【鈴木宏子】国が進めるスーパーシティ構想への採択を目指しているつくば市は、7日から連携事業者の募集を開始した。スーパーシティ連携事業者は企業や大学、研究機関などが対象で、パートナーとして市の構想や実行計画の企画立案を共に行う。
スーパーシティは、AI(人工知能)やビッグデータなど先端技術を活用し、複数の分野でデータを共有して、行政手続き、移動、医療、教育などさまざまなの分野で暮らしの利便性を向上させる未来型の都市づくり。内閣府が全国の自治体などを対象に12月を目途に公募、来年春ごろ全国で5カ所程度が採択される見通し。
選ばれれば、スーパーシティの区域会議を立ち上げ、住民の合意をとった上で、データを共有できる基盤をつくり、パートナーとなる企業や大学、研究機関などが自治体と連携してサービス開発やインフラ整備などに取り組む。実現に向け国は、関係省庁の事業を集中投資する。公募に先立って今秋、国が自治体からスーパーシティのアイデアを公募したところ、10月末時点で57自治体からアイデアが出されている。
一方、県とつくば市は昨年6月、大学や研究機関、企業などと共同で、つくばスマートシティ協議会を設立し、さまざまな実証実験を実施している。バイタルデータから生理的異常を検出した際に登録先に連絡したり、電動車いすに取り付けたタブレットに信号機の情報を表示したり、顔認証でバスに乗降したりするなどだ。
提案締め切りは28日
今回の連携事業者の募集は、スマートシティ協議会の取り組みとは別に実施するが、同協議会で実証実験に取り組んできた企業や大学、研究機関などから連携事業者としての応募があれば、受け付けるという。
スーパーシティの要となる、多分野のデータを共有するデータ連携基盤については、新型コロナの地方創生臨時交付金約5000万円を市が同協議会に交付し、行政や企業などのさまざまなデータを共有し、用途に合わせて組み合わせて利用するための情報連携システム基盤やアプリを開発中。スーパーシティに選ばれた場合も、今回、同協議会が開発しているデータ連携基盤を使うことになるという。
連携事業者の公募にあたって市は、市の課題として、①都市部と郊外の二極化②多文化共生のための対応③技術と生活の融合④研究学園都市の老朽化-の4つの課題を挙げ、課題解決のほか、都市機能の向上、市民の暮らしやすさの革新などのアイデアの提案を求める。
事業提案の締め切りは28日。来年1月に連携事業者を決定し、市独自のスーパーシティ構想や実行計画などをつくって応募する。
【スーパーシティの事例】中国・杭州市では、世界最大のネットショッピング、アリババ系列会社が行政と連携して、カメラ映像のAI分析を活用し、信号機の点滅を自動で切り替えて渋滞を緩和したり、交通違反を取り締まったり、顔認証でキャッシュレスの無人コンビニを展開している。スペイン・バルセロナ市では、市内に設置した約1万2000のセンサーのデータやGPS測位データなどを利用し、駐車場の空き状況やバスの運行情報、ごみ収集など都市インフラの最適化を行っているほか、市民自らが政策の閲覧や議論がでるようにしたり、オープンデータをもとに地域社会の課題を見つけ出し解決策を生み出すコンペを開いたりするなど、国際的にはスーパーシティに向けた動きが急速に進展している。一方、カナダ・トロントでは、グーグルの系列会社が、あらゆる場所、人、物の動きをセンサーで把握し、ビッグデータを活用した街づくりを計画したが、個人情報の活用に住民から懸念が出て、今年5月、新型コロナで採算が取れないことを理由に、会社が事業から撤退したなども起こっている。