「間近で大迫力」のサロン音楽会 29日につくばリサイタル新シリーズ
筑波大学の学生中心に企画・運営されているクラシックコンサートのつくばリサイタルシリーズが、新たに「サロンシリーズ」を立ち上げる。シリーズ実行委員会主催による第1回は29日、つくばアルスホール(つくば市吾妻)で「塙美里サクソフォンが彩るクラッシックの世界」を開催する。
過去のシリーズとの違いは会場の大きさだ。これまで全11回のコンサートはカピオホール(つくば市竹園)などの大きな会場を中心に行われてきたが、今回は100人規模のアルスホールでの開催となる。「日常では味わえないような特別な空間を創ることを目指した」という。
実行委員会の須澤紗音さん(筑波大学比較文化学類3年)は、「カピオホールが現在改修工事中で、別会場を探していた。会場が変わるのだから雰囲気も大きく変えたいと思い、新しいシリーズとして立ち上げた」と経緯を話す。
「サロン」と命名したのは、貴族が友人を集めて小さな演奏会を開くイメージからの着想。「これまでから考えるとかなりの小さめの会場で小人数での開催になる。日常とはまったく違う空間を創出したいと考えてこの名前に決まった。間近で大迫力の演奏を生で見ることができる機会はそう多くはない」という。
出演するサックス奏者、塙美里さんは茨城県の出身。「今回の企画は委員会でも長年温めてきたもので、実現の運びになってとても楽しみにしている」と須澤さん。サックスとピアノの編成で19世紀以前のクラシックが演じられるのは珍しいそう。
実行委員会は立ち上げ以降、コロナ渦での不自由な活動を余儀なくされてきたが、明るい兆しもある。これまでの2年間は、筑波大学が開催する新入生の歓迎イベントが中止になっていたが、今年は開催された。実行委員会も新入生のメンバーを7人集めることができた。これまでの2年間で最も多い人数で、これまでに居なかった学類の学生や、大学院生の加入もあったという。(山口和紀)
◆塙美里サクソフォンが彩るクラッシックの世界(第1回つくばリサイタルシリーズ サロンシリーズ) 5月29日(日)午後2時開演。プログラムは、ビバルディ「フルート協奏曲」(作品10-2“夜”)、バッハ「バイオリン協奏曲」(二短調第1楽章)ほか。チケット(税込み)は一般1500円、学生500円。チケットの予約はこちら。つくばリサイタルシリーズ公式ブログはこちら。
国連・安保理 改革が必要に 《雑記録》35
【コラム・瀧田薫】国連安全保障理事会(安保理)・常任理事国であるロシアがウクライナに侵攻した。明らかに国連憲章違反である。しかし、安保理はこれをとがめることができなかった。安保理の機能不全、この問題は今に始まったことではない。過去、何度も改革の必要が指摘されてきたが、常任理事国側の抵抗にあって実現していない。
イラク戦争時、米国が主導して安保理決議に基づく多国籍軍を編成した事例があったが、今回の対象国はイラクではなく、安保理常任理事国のロシアである。そこで、安保理決議を経ずに米軍主導の多国籍軍を編成する策も検討されたが、バイデン米大統領が第3次世界大戦の可能性を否定できないとして回避した経緯がある。
ところで、4月26日、国連総会に安保理改革案が提案された。その内容は、「安保理で常任理事国が拒否権を行使した場合、総会において拒否の理由について説明する責任を負わせる」というものだ。リヒテンシュタインが主導して起草し、米英仏のほか日本やドイツ、ウクライナなど、国連加盟国193カ国中80カ国以上が共同提案国に名を連ねた。
一方、ロシアや中国はこれに加わらなかった。総会での採択では、提案に対する投票を求める声は上がらず、総会の総意として採択され成案となった。決議の具体的内容は、常任理事国が拒否権を行使した場合、国連総会議長に対し、総会を招集し、拒否権を行使した国に説明を求めること、同時に安保理に状況報告文を提出するよう呼びかけることを義務付けるというものであった。
残念なことに、総会に出席して理由を説明するか否かは、拒否権を発動した国の判断に委ねられるという不徹底なものであり、実効のあるものとは到底思えない。
常任理事国が他国に武力侵攻するとは!
これに対して、今後の安保理改革の手掛かりになりそうな動きもあった。非常任理事国のノルウェーは「安保理におけるロシア非難決議に際して、ロシアは棄権すべきだった」と発言し、その論拠が国連憲章第27条にあることを示した。実は、第27条には「紛争当事国は投票を棄権しなければならない」との規定がある。これを素直に読めば、今回のロシアに該当するはずであった。ただし、これまで、この第27条が発動された事例はない。
もともと、安保理において、常任理事国が武力をもって他国に侵攻すること自体が想定されていなかった。今回のロシアによる武力侵攻はその例外が実際に発生したということであり、その意味で、安保理の機能不全、ひいては国連の制度疲労が極限に達したということになる。
これまで、日本政府はドイツ政府と連携して、「常任理事国の枠の拡大」を主張し続けてきたが実現していない。今回、ノルウェーの提案を積極的に支持するとともに、「準常任理事国」を創設する選択肢を議論の俎上(そじょう)に乗せるなど、積極的に動くべきであろう。国連憲章に通底する憲法を保持する国として、日本ほど国連を立て直す役割にふさわしい国はない。(茨城キリスト教大学名誉教授)
支援を呼びかけ 開館30年、苦境の石岡・ギター文化館
クラシックギターの殿堂、ギター文化館(石岡市柴間、池田由利子館長)が開館30周年を前に、苦境に立たされている。コロナ禍から運営資金の手当てに窮し、5月いっぱいを期限にクラウドファウンディング(CF)による寄付を受け付けているが、存続にはより長期的な財源の獲得が必要として地域からの支援を呼びかけている。
ギター文化館は1992年11月に開館。歴史的スペインギターの名器コレクション18本を有し、クラシックギターのため特別に設計されたホールを持つ。土浦・つくばからは山向こうの丘陵地にぽつんと立つロケーションながら、コンサートやギター教室などを開催すると、県内や近県から観客や生徒が集まる。根強いファンに支えられて30周年を迎えようとしていた。
しかし、コロナ禍により2020年から演奏会は相次いで中止を余儀なくされ、貸しホールの展開もできなくなった。21年末になって運営母体の東京労音(事務局・東京)から「30周年を迎える11月以降は運営費の補助が難しい」と通告された。労音じたいが組織の高齢化から、運営の厳しさを抱えている。
31日まで受け付け クラウドファウンディング
文化館によれば、光熱費など年間の維持費は約700万円。存続に向け、県や石岡市に、指定管理者制度の導入などによるテコ入れを求めたが、色よい回答は得られなかったという。
このため、4月から700万円を目標にCFを開始した。プロジェクトは集まった資金だけで成立するオールイン方式で、4月中に300万円弱を集めた。池田由利子館長によれば、「CFはあくまで運営資金の獲得が目標。少なくとも1年間延命ができる。その実績をもって地域の熱意を示し、労音側にアピールしたい」構えだ。
存続に向けては、より抜本的な立て直し策が求められる。クラシック音楽に理解のある篤志家を探したり、ネーミングライツの募集を検討したりしている。ここで問題なのは、労音じたい法人格を持たない会員制の任意組織(音楽鑑賞団体)で、文化館は運営施設の一つにとどまること。寄付を受けた際の税金対策などを余計に講じなければならない。
まん延防止重点措置が解除になったことで、文化館は演奏会事業を徐々に再開している。約120席あるうち80人程度の収容での公演になる。土浦出身のギタリスト、木村大さんのコンサートやウクライナ支援のチャリティーコンサートなどを開いた。
これらの開催では、ギター教室などに通う地域ボランティアが運営を支えている。ウクライナ支援コンサートで駐車場に整理に当たっていた土浦市の杉沢百樹さん(75)はギターアンサンブルのサークルに所属している。「毎週のように来ている。公民館に比べればお金はかかるが、年金生活者の楽しみを良質な環境のなか提供してもらっている。何としても残してほしい」という。(相澤冬樹)
◆CFは「CAMPFIRE(キャンプファイア)」のサイトで31日まで受け付けている。電話0299-46-2457 【追記】4月1日から行っていたCFによる寄付受け付けは5月31日に終了。445人の支援者から総額745万3087円を集め、目標額をクリアした。支援の浄財は、サブスクリプション実施運営費(約300万円)、設備維持管理費(約100万円)、宣伝広告費(約100万円)、CF支援者へのリターン及びCAMPFIRE手数料(約200万円)などに用いられるという。
つくば市の「善政」に強い違和感 《吾妻カガミ》132
【コラム・坂本栄】市委託事業の事業者公募で新参者が選ばれ、これまで従事していた古参者が外された。ところがこの事業の利用者たちが、慣れ親しんだ事業者でないと困ると、市に抗議。困った市は予算を倍増し、古参者に事業を継続させながら、新参者にも類似の事業を開始させた。市は「三方良し」で問題を処理。利用者も古参者も新参者も皆ハッピー!
2~3カ月前、つくば市でこんなことが起きました。一見「善政」に思えるかもしれませんが、このおかしな決着に強い違和感を覚えています。詳しい経緯は「運営事業者の継続を求め陳情 不登校の学習支援拠点…保護者会」(1月20日掲載)、「新年度も運営事業者継続へ…つくば市が追加提案」(3月3日掲載)をご覧ください。
揺らぐ「調達の仕組み」への信頼
違和感その1は、提案型公募の選定結果を市が自ら覆したことです。事業委託者に新参者を選んだのは、古参者よりもサービスが優れていると判定したはずなのに、新参者を不安に思う利用者に対し、そのサービス内容を説明したのでしょうか? 新参者のサービスが提案内容よりも劣る場合は、新参者との契約を解除して委託先を古参者に戻すから、心配しないで大丈夫ですよ、と説得したのでしょうか?
事業提案型にしても価格入札型にしても、モノやサービスの調達(プロキュアメント)は公的機関にとって大事な仕事です。選定作業が正しく行われたとしての話ですが、それに落ちた事業者が簡単に復活するようでは、調達の仕組みに対する信頼が揺らぎます。
違和感その2は、正式に選ばれた新参者からの反発を恐れたのか、ほぼ同額の予算を付けて、新参者にも類似の事業を委託したことです。その結果、市がこの事業に支出する予算は当初予定のほぼ倍になりました。それが2千万円強でも「アリの一穴」となり、「善政」は安易な財政運営につながります。
違和感その3は、市の正式決定であっても、受益者が強く文句を言えば、「善政」が期待できるという前例が出来たことです。これにより、正式な手順はあくまでも仮のものという印象を多くの市民は持つでしょう。事業者も公式な手順を軽視するようになり、市政の混乱は避けられません。
「3方良し」でなく「3方悪し」
調達制度への信頼低下。場当たり的な予算付け。手順軽視の行政迷走。つくば市の「善政」は、よく考えると「悪政」と言えるでしょう。新参者・古参者・利用者への「3方良し」は、調達制度・財政措置・行政手順に対する信頼を損なう「3方悪し」ではないでしょうか。
以上は、選定が正しかったことを前提にした議論です。選定がいい加減なものだったとすれば、利用者が文句を言うのは当然です。新年度に入りましたので、利用者は新参者と古参者のサービスを比べてみてください。新参者のサービスが古参者より劣るようでしたら、誤った判断をした市担当部局の責任が問われます。(経済ジャーナリスト)
フリースケートで世界目指す 土浦の中学生 丸山美伶寧さん
サーフィンやスノーボードがオリンピックの正式競技に採用され、今年はスケートボードなどの国際大会「Xゲームス」が日本で開催されるなど、いわゆる「横乗り系」のスポーツが盛り上がりを見せている。その中で注目されるのが「フリースケート」だ。土浦市都和の中学1年、丸山美伶寧さん(12)も世界を目指す期待の選手の一人という。
丸山さんと祖父の平昌幸さん(51)がフリースケートに出合ったのは2020年5月。「知人の子が遊んでいるのを見て、不思議なものに乗っているなと思い、その場で借りてみたら面白かった。いままで体験したことのない感覚で、自分もやってみたいと思った」と平さん。スノーボードやスケートボードの経験もあったが、より楽しさを感じたそうだ。
丸山さんの印象は「難しそうだけど楽しそう。最初は乗れなかったけどすぐ慣れて、その日のうちに乗れるようになり、自分に自信が持てた感じがした」という。今では足を交差する「クロス」や、足を乗り換える「チェンジ」、片足で乗る「ワンフッター」などの難しいトリック(技)も自由自在。女性では世界トップレベルの選手しかできない「ポップドロップ」もこなす。夢は「大きい大会に出て、将来はフリースケートの先生になること」だそうだ。
平さんは「2人で一緒に始めて、自分は普通に滑れる程度だが、孫はずっと先へ行ってしまった。世界一への期待もあるが、一番は楽しんでフリースケートをやってほしい」と目を細める。
フリースケートは2003年、米国サンフランシスコ発祥の新しいスポーツ。競技としては、平地での技を競う「スケートゲーム」、ハーフパイプを使う「ランプ」、ジャンプ台やレールなどを使う「ストリート」の3部門がある。世界大会も存在するが、コロナ禍により2019年の中国・武漢大会を最後に休止されている。このときは7カ国から約500人が参加し、3部門全てで日本人選手が優勝するという快挙を遂げた。
丸山さんと祖父の平さんは、市内にある2つのフリースケート専用パーク「JMKパーク」と「64パーク」にほぼ毎日、練習に通っている。
2つの専用パークは、同市小松の嶋田巨樹さん(49)が運営する。嶋田さんは世界的なフリースケート用具メーカー「JMKRIDE(ジェイエムケイライド)」の代表を務める。
フリースケートの魅力について嶋田さんは「インラインスケートのような疾走感と、スケートボードの多彩なトリックをミックスした、スケートスポーツの集大成」と話す。手のひらサイズの小さなデッキ(板)に片足ずつ乗せ、まずはデッキの上に立つのが一苦労。だが練習すれば誰でも乗れるようになる。その達成感が大きな魅力の一つだ。「初めて自転車に乗れたときのように、突然できるようになる。一人で始めようとすると1週間くらいかかることもあるので、あきらめないよう、サイトには学習用の動画を多数用意している」という。
地面を蹴らず、乗ったまま足でこいで加速できることもスケートボードとの大きな違い。平地なら時速30キロほどに達し、坂道も登れるので、海外では手軽な移動手段としても重宝されているという。
いまJMKRIDEのフリースケートは土浦市のふるさと納税返礼品に採用されている。市内や東京近郊などで毎週のように無料体験会や練習会が開かれ、イベントで体験したのをきっかけに、土浦市内の2つの専用パークに遊びに来るようになった子どもたちが増えているという。丸山さんと祖父の平さんもその一人だ。(池田充雄)
◆専用パークは▽JMKパーク=8メートル×28メートルの平らなコース。土浦市小松1-23、午前9時~午後8時▽64パーク=高さ6フィート(1.8メートル)と4フィート(1.2メートル)の2つのランプ(曲面)がある。土浦市小松1-16、午前9時~日没。大型連休の期間中は、これらのパークは毎日開放される予定。利用料は無料で、デッキを借りての無料体験もできる。利用申し込みは電話(070-5517-1826)かメール(info@jmkride.jp)で事前に連絡する。中学生以下は保護者の引率が必要。
「鎌倉殿の13人」の1人・八田知家と小田氏 《ひょうたんの眼》48
【コラム・高橋恵一】土浦市立博物館の特別展「八田知家(はった・ともいえ)と名門常陸小田氏」は、知家や初期の小田氏に関する資料が少ない中で、幅広く情報収集を行い、展示資料もすべて翻刻版を用意するなど、展示の工夫がみられ、博物館の努力は称賛すべきものです。5月8日までの特別展も終盤になりましたので、前回コラム「常陸小田氏の土浦市展示に事実誤認あり」(4月20日掲載)で問題提起した私なりに、八田知家について、もう一度まとめておきたいと思います。
知家の父親は宇都宮座主(ざす)の八田宗綱(むねつな)で、領域南端の五行川と小貝川が合流する手前(筑西市)の「八田」に居館を置き、本拠地としていました。宗綱・友家親子は、保元(ほうげん)の乱で源義朝(みなもと・よしとも、源頼朝=よりとも=の父)に従軍し、知家は乱後も京で北面の武士を務め、小山政光の妻(寒河尼=さむかわのあま=知家の姉)は頼朝の乳母になっています。
宇都宮・八田(小田)一族と小山一族の結びつきは強く、1180年の頼朝の挙兵には、双方一族を挙げていち早く駆け付け、頼朝から信頼される御家人として、鎌倉時代を通して幕府を支えました。
頼朝は富士川の戦いに勝利すると、関東を抑えることを優先しました。当時、常陸国は平氏の知行国であり、大掾多気(だいじょうたけ)氏を本宗とする常陸平氏一族と那賀川以北を治める佐竹氏(源氏)は、頼朝追討の指示を受けており、反頼朝あるいは日和見の立場にありました。
頼朝は、常陸国の国府まで出向いて佐竹氏を降伏させ、鎌倉への帰途に「八田館」に立ち寄ります。吾妻鏡には「小栗重成(おぐり・しげなり)の小栗御厨(おぐりのみくりや)の八田の館」とありますが、御厨の荘官・小栗氏は自分の居館を持っているので、御厨エリアの中にある八田氏の舘を指していると考えます。源頼朝が立ち寄ったのは、より信頼できる八田氏の居館です。
頼朝は鎌倉に戻ると、八田氏領域の「茂木保」を知家に安堵(あんど)します。直前に佐竹氏から収公した領地を勲功者に配分していますが、隣接する八田・宇都宮領との境界の混乱を避ける意味があったのかもしれません。
筑後守、常陸介、紀伊守
1183年。常陸国信太(しだ)郡にいた頼朝の叔父・志田義広(しだ・よしひろ)の乱がおこり、小山一族が追い払い、八田知家も戦功を挙げます。志田義広の旧領のうち、知家は、信太荘,南野荘を与えられ、国府を挟んだ南郡の地は、下河辺氏に与えられます。知家は、南野荘西端に位置し、常陸国府と東山道や奥大道を結ぶ路線上にある小田に居館を構えて本拠とし、嫡子・朝重(ともしげ)から戦国時代末期まで「小田」を称します。
知家は平氏追討の後、常陸国守護職(しゅごしょく)となり、奥州攻めでは、東海道大将軍となり常陸の武士を率いて参戦しました。
鎌倉での知家は、大蔵御所(頼朝居館)の南御門前に屋敷を持ち、京からの要人接待にたびたび起用され、知家の京の所作に通じた見識は、頼朝に頼られたようです。頼朝が後白河法皇に会うため初上洛した際に、知家は遅参しましたが、頼朝は隊列構成などで相談したいと知家を待ち、全軍の鎌倉出発を数時間も遅らせ、知家の意見を取り入れてから出発したという話が吾妻鏡にあります。
常陸大掾本宗の多気義幹(たけ・よしもと)は、平氏追討や奥州征伐の後も、鎌倉政権へは距離を置いていたようでした。有名な曽我兄弟の仇討(あだうち)のとき、頼朝警護の動員がかかりますが、多気義幹はウソの動員と思い込んで参陣せず、謀反を疑われて没落しました。知家の陰謀とされていますが、仇討の日から逆算すると、策謀の日数はなく、義幹の失態と考えられます。
頼朝の死後、2代将軍・頼家を補佐する有力御家人を、尼将軍・政子(まさこ)が選びました。いわゆる「鎌倉殿の13人」で、八田知家はその1人です。また知家は、1203年ごろ「筑後守(ちくごのかみ)」に任官します。源氏嫡流以外の御家人が国守(こくしゅ)に任官するのは、北条時政の「駿河守」と並んで、一番早いのではないでしょうか。なお、嫡子・知重は「常陸介(ひたちのすけ)」、さらに「紀伊守(きいのかみ)」に任官しています。(地図と歴史好きの土浦人)
つくばFC ホーム開幕戦で敗れる
関東サッカーリーグ1部前期第4節、ジョイフル本田つくばFC対エスペランサSC(本拠地・横浜市)の試合が29日、つくば市山木のセキショウ・チャレンジスタジアムで開かれた。つくばは0-1で敗れ、ホーム開幕戦を落とす結果となった。これで戦績は1勝1分2敗、順位は暫定だが10チーム中4位のまま。
第56回関東サッカーリーグ1部 前期第4節(4月29日、セキショウ・チャレンジスタジアム)つくばFC 0-1 エスペランサSC前半0-0後半0-1
つくばは今季、副島秀治強化部長が監督も兼任。トップチームでは実に5年ぶりの現場復帰となった。17日の第3節では昇格組の東邦チタニウム(本拠地・神奈川県茅ケ崎市)を相手に1-2で競り勝って初白星。その後天皇杯の県予選が始まると、20日の1回戦は日立水戸サッカー部に9-1で勝利。だが24日の準決勝では筑波大に0-5で敗れた。
「連戦の中、選手はしっかり戦ってくれたが勝ちにつなげられず、もったいないことをした。今季はどのチームもレベルがどんどん上がっている印象で、気が抜ける試合は一つもない」と、副島監督はここまでの戦いを振り返る。
ホーム開幕戦は、午後から降り始めた細かい雨が、時間を追うごとに勢いを増しつつ風も強まるという、荒れた天気の中で開催された。
この日の相手、エスペランサSCはブラジル人FWのギリェルミ、アルゼンチン人MFのオルテガ・レオナルド・アグスティンらを軸に、球際で激しい戦いを挑んでくるチーム。雨でボールが止まる状況が加わり、ラフプレーも数多く発生していた。
「相手がタフに戦ってくることは分かっていた。長身FWめがけてシンプルに長いボールを入れてくるので、そのファーストディフェンスとカバーリングを徹底するようチーム全員で意識し、しっかりボールをキープして相手を自由にさせなかった」と、ディフェンスリーダーの駒崎公一主将。
攻撃については「サイドを起点にして相手を揺さぶり、中にできたスペースを活用しようという意識で、何度かビッグチャンスをつくれた。後は決めきることが課題」と駒崎。「問題点は攻撃時間が少ないこと。自分たちのやりたいプレーは前半の最後に見せられたが、これを90分間継続したい」と副島監督。
例えば前半29分には升田大誠の直接FKが相手GKを襲い、38分には郡司侑弥が左コーナー付近から中へ持ち込んでシュート。40分には大きなサイドチェンジから、右の甲高柊汰がスピードに乗ったドリブルでエンドライン際を切り裂き、シュートを放った。
また後半アディショナルタイムには熊谷誠也がペナルティアーク左で倒されFKを獲得、だが郡紘平が蹴ったボールはバー上へ外れた。「相手の迫力がキッカーにプレッシャーをかけていたと思う。そういう駆け引きを上回れるかなど、まだまだ課題がある」と駒崎。
次節は5月15日、アウェーのシティー・フットボール・ステーション(栃木市岩舟総合運動公園内)で、栃木シティFCと対戦する。「いいゲームはできているので、自信を持って伸び伸びとやれば結果はおのずと付いてくる。今季はわれわれもメンバーが大きく変わった。サポーターが次も来てくれるようなレベルの高い、見応えのある試合をしながら一つ一つ結果を出し、チームとして上位進出と昇格を見据えていきたい」と副島監督は話している。(池田充雄)
「知床事故の影響ない、より一層安全安心に」霞ケ浦観光船
ゴールデンウイーク(GW)が29日始まった。コロナ禍、行動制限のないGWは3年ぶりだが、北海道、知床半島沖で起こった観光船遭難事故の影響は出ていないのだろうか。
土浦港から霞ケ浦を周遊する観光船を運行するラクスマリーナ(土浦市川口、社長・片山壮二副市長)の高野利夫専務は「今のところキャンセルなど知床の事故の影響はない」とし「今までも安全運航を第一にやってきたが、知床の事故を踏まえ、より一層安全安心に運航していきたい」と話し、身を引き締める。
同社が運行する観光船は、遊覧船「ホワイトアイリス号」(定員86人)とクルーザー遊覧艇「KLM」(定員9人)だ。午前9時30分から午後4時30分まで1日最大10便、霞ケ浦の沖合いを約30分間周遊する船の旅を提供している。船上から望む筑波山や阿武隈山脈などの景色が見どころだ。5月20日から6月19日までは「潮来あやめまつり」に合わせて、土浦港から潮来まで運航する。携帯電話は湖心も含め霞ケ浦全域で通じるという。
出航前に毎朝点検
安全に運航するため、同社では出航前に毎朝、エンジンや船体に異常はないか、救命胴衣などは整っているか、警笛は鳴るかなどを点検しているほか、乗員全員のアルコール検査を実施している。年1回、警察や消防の協力を得て、船上で落水者救助訓練と消火訓練にも取り組んでいる。
運航を中止する基準は、風速毎秒15メートル以上、波の高さ1メートル以上、肉眼で確認できる視程100メートル以下と運航管理規程で定めている。
27日には、国交省関東運輸局の立ち入り検査があり、問題なしとの判定を受けた。知床の海難事故を受け、国交省が全国の観光船運航事業者を対象に一斉に実施している緊急安全点検だ。
点検では、同社が国交省に届け出ている安全管理規程や運航基準、作業基準、事故処理基準などの書類が整っているかや、規程にもとづいて日々の点検や運航が実施されているかなどを、関東運輸局職員が出航前点検簿などを見て確認した。さらに船内に立ち入り、救命胴衣や浮器(救命いかだ)などが備えられているかなどを点検したという。
湖上スクール、今年度は予算が削減
ホワイトアイリス号は、流域の小中学生などが湖上に出て霞ケ浦の水質などを調査する県の事業「霞ケ浦湖上体験スクール」などに年300回程度利用されてきた。しかしコロナ禍の2年間は利用が半減していた。今年度は県の予算削減により開催回数が3分の1に減る予定だという。(鈴木宏子)
◆霞ケ浦観光船の乗船料金は大人(中学生以上)1570円、子供(小学生)780円など(いずれも消費税込み)。ホワイトアイリス号で運航するが、乗客数が5人以下の場合はクルーザー遊覧艇KMLになる場合がある。春から秋の出航時間は午前9時30分、10時、10時30分、11時30分、12時30分、午後1時30分、2時30分、3時30分、4時、4時30分の1日最大10回。運航時間はいずれも30分間。
◆潮来あやめまつりの運航は、嫁入り船が出る5月20日(金)~6月19日(日)の水、土、日曜で、土浦港の出航時間は午前11時、午後2時、7時30分など。潮来までの乗船料金は往復が大人3760円、子供1880円。片道は大人2200円、子供1100円(税込み)。運航時間は片道1時間20分。1台300円で自転車の持ち込みもできる。
◆ホワイトアイリス号の定員は86人だが、現在コロナ対策のため40人までとしている。予約申し込みは電話029-822-2437(ラクスマリーナ)。
あの子は冷蔵庫に住んでいる 《短いお話し》2
【ノベル・伊東葎花】
あの子は冷蔵庫に住んでいる。
きっと暑いのが苦手なんだ。
冷蔵庫に住んでいるけれど、中の物を食べたりしない。
ただ静かに、息を潜めているんだ。
最初の出会いは春休み。
プリンを食べようと冷蔵庫を開けたとき、あの子がいたんだ。
イチゴ模様のタッパーの上に、ちょこんと座っていた。
つぶらな瞳の可愛い女の子。
思わず見とれていたら「早く閉めなさい」とママに叱られた。
あの子は、ぼくにしか見えない。
パパが冷蔵庫から出したビールの缶に、あの子がうっかりくっついてきてしまったことがある。
水滴と一緒に張り付いて、冷蔵庫から出てしまったんだ。
パパは何も気にせずに、テレビを見ながらビールを飲んだ。
ぼくはそうっとあの子を手のひらに乗せて、冷蔵庫に戻してあげた。
あの子はホッとした顔で、お礼代わりに小さくウインクをした。
あの子はいろんな所にいる。
たまごの上、ジャムの瓶、お肉のパック、ヨーグルトの上。
あの子を見たくて冷蔵庫を開けていたら、やっぱりママに叱られた。
「早く閉めなさい」
五月を過ぎて気温が上がると、冷蔵庫はぎゅうぎゅう詰めになる。
あの子はコロコロ場所を変え、それでもちゃんと座っていた。
ある夜、すごい雷が鳴って、町中の電気が消えた。停電だ。
ぼくは何をおいてもあの子のことが心配だった。
「ママ、停電になったら、冷蔵庫の中は大丈夫かな」
「大丈夫よ。このくらいで腐ったりしないわ」
ママはそう言ったけど、ぼくは心配でたまらなかった。
真っ暗な中で怖がっていないかな。
溶けていなくなったらどうしよう。
しばらくして、電気がついた。たぶん3分くらいだったと思うけど、ぼくにはすごく長い時間に感じた。
真っ先に冷蔵庫を開けると……あの子がいなかった。
どこにもいない。まさか本当に溶けてしまったのかな。
「早く閉めなさい」とママに言われても、ぼくはしばらく動けなかった。
それからは、冷蔵庫を開けるたびに悲しくなった。
あの子がいない。あの子が消えた。
季節は夏に向かっているのに、ぼくの心は氷河期だ。
汗ばむ季節が来て、学校から帰ると「アイスがあるよ」とママが言った。
手を洗って冷凍室を開けると、ひんやりした空気の中につぶらな瞳が見えた。
あの子だ。あの子がいた。
氷の妖精みたいな白いドレスを着て、アイスの蓋にちゃっかり座っている。
そうか。夏が来る前に、冷凍室に移動したんだね。
「きみは本当に暑がりだね」
嬉しくなって何度も何度も冷凍室を開けていたら、やっぱりママに叱られた。
「早く閉めなさい」
あの子に小さく手を振ると、すました顔で無視された。
冷たいなあ~。(作家)
「稼げる大学」へ 挑戦を前向きに検討 筑波大 永田学長が所信
筑波大学(つくば市天王台)の定例記者会見が28日開かれ、永田恭介学長が2022年度の所信を表明した。現在国会で審議中の国際卓越研究大学(稼げる大学)法案について、認定を受け「10兆円規模の大学ファンドに挑戦することを前向きに検討している」と表明した。
国際卓越研究大学は、世界最高水準の研究大学をつくるため国が認定する制度で、認定要件は、国際的に卓越した研究成果を創出している、財源の多様化や大学独自基金など財源に裏付けらえた事業戦略と財務戦略があるなど。全国の国公私立大の中から数校程度を認定するとされ、選ばれれば、科学技術振興機構(JST)に設置される10兆円規模の大学ファンドの運用益の中から、年間で数百億円単位の助成が得られるとされる。一方、認定された大学は年3%程度の成長を求められ、達成できない場合、認定を取り消すこともあるとされる。
年3%の成長率達成について永田学長は28日「筑波大学はこの10年間、国から交付される運営費交付金は約400億円とほぼ変わらないのに対し、総事業費は約780億円から約1060億円になり、指定国立大学法人(9大学)の中では京都大学に次いで2番目となる2.8%の成長をしてきている」と話し、「筑波大学は伸びる余地があるので、20年間ぐらいは(3%達成が)できるだろう」とする見通しを示した。
大学の独自ファンドを設立するための準備もかなり進んでおり、今年度中に立ち上げが可能だとし、8大学と地方銀行が独自ファンドを設立する準備を進めていることを明らかにした。海外の未公開株を中心に投資し、運用益でスタートアップ企業を育成するという。
同大は今年4月から、世界最高水準の教育研究活動の展開が見込まれる指定国立大学法人になった。2022年度はさらに第4期中期目標期間の始まりの年でもあり、永田学長は所信で「固定化した社会や価値観を変える」と表明し、学群入試の見直し、研究力の強化、経営体としての大学への転換などに言及した。
廃案求め署名活動も
一方、国際卓越研究大学法案に対しては、筑波大教員を含む全国の国公私立大の教員らでつくる「『稼げる大学』法案の廃案を求める大学横断ネットワーク」が、①大学の認定に政治判断が優越しやすい仕組みとなっている②年3%成長という数値が一人歩きし、稼げる研究分野が優遇され、稼げないとみなされた研究分野や研究者が淘汰される恐れがある➂学外者を中心とする理事会などに大きな権限をもたせようとし大学の私物化を促す恐れがある④経営戦略が損失をもたらした場合、誰がどのように経営責任をとるのか定められていない⑤大学間や地域間の格差を著しく拡大するーなどと批判し、廃案を求める署名活動を展開している。(鈴木宏子)
