7月に入り、企業からの求人票の公開が始まり、来年3月の新規高校卒業者の採用選考スケジュールが本格的に動き出した。学校から企業への生徒の応募書類の提出が始まる9月5日に向け、高校3年生に毎年繰り返される「勝負の夏」だが、18歳が成人となった今年は少し風向きが変わってきた。「大人の選択」ができるよう、企業と高校生が一堂に会し、直接対面によるコミュニケーションを図る合同企業説明会が14日、茨城県では初めてつくば市で開かれた。
「ジョブドラフト」と銘打った合同説明会は、高校生の就職支援を行っているジンジブ(本社・大阪)が全国の都道府県単位に開催している。県内初開催となる14日は、つくば国際会議場(つくば市竹園)に求人側は茨城県警を含む10事業者、求職の高校生は7校33人が集まった。
求人企業が会場に設けた個別ブースを高校生が自由に訪問し、説明を聞き、質問して研究する。高校生は企業の求人票を受け取ることができ、職場見学や応募したい企業を探すことができる。職業体験ができるようブースに準備する企業も多数あった。
「1人1社制」のルールに見直し機運
高卒採用の活動スケジュールは、大卒採用とは動き方が異なり、行政・主要経済団体・学校組織の3者による協定によってルール化されている。ほぼ戦後70年以上変わらないことから、「働き方改革」をはじめとする時流に合わなくなってきた側面もある。
よく指摘されるのは「1人1社制」の弊害。企業が自社への応募に際して高校生に単願を求め、学校側も応募の推薦を制限し、9月の応募解禁日から一定期間まで、一人の生徒が応募できる企業を1社とする制度が長年運用されている。
高校生にとっては早期に内定が得られ、企業には内定辞退者が出にくいなどのメリットがあったが、大卒と比較すると高校新卒者の1年目の離職率が高い傾向が見られることなどから、近年ルールの見直し機運が生じている。進路選択の段階で多くの企業情報に触れたり、接触の機会を増やすことが望まれる。
ジンジブは、高校生の求人・求職に関わるノウハウを蓄積して、企業、学校に提供しつつ、高校生自ら「キャリア形成」と「進路選択」の幅を広げられるよう支援する取り組みを行ってきたという。
茨城会場の担当者によれば「高校によっては就職について専門知識を持つ先生がおらず、企業も中小零細の規模だと採用は社長任せになっていることもあり、当社が入ることで互いのギャップを埋める。会場では、進学校に通っており学校には求人票はわずかしか届かず、先生も就職の知識がなくて困っているという生徒の話も聞けた」そうだ。
企業側からの参加者であるナオイオート(取手市)人事課の中山香織さんは「メカニックを担当する人材が欲しい。まだまだ人材が足りないので、高卒者に資格をとりながら仕事が出来るチャンスを伝えていきたい」。同社のブースで話を聞いた鹿島学園高竜ケ崎キャンパスの高野颯太君(17)は「バイクが好きなので、就職先として検討したい、説明を受けてとても良かった」と感想を語った。(榎田智司)