つくば市、五十嵐立青市長の定例記者会見が9日開かれた。同市大穂地区で建設が始まったデータセンターからの莫大な排熱など専門家が環境影響に懸念を示している問題について(5月19日付、同20日付)五十嵐市長は「日本データセンター協会が5月に地域共生ガイドライン(※メモ)をつくった。共生ガイドラインは事業者としても当然守っていきたいということ。今、環境を無視したり、地域住民を無視して事業を進めることは基本的に起こりえない」との見方を示した。
大穂地区のデータセンターは、グッドマンジャパン(東京都千代田区)の特定目的会社が同市開発公社から約46ヘクタールの用地を取得し建設を進めている。将来的に国内最大級の100万キロワットのデータセンターを建設する見通し。これに対し専門家は、100万キロワットのデータセンターが完成すれば、現在のつくば市全体の排熱量の2倍が同市大穂の予定地から排出され、夏の猛暑時などは周辺住民の健康影響が懸念されるなどと指摘している。
9日の定例会見で五十嵐市長は、100万キロワットのデータセンターから排出される排熱量が、現在の市全体の排熱量の2倍になると専門家が試算していることについて「電力量から想定すれば排熱量はこれぐらいになると当然計算できる」とする一方、「最新の施設を導入すると事業者から聞いており、周辺に悪影響にならないようモニタリングを継続していくことも事業者から聞いているので、きちんと進めていってもらえると思っている」とした。
一方、具体的な設備の冷却方法や周辺環境への排熱量について事業者からヒヤリングしているのかとの記者の質問に対し五十嵐市長は「正確な数字は実際に稼働してみないと分からない。現時点でこれというものは示されていない」と答えるにとどまった。
その上で五十嵐市長は「市とさまざまな形で協議してくためにも、(事業者と)協定締結などをする方向で進めている。市が言わなくても、企業価値の面で、事業者が環境投資をした方が企業としての相対的な価値が高まると日本だけでなく世界中でなっていると思う」などと話した。
一方、大穂地区の住民団体が住民説明会の開催を要望し現在、署名活動をしていることについては「データセンターの地域共生ガイドランの中で、コミュニケーションをとるということはひじょうに重要だとしている。地域にきちんとていねいに説明してほしいということは、われわれとしても(住民団体の)署名の話を伺う前から継続してしている」とし、市として前向きに対応する姿勢を見せた(6月8日付)。
住民団体「『ガイドライン守ってくれるはず』は無責任」
五十嵐市長の見解に対し、事業者による住民説明会の開催を求め現在、署名活動を展開している地元大穂地区の住民団体「データセンターから市民を守る会」(6月8日付)の柳町弘幸会長は「データセンター開発は、つくば市が土地を売却し、用途地域を変更し、開発許可を出したことで実現した。いわば、つくば市自身がこの計画の起点となっている。その行政のトップである市長が、法的拘束力のないガイドラインを根拠に『事業者が守ってくれるはず』と述べることは極めて無責任。本来であれば、市が事業者に対して住民説明や環境配慮を求め、その履行状況を確認する立場にある」と話す。
さらに「現時点で地域住民との共生が実現しておらず、住民から不安や懸念の声が上がり続けているにもかかわらず、市はグッドマンジャパンに対して説明会の開催や追加的な環境調査を求める行政指導を行ってこなかった。その結果として住民との信頼関係が構築されず、不信感だけが拡大している。開発許可権者として適切な指導を行わなかった行政の責任は重く、その行政を統括する市長には監督責任があると思う」とし、さらに「市長は排熱が巨大になることは認めたが、その影響は調べていない。これは大きな問題」だなどと指摘している。(鈴木宏子)
※メモ
【データセンター地域共生ガイドライン】データセンターの事業者団体、NPO日本データセンター協会(東京都千代田区、理事長・田中邦裕さくらインターネット社長)が今年5月に策定したガイドライン。地域とのコミュニケーション、データセンターが周辺の気温に与える影響、騒音、景観や地価など、地域との共生のためにデータセンター事業者が遵守すべき事項などについて記している。つくば市大穂でデータセンターの建設を進めるグッドマンジャパンも、同協会の正会員になっている。一部のデータセンターで環境や防災上の懸念をめぐり近隣住民との関係が悪化するなど問題が顕在化し始めていることなどをめぐり、総務省と経産省の有識者会議が「データセンターの整備にあたっては、地域との共生は大前提で、事業者は近隣住民にていねいな説明の機会を設けるなど適切な対応を進めていくことが重要」との方針が示されたことを受けて策定された。






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