土曜日, 11月 8, 2025
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【つくばセンタービル改修】㊤ 具体案、市民に説明なく

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つくばセンタービルのリニューアル案(つくば市ホームぺージより)

【鈴木宏子】つくば駅前「つくばセンタービルリニューアルの方向性案」を、市がホームぺージ(HP)で公表し、30日まで市民の意見を募集している。具体案が市民に公開されたのは初めて。

センタービル1階アイアイモールの一部に市として2カ所目のイノベーション拠点(多様な働き方を支援する場)をつくること、ノバホール西隣のつくばイノベーションプラザなどに吾妻交流センター、市民活動センターと、国際交流、男女共同、消費生活などの機能を集めた市民活動拠点をつくることなどが柱だ。センタービルのイノベーション拠点を運営し、さらに同駅周辺のまちづくりを担う、エリアマネジメント団体を新設することも検討されている。

出資金すでに予算化

一方、今年3月議会でエリアマネジメント団体を設立するための出資金6000万円と、センタービルリニューアルの基本計画策定費990万円などがすでに予算化され(3月9日付)、6月初めには同基本計画策定業務の委託業者が選定された。

工事が実施されればセンタービル建設以来のリニューアルとなるが、担当の市学園地区市街地振興室によると現時点で市民説明会を開く予定はなく、開くかどうかも決まっていない。

市はセンタービルや中心市街地で何をしようとしているのか。意思形成過程や策定過程、考え方が分かるすべての公文書を情報開示請求した。

報告書も検討委も非公表

開示資料によると、センタービルのリニューアルに向けて市内部で検討が始まったのは2018年7月。19年3月に「つくばセンタービルのありかた検討業務報告書」、20年3月に「中心市街地エリアマネジメント検討業務報告書」がそれぞれ策定されたが、内容が市民に説明されることはなかった。片やヴィジョン(18年7月)戦略(20年5月)などイメージや将来像などは公表された。

昨年7月には、エリアマネジメント団体の在り方を検討する検討委員会も設置されたが、会議は第1回目を除き非公開で行われた。

3カ所で役割分担

市が今回初めてHPで公表したイノベーション拠点(多様な働き方を支援する場)は、1階アイアイモールの一部約2500平方メートルにつくる。新施設の面積としては最大だ。リニューアル案には、働く人の交流の場、シェアオフィス、会議室などのビジネスを支援する機能等、子連れ出勤やリモートワークなど多様な働き方を支援し、働く人同士が交流できる場を整備するなどと説明されている。

市がイノベーション拠点を整備するのは、昨年9月にセンタービル近くの市産業振興センターに開設された「つくばスタートアップパーク」(年間事業費約5700万円)に次いで2カ所目となる。

名称はこれまで「イノベーション拠点」として議会に説明されてきたが、今回「働き方を支援する場」と変更された。同振興室によると、中身は議会に説明したイノベーション拠点に変わりはないという。つくば駅周辺をイノベーション拠点とする検討をしており、センタービルの考え方を分かりやすく示すため「働き方を支援」という表記にしたという。

開示資料によると、国家公務員宿舎跡地の70街区にもイノベーション施設をつくる計画がある。つくば駅周辺で計3カ所になる。3カ所の役割分担として「スタートアップパークで創業支援を行い、ある程度の大きさのオフィスが必要になったらセンタービル、さらに従業員が増えるなど企業規模が大きくなったら70街区という流れ」が検討されている。

全体事業費は不明

来年3月までに設立予定のエリアマネジメント団体には、出資金6000万円のほか、センタービルの床の区分所有権の一部を市が現物出資することも検討されている。現物出資されれば所有権がつくば市のものから、新団体の所有となる。経営がうまくいかなかった場合、センタービルはどうなるのか。市振興室によるとまだ検討されてないという。

ほかに中心市街地に新たに、こども体験施設、チャレンジショップ、賃貸住宅やシェアハウス、ゲストハウスなどの箱モノを整備し、中心市街地をイノベーション拠点にする案が検討されているが、費用は全体でいくらになるのか、エリアマネジメント団体の収支がどう想定されているのかは、市民に知らされないままだ。(つづく)

  • つくばセンタービル 筑波研究学園都市のシンボルとして37年前の1983年に建設された。2018年6月に飲食店すべてが撤退し、現在、空き店舗が目立っている。つくば市(52.86%)、ホテルオークラ(ホテル日航つくば、38.48%)、筑波都市整備(8.66%)の3者が区分所有している。

《宍塚の里山》65 初夏の里山「ぶらっと歩き」②

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上段左からムラサキシキブの花、アカメガシワの出たての葉、アカメガシワの花、下段左からニワトコの実、ヤマユリの花

【コラム・及川ひろみ】初夏には木々が次々花を咲かせます。花とはいっても目立たないものも多い中、甘いいい香りに思わず引き寄せられる木もあります。

その代表がムラサキシキブ。秋には美しい紫の実を付けることで有名ですが、花は長い雄しべの先にある黄色い葯(やく)と薄紫色の花弁が美しい。3メートルほどの高さに育ち、枝を四方に伸ばし花を咲かせています。林の林縁(りんえん)のあちこちで見られます。かじってみるとほのかに甘い。小鳥はこの実が好物。食べたあと、消化されない種を方々に落とします。

アカメガシワ(トウダイグサ科)の花もこの季節の花。春に出る若葉が紅色で、とても美しい樹です。この木はかなり大きな木に育つことから、花を見ることができるのは斜面に生えた木など、条件がよいときだけ。

この花には、ヒョウモンチョウやキタテハなど、チョウがよくやって来ます。チョウ好きな人は、この花が観察ポイントです。高木のため、撮影には望遠レンズ付きのカメラが必要で、首が痛くなるほど上を向いて撮影しているのを見かけます。アカメガシワも虫媒花(ちゅうばいか)であり、種子散布は野鳥。したがって、アカメガシワも里山の明るいところにたくさんあります。

明るいところといえば、アカメガシワは先駆植物、パイオニア植物です。裸地(らち、火事や造成など)が生まれると真っ先に生えてくる植物で、乾燥に堪え、貧栄養の場所でも育ちます。

里山には涼しい風が流れます

この時期、血赤珊瑚(ちあかさんご)を思わせる、真っ赤な実をつけているのはニワトコ。早春ブロッコリーのような蕾(つぼみ)。4月末には小さな白い花。そして今ごろ、真っ赤な実をつける樹がほとんどない中、鳥にごちそうを提供し、鳥に種を蒔(ま)かせるのがニワトコの戦略。その結果は大当たり。里山の方々で見ることができます。

そろそろヤマユリの花の見ごろの節を迎えます。この花の存在はまず香り。遠くから香ってきます。そして近づくと、大きな白い花。香りは昆虫を誘う道具。この花が咲く明るい林の中を飛ぶクロアゲハやカラスアゲハが受粉。種は風で飛び散ります。

今年は30度を超える暑さが早くも到来しましましたが、里山の中には涼しい風が流れます。しかし、体調が芳しくないときにはご遠慮ください。(宍塚の自然と歴史の会代表)

つくば市長と日本財団理事長の議事録なし 新型コロナ軽症者施設問題で

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情報公開請求に対するつくば市長名での不開示決定通知書。背景は日本財団つくば研究所跡地(5月撮影)

日本財団(東京都港区、笹川陽平会長)がつくば市南原のつくば研究所跡地に計画している新型コロナウイルス感染者の軽症者滞在施設について、同財団の尾武寿理事長が4月30日につくば市役所に来庁し、五十嵐立青市長と直接やりとりしたが、つくば市には同施設に関わる資料が一切ないことが分かった。NEWSつくばが情報開示請求して分かった。

市担当職員の説明によれば「日本財団と市長の間で直接やりとりが行われた」が「日本財団からは資料の提供が全くなかった」。「それ以降もない」という。五十嵐市長と日本財団尾形理事長とのやりとりの議事録や音声データなどの関連する資料も存在しないため開示できないという。

日本財団は4月3日、同研究所跡地に9000人規模の新型コロナウイルス感染症の軽症者滞在施設を作る計画を発表した。当初は7月末をめどに施設を設けるとしていた。これに対しつくば市の五十嵐市長は同日夜、「寝耳に水」「住民の合意を得るのは難しい」とコメントを発表した。4月6日の市長定例会見では「日本財団の構想について現在、日本財団に資料請求をしている」と表明していた。

その後、4月30日に日本財団の尾形理事長が来庁し計画を説明した。5月1日に五十嵐市長は「県外からも多くの患者を受け入れる現在の計画は受け入れることはできない旨を伝えた」とするコメントを発表した。

一方、日本財団の笹川会長は5月1日の記者会見で「昨日、尾形理事長がつくば市長と会談し詳細を話し、原則了解をたまわったと認識している」と発言した。これについて五十嵐市長は5月8日の定例記者会見で「現在の計画は受け入れることができないと(尾形理事長に)話した。日本財団からは勝手に進むことはないという話だった」と笹川会長の発言を否定した。

その後日本財団は5月18日からつくば研究所の解体工事を開始した。8月上旬までにさら地にする計画だ。今後について同財団は、第2波、第3波の感染状況を見て開設時期や運営主体などを決めていくが、準備は進めるとしている(5月22日付)。

NEWSつくばは、こうした一連の動きに関し、五十嵐市長と理事長の議事録を含め、つくば市に対して「施設運営の実施主体の検討にかかる一切の文書」の開示を請求したところ、文書が「不存在のため」不開示という決定だった。市担当職員は、存在していれば開示される音声データなどの関連する資料についても「不存在だ」と説明した。

茨城県にも同様の開示請求を行ったが、当該資料の「不存在のため」不開示だった。県は同施設に関し「日本財団から運営主体の検討に係る連絡のほか、当該施設に関する資料提供を一切受けていない」としている。

五十嵐市長は4月30日に「日本財団が勝手に進めることはない。行政の意見をしっかりと聞いた上で進めると明確な返事をいただいた」とコメントを発表した。しかし、日本財団からのつくば市や県への説明は4月30日の尾形理事長の来庁以外にはなく、日本財団は市にも県にも「意見をしっかり」聞くということは行っていない。現在は、つくば研究所跡地の解体作業のみが進行している状況だ。

《県南の食生活》14 さまざまなタケノコ

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上の竹林から根を伸ばして来たマダケのタケノコ

【コラム・古家晴美】タケノコというと、5月に掘り上げる孟宗竹(モウソウチク)を思い浮かべる方が多いかと思うが、今回はそれ以外のタケノコについて取り上げてみたい。全国的に見ると、日本には131種のタケ類およびササ類が存在する。このコラム「保存食への思い 多様な食材を楽しむ」(11月27日付)紹介したタケノコの塩漬けは孟宗竹だが、県南ではそのほか、淡竹(ハチク)、真竹(マダケ)がある。この3種が国内で採取される有用種トップ3だ。

かすみがうら市安食では、タケノコのことをよく知っている人ならば、贈った時に最も喜ばれるのは「ハチク」だと言う。これは軟らかくエグミがないので、茹(ゆ)でてあく抜きする必要がない。下茹(したゆ)で不要なので、タケノコの風味が残っていて美味しい、手間いらずというのも人気の理由かもしれない。

孟宗竹のように鍬(くわ)で地面から掘り上げるのではなく、上から40~50センチの部分を鎌(かま)で刈り取るか、手でもぎ取る。煮物にもするが、縦に薄切りにしてみそ汁に入れるのが最も美味しいとのこと。

一方、阿見町大室でマダケの竹山を所有している方は、このタケノコは細くて小さく手間がかかるので、食用にはあまり使わなかったと言う。ただし、繁殖力が非常に強く、春に3~4回刈り取りしないと1年で竹山になってしまうので、手入れをしないわけにはいかない。

私が刈らせていただいたのは、竹藪(やぶ)ではなく日が照り付けている平坦な草地だった。以前、そこは梨畑だったが、梨の栽培をやめたら上の竹山から竹が根を伸ばしてきて、マダケが毎年出るようになったそうだ。

昔は竹で小遣い銭稼ぎ

現在では、迷惑な存在になってしまった竹だが、戦後、農家でコンバインが導入されるまでは、ご年配の方のよい小遣い銭稼ぎになっていた。稲刈りをした後に稲を干すオダカケの道具として活用されていたのだ。

稲をかける部分のノセ(横棒)には長いマダケが必需品とされた。孟宗竹では節が細かく稲が引っ掛かり、また重いので支えきれなかったからだ。ノセを支える3本のオダアシもマダケだ。これらの資材は、その役目を終えると縁の下に濡れないように大事に保管され、数年間使うことができた。

稲刈りが間近になると、農家から注文が入り、おじいさんは竹を伐(き)ってから枝を丁寧に払い、節を滑らかに加工し始める。乾燥せずに青竹の状態で売り渡すが、秋以外の季節の伐採(ばっさい)は、竹の使用期間を縮めるということで、伐採は秋には限られていた。オダガケのほかに、物干用の竹竿やクネ(竹垣)など戦後の農村生活で重宝されていた。

現在、全国的に竹林の管理が環境問題となっている。メンマを食べる以外にも、タケノコや竹について考えてみる時間を持ちたいと思う。(筑波学院大学教授)

心肺蘇生のオンラインイベント開催 27日に筑波大医学生がカスミと

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カスミ筑波大学店でのリハーサルの様子(右手前列の女性が森陽愛子さん)=森さん提供

【山口和紀】心肺蘇生の方法を伝えるイベントが27日、つくば市天久保のスーパー、カスミ筑波大学店フリースペースで開催される。カラオケボックスではやりの曲に合わせて心肺蘇生をするイベントを開催している筑波大医学部5年の森陽愛子さん(2月7日付)が主催する。イベントはカスミの公式フェイスブックや同筑波大学店ツイッターなどでもライブ配信され「リアルとオンラインの融合企画」を目指す。

主催の森さんは以前から「大学生や社会人に楽しみながら心肺蘇生を学んで欲しい」とカラオケボックスで体験イベントを開催している。しかし、新型コロナウイルスの影響でボックスが使えなくなった。「医学生としての病院実習も緊急事態宣言の影響で自宅待機となっていて、何かできることはないか考えていた」と語る。

今回はリアルで企画を行いつつオンラインで配信することで人が密集しないよう工夫をした。企画は同店のフリースペースで開催されるが、ガラス張りなので外からも見学することができる。

当日は心肺蘇生に関するクイズを出したり、ペットボトルを使った心肺蘇生の体験などを行う。ペットボトルを使う体験は、家で配信を見ている人や店舗で見学をしている人にも参加してもらう仕掛けだ。実物大の模型を使った実演も行われる。

今回、カスミはただスペースを貸すだけでなく企画から配信の準備まで森さんをサポートするが、それにはきっかけがある。森さんは今年4月にカスミ広報誌「Cha-ble」で同社の小濵裕正会長と対談した。内容は森さんがコンテストで賞をもらった小論文「SDGsと企業」に関してだった。その中で小濵会長から「今度はカスミと一緒に何かやりましょう!」という声掛けがあったことが、今回のイベントに繋がった。

「コロナ禍にあって、カスミとお客様との関係性をもう一度見直す必要がある」と語るのはカスミの担当者だ。カスミではフリースペースなどを活用した地域の人々の交流イベントが次々に中止になっている。しかし、海外ではシェフが料理をライブ配信で紹介したり、経営者がライブ配信を行ったりするなどの取り組みが行われており、それが参考にされた。今回のイベントをオンラインで配信する目的の一つには、人々が容易に集まれない中で、地域が繋がっていくためのビジョンがあるという。

◆イベントは27日の17時から20分程度行われ、当日の配信は以下のURLで配信される。

《ひょうたんの眼》28 新自由主義経済からの脱却が必要

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【コラム・高橋恵一】新型コロナウイルス感染とその対応で、我が国の様々な実態があらわになったことに驚いた。まず、国民の命や生活を守るという意味で危機管理体制があまりにもお粗末だったこと。理知的な対策の方向も見いだせず、右往左往しているうちに、運よく落ち着いたということだろう。

支援金の支給など、緊急事態なら1週間もあれば、実施できるはず、というより、最優先しなくてはならないことを、業務の質もスピードも優れているはずの業者に手数料を払って外注した挙げ句、施策の成果が国民に届く時期は信じられないくらい遅れた。

「これで全てがつながりました」。テレビ番組「相棒」で、水谷豊扮する杉下右京警部が事件の真相を掴(つか)んだ時の決め台詞(せりふ)である。

日本はバブル崩壊後の社会経済対策として小泉構造改革を選び、政策のベースは、竹中平蔵氏に代表される新自由主義経済理論。聖域なき構造改革として小さな政府を目指し、役所や企業の効率化、スリム化を推進し、社会保障費を抑制し、医療機関を減らし、看護師や介護関係者の賃金を抑制した。その結果が、現在日本の感染症やその影響対策の実力である。

また、新型コロナウイルス後の社会経済構造を強化するとして、IT化、デジタル化を強化しようとしているが、ますます富の集中が進み、格差の拡大が懸念される。業務のアウトソーシングが進み、情報の寡占化が進むことになろう。

その受け皿になる企業体が、広告代理や印刷業などの施策・事業から仲介取りまとめ業に変身した企業や、本来の国や自治体が使命・ミッションとする業務を受注してしまう人材派遣業になっていて、膨大な利益を上げ、その企業体の幹部が政権と深くつながっていたり、経済財政策の指南役だと判明すると、権力の中枢の姿がよく見えてしまった。

次の時代への経済学的提言を

永く政権に影響力を持つ経済学者は、こういう時こそ、次の時代への経済学的提言をすべきだと思うが、日本には経済学者がいないのかもしれない。

世界では、社会経済分野の多くの学者が、中長期的な課題も含めて、様々な提言がされているが、それらを参考にすれば、日本は、PCR検査体制の確保など、第2波への対策とともに、経済活動の立て直しを進めるに当たって、失われた30年になろうとしている経済体質、個人消費の弱さの解消を図る必要がある。

日本の構造改革、スリム化は、人件費の抑制で実現したものである。「99%の貧困」を記したジョセフ・E・スティグリッツに言わせれば、効率化のため、スペアタイヤを積むのを止め、病院の病床稼働率を100%に維持する経営だ。

勤労者の賃金を上げるには、低賃金分野から改善すればよい。政府の意思で賃上げができる医療、介護の従事者の賃上げを思い切って実行すればよい。診療報酬や介護給付金は、政府の意思でできるのだ。もともと足りない所得層に金が回れば、消費にまわる率が高く、経済の好循環が実現するのだ。(元茨城県生活環境部長)

最盛期の産地、天童を応援 27日土浦でサクランボフェア

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天童市のサクランボ「佐藤錦」=土浦市観光協会提供

【伊藤悦子】土浦市観光協会(土浦市中央)は27日、「天童のサクランボ応援セール」として、山形県天童市で生産のサクランボ「佐藤錦」を販売する。「サクランボの王様」と呼ばれる人気品種で、甘味と酸味の絶妙なバランスが特徴。土浦、天童両市は観光物産等相互交流協定を締結している。

例年の「天童フェア」では、天童市と同市観光物産協会の職員が土浦を訪れ、土浦市と同市観光協会の職員で協力して実施していた。しかし新型コロナウイルス感染拡大の影響のため、今回は土浦市と同市観光協会の職員のみで対応する。市観光協会の浅川善信主任によると、「天童市からの移動も大変ではないか。代わりに販売することを伝えた」という。

天童市観光物産協会の堀武美主任は、電話の取材に「新型コロナウイルス感染拡大の影響で、サクランボ狩りを自粛、中止にした農家も多く、観光客も減って打撃を受けた」と答える。「今年の佐藤錦は豊作で味もかなりおいしい。特に土浦で販売する27日ごろは最盛期。ぜひ天童のサクランボを味わって」とアピールしている。

今回は贈答用1キロ詰めが50箱、200グラム入りは320パックを販売する予定。天童特産の漬物なども販売する。

天童市と土浦市は江戸時代末期、天童市内の8村が、土浦藩領だったことが縁で、2000年に相互交流協定を締結。互いに観光交流、特産品の販売を行っている。今年は20周年にあたる。

◆「天童のサクランボ応援フェア」 27日午前10時~午後3時、土浦まちかど蔵(中央1丁目)と小町の館(小野)の2会場で。問い合わせは土浦市観光協会(電話029-824-2810)

《平熱日記》64 コロナと自治会

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【コラム・斉藤裕之】この新興住宅地に越してきたある日のこと。自治会の班長なるもののお役目が回ってきた。月に1度開かれる会議は、正直気が重かった。読めばわかる配布物の説明やなんやらで、午前中の2時間が潰れる。だが、新参者の私としては黙って聞いているしかない。

元々は、となり組のようなものから発生したらしい自治会。当時は意味があったのだろうが、今や東京都の自治会加入率は5割。武蔵野市は自治会のない街として公言までしているらしい。人によっては、災害時などには重要な役割を果たすというが、そんな時は誰だって助け合うものだ。

自治会は本当に必要なのか。例えば、必要な情報はネット検索可能だし、自治体も積極的に情報を流している。そろそろ2回目の班長が回ってきそうだ。ろくに読みもしない回覧板を回すたびに、自治会の意味を考えてしまう。

ところで、人里離れた山中の家を訪ねる番組が人気という。さぞかし不便で寂しいのだろうと思いきや、案外気楽で楽しそうな暮らしぶりに、人は人生の原点を見るのかもしれない。例えば、多くの場合、ポツンと離れた家の方を麓の村人はご存じである。

翻(ひるがえ)って我が家はどうだろう。両隣の方のお名前ぐらいは存じているが、一本裏の通りにどんな方がお住まいなのか全く知らない。果たして、どちらがポツンとしているのか。

「そういえば、町会費集めに来ないね」

ちょうどこの原稿を書いている最中、たまたま今日のポツンの放送は、なんと故郷の海辺の一軒家。馴染みの風景や言葉が懐かしい。番組ではご家族が楽しそうに釣りをしている。昨年の春、弟の船に乗ってまさにこの海でカミさんと釣りをした海だ。

新型コロナで生活は変わるのか? 仕事や家族、社会、教育、生き方…。自粛中に家の中の断捨離(だんしゃり)をした人は多いと聞くが、世の中の仕組みもこの際変えていくいい機会かもしれない。例えばリモートワークが可能ならば、こんな海辺の近くに住むことも不可能ではないし、地方に首都機能を分散させることもいいのではないか。

そんなことを考えていると、余計に自治会なるものが不要のものに思えてきた。そもそも入脱会は任意なのだ。このたまに遭遇する「任意」という半ば強制。そうだ、「長いものには巻かれろ」的な時代とはオサラバだ。ということで、思い切って班長宅に赴き、脱会の旨を伝えた。やーれ、せいせいした。

「そういえば、町会費集めに来ないね」とある日のカミさん。実はかくかくしかじかで、自治会を脱会したことを打ち明けた。するとカミさん、「今すぐ取り消してきて!」と切れ気味。公僕のはしくれであるカミさんの立場としては、自治会は触れてはいけない琴線であった。

結局、渋々班長さんに再入会の申し入れをした不甲斐ない私なのであった。少しイギリスの苦悩が分かった? シンクグローバル、アクトローカル! いや、もっとパーソナルでいいんじゃない!(画家)

新たにチョウザメ養殖研究 県内水面支場に実験棟など完成

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完成した魚類飼育実験棟(行方市)=写真は県農林水産部漁政課提供

【山崎実】霞ケ浦など湖や河川の漁業資源の管理や養殖技術の開発などに取り組んでいる研究施設、県水産試験場・内水面支場(行方市玉造甲)の敷地内に、魚類飼育実験棟と研究棟が完成し、業務を開始した。

飼育実験棟は重量鉄骨造り平屋建て864平方メートル。研究棟は重量鉄骨造り2階建て604平方メートルの規模。総事業費は7億3369万円。地方創生拠点整備交付金を活用し、県農林水産部が2018年度から整備を進めてきた。

2棟は年々高度化する研究手法や、新たな研究ニースに対応できる施設として整備した。霞ケ浦のワカサギ資源やコイ養殖の研究など、これまでの研究に加え、新たにチョウザメ養殖などの研究に取り組む。

飼育実験棟内の水槽=同

特徴として魚類飼育実験棟に、魚病の感染試験が可能な区域と、無病魚専用区域を分離するなどのゾーニングの考え方を導入した。また水槽の自由なレイアウトを可能とし、多様な飼育実験に対応できるようにした。

さらに新たに魚病検査や専用の分子生物学実験室を整備し、研究を高度化する。具体的には魚のヘルペスウイルスのPCR検査などを行う。県内では霞ケ浦に導入されているコイの小割式(湖内にいけす網を設置)養殖業が2003年、コイヘルペスウイルス(KHV)病の発生で壊滅的な被害を受け、生産休止に追い込まれたなど苦い経験がある。

それだけに魚類飼育実験棟と研究棟の新設は、水産振興の研究、開発における拠点的施設の性格だけでなく、高級食材・県産キャビアの開発にも本格的に取り組むことから漁業関係者の期待は大きい。

茨城アストロプラネッツ、神奈川に黒星 土浦でホーム開幕戦

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6回裏2死1塁、上杉泰賀が右越え3塁打。丸茂弘汰を迎え入れる=J:COMスタジアム土浦

【池田充雄】プロ野球独立リーグのルートインBCリーグで活動する、茨城アストロプラネッツのホーム開幕戦が21日、土浦市川口のJ:COMスタジアム土浦で行われた。今季リーグ初参戦の神奈川フューチャードリームスに2-6で敗れ、前日のアウェー開幕戦と合わせ、1分1敗という悔しいスタートとなった。

4回に一挙4点を失う

新型コロナの影響で約2カ月半遅れの開幕を迎えたBCリーグ。試合前の挨拶で茨城の上杉泰賀主将は、野球ができる喜びと医療関係者への感謝を語った。

3回裏2死
3回裏2死1・3塁、井川翔が中前へ適時打を放つ

ホーム開幕戦の先発を務めたのは小沼健太投手。自粛期間中も状況をポジティブにとらえ練習に専念したという。「オープン戦の延長のつもりで初回から飛ばした」と3回まではいずれも3人で抑える立ち上がり。3回裏に茨城は2死一、三塁から井川翔のタイムリーで1点を先制。低めのボールをうまくすくい上げ、センター前へと運んだ。

しかし4回表、神奈川の逆襲に遭う。連続ヒットで無死一、三塁とされ、3番打者の打球は併殺コースだったが二塁・松浦大知のファンブルで同点。さらに2点タイムリーと犠飛で計4点を失う。「走者が出て考えすぎて配球がばらばらになり、そこを突かれてあたふたしてしまった」と小沼。自粛明けで実戦不足の影響が出たようだ。

茨城は6回裏、上杉主将の右越え三塁打で1点を返し2-4とするが、9回表には3人目の日下滉貴が無死一、二塁から右越え二塁打を浴び、ダメ押しの2点を失って試合を終えた。

5-5で引き分けた前日の埼玉武蔵ヒートベアーズ戦(熊谷さくら運動公園野球場)と合わせ、1分1敗のスタート。坂克彦監督は「相手が必死に抑えようとしてくる中、漠然と打ちにいっても勝てない。自分の打席だけでなく9人全員の対戦データを活用し、頭を使って打ち崩してほしい」と打線にさらなる奮起を促した。

5回表1死2・3塁、小沼健太が本塁上で走者をタッチアウト

独自の運営テストも実施

試合は無観客で開催されたが、スタンドにはチーム関係者のほか、「有観客を想定した運営テスト」に協力した約15人のモニター観戦者がいた。

このテストは茨城アストロプラネッツ独自の試み。来るべき有観客試合の開催に向けて、観客の安心安全を確保しつつ試合を盛り上げられるよう、どのような問題点があるのか把握し、改善につなげるため実施した。

内容は入場から観戦後の退場までの導線確認や、ソーシャルディスタンスを保った観戦時の座席感覚の確認、適切な応援方法の確認など。観戦者はファンクラブ会員から募集し、試合後はインターネットでアンケートに答えてもらい、その結果を対策に反映させていく。

テストは今後も毎回のホームゲームで行っていき、7月10日を目途に有観客試合に移行したいとの考え。新型コロナウイルスの収束度合は地域によって異なるため、判断は各球団に任されている。

《邑から日本を見る》66 コロナ後の食料自給対策を

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【コラム・先﨑千尋】新型コロナウイルスのまん延による緊急事態宣言はひとまず解除された。しかし、世界各国の状況を見ると、終息には程遠く、わが国でも第2波、第3波が押し寄せる可能性が高い。

平時の時、首相も自治体の長も極端に言えば、誰でも務まる。法律、予算があり、わが国では、統治機構もしっかりしているからだ。しかし、緊急時にはそうはいかない。東日本大震災、東京電力福島第1原発の事故の時がそのいい事例だ。誰も遭遇したことがない。予算も人もマニュアルもない。トップは、瞬時にどう対応するかの判断を下さなくてはならない。

今回の新型コロナウイルスの来襲による初期対応は、国により対応がまちまちだったが、わが国ではどうだったのか。これまでのところ、わが安倍首相は落第だとのちに評価されるのではないか。ダイヤモンド・プリンセス号の対応に始まり、小中高の突然の閉校、アベノマスクの全戸配布、10万円の給付など、やることなすことすべてが首相とその側近によるきまぐれ、場当たりで進められた。

わが家にもやっとマスクが届いたが、農業専業なのでほとんど出かけることはなく、「不要不急」の代物だ。必要度が高い病院などに配った方がいいと考えた。そのマスクだが、国産ではなく、中国から輸入されたものだそうだ。一時、高値で転売されていたころがあったが、緊急時に手に入らないことから、これが食料だったらどうなっていただろうか、と余計な(?)心配をしたのだ。

世界経済はグローバル化し、カネさえあれば、いつでも買える世の中になっていた。コロナのまん延が瞬く間に広まったのもグローバリゼーションのせいだ。しかし、今度のコロナ騒ぎで国境閉鎖があちこちで行われ、わが国でもまだ続いている。

休眠田畑を復活させ食糧備蓄を倍増

問題は医療物資だけではない。国連食糧農業機関(FAO)や世界保健機関(WHO)は、人の移動禁止による労働者不足により、農産物の生産量が減少し、食料不足になると警鐘を鳴らしている。世界的な食料不足ともなれば、各国は医療物資以上に自国第一主義に走るのが目に見えている。政府は自国民を飢えさせるわけにはいかないのだ。

農水省のデータでは、わが国の食料自給率はカロリーベースで37%、生産金額ベースで66%、飼料自給率はわずか25%と先進諸国で最低水準であり、国境閉鎖、輸入が止まれば国民の多くは「食うに困る」状態に陥る。現に、外国人の労働者に頼っている大規模農家は、人の行き来がストップしており、どこでも悲鳴を上げている。

宇沢弘文さんという経済学者がいた。彼は「社会的共通資本」という言葉を広めたことで知られている。「一つの国ないしは地域に住む人々が、豊かな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間として魅力ある社会を持続的、安定的に維持することを可能にするような自然環境や社会的装置」のことを言う。

自然環境にはいろいろ含まれるが、農業はその基本になる。今日、農業がずたずたに切り裂かれ、農民が農業では生活できないところまで追い込まれている。休眠田畑を復活させ、食糧備蓄を倍増する。そのための生産者を国策として援助する。そうしない限り、食料危機に対応できない。今ならまだ間に合う。(元瓜連町長)

《霞月楼コレクション》2 浦田正夫 土浦疎開を機に新たな作風開花

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【池田充雄】日本芸術院会員、日展事務局長などを務めた日本画の重鎮、浦田正夫は土浦とも縁が深い。1910年(明治43)熊本県山鹿市生まれ。代々画家の家系で祖父は浦田雪翁、伯父は高橋廣湖、父は浦田廣香。

題・年代不詳(1945年に描かれた類似構図の写生があるため、同年以降の制作と推察される)絹本彩色軸装 43×50.5cm 霞月楼所蔵

1915(大正4)年、父に連れられ上京。中学卒業後は画家を目指し、伝統の大和絵に近代的な造形感覚を加味した「新興大和絵」を唱えた松岡映丘に入門。並行して岡田三郎助らに洋画も学ぶ。東京美術学校日本画科に入学し、在学中の1933(昭和8)年、第14回帝展に「展望風景」で初入選。その後も帝展や文展などで受賞を重ねた。

美校卒業後は同じ映丘門下の山本丘人、杉山寧らと瑠爽画社(るそうがしゃ)を結成。後にその活動は一采社(いっさいしゃ)に引き継がれる。正夫は両団体を通じて中心的役割を果たし、仲間と共に新しい日本画の創造に取り組んでいく。

戦後の美術復興を土浦から始める

浦田正夫

1945(昭和20)年、空襲で池袋の家を焼失した浦田一家は藤沢村(現土浦市藤沢)に疎開。1948(昭和23)年には栄村(現つくば市上境)、1951(昭和26)年には土浦市内へ転居した。その間、正夫は永田春水らと県南美術協会を設立するなど地域の美術復興に貢献。栄公民館報の表紙絵も担当した。1953(昭和28)年には東京に戻るが、その後も県展審査員などの形で茨城との縁は続いた。

1951(昭和26)年から山口蓬春に師事。蓬春も古典的な大和絵から出発し、西欧近代絵画を取り入れながら新しい日本画を模索していた一人だった。

この頃から正夫の作調も大きく変化する。端緒となったのが1952(昭和27)年の「牛」だ。当時、土浦市下高津の国立霞ケ浦病院(現霞ケ浦医療センター)に入院中、窓外に見える牧場の牛を数多くデッサンした。まず生き物としての牛を研究するために描き、次に構図や色彩を考え、試行錯誤を重ねながら作品に落とし込んだという。

自然の風景を柔らかな表情で描く

「牛」1952年 絹本彩色額装 第8回日展出品 212×227cm 茨城県近代美術館所蔵

疎開先に土浦近郊を選んだのは、絵を描くのに必要な環境を考えた結果でもあった。朝昼晩と姿を変える風景があり、水辺や田園の音があり、土地の人情すら感じられる。そうした自然のすべての要素と一体となりながら、自身の琴線に触れた美を絵筆によって定着させていった。

土浦を離れてからも北関東や東北の自然に題材を求め、特に蓮のある水辺の風景は生涯の重要なモチーフになった。水彩画を思わせる柔らかな色彩とタッチを得意とし、一見すると無造作に描き上げたような印象の作品も、実は「牛」と同様に多くのデッサンや下絵の工程を経て、綿密な計算が施されている。

神龍寺障壁画に最期の思いを託す

1998(平成10)年に落成した神龍寺(土浦市文京町)本堂には、正夫と弟子で養女の浦田由佳子の手による障壁画がある。

正夫は1995(平成7)年に依頼を受けると、土浦での日々を思いながら構想を練り、写生など取材を重ねていたが、肝臓がんのため1997(平成9)年11月に87歳で他界。残された小下図を元に由佳子さんが制作を進め、完成させた。

神龍寺障壁画のうち「白梅」「太陽」 1998年

障壁画は全部で39枚。大間天井に「龍」、外陣3室には「松」「白梅・太陽」「紅梅・月」、室中には「蓮花」と杉戸の「竹」、室中脇間には「赤牡丹・白牡丹」がそれぞれ描かれている。由佳子は「小下図には部屋の大きさに対してふさわしくないものもあり、大幅に変更せざるを得なかったが、義父の思いは引き継ぐことができたと信じている」と話している。(文中敬称略)

  • 取材協力・参考資料▽茨城県近代美術館▽宝珠山神龍寺▽浦田由佳子氏▽図録「現代作家デッサンシリーズ浦田正夫展」(1987年、朝日新聞社)▽図録「茨城近代美術の精華」(1992年、茨城県近代美術館・茨城県つくば美術館)▽図録「浦田正夫の世界展」(2000年、茨城県近代美術館)▽桜村史下巻
  • シリーズ協賛 土浦ロータリークラブ 土浦中央ロータリークラブ

《沃野一望》16 藤田小四郎の6 天狗壊滅

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藤田小四郎像=筑波山

【ノベル・広田文世】
灯火(ともしび)のもとに夜な夜な来たれ鬼
我(わが)ひめ歌の限りきかせむ とて

豪雪の蠅帽子(はえぼうし)峠を越え、越前国(現在の福井県)へ入った天狗党の一党は、ここでついに、行く手の葉原(はばら)宿に布陣する加賀藩に降伏した。加賀藩士永原甚七郎の命がけの説得に応じた理由は、加賀藩に先陣を命じた一橋慶喜の出陣だった。京へ近づけば近づくほど露骨に拒絶の姿勢をつよめる慶喜のまえに、矛を収めざるをえなかった。天狗党の頼みの綱は、儚(はかな)い幻像だった。

さらに天狗党は、あまりに激しく行動力を消耗しつくしていた。天狗党の気力と体力は、豪雪の峠越えで極限にまでそがれていた。誰もが、「これ以上の進軍は無理」と肌で感じていた。

天狗党は、加賀藩兵に武器を差し出し、捕らわれの身となる。ついに、幕府軍との全面戦闘を展開せぬままの降伏だった。

心情的に天狗党に肩入れしてきた加賀藩兵は天狗党を、できうる限りの厚遇で迎え入れる。北陸の魚とたっぷりの白米、熱々の味噌汁。手足をゆっくりのばせる風呂は、豪雪の峠越えでおった凍傷に、なによりの治癒(ちゆ)となった。酒さえ相伴し、暖かい布団に寝ついた。

しかし、桃源郷のような虜囚生活は、長くつづかなかった。幕府の天狗党追討軍総括田沼意尊(たぬまおきたか)が越前に到着した。田沼は、加賀藩による厚遇を聞き及び激怒した。「天狗勢を縛って引き立てよ。牢に押し込めよ。反抗する者は、射殺せ」。

降伏823名中352名斬首

加賀藩側も、黙っていなかった。

「われらは、一橋慶喜様の命で出動した者です。慶喜様が京へ戻ってしまわれた以上、われらの役目はおわりました。加賀へ、ひきあげます」。幕府軍と一橋慶喜に対する、精一杯の反抗だった。加賀藩兵は、天狗勢からの深甚な謝意を背に、捕縛の役目を放棄し、加賀へ帰っていった。

幕府軍による天狗勢への過酷な処遇がはじまる。敦賀へ護送され、鰊(にしん)蔵を改造した頑丈な牢獄へ押し込められた。出入り口や窓は、すべて厚い板で塞がれ、手を入れるだけの穴から、一日二個の握り飯がほうりこまれた。ほとんど光のとどかない暗黒の獄内の中央に、大・小便用の桶があるだけ。足には、分厚い板の足枷(かせ)が釘うちされた。

元治二年(1865)二月。田沼意尊は、武田耕雲斎や藤田小四郎などの天狗党幹部25人を鰊蔵から引きたてた。かたちばかりの裁判がとりおこなわれた。斬首に処する。即、執行。

翌日から、一般隊員に対して次々と判決が言い渡された。加賀藩に降伏した823名のうち、352名が、越前国敦賀来迎寺(らいごうじ)で斬首された。筑波山に挙兵して約1年。ちらほらと、早咲きの梅がほころびはじめるころだった。(作家)

再開した「小町の館」に季節の草花 土浦中央ロータリーが寄贈

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「小町の館」の本館前を飾る、色とりどりのプランター=土浦市小野

【池田充雄】土浦中央ロータリークラブ(土浦市真鍋、菊地廣輝会長)が10日、土浦市小野の体験交流施設「小町の館」に季節の草花のプランターを寄贈した。ポーチュラカ、ペチュニア、サフィニア、インパチェンス、赤と青のサルビア、鶏頭、日日草などを寄せ植えした8基が本館の玄関前に飾られ、訪れる人を癒している。

同クラブは社会奉仕事業の一環で、市役所大屋根広場など土浦市内を花で飾ろうと活動。小町の館では本館裏の芝桜の丘や、朝日トンネル下のポケットパークの藤棚なども整備した。

今年4月に餅つきイベントを小町の館で計画していたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により中止を余儀なくされ、緊急事態宣言の解除を受けて今回の花の寄贈を実施した。「当館は4月9日から5月末まで休館し、6月2日に再オープンしたばかり。タイミングよく花を贈っていただき、来館者にも評判がいい」と館長の岡田良一さん。

同館ではそば店「小町庵」やふれあいホールなども席数を減らし、感染対策を万全にして営業再開。そば打ち体験は参加人数を減らして募集し、すでに一部は定員に達したそうだ。周辺では朝日峠のハイキングやパラグライダーにも人が集まるなど、徐々ににぎわいを取り戻しつつある。

寄せ植えに参加した土浦中央ロータリークラブの会員有志=10日、小町の館本館前(土浦中央ロータリークラブ提供)

県内企業の8割がマイナスの影響 新型コロナで

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間隔を空けて座るよう注意書きが貼られたいす

【山崎実】帝国データバンクが5月に実施した新型コロナウイルス感染症に対する県内企業の意識調査によると、全体の8割弱、79%が「マイナスの影響がある」と答えていることが分かった。

調査は5月18日から31日に県内企業368社を対象に行われ、有効回答は181社(回答率49.2%)だった。

まず新型コロナウイルス感染症による自社業績への影響については「すでにマイナスの影響がある」(56.9%=過去最高)、「今後マイナスの影響がある」(22.1%)を合わせ、全体の79%が「業績にマイナス」と回答した。

業界別ではサービス業が87.5%と最も高く、次いで製造業83.6%、卸売業79.5%、建設業73%、運輸・倉庫業71.4%、小売業57.1%などの順。

企業からは「売り上げの回復が遅れた場合、資金繰りが懸念される」(サービス業)など先行きを不安視する声が多く挙がっている。

一方「プラスの影響がある」と回答したのは小売業14.3%、卸売業12.8%、製造業1.8%など。いずれも食料品に関わる小売、卸売、製造関連で、外出自粛による家庭内消費、いわゆる「巣ごもり消費」の拡大が追い風になり、食料品業種でプラスの影響が出ている。

中小企業で融資利用進む

コロナ禍により経済活動が制御される中、自社で実施、あるいは検討している施策は何か、の質問(複数回答)には「政府系金融機関による特別融資の利用」が38.1%でトップ、次いで「民間金融機関への融資相談」(37.6%)、「雇用調整助成金の利用」(32%)などの順だった。

特に中小企業では政府系金融機関による特別融資の利用や、民間金融機関への融資相談などの資金繰り対策を大企業より進めていることが分かった。

茨城県では5月14日に緊急事態宣言が解除され、県内経済は段階的に動き出しているが、対面営業の制限、在宅勤務の継続などから企業活動の正常化、消費マインドの回復には時間がかかることが予測される。

このため調査を実施した帝国データバンクは「政府や自治体は経済再生と感染拡大防止の両立に対して具体的な施策の実行、継続的な支援を行っていくことが求められる」と分析、提言している。

《続・気軽にSOS》63 浅井心理相談室の「あるあるネタ」

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【コラム・浅井和幸】お陰様で19年目を迎えた浅井心理相談室。日常の些細(ささい)なことから、複雑で重い内容まで、様々な相談を受けてきました。

睡眠時間を確保できない時期が初期にあり、昼食をとって臨んだ午後一のカウンセリングで、クライエントが話をしているときに一瞬コックリしてしまったことがあります。今思い出しても、冷や汗ものの経験です。今回は、相談室での、そのような「あるあるネタ」をお届けします。

<その1>

カウンセリング料を受け取り忘れて、お互いが謝る変な光景。カウンセリング料は、相談終了時に手渡しでいただきます。喜怒哀楽(きどあいらく)交じりに悩みを話した後のクライエント。真剣にそれを聞いてアドバイスをする私。相談終了後は、ホッと気が緩みます。

次回の予約を受け、次を考えつつ、「お疲れさまでした。気を付けてお帰り下さい」と別れた後、ふと料金をいただいていないことに気付きます。そして、駐車場まで走って、料金をいただく。

クライエントは、申し訳なさそうに謝ります。いやいや、浅井が請求することが筋で、それを忘れていましたと謝ります。気付くのが遅く、電話でお伝えしたり、次の相談時に話をしたり、すっかり忘れていてクライエントから指摘されたり。このうっかりは、今もあります。というか、これから頭がぼけていったら、増えちゃうのかな?

<その2

お茶は何杯でもOKですよ。夏は冷たい、冬は暖かいお茶をお出ししています。精神科などの薬を服用されている方は、のどが渇きやすいので、遠慮なく、何杯でもお替わりしてください。真剣な悩みを話しているときに言いづらいと感じる方も多いので、こちらから飲むペースの早い方にはお伝えします。

この話をするだけで和む方もいます。中には、お茶を飲むことも遠慮するぐらい緊張されている場合もあります。冬のこと、あるクライエントには「相談室のお茶はこんなに熱かったのですね。いつも相談が終わるころに初めて気づきました」と言われたことがあります。

<その3

説教されたのに友人を紹介。相談には、知り合いの紹介で来られる方もいます。予約の電話に対応するときに、どこで相談室を知ったかをお聞きしますが、先日は、下記のように応えられ冷や汗をかいたものです。

「以前から何度もそちらで相談をしている〇〇さんからの紹介です。いろいろな所で相談をしましたが、そちらでは話を聞くだけではなく、アドバイスもしてくれると聞いています。〇〇さんは、アドバイスだけでなく説教もされたと笑って教えてくれました」

う~、クライエントに説教するなんて、カウンセラーの風上にも置けないやつだと思うわけです。優しく接しなくちゃだめですよねぇ。え~っと、その説教をするカウンセラーは、たぶん、私で間違いないかと。〇〇さんという名前に心当たりもありますし。気を付けなきゃなぁと考える今日このごろです。(精神保健福祉士)

スマホで小中学生の体温・体調管理 つくば市など導入 医療相談アプリLEBER

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オンライン会見に臨む(左から)伊藤俊一郎社長、五十嵐立青市長、小田川浩市長、永田恭介学長=AGREE社撮影

【相澤冬樹】医療相談アプリ「LEBER(リーバー)」を運営するAGREE(アグリー、本社・つくば市、伊藤俊一郎社長)は19日、五十嵐立青つくば市長、小田川浩つくばみらい市長らの同席でオンライン記者会見を行い、両市の市立小中学校で導入された児童・生徒向け体温・体調管理ツールについて説明、学校版「新しい生活」の標準となるモデルをつくばから提示すると意気込んだ。

両市は6月8日からスマートフォンアプリ「LEBER」を利用して体温・体調管理ができる「LEBER フォースクール」を導入した。検温結果の記録と簡単な体調の報告をセットにするツールで、入力結果は自動的に学校に送信される。

アプリには毎朝、検温を促すプッシュ通知が送られ、入力を忘れることなく体温を計る習慣づけがなされる。保護者は、厚生労働省の「新型コロナウイルス感染症等の健康観察票」に準拠した、体調に関する簡単な質問への回答を加え、データを自動送信する。書類の記載や手渡しなく教育機関に伝わったデータはグラフ化などにより容易に管理でき、教職員の負担が大幅に軽減される仕組みだ。

7月リニューアルのLEBERの新機能も紹介された=記者会見資料

「LEBER」は登録ユーザーがスマホを操作して医師と相談するアプリ。チャットスタイルの自動問診で、「痛い」「かゆい」などの症状を伝えると、これを見た医師から最速3分で回答が届き、最寄りの医療機関や適切な市販薬などがアドバイスされる。24時間365日相談できる。新型コロナの感染拡大を受け、病院での受診に悩む患者や家族からの利用が拡大、茨城県内では9月末まで無償提供されている。(4月9日付

AGREEの伊藤社長によれば、医療相談に対応する医師数は270⼈以上まで確保されており、両⾃治体で約2万6000⼈に及ぶ児童・⽣徒の家庭による登録にも⼗分な体制が整っているとした。さらに7月には「健康予報」機能を備えたリニューアルバージョンの発表も予定しているという。

児童・生徒向け体温・体調管理ツール「LEBERフォースクール 」は滑り出したばかりで、つくば市の実績は未集計だが、つくばみらい市では約4600人いる児童・生徒の77%が登録を済ませた(15日現在)。小田川市長は小学生で42%、中学生で44%にとどまっている検温の実施率向上が課題と報告した。

五十嵐市長は、学校に通う自分の子供に検温結果を聞くのが「毎朝のコミュニケ―ションになった」と言い、withコロナ時代の「新しい生活」に安心・安全を担保できるツールとして世界中の都市に送り出したいと語った。

医療相談事業には医師登録を通じて筑波⼤学付属病院が協⼒を開始したことから、同大学の永田恭介学長も会見に参加。オープンイノベーションによる全学的な学際プロジェクトである「つくば未来都市プロジェクト」に、筑波大発ベンチャー事業であるLEBERを積極的に取り込んでいく姿勢を打ち出した。

地銀とネット証券が共同店舗 「筑波銀行SBIマネープラザ」開設 県内初

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店頭で握手する生田雅彦頭取㊧と太田智彦社長=土浦市真鍋新町、筑波銀行SBIマネープラザ

【相澤冬樹】共同店舗「筑波銀行SBIマネープラザ」が19日、土浦市真鍋新町にオープンした。筑波銀行(本店・土浦市、生田雅彦頭取)が、インターネット証券大手、SBI証券の子会社であるSBIマネープラザ(本社・東京都港区、太田智彦社長)とタイアップして設けた。SBIがインターネットで取り扱ってきた株式、投資信託、債券などの金融商品を対面販売で提供する。

SBI証券は2017年から全国の地銀と提携を開始し、同行が12行目。マネープラザは15店舗目、県内では初の開設となる。SBIマネープラザが有する株式などリスク性商品を含む営業活動のノウハウと、筑波銀行が培ってきた地域の産業と生活に密着した営業活動の融合を図る。これにより、顧客は対面コンサルティング営業による質の高いアドバイスとともに、さまざまな金融商品・サービスを利用できるようになるという。

雨中のオープンセレモニーでテープカットする関係者=同

店舗は土浦市真鍋新町の「すまいるプラザ土浦」と「筑波ほけんプラザ土浦」内に併設。当初は5月中の開設をめざし準備を進めていたが、新型コロナウイルスの影響から1カ月遅れでのオープンとなった。

雨中での開店となった19日、オープン行事には生田頭取、太田社長に加え、高村正人SBI証券社長も出席してテープカットを行った。生田頭取は「筑波銀行が本店を構える土浦を足場に、機動力で茨城県の東西南北に営業を広げていきたい」、太田社長は「いっそうの地方創生に貢献していきたい」とそれぞれあいさつした。

運営はSBIの足立謙一郎店舗長ら5人体制で、同行からは2人が出向する。足立店舗長は「インターネットでは対応しきれない幅広い金融商品のニーズに対面で応えていきたい。まずは地域の富裕層を顧客に想定してるが、土浦には特に厚みがあると感じており、ここを足場に営業を広げていきたい」と抱負を語った。

◆筑波銀行SBIマネープラザは土浦市真鍋新町20-22、電話029-825-7113。営業は平日のみで、時間は午前9時~午後5時。

《電動車いすから見た景色》7  それぞれのマスク事情

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マスクをした筆者

【コラム・川端舞】もはや外出時のマスクは常識になりつつある。マスクをしていない人を見ると、つい冷たい視線を送ってしまう。しかし、マスクは誰にでもできるものなのだろうか。

私は脳性まひという障害のため、手足の筋肉と同じように、口の周りの筋肉も思うように動かせない。何か話そうとするとき、自分では他の人と同じように口を動かしているつもりなのだが、無意識に顔の筋肉が必要以上に動いてしまう。そのせいで、話している間に口元のマスクがどんどんずれて、マスクの意味がなくなってしまうことがある。

また、マスクをしていることで顔の筋肉を動かしにくくなり、周囲が私の話している言葉を理解するのに普段より時間がかかる。言語障害による言葉の聞き取りづらさに拍車がかかっているようだ。感染予防のためには、話す時もマスクをすることが大切なのは分かっているが、スムーズにコミュニケーションをするためにマスクをはずしたいと思ってしまう。

口元が見える透明なマスク

私以外にもマスクを不便だと感じる人はいるようだ。もともと呼吸器の疾患がある人は、マスクをつけることにより呼吸が苦しくなってしまう。知的障害者で肌の感覚が他の人より過敏な人は、ゴムを耳にかける感覚がストレスになり、マスクをはずしてしまう人もいるようだ。

聴覚障害者はマスクにより相手の口元が見えなくなることで、会話を理解しづらくなるというニュースも見た。障害者だけでなく、小さい子どもなどマスクをし続けることが難しい人もいるだろう。

最近は、私も街中でマスクをしていない人を見かけると冷たく見てしまうこともあるが、外見ではわからなくても、マスクをするのが難しい人もいることを覚えておきたい。また、聴覚障害者でも会話ができるように、マスクをしていても口元が見える透明なマスクも開発されているようだ。

それぞれのニーズに合った、ユニバーサルなマスクが今後生まれてくるかもしれない。新しい生活様式の中でも、多様性を受け入れられる社会にしたい。(つくば自立生活センターほにゃらメンバー)

使用期限過ぎた試験紙で検査 3歳児尿検査でつくば市 新型コロナで健診延期

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つくば市役所

つくば市は18日、谷田部総合体育館(同市谷田部)で17日、59人の3歳児を対象に実施した健康診査の尿検査で、使用期限を過ぎた試験紙を使用してしまったと発表した。期限を過ぎると正しい結果が出ないことがあるとして、後日、59人全員に再検査を実施する。

市健康増進課によると使用期限は4月30日だった。本来、この試験紙は3月中に使用する予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で乳幼児健診が3月中旬から休止となり、6月初旬に健診を再開後、担当者が日付を確認しないまま使用してしまったという。

例年の健診では使用期限がくる前に試験紙を使い切っていた。

市は18日までに59人全員に電話し謝罪した。再発防止策として今後は使用期限の確認チェックシートを作成し複数で確認などするとしている。

尿検査はタンパク、糖、潜血などを、試験紙を使って看護師や保健師などが会場で検査する。この日は59人のうち3人が正常値ではなかったという。

再検査の日程などについては59人に改めて連絡する。