日曜日, 5月 26, 2024

《法律かけこみ寺》25 かけこみ寺の功績

【コラム・浦本弘海】法律かけこみ寺も早いものでいよいよ最終回、今回で連載18回から前回までを振り返りたいと思います。 〈18 特別法のある金曜日〉 検察庁法改正という時事ネタにからめ、「上位の法は下位の法を破る」、「特別法は一般法を破る」、「後法は前法を破る」という制定法相互間の優劣に関する3つの原則を紹介しました。 見出しは赤川次郎『上役のいない月曜日』より。 〈19 とある会社の消滅時効〉 民法に非常に大きな改正が行われ、2020年4月から施行されています。そこで、この改正でも特に重要と思われる、消滅時効の部分がどのように変わったかを取り上げました。 見出しは鎌池和馬『とある魔術の禁書目録』より。 〈20 大量の雨が―おお!おお!おお!〉 ネタに困ったときは身近なトラブル。この回は隣地から雨水が流れ込んだときの法律関係として、民法の条文を紹介。ロシアのことわざに「家を買うな、隣人を買え」とあり、中国の故事に「百万宅を買い、千万隣を買う」とあるのもうべなるかな。 見出しはコードウェイナー・スミス『黄金の船が―おお!おお!おお!』より。 〈21 法律トリビアの泉〉 法律トリビアとして、一番短い法律を紹介。なんと、条文にしてわずか1条、法律全体の文字数がたった12文字! その法律とは、「陪審法ノ停止ニ関スル法律(昭和18年法律第88号)」。 見出しはTV番組『トリビアの泉』より。 〈22 登記にかける症状〉 登記には公信力がない、つまり登記簿上、所有権の権利者(所有権者)とされている者が(法律上の)真の所有者とは限らないという話。 見出しは映画(大林宣彦監督作品)『時をかける少女』より。 〈23 大いなる(負の)遺産〉 遠戚の遺産を相続するかしないかという話。最近は負の遺産の場合もあり、相続放棄にフォーカスして紹介しています。 見出しはチャールズ・ディケンズ『大いなる遺産』より。 〈24 いつつのかい〉 連載第13回から連載第17回までを振り返った総集編。前回と今回で、1年分の連載をあっという間に読めるお得な回。 見出しは加納朋子『ななつのこ』より。内容はもちろん装画も素晴らしい逸品です。 〈25 かけこみ寺の功績〉 今回です。 見出しはロバート・バー『ヴァルモンの功績』より。内容的に「功績」というのは諧謔(かいぎゃく)で、どれだけ皆さまのお役に立てたか分からないこのコラムの締めくくりには、もってこいの作品と申せましょう。 ご愛読、ありがとうございました!(弁護士)

《邑から日本を見る》77 大飯原発設置許可取り消し判決の波紋

【コラム・先﨑千尋】今月4日、大阪地裁は関西電力大飯原発3、4号機の耐震性を巡り、新規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断は違法だとした。この裁判は、福井県や近畿地方の住民が、同発電所の設置許可を取り消すよう求めていたもので、「原子力規制委員会の判断に看過しがたい過誤、欠落があり、設置許可は違法」という内容。一審の判決なので、確定ではないが、東海第2原発など各地で起こされている原発再稼働差し止め裁判に影響を与えよう。「琉球新報」は「再稼働のよりどころ否定。再稼働を推進してきた国や電力会社に与える打撃は大きい」と書いている(5日付け)。 争点となったのは、関電が算出した耐震設計の目安となる揺れ(基準地震動)の値や、これを基に設置を許可した規制委の判断が妥当かどうかだった。関電は、新基準に基づき、大飯原発の基準地震動を福島原発事故前よりも引き上げて856ガル(ガルは加速度の単位)と算定し、規制委も了承した。 これに対して住民側は、この基準地震動は少なくとも現行の1.34倍の1150ガルになる、規制委の審査ガイドにも「ばらつきも考慮される必要がある」と記載されている、現在の原子炉は耐震性を満たしていない、と主張していた。規制委内部でも、元規制委員長代理の島崎邦彦氏は、この数値は過小評価であると再考を求めていた。 判決で重視されたのはこの「ばらつき」。福島原発事故や熊本地震のときもそうだったが、自然現象には「想定外」がつきものだ。規制委が審査ガイドを作る際、「基準値(計算式)よりも大きな地震が起きることを想定すべきだ」という指摘があったことを踏まえ、数値を上乗せする必要性に言及。森裁判長は「国(規制委)が自ら作った基準通りに従わず、審査すべき点を審査していないので違法」と規制委の審査姿勢を糾弾している。 再生可能エネルギーが世界の主力電源 東海第2原発については、施設が壊れるギリギリを示す原子炉基準値は1009ガル。この数値がどの程度のものなのか、素人の私にはわからないが、先月に開かれた日本原電の住民説明会でも「この数値は過小評価ではないか。この2倍の地震が来ればどうなるのか」という質問に、あいまいな回答しか返ってこなかった。東海第2では、このばらつきの上限はどれくらいなのかを聞いておきたかった。 この基準地震動は他の原発でも大飯原発とほぼ同様の手法で計算しているようなので、審査の土台となる規制基準の妥当性そのものが疑われよう。「日本経済新聞」は「原発安全審査、信頼性に影。福島事故から10年を迎えようとする中、規制の棚卸しが必要な時期」と指摘している(5日付)。また「茨城新聞」は「関電は司法判断を謙虚に尊重し、運転は見合わせるべきだ」と提言している(5日付社説)。 関電幹部は「どこまで巨費をつぎ込めば安定稼働できるのか」と悲鳴を上げているそうだ。再生可能エネルギーが世界の主力電源に向かっている今、安全対策に無限の投資を続けるより、危険極まりない原発の再稼働を止め、別の道を歩くことの方が安全なのではないか。(元瓜連町長)

冬のキッズ工作体験 14日から動画公開 関彰商事と筑波大生がコラボ 

【山口和紀】地域の文化創造の場として関彰商事(関正樹社長)が運営している、つくば市二の宮のスタジオ’Sが、「冬のキッズアート体験2020-ONLINE(オンライン)」を14日からウェブで開催する。筑波大生が考案した工作のワークショップを動画や画像などで公開する。子供たちが動画を見ながら自宅で工作づくりを楽しめる内容だ。 キッズアート体験は、スタジオ’Sと筑波大生がコラボして毎年、夏と冬の年2回開いている。新型コロナウイルスの感染拡大から今年の夏はスタジオ’S単独の企画として行った。今回は、筑波大生とのコラボが復活した。 ワークショップで紹介する工作は全部で7種類。靴下で雪だるまをつくる工作や、たこ揚げのたこを作る工作など多様だ。オリジナルのクリスマスカードを作ったり、年賀状を作る工作もある。 企画には同大芸術専門学類の学生や大学院生が参加し、7種類の工作を考案した。ワークショップの一つ「靴下で雪だるまをつくろう」を企画したのが大学院1年の横堀玲奈さんたちのチームだ。靴下、綿、飾りつけ用のビーズ等を用意してもらって雪だるまを作る。「子どもたちが楽しめるよう身近なお店で手に入る材料で作れるよう考えたのが『雪だるま』だった」という。 およそ5分の動画で「雪だるま」の作り方を紹介する。内容のほとんどは「雪だるま」の胴体と帽子を作る工程となり、目やマフラーなどの飾りつけについてはあまり触れていない。横堀さんは「飾りつけ部分は子供たちが自分らしさを出せるように動画を短くした。どんな雪だるまにするかは子どもたちが自由に決めて欲しい」と語る。 去年までは子供たちと直接向き合ってワークショップを開催した。横堀さんは「去年は対面で実施された企画に参加し子どもたちと楽しい時間を共有することができた。今年の夏はコロナで一緒に活動できなかったが、今回からこういう形で協力できてうれしい」と話し、子供たちに工作体験を呼び掛ける。 筑波大生が考案した7つのワークショップはいずれもスタジオ’S のウエブサイトで、12月14日から2021年1月末まで公開される。

《食う寝る宇宙》75 「はやぶさ2」を見た子供たちの未来は?

【コラム・玉置晋】2020年12月6日未明には、ムクムクっと起き出してテレビをみていたので、寝不足の中で本原稿を書いています。はやぶさ2から分離したカプセルが大気圏に突入し、大気との摩擦熱で発光しながら、帰還する姿にはウルウルしてしまいました。 2014年12月3日に地球を飛び立ってから6年の歳月が経っていました。はやぶさ2の本機はカプセルを分離後、地球を離脱して、次なる目的地に向かいました。 このニュースを見た子供たちの中から、宇宙を目指す人材がたくさん生まれるに違いないと考えています。私の母はこのニュースを見て、母が子供のころに読んだ絵本の話をしてくれました。絵本には「将来、動く歩道ができるだろう」「将来、人類は月に行くかもしれない」と書いてあったそうです。 15年後、母は高校の教員になり、修学旅行の引率で東京を経由した際に、初めてエスカレータに乗ったそうです。1960年代初頭のことだと思います。そして、1969年に人類は月に降り立ちました。今、はやぶさ2のニュースを見た子供たちが活躍する15年後、どの様な世界になっているのか。 どうか、次の15年後にどうなっているのかと、希望を持てる世界であることを願います。 中国は月でサンプルを採取 日本では、はやぶさ2のニュースの影に隠れていますが、2020年12月1日、中国の月探査機「嫦娥(じょうが)5号」が月面に軟着陸し、12月3日、月面の岩石や土壌の採取に成功し、地球に戻るために月面を離陸したそうです。 同じころ、アメリカのNASAは、月の表土サンプルを収集し地球に持ち帰るプロジェクトへの参加企業を募集、日本の企業も選定されたというニュースが流れました。宇宙資源の争奪戦が始まりつつあるようです。 宇宙の真理を追究する時代、違う流れが大きくなっていることを、楽しみとみるか、懸念とみるか、現時点では判断は避けますが、世の中の動きをしっかり見ておきたいものです。(宇宙天気防災研究者)

土浦は自粛要請を継続、つくばは14日から解除 新型コロナで知事

新型コロナウイルスの感染状況の深刻化を受け、大井川知事は12日記者会見し、土浦市など3市町は外出自粛と営業短縮の継続を要請すると発表した。これまで土浦、つくば市など13市町を感染拡大市町とし、13日まで不要不急の外出自粛や飲食店の夜10時以降の営業時間短縮を要請していたが、土浦市などはさらに20日まで1週間延長した形。一方、つくば市など10市は解除となり、14日から外出や営業時間の制限はなくなる。 大井川知事は県内の感染者について、11月14日からの2週間は535人の新規感染者があったが、直近の2週間は494人になったとした。直近の2週間のうち、前半の1週間は新規感染者が336人だったのに対し、後半の1週間は158人と、ここ1週間でようやく減少に転じた形で「予断を許さない状況だが、皆の協力で着実に成果はでてきた」と評価した。 一方、医療提供体制はこの3週間で重症病床の稼働率が37.3%、コロナ病床全体の稼働率も50%を超えており、ひじょうに高い稼働率が続いているとした。ただし直近の数日は、若干下がりつつあるとし、現在、県内全体で316床あるコロナ病床を、今月下旬までに順次416床まで拡大できるとした。 3市町の飲食店に協力金を支給 外出自粛や営業短縮要請が継続となるのは土浦市のほか、つくばみらい市、利根町の3市町。6日から12日まで1週間の人口1万人当たりの新規陽性者数は、3市のうちつくばみらい市が県内で最も高く、2.94人、次いで利根町が2.66人で、両市は国の指標で、爆発的な感染拡大が起き医療提供体制が機能不全に陥ることを避けるための対応が必要な「ステージⅣ」に相当する状況だ。 土浦市は同2.03人で、感染拡大市となった11月27日時点では国指標のステージⅣ相当だったが、12日時点では「ステージⅢ」に一段階下がった。 外出自粛などの要請が14日から解除となるつくば市の人口1万人当たりの新規感染者数は1.10人に下がった。 営業時間短縮の延長を要請する土浦市など3市町の飲食店については協力店に対し、14日から1週間、1店舗あたり14万円(1日2万円)の協力金を支給する。 さらに3市では、福祉施設従事者に緊急抗原検査を実施する。土浦市についてはすでに11月30日から65施設、2500人を対象に一斉検査を行い、陽性者1人が確認されたという。今後は、つくばみらい市と利根町の福祉施設15カ所の従事者440人全員を対象に12月中旬から下旬に抗原検査を実施する。 大井川知事はその上で、職場や家庭での感染がひじょうに増えているとして、職場で通常マスクをしていても昼休みや休憩時にちょっと油断してマスクを外して会話をしてしまったことが感染拡大のきっかけになるとして、マスク着用を意識して注意してほしいとした。 さらに、忘年会や新年会は県の追跡アプリ「いばらきアマビエちゃん」の登録店舗を利用すること、少ない人数で短時間の開催とし、大声を出したり、回し飲みをしたり、箸の共用をしないこと、会話をするときはマスクを着用することなど、最大限の注意を払うよう求めた。年末年始の帰省については、休暇を分散取得したり、体調に異常がある場合は帰省を控えるよう呼び掛けている。

水辺のまち土浦をカヌーで遠足 来春始動へ ラクスマリーナ

【鈴木宏子】水辺のまち土浦で、市内を流れる川をカヌーで巡り、自然体験や観光に生かそうという新たな試みが始まっている。コロナ禍、野外で、親子や小グループでも楽しめる旅行商品づくりでもある。 霞ケ浦で遊覧船を運行するラクスマリーナ(同市川口、社長・栗原正夫土浦市副市長)が企画した「カヌー遠足」で、来春の商品化を目指している。 ガイドが付き添い、遠足気分でカヌーを楽しんでもらおうという企画だ。市街地を流れ、両岸に約200本の桜並木が続く桜の名所、新川を水面から巡る「新川遠足」や、夏にはハスの花が一面に広がる日本一のハス田を巡る「霞ケ浦レンコン田遠足」などが企画されている。 企画は、県の筑波山・霞ケ浦広域エリア観光連携促進事業「アウトドア層向け新商品企画開発」の開発部門で入賞し、11月から来年2月まで計5回のモニターツアーが実施される。 モニターツアーで子供たちが新川巡り 初のモニターツアーは11月に実施され、つくば市研究学園の総合型地域スポーツクラブ、NPO法人Next one(ネクスト・ワン、井上真理子代表)の小学1年から5年生約20人が、新川のカヌー遠足に参加した。初めてカヌーに乗るという参加者もいた。 午前10時、霞ケ浦・土浦港のラクスマリーナを出発、霞ケ浦から新川河口に入り、常磐線の鉄橋など計9カ所の橋をくぐって、桜並木が途切れる真鍋橋上流まで上り、Uターンする往復4キロを巡る約2時間のコースだ。真鍋橋では、川岸に立地するコンビニに上陸してトイレ休憩。子供たちはコンビニ店で一人200円ずつ渡され、それぞれ好きなおやつを買うなど遠足気分を盛り上げる演出もあった。 参加したつくば市の小学3年、女子児童は「いろいろな景色が見えて面白かった」、同市、同3年の男子児童は「流れが強いところがあって岸にぶつかりそうになったけど楽しかった」などと話していた。 同NPOアシスタントマネジャーの河田萌さん(28)は「子供たちは自分たちの力で進んで、仲間と協力しながら乗り越えることを体験できたと思う」と語った。 ツアーのガイドには、土浦港で年4回実施されているカヌーやヨット体験イベント「誰でも楽しもう霞ケ浦」を支えるボランティアらが参加し、子供たちの安全を見守った。「誰でも楽しもう」は2005年から開催され、障害者も高齢者も子供も、だれでも霞ケ浦を楽しんでもらおうという催しだ。ツアーにガイドスタッフとして参加した筑波大出身で埼玉県春日部市の会社員、木村穂高さん(53)は「子供たちは、ぐらぐらする水面や非日常を楽しんでくれたと思う」と話す。 カヌー遠足を企画したラクスマリーナ取締役の秋元昭臣さんは、自転車愛好者がつくば霞ケ浦りんりんロードを自由に行き来して楽しんでいるように、水面ではカヌーが行き来し、誰でも気軽に楽しめるようになることを目指したいとし、「霞ケ浦には56本の流入河川がある。皆が水に親しむようになれば、川もよりきれいになるのでは」と話す。 ◆カヌー遠足は「新川遠足」が片道1.3キロ、往復90分で参加費は大人4500円、子供(小学4年生以上)2500円、「霞ケ浦レンコン田遠足」は片道650メートル、往復90分で、参加費は大人3500円、子供2000円。料金はいずれも税込み。詳しくは電話029-822-2437(ラクスマリーナ)。

《遊民通信》6 バンプ・オブ・チキンと寅さん―芸能人の結婚―

【コラム・田口哲郎】 前略今回はコロナを離れて閑話休題といきましょう。この間、人気バンドのバンプ・オブ・チキンのニュースを目にしました。ボーカル藤原基央氏の結婚です。おめでとうございます。さて、世間を驚かせたのは、未婚だと思われていた他のメンバー(直井、増川、升各氏)が実は既婚者だった、という続報です。事務所関係者談というのですから穏やかではありません。 プライベートですから、結婚を非公開にすることにもちろん問題はないです。しかし、なぜ結婚を非公表にしたのでしょう? ファンがそう望むだろうから、という答えが返ってきそうです。ロックバンドとはいえ、あれほどの人気があれば、アイドル的といえるでしょう。 アイドルはファンみんなのものです。某女性アイドルグループは恋愛禁止をうたっていますね。確かに好きなアイドルが誰かの恋人、妻、夫なのは面白くないでしょう。疑似恋愛だとしても、不倫みたいで嫌だと心の底で思うのでしょう。人間は思ったよりも道徳的で潔癖な動物なのかもしれません。 人気者は孤独をまとう 映画「男はつらいよ」シリーズの寅さんを思い出しました。寅さんは全国各地の露店を回る渡世人です。行方定めぬ旅人は遊民に似ていて親しみを覚えます。 さて、寅さんは毎回登場するマドンナにほれますが、結局恋仲になる前に玉砕して、また旅に出ます。もし寅さんが名うての色男でマドンナを次々とものにしたら、あの映画は国民的映画になり得たでしょうか? 長寿シリーズたりえたのも、寅さんが万年失恋独身男だからだと思います。 ファンはバンプ・オブ・チキンのメンバーには寅さんであって欲しかったのです。藤原氏は孤独や生きる不安を詩に込めて唄い、他メンバーは抒情的旋律を奏でますから、彼らからは、成就する恋愛を想像しにくいのです。 そういえば寅さん役の渥美清氏はプライベートを一切明かさないことで有名でした。山田洋次監督でさえ家も家族も知らなかったそうです。渥美さんは大衆が寅さんに何を求めるのかよく分かっていたのでしょうね。そういう意味ではバンプ・オブ・チキンのメンバーの姿勢はたたえられるべきです。ファンの独占欲と道徳心を満たすために、プライベートをひた隠してロック界の寅さんを演じていたのですから。ご苦労さまです。 孤独はアーティストにとって軽視できない要素です。自分に対するイメージのみならず、創作の本質としても。『変身』で知られるカフカは結婚まで考えた恋人と結局別れました。結婚すると孤独ではなくなり、小説を書けなくなると考えたからです。 『叫び』で知られるムンクは独身時代に暗く強烈な絵を描きました。しかし、幸せな結婚をして、同じ画家の作品かと驚くほど画風が明朗になりました。さて、かく言う私は孤独な遊歩者ですから、哀しいかな、何も隠すことはありません。気楽ですが、少し寂しいです。ごきげんよう。 草々(散歩好きの文明批評家)

史上最長! ナノサイズのネコジャラシ 物材機構など合成に成功

【相澤冬樹】物質・材料研究機構(NIMS、つくば市)は9日、理化学研究所と共同で、史上最長のボトルブラシポリマーの合成に成功したと発表した。イネ科植物エノコログサの花穂「ネコジャラシ」 に似た形状の高分子材料で、従来の合成で致命的欠点だった長さや化学的性質の多様性の制約を大きく改善した。これにより、柔軟性と低摩擦性を有する高分子材料などへの応用が期待されるという。 今回の成果は、NIMS機能性材料研究拠点の山内祥弘独立研究者と理研創発物性科学研究センターの石田康博チームリーダーらの研究チームによる。 史上最長といっても、その長さはナノメートル(μm=10億分の1メートル)オーダー。カーボンナノチューブに代表される1次元ナノ材料は、サイズや性質の調整など合成上の課題があった。従来の合成法では原料となるモノマーの反応性や微量不純物の混入などの課題があったため、伸長可能な長さは1μm強が限界で、数μm長の合成法が求められていた。 そこで研究チームが注目したのが、ボトルブラシポリマーという新たな高分子材料。モノマーが多数結合した高分子のことをポリマー(重合体)と呼ぶ。ボトルブラシポリマーは1本の主鎖と複数の側鎖からなり、それぞれの構築用に2種類の重合体を用意、側鎖の選択によって様々な化学組成を持った高分子の設計が可能となる。 この合成により出来上がったネコジャラシは長さ7μmまでに到達、これまでの最長値と比べて約3.8倍の長さに相当した。さらに2種類の重合法を組み合わせることで、主鎖の長さは維持しつつ4種類の側鎖を持つボトルブラシポリマーを作り分けることにも成功した。 今回の成果は、長さや直径サイズや化学的性質の制御された様々なボトルブラシポリマーの合成を可能にする。ボトルブラシポリマーは、表面にコーティングすることで低摩擦面を実現し、例えば機械可動部の摩擦によるエネルギー消費の削減に繋がると期待されている。今後、ボトルブラシポリマーの長さを生かしながら、3次元網目構造にすることで、安定かつ柔軟な材料としてソフトコンタクトレンズや人工軟骨への応用が期待できるという。 NIMSの山内祥弘研究者は先に、ハリセンボンに発想を得た高耐久超撥水材料の開発も手掛けている。

スーパーシティ構想応募へ つくば市が連携事業者を募集 

【鈴木宏子】国が進めるスーパーシティ構想への採択を目指しているつくば市は、7日から連携事業者の募集を開始した。スーパーシティ連携事業者は企業や大学、研究機関などが対象で、パートナーとして市の構想や実行計画の企画立案を共に行う。 スーパーシティは、AI(人工知能)やビッグデータなど先端技術を活用し、複数の分野でデータを共有して、行政手続き、移動、医療、教育などさまざまなの分野で暮らしの利便性を向上させる未来型の都市づくり。内閣府が全国の自治体などを対象に12月を目途に公募、来年春ごろ全国で5カ所程度が採択される見通し。 選ばれれば、スーパーシティの区域会議を立ち上げ、住民の合意をとった上で、データを共有できる基盤をつくり、パートナーとなる企業や大学、研究機関などが自治体と連携してサービス開発やインフラ整備などに取り組む。実現に向け国は、関係省庁の事業を集中投資する。公募に先立って今秋、国が自治体からスーパーシティのアイデアを公募したところ、10月末時点で57自治体からアイデアが出されている。 一方、県とつくば市は昨年6月、大学や研究機関、企業などと共同で、つくばスマートシティ協議会を設立し、さまざまな実証実験を実施している。バイタルデータから生理的異常を検出した際に登録先に連絡したり、電動車いすに取り付けたタブレットに信号機の情報を表示したり、顔認証でバスに乗降したりするなどだ。 提案締め切りは28日 今回の連携事業者の募集は、スマートシティ協議会の取り組みとは別に実施するが、同協議会で実証実験に取り組んできた企業や大学、研究機関などから連携事業者としての応募があれば、受け付けるという。 スーパーシティの要となる、多分野のデータを共有するデータ連携基盤については、新型コロナの地方創生臨時交付金約5000万円を市が同協議会に交付し、行政や企業などのさまざまなデータを共有し、用途に合わせて組み合わせて利用するための情報連携システム基盤やアプリを開発中。スーパーシティに選ばれた場合も、今回、同協議会が開発しているデータ連携基盤を使うことになるという。 連携事業者の公募にあたって市は、市の課題として、①都市部と郊外の二極化②多文化共生のための対応③技術と生活の融合④研究学園都市の老朽化-の4つの課題を挙げ、課題解決のほか、都市機能の向上、市民の暮らしやすさの革新などのアイデアの提案を求める。 事業提案の締め切りは28日。来年1月に連携事業者を決定し、市独自のスーパーシティ構想や実行計画などをつくって応募する。 【スーパーシティの事例】中国・杭州市では、世界最大のネットショッピング、アリババ系列会社が行政と連携して、カメラ映像のAI分析を活用し、信号機の点滅を自動で切り替えて渋滞を緩和したり、交通違反を取り締まったり、顔認証でキャッシュレスの無人コンビニを展開している。スペイン・バルセロナ市では、市内に設置した約1万2000のセンサーのデータやGPS測位データなどを利用し、駐車場の空き状況やバスの運行情報、ごみ収集など都市インフラの最適化を行っているほか、市民自らが政策の閲覧や議論がでるようにしたり、オープンデータをもとに地域社会の課題を見つけ出し解決策を生み出すコンペを開いたりするなど、国際的にはスーパーシティに向けた動きが急速に進展している。一方、カナダ・トロントでは、グーグルの系列会社が、あらゆる場所、人、物の動きをセンサーで把握し、ビッグデータを活用した街づくりを計画したが、個人情報の活用に住民から懸念が出て、今年5月、新型コロナで採算が取れないことを理由に、会社が事業から撤退したなども起こっている。

《映画探偵団》38 中心市街地で運動公園問題を考える

【コラム・冠木新市】12月6日。ある市議と出会ったので、つくばの中心市街地を運営する予定の「まちづくり会社」について、どうなっているのか尋ねてみた。すると市議は「他の市民からも聞かれているが、自分もまだ市から知らされていない」と答えた。そして、「最近では『まちづくり会社』に疑問を持つ市議が増えている」とも教えてくれた。 同日午後1時。TBSテレビ『噂の!東京マガジン』を見た。「つくば市総合運動公園」の特集だったからだ。約20分の構成は、5年前に運動公園計画に反対し住民投票で白紙撤回させた「つくば市民の会」代表2人への取材と、その後の経過報告。次に東京ドーム10個分の運動公園予定地跡をどうするのか、市議へ質問。①土地売却と活用案の併用②条件付き売却③防災拠点活用案―の意見が紹介された。 そして、番組コメンテーター清水国明氏が、つくば市にRVパーク(キャンピングカーで車中泊ができる場所)を造ったらと提案し、防災拠点にもなると語った。その後リモート出演した市長は「一部は防災倉庫に活用して残りは民間に売却したい」との考えを話した。 これらの話を聞くうちに、私には、中心市街地で行われたイベントの記憶が蘇ってきた。2018年、中央公園の雑木林での「手ぶらでバーベキュー」。2019年、中央図書館隣の空き地での「つくばVAN泊」(キャンピングカーが集まった)。 あのときは、他にいくらでもよい場所があるのに、どうして中心市街地でやるのか不思議だった。しかし、今回のテレビ番組で謎が解けた。これまでの企画は、「総合運動公園跡地利用」への宣伝効果を狙ったものだと考えると一本の線でつながるからだ。 初めて知った「防災拠点=RVパーク」(?)計画と「売却」が悪いのではない。中央メディアで発表する前に、市議や市民へ知らせるべきではなかったかと言いたいのだ。だから私には、土地とキャンピングカーとテント用品などを売るビジネス計画に見えてしまった。 『猿の惑星』シリーズ 12月に入って、映画『猿の惑星』オリジナルシリーズ5部作(1968∼1973)と新シリーズ3部作(2011∼2017)を見直した。第1作『猿の惑星』(1968)は『2001年宇宙の旅』と同時期に公開され、それまでゲテモノ扱いされていたSF映画が一躍1級ジャンルへと昇格するきっかけになった作品である。また未来への不安をかきたてる先駆けとなった作品でもあった。 地球に帰還するロケットに乗った宇宙飛行士テイラーが事故で不時着する。ゴツゴツした赤茶けた岩山と砂漠が広がる惑星。そこは、ゴリラの軍団やオランウータンの行政官やチンパンジーの学者たちが人間を支配する猿の惑星だった。 テイラーは猿のまちで獣の扱いを受ける。そして、猿に抵抗したテイラーはノバという女性を連れて猿たちが恐れる禁断地帯へと足を踏み入れる。すると、テイラーは砂浜を叩いてわめきだす。目の前には、腰の辺りまで砂浜に埋まった自由の女神像があった。猿の惑星は核戦争で滅んだ未來の地球だった。テイラーは猿にも劣る人間を罵倒していたのだ。 中心市街地つくばセンタービルと総合運動公園跡地の森が一本の線で結ばれていると考えると、色んな思いが湧いてくる。センタービルは遺跡であるから老朽化などしない。エレベーターは3基あり、車イスで広場に入れる場所は5カ所もあるから、弱者用をアピールするエスカレーター2基は必要ない。 むしろ、センタービル改造資金を総合運動公園跡地や学校建設関連に回す方が得策だと思う。猿知恵と皆から笑われるだろうか。私はテイラーの気持ちがよく分かる。サイコドン  ハ トコヤン サノセ。(脚本家)

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