【コラム・坂本栄】ミニ新聞の記事に名誉を傷付けられたとして、五十嵐つくば市長が発行人の亀山元市議を名誉毀損(きそん)で訴えたことについては、本欄でも何度か取り上げました。この裁判は進行中ですが、事情通によると、名誉毀損のほか、公職選挙法上も問題だと、ダブルで発行人を追求するそうです。市政批判記事を「ボツ」にしたい五十嵐さん、焦りが見えてきました。

ミニ新聞提訴は2本立てに

公選法によるものは、ミニ紙発行人が「当選を得させない目的をもって公職の候補者又は公職の候補になろうとする者に関し虚偽の事項を公にし、又は事実をゆがめて公にした」(235条第2項)から、亀山さんを罰せよという組み立てと聞いています。

要するに、五十嵐市政を厳しく検証した記事は、市長再選を妨害するための虚偽の記事だったという主張です。記事が虚偽(フェイク)なのか事実(ファクト)なのかを争う点では名誉毀損係争と同じですが、公選法違反を追加することで、市政批判封じを強化する作戦のようです。どこかの非民主国を想起させるような動きで、学園都市も変な街になってきました。

知り合いの弁護士に感想を求めたところ、「市民による市政批判に対しては、言論で対抗するとか、市民との対話によって理解を求めるのが、民主主義の基本。強い力を持つ市長が、市民の言論活動を罰せよと裁判に持ち込めば、市民の自由な活動を萎縮させる。言語道断」ということでした。権力監視を編集方針に掲げる本サイトの執筆者としても、このコメントに100パーセント同意します。

笑える提訴取り下げの動き

名誉毀損関係でも変な動きがありました。コラム111「つくば市長の名誉毀損提訴、取り下げ?」(7月19日掲載)で、提訴を取り下げるのではないかとの見方が流れていると書きましたが、このうわさ話は本当でした。事情通によると、裁判が自分にマイナスに作用すると思い直したのか、それとも勝てないと思うようになったのか、条件付き取り下げ案を亀山さんに示してきたというのです(取り下げには同意が必要)。

その条件を聞いて笑いました。コッソリ取り下げたいので、記者会見などで詳しく喋らないと約束してほしいという内容だったそうです。裁判をウヤムヤに終わらせるのは許せないと、亀山さんは条件付き取り下げを拒否。無条件ではアレコレ論評されと思ったのか、五十嵐さんは取り下げそのものを見送ったようです。

先の弁護士は、名誉毀損の取り下げに失敗したので、裁判を強面(こわもて)に演出するため、公選法関係を加えてきたのではないか、と読んでいます。センタービル問題での五十嵐さんの迷走については前回コラム(11月1日掲載)で触れましたが、提訴を引っ込めようとしたり付け加えたりと、こちらの迷走も喜劇風になってきました。(経済ジャーナリスト)

参考「つくば市民の声新聞」記事の事実検証コラム
▽101「つくば市長の名誉毀損提訴を笑う」(3月1日掲載
▽103「つくば市長の名誉毀損提訴を検証する」(4月5日掲載
▽105「つくば市長の名誉毀損提訴、近く裁判開始」(5月3日掲載