1棟目が着工
外資系物流不動産会社「グッドマンジャパン」(東京都千代田区、グレゴリー・グッドマン社長)の特定目的会社が2022年につくば市土地開発公社(飯野哲雄理事長)から購入した同市大穂の約46ヘクタールで今年2月、データセンターの建設が始まった。着工したのは受電容量5万キロワット(50メガワット)の1棟目で、建築計画概要書によると、建築面積約1万2600平方メートル、延床面積約3万7900平方メートル、地上4階建て、高さ38メートルの巨大データセンターが2028年1月末に完成する予定だ。
同社のホームページによると、将来的には敷地西側に20倍となる受電容量100万キロワット(1000メガワット)のデータセンター群が集積する計画だ。これに対し、つくば市内の研究機関に勤務し温暖化対策を研究する歌川学さんは、すべて完成すればつくばは国内最大級、現在稼働しているどこよりも大きいデータセンターになると指摘する。

歌川さんの試算によると、100万キロワットのデータセンターが稼働すれば、人口26万人規模のつくば市全体で現在使用されている電力消費量の3倍以上の電力をデータセンター1カ所で使い、現在、市全体で排出されている2倍の二酸化炭素を排出し、市全体の排熱量の2倍の排熱がデータセンター1カ所から排出されると見込まれる。電力消費量、二酸化炭素排出量、排熱量いずれも途方もない規模だ。
特に排熱について歌川さんは「高温で風が弱いなどの気象条件の時に、データセンターからの排熱で周辺地域が高温になる可能性があり、熱中症が増えるなど健康弱者に影響が出ることも懸念される」という。

排熱は、高温になったコンピューター機器を冷却する際に建物の外に出される。機器の冷却方法は、①巨大なエアコンのような空調設備で冷やす「空冷」と、②水または特殊な液体を巡回させて冷やす「液冷」の二つの方法がある。事業者のグッドマンジャパンは現時点で冷却方法や排熱量などを公表しておらず、周辺地域の気象にどのような影響が出るかは不明だ。
歌川さんによると、空調で冷却し大気中に排熱をそのまま放出する場合、市全体の排熱量の2倍という途方もない排熱がデータセンターから出るため、周辺地域では、7月から9月の夏の一番暑い時期に猛暑日(最高気温35度以上)になる日数が増える恐れがある。住民の健康、とりわけ高齢者、病気療養中の人、就学前の子供、児童など健康弱者への影響を検討する必要があると指摘する。「立地地域周辺に健康弱者の施設、福祉施設、医療施設、療養施設、老人ホーム、児童・保育施設、学校などがあるのであれば、排熱の影響を予測する必要がある。100万キロワットという巨大施設では影響が広域に及ぶ恐れもあり、近隣だけでなく、もっと広域の影響も検討する必要がある」とする。さらに「気象条件によっては熱中症患者の救急搬送が増えることも予測されるので、救急搬送体制をさらに拡充する必要が生じる可能性もある」という。

一方、冷却に地下水を使う場合は、途方もない排熱量によって、地域の地下水が温まってしまい、くみ上げた地下水を地下に戻した場合、水温が上昇し、地下の水環境や水循環に影響を与え、地下水温度が上がったり、地下の流れが変わり、地域の井戸に影響を与えてしまう可能性がある。歌川さんは「地下の状況はよく分かってないだけに、事前に環境への影響を調査して評価がなされるべき」だと指摘する。
事業者のグッドマンジャパンは、データセンターの排熱問題について現時点で周辺住民に説明していない。歌川さんは「事業者が事前に、データセンターからの排熱による周辺地域の気温上昇を予測して、予測計算の想定を含め、自治体や住民に知らせると共に、専門家が検証できるように情報を共有すること、さらには自治体が情報を開示させ、まちづくり条例を運用する自治体のように地域で調停役の役割を発揮することも考えられる」と述べ、「大気汚染の光化学スモッグや汚染物質の大気汚染濃度が高くなった時の例を参考にすると、大気汚染防止法では緊急時に発電所や工場の操業を一部または全部停止する措置がある。事業者と自治体の公害防止協定で緊急時の停止措置の例もある。これにならうとすれば、夏の高温時の緊急対策として、緊急時のデータセンターの操業一部停止措置を何か定めることも考えられる」と指摘する。
対応策はあるのか。
歌川さんによると、ヨーロッパでは排熱による周辺地域の気温上昇を防ぐため、地域熱供給システムに排熱を送り、近隣の商業ビルや住宅などのエネルギーを供給する例がある。東京都では延床面積5万平方メートル以上の再開発をする場合、再開発事業者に対し、地域冷暖房の導入を検討するよう義務付けているという。またデータセンターで使用する莫大な電力について、国内で建設計画がある施設でも再生可能エネルギー100%使用を目標に掲げているデータセンターが複数ある。データセンターのユーザー側が事業の排出ゼロを名乗りたいので、排出ゼロのデータセンターが選ばれやすくなるという。
NEWSつくばは同市大穂で建設が始まったデータセンターについて、グッドマンジャパンに対し、排熱量、二酸化炭素排出量、冷却方法、地下水使用の有無、バックアップ電源などについて質問した。これに対し同社は「グッドマンは企業の社会的責任として地域社会との共生を掲げ、日本においても地元コミュニティに寄り添う良き隣人であり続けたいと考えている。そのために適宜必要な情報公開などは行っているが、重要なお客様の情報を扱う立場であることから、メディアから取材・質問をいただいた際には、回答することが可能かどうかも含め精査・調整することが必要となり、お時間をいただいている。今回いただいた質問については、ご要望の期限に間に合わせることが出来ないことから、回答を控えさせていただきます」などと回答している。(鈴木宏子)
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