永田恭介学長や五十嵐市長らと昼食をとった後、学生と約50分間、意見交換した。 ウクライナの首都キーウから避難し昨年12月に来日した同大特別聴講学生のミコラ・ママンチュクさん(21)はグランディ氏との意見交換について「ユニークで魅力的だった。(グランディ氏は)筑波大学のすばらしさを覚えていてくれると思う」などと感想を話した。

創業39年、筑波大近くの「フライパン」 《ご飯は世界を救う》58

【コラム・川浪せつ子】お店の前をよく通り、気になっているけど、行ったことのないお店ってありませんか? 筑波大学の北側、西大通りを曲がってすぐのお店。私にとって、ここ「フライパン」さん(つくば市春日)がそんな所でした。 我が家からだと、西大通りから東大通り方面に行くときの狭い抜け道。ずっとずっと前からあるなぁ~と。入店してみて驚いたのは、創業39年という、長く地域に愛されてきたお店でした。 東京教育大学が、筑波山がある地域に移転して筑波大学となったのが1973年。つまり50年前。そのころから、新規のお店がたくさん出来たのでしょうね。でも、そんなに長く続いているお店は、ほとんどないと思います。 私がつくばに来てから、この秋で42年に突入です。運転免許証を持っていなかった私は、来てまず一番に自動車教習所に通いました。週に数回、渋谷まで仕事で通わなくてはいけないのに、荒川沖駅まで行くのだけでも大変でした。 建築パースの仕事を続けて、こちらでも受注したくて、電話帳で探した建築設計事務所にDM(ダイレクトメール)を100枚出しました。そのときに知り合った設計事務所の方々とのご縁は、今でも続いています。 ささみを上手にいろいろ工夫 「フライパン」さんは、ささみを上手にいろいろ工夫して、提供してくれます。大学の近くのお店ですから、学生さんでもお手頃価格で食べられるよう、工夫なさっているのでしょうね。 昨今の物価高で、飲食店も大変と思います。我が家から歩いて行ける居酒屋さんのランチが、大のお気に入りでしたが、今年に入って閉店されました。居酒屋さんは、特にコロナで打撃が大きかったのだと…。また円安もあり、どんな業界も生き抜いていくのが大変ですね。消費者はどうしても、お財布のひもが堅くなります。 でも、お店には通いたいので、上手に節約しながらうかがうことで、応援させて頂きたいと思います。(イラストレーター)

創業39年、筑波大近くの「フライパン」《ご飯は世界を救う》58

【コラム・川浪せつ子】お店の前をよく通り、気になっているけど、行ったことのないお店ってありませんか? 筑波大学の北側、西大通りを曲がってすぐのお店。私にとって、ここ「フライパン」さん(つくば市春日)がそんな所でした。 我が家からだと、西大通りから東大通り方面に行くときの狭い抜け道。ずっとずっと前からあるなぁ~と。入店してみて驚いたのは、創業39年という、長く地域に愛されてきたお店でした。 東京教育大学が、筑波山がある地域に移転して筑波大学となったのが1973年。つまり50年前。そのころから、新規のお店がたくさん出来たのでしょうね。でも、そんなに長く続いているお店は、ほとんどないと思います。 私がつくばに来てから、この秋で42年に突入です。運転免許証を持っていなかった私は、来てまず一番に自動車教習所に通いました。週に数回、渋谷まで仕事で通わなくてはいけないのに、荒川沖駅まで行くのだけでも大変でした。 建築パースの仕事を続けて、こちらでも受注したくて、電話帳で探した建築設計事務所にDM(ダイレクトメール)を100枚出しました。そのときに知り合った設計事務所の方々とのご縁は、今でも続いています。 ささみを上手にいろいろ工夫 「フライパン」さんは、ささみを上手にいろいろ工夫して、提供してくれます。大学の近くのお店ですから、学生さんでもお手頃価格で食べられるよう、工夫なさっているのでしょうね。 昨今の物価高で、飲食店も大変と思います。我が家から歩いて行ける居酒屋さんのランチが、大のお気に入りでしたが、今年に入って閉店されました。居酒屋さんは、特にコロナで打撃が大きかったのだと…。また円安もあり、どんな業界も生き抜いていくのが大変ですね。消費者はどうしても、お財布のひもが堅くなります。 でも、お店には通いたいので、上手に節約しながらうかがうことで、応援させて頂きたいと思います。(イラストレーター)

サッカーで研究者同士の交流を 21日、筑波大でサイエンティスト杯

サッカーを通して研究者同士の交流を促進しようと、筑波大学(つくば市天王台)の学生団体「ワールドフットつくば(World Fut TSUKUBA)」と同大体育スポーツ局が21日、スポーツイベント「つくばサイエンティストカップ(TSUKUBA SCIENTISTS CUP)」を同大のサッカー場、セキショウフィールドで開催する。 参加者は当日、5人制のチームを組み、8チーム程度に分かれて予選試合を行い、勝ち上がったチームで決勝トーナメントを行う。参加者の研究分野がそれぞれ異なるよう、同大体育スポーツ局と同団体によりチーム編成が行われる。 参加対象は研究に携わっている男女で、市内外、文系、理系など大学や研究機関、企業などの所属を問わない。大学生や大学院生、サッカー未経験者でも参加可能だ。サッカーを通して研究者同士や研究者と学生の横のつながりを生み出し、新たなコミュニティを提供する。 同団体はこれまで、国内でチャリティーフットサルイベントを開催、また国外活動の一環として、カンボジアを拠点にサッカー教室を開催し、現地小学校にサッカーグラウンドを建設してきた。昨年11月には、同大サッカー場でサッカーワールドカップ(W杯)のパブリックビューイングを企画し、開催している。 今回学生団体が、つくば市に集まっている研究者に着目し、「サッカーを通して世界中の人々に笑顔を」という同団体の理念と重ね、昨年11月に企画が始動した。 その後、大学組織の同大体育スポーツ局に企画提案を行い、今回のイベントが具体化した。体育スポーツ局が主催、同団体が協力という形で初めてタッグを組んだ。 イベントの開催にあたり体育スポーツ局は、市内各研究所にイベントに関するメール案内の送付や大学内で宣伝のためのチラシ配り、同団体はSNSを利用して参加を呼び掛けてきた。 同団体プロジェクトリーダーで、理工学群・応用理工学類3年の山内健太郎さん(21)は「父は研究者で憧れの存在。サッカーは幼い頃から親しみがある。二つはまさに自分の人生そのもの。今回、ご縁のあるすべての人に感謝し、やってよかったと思えるようなイベントにしたい」と話した。同団体の広報で、社会国際学群・国際総合学類1年の佐俣友彬さん(19)は「このイベントの開催は、研究学園都市であるつくばにとってもプラスになること、成功させたい」と話した。 体育スポーツ局の海老原加恵さん(27)は「文理問わず、研究に関わる様々な方に気軽に来場してもらい、筑波大学をより身近な存在にしてもらえれば」と話した。 当日は会場のサッカー場の半分を予選や決勝トーナメント戦に使用し、残りの半分は「PK体験」や、シュートの速度を測る「シュートスピード」、片栗粉と水を用い力をかけると固くなる「ダイラタンシー現象」を体験できる場など、家族連れの来場者も楽しむことができるブースを企画中だ。イベント終了後には同大第一サッカー場で開催される筑波大学蹴球部による関東大学サッカーリーグのホームゲーム公式試合(対東海大学)を観戦できる。(上田侑子) ◆つくばサイエンティストカップは10月21日(土)午前9時〜午後1時30分まで、つくば市天久保3-1、同大キャンパス内のセキショウフィールドで開催。参加申し込みには事前予約が必要、申込締切は20日(金)午後5時。体験ブースは事前予約なしで入場可能。サイエンティストカップの参加申し込みフォームはこちら。イベントに関する情報はワールドフットつくばのX(旧ツイッター)や公式ホームページへ。

料理はデザインである《デザインについて考える》1

【コラム・三橋俊雄】みなさん、はじめまして! 私がデザインの道を歩み出してから、はや半世紀が過ぎました。幼い頃から“絵を描くこと”と“ものづくり”が好きだった私にとって、高校3年時に知った「工業デザイン」の世界は、思ってもみなかった出会いでした。大学は工業意匠学科に進学し、卒業研究では「障害児のためのデザイン」を行いました。 その後、デザイン事務所に入り「プロダクトデザイン」に従事。36歳でもう一度学生に戻り、「地域づくりとデザイン」について学びました。その後、大学教員となってからは、主に「障害者の福祉用具デザイン」や「過疎地域の活性化デザイン」を学生たちと進めてきました。大学で最後に関わったテーマは、「遊び仕事(マイナー・サブシステンス)」という、人間の「生き方のデザイン」でした。 こうして私が歩んできたデザインの道を振り返りながら、みなさんと「デザインの世界」について楽しく語り合えることができればと思っております。 中華の青椒肉絲を作る  今回は、「料理はデザインである」というお話からいたしましょう。 人は、お腹がすくと「今日は何を作ろうか」と思案します。冷蔵庫をのぞくと、豚肉、ピーマン、タケノコなどの食材があります。そこで、「チンジャオロースー(青椒肉絲)を作ろう」と思い立ちます。もちろん、「青椒肉絲」の具材が台所になければ、必要なものを買いに行くことから始めます。酒、醬油(しょうゆ)、それにオイスターソースなども確認して、料理に取りかかります。 このように、「料理をする」とは、「お腹がすいた」という課題(問題)に対して、食べたい料理をイメージし、食材や調理道具など、台所の限られた条件の中でやりくりしながら料理を行い、最後は食べる(課題を解決する)という一連の行為であり、それは「デザイン」をすることに他なりません。 自分をすてきに見せる また、あなたが、外出する前に鏡の前で、帽子からドレス、靴下、バッグなど、あれこれと悩み、選ぶという行為も、「自分をすてきに見せたい」という目標に向けた課題解決型の創造的行為であり、それも「デザイン」と言えるでしょう。 そのように考えたら、自転車を直すのもデザインですし、お母さんが赤ちゃんの将来を考えながら育てていくこともデザインです。 このように、わたしたちは、「目標(課題)を抱き」「いろいろ考えて」「それを実行し」「目標に到達する(解決する)」というデザインの行為を、無意識のうちに、日々、行っているわけです。すなわち、みなさん一人ひとりが「デザイナー」であると言っても過言ではないのです。(ソーシャルデザイナー) 【みつはし・としお】1973:千葉大学工業意匠学科卒業/1973〜6年間:GKインダストリアルデザイン研究所/1979〜6年間:二番目のデザイン事務所/1985〜6年間:筑波大学(デザイン専攻)・千葉大学(環境科学専攻)にて学生/1991〜6年間:筑波技術短期大学・千葉大学にて教官/1997〜18年間:京都府立大学にて教員。6年単位で「居場所」を替えながら、さまざまな人と出会い、さまざまなデザインを行ってきました。退職後つくばに戻り、「竹園ぷらっと」「ふれあいサロン」「おやじのキッチン」など、地域の「居場所づくり」「まちづくり」のデザインを行っています。

料理はデザインである《デザインについて考える》1

【コラム・三橋俊雄】みなさん、はじめまして! 私がデザインの道を歩み出してから、はや半世紀が過ぎました。幼い頃から“絵を描くこと”と“ものづくり”が好きだった私にとって、高校3年時に知った「工業デザイン」の世界は、思ってもみなかった出会いでした。大学は工業意匠学科に進学し、卒業研究では「障害児のためのデザイン」を行いました。 その後、デザイン事務所に入り「プロダクトデザイン」に従事。36歳でもう一度学生に戻り、「地域づくりとデザイン」について学びました。その後、大学教員となってからは、主に「障害者の福祉用具デザイン」や「過疎地域の活性化デザイン」を学生たちと進めてきました。大学で最後に関わったテーマは、「遊び仕事(マイナー・サブシステンス)」という、人間の「生き方のデザイン」でした。 こうして私が歩んできたデザインの道を振り返りながら、みなさんと「デザインの世界」について楽しく語り合えることができればと思っております。 中華の青椒肉絲を作る 今回は、「料理はデザインである」というお話からいたしましょう。 人は、お腹がすくと「今日は何を作ろうか」と思案します。冷蔵庫をのぞくと、豚肉、ピーマン、タケノコなどの食材があります。そこで、「チンジャオロースー(青椒肉絲)を作ろう」と思い立ちます。もちろん、「青椒肉絲」の具材が台所になければ、必要なものを買いに行くことから始めます。酒、醬油(しょうゆ)、それにオイスターソースなども確認して、料理に取りかかります。 このように、「料理をする」とは、「お腹がすいた」という課題(問題)に対して、食べたい料理をイメージし、食材や調理道具など、台所の限られた条件の中でやりくりしながら料理を行い、最後は食べる(課題を解決する)という一連の行為であり、それは「デザイン」をすることに他なりません。 自分をすてきに見せる また、あなたが、外出する前に鏡の前で、帽子からドレス、靴下、バッグなど、あれこれと悩み、選ぶという行為も、「自分をすてきに見せたい」という目標に向けた課題解決型の創造的行為であり、それも「デザイン」と言えるでしょう。 そのように考えたら、自転車を直すのもデザインですし、お母さんが赤ちゃんの将来を考えながら育てていくこともデザインです。 このように、わたしたちは、「目標(課題)を抱き」「いろいろ考えて」「それを実行し」「目標に到達する(解決する)」というデザインの行為を、無意識のうちに、日々、行っているわけです。すなわち、みなさん一人ひとりが「デザイナー」であると言っても過言ではないのです。(ソーシャルデザイナー) 【みつはし・としお】1973:千葉大学工業意匠学科卒業/1973〜6年間:GKインダストリアルデザイン研究所/1979〜6年間:二番目のデザイン事務所/1985〜6年間:筑波大学(デザイン専攻)・千葉大学(環境科学専攻)にて学生/1991〜6年間:筑波技術短期大学・千葉大学にて教官/1997〜18年間:京都府立大学にて教員。6年単位で「居場所」を替えながら、さまざまな人と出会い、さまざまなデザインを行ってきました。退職後つくばに戻り、「竹園ぷらっと」「ふれあいサロン」「おやじのキッチン」など、地域の「居場所づくり」「まちづくり」のデザインを行っています。

イベントのリアルタイム情報を配信 筑波大発ベンチャー ラーメンフェスタで挑戦

つくば市の研究学園駅前公園で7日から開催される「つくばラーメンフェスタ」で、筑波大学大学院生の熊谷充弘さん(22)が社長を務めるベンチャー企業「Palames(パラメス)」(つくば市吾妻)が、同フェスタの混雑状況や売り切れ情報などを同社の開発するプラットフォーム「dokoiko(どこいこ)」でリアルタイムに配信する。 dokoikoは「メニュー画像を通じて飲食店を探せる」を掲げるウェブサービスだ。ウェブページにアクセスすると、さまざまなメニュー画像が表示され、気になるメニューがあれば店舗情報を確認できる仕組みだ。現在はつくば市の飲食店を中心に情報が集まっている。熊谷さんは「イベントを中心にして、街が活性化していくことを応援したい」と話す。 授業で集まったメンバー 事業のきっかけは授業での出会いにある。大学が行う起業家を育成する講義「筑波クリエイティブ・キャンプ」の授業で集まったメンバーたちが「授業が終わってからもこのメンバーでなにかをやっていきたい」と意気投合し、会社設立に至る。 熊谷さんたちがまず考えたのは、食堂のデジタルトランスフォーメーション(DX)だ。大学の食堂は、食券機で注文し現金で支払い、料理を受け取る形だ。それをスマートフォンから注文し、電子決済を行い、注文した料理が出来上がったら、スマートフォンに通知が届くようなシステムを発案した。しかし学生の力だけでシステムを開発することは技術的、資金的に困難であると考え、事業転換した。 続いて考えたのがdokoikoだった。熊谷さんは「若者はインスタグラムなどのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)で画像から良い飲食店を探し、気になったところがあって初めてグーグルなどで検索をしてネット上を何度も行き来する。この行き来をせずにメニュー画像から直接お店を探せるプラットフォームがあったら便利なのではないかと考えた」と振り返る。 dokoiko内の店舗情報は、その店舗のスタッフがサービス内の画面から入力できる仕組みだ。 サービスの利用料は、店舗側も一般の利用者も基本的に無料だ。店舗側が利用者にメッセージを通知する機能があり、その機能の利用時には店舗側に料金が発生する仕組みになっている。来年までにつくば市の飲食店の30%が登録し、利用者数が1万人を超えることを目標に掲げている。 2020年の夏ごろから開発を始めた。今年4月に株式会社として登記をし、本格的な収益化に向けてスタートを切った。熊谷さんは今年の4月から同大大学院の理工情報生命学術院システム情報工学研究群知能機能システム学位プログラムに進学しているが、dokoikoに専念するために休学中だ。 現在、会社に関わっているメンバーは8人。そのうちの7人が同大の学生や卒業生などだ。熊谷さん自身もITエンジニアで、高校生時代には学園祭のホームページなどを作った経験もあるという。 イベント後も誘客 ラーメンフェスタでは、熊谷さんらから主催者に対し提携の打診を行い、イベントのリアルタイム情報をdokoikoで提供することが決まった。提供情報は、ラーメンの売り切れ情報や、店舗のメニュー情報、混雑の度合いなどだ。 dokoikoでは、イベントに出店するラーメン店のイベント当日のメニューだけでなく、店舗の通常営業時の情報も紹介できる仕組みになっている。イベントで出会ったラーメン店に、イベントが終わっても足を運んでもらうためだ。 「今後の方向性として、イベント時の情報提供や決済を担うためのプラットフォームとしても機能を強化していきたいと思っている。既存のウェブサービスでは、固定店舗の情報を知るための機能は備わっているが、イベントやキッチンカーの出店についての情報を収集できるサイトはない」と熊谷さん。イベントで出店した店舗の通常営業を利用者に紹介することで、イベントが終わった後もその店舗を利用してもらうことを促すことができるのが、dokoikoの強みであるという。現在、会社の資金調達やさらなるサービス拡大、収益化に向けて活動中だ。ラーメンフェスタでの情報提供は、熊谷さんたちにとっても大きな一歩となる。(山口和紀) ◆dokoikoへのアクセスはこちら。Palamesのホームページはこちら。つくばラーメンフェスタの特設ページはこちら。

「大学改革の旗手に」永田学長 筑波大が開学50周年記念式典

マハティール元首相が祝辞 筑波大学(つくば市天王台)が10月1日、開学50周年を迎えるのを記念した式典が30日、同市竹園、つくば国際会議場で催された。永田恭介学長は「世界中の大学との間で頭脳循環を加速させ、知の十字路としてのキャンパスを充実させていきたい。大学改革の旗手として、固定化された社会を再構築する原動力でありたい」などと、次の50年に向けた式辞を述べた。 式典には大学関係者のほか、つくば市長、県内選出の国会議員、協定などを締結している海外の大学学長など計約1200人が参加した。文科省の安江伸夫政務官のほか、マレーシアのマハティール元首相らが祝辞を述べた。 同大は来年10月、日本の大学で初めて日本の学位を授与する海外分校をマレーシアの首都クアラルンプールにあるマラヤ大学に開設する。2019年、安倍晋三首相とマハティール首相(当時)が取り決めをし海外分校を開設することから、今回来日に至ったという。 白川名誉教授が記念講演 続いて2000年にノーベル化学賞を受賞した同大の白川英樹名誉教授が「私の研究とつくばー東京工業大学・ペンシルベニア大学・筑波大学」と題して記念講演した。開学間もない筑波大に着任した当時の思い出について「つくばの街は発展途上で、息抜きをしたり、くつろいだりできる喫茶店や赤ちょうちんの店も無くて、過ごしづらいと感じた人が多かったが、私は酒も飲まなし、喫茶店に入ってコーヒーを飲みくつろぐという経験をしたことがないので、かえってすっきりして、いい街だなあと思った」などユーモアを交えながら振り返った。 国立大学が直面している課題についても触れ「2004年の国立大学法人化以降、政府から交付される国立大学への運営交付金は毎年1割削減され、2022年は87%まで減少している。不足分を補うため企業との共同研究や技術移転などで寄付を仰いで研究費などを調達しなければならないが、いきおい大学で研究は短期的に成果が上がる、役に立つ研究ばかりが目立っている」などと話し、現在の国の政策に苦言を呈した。 学生に向けては「体育専門学群の学生が国内外の競技やオリンピックで輝かしい成果を上げて、メディアが大きく取り上げて、筑波大学の名声を高めているが、それ以外の大部分の学生は、社会に向けて何ができるか」と切り出し、自身の助手時代の体験を振り返って「一コマの講義を託され、教えるということは、裾を広く学ばなければ教えることはできないということを痛感し、教えることは学ぶことだということを学んだ」と述べ「時に教える機会をつくってほしい、そういうことによって学ぶことの意義ができてくる」などと話した。 10月1日は大学で記念イベント 50周年記念イベントは10月1日も大学キャンパスで催され、2050年の生活と社会を考えるフォーラムや元Jリーガーがプレーするサッカーの記念試合など、さまざまなイベントが開催される。 筑波大学は1872(明治5)年に日本初の教員養成機関として創設された師範学校が始まり。1973年10月1日、東京教育大学を移転する形で筑波研究学園都市に開学した。同大は今年、開学50周年イヤーとして各種イベントを展開している。

子どもの学びの現場から《令和楽学ラボ》25

【コラム・川上美智子】子どもたちが秘めている力、伸びていこうとする力は無限である。また、観察力も大人が考えているより鋭く、繊細で感受性も豊かである。そのような子どもたちを100名もお預かりしている保育園の責任は重大である。 子どもたちが自ら伸びる力が発揮できるよう、保育園は多様な遊びや学びの環境を準備し、それに手をそっと差し伸べる人的環境を整えることが理想である。一人ひとりの子どもにとっては、毎日が経験を積む大事な一日である。しかし、保育者の一日は想像以上に過酷で忙しく、養護と保育に追われる毎日である。保育士の人員をもう少し増やせる国家的施策が必須である。 国は2017年に、保育所・保育園を、幼稚園、認定こども園と同等の子育ち環境を有する施設と位置づけて、「保育所保育指針」を全面改正した。その中で、保育内容の基本原則を示し、各園は子どもの最善の利益を考慮し創意工夫を図り、保育所の機能および質の向上に努めなければならないとした。 国も、保育所が、生涯にわたる人間形成にとり、極めて重要な時期を過ごす場であり、現在を最も良く生き、子どもの望ましい未来をつくり出す力の基礎を培う場とした。 指針では、基本的な生活習慣や態度、人に対する愛情と信頼感、人権を大切にする心、自主・自立および協調の態度などの非認知能力の育み、生命・自然・社会の事象に興味や関心をもち、豊かな心情や思考力を育て、話す、聞く、相手の話を理解するなど言葉の豊かさを養い、豊かな感性や表現力、創造性を育むなどの認知能力の育みなど、てんこ盛りの役割を求めている。 すなわち、保育所には、保護者がいない日中の間、保育士などがそれに代わり、愛情豊かな受容の下で、生理的・心理的欲求を満たし、心地よく、楽しい生活ができるよう、また、健やかな発達・発育を促す環境を提供するよう指針は求める。保育者の数が少ない園ではとてもカバーできるものでない。 健やかな育ちのスタートを応援 みらいのもり保育園では、保育理念に「自分らしさと自ら伸びるチカラで未来を生きる自信と意欲を育てます」を掲げ、「子どものやりたいを引き出す」「非認知能力を育てる」「健やかな育ちのスタートを応援」「発達を促す環境構成を大切に」の目標を設定し、保育士の十分な確保や、研修による職員の質の向上に力を入れてきた。 また、ネイティブ講師による英語で遊ぼう、専門家による体操指導、リトミック、保小接続のためのワークによる学び、管理栄養士などによる食育、筑波大学と連携したアート鑑賞などのカリキュラムを導入して、幅広く力が伸ばせるよう努めてきた。また、希望者はヒップホップダンスやピアノの個人レッスンも受講ができるようにしている。 これだけ並べるととても忙しそうに聞こえるが、子どもたちは、どのプログラムにもとても楽しく参加して難なく力を付けていくのである。吸収できる適切な時期に体験や学びを積むことが、いかに大切かが確認できるすてきな場である。(茨城キリスト教大学名誉教授、みらいのもり保育園園長)

子どもの学びの現場から《令和楽学ラボ》25

【コラム・川上美智子】子どもたちが秘めている力、伸びていこうとする力は無限である。また、観察力も大人が考えているより鋭く、繊細で感受性も豊かである。そのような子どもたちを100名もお預かりしている保育園の責任は重大である。 子どもたちが自ら伸びる力が発揮できるよう、保育園は多様な遊びや学びの環境を準備し、それに手をそっと差し伸べる人的環境を整えることが理想である。一人ひとりの子どもにとっては、毎日が経験を積む大事な一日である。しかし、保育者の一日は想像以上に過酷で忙しく、養護と保育に追われる毎日である。保育士の人員をもう少し増やせる国家的施策が必須である。 国は2017年に、保育所・保育園を、幼稚園、認定こども園と同等の子育ち環境を有する施設と位置づけて、「保育所保育指針」を全面改正した。その中で、保育内容の基本原則を示し、各園は子どもの最善の利益を考慮し創意工夫を図り、保育所の機能および質の向上に努めなければならないとした。 国も、保育所が、生涯にわたる人間形成にとり、極めて重要な時期を過ごす場であり、現在を最も良く生き、子どもの望ましい未来をつくり出す力の基礎を培う場とした。 指針では、基本的な生活習慣や態度、人に対する愛情と信頼感、人権を大切にする心、自主・自立および協調の態度などの非認知能力の育み、生命・自然・社会の事象に興味や関心をもち、豊かな心情や思考力を育て、話す、聞く、相手の話を理解するなど言葉の豊かさを養い、豊かな感性や表現力、創造性を育むなどの認知能力の育みなど、てんこ盛りの役割を求めている。 すなわち、保育所には、保護者がいない日中の間、保育士などがそれに代わり、愛情豊かな受容の下で、生理的・心理的欲求を満たし、心地よく、楽しい生活ができるよう、また、健やかな発達・発育を促す環境を提供するよう指針は求める。保育者の数が少ない園ではとてもカバーできるものでない。 健やかな育ちのスタートを応援 みらいのもり保育園では、保育理念に「自分らしさと自ら伸びるチカラで未来を生きる自信と意欲を育てます」を掲げ、「子どものやりたいを引き出す」「非認知能力を育てる」「健やかな育ちのスタートを応援」「発達を促す環境構成を大切に」の目標を設定し、保育士の十分な確保や、研修による職員の質の向上に力を入れてきた。 また、ネイティブ講師による英語で遊ぼう、専門家による体操指導、リトミック、保小接続のためのワークによる学び、管理栄養士などによる食育、筑波大学と連携したアート鑑賞などのカリキュラムを導入して、幅広く力が伸ばせるよう努めてきた。また、希望者はヒップホップダンスやピアノの個人レッスンも受講ができるようにしている。 これだけ並べるととても忙しそうに聞こえるが、子どもたちは、どのプログラムにもとても楽しく参加して難なく力を付けていくのである。吸収できる適切な時期に体験や学びを積むことが、いかに大切かが確認できるすてきな場である。(茨城キリスト教大学名誉教授、みらいのもり保育園園長)

フェミニズム・LGBTQ・障害者を扱うブックカフェ つくばに開店

安心してつながる場所を目指して ブックカフェ「本と喫茶 サッフォー」が今年6月、つくば市天久保にオープンした。性差別からの解放を目指す「フェミニズム」、LGBTQなどの性的マイノリティを含む「ジェンダー」、障害者などをめぐる社会課題を提起する「福祉」など、大型書店では見つけにくいジャンルを中心に、絵本から学術書まで幅広く扱う。店主の山田亜紀子さん(49)は多様な人が安心して繋がれる居場所を目指している。 居場所が奪われている 山田さんは6年前まで、都内の書店で女性向けの書籍を扱うフロアの店員をしていたが、フェミニズムの本はなかなか売れなかった。「良い本はたくさんあるのに残念」と感じ、2017年に出版社「現代書館」(東京都千代田区)に編集者として転職。多くの人が親しめるよう、フェミニズム入門雑誌『シモーヌ』をつくってきた。 転職した頃から、性被害の経験をSNS等に投稿する「#MeToo」運動が世界中に広がった影響で、フェミニズムも注目されるようになった。一方で、運動に反発する動きも強くなり、それまでマイノリティと呼ばれる人たちにとって安心してつながれる場だったSNS上の空間が危険にさらされるのを目の当たりにした。「本を作ることも大事だけど、安心できる居場所をつくりたい」と思い、50歳になる今年、出版社を辞め、生まれ育ったつくばで、ブックカフェを出すことを決意した。 街中に小さい本屋がたくさんある東京とは違い、車社会のつくばは、ショッピングセンター内の大型書店に足を運ぶ人が多いが、そこにもジェンダーやフェミニズムの本は少ない。ジェンダーに関心のある人を含め、多様な人が気軽に来られる場所にしたいと、筑波大学や小中学校、障害者の地域生活を支援する当事者団体「つくば自立生活センターほにゃら」(川島映利奈代表)、障害者の就労を支援する多機能型事業所「千年一日珈琲焙煎所」(大坪茂人代表)などがある天久保地区に出店を決めた。 様々な人が安心してつながれる居場所にしたいとカフェも併設。1人で来店した人が、LGBTQ当事者であることを打ち明けてくれることもある。「おそらく安心して誰かとつながれる場所が少ないのだろうと思う。そのような居場所を守っていきたい」と山田さん。 マイノリティ同士が知り合う場に 昨年、現代書館で編集した『シモーヌVOL.7』では、「不良な子孫の出生の防止」を理由に、多くの障害者が強制的に不妊手術を受けさせられた旧優生保護法をめぐる、女性運動と障害者運動の葛藤を特集した。出産の強制に反対する女性運動と、胎児の障害を理由とした中絶に反対する障害者運動は、時に対立したが、女性だけに育児や介護を押しつける一方、障害者はあってはならないものとする社会を変えるべく、共闘してきた。 「強制的に不妊手術を受けた障害者らが全国各地で国を提訴しているが、そこでは女性団体と障害者団体が連帯して動いている。また、2006年に国連で障害者権利条約ができたときに、世界中から障害者が集まって打ち出したスローガン『我々ぬきに我々のことを決めるな』も、女性やLGBTQの運動に応用できるはず。それぞれに関心のある人たちが交流し、互いの運動を知ってもらえる場所にしたい」 トランスジェンダーたちを知って 現在、店内ではパネル展「トランスジェンダーのリアル」を開催中。トランスジェンダーの実際の姿を知ってもらうために、21年に当事者たちにより制作された無料冊子「トランスジェンダーのリアル」に載る当事者5人の写真とライフストーリーを展示したパネル展だ。同制作委員会によると、冊子は全国の自治体や学校で4万部配布された。パネル展も、自治体や大学など全国各地で開催されている。 「カフェに展示することで、普段関心のない人にも当事者の姿を見てもらえたら」という思いから、サッフォーでは、年内はパネル展示を続ける予定だ。(川端舞) ◆サッフォーはつくば市天久保1-15-11 アイアイビル104。問い合わせは電話029-811-9644。ホームページはこちら

ツェッペリン伯号の模型など展示 地域再発見を イオン土浦で16日から

子どもたちに地域の話題を紹介し、空への夢を持ってほしいと、「飛行船と空飛ぶ人たち」と題した催しが16日からイオンモール土浦(同市上高津)で開かれる。20世紀初頭、土浦に飛来した世界最大級の飛行船、ツェッペリン伯号の模型2機が展示されるほか、筑波大の学生サークルが製作した人力飛行機が展示される予定だ。協力は「土浦ツェッペリン倶楽部」、「つくば鳥人間の会」。18日まで。 会場はモール1階の「花火ひろば」。長さ約3メートルのツェッペリン伯号の模型2機が展示される。実物の約80分の1の大きさで、1機は今年2月に完成した新しい模型だという。時間帯によっては土浦ツェッペリン倶楽部の会員が来場し、展示解説を行う。また、紙芝居「ツェッペリンが舞い降りた日」の実演が1日2回、午後1時からと午後3時から行われる。 人力飛行機は、筑波大学のサークル「つくば鳥人間の会」が作ったもので、人力飛行機の練習用コックピットやプロペラ、2005年から歴代の人力飛行機の機体図面も展示する。子ども向けの体験イベントとして、各日先着100人限定で、ストローを使って不思議な形の紙飛行機を作る工作体験が行われる。 30万人押し寄せ、流行語に 巨大なドイツの飛行船、ツェッペリン伯号が土浦に飛来したのは1929年(昭和4年)8月のこと。世界一周の途中に霞ケ浦海軍航空隊(阿見町)の霞ケ浦飛行場に寄港し、5日間停泊した。乗員、乗客は料亭「霞月楼」(土浦市中央)で歓迎を受けた。当時最先端の乗り物だった236.6メートルの飛行船を一目見ようと30万人の観衆が押し寄せたと伝えられ、「君はツェッペリンを見たか!」が当時の流行語となったと言われている。 イオンモール土浦では「土浦と茨城」の話題を紹介し、地元を再発見してほしいと「知るをたのしく。まなびの」と題したイベントを毎月実施している。「土浦ツェッペリン倶楽部」の堀越雄二さんは「一般の方に土浦にツェッペリン伯号が飛来したという大きな歴史があることを知って誇りに思ってもらいたい。子どもたちも模型と一緒に写真を撮って楽しんでもらい、町おこしの起爆剤になれば」と来場を呼び掛ける。(田中めぐみ) ◆イベント「飛行船と空飛ぶ人たち」はイオンモール土浦1階、花火のひろばで、16日(土)から18日(月・祝)の3日間開催。開催時間は午前11時から午後5時まで(受付は午後4時半まで)。

9/18つくば小中学生将棋大会出場者募集

第7回つくば小中学生将棋大会 将棋初心者の「初級者部門」と、将棋の腕試しをしたい子のための「上級者部門」(アマ5級以上を想定)がある。初心者部門は3回戦まで、その後筑波大学将棋部員との指導対局がある。上級者部門は4回戦まで。その後表彰式と、上級者部門の入賞者5人と筑波大学将棋部員5人のエキシビションがある。 初心者部門は定員に達しており、現在は上級者部門のみ募集している。 日時:9月18日(月・敬老の日)正午受付開始 会場:つくば市春日交流センター1階ホール(つくば市春日2-36-1、無料駐車場有) 開会式 :午後0時20分~ 大会  :午後0時30分~5時 応募資格:小学1年から中学3年 定員  :24人(初心者部門8人、上級者部門16人) 参加費 :1人1000円(当日、受付にて集金) 大会形式:スイス式トーナメント 20分切れ負け 申し込み締切:9月15日(金)午後11時59分。定員に達した場合、期日前に締め切る。

首都圏のマンション住民 筑波山麓で稲刈り体験

筑波山麓グリーンツーリズム推進協議会(つくば市北条)と野村不動産(東京都新宿区)が主催する里山交流イベント「かやぶきの里プロジェクト」が9日、つくば市神郡で開催され、同社が分譲する首都圏のマンション住民が筑波山麓で稲刈りを体験した。 過疎化と高齢化が進む農村と、故郷を持たない都会の子供たちをつなぎ、都市と農村の持続可能な関係を築くことが狙い。2012年から始まり、コロナ禍により3年ぶりの開催となった。 前日の台風13号による大雨で開催が心配されたが、東京、神奈川、千葉、埼玉から家族連れ46人が参加した。同社がマンション住民を対象にはがきで参加者を募った。費用は同社が負担し、マンション住民は無料で体験できる。参加者には後日、2キロの精米が届けられる。5月には50人が参加してすでに田植えを体験している。地元からは、同協議会やNPOつくば環境フォーラムのメンバーら13人が対応にあたった。 会場の「すそみの田んぼ(野村不動産エコ田んぼ)」は、同環境フォーラムが、生き物と共存するコメ作りをしている。当日つくば駅に集合しバスで現地へ。到着後、近くの林に移動し、まず収穫したコメを天日乾燥させる「おだがけ」で使うクヌギの木を伐採し、参加者が枝や葉を取り払った。さらに加工した木材を田んぼまで運び、稲が干せるように組み立てる。準備が出来たら、田んぼで稲刈りを体験。30分ほど作業をし、自然の中で家族ごとに食事をした。午後は、田んぼの生き物探しや虫取り、沢遊び、里山散策などを行った。虫取りは子供たちには稲刈りよりも人気があった。同協議会は、地元の農産物や菓子、ジュース、コーヒーなどを販売し、参加者と交流を図った。 東京都港区から参加した柳川剛教さん(37)は「子供たちに自然環境を体験させたいと申し込んだ。ここは素晴らしい環境に恵まれており、子供たちは稲刈りや昆虫観察を楽しんだ。かつて筑波大学に通っていたのでつくばは懐かしい地。今でも愛着がある。今後このような企画があれば是非また参加したい」と述べた。 同社によると、体験イベントは分譲マンションの住民を招待するという顧客サービスであると共に、企業の社会貢献でもあるという。一方、同協議会は、都会の人に農村の魅力を知ってもらい、将来、定住や就農につながればと期待を持っている。農村に憧れる都市住民は一定数おり、うまくマッチングできればビジネスチャンスになり得ると関係者は話し合った。 同協議会事務局の安藤彗さん(40)は「当初は100人集めようと計画したが、コロナ明けということもって慎重に進めたいという双方の意見で50人ということになった。グリーンツーリズムが目指すものは都市と農村の交流の促進であり、最終的には都会の人が農村部の価値観に気づき、担い手不足に陥っている農業などに目を向けてくれればありがたい」と語る。

なぜ、このコラム・タイトルなのか? 《訪問医は見た!》1

【コラム・平野国美】お初にお目にかかる方も多いかと思います。コラムの担当することになった平野国美(くによし)と申します。「NEWSつくば」の前身である日刊紙「常陽新聞」や無料紙「常陽リビング」でもコラムを書いていましたから、常陽紙を引き継ぐ本ニュースサイトへの執筆は「10年ぶりの復帰」とも言えます。 確か、日刊紙常陽への寄稿が始まったのは、拙著「看取りの医者」(2009年)がテレビドラマ化されたことが契機になったと記憶しています。その後10年、何もしていなかったわけではないのです。医療介護の業界誌やら週刊誌などのメディアで書き続けていました。検索していただくと、ネットで読めるものもあります。 現在は、つくば市内に医院を設け、主に訪問診療を行っています。開業は2002年春ですから、ずいぶん月日も経ちました。生まれは龍ケ崎市、家業は自転車の卸業でした。コラムのタイトルにもつながるのですが、父のトラックの助手席に座り、配達を手伝っていたエリアと、いま診療で回っているエリアは重なっています。 物心が着いたころから50年以上、茨城県南の姿を見てきたことになります。私が高校を卒業する年、当時「軍艦」と呼ばれていた土浦駅が取り壊され、現駅の工事が始まりました。一浪して、筑波大学にたどり着いたのが1985年。つくば市はまだ誕生前で、桜村と呼ばれていたころです。 日本で初めて「村」にオープンした百貨店が筑波西武。つくば科学万博(EXPO85)が開催され、その後の風景の移り変わりを定点観測のように眺めてきました。つまり、《訪問医は見た!》のです。 医療だけでなくサブカルの話も そして東北大震災前の2010年、拙著「看取りの医者」が大竹しのぶさん主演でテレビドラマ化される打ち合わせの席で、三流原作者の平野は「訪問診療をしていると、各家庭には経済的な問題や家族間の問題が必ずあることがわかる。市原悦子さん主演のドラマ『家政婦は見た』の中で、市原さんが家政婦をしている時間はほとんどありません。ドアの隙間からのぞいている時間がほとんどです」とあいさつしました。 ここで《訪問医は見た!》が成立するのです。そこで聞く話は、私が生まれる前の土浦やつくばの風景もありますし、患者さんの生き様や死に様を見せつけられることもあります。「訪問医に魅せられた」のです。 私は休日には旅に出ます。ピカピカの観光地ではなく、昭和・大正の雰囲気が残る地方都市に向かいます。そこで新たな話を聞くことで、自分の生まれ育った街の伝統・習慣に気付かされるのです。 医療の話だけでなく(むしろこちらは少なめにして)、民俗性やサブカルチャーについても書ければと思っています。自由度を求めて、タイトルを《訪問医は見た!》にしました。また、いつ消えるかわかりませんが、ご愛読よろしくお願いします。(現役訪問診療医師) 【ひらの・くによし】土浦一高卒。1992年、筑波大学医学専門学群卒後、地域医療に携わる。2002年、同大博士課程を修了、訪問診療専門クリニック「ホームオン・クリニックつくば」を開業。著書「看取りの医者」(2009年、小学館)は大竹しのぶ主演でドラマ化。新刊は『70歳からの正しいわがまま』(2023年4月、サンマーク出版)。医療関係業界誌などでもコラム執筆。1964年、龍ケ崎市生まれ。つくば市在住。

なぜ、このコラム・タイトルなのか? 《訪問医は見た!》1

著者近影 【コラム・平野国美】お初にお目にかかる方も多いかと思います。コラムの担当することになった平野国美(くによし)と申します。「NEWSつくば」の前身である日刊紙「常陽新聞」や無料紙「常陽リビング」でもコラムを書いていましたから、常陽紙を引き継ぐ本ニュースサイトへの執筆は「10年ぶりの復帰」とも言えます。 確か、日刊紙常陽への寄稿が始まったのは、拙著「看取りの医者」(2009年)がテレビドラマ化されたことが契機になったと記憶しています。その後10年、何もしていなかったわけではないのです。医療介護の業界誌やら週刊誌などのメディアで書き続けていました。検索していただくと、ネットで読めるものもあります。 現在は、つくば市内に医院を設け、主に訪問診療を行っています。開業は2002年春ですから、ずいぶん月日も経ちました。生まれは龍ケ崎市、家業は自転車の卸業でした。コラムのタイトルにもつながるのですが、父のトラックの助手席に座り、配達を手伝っていたエリアと、いま診療で回っているエリアは重なっています。 物心が着いたころから50年以上、茨城県南の姿を見てきたことになります。私が高校を卒業する年、当時「軍艦」と呼ばれていた土浦駅が取り壊され、現駅の工事が始まりました。一浪して、筑波大学にたどり着いたのが1985年。つくば市はまだ誕生前で、桜村と呼ばれていたころです。 日本で初めて「村」にオープンした百貨店が筑波西武。つくば科学万博(EXPO85)が開催され、その後の風景の移り変わりを定点観測のように眺めてきました。つまり、《訪問医は見た!》のです。 医療だけでなくサブカルの話も そして東北大震災前の2010年、拙著「看取りの医者」が大竹しのぶさん主演でテレビドラマ化される打ち合わせの席で、三流原作者の平野は「訪問診療をしていると、各家庭には経済的な問題や家族間の問題が必ずあることがわかる。市原悦子さん主演のドラマ『家政婦は見た』の中で、市原さんが家政婦をしている時間はほとんどありません。ドアの隙間からのぞいている時間がほとんどです」とあいさつしました。 ここで《訪問医は見た!》が成立するのです。そこで聞く話は、私が生まれる前の土浦やつくばの風景もありますし、患者さんの生き様や死に様を見せつけられることもあります。「訪問医に魅せられた」のです。 私は休日には旅に出ます。ピカピカの観光地ではなく、昭和・大正の雰囲気が残る地方都市に向かいます。そこで新たな話を聞くことで、自分の生まれ育った街の伝統・習慣に気付かされるのです。 医療の話だけでなく(むしろこちらは少なめにして)、民俗性やサブカルチャーについても書ければと思っています。自由度を求めて、タイトルを《訪問医は見た!》にしました。また、いつ消えるかわかりませんが、ご愛読よろしくお願いします。(現役訪問診療医師) 【ひらの・くによし】土浦一高卒。1992年、筑波大学医学専門学群卒後、地域医療に携わる。2002年、同大博士課程を修了、訪問診療専門クリニック「ホームオン・クリニックつくば」を開業。著書「看取りの医者」(2009年、小学館)は大竹しのぶ主演でドラマ化。新刊は『70歳からの正しいわがまま』(2023年4月、サンマーク出版)。医療関係業界誌などでもコラム執筆。1964年、龍ケ崎市生まれ。つくば市在住。

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