月曜日, 12月 29, 2025
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自宅を開放 筑波山麓に子供の交流施設開設 ドイツ帰りの渋谷順子さん

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主宰者の渋谷順子さん

 

25日 プレ・オープン

ドイツから帰国し、筑波山麓で暮らす元日本語教師の渋谷順子さん(65)が、自宅敷地内の母屋と納屋を地域に開放して子供たちを中心とした交流施設「じゅんばぁの家」(渋谷順子代表)を開設する。オープンデーとして25日、地元のお年寄りらが昔遊びを教えたり、ミニライブや楽器体験など盛りだくさんのイベントを開催する。

筑波山麓という自然環境の中で、いろいろな世代が助け合い、学び合いながら、家族のように過ごせる空間をつくり、子供たちを見守り育てたいと、渋谷さんと地域の有志が「山にかえろう」というコンセプトで運営する。来年1月4日から本格的な活動を開始し、将来は放課後児童クラブとして活動したい考えもある。

じゅんばぁの家の母屋

地元には、市が運営し地元の小学生たちが利用する「秀峰筑波児童クラブ」(つくば市北条)があるが、隣接の学校グラウンドが使用できず、子供たちは室内でゲームや読書などをして過ごしており、屋外で遊ぶことが難しい。

渋谷さんは元々、高齢者を中心とした交流施設をつくりたいと思っていたが、地域の子育て中の母親から、児童クラブの子供たちが外で思いっきり遊ぶことができないでいるという話を聞き、交流施設に児童クラブの役割も取り入れたいと考えた。

「じゅんばぁの家」は、もともと地元住民が居住していた築20年ほどの民家。老夫婦が亡くなった後10年間ほど空き家となっていた家を渋谷さんが購入した。近くには筑波山から流れる地蔵沢などもあり、自然豊かだ。

交流施設として、母屋の8畳間3部屋と台所を自由に利用できるようにする。敷地内にある納屋は音楽室とし、常時、ギター、ドラム、電子ピアノなどの楽器を置いて、子供たちが自由に演奏できるようにする。地域住民がボランティアで、子供たちと一緒に勉強したり、遊んだりして成長を見守っていく。

これまで実施した活動の様子。かかしを作った(渋谷さん提供)

主宰する渋谷さんは神奈川県座間市出身。ドイツに16年間滞在し日本語教師を務めた。日本語を教えていた中、ドイツで知り合った移民のコソボ出身者から日本文化や日本人の素晴らしさについて聞かされたことがきっかけで、日本の自然豊かな地方に住みたいという気持ちが強くなっていたという。

2022年に帰国しつくばで暮らし始めた。帰国直後は同市谷田部、要の貸家などを移り住み、筑波山が間近に見える国松の民家を購入、現在、敷地内に新居を建築中で、元々あった母屋と納屋を交流施設として地域に開放する。

渋谷さんは「筑波山麓は本当に素晴らしいところで、お宝がたくさんある。地域的にも自然の息吹をこれほど感じ自然のサイクルや営みとともにあるのに、開発が進まない地域と思われているのが不思議でならない。私は筑波山に呼ばれてきたという思いがあり、地域に貢献したいという気持ちが強いので、購入した住宅をぜひとも、遊び場のない子供たちや自分探しをしている大人たちに開放したい」と述べる。(榎田智司)

◆「じゅんばぁの家」はつくば市国松1022-2。利用は会員制で会員登録が必要。年会費は個人2000円、1家族3000円。問い合わせは渋谷さん(メールjunko.shibuya@gmx.de、電話080-4713-3104。

◆オープンデーは12月25日(月)午前11時から午後3時まで。

私の中に潜む差別《電動車いすから見た景色》49

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イラストは筆者

【コラム・川端舞】街に出れば、たちまち私は差別される。面白そうなお店の入り口に数段の段差があったとき。私が話しているのに、相手が私の後ろにいる介助者ばかり見るとき。車椅子ユーザーで言語障害のある自分は、社会から存在を想定されていない人間なのだと感じる。

日常の中で、私は差別者になる。言葉での説明抜きに、SNSに写真を載せるとき、視覚障害者も私のSNSを閲覧する可能性を忘れている。肌の色が自分と違うという理由で、初対面の人に「どこの国の出身?」と話しかけるのは、外国に何らかのルーツはあるが、日本人としてずっと生きてきた人の存在をないものにしている。

異性愛前提の恋愛トークをするとき、異性愛以外の恋愛をする人や、恋愛感情を持たない人をいないものにし、初対面の人の性別を外見から勝手に判断するとき、男女という枠に当てはめられることに違和感を持つ人の存在を無視している。

存在を無視される痛みはよく知っているはずなのに、私も誰かを差別する。

怒りは対等な関係へのラブコール

韓国の社会学者キム・ジヘにより書かれた「差別はたいてい悪意のない人がする」(大月書店)は、障害者、性的少数者、非正規労働者などに向けられる、日常に潜むあらゆる差別を挙げながら、私たちは皆、差別する側にもされる側にもなると指摘する。

人は誰だって、「自分は差別などしていない」と思いたい。しかし、1人の人間の思考力には限界がある。いくら気をつけても、何気ない言動が誰かに疎外感を与え、差別に加担してしまう時が出てくる。

気を抜けば、私もすぐに差別者になる。何気ない一言が、誰かに言い知れぬ孤独感を与えてしまうかもしれない。大切なのは、自分の中にある差別性を誰かに指摘されたときに、素直に反省し、言動を改める努力をすることではないか。

その指摘をすることで、その場の空気や人間関係を壊してしまう可能性もある。それでもなお、なぜ相手は、時に怒りに震えながら、私の中の差別性を指摘してくるのか。その怒りは「あなたと対等な関係を築きたい」という妥協なきラブコールかもしれない。私を信頼し、伝えてくれたラブコールを、素直に受け止められる人間に私はなりたい。(障害当事者)

給食に異物混入 つくば市の小学校

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12日の給食に混入していたファスナーのスライダーの一部(つくば市健康教育課提供)

つくば市は13日、市内の小学校で12日出された学校給食に、金属製ファスナーの一部が混入していたと発表した。13日までに健康被害は報告されていないという。

市健康教育課によると、給食で児童に出されたワカメスープに、長さ8ミリ、幅6ミリの金属製ファスナーのスライダーの一部が混入していた。児童がスープを飲もうとして異物を発見し、すぐに担当教員に報告した。児童は異物を口の中に入れていない。

市はどの工程で異物が混入したか調査しているが、現時点で不明としている。

一方、学校からの報告が翌日になったことに対して同課は、市学校給食異物混入対応マニュアルでは当日報告することになっており、各校にマニュアルの徹底を改めて図りたいとしている。学校側は当初、異物が学校内で混入したのではないかと調べたが見当たらなかったことから翌日、学校給食センターに報告したという。

スープは、同市つくばほがらか給食センター谷田部が調理したもので、幼稚園4園、小学校5校、中学校2校に計3958食が提供された。他校から異物混入の報告などはない。

故郷を思うウクライナの子どもたちの絵を展示 筑波学院大

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筑波学院大学ビジネスデザイン学科の野田美波子講師(左)と同大3年の矢治竜乃介さん

ロシアの侵攻により避難生活を送る子どもたちが描いた絵、約40点を紹介する展覧会「ウクライナの子どもたちの絵画展」が17日まで、つくば市吾妻のつくば市民ギャラリーで開かれている。筑波学院大学が主催し、日本チェルノブイリ連帯基金(JCF)と日本イラク医療支援ネットワーク(JIM-NET)が共催する。

紹介されている絵は、ウクライナ南部のドニプロなどから、同国西部のウジホロドや近隣国のポーランド、ブルガリアに避難した子どもたちが描いたもの。ミサイル爆撃の恐怖から逃れ、多少落ち着きを取り戻したものの先は見えない状況の中で、さまざまな思いを絵に託している。

展示作品より

明るく鮮やかな色彩でウクライナの暮らしや自然豊かな様子を描いた作品がある一方、モノトーンで暗い印象を与える作品も少なくない。母と子だけで故郷を離れる様子を描いた絵には、静けさが感じられる列車の車内とは裏腹に、窓の外には不吉なミサイルの影が描き込まれている。神や天使に平和への祈りを捧げたものも多い。

展覧会スタッフの一人で同大3年の矢治竜乃介さん(21)は「一つ一つの絵から、それぞれの子どもたちの思いが確かに伝わってくる。戦争を経験しながら、その中でただ生き抜くだけでなく、信念をもって生きていることが分かる。作品を通じ、現地の子どもたちの思いに触れてほしい」と話す。

展示作品より、レミャコバ・ミロスラーバさん(5歳)の作品「花咲く私の国」

支援のお礼に

これらの絵はJCFに対し、避難民の子どもたちから支援のお礼として送られてきた。今年6月以降、日本全国を巡回している。

つくば展は、同大ビジネスデザイン学科の野田美波子講師および野田ゼミの学生らの呼び掛けにより実現した。同ゼミでは以前からJIM-NETと連携し、難民支援のためのポストカードのデザインに係わるなどの活動もしていた。

「戦争では、弱い立場の子どもたちが一番つらい思いをしていると思う。その彼らが、自分なりにできることはないかと考え、絵を描いて送ってくれた。そこには故郷を守りたいという思いがあふれており、ぜひ多くの人に見てもらわなくてはいけないと思った」と野田さん。

展示風景

会場ではポストカードの販売や、募金の受付なども行っている。また最終日の17日は、トークイベントも開催され、午前10時からは「日本で暮らすウクライナ人学生の現在」と題し、同大に留学中のトロプチン・ニキタさんらが、祖国を離れて暮らす心境や、ウクライナの現状などについて話す。午後1時からは「ウクライナ/イラク/子どもたち」と題し、JCF理事長の神谷さだ子さんとJIM-NET海外事業担当の斉藤亮平さんが支援の様子について話し合う。(池田充雄)

◆会場はいずれもはつくば市吾妻2-7-5、つくば市民ギャラリー。入場無料。

大学生が利用する奨学金制度を考える 《ハチドリ暮らし》32

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ナナカマドの実が赤く色づいています

【コラム・山口京子】消費生活センターと関わるようになって2年がたちます。同センターとは、地方自治体に置かれる消費者サービス機関で、事業者に対する消費者の苦情や相談の対応をしています。両者の間には情報の量や質に格差が存在し、交渉力の格差も大きいため、契約トラブルなどから消費者を守るために設置されました。トラブルを防ぐための啓発活動やSDGsなど、消費生活にかかわる様々な活動に取り組んでいます。

センターには、消費者トラブルに関する注意喚起の冊子や書籍が数多く置かれています。たまたま手にした2冊の刊行物に奨学金制度の記事がありました。一つは「国民生活」(独立行政法人・国民生活センター刊)2022年12月号、「奨学金制度を利用する前に知っておきたいこと」(あんびるえつこ氏)です。

この記事によると、奨学金を利用する学生は大学生の約5割近くになる、代表的な奨学金制度である独立行政法人・日本学生支援機構(JASSO)の奨学金には給付型と貸与型がある、給付型は9%程度で9割以上が貸与型である、貸与型には無利子の第1種と有利子の第2種がある、こういったことが書かれています。

奨学金は学生本人が卒業後返済していくもので、返済額によるものの、返済期間が長期にわたる傾向にあります。失業や減収などで滞納が続くと、延滞金発生や個人信用情報機関へ登録されるなど不利益が出るため、返済が難しい場合はJASSOの奨学金相談センターに連絡するよう呼びかけています。

奨学金を借りるとはどういうことか理解してもらうための金融教育の必要性や、奨学金制度のあるべき姿を大人も高校生自身も考えてほしい―というメッセージを読み取りました。

奨学金事業は貸金ビジネス?

もう一つは「消費者法ニュース」(消費者法発行会議刊行)2023年10月号、「奨学金制度、会計年度任用職員制度 なぜ第二臨調を問うのか-日本社会疲弊の原点-」(柴田武男氏)です。2004年に発足したJASSOの前身である日本育英会の時代は、奨学金原資は国からの貸付金で、貸与は無利子であったが、第二臨調で有利子制度への提言がされ、家庭の責任が強調されたとありました。

第一種の原資は一般会計の貸付金ですが、第二種は日本学生支援債を発行し、市場から資金調達しているそうです。2023年5月の300億円の債券発行利率は0.08%、奨学金の貸付利率は7月時点で0.637%となっていて、奨学金事業が貸金ビジネスになっていると問題提起をされていました。

これからの在り方を考えるにあたって、今の制度を知ること、その歴史的経緯を知ることが必要なのですね。(消費生活アドバイザー)

「脱炭素先行地域」共同提案6者が協定 つくば駅周辺で75億円規模の事業

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連携協定を締結した(左から)大和ハウス工業茨城支店の八友明彦支店長、中部電力ミライズの大谷真哉社長、つくば市の五十嵐立青市長、ミライデザインパワーの山田高裕社長、ニッスイつくば工場の山口秀明工場長、常陽銀行の野崎潔専務執行役員

地産地消の小規模電力網敷設など

つくば駅周辺の半径500メートル地域が環境省の脱炭素先行地域に選定され、共同提案者の同市と、市中心市街地に冷暖房を供給するミライデザインパワーなど民間企業5社が12日、相互に連携・協働して脱炭素社会を実現していくための連携協定に調印した。

同地域には、筑波研究学園都市建設時に地下に敷設された電気、水道、冷暖房などのケーブルやパイプラインを収容する共同溝があることから、共同溝を活用して、新たに地産地消の小規模電力網を構築する。化石燃料で発電した電力を使用せずに、太陽光発電やバイオマス発電で電気を供給するなどして、2030年までに地域全体で二酸化炭素排出量実質ゼロを目指す。国から最大50億円の交付金を得て、地域内に立地する企業やマンション、学校、公共施設などがそれぞれ、来年度から2028年度まで5年間で総額75億円規模の事業を実施する計画だ。

脱炭素先行地域は、国が2050年に達成を目指しているカーボンニュートラル(二酸化炭素排出実質ゼロ)に先立って、地域特性に応じ、道筋を付けるため先行して実施する取り組みで、環境省が30年までに先行地域を募集し全国で100カ所以上を選定するもの。つくば駅周辺は今年8月に実施された4回目の募集で選ばれた。これまでにつくばを含め36道府県95市町村の74の提案が選定されている。県内では初めて。

つくば駅周辺の対象地域は、同駅から半径約500メートルに立地する、民間施設21カ所、公共施設14カ所、マンション3棟(計656戸)の計38施設で、来年度から計13の取り組みを実施する。

具体的には、各施設の照明をLEDに交換したり、空調を省エネ型に変えたり、施設の断熱性を高めるなどして使用電力量を全体で3分の1削減する。

さらに民間や公共施設に各事業者が太陽光発電施設や蓄電池を整備したり、ミライデザインパワーが、市内の健康食品製造工場で廃棄される魚油や、市が市全域で回収している食用油の廃油を燃料に、駅近くの冷暖房供給施設でバイオマス発電を実施したり、再生可能エネルギーで水を電気分解して製造したクリーン水素を混焼して発電する。同社は発電した電力を、計2.6キロにわたって新たに敷設する小規模電力網で地域に供給する。

ほかに市が、市内の各農家が特産品の芝生を刈った葉や、公園や公共施設で剪定(せんてい)した枝葉を乾燥させて固めてバイオマス燃料をつくり、同市水守のごみ焼却施設で焼却し、発電した一部を同地域に供給する。

同地域では現在3800万キロワット時の電力量を消費し、年間約1万6000トンの二酸化炭素を排出していることから、13の取り組みを実施して2030年までに二酸化炭素排出量実質ゼロを目指す。取り組み実施後の電気料金については通常の電気代と同等に抑えることができる見込みだという。

環境省が脱炭素先行地域を募集していることを知った同市が、公募の上、共同提案した。共同提案の6者はほかに、電気やガスを販売する中部電力ミライズ、同地域に立地する常陽銀行と、現在、同地域に複合施設を建設中の大和ハウス工業茨城支店、EPAやDHAなどの健康食品を生産しバイオマス発電の燃料として魚油を提供するニッスイつくば工場。

12日の協定締結式で五十嵐立青市長は「脱炭素の取り組みは今すぐ取り組まなくてはならない課題、これから共同提案者と一緒に、ここで掲げられた事業を一つ一つ確実に実現していくことで目標を達成していけるように努力していきたい」と話し、ミライデザインパワーの山田高裕社長は「総力を挙げて全国的にも注目されるような先進的な取り組みを実施していきたい」などと話した。(鈴木宏子)

高エネ研南の森林伐採、つくば市は差し止めよ!《投稿・酒井泉》

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ドローンから撮った伐採現場(12月8日撮影、寄稿者提供)

グッドマンJが森林伐採を開始

市民の声を無視し、議会の議決を経ることなく、つくば市がグッドマンジャパンに売却した高エネ研南側に位置する用地(46ヘクタール)について、この物流倉庫開発企業の関連会社から地元住民に対し、取得用地の森林伐採を行う旨の通知があり、12月上旬から実際に伐採工事が開始されました。

私たちは、グッドマンへの市有地売却を差し止めるよう、住民訴訟を起こしています。11月30日に東京高裁で第1回控訴審が行なわれ、来年1月25日には高裁の判決が出る予定です。それが期待外れであれば、最高裁で闘うつもりです。しかし、裁判で訴えが通り、高エネ研南用地が市に返還されても、樹齢70年以上の自然林が伐採されてしまえば、市民は貴重な自然資源を失うことになります。

市長に文書で差し止めを要請

以上の経過を踏まえ、森林伐採を差し止めるよう要請する文書(11月8日付)を五十嵐市長に提出しました。

その中で、「高エネ研南用地の売買契約が未定な状態での工事着工は契約違反」「議会の議決を経ない契約について住民訴訟が進行中」「日本が民主主義国家であれば、つくば市は敗訴して高エネ研南用地は市に返還される」「市による市民無視の施策が覆され、高エネ研南用地が返還された場合、つくば市民に取り返しのつかない損失になる」と指摘しました。

伐採差し止め要請に対し、市の担当課から「現在係争中の事案に関する要望であることから回答は差し控える」旨の回答メール(11月25日付)がありました。

これに対し、市長に「自然林の伐採は、当該地の自然環境に回復不可能なダメージを与えます。係争の結果が出るまで当該地の自然環境を保全することは、売却の契約者(つくば市とグッドマンジャパン)のいずれか、あるいは双方の、市民に対する責務のはずです」(11月27日付文書)と、森林伐採について市民に説明するよう要求しています。

用地は副市長や市長のモノ?

ここで、進行中の「高エネルギー研究所南側未利用地売却差止等請求住民訴訟」について、私たちが主張する論点を簡単に整理しておきます。

つくば市は議会の採決を回避した理由について「土地は土地開発公社の所有でつくば市の所有ではない」と言い張っています。しかし、この公社の理事長は飯野副市長であり、理事には五十嵐市長や市幹部職員が名を連ねています。彼らの言い分は「土地開発公社が市(民)の債務保証で買った土地は市民のモノではなく、俺たち(市長と副市長)のモノだ」と言っているのと同じです。

市は「土地開発公社とつくば市は別組織である」と言って、高エネ研南用地はUR都市機構から買った市有地であるにもかかわらず、実態を無視した暴論(裁判のための形式論)を主張しているのです。市民の常識からは考えられません。

ところが、水戸地裁は「土地開発公社はつくば市であると見ることは相当ではない」と、実態無視の判決を出しました。権威主義的な政治は形式論で市民を統治しますが、民主主義国は実質論で議論して政策を決めます。市が主張しているような詭弁(きべん)と形式論が司法の場で認められ、法の網の目をかいくぐって、地方公共団体の財務会計行為が民主的なコントロールからすり抜けるなら、日本は民主国家ではありません。

訴訟結果に備える市民のリスク対策

五十嵐市長への森林伐採差し止め要請は、裁判の結果、土地売却が差し止めになった場合に市民が必要とする自然環境保全のためです。裁判の結果に備える市民のリスク対策であって、裁判中の事案に対する要請ではありません。(元高エネルギー加速器研究機構准教授、元福井大学教授、つくば市在住)

<参考>この問題についての報告書(PDF版3ページ)はこちら

地元生徒に厳しい水海道一高受験《竹林亭日乗》11

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12月の筑波山(写真は筆者)

【コラム・片岡英明】私は霞ケ浦高校で卒業生を10回送り出したが、常総市に住む6回目の卒業生からもらった年賀状に、子どもが中学受験で苦労していると書かれていたので、先日、常総市の受験事情を聞いた。

常総市は人口6万人弱。市内には、水海道一高という伝統校も含め、県立高校が3校ある。つくば市は人口25万人なのにたった3校なので、常総市の中学生の県立高受験環境は恵まれていると思っていたが、どうも違うようだ。そこで、今回はつくばエリア内の常総市の県立高入試を考えたい。

地元の水海道一高入学は37

2023年春の常総市の中学卒業生は521人。県立高の定員は、水海道一高6学級、水海道二高6学級、石下紫峰高4学級―合計16学級で640人。常総は卒業生より県立高入学枠が大きい市といえる。

では、なぜ常総の受験生が苦労しているのか? その指標として水海道一高への入学数を見ると、2023年入試で常総市から水海道一高に入学した生徒は37人と少ない。

市別の入学者を調べると、①守谷78人、②つくばみらい48人、③常総37人、④坂東30人、⑤つくば29人―である。生徒が増えているTX沿線からの入学が多く、地元中学生が水海道一高への入学に苦戦している。

試験で合否を決めるので、成績上位者が入るのは当然。また、上位者に遠くからでも入学してほしいとの意見もあるが、「地域の伝統校」とは何だろう?

伝統校には、〇〇大学何名合格だけでなく、大卒後の豊かな社会人を視野に入れ、「ノブレス・オブリージユ」をめざす面がある。ともに学び、青春し、進路で花を咲かせる―学習のノウハウもある。さらに、卒業生のネットワークが地元の産業や文化をしっかり支える。

高校はある意味、「港」である。出港し、地元の卒業生は港に戻ってくる。それが地域になくてはならない伝統校の価値をさらに高める。

中高一貫でますます狭き門に

水海道一高に注目して、常総市の中学生の進学先を並べてみる。

▽21年入試:①水海道二98、②石下紫峰78、③水海道一52(7学級)

▽22年入試:①水海道二99、②石下紫峰69、③守谷56、④水海道一49(6学級)

▽23年入試:①水海道二84、②石下紫峰71、③守谷41、④下妻二38、⑤水海道一37

21年は市内3校が上位を占めたが、22年は水海道一が4位、23年は5位となった。常総の中学生が市外の県立高にかなり入学している。水海道一は付属中設置に伴い、22年から7学級募集が6学級、25年からは5学級となる。地元中学生の水海道一高への入学はますます困難になる。

付属中に入って高校に進級する生徒もいるので、高校の減少分は相殺されるという意見がある。しかし、常総から付属中に入学した生徒は少なく、22年の付属中1期生は4名であった。

つくばエリア内の常総の高校入試でも、TX沿線の県立高校不足のため、このような激震が起きている。つくばエリア全体の小中学生にとって、県立高新設が焦眉の課題であることを示している。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

無償譲渡は来年2月1日目標 洞峰公園めぐりつくば市が追加議案

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秋の洞峰公園=つくば市二の宮

つくば市が県から無償譲渡を受ける方針を示している洞峰公園(つくば市二の宮、約20ヘクタール)について、五十嵐立青市長は11日、市が譲渡を受ける時期は来年2月1日を目標とし、市に移管後、来年3月までに協議会を設置して公園の管理運営方法や施設の使用料などを改めて検討していくことを明らかにした。新たな方針をいつまでに決めるかについては、現時点で期限を設けていないとしている。

同日開かれた12月議会本会議に、洞峰公園を市の公園にする市都市公園条例の改正案や補正予算案などを追加提案し、説明した。

条例改正案や補正予算案は14日の市議会都市建設委員会、19日の予算決算委員会で審議された後、12月議会最終日の22日、採決が行われる。一方、県議会には同様の議案が6日提案され、つくば市と同じ22日の最終日に採決が行われる。

7日から11日に開かれた市議会一般質問では、無償譲渡を受けた後に市が負担する体育館、プール、新都市記念館など公園施設の大規模改修費や長寿命化対策費などについて質問が出たが、市は、移管を受けた後、施設の健全度調査をするなどと答弁するにとどまった。

市によると、無償譲渡を受ける来年2月からの管理運営については、現在、県の指定管理者となっている「洞峰わくわく創造グループ」の構成企業で、現在、施設などを管理運営している東京アスレチッククラブに23年度と24年度は引き続き業務委託する方針。委託料は2023年度の2カ月間が約5980万円、24年度1年間は約3億7900万円。プールや体育館、テニスコート、多目的広場、会議室、駐車場などの使用料、スポーツ教室の会費などは、協議会で新たな方針が決まるまでは当面、現状のまま。使用料収入は市の収入になる。

協議会の構成は、市、県、公園管理事業者のほか、同公園で花壇づくりや清掃などのボランティア活動を実施している活動団体、公園利用者、地域住民、学識経験者など計20人を選定する予定で、23年度の補正予算案として1回分20万円を提案した。

アンケート回答1338人、74%が無償譲渡に賛成

一方、洞峰公園の無償譲渡をめぐって市が11月10日から30日まで実施したアンケート結果について市は8日、速報を市ホームページで公表した。速報によると、回答者は計1338人で、無償譲渡を受けることに「賛成」「どちらかといえば賛成」は合わせて995人(74%)、「どちらでもない」が139人(10%)、「反対」「どちらかといえば反対」が計173人(13%)だった。記述部分については現在、集計中という。(鈴木宏子)

74件の提言まとめる 気候市民会議つくば

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五十嵐市長に提言する気候市民会議つくばのメンバー(左)
水素中心のまちづくり、レンタサイクル増やすなど

2050年までに「ゼロカーボン(二酸化炭素排出量 実質ゼロ)で住みよいつくば市」を実現するため、つくば市役所で10日、抽選で選ばれたつくば市民が主体となり、「気候市民会議つくば2023」が開催された。最終回となった今回は、参加市民らがこれまで議論した気候変動対策への提言を最終検討し、提言書としてまとめ、五十嵐立青つくば市長に提出した。

「次世代エネルギーとして水素を中心としたまちづくりの推進」や「自転車移動を増やすためレンタルサイクルを増やす」など計74件の提言がまとめられた。

気候市民会議は、無作為抽出で選ばれた市民が気候変動対策について話し合う場で、欧州各国で広がった。日本では札幌市を皮切りに全国各地で開催されてきた。つくば市では今年9月から12月まで計6回にわたり開催された。

同会議に参加したつくば市民は43人で、同市の人口比率を参考に、年齢、性別、地区などに偏りがないよう抽選が行われた。参加者は4〜5人のグループに分かれ、「移動・まちづくり」、「住まい・建物」、「消費・生活」など気候変動対策に対するテーマと掲げ、それぞれアイデアを検討し、議論を重ねてきた。第5回会議までに、それぞれ31件、30件、26件のアイデアが提案された。最終回となる今回は、これまで出されたアイデアを修正し、再検討した。参加者の最終投票により、全87件のうち74件が提言として採択された。

最終回となった第6回会議の様子

参加した市内に住む会社員女性(32)は「一人ひとりがゼロカーボンを意識した行動をとり、できることから始めることが重要。2050年までに目標達成できることを信じて、子どもにも学んだ知識を教えたい」と話した。

傍聴した東京都八王子市在住で現在、都内の大学に通い政治学を学ぶ皆川果南さん(22)は、自身の研究のため、同会議をこれまで3回傍聴した。他自治体で開催されてきた会議と比較して「6回にわたって細かく本格的な政策立案をしていたのが印象的。市民と行政がつながる場の重要性を再認識し、継続的に開催がなされれば」と話した。

市民から提言書を受け取った五十嵐市長は、参加した市民や助言した専門家らに感謝を述べた後、「地球温暖化をはじめとする気候変動という危機的な地球の状況に対して、実践をすることに意味がある」などと話した。

同市は今後、提言の全ての項目に対して、目標数値の設定と1年ごとに達成度を計るロードマップを作成し、市の政策に反映するとした。(上田侑子)

東海第2原発の拡散シミュレーション《邑から日本を見る》149

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東海村役場から見た東海第2原発(写真奥)

【コラム・先﨑千尋】本コラムの読者は既に報道でご承知の通り、茨城県は11月28日、東海村の日本原子力発電(原電)東海第2原発で炉心が損傷する重大事故が起きた場合、放射性物質が周辺地域にどのように拡散するのかを示すシミュレーション(予測)を公表した(県ホームページ)。それによると、事故対応状況や気象条件を変えた22パターンのうち、原発から30キロ圏内の避難者は最大で約17万人に上る。

東海第2原発は2011年の東日本大震災後、運転を停止しており、運転再開のための防潮堤工事などを進めている。

予測は、県が避難計画策定を進めるために原電に作成を依頼し、昨年12月に提出された後、県の専門委員会で検証され、周辺15市町村の首長でつくっている「東海第二原発安全対策首長会議」で公表が了承されていた。

予測はまず「30キロ周辺まで避難・一時移転の対象となる区域が生じるよう、事故や気象の条件を設定」という前提でなされている。事故時に放射性物質を取り除くフィルター付きベントなど安全対策設備が動作した場合と、設備がすべて喪失した場合を分け、気象条件も、同じ方向に風が長期間吹くなど風向きごとに示した。拡散範囲を30キロと限定したのがミソだ。

避難者数が最大になるのは、風が北東から南西に向けで吹き、降雨が長時間続いた場合、那珂市、ひたちなか市で10万5000人、5キロ圏内からの避難者を加え、約17万人となる。風が西ないし北西方面に吹くと、私が住んでいる那珂市北部も対象になる。

県の大井川知事は28日の記者会見で、予測は「実効性ある避難計画策定の目安になる」と述べ、予測を活用することで計画策定が前進するとの考えを示した。県は、原発の30キロ圏内には約92万人が住んでいるが、そのすべてが一斉に避難するのではなく、風向きや降雨の状態によって避難重点地区を決めたい考えを持っているようだ。

実際には役に立たない絵空事

私がこの予測の発表を見てまず感じたのは、放射性物質の拡散範囲が30キロにとどまらない場合もあるのではないかということだ。風向きもずっと同じ方向ということは実際にはあり得ない。さらに、1日で事故が終息するとは限らない。東京電力福島第1原発事故の際は、50キロ離れている飯舘村の村民は、原発から放射性物質が飯舘村方面に達していることを知らされなかった。また、県内でも霞ケ浦周辺や守谷市、取手市などで放射性物質の数値が高かったことが知られている。

東海第2原発運転差止訴訟原告団が11月30日に発表したコメントによると、「ヨウ素131の放出量は福島事故の1000分の5、セシウム137は100分の4と、防災に役立たない極めて過小な事故想定」だ。

30キロの範囲にとどめていることと合わせると、最悪の事態を想定していない今回のシミュレーションは、実際には役に立たない絵空事ではないか。最悪の事態を想定すれば、それ以下の事故でも余裕をもって対応でき、住民の被曝を回避できる。福島の事例を原電や県は忘れてしまったのだろうか。それとも知らんふりをしているのだろうか。(元瓜連町長)

支援のお礼にトップがエスコート つくばで収蔵庫ツアー 国立科学博物館

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ツアー参加者を出迎える篠田館長(正面左から2人目)=筑波研究施設自然史標本棟

国立科学博物館(東京・上野、篠田謙一館長)の筑波研究施設(つくば市天久保)で10日、館長と副館長が直に収蔵庫を案内するバックヤードツアーが行われた。8月から11月にかけ実施されたクラウドファンディングの寄付に対するリターン(返礼品)の一つで、午前と午後の2回、合わせて10組20人が化石標本などのコレクションが収められた自然史標本棟の奥深くに足を踏み入れた。

化石世界最深部まで

同博物館の500万点以上に上る登録標本・資料数のほとんどを保管しているのが、つくば市の収蔵庫。2011年に完成し、科学技術週間などのオープンラボで一部が公開されているが、今回はこれらの機会でも見せたことのない化石世界の最深部に参加者を案内した。

古生物学が専門の真鍋真副館長がガイド役を務めたのは、恐竜化石標本を収蔵した収蔵庫。ロッカーの扉を開け、首長流のフタバスズキリュウやトリケラトプスの歯など骨格化石を取り出して見せ、肉食から草食に至る恐竜の進化のスタイルをたどった。ステゴサウルスの前肢、ボリューム感ある上腕骨の化石は触ることもできた。

恐竜の化石標本を手に解説する真鍋副館長

同博物館は8月7日から11月5日に1億円を目標にクラウドファンディングを実施した。新型コロナの影響で入館料収入が落ち込む一方、光熱費の高騰などを受けて国内最大規模の動植物の標本や化石などのコレクションを収集・保管する資金が危機的な状況にある、として協力を呼びかけた。

すると初日にいきなり目標額を達成し、最終的には7万人以上から約9億2000万円を集める異例の展開になった。同館では複数のバックヤードツアー(寄付金5万円)を含む40種類以上のリターンを選定していたが、館長&副館長コースには定員を超す応募があり、今回を含む3日間計6回の開催に拡大して行われることになった。

静岡市の会社員、西雅彦さん(32)は小学生のころからの「科博ファン」。夏休みや企画展のたびに上京していたという。クラウドファンディングには初日早々に応募し、つくばには友人と連れ立ってやってきた。

横浜市からきた櫻井美涼さん(28)もクラウドファンディング初日の応募組、複数のメニューで応募した。「夫との初めてのデートが科博だった。それまでまったく関心のなかった科学にがぜん興味が湧いて、今日は夫をつくばまで連れてきた形。スペシャルなツアーにとても感激している」と語る。

つくば市の収蔵庫は空調など温度・湿度管理を厳格に行っており、光熱費の高騰は特に大きな痛手となっていた。その現状を見てもらえるバックヤードツアーの意義は大きい、と篠田館長は持続的な支援を呼びかけた。今回の支援金のうち、約3.2億円を間接経費(返礼品など)として支出し、約6億円を事業経費として活用していく中で、つくばの収蔵庫の増築も計画していくという。(相澤冬樹)

小学生8チームが熱戦 第1回つくば学園ロータリークラブ小関迪杯

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初の小関迪杯を手にする優勝した中根FCの選手ら。左から3人目は大会会長でつくば学園ロータリークラブの野澤俊夫会長

小学4年生を対象とする、つくば学園ロータリークラブ(野澤俊夫会長)主催のミニサッカー大会「第1回つくば学園ロータリークラブ小関迪杯」が10日、つくば市東光台のブロッソンフットサルコートと隣接の東光台グラウンドで開かれ、つくば市と近隣市の少年サッカーチーム8チームが熱戦を繰り広げた。

同ロータリークラブ会員で筑波記念病院を創設した小関迪(こせき・すすむ)さんが昨年12月に逝去。小関さんは地域や同ロータリークラブの発展に貢献したことから、青少年の健全育成と地域の発展を目的に、小関さんの名前を冠したミニサッカー大会を初めて開いた。

8チーム約120人の小学生がトーナメント方式で戦い、決勝は牛久市立中根小学校を拠点に活動するサッカー少年団「中根FC」と、地元つくば市東光台のクラブチーム「ブロッソン」が対戦、試合は0-0の結果に終わったが、PK戦で中根FCが勝利し、初の小関迪杯を手にした。

参加チームはほかに▽つくば市立手代木南小を拠点に活動する「手代木SC」▽同市立前野小の「マエノD2C」▽牛久市の「アルコイリスfc」▽同市立ひたち野うしく小学校の「ひたち野ライズFC」▽龍ケ崎市立龍ケ崎西小の「龍ケ崎ペレグリンJr.FC」▽同市のレプロSCの計8チーム。

各チームの最優秀選手ら

野澤会長は「第1回の大会となったが、本当に素晴らしい大会となり、子供たちは皆いい姿を見せてくれた。学園ロータリークラブとして来年以降も継続して開催したい」と語る。

元Jリーガーで、FC東京や湘南ベルマーレなどで活躍し、この日の大会会場となった東光台でフットサルコートを経営するブロッソン社長の阿部吉朗さん(43)が大会競技委員長を務めた。阿部さんは「僕たちが子供のころと比べて小学生のサッカーのレベルがすごく上がっていると感じた。小学生のサッカーチームは、サッカースポーツ少年団とクラブチームに分かれて活動しているが、この大会には少年団とクラブチームの両方が出場した。同じサッカーの仲間として、互いにそれぞれのいいところを知ってもらう機会になったと思う」と意義を話す。

次女のおねだり《続・平熱日記》147

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絵は筆者

【コラム・斉藤裕之】「じゃあお願いね。よろしく!」。次女は私の絵を何かの贈答品ぐらいに思っている。これまでも、友人へのお礼だとか知り合いに子供がいてだとか…、何枚かの絵をねだられて描いた。冗談で手数料としての値段を言ってみたりするが、全く払う気もないし、「ありがとね」くらいの感じで済まされる。

では、それが私にとって腹立たしいことであるかというと、そうでもない。というのも、日ごろ、自分としてはまず描かないだろうというお題をもらっているようなもので、引き受けたときは少し躊躇(ちゅうちょ)することもあるのだけれども、いざ描き始めると結構楽しかったり、意外な発見があったり、出来上がりを喜んでくれたりするのがいい。そこが自分勝手に好きなものを描いているのと違うところだ。

その次女が、是非とも私を誘って行きたいというバーがあるというのだが、お酒もやめて久しいし、夜は8時に床に就く生活をしている私にとって、下北沢のバーなど海の向こうの国の話ほどにリアリティーを感じない。まあ、行くことはないだろうと思っていた。

ところが、その日はまず長女の家に行って、そうそう、長女の住む高円寺の阿波踊りを見に行った日のことだ。その後、下北沢の次女の家に泊まることにして連れていかれたのが件(くだん)のバーだ。

バー・オーナー夫妻の絵

細い階段を昇っていくと、暗い店内には音楽が流れて数人の客がいた。壁一面にびっしりと並んでいるのはレコード。それこそ、昭和の時代にタイムスリップしたかのような…。私はウーロン茶を注文して、出されたポップコーンをつまんだ。それから、次女はオーナー夫妻に私を紹介した。

それから、「実は2人の絵を描いてほしいの」と耳打ちをして、オーナー夫妻をテーブルに座らせて写真を撮り始めた。聞けば、何十年もこの店をやってきたのだけれども、建物の建て直しに伴って、来年には店をたたむのだそうだ。次女はその思い出を私の絵にして、オーナー夫妻にプレゼントしたいというのだ。

「好きな曲を言ってごらん。すぐにオーナーが棚から引っ張り出して、かけてくれるから。どこにだれの何の曲があるか、オーナーの頭の中には全部あるの…」。次女にそう言われたものの、それほどのマニアでもない私は、おびただしい数のレコードを前にして咄嗟(とっさ)には何も出てこなかった。

しばらくして、次女から画像が届いた。それは件のバーの店内に以前次女に渡した、私の作品展のハガキが飾られている様子が映っていた。「オーナー、飾ってくれてるよ」というメッセージが添えられていた。もう少し後で描こうと思っていたのだけれど、オーナー夫妻の絵を描き始めることにした。今度次女に会うときに渡せるように。多分、私はバーに行くことはないだろうけど。(画家)

人工都市つくばの草創期を記録 齋藤さだむさん写真展

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「人工都市つくば 草創の風景」展を開く齋藤さだむさん。齋藤さんの右側に展示されているのは解体されるつくば科学万博のパビリオン

1980年代を中心に建設途上だった筑波研究学園都市の草創期を記録した、つくば市在住の写真家、齋藤さだむさん(74)の写真展「人工都市つくば 草創の風景」が8日から、つくば市千現、ギャラリーネオ/センシュウで開かれている。モノクロ写真やカラーのポストカードなど約80点が展示されている。

平らに造成された土の大地の向こうにぽつんと建つ完成したばかりのつくばセンタービル、造成工事で出た残土が堤防のように長く積み上げられた現在のカピオ駐車場周辺、伐採した樹木をその場で生木のまま燃やし白い煙が立ち込める現在の大清水公園―。筑波研究学園都市建設時の生々しい光景が写る。

完成したばかりの国家公務員宿舎群や、夜は真っ暗になる街中で異様な光を放つパチンコ店のネオンで赤茶色に光る雑木林などの作品もある。

齋藤さんは長野県出身。1977年、筑波大学芸術学系に技官として赴任し、つくばに転居。90年まで同大職員を務めた。大学の仕事の傍ら、国家プロジェクトによってつくられた人工都市の草創期を撮影し記録に収めてきた。

「初めて土浦駅に降り立ち、バスに乗って筑波研究学園都市に入った途端、がーん、がーんという杭を地面に打ち込む大きな音が響いた」と当時を振り返る。

85年に開催されたつくば科学万博のきらびやかな建物や、見物を楽しむ人々の様子、その後、次々に解体されるパビリオンの変遷を記録した写真もある。「何もないところに突然、科学万博の建物ができて、隆盛を極め、人々が楽しんだが、1年も経たないうちに壊された。映画を見ているかのようにわずか1年で変わっていく姿を実体験し、街の運命も人の運命と同じように、生まれて、成長して、新しいものに変わっていくということを衝撃をもって感じ、写真とは何かを考える転機になった」と話す。

写真展の会場の様子

写真展は、1979年から2000年までつくばの文化発信拠点だったライブハウス「クリエイティブハウス アクアク」の記録を残したいと、12月から来年2月まで、トークイベントや展示会を開催する有志でつくる「アーカイブ アクアク」(12月8日付)が、同イベントの開催に合わせて企画した。

アーカイブ アクアクのメンバーで同ギャラリーを主宰する山中周子さん(39)は「齋藤さだむさんの作品はただの記録ではなく、そこにある光、そこにあった環境をとらえ、芸術性がある。ずっとつくばにいる人も、新しくつくばに来た人も、いろいろな世代に見てほしい」と来場を呼び掛ける。

齋藤さんは「草創期のころのつくばをテーマに、演劇や音楽のパフォーマンスを展開しようとする若いメンバーたちの考えに賛同して写真展を開いた。46年前に土浦駅に降り立ってからのつくばでの時間の往還を、会場でお会いできる方一人一人と感じたい」と話す。(鈴木宏子)

◆齋藤さだむ写真展「人工都市つくば 草創の風景」は8日(金)~24日(日)の金・土・日曜の午後1~5時まで、つくば市千現1-23-4 マイコーポ二の宮101、ギャラリーネオ/センシュウで開催。入場無料。詳しくは同ギャラリー(メールinfo@neotsukuba.com)へ。

秋夜の熱燗に酔いしれる《医療通訳のつぶやき》3

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写真は筆者

【コラム・松永悠】去年から日本酒に目覚め、日ごろ、自宅で地酒の飲み比べをして楽しんでいます。今年に入ってから飲むだけでなく、和酒フェスティバルのボランティアスタッフもして、日本酒との関わり方がさらにアクティブになってきています。そしてこの前の週末、日本酒好きな友人らと一緒に、埼玉県小川町にある酒蔵、松岡醸造を見学してきました。

驚きと幸せに満ちる1日でした。もちろん奥の深い世界だと知っていましたが、ここまで面白いとは…。お米の種類の解説から始まって、製造工程と発酵、タンクに振動を加える実験などの技術の話や、酒税と税務局常駐の歴史、世の中で流れている日本酒にまつわる噂話の真偽まで、興味津々の話題がてんこ盛りでした。

普段、違う銘柄の日本酒を飲み比べることが多いのですが、同じ酒蔵のラインナップを片っ端から飲み比べるのはなかなかできないことです。若々しくてフレッシュな新酒にうっとりしたり、芳醇(ほうじゅん)で濃厚な15年ものの古酒に驚いたり…。微発泡のものや濁り酒など、どれを取っても味や香りなどそれぞれ違っていて、様々な表情を見せてくれて、まさに「みんな違って、みんな良い」でした。

私は仕事柄、消化器内科に行く機会が多く、これまで胃カメラ・大腸カメラの立ち会いも数えきれないほど経験しました。もちろんアルコールは健康に良くないという概念は昔から知っています。肝臓がんの患者、胃がんの病巣画像写真もリアルに見ていますので、恐らく一般の人よりお酒による健康被害を実感しています。

「これらの数値、心当たりありますか?」

一方で、私自身はお酒が大好きです。気のおけない友人と熱燗(あつかん)のお酒を飲みながら談笑するのは、まさしく至福の時間であり、人生でなくてはならない楽しみの一つです。父方の祖母は99歳まで生きて、大変お酒の強い人で、毎日のように飲んでいたそうです。祖母に及びませんが、どちらかといえば、多分飲める人に入ると思います。

体というのは、とても素直なものです。お正月のような、短期間でたくさんのお酒を飲む連休の後に血液検査をすると、肝機能数値がぐんと上がります。今年2月に、私が人間ドックを受けた後、看護師から「尋問」を受けました。

「これらの数値、心当たりありますか?」「はい、もちろんです。私は忘年会から始まって、お正月も毎日お酒を飲んでいましたから」「どうすればいいと思いますか?」「しばらく休肝します」。まるで先生に怒られる小学生のようでした。そして4月にもう一度血液検査を受けて、コントロールした効果が見事に現れて、2月の数値の半分以下でした。

ぼちぼち忘年会の予定が入ってくる時期になりましたね。そして来年の2月にはまた人間ドックがあります。同じやりとりになりそうな予感がする今日このごろです。(医療通訳)

<参考>医療通訳の相談は松永rencongkuan@icloud.comまで。

樹木の伐採始まる つくば市 旧総合運動公園用地

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森林の伐採が始まったつくば市大穂、旧総合運動公園用地=7日午後3時ごろ

つくば市土地開発公社が外資系デベロッパー、グッドマンジャパンつくば特定目的会社に売却した同市大穂の約46ヘクタールの森林(旧総合運動公園用地、高エネ研南未利用地)で7日までに樹木の伐採が始まった。

同用地は、住民投票で総合運動公園計画が白紙撤回となった後、住民投票の勢いに乗り、一つの争点に的を絞ったシングルイシューといわれる選挙戦を展開して「(元の持ち主の)URと返還交渉する」ことを最大公約に掲げて初当選した五十嵐立青市長が、2期目当選直後に民間への売却を決めた。グッドマンジャパンが110億円で購入、倉庫やデータセンターの建設が計画されている。

7日午後3時過ぎ、隣接する高エネ研敷地に面する出入口には、重機が出入りするための鉄板が敷かれ、すでに広い面積の樹木が伐採されていた。さらに敷地周囲を囲っていた杭が抜かれ、境界付近の草が刈られていた。

今回の伐採面積や1期工事の内容、工事スケジュール、住民説明会開催の有無などについて事業者のグッドマンジャパンは「現在メディア等の取材対応は行っておりません」などとしている。伐採面積などは不明だが、高エネ研に近い東大通りに接する倉庫区画(7工区E区画、約6.1 ヘクタール)付近で伐採が始まったとみられる。

事業者は現在、つくば市に対し、都市計画法に基づく開発行為の許可申請を出しているとみられるが、8日時点で市はまだ開発許可を出してないとみられる。さらに、市開発許可の手引きでは「開発区域の周辺おおむね100m以内の住民と土地所有者に対し住民説明会を開催する」とあるが、事業者は近隣にちらしを配布し、対面での住民説明会は開かれていない。

伐採や住民説明会などについては8日開かれた同市12月議会一般質問で取り上げられ、飯岡宏之市議の質問に対し、市は「(樹木の地上部分の)伐採は(土地の区画形質の変更ではないため)開発行為に当たらない。(木の根っこを抜き取る)伐根は開発行為の許可を得て実施する」などと答弁した。

住民説明会の開催について市開発指導課は「開発行為にあたって必要な説明会は書面開催の方法で周知し、(住民説明会は)なされたと事業者から報告を受けている」としている。一方、一般質問した飯岡市議は、周辺住民からは住民説明会開催を要望する動きがあるとしている。

事業者が10月に近隣住民に配布した資料によると、全体計画は、東大通り沿いの東側に倉庫3区画、西側にデータセンター4区画を建設する。南側の約4.5ヘクタールには防災多目的利活用広場を建設する予定で、防災拠点の整備は市が掲げた売却目的の一つだが、市と事業者との具体的協議はまだ行われていない。(鈴木宏子)

伝説のライブハウス「アクアク」原点回帰 つくばで3つのイベント

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アクアクを主宰した野口修さん

山下洋輔さんジャズコンサートなど

かつてつくば市に存在した、多くの著名人が足を運んだライブハウス「クリエイティブハウスAkuAku(アクアク)」。今も、当時を知る市民に語り継がれる「伝説的」な存在だ。アクアクに関連する3つのイベントが、12月から来年2月にかけてつくば市内で開催される。

その第1弾となるのが、15日につくばカピオ(つくば市竹園)で開かれるジャズコンサート「特別な一日」だ。世界的ジャズピアニストの山下洋輔さん、ロックシンガーのカルメン・マキさん、作曲家兼アレンジャーで知られるベーシスト水谷浩章さんが出演する。かつてアクアクを主宰し、「特別な一日」実行委員長の野口修さん(68)と山下さんの40年にわたる親交により実現する。

活動の原点は山下洋輔さん

かつて天久保2丁目にあったアクアクの外観(野口さん提供)

「オープニングアクトは(山下)洋輔さん。あの日が私たちの原点でした」と、野口さんが当時を振り返る。

1979年、筑波大学のキャンパスに隣り合う現在のつくば市天久保に、1軒のライブハウスが誕生した。カフェとイベントスペースを兼ねそなえた「クリエイティブハウス アクアク」だ。旧桜村(現つくば市)出身の野口さんが、数名の筑波大生たちと立ち上げた。現在の天久保には、学生向けのアパートやマンションが立ち並ぶが、当時は筑波研究学園都市の開発初期。雨が降ると未舗装路はぬかるみ、栗や野菜の畑の中に立ち始めた建物は、まだまばらだった。天久保のアクアクからは「500m先の東大通りが丸見えだった」。

「アクアク」とは、モアイ像で知られるイースター島の言葉で「何かを創造しようとする欲求」を指すという。当時、23歳だった野口さんと学生たちは、まだ文化施設がなかった研究学園都市に文化の拠点をつくろうと考えた。オープニング企画を山下さんのライブに決めた理由を野口さんは「アクアクでは、自立した自由な個人が互いを認め合い、一緒に生きていくことを追求したかった。洋輔さんのステージにはそれがあった」と話す。

「洋輔さんたちは、自立した個人がステージに立ち、互いに認め合うことから始まり、舞台を成立させていく。初めはどんな音を出すのかわからないもの同士、演奏しながら関係性を築いていく。それを見ている私たち観客も、いつしかそこに引き摺り込まれ、演者と関係性を築いてく。会場全体がひとつの『社会』として形作られていく感覚になる」のだと語る。

1991年、アクアクでのライブに向けリハーサルする山下洋輔さん(左端)と、サックス奏者の早坂紗知さん(同)

このオープニングアクト以降、アクアクでは、幕を下ろす2000年までの21年間、山下さんとの企画を毎年続けてきた。さらに詩人・谷川俊太郎、思想家・吉本隆明、映画監督・若松孝二、俳優・大杉漣ら、数々の著名人を招いて詩の朗読会や音楽演奏、演劇、舞踏、映画上映、ワークショップなど多岐にわたる活動を、表現活動への熱にあふれるつくばの若者たちと共に繰り広げていく。

今を見つめ返すコンサートに

野口さんが、もう一つの「原点」と語るのが、劇作家の寺山修司。野口さんが寺山の作品に関心を抱いた70年代は、60年代に隆盛した学生運動が、意見を異にする人に暴力を向け、活動自体を閉塞させていく時代だった。そうした中で、舞台上で問題を提起する前衛的な寺山の作品に触れ、野口さんは強く感銘を受けたという。カフェとステージが同居するアクアクは、寺山が渋谷で主宰した、劇場と喫茶店が同居する「天井桟敷館」をモデルにした。

寺山の劇団「天井桟敷」が輩出したのが、今回、山下さんと共演するカルメン・マキさんだ。山下さんと共に、野口さんにとっての「原点」が同じステージに立つジャズコンサートへの個人的な想いをこう語る。

「コロナ禍で、表現活動が制限される苦しさを経験した。一方で、強者も弱者も区別なくコロナに罹ることで、垣根なく、互いに助け合う社会ができるのではと期待した。どう健康を維持し、どう生き延びていくかをみんなで考え合う機会になるはずだった。しかし、現実は差別が助長され、世界各地で戦争が続いている。混乱し続ける時代だからこそ、私自身、原点を見つめたいという思いがあった」

「人間にとって大切なことは戦争ではない。いかに個人が自立して、自由に生きるのかということ。コロナ禍の時代から、再び表現活動ができる時代になった。多くの方と共に、同じ会場で一緒にコンサートを聞くことで、改めて、人間を見つめる大切さを思い出す機会になれば。今回の企画は、私自身にとっても『原点回帰』だが、こんな時代だからこそ、皆さんにとっても、今を見つめ返す『特別な一日』になるといい」と野口さんが呼びかける。

絵本作家ののスズキコージさんの展覧会での一場面(同)

ジャズコンサート「特別な一日」は、12月15日(金)19時からつくばカピオホールで。全席指定。一般5500円、学生・障害者4500円。詳細、問い合わせはイベントホームページ、または電話090-8580-1288(野口さん)へ。

記録を残したい

第2弾、第3弾のイベントは、野口さんが「原点に返りたい」とコンサートを企画していたところ、アクアクの記録を残したいと考える有志がコンサートに合わせて関連企画を立ち上げ、3つのイベントが実現することになった。

第2弾は、12月16日(土)16時からギャラリーネオ(つくば市千現)で、野口さんとつくば市を拠点に活動する劇団「踊母会」によるアクアクに関するトークイベントが開かれる。第3弾は、1月25日から2月5日にかけて千年一日焙煎所カフェ(つくば市天久保)で、アクアクを振り返る展示会「アクアクの時代 1979-2000」がそれぞれ、野口さんを慕う有志らによるアーカイブアクアク実行委員会により開催される。問い合わせはメール(千年一日珈琲焙煎所)へ。(柴田大輔)

鉾田市の高品質イチゴ農園《日本一の湖のほとりにある街の話》18

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イラストは筆者

【コラム・若田部哲】農業大国・茨城県の中でも屈指の農産物生産地、鉾田市。メロンをはじめ、イチゴやゴボウ、水菜など、様々な農産物の生産量が全国トップクラスを誇っています。そんな中、銀座千疋屋やペニンシュラホテルなど、一流店で愛用される高品質なイチゴを栽培する「村田農園」代表の村田和寿さんに、農園の歴史と栽培にかける思いを伺いました。

村田さんは農園の2代目で、かつては春先にメロン、冬場はイチゴを栽培。それが25年ほど前、イチゴの品種が「女峰」から現在の主流品種「とちおとめ」に移ると、冬場から春にかけてもイチゴが出荷できるようになったため、イチゴ生産に特化することにしたそうです。

主力の品種は現在でも「とちおとめ」。甘味・酸味・香りのバランスの素晴らしさに加え、棚持ちが良く、今もってこれを超えるものは難しいと、村田さんはその品質に太鼓判を押します。

村田さんのイチゴが高級店で愛用されるようになったのは、2008年の洞爺湖サミットの頃。卸先の一つである築地で、ペニンシュラの野島シェフの目にとまったことがきっかけで、一躍パティシエ業界での認知度が高まったそうです。

ただし、村田さんのイチゴが売れるようになったのは、たまたま運が良かったから、ではありません。そこに至るまで、さまざまな栽培上の工夫や販売方法の工夫がなされた上での、必然的なものだったことがお話からわかりました。

丹精した「赤い宝石」

イチゴ生産の最盛期は12月から1月後半、その後春先まで収穫が続きますが、第一に重要なのは「土づくり」。天敵製剤などにより極力農薬を抑えつつ、自家製堆肥を加え攪拌(かくはん)した土壌を1カ月以上発酵させ、良質な土をつくります。

苗にもこだわり、良い系統のものから厳選。さらにハウスごとに状態を細かく観察し、それぞれ微妙に異なる最適な栄養素を見極め、個別に栄養管理をしているそう。見せていただいたハウスのイチゴの苗は、大きく厚く色も鮮やかな葉で、とても生きの良さが感じられました。

村田さんのこだわりは、収穫後も続きます。繊細な果実であるイチゴを、鮮度を落とさず消費者まで届けるため、包装にも並々ならぬ力の入れようです。何タイプかある包装に共通する考え方は、イチゴが箱に触れるのを「点」でなく「面」にし、傷みを抑えるというもの。

最も高品質なイチゴを納める包装の名は、その名も「ゆりかーご」。箱にイチゴ型にくぼんだ薄いフィルムが張られており、そのくぼみに1個ずつ納めるというものです。それはまさに揺り籠のようで、これほど繊細に扱うのかと、驚きを禁じえませんでした。

また、パッケージデザインにも一目で村田農園とわかる、イチゴのみずみずしさとスタイリッシュさを兼ね備えたデザインがなされ、ブランディングにも一切手を抜いていません。こうした積み重ねがあるからこそ愛されているのだと、深く納得です。

そんな、イチゴにひたむきな情熱を注ぐ村田さんに、イチゴ生産の魅力を伺うと「消費者の声が直に聞ける点」とのこと。卸先の「生産者カード」などを通じ、「おいしかった!」と届く声が、何よりの喜びだそうです。この冬も、村田さんが丹精した赤い宝石が、たくさんの家々で笑顔を生み出すことでしょう。(土浦市職員)

<注> 本コラムは「周長」日本一の湖、霞ケ浦と筑波山周辺の様々な魅力を伝えるものです。

➡これまで紹介した場所はこちら

誤って印鑑登録を抹消 成年後見人選任開始の12人分 つくば市

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つくば市役所

つくば市は7日、成年後見人の選任を開始する「後見開始」審判の通知があった12人の印鑑登録について、誤って抹消してしまったと発表した。

発表によると12人は、今年6月1日から10月20日までの間に、後見開始の審判の通知があった住民。

今月6日に発覚した。同市印鑑条例では、後見開始の審判があっても本来は印鑑登録の発行制限のみを行うべきところ、誤って登録を抹消し、抹消通知を送付していた。

今年5月に印鑑登録事務の担当になった職員が、印鑑登録を抹消する旨の総務省通知を誤って解釈し、抹消してしまったという。

市は12人の印鑑登録を回復し、それぞれお詫び文を送付したとしている。

今後について市は、条例や規則などの再確認と業務手順の見直しにより、再発防止に努めたいとしている。