水曜日, 8月 10, 2022
ホーム つくば 臭い測定し病気診断目指す 物材機構発ベンチャー つくば

臭い測定し病気診断目指す 物材機構発ベンチャー つくば

物質・材料研究機構(NIMS、つくば市)発ベンチャー企業、Qception(キューセプション、本社 同市千現 つくば研究支援センター内、資本金100万円)が5月に設立された。同機構の研究者でもある今村岳さん(36)が代表を務める。「ニオイを測る文化をつくる」をビジョンに掲げ、臭いを測るセンサーの販売と、臭いを測るためのコンサルティング事業などを展開する。

将来は、人や動物の呼気や汗、尿など、生体材料から出る臭いを測定し、病気の診断や健康管理を行うことを目指している。初年度の売り上げ目標は5000万円。

(左から)Qceptionの松阪秀喜 最高財務責任者、 今村岳代表、 吉川元起 最高技術責任者(同)

同機構では、研究者でもあり同社の最高技術責任者を務める吉川元起さん(45)らが、臭いを測定する「膜型表面応力センサ(MSS)」を2011年に開発して以降、センサーの実用化に向けた様々な産学官連携の取り組みを約50以上の企業や機関と共に行ってきた。センサーのチップ(集積回路の基盤)はすでに別の会社が生産し、代理店販売を開始している。

いまだに存在せず

視覚、聴覚、味覚、触覚など人間の五感を測る測定器は、光、音、振動などを電気信号に変換して測るセンサーとして、さまざまな産業分野や身近な製品に使用されている。嗅覚についても40年以上にわたり研究されてきたが、いまだに実用的な製品は存在していないという。

理由の一つとして、臭いを構成する分子は約40万種類あり、それらが様々な濃度で存在するため、機械が人間のように臭いをかぎ分けることが困難だからだ。

これまでは、ガスが吸着したときの電気抵抗の変化を測定する酸化物半導体や、臭い分子の質量に対応した周波数の変化を測る水晶振動子を用いたセンサーなどが開発されてきたが、臭いに対する感度や、複数の臭いの識別、センサーの大きさ、消費電力、振動耐性などにおいて課題が残されていた。

MSSは、大きさが1円玉より小さく超小型で高感度、消費電力が少なく、複数の臭いを識別できるなどの面で優位性があるという。原理は、臭い分子がセンサーの感応膜に吸収されたときの微小な変化を電気信号に変換し、独自に開発した機械学習とデータ解析アルゴリズムで臭いを識別する。また、感応膜の種類は、ナノ粒子、ポリマー、金属膜などがあり、複数の感応膜を組み合わせることで、さまざまな臭いを識別することが可能だ。

これまでの研究実績としては、ラ・フランスの臭いを測定し食べごろを臭いだけで識別できたり、人の呼気によってがん患者と健康な人を識別できたりと、農業、医療・ヘルスケアをはじめとするさまざまな分野での活用が期待される。

生乳の臭いで乳牛の病気を識別

今村代表はこれまで実証実験として、医療・ヘルスケアに着目し、乳牛の日常的な健康管理の手間とコストを減らすことを目的に、生乳の臭い測定によるリスク評価を行った。その結果、特定の病気について発症を識別できる知見が得られた。MSSを搾乳機に取り付けることで自動でデータを収集できるため、他の情報とひも付けることも可能だ。

今後は、呼気や汗、体臭などを用いた人間の健康管理に注目し、将来的に臭いセンサーを搭載したスマートフォンやウェアラブルデバイス(装着する情報端末)で、日常の健康管理や病気の早期発見が期待される。

今村代表は「これまでさまざまな研究・産学連携の取り組みを行ってきたが、その一方で、MSSを最もよく知る私たちがMSSを世に送り出すことが必要だと考え、今回、Qceptionを設立した。臭いセンサーを活用した、これまで想像できなかったような新しい技術がつくる明るい未来にワクワクしている」と話す。

Qceptionにはすでに複数の企業から臭いセンサーについての相談や購入についての問い合わせがあるという。(内野隆志)

5 コメント

誹謗中傷するコメントはNEWSつくば編集局が削除します。
5 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る

陽性確認者数(公表日ベース)の推移

つくば市

土浦市

スポンサー

注目の記事

最近のコメント

最新記事

つくば市から3人目のロータリー茨城代表、大野さん【キーパーソン】

茨城県にはロータリークラブ(RC)が55ある。つくば学園RCの大野治夫さんが、これらクラブを代表するガバナーに就任した。任期は7月から来年6月までの1年間。つくば市東光台で不動産管理業を営む大野さんはRC歴18年。業務区と住宅区から成る開発地域・東光台(合併前の豊里町と谷田部町の一部)の土地持ちでもある。ガバナーとしてやりたいこと、つくばの最新土地事情について聞いた。 つくば学園RC会員、目標100人超え RCは地域の名士が参加する奉仕組織だが、週1回の例会を通じ、会員たちが親睦を図り、いろいろな情報を交換する場でもある。つくば学園RCの会員は現在89人。土浦市では最多の土浦南RC(85人)を上回り、つくば・土浦地区では一番の会員数になった。大野さんによると、来年6月までに100人超えを目指す。 つくば学園RCがガバナーを送り出すのは、約20年前の吉岡昭文さん(筑波山神社前の旅館「江戸屋」現会長)、約10年前の野堀喜作さん(東光台の不動産管理会社「ツクバ企画」現会長)に次いで、3人目になる。 10月末、つくば市内で茨城大会開催

シンプル イズ ベスト? 《続・平熱日記》115

【コラム・斉藤裕之】わけあってこの猛暑の中、アトリエの大掃除をすることになった。学生時代からの習作や、いつか出番があるだろうと思って集めたガラクタなどを思い切って処分することにした。市の焼却場に軽トラで何度か往復して、捨てるに忍びないものは知り合いの骨董(こっとう)店にトラックで持っていってもらった。 ちょうどこの7月でこの家に住み始めて20年になる。20年間、家族の足の裏でこすられた1階の杉の床は、夏目と呼ばれる年輪の柔らかいところが削られて冬目の硬いところだけが残って、凸凹になっていて妙に足触りが心地よい。夏涼しく冬暖かいとても住みよい家だと思うのだが、それには少しコツがあって、戸の開け閉めやエアコンの入れ方、ストーブのことなど、大げさに言えば家の中の環境への理解と手間が必要なのである。 2人の娘も家を出てこの家には帰って来るまい。だから将来は人に貸すなり売るなりしなければと思うのだが、少し変わった家なので、この際「斉藤邸取説」でも、を書き残しておこうか。 さて20年分のホコリを払って、広々としたアトリエの床に布団を敷いて寝てみることにした。見上げると、20年前に故郷山口で弟が刻んだ梁(はり)や柱がたくましく見える。昔ながらの複雑な継手も、20年の間にやっとしっかりと組み合わさって落ち着いたように見える。特に2階の柱を支えくれている地松(じまつ)の梁は、自然な曲線が力強くカッコいい。 それから、2階の床になっている踏み天井。こちらは200枚だか300枚だか忘れてしまったが、ホームセンターで買ってきたツーバイ材全てに、「やといざね」といういわば連結するための溝を電動工具で彫ったことを今でも思い出す。酷使した右手は、朝起きると硬直して箸も握れなかったっけ。 「いい景色だなあ。木の色がきれいだなあ。このぐらいの広さの住まいがちょうどいいのかもなあ」。20年目にして改めて見入ってしまった。

言葉の壁を越え患者と医師の信頼関係築く つくばの医療通訳士 松永悠さん【ひと】

つくば市で暮らす外国人は、2022年度の統計で137カ国9457人。医療機関を受診する外国人患者も増えているが、病名や器官の名称などの専門用語が飛び交う診察で、患者が内容を理解するのは難しい。タブレット端末による通訳サービスを導入する病院もあるが、個別の質問や細かいニュアンスの伝達に対応するのは依然として困難だという。市内の病院を中心に、中国語の医療通訳士として働いている松永悠さん(48)は、30代後半から医療通訳の世界に飛び込み、やりがいを見出している。 一人の女性患者との出会い 松永さんは1974年生まれ、中国北京市の出身。松永さんが医療通訳のボランティアを始めた38歳の時、最初に担当したのは、同じ30代の末期がんの女性患者だった。中国の地方出身者で、お見合いで国際結婚して日本の農家に嫁いだが、がんを原因に離婚を切り出され、日本語も分からず頼る人がいない状況だった。 女性の境遇に衝撃を受け、「同じ女性、自分の力で助けられるのなら」と感情移入してしまったそう。女性も辛い闘病の中、「お姉さん、お姉さん」と松永さんを慕った。この女性との出会いから苦しんでいる在日中国人がいることを知り、興味で始めた医療通訳の仕事に使命感を持つようになった。 医療通訳士は国家資格ではない。医療通訳として働くには、民間が主催する養成講座を受講し、選考試験に合格後、ボランティアや医療通訳の派遣会社に登録して依頼を待つ。養成講座では通訳の技術のほか、守秘義務などの倫理規定、医療専門用語などを学ぶ。医師の説明に通訳者が勝手に補足することはしてはならず、治療法について患者が本当に理解しているかの確認をその都度行っていく。患者は文化や宗教、思想、持っている在留資格などの社会的背景が個々で異なり、その理解と医療機関への仲介の役割も医療通訳士に求められる。重い病気を抱える人への告知の場に立ち会うこともあり、精神的な重圧も大きいという。

「真実が知りたい!」 赤木雅子さんが水戸で訴え 《邑から日本を見る》117

【コラム・先﨑千尋】森友学園問題に関する公文書改ざんを強いられ、それを苦に自死した元財務省近畿財務局職員の赤木俊夫さんの妻、雅子さんらの講演会が7月30日、水戸駅前の駿優教育会館で開かれた。この講演会は、旧動力炉・核燃料開発事業団(動燃、現日本原子力研究開発機構)の元職員6人が同機構に損害賠償を求めている訴訟で、原告を支援する団体が主催したもの。 雅子さんは、夫が自死した真相解明を求めて、国と、改ざんを指示したとされる元財務省理財局長の佐川宣寿氏を訴えてきた。この日は、雅子さんの裁判などを支援してきているジャーナリストで元NHK記者の相澤冬樹さんと対話する形で、別室からのオンラインで登壇した。私はそれを会場で聞いた。 雅子さんが起こした2つの裁判のうち、国は、昨年12月に雅子さんの賠償請求を全面的に認める「認諾」の手続を取り、改ざんが行われた経過などは不明のまま、いわば「肩透かし」の手法で国に対する請求を終結させた。残る佐川氏への訴訟は、氏への尋問は行わずに7月27日に大阪地裁で結審し、11月25日に判決が下される。 雅子さんはこの日、佐川氏に2度手紙を書いたが返事はなく、法廷にも姿を見せなかったことを非難し、「私は、夫がなぜ改ざんさせられたのかを知りたいから裁判を起こした。法廷で佐川さんにそのことを証言してもらいたかった。しかし佐川さんは姿を見せなかった。あまりにも悔しい。夫は日頃、公務員は権力を握っている人のためにではなく、国民のために仕事をするのだと言っていた。佐川さんは誇りを持って仕事をしてきたのか。佐川さんが本当のことをしゃべらない限り、私は幸せになれない」と怒りをあらわにした。 国、無慈悲、無機質な組織 この雅子さんの話を聞いて、相澤さんは「佐川さんはこの事件に関わったので、もうエラくなれない。ホントのことを話した方が、気持ちが楽になれるはずだ。ホントのことを話せない佐川さんはかわいそう。哀れだ」と語った。