月曜日, 4月 6, 2026

認知のゆがみ《続・気軽にSOS》106

【コラム・浅井和幸】私の若いころ、不良少年同士で目が合うと、ケンカをすることがよく起こりました。たまたま目が合うだけで、相手がケンカを売ってきたから、ケンカになった。悪いのは相手であり、自分は売られたケンカを買っただけと、お互いが言うのです。 まったくケンカをすることもない、オタクっぽい容姿の生徒が見ただけでも、「ケンカ売ってんのか、おらぁ」となります。これは、血気盛んな若者だからという理由だけでなく、うまく物事が捉えられない、認知のゆがみからくるものかもしれません。 当人は、相手が自分と目が合うことは、ケンカを売ってきていると決めつけて、世界を捉えています。ケンカを売る気はない相手の行動を、ケンカを売ってきていると、本気で感じているのです。 これは、昔の不良少年に限った話ではありません。物事を決めつけ、マイナス思考をして、飛躍した結論を出す。生きづらさを抱える人が日常的にやっていることがあります。 例えば、一つの仕事がうまくいかなかったことに対し、自分は運が悪い。まじめに仕事をしているから、うまくいかない。周りのうまくいっている人たちは、ズルいことをしているから、うまくいく。自分は、ズルができないから、周りからバカにされている。 例えば、自分は相手のためにアドバイスをしてやったのに、相手はその通りに動かない。相手は自分をなめている。自分はバカにされている被害者だ。自分は被害者なのだから、相手とこの社会から賠償金を取らなければいけない。 人間の力はそう大差はない これらは極端ではありますが、デマに流されやすい人、いつも自分が不幸である人、陰謀論に流され自分だけは世界の裏や真実を知っていると考えている人は要注意です。世の中、良いことも悪いこともあるし、少々の能力差はあっても、人間の力はそう大差はないものです。 自分だけ大きな力を持っている、自分だけ大きな不幸を背負っている、周りの人は何の苦しみもなくうまく生きている―というような極端なことはありません。 人は1人でいると、考え方、感じ方が偏るものです。孤独は思考を深めますが、極端に非合理な方向に向かってしまうことがあります。何かうまくいかないな、悪循環になっているなと思ったら、そしてそれがとても苦しいものだったら、カウンセラーや医師に相談してみてください。 「自分はどうかな」と思ったら、ネットで「認知のゆがみ」「認知行動療法」とかで検索してみてください。何かに気づくことがあるかもしれません。人や社会は、良いところも悪いところもあるし、ポジティブな部分もネガティブな部分も持っているものです。 どちらもあるし、その中間もある。その程度問題の中で、自分が向かいたい方向を見つけられる言動を積み重ねましょう。(精神保健福祉士)

学園都市黎明期の原風景【つくば建築散歩】1

筑波大学 大学会館 2022年は、筑波研究学園都市の開発建設に関する閣議了解、正確には国の省庁・機関を茨城県南部へ移転させる閣議了解(1967年)から55年、国家公務員宿舎の入居開始(1972年)から50年にあたる。半世紀にわたる都市の成長、成熟の中で、建設省(現国土交通省)、住宅・都市整備公団(現UR都市再生機構)などの公的機関が多くの建築物を手がけ、様々な建築家や設計事務所を採用したことで、筑波研究学園都市自体が都市開発と建築物の博物誌を醸成する結果となった。 現存するつくばの名建築を紹介する第1弾として7カ所を紹介する。しかしこれは「つくばでうまいラーメン屋はどこでしょうか」と問われるのとあまり変わりなく、あちらを立てたらこちらもか、建築ごとに好き嫌いの意見も分かれそうだ。 今回、つくば市在住の建築家であり、筑波大学名誉教授の鵜沢隆さんに建築物の紹介をお願いした。写真は、同じくつくば市在住の写真家として活躍する斎藤さだむさんが、書籍「つくば建築フォトファイル」に収録した竣工当時の撮影写真を提供していただいた。同書を出版するNPOつくば建築研究会からも、収録写真の使用について快諾をいただけた。 どこから始めたものかで迷った中、初回は槇総合計画事務所、槇文彦さんの設計による筑波大学大学会館とした。連載のスタイルとして、まず鵜沢名誉教授の建築紹介から始める。 その後の大学の外観意匠決定付ける 【鵜沢名誉教授コメント】「筑波大学開学初期の中心的施設で、その外壁の暗い赤茶色の仕上げとキュービックなボリュームが、その後の各大学施設の外観意匠を決定付けた。大学諸施設に落ち着いた統一感は生まれたものの、全体的に沈鬱(ちんうつ)なキャンパスの印象をつくり出した点も否定できない。 キャンパスの中心的施設でありながら、学内のペデストリアンに対してのみ開かれた建築であるため、大学外部からのアクセスは不明瞭で、孤立した大学施設の印象は否めない。 そうしたネガティブな機能を補完するため、大学会館に接続し、大学の新たな玄関口となる空間の設計を大学本部から私が依頼された。こうして2006年に竣工したのが、開学30周年記念「総合交流会館」(あす2日付で紹介)である。 学内外の交流と大学の情報発信の象徴的な拠点として、大学会館の閉鎖的な空間とは対照的に、開放的な「ガラスボックス」を大学会館に貫入させる意匠となった。この施設の実現によって、学外からの車による直截的なアクセスが視覚化された」 キャンパスの顔 【建築散歩】旧東京教育大学を改称し、1973年に設置された筑波大学は、研究学園都市の研究学園地区内に4つのコアをゾーニングして整備された。そのうち中央コアと呼ばれる、文字通りキャンパスのセンターゾーンに、同じ槇文彦さんが設計し1974年に完成した大学会館が所在する。 中央コアは複数の建物が中庭を囲むように配置されており、学内行事に活用される会館のほか、外来者にも対応したレストランや商業店舗、宿泊機能が網羅されている。80年代に都市整備を所管していた住都公団(UR都市再生機構)の案内でキャンパスを訪ねた折、公団担当者は「東京大学との比較は無意味かもしれませんが、筑波大は、広く世界と交流し、物事を提案する人材育成を目指しています」と語っていた。 大学会館は、学生達がコミュニケーションを図り、内外への情報発信を行う空間であり、研究学園地区を貫くペデストリアンデッキからもキャンパスの「顔」としてたたずむ。用途は開放形だが、会館を含む中央コアの建物群は、さながら要塞のようにも見える。 大学会館と共に槇さんは体芸棟を設計した。壁面がガラスのブロックパネルで構成された体芸棟は、筑波山に向かって大学会館を目指す門の役割を果たす。 槇さんは、ヒルサイドテラス(東京都渋谷区、旧山手通り)、幕張メッセ、同新展示場・北ホール(千葉市)や朱鷺メッセ(新潟市)、横浜アイランドタワー(横浜市)、東京体育館等で知られるが、85年のつくば科学博Aブロック外国展示館、民間企業研究所といった、つくばでの建築も手がけている。(鴨志田隆之) 続く ➡つくば建築散歩2 鵜沢隆、筑波大学総合研究棟Dはこちら ➡つくば建築散歩3 坂倉建築研究所、つくば国際会議場はこちら ➡つくば建築散歩4 谷口吉生、つくばカピオはこちら ➡つくば建築散歩5 伊東豊雄、南3駐車場はこちら ➡つくば建築散歩6 妹島和世、ひたち野リフレはこちら ➡つくば建築散歩7 磯崎新、つくばセンタービルはこちら (敬称略)

こどもと一緒に本を読むということ 《ことばのおはなし》44

【コラム・山口絹記】娘と一緒に本を読むようになって、かれこれ7年近くになる。ゼロ歳の頃から読み聞かせを始めて、一体何冊読んだだろうか。我が家には娘の本が200~300冊あるのだが、図書館からも2週間ごとに20冊借りている。本によっては同じものを何百回と読み返すから、単純に何冊という話でもなさそうだ。 こう書くと、育児や教育に熱心という印象を抱かれそうだが、私はお世辞にも良い父親ではない。娘に「公園に行こうよ」と言われても、「えー、ヤダ!」なんて言う親だ。私は出不精だけど本ならいくらでも読んでくれる、ということを、2歳の頃には娘なりに認識し、本の束を抱えて私のところに持ってくるようになった、というだけのおはなしだ。 7年間。ずいぶんと、いろいろなことがあった。 母親がいないと常に泣いていた娘が、いつしか『くつしたくん』や『バスなのね』を読めば泣き止むようになった。上野公園で買ってもらった『よるくま』のぬいぐるみとはいつも一緒だったし、『あいうえお でんしゃ じてん』は一緒に暗記するまで読み込んだ。 『くまたくんシリーズ』や『リサとガスパールシリーズ』は私が好きで一人で読んでしまい、娘に見つかってよく怒られた。私が脳内出血で失語になったときは、娘が『だいすき ぎゅっ ぎゅっ』を代わりに読み聞かせてくれた。 休みの日は、絵本を10冊読むことから始まり、私がトイレの便座に座っているときも本が運び込まれ、本屋に行けばまず1時間は帰れないし、私が自分の本を読んでいるときも「声に出して読んで」と頼まれる。 そして今、斉藤洋さんの『ルドルフとイッパイアッテナシリーズ』や、角野栄子さんの『魔女の宅急便シリーズ』、畠中恵さんの『しゃばけシリーズ』、上橋菜穂子さんの『守り人シリーズ』あたりを一緒に読んでいる。 6歳児と34歳が知識を探り合う もともとは、もうすぐ小学生になる娘の読み聞かせ卒業に向けて、昨年から準備を始めたのがきっかけだった。今まで一緒に本を読むときは、読み聞かせというよりは、読みながらおしゃべりをするような感じだったのだが、本を読むというのは、本質的には孤独な行為だ。 読書という行為の、底の見えない深淵(しんえん)の淵に手をつないで一緒に立ち、共に底をのぞいてみる。つまり、「一人で本を読むというのも、こんな感じで面白い」という体験をさせる、読書独り立ちしていく娘への、私なりのはなむけのようなつもりだったのだ。 だがしかし、絵本を読むそのノリで、小説を読むのが楽しくなってしまったようだ。そして、私も楽しい。完全に予想外である。 6歳児と34歳がお互いの語彙(ごい)や知識を真剣に探り合い、共有しながら物語の中を進むとどのようなことになるのか。というおはなしはまた次回にしよう。(言語研究者) 【1日午後1時30分】写真を差し替えました。

嘉納治五郎の書を初公開 筑波大体育ギャラリーリニューアル

東京2020まで五輪の系譜たどる 筑波大学(つくば市天王台)体育ギャラリーが31日、リニューアルオープンした。明治時代、日本のオリンピックの礎を築いた同大ゆかりの柔道家、嘉納治五郎直筆の書から、昨年の東京五輪で活躍した筑波大出身アスリート49人の写真パネルまで、五輪にまつわる約90点の資料や記念品を展示し、同大にかかわる五輪の系譜をだとっている。 同ギャラリーは新型コロナ感染拡大防止のため約1年半休館していた。今回、内容を一新して再オープンした。 展示されているのは、初公開となる嘉納直筆の書、昨年7月つくばで開催された東京五輪聖火リレーのトーチ、昨年の東京オリンピック・パラリンピックで活躍した筑波大出身アスリート49人の写真など。 嘉納は筑波大の前身の東京高等師範学校校長で、東洋初の国際オリンピック委員会委員を務め、日本のオリンピック初参加に尽力した。展示を企画した同大体育系の大林太朗助教によると、直筆の書は嘉納が70代の時にしたためた。「天下で大きな成功をなす者は皆、努力をしている。名をなす者は小さな積み重ねを大事にしている」という意味の書で、大林助教は「筑波大アスリートにもつながる人生訓」だと説明する。 聖火リレーのトーチは、昨年つくばの最終ランナーを務めた元体操選手の加藤澤男名誉教授(75)が実際に持って走ったトーチだ。加藤名誉教授は東京教育大出身(現筑波大)で、五輪3大会に出場し8個の金メダルを含む計12個のメダルをとった。31日のリニューアル記念式典に参加した加藤さんは「嘉納先生の活躍から今日までの流れを大事に、これから変容していく中でも、精神を生かしていけるよう願っている」と後輩の筑波大アスリートに言葉を贈る。 写真パネルは縦1.8メートル、横3.7メートルで、昨年の東京オリンピック・パラリンピックで競技した選手たちの躍動する写真が1枚のパネルに貼られている。ギャラリー手前の廊下に展示されており、一般の見学者が筑波大アスリートに向けて、ボードの余白に直接メッセージを書くことができる。 記念式典であいさつに立った永田恭介学長は「力を尽くした人たちがいたことをレガシーとして次の世代に伝え、スポーツがもつ力やスポーツが何をなし得るかを皆で考えていければ」と話した。(鈴木宏子) ◆筑波大学体育ギャラリーは体芸棟(5C棟)2階にあり、平日のみ開館。だれでも無料で見学できる。

Leo Esakiメインホールに つくば国際会議場大ホール ネーミングライツで命名

つくば市竹園のつくば国際会議場大ホールが4月1日から「Leo Esaki(レオ・エサキ)メインホール」、同市大角豆(ささぎ)の大角豆歩道橋が「桂不動産 大角豆歩道橋」になるー県が今年、ネーミングライツ(施設命名権)を公募し、つくばの2施設の新たな通称名が決まった。 県は2019年度に初めて2施設でネーミングライツを導入した。3年後の今年は歩道橋などのインフラ系施設も対象にするなど、募集件数を164施設と大幅に増やして募集をかけ、このほど契約延長2施設を含め18施設を選出した。146施設は応募がなかった。 つくば国際会議場大ホールは関彰商事が年間550万円で3年間の命名権を獲得し、大角豆歩道橋は桂不動産が42万円で5年間の命名権を得た。 県全体ではこれまでの2施設(年額計1720万円)から18施設(4916万円)となり、県の命名権料収入は2.9倍に増えた。 大井川知事は24日の定例記者会見で「県の資産もただ単に何もしなければ、維持費がかかるだけというところに、民間とのウィンウィンの形で、少しでも収益を上げるということは、県の財政、県民の負担に対して一つの工夫になる」と話し、今後も積極的に進めたい意向を示した。 つくば国際会議場大ホールを「Leo Esaki メインホール」と名付けた理由について関彰商事は「つくば国際会議場には、関彰商事が賞の創設以来、単独協賛を行っている『江崎玲於奈賞』の主催者でもある茨城県科学技術振興財団やつくばサイエンス・アカデミーが入居していることから、今後も科学技術の発展に貢献したいと願い応募した」とした。 さらに「国際的な催事も開催される施設なので、企業名を付けるのではなく、茨城県やつくば市が持つ魅力のひとつである世界に誇る科学技術力を広く発信するようなネーミングが相応しいと考えた。そこで、ノーベル物理学賞を受賞し、長年にわたり茨城県科学技術振興財団の理事長として尽力されている江崎玲於奈先生の功績をたたえ、感謝の意を込めて江崎先生の名前を付けることが最適であるとの考えに至り、本人にも相談の上、命名した」としている。(花島実枝子) ▶ネーミングライツを新規に導入した16施設 施設名命名権を獲得した企業ネーミング(通称名)命名権料(万円/年)契約期間(年)取手競輪場ケイドリームス楽天ケイドリームスバンク取手8003つくば国際会議場 大ホール関彰商事Leo Esaki メインホール5503笠松運動公園 陸上競技場水戸信用金庫水戸信用金庫スタジアム4904大洗マリンタワー・港中央公園ひたちなかエネルギーロジテックHELTEC大洗マリンタワー・HELTEC港中央公園3402総合福祉会館関彰商事セキショウ・ウェルビーイング福祉会館3303いばらき量子ビーム研究センター中山商事AYA'S LABORATORY量子ビーム研究センター2003さしま少年自然の家坂東太郎ばんどう太郎 さしま少年自然の家1802茨城空港駐車場トヨタレンタリース茨城トヨタレンタリース 茨城空港駐車場1203里美野外活動センター学校法人リリー文化学園リリーアカデミー キャンプセンター 502笠原歩道橋桂不動産桂不動産 笠原歩道橋 425白山西小学校前歩道橋桂不動産桂不動産 白山西小学校前歩道橋 425大角豆歩道橋桂不動産桂不動産 大角豆歩道橋 425境町山神町歩道橋ほしいもの百貨干し芋カフェHOSHIIMONO100 Café 境町山神町歩道橋 365文京二丁目歩道橋桂不動産桂不動産 文京二丁目歩道橋 325阿見町役場歩道橋桂不動産桂不動産 阿見町役場歩道橋 225県庁東公園柴建築設計事務所県庁東公園 SHIBA 205 ▶ネーミングライツを更新した2施設 県民文化センター廣澤精機製作所  ザ・ヒロサワ・シティ会館9003笠松運動公園 屋内水泳プール兼アイススケート場山新山新スイミングアリーナ7203

柚のランドセル 《短いおはなし》1

【ノベル・伊東葎花】 わたしの名前は柚(ゆず)。4月から小学生になるの。 ママにもらったランドセルはオレンジ色。 太陽の色だねってママが言った。 わたしはママとふたり暮らし。 ママは隣町の研究所で働いているから、わたしはいつもお留守番。 だけど寂しくないわ。だってもうすぐ小学生だもの。 今日、ママは会社をお休みした。 「柚、いっしょに小学校へ行くわよ」 ママはそう言って、よそ行きのお洋服を着せてくれた。 小学校へ行くのは初めてだったから、すごくうれしかった。 ママはわたしの手をぎゅっと握った。顔が少し怖い。 小学校は、とても大きかった。広い庭を囲むように、桜の木が植えられている。 まだ3分咲き。入学式にはきっと満開ね。 ママは、口をぎゅっと結んで職員室に入った。 「教頭先生、入学を承認して下さい」 「またあなたですか」 窓辺に座っていた教頭先生が、あきれた顔をした。 「今日は娘を連れてきましたの。ほら、見てください。どこから見ても立派な6歳児でしょ。他の子と、何ら変わりありません。お願いします。柚を入学させてください」 教頭先生は、困ったようにため息をついた。 「確かにこの子はよくできています。人間そっくりだ」 「人間ですよ。年齢に合わせて成長させるし、感情だってあるんです」 「どんなに人間そっくりでも、ロボットの入学は認められません」 「柚は人間です」 「参ったなあ」と、教頭先生は頭をかいた。 「ちょっと調べさせていただきましたが、あなた、数年前に娘さんを亡くされてますね。小学校の入学前だったとか。それで娘さんそっくりのロボットを造った。お気の毒だと思います。お気持ちはわかりますよ。だけどね、その子は人間じゃない。どんなに高性能でも機械だ。残念ですが、何度来ても答えは同じです」 ママは唇をかみしめて、今にも泣きそうな顔をした。 帰り道、ママは手をつないでくれなかった。 ただ悲しそうに、桜の花を見上げていた。 家に帰っても、ぼんやり空を見ていた。 顔をのぞき込むと、ママは泣いていた。 わたしが小学校へ行けないから。わたしがロボットだから。 悲しい気持ちは理解できるけど、わたしの目から涙は出ない。 いっしょに泣いてあげられなくてごめんね。 西の窓から夕陽が射し込んで、ランドセルを照らした。 「ママ見て。夕焼けとランドセル、同じ色だね」 ママは振り向いて、少し笑った。 そしてわたしをぎゅっと抱きしめて「ごめんね、柚」と何度も言った。 きっとわたしじゃなくて、天国の柚に言ったんだ。 柚が行くはずだった小学校。柚のランドセル。 夕焼け空が、夜の色に変わっていく。 ねえママ、明日もわたし、ママの子どもでいいんだよね。(作家) 【いとう・りつか】小説ブログを始めて12年。童話、児童文学、エンタメ、SFなど、ジャンルを問わずに書いている。文学賞にも挑戦中するもやや苦戦気味。第19回グリム童話賞大賞、第32回新見南吉童話賞特別賞、第33回日本動物児童文学優秀を受賞。妄想好き。猫好き。趣味は読書と太極拳。東京生まれ、美浦村在住。伊東葎花はペンネーム。

ビオトープコンクール受賞 つくばこどもの森保育園を大岡環境副大臣が視察

つくばこどもの森保育園(古谷野好栄園長、つくば市沼崎)を30日、大岡敏孝環境副大臣が視察し、記念植樹をした。同園の園庭は1月23日に開かれた全国学校・園庭ビオトープコンクール2021(日本生態系協会主催)で、上位5賞の一つである環境大臣賞を受賞した。幼児期から自然や生き物と日常的に触れ合える環境づくりが評価された。 大岡副大臣は、さまざまな木や草花が育つ園庭を視察。園児たちが育てている麦畑や野菜畑、カブトムシ牧場にもなっている堆肥ヤードなどを巡った後、子どもたちと一緒にヤマグワの苗木を記念植樹した。 その上で「ビオトープを中心に自然と共生した保育園で、子どもたちが伸び伸びと健やかに育っていることがよく分かる。好奇心を刺激するものがたくさんある環境で、自然科学への興味の持ち方など、子どもたちの将来を広げる大きなモデルの一つになると思う。今後少子化などが進む中、幼児をどのような環境で育てたらいいか、全ての大人に一緒に考えてもらいたい」と話した。 同園は平地林の自然公園、豊里ゆかりの森に接した場所にあり、2012年の開園当初から、自然環境の中でいろいろなものに触れて遊び、学べる「ビオトープがある保育園」を特色としてきた。園庭には樹林、田んぼ、畑などがある。 同園を監修したビオトープの専門家、三森典彰さんは「平地林の環境を残すと共に、その縁に水辺環境として田んぼを作ることで、地域の生き物を呼び込み、人間の暮らしと生物の暮らしが共存できる場になった。いろんな色の木々や草花、日差しの暖かさや木陰の涼しさ、水の音や落ち葉の音など、五感を生かした多様な体験をもたらしてくれる」と、そのコンセプトを話す。 農家や造園家、樹木医などさまざまな人々が支援に携わり、また職員もビオトープ管理士の資格を取得するなど、内外のサポートにより高いレベルを維持し、活動の幅や奥行きをますます広げていることも評価されたという。 古谷野園長は「忙しい中で管理は大変だが、子どもたちの目の輝きや、自然を使った遊びにのめり込む姿を見て変わってきた。オオバコ相撲や、麦わらストローでのシャボン玉づくりなど、職員自身も生き物に興味を持ち、一緒に取り組んだことでステップが上がり、環境を通していろんなものを教えていけた」と振り返る一方、今回の受賞と視察について「子どもたちの自然な姿を見てもらえ、職員も気持ちが高まった。これをきっかけにさらに豊かな環境を育み、地域を巻き込んだ活動を発展させていきたい」と展望した。(池田充雄)

「千本桜」通し新たなつながりを つくば市研究学園で第1回さくらまつり 

4月2日 4つの市民団体が連携 つくばエクスプレス(TX)研究学園駅周辺には、もともとの集落住民や地権者らが2007年から植樹してきた「千本桜」がある。千本桜を通して住民同士の新たなつながりをつくりたいと、4つの市民団体が実行委員会をつくり、4月2日、同市学園南の研究学園駅前公園などで「第1回研究学園さくらまつり」を開催する。公園内の8種類の桜を探すゲームなど手作りのイベントが楽しめるまつりだ。 千本桜は、同駅周辺を彩豊かで潤いのある街にしようと、地権者団体「葛城・遠東地区まちづくり協議会」(現在はNPO法人研究学園・葛城、いずれも飯島昇代表)が2007年、「千本桜まちづくり事業」として調整池の周囲に植樹したのが始まり。以来2019年まで、駅周辺の調整池や公園などにソメイヨシノ、ヤマザクラ、河津桜、しだれ桜などの苗を800本以上植樹してきた。TX沿線開発前からある桜と併せると1000本を超えるという。 「さくらマップ」きっかけ 今年1月、NPO研究学園・葛城が、植樹した桜と開発前からある桜の見どころを写真や地図で紹介する「さくらマップ」を作成し、周辺地区の家庭に配布した。 この「さくらマップ」をきっかけに、地域住民がつながり、いずれは地区を代表するようなイベントをつくりたいと、同地区を中心に活動する4つの市民団体が連携して実行委員会をつくり、さくらまつりを企画した。 4団体は、地域で住民の交流を図る活動をする「研究学園グリーンネックレス タウンの会」(島田由美子代表)、研究学園駅前公園の雑木林で毎月子どもの遊び場を開設している「つくばdeプレイパークひろめ隊」(吉田絵里子代表)、研究学園でウォーキングを楽しむ「つながる@研究学園」(北坂あやの代表)、新しい投てきスポーツ、モルックを楽しむ「モルックステーションつくば」(松崎良範代表)だ。 実行委員の中心となっているグリーンネックレスの島田由美子さん(60)は毎月、駅周辺でごみ拾い活動を行っている。「街の美化だけでなく、人と人のつながりをつくっていきたいとの思いで活動している。今回のさくらまつりを機会に、もともとの住人と新しい住人、高齢の方と子どもたちといった縦のつながりと、市民グループ同士の横のつながりの両方をつくっていきたい」と話す。 同じグリーンネックレスの椎名敏江さん(77)は「ここで育った子どもたちが心のふるさとと思えるようなまつりにしていきたい」と意気込みを語った。プレイパークの吉田絵里子さん(47)は「さくらまつりを主催するのは一市民。来る人も、ただ参加するだけでなく、一緒になって楽しんでつくっていけるまつりにしたい」と話す。(門脇七緒) ◆「第1回研究学園さくらまつり」は4月2日(土)午前10時~午後2時まで、会場は研究学園駅前公園など。開催イベントは以下の通り。▷セグウェイとゴミひろい=午前10時、学園の杜公園南側に集合、研究学園駅前公園までセグウェイとの歩行を楽しみながら歩道のごみ拾い▷青空図書館、輪投げ、プレイパーク=午前11時から午後2時まで、研究学園駅前公園の遊具付近や雑木林にコーナーを用意▷セグウェイ試乗会=午前11時30分から午後1時、同公園で▷さがせ!さくらエイト=同公園内に植樹されたソメイヨシノ、八重桜など8種類の桜の木を探す▷さくらまつりシールラリー=4つのイベント参加者に先着で花の種、植物の種で花の形のマグネットを手作りできるキットなどの景品を贈呈 ◆当日の問い合わせは、グリーンネックレス タウンの会のFacebookページ(https://www.facebook.com/kenkyugakuen.town)、または研究学園さくらまつり実行委員会の島田由美子さん(電話090-1738-3699)へ。

ウクライナ危機と日本の戦略 《ひょうたんの眼》46

【コラム・高橋恵一】プーチン大統領のロシア軍が、ウクライナへの理不尽な侵攻をしてから1カ月が過ぎてしまった。ヨーロッパ各国をはじめ、ほぼ全世界が非難する中で、プーチン大統領は、核兵器使用や第3次世界大戦も厭(いと)わないという、無茶(むちゃ)ぶりだ。ウクライナの市民と動員されたロシア側兵士の生命がどれだけ失われるのだろうか? 日本は、この事態にどう対処すればよいのだろうか。当面は、経済的負担、支援をしながら、欧米に歩調を合わせて行くしかないのだろう。今後は、安易に、防衛力の一層の強化が叫ばれるのだろうか? しかし、今回のプーチン大統領の侵略行為が、先の戦争における日本の行動によく似ていることを考えれば、日本の軍事力強化策は、世界や日本国民が受け入れるとは思えない。また、兵器は限りなく進化(?)高度化(?)するので、絶対安全な軍備などはありえないことも明らかになった。中国で「矛盾」という言葉ができたのは何千年前なのだろう? 絶望的な2度にわたる世界大戦の反省から、戦後の世界秩序を構築したのは、国連であり、戦勝国の武力を抑止力とした。しかし、武力の裏付けは経済力競争になり、結局、人類に平和をもたらしていない。ウクライナ以外にも、危険な地域はたくさんある。 一方、先の大戦の反省から生じた考え方、行動規範に、ユネスコ憲章があり、日本国憲法がある。日本国憲法は、平和の実現のために武力を使わないという日本の姿勢を、「国際社会における名誉ある地位」とし、ユネスコ憲章では、国家間の平和を維持するためには「政府間の政治的、経済的取り決めではなく、国民間の相互理解・尊重と連帯が必要」としている。 現在の、国際紛争の要因として、経済力の成長競争があり、所得格差の拡大がある。裏返して、軍拡競争にもなっているが、人間生活の真の豊かさ、安心を考えたとき、基準を考え直して、地球規模で持続可能な社会構築に目標を置くよう提案されている。 自らの国民力・多面的な自給力 日本がとるべき戦略は、自らの国民力・多面的な自給力をつけることではないか。「日本は小資源国なので」という認識が一般的だが、温帯地帯の自然環境にあり、広大な海洋に囲まれていて、知的技術的水準の高い日本の地政学的な可能性は膨大である。耕作放棄地の再生や養殖の拡大による水産業などによる、食糧自給率の確保。太陽光や地熱、風力などと共に、森林資源やバイオ燃料の発電。昔、水車のあった渓流や小河川ならダムを作らなくとも小水力発電ができる。 挙げればきりがないが、自らの国土や海洋が有する資源を活用して、自給率を高める取り組みは、太平洋諸国やアジアの諸国でも一緒に協力して推進できる取り組みだ。日本の、そのような行動こそ、国民同士の理解、相互尊重が向上し、アジア太平洋地域、ひいては世界の平和実現に実質的な役割を担うことができると思う。(地図好きの土浦人)

陸上競技場整備は「概ね妥当」 大規模事業評価委が答申 つくば市

つくば市が上郷高校跡地(同市上郷)に建設を計画している陸上競技場の必要性や効果などを検証する第8回大規模事業評価委員会(委員長・横張真東京大学大学院工学系教授)が29日、同市役所で開かれ、整備事業は「概ね妥当」とする答申をまとめ、同日、五十嵐立青市長に提出した。 一方、事業の必要性については、市単独で整備するという手法に対し「大規模な施設を整備する際は、原則として市単独での実施は避け、他自治体や企業、国公立の研究・教育機関と共同で整備する可能性など、さまざまな方法を検討し、相互比較し、プロセスも開示しながら、最も妥当な方法を選択すべき」だなどとして、今後も、他自治体や機関との共同利用などの可能性を検討すべきだなどとする注文が付いた。 評価委は昨年9月から計8回の委員会を開き、事業の必要性、妥当性、優先性、有効性、経済性・効率性、地域への対応の6項目について調査した。 結果は、事業の妥当性について、規模は想定される需要を上回る過度な計画にはなってない、候補地選定は比較が行われたなどから、概ね妥当だとした。 事業の優先性は、財政支出を平準化するなど市の財政に影響を与えるものではないことが検討されている、サッカー場は3カ所と数が少なく稼働率が高いなどから、妥当だとした。 有効性についても、市スポーツ推進計画の「成人の週1回以上のスポーツ実施率を65%以上にする」などの数値目標達成に貢献するなどとして、妥当だとした。 経済性・効率性については、費用がどれだけ膨らむ可能性があるか把握することが重要だとして、評価委側が、すでに公表している概算事業費約22億円以外についても費用を明らかにするよう求めた。市側は、既存校舎解体とセミナーハウス新設費が最大約5億円、道路約300メートル区間を4メートル拡幅する道路拡幅費が約7200万円、排水取り出し工事費が50万~450万円、受水槽設置工事費が1600万~3200万円などの金額を新たに示し、整備事業費は約6億円増えて総額28億円になることが新たに明らかになった。一方、維持管理費は年間8000万円程度、将来の大規模修繕費用は5年目2800万円、10年目6200万円、15年目1億5000万円が見込まれることも分かった。これを受けて評価委は、経済性と効率性について、概ね妥当だとした。 地域への対応についても、地元から「騒音、道路、進入路などの含めて考えてほしい」「騒音や駐車場問題への対応を検討してほしい」などの意見があり、交通環境を中心に周辺地域に与えるインパクトは大きいとしながら、渋滞が懸念される施設出入り口は既存道路に右折左折レーンを設けたり、駐車場の位置を工夫して渋滞を緩和する方針があるなどとして、概ね妥当だと結論付けた。 答申を受けて市スポーツ施設整備室は「答申を踏まえて、なるべく市の早く方針を決定したい」としている。 大規模事業評価は当初、計4回程度開催し、11月にも答申をまとめる予定だった。しかし委員から、他自治体や機関などと共同したり連携するなど代替の整備手法を検討したか、市民にどのようなメリットがあるのか、上郷地区だけでなく市全体の需要を見込んでいるか、陸上競技場本体だけでなく費用がどれだけ膨らむ可能性があるのかなど、たびたび追加資料の提出を求められ、委員の任期が終わる3月末にようやく答申がまとめられた。 市が昨年4月策定した陸上競技場整備基本構想によると、計画概要は、400メートルトラックを8レーン、インフィールドは天然芝、観客席はメーンスタンド1500席、芝生スタンド2500席とし、日本陸上競技連盟の施設基準で第3種公認相当規模の整備をする。付帯施設として、サブトラックのほか、ジョギングコースとして利用できる園路広場、セミナーハウスを整備するーなど。基本構想時点の利用開始は2026年度の予定。(鈴木宏子)

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