火曜日, 1月 27, 2026
ホーム ブログ ページ 134

つくばの当事者団体、国連へ 障害者権利条約の日本審査に参加

2
メンバ―3人がジュネーブに行く「ほにゃら」事務所の様子。中央は川端舞さん

国連の障害者権利条約を日本が批准して8年。障害者を取り巻く社会環境はどう改善されたのか、締約国が条約内容を国内でどう実現しているかを判断するための、日本を対象とした第1回目の審査が、8月22日、23日の2日間、スイスの国連本部ジュネーブ事務局で開催される。

つくば市から、障害者の地域生活をサポートする障害当事者団体「つくば自立生活センターほにゃら」理事長の斉藤新吾さん(47)、メンバーの生井祐介さん(44)、川端舞さん(30)の3人が現地に向かう。8月16日に出国し、現地に滞在する8日間の間に、審査の傍聴のほか、委員に直接意見を伝えるロビー活動などを展開する。

今回の審査には、日本国内の当事者団体で構成される「日本障害フォーラム(JDF)」の構成団体などから100人以上がオブザーバーとして参加する。ほにゃらの3人も一員だ。同フォーラムはこれまで、国連の審査の判断材料となる意見書(パラレルレポート)を作成し、2019年、21年の2回、国連の担当機関に提出してきた。さらに日本の条約批准以降、審査の傍聴、ロビー活動、国内意見の取りまとめなど、条約内容を国内で実現させるために積極的に活動している。

日本の審査は20年の予定だったがコロナ禍で延期されていた。審査を踏まえて後日、条約の取り組みをさらに進めるための提案や勧告が、国連障害者権利委員会から日本政府に出されることになる。締約国は4年ごとに審査を受けることが決められている。

同条約は、障害のある人が、ない人と同様に尊厳をもち社会で生活するための権利を定めたもので、日本は14年に批准した。「障害」は人の側にあるのではなく、社会がつくり出しているという考え方(障害の社会モデル)が反映されている。バリアフリーなど、社会が障害の特性や状態などに配慮(合理的配慮)することで、障害となる障壁は解消されるという考え方を定めている。

同じ教室で学べる環境を実現したい

ジュネーブに向かう川端舞さん

「合理的配慮」が教育現場で実践されていないと話すのは、「ほにゃら」のメンバーとして渡航する川端さんだ。脳性まひによる重度障害がある川端さんは、介助者から生活に必要なサポートを受け、つくば市内で一人暮らしをしている。現在は、NEWSつくばのライターとして障害者を取り巻く環境について発信するとともに、「ほにゃら」のメンバーとして、環境を整えることで、障害のある子どもとない子どもが同じ教室で学ぶことを可能にする「インクルーシブ教育」を実現させようと活動を続けている。

条約では、障害者が健常者と同様にあらゆる教育を受けられるとし、そのために必要な「合理的配慮」の教育現場での提供が定められている。また、国内では、2016年に施行された障害者差別解消法により、公立学校での合理的配慮が法的義務となった。

一方で日本の現状は、障害のある本人や家族が希望しても普通学校に就学できないケースがあると川端さんは指摘する。要因として、障害児が就学するために必要な適切な支援体制の不足と、特別支援学校や特別支援学級など、障害児と健常児の教育環境を分けることが当たり前という社会の認識があるとし、また、普通学校に通えても必要な支援を受けられないことが多いと語る。

川端さん自身は、周囲のサポートを受けながら小学校から普通学校で学んできたが、言語障害のある自身の話を聞こうとしない教師がいた。当時は「問題の原因は障害のある自分」だと自身を責めた。しかしその後、他の障害者と出会い、権利条約を学ぶことで、問題は障害のある自分の側にではなく、障害に対する配慮がなかった学校の環境にあったと気付いた。

障害者差別解消法によって、車いすで電車など公共交通機関に乗れないことが「差別」とされ、それぞれの場面でスロープが設置されるなどの対策がなされるようになった。改善された場面は少なくない。川端さんは、これが教育現場でも当たり前になる必要があるとし「普通学校に通うことは、障害者権利条約で定められた障害児の権利であり、世界的に認められたことという認識を社会に広げたい。ジュネーブでは日本の現状を国連の審査委員に伝えたい」と力を込める。

介助者の渡航費用支援を

「ほにゃら」では、ジュネーブに向かう障害のあるメンバーに同行する介助者の渡航費用を賄うためのクラウドファンディングを、今月14日から始めた。募集期間は32日間。川端さんは介助者等の派遣費用を募っている。

募集開始から8日目(21日時点)には目標金額86万円に対し、約77万円が集まった。情報がSNSで拡散されるなど予想を超える広がりを見せ、「当初は、どんな障害があっても普通学校・普通学級に通う権利があると言うと、批判されるかもしれないと思っていた」と、川端さんは支援の多さに驚きつつ、「障害児が普通学校に通うのは『権利』だと認識してくれる人がこんなにいる日本なら、徐々に、どんな障害があっても共に過ごせる普通学校に変わっていけるだろうと、期待が持てた」と思いを語る。

「ほにゃら」事務局長の斉藤さんは「障害当事者として、審査を見届けるのは重要」とした上で、「障害者を取り巻く問題はまだまだ多い。クラウドファンディングを、多くの人に問題を知ってもらうきっかけにしたい」と話す。(柴田大輔)

◆クラウドファンディングはこちら。目標金額を超えた場合は、渡航に必要な、その他の経費に充てる。

茨城にあるすばらしい里山へのあこがれ 《遊民通信》45

2
石岡の里山

【コラム・田口哲郎】

前略

先日、石岡の辺りを車で通ったら、梅雨空が晴れて、深い緑の里山が明るくなりました。その光景があまりにもきれいなので、助手席から写真を撮りました。茨城県は魅力度最下位などと言われますが、こんなにきれいな里山があるのはすばらしいと思います。里山なんて日本の田舎にはどこにでもあるよ、と言われそうですが、どこにもあるなら、こうした里山をわざわざ京都の大原に見にいかなくてもよいわけで、「灯台下暗しはよくないな」と反省しました。

里山は日本の原風景だと言われます。江戸は大都市でしたが、パリのような近代的な西洋型の大都市がいまの形になったのは、19世紀の後半ですので、明治初期に重なります。要するに、パリ、ロンドン、東京のような、みんながすぐに思い浮かべる大都会ができたのは、たかだか150年前で、日本人が長い間住み、命をつないできたのは、里山のような農村だったと言えます。

私は転勤族の核家族家庭で育ちましたので、いわゆる新興住宅地しか知りません。ですから、里山のようなところにあこがれます。父母の実家は古くから里山にある家ですから、盆暮に親戚宅に行ったときは、その生活が垣間見えました。いわゆる田舎には、いまも古くからの共同体が残っています。超高齢社会ですから、衰退傾向にあるようですが、それでもまだまだ神社の氏子やお寺の檀家のつとめは行われているようです。

里山の共同体とは何だったのか?

田舎に移住するのがはやっていますが、都市生活者が田舎に住むと、田舎の生活の忙しさに驚くそうです。町内の寄合や入会地の草取り、寺社仏閣の行事や維持管理、消防団の訓練、地域の祭りの準備などなど。里山はつくり込まれた自然なので、維持管理が大変なのでしょう。住人の協力が必要です。

そうすると、人同士のつながりが生まれます。いままで日本は経済大国として突っ走ってきましたが、そうした人間同士の絆を古くさいものとして切り捨て、個人を尊重する個人主義がはびこりました。その結果、日本の共同体は崩壊しました。一見面倒くさく見えるつながりは、実はセーフティーネットの役割を果たしていましたので、それが無いところでは個人は孤独になります。そうすると不安になり、病んでしまう可能性も高くなります。

人間同士のつながりに大切なのは、利益になるとか、ためになるとか、お互いに成長できる関係ばかりではなく、お天気の話しかしないけれども、気楽につながっていられる気楽さが基本にあることではないでしょうか。

それは日本のどこにでもある里山のようにありふれた、地味なものかもしれません。珍しくもないからといって軽視すると、いつの間にかなくなってしまうものです。特に新興住宅地に住むような、共同体を持たない、さびしい人々をケアしてゆくには、今こそ、共同体が必要だと思います。ごきげんよう。

草々(散歩好きの文明批評家)

夏休み「調べ学習はこれで決まり!」 22 ~24日、つくばで初開催

0
阿見町立君原小学校での「アイラボキッズ」の活動風景(県立医療大学アイラボキッズ提供)

県立医療大が科学や絵本のワークショップ

小・中学生を対象に科学の実験をしたり、歴史上の科学者をテーマに絵本づくりをするワークショップが22日から24日までの3日間、つくば市天久保のギャラリーYで開催される。県立医療大学(阿見町)の「アイラボキッズ」がつくば市で初めて開催する。

同大の地域貢献研究費の助成を受けて2020年度から始まった取り組みで、アイラボキッズは同大保健医療学部の鹿野直人准教授(58)が代表を務める。これまで、科学の体験教室や、著名な科学者を紹介する絵本の作成や読み聞かせなどを、大学のある阿見町立君原小学校で行ってきた。

この夏、つくば市で開催するきっかけとなったのは、アイラボキッズの活動を紹介するウェブサイトに届いた「うちの子どもにも参加させたい」という多数の声だったと、絵本制作などを担当する絵本作家の島本真帆子さん(52)は話す。島本さんは今回の会場となるギャラリーYで、昨年9月に個展「子どもたちのための科学と医療のイラスト展」を開催した(21年9月9日付)。その際に「アイラボキッズ」を知った来場者から「夏休みの自由研究に是非」という声を聞いたことが、今回の開催につながった。

3つのテーマが用意

会場では3つのテーマが用意されている。

「ガリレオやダ・ヴィンチの絵本をつくろう」は島本さんが担当する。島本さんが準備した印刷されたイラストと文章をもとに、参加者が切り張りするなどして8ページの絵本を作っていく。

「落体の実験をしよう​」は、アイラボキッズのスタッフ立ち合いで、大きさの異なるものが同時に落下する時、スピードの違いはどうなるかなどを観察する。これまでの活動で、最も子どもたちの反応が大きかったテーマの一つだという。ガリレオが「落体の法則」を発見した17世紀当時、世間では「大きさが10倍のものは、小さいものに比べて10倍の速さで落下する」と言われていた。島本さんは「大人でも意外と分からない人がいるかもしれません。実際にどうなるか見てほしい」と話す。参加者は実験の結果を自由研究として1枚の用紙にまとめる。どうまとめればいいか、その方法についてもアドバイスする。

「ほんものの科学者に放射線について聞いてみよう」は、アイラボキッズ代表で放射化学の専門家である鹿野さんが、放射線などについて来場者の質問に直接答える。

鹿野さんはアイラボキッズの活動について「より多くの子どもたちに、楽しみながら医療や科学に関心を持ってもらいたいと活動してきた。茨城は、人口に対する医療スタッフの数が少ない地域なので、医療・科学が子どもたちの進路の選択肢になれば」と話し「ぜひ、多くの方に参加していただきたい」と今回の企画に込める思いを語る。

会場には、島本さんの絵本の原画や実際の絵本も展示し、大人も楽しめるよう工夫する。(柴田大輔)

▽参加費無料。事前予約は不要。
▽「絵本」と「落体実験」は、22日(金)、23日(土)、24日(日)の午前10時から午後6時までの間、いつでも体験できる。最終日は午後5時まで。
▽「放射線」は、鹿野さんが23日(土)、24日(日)の午後1時~3時に会場にいて、質問に答える。
▽来場者はマスクの着用、事前の検温、会場入り口での消毒が必要。会場が混み合った場合は入場を制限することがある。
▽会場のギャラリーYは、つくば市天久保1-8-6、グリーン天久保201(2階)

霞ケ浦、土浦日大、つくば秀英 ベスト8進出【高校野球茨城’22】

0
ノーブルホームスタジアム水戸

第104回全国高校野球茨城大会は20日、4回戦8試合が行われた。土浦・つくば勢は霞ケ浦、土浦日大、つくば秀英が4回戦に挑み、いずれも快勝しベスト8に進出した。準々決勝は22日行われ、ベスト4をかけて霞ケ浦はつくば秀英と、土浦日大は下妻一と対戦する。

ノーブルホームスタジアム水戸では、霞ケ浦が牛久を3−0で破った。

霞ケ浦は3回1死後、大徳岳登が左中間への3塁打で出塁すると、2死後、木村優人のレフト前タイムリーで先制した。

4回にはヒット、四球、送りバントで二、三塁のチャンスに、大塚碧人がセンター前にタイムリーを放ち追加点を入れると、さらにボークで1点が入り、3−0とリードを広げた。

投げては霞ケ浦先発の渡邉夏一が、144キロの速球を武器に牛久打線を2安打11奪三振の完璧な投球を見せ、112球で完封した。渡邉は「今日球場に着いて先発を告げられた。『自分のボールを思い切り投げてこい』と監督に言われ、初回から真っ直ぐなボールで相手の打者と勝負出来たのが良かった。腕を振って高さだけ意識して投げた。無駄な四死球を3つ出してしまったので改善していきたい」と話した。

高橋祐二監督は「渡邉がよく投げてびっくりした。人として優しく真面目でひるんでしまうので大事なところで腕を振れなかったが、今日は攻める気持ちでストライクが先攻し、カットボール、フォークボールが低めに落ちたので高さが良かった」と渡邉をたたえた。さらに「次の試合もコツコツつないで点を取り、投手中心に守り勝つしぶとい野球をする」と話した。

霞ケ浦は初戦の2回戦から3試合連続完封勝利。20日は終業式のため一般生徒の応援はなかったが、スタンドには吹奏楽部と44人のチアリーダーが気温34度の猛暑の中、熱い応援で球場を盛り上げた。(高橋浩一)

ノーブルスタジアム水戸の第2試合に登場した土浦日大は13-3で6回コールド勝ちし、2回戦で常総学院を破った科技学園日立に圧勝した。J:COMスタジアム土浦の第2試合は、つくば秀英が2-0で水戸桜ノ牧を完封した。

臭い測定し病気診断目指す 物材機構発ベンチャー つくば

5
左は、1円玉より小さい膜型表面応力センサ(Qception提供)

物質・材料研究機構(NIMS、つくば市)発ベンチャー企業、Qception(キューセプション、本社 同市千現 つくば研究支援センター内、資本金100万円)が5月に設立された。同機構の研究者でもある今村岳さん(36)が代表を務める。「ニオイを測る文化をつくる」をビジョンに掲げ、臭いを測るセンサーの販売と、臭いを測るためのコンサルティング事業などを展開する。

将来は、人や動物の呼気や汗、尿など、生体材料から出る臭いを測定し、病気の診断や健康管理を行うことを目指している。初年度の売り上げ目標は5000万円。

(左から)Qceptionの松阪秀喜 最高財務責任者、 今村岳代表、 吉川元起 最高技術責任者(同)

同機構では、研究者でもあり同社の最高技術責任者を務める吉川元起さん(45)らが、臭いを測定する「膜型表面応力センサ(MSS)」を2011年に開発して以降、センサーの実用化に向けた様々な産学官連携の取り組みを約50以上の企業や機関と共に行ってきた。センサーのチップ(集積回路の基盤)はすでに別の会社が生産し、代理店販売を開始している。

いまだに存在せず

視覚、聴覚、味覚、触覚など人間の五感を測る測定器は、光、音、振動などを電気信号に変換して測るセンサーとして、さまざまな産業分野や身近な製品に使用されている。嗅覚についても40年以上にわたり研究されてきたが、いまだに実用的な製品は存在していないという。

理由の一つとして、臭いを構成する分子は約40万種類あり、それらが様々な濃度で存在するため、機械が人間のように臭いをかぎ分けることが困難だからだ。

これまでは、ガスが吸着したときの電気抵抗の変化を測定する酸化物半導体や、臭い分子の質量に対応した周波数の変化を測る水晶振動子を用いたセンサーなどが開発されてきたが、臭いに対する感度や、複数の臭いの識別、センサーの大きさ、消費電力、振動耐性などにおいて課題が残されていた。

MSSは、大きさが1円玉より小さく超小型で高感度、消費電力が少なく、複数の臭いを識別できるなどの面で優位性があるという。原理は、臭い分子がセンサーの感応膜に吸収されたときの微小な変化を電気信号に変換し、独自に開発した機械学習とデータ解析アルゴリズムで臭いを識別する。また、感応膜の種類は、ナノ粒子、ポリマー、金属膜などがあり、複数の感応膜を組み合わせることで、さまざまな臭いを識別することが可能だ。

これまでの研究実績としては、ラ・フランスの臭いを測定し食べごろを臭いだけで識別できたり、人の呼気によってがん患者と健康な人を識別できたりと、農業、医療・ヘルスケアをはじめとするさまざまな分野での活用が期待される。

生乳の臭いで乳牛の病気を識別

今村代表はこれまで実証実験として、医療・ヘルスケアに着目し、乳牛の日常的な健康管理の手間とコストを減らすことを目的に、生乳の臭い測定によるリスク評価を行った。その結果、特定の病気について発症を識別できる知見が得られた。MSSを搾乳機に取り付けることで自動でデータを収集できるため、他の情報とひも付けることも可能だ。

今後は、呼気や汗、体臭などを用いた人間の健康管理に注目し、将来的に臭いセンサーを搭載したスマートフォンやウェアラブルデバイス(装着する情報端末)で、日常の健康管理や病気の早期発見が期待される。

今村代表は「これまでさまざまな研究・産学連携の取り組みを行ってきたが、その一方で、MSSを最もよく知る私たちがMSSを世に送り出すことが必要だと考え、今回、Qceptionを設立した。臭いセンサーを活用した、これまで想像できなかったような新しい技術がつくる明るい未来にワクワクしている」と話す。

Qceptionにはすでに複数の企業から臭いセンサーについての相談や購入についての問い合わせがあるという。(内野隆志)

「気韻生動」という写真集 《写真だいすき》10

2
「気韻生動」から、雪の日の旧土浦中学本館

【コラム・オダギ秀】またまた昔の話で恐縮してしまうが、古い写真集の話をする。ボクにとっては貴重な写真集で、見ていると、つい涙してしまうのだ。

「気韻生動(きいんせいどう)」という写真集がある。(この意味は、気品がいきいきと感じられること=広辞苑)

旧土浦中学(現茨城県立土浦第一高校)の、まさに気韻生動なゴシック本館を、昭和30年前後に卒業した奥村好太郎氏と大久保滋氏が6年にわたって撮影し、設計をした駒杵勤治(こまぎね・きんじ)と建築を請けた石井権蔵(いしい・ごんぞう)とにささげた写真集である。小さな自費出版写真集なのでほとんど知られていない。だが、この写真集からあふれる熱い思いには、ボクはいつ見ても、涙するような気持ちになるのだ。

「気韻生動」と名付けられたこの写真集は、昭和63年以来撮影され、平成6年に刊行された。

旧土浦中学校本館は、明治37年、駒杵勤治氏によって設計され、石井権蔵氏によって建築された美しいゴシック様木造建築で、90年にわたり勉学の場となっていて、昭和51年、国の重要文化財に指定された。質実剛健の時代に、この建築の斬新さ、美しさはひときわ魅力的であったろう。

今なおきちんと保存されており、この地には、この校舎で学んだという者が少なくない。だから、奥村、大久保の両氏が、雪の日の1枚、夜の1枚、花の1枚、枯れ葉散る1枚に、光に影に、どれほどの熱意を込めて撮影されたのかと思う。この校舎で学び暮らした筆者(卒業生)も、ここにこそ自分の青春があったという思いに駆られ、つい涙してしまうのだ。

四季の移ろい、桜散る学び舎、樹木のやすらぎ、凛(りん)然とした教室の1枚1枚が、ここで学んだ日々を、鮮明に甦(よみがえ)らせる。

かけがえのない写真

この写真集は、昭和が終わり平成に替わった頃の撮影だから、奥村、大久保の両氏は、ひときわ時の流れを感じながらの制作であったのかも知れない。両氏の眼には、単なる校舎ではなく、自分たちの青春、いや人生の様々な場面そのものが見えていたに違いない。だから、限りない情熱を傾けて撮影されたのだろう。

写真集のなかには、雪景を撮った日の苦労話や、設計者・駒杵勤治には実子がなかったが、81歳の養女・駒杵幸子さんが広島から駆けつけられたことなどが記されている。

建築の技存分に発揮して本望ならん死したる父は 駒杵幸子(同集序から)

写真の評価は、基本的にその技術では決まらない。大切か、佳(よ)い写真か否かは、その写真を見る者、所有する者によって大きく左右されることが多い。他人には面白くも何でもない孫や子の写真が、その親や祖父母にとっては、かけがえのない大切な写真であることが少なくないのと同じだ。

土浦一高を卒業したボクらにとっては、この写真集は、自分の人生を懐かしむにとどまることなく、人生そのものを写した、大切な写真集となっている。

あなたにも、かけがえのない写真があると思う。写真は、時の証しであったり、人生の、いや人生そのものであったり、励ましであったりする。過ぎてしまった人生のシーンを甦らせてくれる人生の証しそのものなのだ。いつまでも、写真は大切にしてほしい。

「気韻生動」という写真集が存在してくれたことに、ボクはたまらなく感謝している。(写真家、日本写真家協会会員、土浦写真家協会会長)

本町通りがマルシェ初開催 3年ぶりステージ復活 土浦キララまつり

0
2019年の「土浦キララまつり」うらら大屋根広場のステージの様子(土浦市観光協会提供)

30日から 山車やパレードは中止

土浦市の夏祭り「土浦キララまつり」が30日から8月7日まで土浦駅周辺で開催される。今年は、まつりのメーンとなる8月6、7日に、同市中央の「本町通り商店会」(来栖昌之会長)が初めてマルシェを開催するほか、土浦駅周辺で音楽やダンスなどのステージイベントが3年ぶりに復活する。

キララまつりはコロナ禍により2020年は中止、21年は七夕飾りの装飾と花火の打ち上げが実施された。市民山車巡行や七夕踊りパレード、歩行者天国は、新型コロナ感染拡大防止のため3年連続で取り止めとなる。

商店会を元気づけたい

本町通り商店会会長の来栖昌之さん=同市中央2丁目

「本町マルシェ」は、亀城公園近くの駅前通り遊歩道など、本町通りと亀城モールの2カ所で開催される。同商店会は、土浦商工会議所などが立地する同市中央、旧水戸街道沿いにあり、茶舗や理髪店、呉服店、飲食店など18店が加盟している。

同会会長で茶舗「平喜園」社長の来栖さん(51)によると、新型コロナ感染拡大による外出制限などで、どの店も売り上げが減少していることから、「商店会を元気づけたい。親子で気楽に買い物に立ち寄ってもらいたい」と、1年前から本町マルシェを年に5、6回開催したいと相談していた。

今年のキララまつりはステージイベントなどが復活し、商店街フェアなどが開催されると分かり、「本町マルシェをキララまつりから始めよう」と参加を決めた。

当日は、マルシェやステージイベントを催すほか、商店会の各店舗が店先に商品を並べて安売りするワゴンセールを行う。来栖さんは「キララまつりでマルシェやステージを行えば、本町通りに人出が増える」と話し、「路面に面したお店に入りにくいかもしれないが、ワゴンセールをきっかけに客と店主に会話が生まれて親しみもわく。店主は商品知識や専門知識が豊富でベテラン、頼りになる。本町マルシェをきっかけに気軽に買いに来て欲しい。お役に立てるはず」と語る。

来栖さんにとって、子どもの時に見た「土浦七夕まつり」(キララまつりの前身)の楽しさが今も忘れられないという。自分が感じたように、キララまつりや本町マルシェで楽しい思い出ができれば、子どもたちが大人になっても土浦に、そして本町通りにまた来てくれると期待している。「親子で楽しめるイベントにして、キララまつりを盛り上げたい」と意気込みを語る。

マルシェは、本町通りと亀城モールに33組の出店が予定されており、ハンドメード雑貨やアクセサリー、菓子などを販売する。亀城モールに設置したステージには、バンドやダンス、コーラス、おはやしなど両日合わせて17組が出場予定だ。

音楽やダンスは会場を分散

今年のキララまつりは「まちなかの『楽しい!』を探す夏」と題して催される。6、7日は会場を分散して市民参加のステージやマルシェなどが催される。

土浦駅西口前のうらら大屋根広場ステージでは、市内にある中等教育学校を含むすべての高校10校が集結する「学祭TSUCHIURA」が開催される。土浦駅東口の川口運動公園陸上競技場特設ステージではダンスや音楽、ものまねなどのステージイベントが催される。さらに同市川口、モール505ステージではダンスやスーパーボールすくいなど親子で楽しめるイベントが繰り広げられる。各会場には「健康ブース」が設置され、コロナ対策と熱中症対策を行う。

ほかに、駅周辺を歩きながら謎解きを楽しむ「まちなか謎解きキララリー」などが開催される。駅周辺の商店街では、商品の割引や、来店者、購入者にプレゼントなどを行う「商店街フェア」も行われる。6日夜8時ごろからは、打ち上げ場所を非公開にして花火の打ち上げなどもある。

土浦キララまつりは、1951年に始まった「土浦七夕まつり」と、「霞ケ浦湖上まつり」を統合して1990年にスタートした。2020年は新型コロナのため中止、昨年の2021年は開催期間を7月23日~8月8日の17日間とし「キララウィーク」として七夕飾りや花火打ち上げなどを実施した。(伊藤悦子)

夏休み自由工作のヒントに つくばで「キッズアートおうえん展」

0
「夏のキッズアートおうえん展」(右)と「夏休み宿題応援」のポスターデザイン

25日から 筑波大生が作り方紹介

筑波大学で芸術を学ぶ大学生たちが夏の自由工作のヒントになる作品を展示する「2022夏のキッズアートおうえん展」が25日から8月5日まで、つくば市二の宮のスタジオ‘S(関彰商事つくば本社1階)で開催される。筑波大生が考案した工作の実作品をパネルや動画、スライドと一緒に展示し、作り方を紹介する。

スタジオ’Sでは2016年から同大と連携し、夏と冬の年2回「キッズアート体験」を行ってきた。筑波大生が子ども向けに工作の指導をし、アート体験をするイベントだったが、コロナ禍で実施が難しくなった昨年からは、展示会形式での開催となっている。

昨年の開催では親子連れなど約260人が来場し、来場者から「このような子ども向けのイベントを開催してもらえてうれしい」、「さっそく家で子どもと工作をした」など声が寄せられた。

今夏の展示では6組、15人の筑波大生が日本画、洋画、彫塑、書、構成など領域別に6ブースで展示を行う。数量限定で日替わりの制作キット配布などもある。

スタジオ’S担当コーディネーターの浅野恵さんは「筑波大生が考案した楽しい夏の工作を今年も展示します。今回はいつも以上に学生それぞれが所属する『領域らしさ』が工作に反映されています。また、今回も日替わりの制作キット配布やブースの人気投票を実施しますので、ぜひご来場いただき、おうちで工作を楽しんでいただければ」と話す。

2019年に実施された絵画の宿題応援イベントの写真(スタジオ’S提供)

また「おうえん展」終了後の8月6日と7日には、筑波大生が小学生を対象に夏休みの習字、絵画の宿題を指導、アドバイスする「2022 夏休み宿題応援〈習字〉&〈絵画〉」を開催する。夏休み宿題応援は人気企画で、3年ぶりの開催となる。

浅野さんは「絵画や書を専門に学ぶ筑波大生が、小学生の絵や習字の宿題を優しく丁寧にアドバイスしてくれます。申し込みお待ちしています」と呼び掛けている。(田中めぐみ)

◆スタジオ’S のホームページはこちら

◆「夏休み宿題応援」は予約制で、習字、絵画ともに500円の参加費が必要。「スタジオ’S」ホームページのイベント参加申込みフォームより申込み可能。申し込み締め切りは8月2日(火)午後5時。先着。定員に達し次第、受付を終了する。

TOP

つくば国際、土浦三敗れる 霞ケ浦はコールド勝ち【高校野球茨城’22】

0
江戸川学園取手ーつくば国際大高の試合が行われたノーブルホームスタジアム水戸

第104回全国高校野球茨城大会は18日、3回戦8試合が行われ、土浦・つくば勢は、つくば国際大、土浦三、霞ケ浦が戦った。ノーブルホームスタジアム水戸ではつくば国際大が江戸川学園取手と対戦し2−4で敗れた。J:COMスタジアム土浦の第1試合は土浦三が竜ケ崎一に2‐4で敗れた。第2試合はシード校の霞ケ浦が水海道一に10-0とコールド勝ちし、4回戦進出を決めた。

江戸川学園対つくば国際大は、1−1の同点で迎えた6回、江戸川学園が、井石蓮人のレフトへのタイムリーで勝ち越すが、その裏、つくば国際大は1死後、荒井翼がセンター前ヒットで出塁すると、相手のエラーとバントで三塁に進み、北澤敬がセンター前タイムリーを放ち、同点とした。

江戸川学園は7回、内野ゴロ併殺打の間に1点を勝ち越すと、8回には井石蓮人が1死一、三塁のチャンスに今日2安打目をレフト前に放ち、追加点を入れ2点をリードした。

つくば国際大は9回2死一、二塁と反撃するも、荒井が三振に倒れゲームセット。4回戦進出はならなかった。

江戸川学園の倉田湧介投手は9回、146球を投げ抜き完投した。

つくば国際大の塩田颯主将は「声を出して、絶対に勝つ強い気持ちで挑んだが、実力が足りなかった。倉田投手にはスピード、変化球対策をしてきたが球種が多く打ち崩せなかった。秋の大会はベスト8だったのでそれ以上の成績を出したかったが負けてしまって悔しい」と号泣した。

山口幸彦監督は「打線はつながりに欠けていたが、3年生を中心によく頑張ってくれた。先発の北澤はエースとしてしっかり試合をつくってくれた。倉田投手は低めにしっかり投げていて、粘り強く集中力を切らさずに丁寧になげていたので苦しかった」と話した。(高橋浩一)

土浦三は竜ケ崎一に敗れた。霞ケ浦は水海道一を完封しコールド勝ちした。

つくば市長の宿痾 総合運動公園問題 《吾妻カガミ》137

101
つくば市役所正面玄関サイド

【コラム・坂本栄】元研究者たちによる五十嵐つくば市長リコール署名運動(7月11日~8月10日)が進行中です。解任の理由は多岐にわたりますが、一番は「議会の議決を取らず公有地を売り払うような市長は辞めさせよ」ということです。このコラムでも何度か、総合運動公園用地売却の手順のおかしさを取り上げてきました。この際、改めて整理しておきます。

リコール運動は「変節」市長への怒り

135「運動公園用地売却…の不思議」(6月20日付)では、▽前市長がUR都市整備から用地を買ったとき、名義上の取得者は市土地開発公社だった ▽しかし、借金した用地代金の返済について、議会から「市が債務を保証する」旨の議決を得ている ▽借金の元利返済も、その予算について議会の承認を得ている ▽それなのに、売るときには議会の議決は要らないという理屈は何か変だ―と指摘しました。

129「公有地売却…『逃げ』の…市長」(3月21日付)では、「市が行ったパブリックコメント(意見募集)では、(コメントを寄せた)77人のうち売却に賛成は2人、残りは反対か対案提示か分類不可でした。2択方式(賛成か反対)で分けると、賛成はたった3パーセントです」と書きました。

125「公有地売却…市の牽強付会」(1月31日付)では、「少ないサンプルで市民の声を計るのは正しくありません。そこで提案です。市民の声を聴くため、市長発意による住民投票(総合運動公園の是非で実施)か、サンプル数が多い無作為抽出調査(土浦市との合併の是非で実施)をやったらどうでしょうか?」と提案しました。

前市長が執行部主導であったことを批判、その否定の上に発足した五十嵐市政のセールスポイントは、議会にきちんと相談する、市民の声をきちんと把握する―でした。ところが、上記3つのパラグラフで引用したように、自ら定めた市政運営の基本を捨て去り、議会と市民の意見を聴かずに市政を進めるようになりました。リコール運動はこういった「変節」に対する怒りではないでしょうか。

議会や市民を軽視し、公有地を売却

五十嵐市長にとって、運動公園問題は「1丁目1番地」のテーマです。最初の選挙で掲げた目玉公約は「総合運動公園問題の完全解決」でした。具体的には、選挙前の住民運動で破棄に追い込んだ運動公園計画の用地をURに返還する、同計画にも入っていた陸上競技場を市内のどこかに整備する―この2つです。

しかし、用地返還は失敗に終わり、跡地をどう処分するかが市政の懸案になりました。そこで捻出されたのが、一部を防災用に借り上げる条件で一括売却する処分策です。なぜ防災施設なのか分かりませんが、一括売却色を薄めたかったのでしょう。市長としては、運動公園問題という宿痾(しゅくあ=長期間にわたって解決できない困難)から、何が何でも逃げたかったようです。

ところが処分を焦るあまり、(議会と市民の声が大事という)民主主義の基本中の基本を軽んじ、市政運営の「金看板」を自ら降ろすという過ちを犯しました。

五十嵐さんは最初の選挙で、運動公園用地売買契約書に「URは市の返還要求を拒める」旨の条項があるのに、目玉公約に「用地返還」を掲げました。つまり、返還が事実上無理であるのに、よく調べないで主要公約に仕立てました。この「フェイク(虚偽)公約」が災いとなり、この6年間、運動公園問題を抱えて迷走。今度はリコール運動を呼び込むに至りました。(経済ジャーナリスト)

つくば秀英、逆転サヨナラ 土浦日大も4回戦進出【高校野球茨城’22】

1
3回戦、東洋大牛久-つくば秀英戦が行われた笠間市民球場

第104回全国高校野球茨城大会は17日、3回戦8試合が行われ、つくば・土浦勢は、いずれもシード校のつくば秀英と土浦日大が3回戦を戦った。笠間市民球場ではつくば秀英が東洋大牛久に逆転サヨナラ勝ち、J:COMスタジアム土浦では土浦日大が鉾田二に2ー0で勝ち、いずれも4回戦進出を決めた。

つくば秀英は4ー4の同点で迎えた8回裏、1死満塁で代打森田力也がレフト前へタイムリーを放ち勝ち超すと、続く伊藤諒がライトへの犠飛で1点追加、2点をリードした。

東洋大牛久は9回表1死一、二塁で、代わったつくば秀英のエース塚越伊織から、石井洋輔が右中間にスリーランホームランを放ち逆転。さらに3点を追加して10対6とし、勝負あったかと思われた。

しかしつくば秀英は、その裏、2連打から棚井悠斗のタイムリーで1点を返すと、1死の後、ショートのエラーで1点追加。続く吉江立のライト線へのタイムリーツーベースヒットで同点とした。さらに森田力也が初球を狙ってレフトオーバーのツーベースを放ち、吉江がサヨナラのホームを踏み、つくば秀英が熱戦を制した。

2時間43分に及んだ試合は、両校共に13安打、投手は東洋大牛久が5人、つくば秀英は6人を注ぎ込み死力を尽くした。

9回裏、サヨナラタイムリーを決めたつくば秀英の森田力也は「夏の大会は緊張したが、ベンチが押せ押せムードでスタンドの応援に押されて打った。勝利を決められたことを誇りに思う」と話し、森田健文監督は「監督の采配ミスを、選手達が必死に粘ってよくつないで打ってくれて、底力を発揮してくれた」と選手の活躍をたたえた。(高橋浩一)

土浦日大は、鉾田二を2対0で完封した。

花火を観るなら有料観覧席で 《見上げてごらん!》4

1

【コラム・小泉裕司】今月26日(火)は、3年ぶりに開催される「ぎおん柏崎まつり海の大花火大会」(新潟県柏崎市)への初参戦を予定。今シーズンは、4月末の秋田県大仙市大曲での開幕2連戦(5月14日付コラム)を幕開けに、6月の宮城県亘理町(6月19日付コラム)に続き、アウェー4戦目となる。

新型コロナ感染対策で中止が相次いだ全国各地の花火大会が、「3年ぶり」を合言葉のように次々に開催日程を発表し、観覧席の販売を開始した。このまま夏の花火シーズンに突入すると思いきや、「第7波」がやってきた。喜びもほんのつかの間となってしまうのか、新規感染者数の推移が気にかかる。

さて、花火大会主催者は、花火会場のベストロケーションに有料観覧席を設置するが、人気のある大会の場合、この「チケット」を求めて花火ファンが門前に列をなす。「宿」や「交通手段」とともに「花火旅」の三種の神器だ。

その販売方法は、地元に配慮した現地販売に加えて、遠隔地からも購入可能なネット販売を併用するパターンが多いが、茨城県外の現地販売に並ぶのは現実的に難しい。おのずからネット申し込みとなるが、これも「長岡花火」のような抽選方式もあれば、「大曲花火」のような先着方式もある。

抽選方式には家族や友人名義での複数応募、先着方式の場合は長年培った「瞬札技」を駆使することになるが、それでもアクセスが集中しパソコン画面が停止することもしばしば。過去、購入することができず鑑賞を見送ったこともあるが、今シーズンは幸いにも高勝率に恵まれている。

「プラチナチケット」を眺めながら

一方、茨城県内の花火大会は原則、現地販売に行列することにしている。先日、「いなしき夏祭り花火大会」(稲敷市)の「さじき席券販売」に並んだところ、例年の3倍となる120人が訪れたとのことで準備した整理券がなくなり、事務局が「来年は募集方法を再考したい」というほどの人気。

今月3日の全国花火競技大会(大曲の花火)の場合は、隣県からも訪れた800人が行列したとのニュースを聞いて、ネット販売に回る残席数が気がかりだったが杞憂(きゆう)に終わり、希望の席をゲットすることができ安堵したところだ。

過去、土浦市役所に奉職していた頃は、桟敷席購入のための抽選券配付に早朝から霞ケ浦文化体育会館(土浦市大岩田)に並び、当日知り合った行列仲間とともに当落に一喜一憂したものだ。こうして手に入れた「プラチナチケット」をよなよな眺めながら、大会当日への気分を醸成していくのが私の花火鑑賞の王道であり、この信条は今も変わらない。

こうした花火大会に向けたルーティンがある限り、私の「慢性煙分依存症」の治癒は、ほど遠いようだ。

故三浦春馬さんも土浦花火ファン

明日7月18日、土浦市出身の俳優三浦春馬さん(享年30)の三回忌を迎える。今も全国各地から多くのファンが聖地「土浦」を訪れている。春馬さんの逝去3カ月前に発行した「日本製」(ワニブックス)は、各地のメード・イン・ジャパンを訪ねた雑誌連載を書籍化したものだが、文中、土浦の花火の魅力を語っている。子どもの頃から親しんできた花火を観るために、上京してからも都合のつく限り帰ってきたという。

それぐらい土浦の花火が好きだった春馬さんは、いつも見ていた高台ではなく初めて桜川の河川敷で見たときは心から感動したそうで、「まだ土浦全国花火競技大会を見たことのない方は絶対に足を運んでほしいですし、茨城の誇りを見に来てほしいです!!」とコラムを結んだ。

一度も会場を訪れたことのないあなた、春馬さんの言葉を信じて、今年こそ会場に足を運んで、花火を見上げてみませんか。本日はこの辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

夏蚕が繭になる茅葺き小屋 筑波山麓の真綿づくり佳境に

0
カイコの生育を見守る木村美希さん=つくば市臼井

初夏にクワ(桑)の葉を与えて育てたカイコ「夏蚕(なつご)」が繭となる時期を迎えた。筑波山麓、つくば市臼井の六所地区にある茅葺(かやぶ)きの農作業小屋では、カイコを育てて真綿をつくる「ノラオコつくば」の活動が本格的になっている。

ノラオコつくばは、同市の木村美希さん、北野裕子さんら女性3人のグループ。各自が家で飼えるだけの数のカイコを、2019年から毎年育てている。繭になったカイコは、茅葺き小屋に持ち込まれ、日を決めて真綿にする作業「真綿かけ」が行われる。繭から絹(生糸)をつむぐのではなく、真綿をつくる。どういうことなのだろう。

2010年に筑波山麓で始まった「わた部」の活動がきっかけ。「わた部」は木綿わたを栽培しながら、針仕事ではんてんをつくるワークショップだったが、3人はクワを植えてカイコを育て真綿をつくる活動に取り組んだ。

クワ(桑)の葉を食べるカイコ。旺盛な食欲を見せる

隣の神郡地区には養蚕をまつる「蚕影(こかげ)神社」があり、周辺にクワの木も点在している土地柄だが、今も残る養蚕農家は無い。グループは、2012年に農地を借り、餌となるクワの葉の栽培から始めた。実際に養蚕業を営んでいた地域のお年寄りから話を聞くなどして、養蚕農家に挑戦した。畑の除草や葉の摘み取りなど、暑さの中でのハードワークになったそう。

カイコは1頭、2頭と数える。3人で飼うのは約1200頭。万頭の単位で飼う養蚕農家の規模からすれば桁違いの少なさだが、「自宅で飼い、管理できる桑畑もまだまだ小さいため、現状はこれが手一杯」(木村さん)なのだとか。カイコは、かすみがうら市で養蚕農家を営む田崎さんを介し蚕種店から購入したという。

カイコが繭をつくる足場となる回転マブシ(蔟)

カイコが蛹(さなぎ)から繭となると、冷凍庫で2日ほど冷凍してから天日で数日乾燥する。「真綿かけ」は干した繭を煮て、ぬるま湯の中で袋状に広げ綿にする作業で、なかなかに習熟を要する(大規模な養蚕業の場合は別のやり方になる)。今年は24日に茅葺き小屋に集まって作業し、出来た真綿ははんてん、腰掛けなどの材料にする。

木村さんは「全国的に少なくなった養蚕や真綿の文化を伝えるために、まずは養蚕技術を習得したい」と語っている。(榎田智司)

前提条件の大切さ 《続・気軽にSOS》113

0

【コラム・浅井和幸】若いころに車で人を迎えに行くことがありました。今、〇〇ビルの右側にいるとのことです。ビルの右と言っても、ビルに向かって右なのか、ビルを背にして右なのかが分からないと、車をどこに停めて行けばよいのか分かりません。

しつこくビルに向かってなのか、背を向けてなのかを聞いたら、右側だと言ったら右側だと怒られてしまい、そのまま電話でケンカになった覚えがあります。私も若く、今よりももっと短気でした。恥ずかしい思い出です。

今でも相談を受けるとき、大切なポイントだと思うところは同じ質問を繰り返すことがあります。例えば、「不眠症なので、眠れるようになりたいんです」と眠れない悩みの相談を受けたときは、どのように眠れないのか、それは精神科病院などでの診断名なのかをお聞きします。

寝付けないのか、途中覚醒するのか、朝方目が覚めてしまうのか、どのように寝にくいのか、昼間に強い眠気が出るとか、それが生活にどのような支障が出ているのか―などをお聞きします。

こういった質問をするのは、前提条件として、今の立ち位置が分からないと、「眠れるようになる」という目標に向かうための方法が見つけにくいからです。

場合によっては、人は8時間以上の睡眠を取らなければいけないという思い込みから、8時間眠り続けられない日があるから、不眠症なのだと思い込んでいる人もいます。こういった人は、今のままでも問題はありません。

また、不登校で困っているという相談では、どれぐらいの不登校なのかを聞きます。布団からも出られず、ほとんど家族とも話をしないのか、保健室登校なのか―などです。

酒飲み話なのか、改善したい悩みなのか

前提条件、現在の立ち位置といってもよいと思いますが、それを正確に把握した方が、具体的な対処がしやすくなります。不登校とか不眠症とかのざっくりとした表現では、どこにいるかが分からないのです。

朝早く起きたいというのは何時に起きたいのか、力が強くなりたいというのはどれぐらいの重さを持ち上げたくて、今はどれぐらいの重さを持ち上げられるのか、自由に生きられないというのはどのような状態なのか、普通に生きたいとはどのような生き方なのか―などなど。

お茶会や飲み会での雑談であれば、むしろ、前提条件がずれていた方が盛り上がるかもしれません。恋とは何だ、愛とは何だ、ひいきの野球チームが負けた原因は何か―など、前提条件がブレブレの方が、「あーでもない、こーでもない」と楽しい話ができるでしょう。

さて、あなたが今取り上げたい悩みは、酒飲み話なのか、真剣に取り組み改善したい悩みなのか、もう一度自分に問いかけてみてください。(精神保健福祉士)

データベースに不正アクセス 農研機構サイトに改ざん画面 

0
サイト改ざんに関するお知らせを表示する農研機構のホームページ=キャプチャ画面

農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構、つくば市観音台)は15日、機構が運営するウェブサイト「イネQTL遺伝子情報データベース」に不正アクセスがあり、14日午後1時7分から5時49分までの間、改ざんされた画面が表示されていたと発表した。

当該サイトの復旧がいつになるかは現時点で未定。イネの遺伝子情報のデータベースを利用したい人は、機構に直接、電話などで問い合わせてほしいとしている。

一方、改ざんが行われた時間帯に同サイトにアクセスした利用者に対しては、念のため、セキュリティーソフトを最新の状態にして、ウイルスチェックや駆除をするよう呼び掛けている。

農研機構情報統括部によると、14日午後4時ごろ、同サイトの担当者が、ゲームサイトのような画面にすり替わっていることに気付き、同日5時49分、同サイトにアクセスできないよう、外部からサイトを遮断した。

調査の結果、サーバーに不正アクセスがあり、午後1時7分から、改ざん画面が表示されたことが分かった。

不正アクセスによる個人情報の流出はなく、15日午後8時点で、利用者から被害の連絡もないという。

構情報統括部の桜井達也部長は、現在、改ざんに気付いた担当者のパソコンが、ウイルスに感染してないかどうか調べているとし、さらに「どういうルートで不正アクセスがあったのかや、どこに脆弱(ぜいじゃく)性があったのかについても調べる」としている。

農研機構は「今後このような問題が発生しないよう、より一層の注意を払い、機構の各サイトの管理を実施する」などとしている。

「スーパーシティ」へ向けた次世代サービス 16日、つくば市で初の体験会

13
遠隔操作でペットボトルをくわえる鹿島建設の四足歩行ロボット=イーアスつくば

「スーパーシティ」実現に向けた機運を高めようと「つくばスーパーサイエンスシティ構想体験会」が16日、つくば市研究学園の商業施設、イーアスつくばで開かれる。今年4月、「スーパーシティ特区」に指定された同市初の市民向け体験イベントとなる。

市が「スーパーシティ」に応募した際に選定した連携事業者50社のうち、鹿島建設、KDDI、サイバーダイン、凸版印刷、日本電気、三菱電機、リーバーの7社とつくば市が、各ブースで次世代の技術を使ったさまざまなサービスや商品を展示し、紹介する。

来場者は、つくば市が「スーパーシティ構想」で導入を提案している自動運転の車いすに試乗したり、インターネット投票を体験したりできる。

ドアを通り抜けるとスマホの画面上で別世界が楽しめるKDDIのVR技術

つくば市の「スーパーシティ構想」の基盤となる、行政や民間のさまざまなデータを収集したり加工して利用できるようにするデータ連携基盤「FIWARE(ファイウエア)」はNECが2021年度に開発した。展示ブースでNECは、香川県高松市で実際に運用されているFIWAREを利用して、公開データを収集・加工して作成した、高松市の洪水浸水シミュレーションの3次元地図などを展示する。

ほかに鹿島建設が、トンネル工事現場などへの導入を検討している米国製の四足歩行ロボットの遠隔操作を披露する。KDDIのブースでは、AR(拡張現実)技術を使ってゾンビを退治するゲームを体験したり、VR(仮想現実)技術を使ってスマートフォンの画面上で別世界が楽しめる体験などができる。

体験試乗ができる三菱電機の自動運転の車いすと配送ロボット

各ブースでは、出展企業のスタッフから直接、説明を受けたり、質問したりすることができる。

五十嵐立青市長は「気軽な気持ちで来ていただき、技術を体験しながら、まずはこういうものなんだというイメージをもってもらえれば」と話し、「事業者とどんどん対話することが、共につくるというプロセスの一環になる」と話す。

体験会に先だって、15日には同会場でキックオフイベントが開かれ、五十嵐市長が市民5人と「スーパーシティ」について話す座談会が開かれたほか、メディア関係者や事業者を対象に企業ブーズの体験会が開かれた。

◆体験会は16日(土)午前10時45分から午後3時30分まで、イーアスつくば2階イーアスホールで開催。入場無料。

高校3年生「大人の選択」できるよう つくばで県内初の合同企業説明会

1
仕事の内容ばかりでなく待遇や休日について企業側はしっかり説明し高校生も熱心に聞き入る=つくば国際会議場

7月に入り、企業からの求人票の公開が始まり、来年3月の新規高校卒業者の採用選考スケジュールが本格的に動き出した。学校から企業への生徒の応募書類の提出が始まる9月5日に向け、高校3年生に毎年繰り返される「勝負の夏」だが、18歳が成人となった今年は少し風向きが変わってきた。「大人の選択」ができるよう、企業と高校生が一堂に会し、直接対面によるコミュニケーションを図る合同企業説明会が14日、茨城県では初めてつくば市で開かれた。

「ジョブドラフト」と銘打った合同説明会は、高校生の就職支援を行っているジンジブ(本社・大阪)が全国の都道府県単位に開催している。県内初開催となる14日は、つくば国際会議場(つくば市竹園)に求人側は茨城県警を含む10事業者、求職の高校生は7校33人が集まった。

求人企業が会場に設けた個別ブースを高校生が自由に訪問し、説明を聞き、質問して研究する。高校生は企業の求人票を受け取ることができ、職場見学や応募したい企業を探すことができる。職業体験ができるようブースに準備する企業も多数あった。

「1人1社制」のルールに見直し機運

高卒採用の活動スケジュールは、大卒採用とは動き方が異なり、行政・主要経済団体・学校組織の3者による協定によってルール化されている。ほぼ戦後70年以上変わらないことから、「働き方改革」をはじめとする時流に合わなくなってきた側面もある。

よく指摘されるのは「1人1社制」の弊害。企業が自社への応募に際して高校生に単願を求め、学校側も応募の推薦を制限し、9月の応募解禁日から一定期間まで、一人の生徒が応募できる企業を1社とする制度が長年運用されている。

高校生にとっては早期に内定が得られ、企業には内定辞退者が出にくいなどのメリットがあったが、大卒と比較すると高校新卒者の1年目の離職率が高い傾向が見られることなどから、近年ルールの見直し機運が生じている。進路選択の段階で多くの企業情報に触れたり、接触の機会を増やすことが望まれる。

ジンジブは、高校生の求人・求職に関わるノウハウを蓄積して、企業、学校に提供しつつ、高校生自ら「キャリア形成」と「進路選択」の幅を広げられるよう支援する取り組みを行ってきたという。

茨城会場の担当者によれば「高校によっては就職について専門知識を持つ先生がおらず、企業も中小零細の規模だと採用は社長任せになっていることもあり、当社が入ることで互いのギャップを埋める。会場では、進学校に通っており学校には求人票はわずかしか届かず、先生も就職の知識がなくて困っているという生徒の話も聞けた」そうだ。

企業側からの参加者であるナオイオート(取手市)人事課の中山香織さんは「メカニックを担当する人材が欲しい。まだまだ人材が足りないので、高卒者に資格をとりながら仕事が出来るチャンスを伝えていきたい」。同社のブースで話を聞いた鹿島学園高竜ケ崎キャンパスの高野颯太君(17)は「バイクが好きなので、就職先として検討したい、説明を受けてとても良かった」と感想を語った。(榎田智司)

土浦三、霞ケ浦そろってコールド発進【高校野球茨城’22】

1
ひたちなか市民球場

第104回全国高校野球茨城大会は15日の3回戦7試合(土浦工ー竜ケ崎一は中止)が行われた。ひたちなか市民球場の土浦三は高萩清松を11−1、J:COMスタジアム土浦の霞ケ浦は緑岡を10-0、共に5回コールドで下し、3回戦進出を決めた。

土浦三は初回にヒット、四球と盗塁で無死二、三塁のチャンスをつくり、高萩清松の三失で2点を先制すると一死二、三塁から増田のスクイズ、今井のタイムリーで加点。打者一巡で5点を奪うと、2回には関川の中越ランニングホームランで追加点、その後も相手のエラー、ミスにつけ込み5回までに毎回の11点を奪った。

先発の今井は、調子が上がらず苦しい投球が続いたが「味方の大量得点に守られて楽しくワクワクしながら投げることが出来た」と感想。切れのある変化球、ストレートで本来のピッチングを取り戻し、3回1安打1失点7奪三振の好投。4回からは松原、市ノ澤の継投で勝利した。

2安打を放った薄田匠篤主将は「中盤ミスもあったが自分たちの持ち味である脚を絡めて点を取る野球ができた」と勝因を語った。竹内達郎監督は「好投手と聞いていたので崩すポイントを考えていた。1回戦と同じくランナーを動かして点を取りたかった。球数を投げさせてワンチャンスを活かす。点の取り方が出来て良かった。落ち着いて浮つく事なく自分たちの野球が出来た」と話した。(高橋浩一)

ジュネーブに行ってきます 《電動車いすから見た景色》32

1

【コラム・川端舞】障害者権利条約は、障害者が社会のあらゆる場面で他の人と平等に生活する権利を規定している。日本が障害者権利条約を守っているか、国連の障害者権利委員会が審査する会合が8月、国連ジュネーブ本部で開催される。その会合を傍聴するために、スイスのジュネーブに行けることになった。

日本を審査する国連障害者権利委員会の委員は、ほとんどが世界中から選ばれた多様な障害者だ。日本からも多くの障害者がジュネーブに向かい、国内の障害者の権利について現状を障害者権利委員会の委員に伝える。

障害者権利条約は、「私たちのことを私たち抜きで決めないで(Nothing about us without us)」を合言葉に、世界中の障害当事者が参加して作成され、2006年に国連で採択された。そんな当事者主体の条約に基づき、世界と日本の障害者リーダーが自分たちの権利を話し合う場に、私も参加できるのだ。

国連審査傍聴に向けて、権利条約や審査の流れを改めて勉強し直しているため、国連審査の詳細は8月のコラムで説明したい。そのコラムが掲載されるときには、私はジュネーブにいるはずだ。

経験値を増やす絶好のチャンス

国連審査を傍聴するまでの旅路は初めてのことだらけだ。まず人生で初めて、航空券を自分で予約した。自分と介助者の航空券を間違えないように、緊張しながら予約する。今回は他の車いすユーザーも一緒に行くこともあり、旅行代理店の方も慣れているようで、私が車いすを利用していることを伝えると、すぐにどの書類を提出すればいいか教えてくれた。

私は介助者と一緒に飛行機に乗ったり、10日間も介助者と旅をするのも初めてで、楽しみ半分、不安半分なのだが、自分以外にも多くの障害当事者が同じような日程でジュネーブに行くと思うと、少し安心する。

障害があると「失敗するとかわいそう」「大変だから無理にやらなくていいよ」と言われることも多く、いろんなことに挑戦する機会が少なくなってしまいがちだ。しかし、新しく挑戦したことが思っていた以上に面白く、自分の世界が広がることもある。新しい挑戦を応援し、見守ってくれる人たちがいるおかげで、私の世界は広がり、好きなことがどんどん増えていく。

これから私も障害当事者として多くの経験を積んで、他の当事者が新しいことに挑戦するのを不安がっているときに、「こうすれば大丈夫だよ」とアドバイスできる存在になりたい。そのために経験値をどんどん増やす絶好のチャンスが、この夏やってくる。(障害当事者)

外来植物の花粉持ち込むハナアブ類 筑波実験植物園で繁殖上の懸念材料に

0
ホソヒラタアブの訪花=筑波実験植物園内秋(国立科学博物館提供)

国立科学博物館筑波実験植物園(つくば市天久保)で、ハナアブ類304匹を捕まえ、その体表に付着している花粉を1個1個分離して調べたところ、116の植物種が突き止められた。ハナアブに最も多く付着していたのはセイタカアワダチソウとセンダングサの花粉だったが、この2種の外来植物は園内にまったく生育していなかった。園内で保全される植物に、異種間の花粉輸送をもたらしている格好で、繁殖上の問題を引き起こす可能性があるとの懸念が示された。

植物園は敷地面積14ヘクタール。約3分の2を占める屋外の植生区画は、常緑広葉樹林や温帯性針葉樹林、水生植物などの区画に分けられ、2000種に及ぶ植物の生育域外保全の場として栽培管理が行われている。研究は、これらの保全している植物について、花粉輸送を介した繁殖を視野にいれた評価と環境構築の指針を示すため、まずはハナアブ類による花粉輸送ネットワークを解明しようと取り組まれた。国立科学博物館の田中法生研究主幹(植物研究部多様性解析・保全グループ)、堀内勇寿博士(研究当時:筑波大学博士後期課程3年、国立科学博物館特別研究生)、上條隆志教授(筑波大学生命環境系)の共同研究による。

筑波実験植物園の水生植物区画を田中法生研究主幹に案内してもらった=つくば市天久保

ハナアブ類は広範な植物種に訪花する性質をもつ送粉昆虫。採集は2018年と19年の9月下旬~11月初旬に、小型粘着トラップを用いて行われ、304個体を捕らえた。その体表に付着した花粉は、顕微鏡での観察に基づき分類し、各花粉種につき1花粉粒ずつ単離してDNAを抽出、核と葉緑体から塩基配列を決定した。これを国内外で集積された塩基配列情報データベースと照合するなどして、花粉の植物種を突き止め(同定し)た。

一連の根気のいる作業は、研究当時筑波大学博士後期課程に在学中だった堀内さんが中心に担った。採集後1年半以上かけて照合に取り組み、ハナアブ個体と花粉種のネットワークを構築した。

図 筑波実験植物園で構築されたハナアブー植物間ネットワーク=2018、19年ともに花粉はセイタカアワダチソウ(A)、センダングサ属種(B)に集まっているのが分かる(国立科学博物館提供)

結果、ハナアブ類の体表から、116分類群(種または属)の付着花粉が検出された。個体レベルでの花粉輸送を表すネットワークは2年間ともに、類似した構造を示した。特に、植物園敷地外に由来する外来のセイタカアワダチソウとセンダングサ属種は最も多くのハナアブに付着し、セイタカアワダチソウに限れば、2018年で34%、19年で31%の個体に付着していた。付着の確率は園内中心部ほど増加した。

植物園内だけでなく、周辺の外来植物を含めた環境管理が、植物園の植物保全に重要であると考えられた。研究主幹の田中さんによれば「セイタカアワダチソウの花粉による交雑は確認されていないが、花粉の付着によって正常な受粉を阻害している恐れがある」という。

堀内さんは「外来植物とはいえセイタカアワダチソウなどは長い間に環境に溶け込んで、今や生態系の一部になり、ハナアブ類にとっての餌資源になっている可能性もある。まずは、ハナアブ以外の昆虫、春の植物も調べてみるなどして、他の送粉者を含めた花粉輸送ネットワークの全体を明らかにして、さらに精度をあげていきたい」と語っている。(相澤冬樹)