水曜日, 8月 19, 2026
ホームつくば「電力消費、排熱、CO₂排出に懸念」歌川学さん講演 つくばに国内最大級のデータセンター(下)

「電力消費、排熱、CO₂排出に懸念」歌川学さん講演 つくばに国内最大級のデータセンター(下)

グッドマンジャパンがつくば市大穂に計画している国内最大級のデータセンターについて、「つくば市の巨大データセンター 3つの疑問」と題した学習会(主催・脱原発ネットワーク茨城=江口肇共同代表)が4月末、同市大穂、大穂交流センターで開かれ、つくば市内の研究機関に勤務し温暖化対策を研究する歌川学さんが講演した。歌川さんの講演概要をまとめた。以下の通り。

電力消費増の原因は二つ

昨年2月、国のエネルギー基本計画が出され、国全体の電力消費量が2024年から10~20%増えるという予測が立てられた。それまでは省エネをすれば電力消費は少し減っていくという見通しだった。増加理由の一つは半導体製造の増加、もう一つは全国でデータセンターが増加することだ。

経産省の第7次エネルギー基本計画策定時の審議会で関係業界がヒヤリングを受けた。データセンターの代表としてソフトバンクが、2030年までに電力消費量が2020年の3倍、2040年までに2030年の8倍、掛け算すると24倍になる可能性があると答えている。こうした増加予測を入れて私が独自に計算し、他にも工場・オフィス・家庭の電化、電気自動車の増加を考慮し、一方で省エネ対策で電力消費を減らすと、2040年から2050年のデータセンター及び半導体製造工場の電力消費量は国全体の10%程度、2050年に向けた電力消費全体も大きな増加ではないと推計できる。

省エネ対策とは、皆で電気をこまめに消して、エアコン止めて…ということではなくて、機器の更新のときに、省エネ機器を入れる、断熱建築にする、車を買い替える時は燃費のいい車にするなどしていくということ。石油やガスなど化石燃料が使われているものを効率よく電気に変えることでエネルギー消費全体の効率を良くすることができる。建物の断熱も含めてストーブからエアコンにすると、エネルギー消費は4分の1になる。こうした省エネ対策をすれば、エネルギーの中で電力消費・熱利用・運輸燃料を合わせたエネルギー消費量全体は大きく削減される。このエネルギー消費の中で、半導体製造・データセンターの電力消費増と電化により、電力消費はあまり減らずむしろやや増える可能性があるが、2050年に向け中長期的に電力消費量が激増することはないと予測される。

大都市周辺と北海道に計画

2024年以降に新設計画があるデータセンターは、東京、大阪周辺の比較的地価の安いところに多くの計画がある。データセンターの中は、狭いところにIT機器、いわばコンピューターが密集して設置され、多くのエネルギーを消費し、熱を持つので、外部に排熱して冷やす。冷却でもエネルギーを消費する。比較的涼しい北海道は冷却するためのエネルギーが少なくて済むので北海道にも新設計画が多い。

データセンターが今後、全国各地に立地し、国全体の電力消費量は10%増程度にとどまるとしても、地域では大きな影響が懸念される。

グッドマンジャパンによる事業計画イメージ図(2022年8月つくば市提供)

地域には大きな影響

つくば市では、高エネ研南側の約46ヘクタールに、オーストラリアの多国籍企業グッドマンジャパンがデータセンターと物流施設をつくる計画を立てている。データセンターの規模は、最初の1棟目は受電容量5万キロワット(50メガワット)。これだけでも大きいが、最終的には5万キロワットの20倍の、受電容量100万キロワット(1000メガワット)の計画になる。発電所でも、設備容量100万キロワットはかなり大きい。日本でも有数の規模のデータセンターだ。

1棟目はすでに着工し、2年くらいで完成して運転を開始するという計画を昨年、つくば市議会に示しているが、その後の建設スケジュールは示されていない。市議会の説明資料では、データセンターがどれぐらい電気を使って、どれくらい二酸化炭素(CO₂、温室効果ガス)を排出し、どれくらい排熱があるのか、夏の暑い時の排熱による周辺地域の気温上昇予測なども説明がない。

途方もない量

データセンターではないが、情報通信業で一番大きな東京都多摩市の通信施設から排出される二酸化炭素は年間14万トンになる。一方、公害調停にもなっている東京都昭島市のデータセンター計画では、二酸化炭素は多摩市の施設の15倍ぐらい、現在の昭島市全体の排出量の4倍から5倍の二酸化炭素を排出するということで地域で大きな問題になっている。

一方、今回つくばで計画される全体受電容量100万キロワットのデータセンターが仮にできると、昭島市の施設の二酸化炭素排出量のさらに2倍以上、1カ所の施設としては日本最大級になる。

100万キロワットのデータセンターがつくばに完成した場合の電力消費量、二酸化炭素排出量、排熱量がどれくらいになるかを、年間を通じて容量の90%出力の運転で試算すると、電力消費量は約80億キロワットアワーになる。これは、人口120万人の政令指定都市で工業地帯もある川崎市、人口140万人の神戸市、人口200万人近い札幌市、人口150万人の京都市、工業都市の北九州市などに匹敵する電力消費量になる。都道府県の消費電力と比較しても、長崎県、愛媛県、沖縄県、山形県、青森県全体と同じくらいの電力を消費する。

つくばの巨大データセンターの二酸化炭素排出量と電力消費量の比較(歌川さん提供)

二酸化炭素排出量は、現在のつくば市全体の2倍の二酸化炭素を、1カ所のデータセンターが排出することになる。すべて完成すれば、今の市全体の排出量が3倍に増える。つくば市内にはエネルギーをたくさん使う施設がある。研究所、大学、電気炉の製鉄所も市内の工業団地にある。これらを含むつくば市内のあらゆる工場、オフィス、大学、研究所、家庭、車の2倍の二酸化炭素排出量が1カ所のデータセンターから排出されると予測される。排出量は、都道府県では鳥取県全体や高知県全体と同じぐらい、県庁所在地では宇都宮市、政令指定都市では神奈川県相模原市と同じ規模になる。電力は現状のキロワットアワー(kWh)あたり二酸化炭素排出量で計算している。

排熱が地域に影響

地域にどのような影響があるかだが、まず排熱が懸念される。データセンターではIT機器、いわばコンピューター機器が大量の電力を消費し、熱くなるので、機器を冷やすことが必要になる。冷却方法は、巨大なエアコンのような設備で冷やす「空冷」と、水または特殊な液体を循環させて冷やす「水冷(液冷)」の二つの方法があるが、事業者はこれまで冷却方法や排熱量などを公表していない。

今、日本全体で家電や車なども含めて、エネルギー消費は残念ながらそんなに効率のいいものではなく、有効利用は3分の1程度で残りは排熱されている。つくば市で100万キロワットのデータセンターが全部完成し、現在国内で主力の「空冷」で冷却する場合、市全体で出る排熱を全部合わせた量の2倍ぐらいの排熱量が出ると予測される。

つくばのデータセンターとつくば市全体の排熱量比較(歌川さん提供)

夏の一番暑い7月から9月の間、去年、つくば市館野の気象台で猛暑日(最高気温35度以上)が22日間観測された。ここ数年、最高気温が35度を超える日が毎年、年間20日間ぐらいある。

気象台の気温を測る場所は、高さ1.5メートルの芝生の上。周囲の条件の影響を受けないように測定しても35度以上が観測される。大穂地区は工場やオフィスビルが多い地域ではないが、舗装道路の上など、私たちは気象台で測定された気温よりもう少し高い気温を猛暑日に経験している。これに大きなデータセンターの排熱が加わると、気象条件によっては周辺地域の気温がさらにプラスアルファになる可能性がある。

熱中症のなりやすさ加速

これは地域の体の弱い方、お年寄りの方、小さな子供とか、そういった健康弱者の方々の熱中症など健康影響を加速する可能性が懸念される。そうならないように事前に考えなければいけない。

猛暑日の気象条件の中で、排熱により地域の気温が実際に何度上がるのか、どのくらいの範囲に影響が出るのかを調査して評価し、データを検証して熱中症増加などの健康影響を考える、健康弱者の方に影響・被害が出てからではなく、事前に調べ、懸念が大きいことがわかったら追加対策を考えなくてはいけない。

東京で計画されているデータセンターの排熱について住民グループが試算をした。東京はヒートアイランドの中にある。そこに巨大データセンターが住宅地に囲まれた用地にできて排熱が地域に出ると、猛暑日の気温がさらに3度上がるという試算があった。つくば市の場合は都市ヒートアイランドではなくデータセンターの周りは住宅密集地ではないものの、つくばのデータセンターの規模はその試算がされた東京のデータセンターの4〜5倍なので、つくば市での排熱とその周辺への影響を事前に予測することが必要だ。

地下水冷却でも影響の恐れ

データセンターの冷却は、空冷ではなく、水で冷却をする「水冷」の可能性もある。この技術の方が空冷よりエネルギー効率が良い。ただし水冷技術を採用した場合、使用する水に課題がある。つくば市全体の排熱の2倍の排熱量を、水道でなく地域の地下水で冷やすと、地域の地下水が温まる可能性がある。これが地下の水環境や地下水の流れなどに影響を及ぼし、飲料水に使われている井戸の周辺で地下水温が上がるだけでなく、流れが変わるなどの影響が出る可能性もある。地下水の流れや地下の環境はよく分かっていない。影響を事前に調査・評価し、必要な対策を検討しなければならない。

次ページに続く

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検査を「特別なこと」にしない 筑波大教員ら、土浦で無料の性感染症検査

性感染症の検査を、後ろめたさや怖さを伴う「特別なこと」ではなく、誰もが受ける健康管理の一つにしたい―。筑波大学医学医療系准教授の堀愛さん、助教の井坂ゆかりさんらが土浦市内で、HIVや性感染症を無料・匿名で調べる「ゆるっと大人の性感染症検査」に取り組んでいる。 指定のサイトから事前予約が必要で、手続きを終えると受診会場の案内がメールで届く。尿・血液検査でHIV、梅毒、淋菌、クラミジアの感染を調べることができる。結果は当日、知ることができる。8月10日、6回目の検査会が開かれた。 堀さんらが問題視するのは、検査を必要としながら、受ける機会を持てない人が少なくないことだ。HIV感染に気付かないまま、エイズを発症して初めて受診する患者もいる。現在は治療が大きく進歩し、感染を早く知り治療を続ければ、発症を防ぎながら生活することができる。「もっと早く分かっていればと思ったこともある。大人になって性的なパートナーができたら、誰でも一度は検査を受けた方がいい。そんなメッセージをもっと伝えたい」と堀さんは言う。 記者も受けてみた 8月10日、実際に検査の様子を知ろうと、記者も検査を受けてみた。会場は、JR土浦駅近くの建物内に設けられた特設スペース。具体的な場所は、検査を受ける人への配慮から非公開にしている。会場にはポスターなどの掲示もない。 受け付け開始は午前10時。取材を兼ねる記者は一般受け付けが始まる15分前から手続きを始め、10時前には検査を終えた。早ければ5分ほどで終えることもできる。予約時に本名を伝える必要はなく、会場でも事前に伝えていたニックネームと予約番号を確認するだけで受け付けは済んだ。尿検査用の採尿キットを受け取ると、案内に立っていたのはポロシャツを着た関係者だった。白衣を着ないのも、受診者の心理的な負担を軽くするためだという。入り口と出口も別々に設けられ、受信者同士が顔を合わせないよう配慮されていた。 採尿を終えると、パーテーションで一人ひとりの空間が区切られた待合室に案内された。3メートルほどの間隔でパイプ椅子が3脚並び、ここでも受診者同士が顔を合わせることはない。椅子に座って待つ間に、壁に貼られたQRコードをスマートフォンで読み込み、検査への同意と簡単なアンケートに回答する。まもなく係員に案内され、隣接の検査スペースで採血を受けた。担当するのは、筑波大学附属病院に勤務する看護師2人だ。 会場から少し離れた駅直結の複合施設ウララには、筑波大で看護を学ぶ学生2人が啓発ブースを設け、行き交う人に企画のチラシ入りポケットティッシュや、企業の寄付による無料コンドームを配りながら周知していた。関心を持って足を止めた人には、予約状況を確認しながらその場で当日受け付けも行うという。 この日は22人が検査を受けた。予約は過去最高となる27人。当日受け付けを含めれば最大40人まで対応できるといい、これは検査結果をその日のうちに通知できる上限の人数だという。「検査を希望する人は、何かしらの心配事を抱えている場合もある。時間を置かずに結果を伝えることが大切」と井坂さんは説明する。検査結果では、「陰性」か「要受診」がメールで通知される。「要受診」の際はオンライン上で、プロジェクトに賛同する近隣医療機関への紹介状をダウンロードすることができ、電話予約の上、紹介状を持参することができる。 尿・血液検査自体は一般的な健康診断と変わらない。むしろ採血に必要な血液量はより少なく、かかる時間も短かった。待ち時間を含めても、10分以内で終えることができる。採血と検尿だけであれば、通常の健康診断でも行われる検査方法だ。一部の健診機関では希望すれば定期健診に組み込める仕組みもあるようだが、より一般的になるとよいのではないかと感じた。検査結果は、その日の午後5時にメールで届いた。 「関心はあるが、機会がない」 取り組みは2025年度に始まった。堀さんや井坂さんら筑波大医学医療系の教員が中心となる3年間の研究プロジェクトの一環だ。最初の検査は同年11月、筑波大学の学園祭で実施した。2日間で85人が受検し、アンケートでは76%が性感染症の検査を初めて受けたと答えた。「関心はあっても、機会がなければ受けない人がほとんどだったのだと思う」と堀さん。予想を上回る人数に、検査を生活圏に持ち込む意味を実感した。「地方では、アクセスがとにかく問題になる。これまで、本来受けてほしい人の目線に立てた検査を提供できていなかった」と堀さんは言う。 大都市ではNPOや医療機関による検査イベントがある一方、茨城などでは無料検査の機会が保健所に限られがちだ。会場が駅から遠い、実施曜日と仕事の都合が合わないなど、受けたくても利用しにくい人がいる。そこで、土浦駅周辺を会場に選んだ。市内の歓楽街で働く人やその利用者、決まった店に所属せず各地を移動して働く人などは、専門機関での検査につながりにくい可能性がある。「実態が分からないからこそ、まず土浦でやってみよう」と考えた。 今年1月から土浦市内で検査をはじめ、8月10日で6回目を数えた。学園祭を含めたこれまでの受検者は延べ200人近くにのぼる。最近は土浦会場を繰り返し利用する人も現れている。「定期的に、気軽に検査を受けてほしいという目的でやっているので、リピーターが来てくれるのはうれしい」と堀さんは話す。 「自分の体を知れてよかった」と思える検査に 堀さんらが検査と同じくらい力を入れているのが、性感染症にまつわるイメージを変えることだ。性感染症には、感染した人の行動や生き方を責めるような偏見がつきまとう。後ろめたさを感じ、結果を知ることを恐れて検査から遠ざかれば、治療の開始が遅れ、他の人に感染を広げる可能性もある。 「偏見に対処するには、ポジティブなメッセージを出すことが大事」。目指すのは「自分の体のことを知れてよかった」「思ったより簡単に受けられた」という前向きな受け止め方を広げることだ。「後ろめたい気持ちを抱えて、自分から検査を遠ざけてしまうのは、すごくもったいない。そういうことを気にせず来てほしい」と堀さんは話す。 検査は、感染を疑われる人だけが受けるものではない。感染していないと分かって安心するためにも、自分自身やパートナーを守るためにも利用できる。学園祭や商業施設の会場では、カップルで一緒に受ける人もいたという。 受検への心理的なハードルを下げるため、会場運営では細部にまで工夫が重ねられている。受け付けでも検査を受ける理由をあえて詳しく聞かない。「普通の健康診断や献血に行くのと同じように」必要な案内だけを淡々と行うという。 広報の手法も工夫を凝らす。若者向けにはゲームのキャラクターのような「ドット絵」を用い、歓楽街を訪れる人向けにはあえて目をひく金色を配色し「無料」と書き込み「お得感」を演出する。その他に、SNSやマッチングアプリにも広告を出す。性産業で働く人の支援団体や事業者からも意見を聞き「誰が、どのような情報なら目を向けるのか」を探っている。 「茨城モデル」を定着させたい 全国のHIV検査数は、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年と比べて大きく減り、その後も増え方が鈍い。感染が早期に分からないまま、エイズを発症して初めて感染が判明する人も、報告される陽性者の約3分の1に上ると、堀さんは説明する。一方、治療は大きく進歩している。感染が早く分かり薬を飲み続ければ、発症を防ぎながら通常の生活を送ることができる。それでも「エイズは怖い病気」「検査を受けるのも怖い」という過去のイメージは根強く残る。「私たちが検査を受けてほしいと考えている人と、実際に検査を受けたい人が同じとは限らない。本当の声を聞かなければいけない」と堀さんは言う。 2026年度で2年目を迎えた。今後は実施する時間帯や場所を広げ、外国人を含め、これまで検査につながりにくかった人のもとへ出向くことも検討している。研究期間の終了後も資金を確保し、仕組みを県内各地に広げ、地域で感染を早期に見つけ、治療につなげたい。土浦での検査を「茨城モデル」として地域に定着させたいと考えている。今後は月1回の頻度で、引き続き土浦での開催を予定している。次回は9月に行う。(柴田大輔) ◆「ゆるっと大人の性感染症検査」の詳しい情報は特設サイトへ。 ◆保健所が実施している無料の性感染症・肝炎検査の情報はこちら。