【ノベル・伊東葎花】
2100年、人間は2種類に分けられる。AIを使う人間と、AIに使われる人間。
約7割の人間は、AIに使われている。
AIロボットの指示で働き、失敗すると容赦なく切られる。
切られた人間はスラム街へ流れ、一生這い上がれない。
私はもちろんAIを使う側の人間。
「おはよう、アンジー、西区の売り上げを出してちょうだい」
「かしこまりました。ケイト様」
「Bブロックの業績が悪いわ。原因は何だと思う。アンジー」
「ロボット30台に対し、人間200名は多いかと。人件費が無駄です」
「そうね、50名ほど切りましょう。ピックアップお願い」
「承知しました」
AIロボットは、人間みたいに迷わない。的確に、能力が低い人間を切り捨てる。
「ケイト様、今日はマリアさんのバースデーです」
「あら、そうだったわ。ぬいぐるみでも贈っておいて」
「ケイト様、マリアさんは12歳です。アクセサリーがよろしいかと」
「そう。じゃあアンジー、お願いね」
結婚はしていないけど娘はいる。遺伝子を残すために作った娘。それがマリア。
研究施設に預けて、優秀な子育てロボットに全てを任せている。
面会は年に一度。成長を確認しに行くだけ。
今日はマリアとの面会日。高級なお菓子を持って、研究施設に行った。
ここには人間の大人はいない。完璧なシステムを組み込んだAIロボットが、食事から学習、運動能力から就寝まで管理する。
「いらっしゃいませ、ケイト様」
「こんにちは。マリアはどこかしら」
「マリアさんはC棟です」
「C棟? そんな施設あったかしら」
オートカートに乗って着いたC棟は、まるでスラム街のようだ。
すさんだ目の子どもたちが、私からお菓子を奪ってむさぼるように食べた。
ひどい場所。こんなところにマリアがいるはずない。
「ママ」
振り向くと、マリアがいた。擦り切れたジーンズを履いている。
「マリア、いったいどうしたの? ママが送った服は?」
「高価な服は、落ちこぼれ棟には回ってこない」
「落ちこぼれ? マリアが?」
「そう。あたし勉強できなくて、AI先生に切られたの」
「何ですって?」
「でもね、こっちの方がいい。自由だもん」
何てこと。信じられない。私はすぐに、施設長に苦情を言った。
「多額の寄付をしているのに、どういうことなの?」
「マリアさんは、われわれの理想とするレベルには程遠いです。よって、切り捨てました」
「切り捨てた?」
「私たちはそのようにプログラムされておりますので」
「戻しなさい。すぐにマリアを戻しなさい」
AI警備隊によって、私は外に出された。クレーマー対応ボタンが押されたのだ。
能力が低ければ切り捨てる。
すべて私がAIにやらせていたこと。それが正しいと信じていたこと。
混乱しながら、フェンスを伝って歩いた。
「ママ、バイバイ」
C棟の前で、マリアが無邪気な顔で手を振った。
娘の笑顔を初めて見た。そして私は、初めて泣いた。
(作家)






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