金曜日, 12月 26, 2025
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フジコ・ヘミングさんの番組が伝えるもの《遊民通信》104

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【コラム・田口哲郎】

前略

年末に、NHKでフジコ・ヘミングさんのドキュメンタリー番組「ETV特集 フジコ〜あるピアニストの軌跡〜」が再放送されていました。初放送は1999年です。このドキュメンタリーが放送されたことで、不遇のピアニストだったフジコさんに注目が集まり、世界中で演奏会を開く人気ピアニストになりました。

最初のCD「奇蹟のカンパネラ」は200万枚を越える大ベストセラーになりました。私はリアルタイムで放送を見ていて、感動し、CDを買いました。代表曲の「ラ・カンパネラ」は圧巻でした。

ピアノはもちろん素晴らしいのですが、ドキュメンタリーで目引いたのは、フジコさんの下北沢の自宅のインテリアでした。お母さんが買い取った劇団の稽古場が自宅でしたが、稽古場らしい広い部屋にグランドピアノが置かれています。壁にはたくさんの写真が額に入れられて、かけられています。アンティークの家具はウィーンの古いカフェで使われていたものらしい。

ヨーロッパ風の部屋もすごいのですが、夜ごとにフジコさんがピアノを弾くシーンはさらにすごかったです。間接照明で少しほの暗い室内、窓には三日月の形をした電球が連なっています。いまでは北欧系の雑貨屋さんで売っている電球も当時は珍しく、簡単には手に入りませんでした。

そんなフジコさんの部屋のインテリアは、フジコさんが長年ドイツで身につけた文化として、視聴者に迫ったのだと思います。

欧文化としてのクラシック音楽

もうひとつ、ドキュメンタリーで印象的だったのは、フジコさんが「私の国は天国だよ」と言っていたことです。フジコさんは長い間才能を認められずに不遇だったので、とある事情で無国籍になり難民としてドイツに留学せざるを得なかったので、この世では報われないので、あの世での希望を願うから言っているのかなと思いました。

でも、フジコさんは成功してからも、変わらずに居場所は天国だと言っていましたし、天国でショパンやベートーベンに会って話すのが楽しみだと言っていました。フジコさんはクリスチャンだったそうですが、これはフジコさんの信仰だったと思います。

フジコさんのドキュメンタリーは、フジコさんを育て、フジコさんが背負っていたヨーロッパ文化を従来のクラシック音楽とは違った形で視聴者に見せたので、大きな反響を呼んだように思います。日本ではクラシック音楽はハイソで宗教性は削がれていますが、フジコさんが見せたいわば文化は、弱者に寄り添う、宗教的なやさしさのあるものだったと言えるでしょう。

フジコ・ヘミングさんは本当に素敵なピアニストですね。ごきげんよう。

草々

(散歩好きの文明批評家)

話題はスマートICと花火大会 土浦で新年賀詞交歓会

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鳶職組合による木遣り

土浦市の経済3団体(商工会議所、観光協会、商店街連合会)主催による新年賀詞交歓会が7日夜、市内のホテルマロウド筑波で開かれ、地域の経済人を中心に約300人が参加した。土浦鳶職(とびしょく)組合の祝木遣(きやり)唄でスタート。主催側代表、市長、国会議員、県会議員のあいさつの後、新年恒例の懇親会に入った。

あいさつする中川商工会議所会頭

3団体を代表してあいさつした中川喜久治土浦商工会議所会頭は「今年は巳年。蛇は成長過程で脱皮を繰り返す姿が再生の象徴と考えられている。土浦の再生・発展に向け、皆さまから提言してほしい」と述べ、地域にプラスになる動きとして、TXの土浦方面への延伸、常磐高速道の土浦スマートIC設置を挙げた。

安藤真理子市長はこれを受け、「これまで種をまいてきたことが実りつつある。昨年は、国土交通省から、土浦スマートICの事業化を決めてもらった。この施設は、本市だけでなく、地域の交通、救急医療にも大きく寄与する。1日も早い開設を目指したい」と、今年の目玉施策に位置付けた。

あいさつする安藤土浦市長

地域貢献をアピール

国会議員で最初に登壇した青山大人衆院議員(立憲民主、茨城6区小選挙区)は、「国や自治体が発注する事業の小額随意契約の在り方が見直される。この50年間変わらなかったこの問題について、われわれ野党は政府を追及、熟議の国会で実現する運びになった」と述べ、地域経済界にプラスになる政策をアピールした。

また、国光あやの衆院議員(自由民主、比例区)も地元貢献を意識して、「地域の皆さんが気になっていた問題、老朽化している霞ケ浦医療センター(土浦市下高津)問題がやっと動き出すことになった。2月には(医療支援体制の)デジタル化、今夏には建物の(改修)工事が始まる」と、具体的な日程を明らかにした。

参院議員では、今夏に選挙を迎える上月良祐議員(自由民主、茨城区)と小沼巧議員(立憲民主、同)があいさつ。「蛇が何かするのではなく、何かするのは我々だ。土浦をよくできるのは、皆さん、地域のリーダーの方々だ」(上月議員)、「国の中心市街地活性化事業の本県対象市は、水戸、土浦、石岡、鹿島だが、担当役所によると、一番成績がよいのは土浦ということだ」(小沼議員)と、出席者を持ち上げた。

衆参同時選挙は5%?

懇親会では、昨年は警備体制の不備から中止に追い込まれた「土浦の花火」について、予算の無駄遣いなど市執行部を批判する声が多く聞かれた。また、今夏の参院選と同時に衆院選があるかどうかもあちこちで話題になっていたが、「その可能性は5%」(出席衆院議員)ということだった。(坂本栄)

「メリクリ」から「アケオメ」《続・平熱日記》173

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絵は筆者

【コラム・斉藤裕之】年末に首が痛くなって、大概「寝違えた?」と聞かれるのだけれども、症状は寝違えた時と同じでも起きている時に痛くなってきたので、「起き違えた」と言うべきか。「右投げのピッチャーが寝違えたら、1塁ランナーをけん制するの、大変だろうなあ」。首に良かれと湯船につかって、湯煙を眺めながらそんなことを思ってみた。

それより、さかのぼること1カ月。左手親指の先をケガしてしまって、たかが指先と思いきや、これが大層不便。シャツのボタンを留められないのに途方に暮れるし、卵の殻をむくのが左手の親指だったり、ラップを引き出すのに左手の親指を使っていることに気付いたり。

助手席に婚姻届

そんな年末のある日のこと。車がパンクしてしまって、はて困ったと思ったら目の前がガソリンスタンド。「こりゃ、交換だねえ。あいにく、うちはスタッドレスないんだけど…。そうだな、ちょっと待って」。店主と覚しきおじさんはどこかに電話をしてくれて、「10分ぐらいしたらタイヤ来るから」だって。

しばらくして、スタッドレス1本を持って現れたタイヤ屋さん。地獄に仏、いや神様か。イブの日の奇跡。そして、その車の助手席には「婚姻届け」の書類が。

実はギネスものの短い結婚生活を終えた次女が、新しい彼氏と我が家に住むことになって2カ月。「パパ、婚姻届けお願い」と言われ、市役所に行った帰りの出来事。例えるのはどうかと思うけど、パンクしたタイヤと運よくすぐに付け替えられた新しいタイヤに、何となく次女のことが重なった。

翌日、ジングルベルの流れる日にめでたく入籍。1年に2度結婚するという離れ業で、1年を締めくくったというわけだ。

鳥の足おせち

令和7年巳年。はて、ヘビに首はあるんだろうか? カマクビなんて言うが、ヘビが寝違えることはないだろうから、まあいいとして…。首に若干の違和感はあるものの、親指の傷も癒えて、なんとか新しい年を迎えることができそうだ。

ということで、私は当然クリスマスツリーを片付けて正月を迎えると思っていたら、「海外じゃあ年明けまで飾っておくのよ」と次女。一瞬、「はあ? 正月にツリー?」と言いたくなったが(こんなささいな言い争いから宗教的な争いは始まるのかも)、ここは新年を迎えるに当たって波風を立てないように、次女に従うことにした。

1週間前には鳥の足にかぶりついていたこの国の人々は、正月を迎えるや、おせちのお重を開けて歓喜する。そう、時代は「メリクリ」から「アケオメ」なのだ。

厄よけの煮干し

元日夜明け前。恒例行事というほどのことでもないが、冷凍庫からいりこを一つ取り出して描く。いりこは私にとっては原点に立ち返ることのできる大切なモチーフ。さらにこじつけるなら、煮干しの類は厄よけに使われるので1年の始まりにはふさわしくもある。

何を信じ何に祈るのかは人それぞれ。でも願うことはみんな同じ。「家族が健康で無事に1年過ごせますように」(画家)

103万円超え、大山鳴動して小ネズミ1匹【ひょうたんの眼】75

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写真は筆者

【コラム・高橋恵一】国民民主党は「103万円の壁を引き上げて働き控えを無くし、手取りを増やす」という公約を掲げ、衆議院議員選挙で議席を4倍増にした。我が国の異常な低成長経済の要因が低コスト低賃金構造にあり、政府も賃金引き上げや非正規就労の修正を言い出す現状で、低賃金層の「手取りを増やす」公約は大いに支持された。

さらに同党は、壁撤去の具体策として、所得税の基礎控除額を75万円引き上げて課税最低ラインを178万円にする政策提言を打ち出した。大型減税になるが、財源が示されず、自公与党は慎重論を示して、来年度の税制改革大綱には、壁を123万円まで引き上げるとして、今後も178万円を目指して協議することにした。

国民民主は国会でのキャスティングボートを握っていると強気だ。玉木雄一郎代表(現在役職停止中)は、123万円では、減税額1万円しか手取りが増えず、178万円なら手取りが8万円増えると発言した。同党の公約は、給与収入の手取りを75万円(178万-103万)増やすはずだったのでは?

玉木氏は、手取り増加の具体策を、所得税減税、基礎控除の引き上げに求めたことで大きな間違いを起こしたのだ。同党は、減税の経済刺激効果も主張するが、累進課税の所得税減税は高所得者に効果が偏り、消費性向が低く経済循環への寄与度が低いのは経済政策の常識だ。同党は、年収の増額、賃上げの具体策と支払者の賃上げ原資の保障策を提示すべきだったのだ。

最低時給の引き上げが大事

「年収の壁」というのは、働く時間数を増やすなどして年収を増やそうとする場合、年収の増加分が、増収に伴う税負担増や社会保険料の新たな負担、親などの扶養者への手当や所得控除額が減額あるいは無くなることで、就労時間増による増収分が相殺あるいは手取りが減るなどで、就労控えを起こす現象をいう。

年収の壁は、100万円、103万円、106万円、130万円、150万円、201万円と段階がある。国民負担の在り方について、充分に議論が必要だ。

繰り返すが、「壁」を撤去したとしても、103万円の給与の増額を実現する方策は講じられていない。具体に、支払い事業者の原資増額をどう確保するのか? 何万円賃金アップできるのか?明示すべきだろう。壁の撤去により、働き控えが無くなれば、年額9万円弱増額になるかもしれない。手取り増を喧伝した政治家は、せめて、最低賃金の1500円を前倒しし、全都道府県を同額にすべきだろう。財政措置をするなら、そこに効果的に支出すべきだ。

現在の政治状況では、壁を123万円に引き上げ、既に壁超え年収になっている所得税納税者に1人当たり1万円減税の「恩恵」が生じることになるだろう。多分、誰も気付くことのない年額1万円、月当たり833円の手取り増になる。(地図好きの土浦人)

何か別の方法を考えよう《続・気軽にSOS》157

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【コラム・浅井和幸】

Aさん「普通、ここまで気を使って、優しい言葉をかけたら、ありがとうって言うべきじゃないですか?」

浅井「ありがとうと言ってくれたら、うれしいですよね」

Aさん「そうでしょ? じゃ、なぜうちの息子はありがとうと言わないのか、私にはさっぱり分かりません」

浅井「そうはいっても、理想的なコミュニケーションって難しいですよね。タイミングもあるし、それぞれの性格もあるし、親子との関係性もありますから」

Aさん「じゃあ、優しくしないほうがよいのですか? ありがとうぐらい言うのは当たり前じゃないですか?」

浅井「Aさんの優しさはいつも通りだと思います。先日も同じようなことがありましたね。そのとき、息子さんはありがとうと言ってなかったですね。だとすると、今回も当たり前に同じことが起こったと、捉えたほうがよいでしょう。何か別の方法を考えてみましょう」

大きくずらした方法を試す

私たちの生きている現実は実験室とは違いますから、全く同じ状況はそろわないし、全く同じ結果は起こしにくいです。ですが、やっぱり似たような要因が集まれば、似たような結果が現れます。

どうすればよい結果が出るか分からないときは、前とは少し違った方法を試す、ときには大きくずらした方法を試みるのも、よいかもしれません。同じアプローチをしても、相手の受け取り方が変わることで、今までと違う結果が出ることもありますが、自分の言動を変えることで別の結果が出やすくなります。

これを裏返すと、自分が同じ言動をしても結果が変わったとしたら、自分が思っている以上に、相手や環境などの要素が変わったということです。それに気づけるのは、より自分の目的にあった次の手が打てる人と言えます。

今、目の前で起こっている現実を「信じられない」とか「あり得ない」とかで片づけずに、実際に起こっている事実を踏まえて、あり得ることとして受け止め、それに対しどのようなアプローチをすれば、目的の状況に近づけるかを考えて試していく。

うまく物事が運ばないと感じることが多く、自分は運がないとか、呪われていると考えることが多い人は、このようなことを今年1年試してみてください。解決能力のある人に相談するだけでも続けてみてください。

人とうまく話し合いたい、仕事の能力を上げたい、金持ちになりたい、何か趣味を持ちたい、体力をつけたい、嫌いな人から離れたい―など、具体的な目的・希望があったら、具体的な方法が見つかるはずですよ。(精神保健福祉士)

「ひきこもり」も悪いものではない《看取り医者は見た!》33

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雪景色(写真は筆者)

【コラム・平野国美】前回(12月22日掲載)、高齢の患者さんから聞いた「不登校だった友だちは後に社長になった」という話を紹介しました。この話を聞き、人の多様性について興味を持ちました。不登校や「ひきこもり」を奨励しているわけではありません。多様性について考えるようになったのです。

誤解を恐れずに言えば、ひきこもりも悪いものではないと思えるのです。つくば市にはたくさんの研究所が存在し、多くの研究者が住んでいます。彼らと話していると、「社会的にバランスがよい人」もいますが、バランスが悪いと思われる方もおられます。

一般的に、コミュニケーション力や社会性がない人はマイナス評価されますが、自分の専門分野において独特の存在感があるのです。

ある研究職の方は南極越冬隊に参加されました。1年間を氷に閉ざされた所で閉鎖的な人間関係の中で暮らしていくことを、皆さんはどう考えますか? オーロラ見学に数日間とかなら分かりますが、あの極限空間の中で1年を暮らすとなると、どうでしょう? そんな環境の中で暮らした方からお話を聞く機会がありました。

「あんな過酷な場所に、よく行く気になれますね」との質問に対する答えは衝撃的でした。「あんな素晴らしい場所はないですよ。自分の仕事さえきちんと行えれば、誰とも話さなくても済むのです。私には天国です」と、笑みを浮かべて話されました。

この方、人付き合いが上手な人ではありません。南極のような閉ざされた世界の方が適しているのかも知れません。南極のように「自閉症気味の方が活躍する場所」もあるのだと思いました。

個々の資質は多様性の一面

哲学的に考えると、その個人の資質や、それに影響を与える遺伝子にも意味があると思うのです。カントの義務論によれば、すべての人間は尊重されるべき固有の価値を持っており、自閉症であろうと多動であろうと、我々社会は彼らの権利や尊厳を守る責任を負っているのです。

哲学者ハイデガーは、人間の存在はその多様性と複雑性に価値があるとしました。個々の資質は人間の多様性の一面であり、その独自性が社会や文化に多様な視点を提供します。ニーチェの生の哲学によれば、個々の存在はその独自の生きる意味を持っています。自閉スペクトラム症(ASD)の人も、自身の生きる意味や目的を見出せば、それが自身の幸福や自己実現につながると思うのです。

近年、多様性という言葉がよく使われますが、私の患者さんを通して個性を眺めていくと、いろいろ気づかされることがあります。(訪問診療医師)

1年遅れで「協議会」設置へ 洞峰公園 つくば市

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洞峰公園

昨年2月、つくば市が県から無償譲渡を受けた洞峰公園(つくば市二の宮、約20ヘクタール)の管理運営方法などを協議する「協議会」=メモ=が3月にも設置される見通しになった。五十嵐立青市長は当初、昨年3月に協議会を設置する方針を示していた。1年遅れてようやく設置される。

市公園・施設課によると、協議会の組織イメージや構成について、昨年12月20日開かれた第3回洞峰公園・運営協議会設立準備会で方向性がまとまった。同準備会はメンバーも会議自体も非公開で進められ、昨年3月、4月、12月に計3回開催された。昨年6月には準備会の提案で、洞峰公園の自然環境や施設などの情報を市民と共有するためのイベントを市が開催した(24年6月5日付)。

1年遅れた理由について同課は、準備会で、洞峰公園について市民の理解が足りてないなどの意見が出て、6月にイベントを開催し、さらにイベントで市民から意見をもらって、意見を反映させるため時間がかかったなどと説明している。

委員会と分科会の2層

協議会で協議する内容は、公園や公園内施設の維持管理や運営、施設の長寿命化、自然環境の保全のほか、教育面での活用などについて協議し、公園管理者である市に提案する。当初の具体的な議題として、体育館やプール、テニスコートなど施設の利用料金、樹木など植栽の管理方法、駐車場の拡張の検討などのほか、子供たちが自由に遊ぶプレイパークなど子育てや教育での活用方法の検討などが想定されるという。

組織は委員会と分科会の2層構造で、委員会のメンバーは公募せず、学識経験者4人程度、市民・住民団体代表が最大8人程度と、施設管理事業者、造園関係団体、無償譲渡前に洞峰公園の管理担当だった県都市整備課長、つくば市議、市の各分野の担当課など計20人程度で構成する。

分科会は①環境➁教育③施設管理・運営の3つに分かれ、委員会メンバーである学識経験者と市民・住民団体代表などがそれぞれリーダー、サブリーダーとなるほか、メンバ―を一般から公募する。公募対象はつくば市内のほか、公園を利用する市外からも広く公募。3分科会それぞれ10数人程度集まると想定しているが、現時点で人数は制限しない方針だ。分科会の協議方法は、それぞれ公募で参加した市民らが各テーブルに分かれて意見を出し合う形になるという。

分科会と委員会、公園管理者である市との関係は、分科会はそれぞれ、参加メンバーの意見を集め、委員会は各分科会から出た意見を調整して市に提案する。市は委員会の提案を受けて管理・運営方針を作成などする。

協議会設置に向けた今後の日程は、1月上旬ごろに市が選定した委員会のメンバー候補者に参加を依頼、続いて1月中旬ごろから3つの分科会のメンバ―を市内外から公募する。2月下旬には委員会、分科会のメンバーをそれぞれ確定し、3月下旬には協議会を設置したいとしている。

協議会の開催日程については各分科会を3カ月に1回程度、3つの分科会のいずれかを毎月1回程度開催するペースになるのではないかとしている。会議は委員会、分科会いずれも公開で実施する予定という。

市が洞峰公園の無償譲渡を受けるに当たってはこれまで、公園の維持管理費のほか、体育館・プール、新都市記念館の長寿命化費用などの負担軽減が市議会や市民説明会などで指摘されてきた。五十嵐市長は今後の公園管理などの在り方について協議会を設置して決めると議会や説明会などで説明し、2024年度当初予算に、協議会を年間10回程度開催する予定で委員20人分の謝礼として200万円を計上していた。協議会で方針が出されるまでの公園の維持管理や運営については現状を維持するとして、2024年度については、これまで県の指定管理者として同公園を維持管理していた事業者に随意契約により年間約3億7900万円で維持管理と運営を委託している。(鈴木宏子)

※メモ
【協議会】2017年6月の都市公園法改正で、パークPFI(公募設置管理制度)などと共に新たに設けられた制度。都市公園の利用者の利便の向上に必要な協議を行うために設置することができる組織で、メンバーは、公園管理者、関係行政機関、関係自治体、学識経験者、観光関係団体、商工関係団体と、その他の公園利用者の利便性の向上に資する活動を行う者(住民団体、愛護会、自治会、指定管理者、公園施設の設置・運営者など)などで構成するとされる。各構成員は協議が整った事項について尊重義務がある。

心を動かされるということ《ことばのおはなし》77

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写真は筆者

【コラム・山口絹記】今、大みそかにこの記事を書いている。いつももっと早めに書いておけば、などと思うのだが、あたふたと文章を書いている時間も嫌いではなかったりするので、始末に負えないタイプのライターである。

私の書いた文章は、毎月第1金曜日に掲載される予定で、その週の火曜日には提出にすることになっている。実際に掲載される日は前後することが多いので、あまり時節にこだわった文章を書くことも少なくなった。なので、今回も年末とか年始とか、そんなことは関係ない、とりとめのないおはなしをしよう。

先日、ストリーミングサービスで適当に誰かの作ったプレイリストを流しながら本を読んでいると、ふと何語だかわからない曲が流れてきた。当然意味がわかるはずもなく、何度聴いても口ずさむことも出来ないのだが、不思議なくらい心に響いて、しみじみと聴きいってしまった。

音を伴わないことば

私たちの身体には、空気の振動をとらえ、意味とは別の次元で感受する能力が備わっている。歌詞の意味がわからないのにも関わらず、なぜか心を動かされるという経験は、きっと誰にでもあることだと思う。

音楽をやっている人間からしたら、至極当然のことなのだろうが、ことばという観点だけからみると、かなり奇妙なおはなしである。ことばというものの使い道は、相手に何らかの意味を伝えるものであるはずなのに、ひとたびそのことばが音として発せられ、メロディーになると、私たちはその純粋な意味だけに反応できなくなる。これは、とても不思議で、素晴らしく、そして恐ろしいことだと思う。

私の書いたこの文章は、音を伴わないことばとしてあなたに届くだろう。これが幸いなことなのかどうかは、私にはまだわからない。(言語研究者)

地球環境問題、多様な意見《ハチドリ暮らし》45

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写真は筆者

【コラム・山口京子】私は2019年に初孫、24年に2人の孫を授かりました。孫たちが平均寿命を生きるとすると、2100年も生きていることでしょう。その時の自然環境はどうなっているのでしょう。都会で暮らしていると、リアルに見る生き物は、人間と犬や猫、数種類の鳥たちでしょうか。田舎では、川から水生生物がいなくなったこと、チョウやハチたちも激減しているのを感じます。

昨年のような酷暑や異常気象が今後も続くのかどうか…。自然環境については、専門家の意見も対策も分かれています。いろいろな意見の背後に、それぞれの思惑が見え隠れする場面もあります。難しいことはわかりませんが、自分ができることとして、余計なものは買わない。できるだけ国産のものを買う。無駄にしないなどを意識しています。

3つの見解や態度

環境問題について、次のような見解や態度があります。一つは、地球全体の自然環境なんて、大き過ぎて考えたこともないし、分からない。新聞やテレビを見ても、環境が深刻な気がしない。温暖化と言われているけど、まだ大丈夫ではないか。個人ができることは限られるし、このままが続くだろうと思って暮らしているという態度。

二つ目は、自然環境は著しく悪化している。気候危機、水質や土壌、大気汚染、生物多様性の危機が止まらない。この5~10年のスパンで、適切な対策を立て、かつ実行しなければ、後戻りができなくなる時期を迎える。国や国際機関に厳しいルールを設けるよう働きかけるとともに、個人もできることをしていくべきという、研究機関やジャーナリストからのメッセージ。

三つ目は、私たちの消費の在り方が環境危機に深くかかわっている。消費のあり方を見直し、経済活動や政治判断に働きかけることが重要ではないか。持続可能な環境と社会のために、消費のあり方を変えていくという、消費者団体、NPOなどの活動。

増える電力需要

先進国のエネルギー消費は過剰であるので減らすべきという指摘もあります。しかし、国際電気通信連合の調べによると、ITや通信関連などの企業の電力消費が急増、トップは中国移動通信とか。米国のマイクロソフト、アマゾン・コム、アルファベットの3社の合計電量消費がフィリピン1国分に相当するという記事もありました。

公的機関や環境に取り組むNGOなどの情報に触れ、事実に近づかなければ…。「環境」という2文字ですが、知るほどに不思議なワールドです。(消費生活アドバイザー)

つくば市在住のシニア女性2人 トライアスロン世界大会に出場へ

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アイアンマン世界選手権大会に出場が決まった(左から)大貫千春さんと水野美津子さん=つくば駅前

つくば市に住む水野美津子さん(63)と大貫千春さん(58)が、2025年10月ハワイで開催されるトライアスロン世界最高峰の競技大会「アイアンマン世界選手権大会」=メモ=に出場する。水野さんは60-64歳クラス、大貫さんは55-59歳のクラスに出場し、海外からの出場者と競う。

ワールドシリーズで優勝

2人は昨年9月、北海道北斗市と木古内町で開催された「アイアンマンジャパンみなみ北海道2024」(日本トライアスロン連合など主催)で、それぞれ年代別で優勝したことから出場が決まった。水泳が3.8キロ、自転車180キロ、長距離走42.2キロ、計226キロのコースで、9年ぶりに国内開催されたトライアスロン大会ワールドシリーズの一つだ。

水野さんは60~64歳部門で水泳1時間15分25秒、自転車ロードレース6時間18分49秒、長距離走4時間52分47秒、トータル12時間40分56秒を記録した。大貫さんは55~59歳部門で水泳1時間26分47秒、自転車6時間23分42秒、長距離走4時間6分22秒、トータル12時間11分46秒の記録で優勝した。ほかに55―59歳男子の部でつくば市の篠塚恭男さんが優勝し、つくばから計3人がアイアンマン世界選手権に出場する。

きっかけは「人との縁」

今年の宮古島トライアスロン大会で自転車ロードレースを走る水野さん=本人提供

水野さんは東京都出身、トライアスロン歴はわずか5年だ。子供の頃、競泳をやっていて中学は平泳ぎで全国中学生大会出場、高校は国体やインターハイに出場し、ジュニアオリンピックで優勝した実績がある。たが子育てなどで34年間特に運動をしないままだったという。53歳になって久しぶりに水泳を再開。すっかり筋肉は落ちていたが徐々に勘を取り戻した。体を動かすことが好きで、ランニングも始めた。最初はなかなか長距離を走れなかったが、ランニング仲間ができたことで続けられたという。

フルマラソンや水泳大会に出るようになり「もしかしたらトライアスロンができるかもしれないと思った」。自転車を買いに行った市内の店にトライアスロンをやっている人がたまたまおり「人との縁で始められた」と語る。ただ自転車はなかなか上手くいかず、転んでけがをすることも多く「ヘルメットは3つ壊した」。

初めてのトライアスロン大会出場は2018年に開催された世界湖沼会議開催記念&りんりんスクエア土浦オープン記念 第1回霞ヶ浦トライアスロンフェスタ。そこでいきなり年代別クラスで優勝した。すっかりトライアスロンに夢中になり「毎月のように大会に出た年もあった」と笑顔で語る。トライアスロンだけでなく、水泳大会やマラソン大会、山などを走るトレイルランニングにも出場している。これまでつくばマラソンなどの国内大会のほかハワイのホノルルマラソンに3回出場、トレイルランは常陸國トレイルラン(石岡市)50キロと安達太良山トレイル(福島県二本松市)50キロでそれぞれ年代別1位、世界マスターズ水泳選手権2023九州大会では年代別個人メドレーで世界4位入賞した。

現在、水泳は週4日、土浦のスポーツクラブで2000~2800メートルを4種目泳いでいるほか、ランニングは自宅から洞峰公園をぐるぐる回ったり、赤塚公園から筑波大まで12~20キロを一人または仲間と走っている。自転車はスポーツジムでのバイク漕ぎのほか、日曜日は自転車仲間と土浦から茂木、霞ケ浦一周などを走っている。

運動は苦手だった

今年の石垣島トライアスロン大会で長距離走を走る大貫さん=本人提供

大貫さんは稲敷市出身、トライアスロンを始めて9年だ。トライアスロンに出合う前は「運動が苦手だが、運動不足を解消したくて自宅近くの洞峰公園でウォーキングを始めた」と話す。「もっと早く歩かないと効果が出ない」と思いランニングを始めてみたが、最初は1キロも走れなかった。たまたまランニング中、信号待ちで他の人を指導していたランニングコーチにランニングの体験に行ってよいか声を掛け、ランニングクラブに入会した。

大貫さんも、ランニングクラブにトライアスロンをやっている人が偶然いて勧められたのが始めるきっかけだった。ランニングだけをやっているときは「足が痛い」「タイムが伸びない」など悩みがあったが、泳いだり自転車に乗ったりすることが気分転換になったという。

現在、つくば市内のランニングクラブで週2日、朝6時から8~10キロのモーニングラン、別の週2日はスポーツクラブで1時間半くらいペースランニングなどをしている。さらに週4日、土浦のスポーツクラブなどで1.5キロくらい泳ぎ、ロードバイクは月4回くらいロングライドなどを実施している。

2024年のトライアスロン成績は、石垣島トライアスロン年代別3位、五島長崎トライアスロン女子総合8位、年代別1位、うつくしまトライアスロン年代別1位など好調だった。つくばマラソンなどマラソン大会にも積極的に参加している。足が痛いときは水泳で体を動かし、遠くに行きたいときは自転車に乗る。「自転車は100キロくらい走れる。ランニングより遠くまで行けるのがいい」と語る。

仲間がいるから

トライアスロンを続けられるモチベーションは「一緒に頑張れる仲間がいるから」と水野さんも大貫さんも口をそろえる。大会が宮古島など南の島で開催されることが多いのも楽しみだという。2人は1年ほど前から千葉県我孫子市にある同じトライアスロンクラブに所属し、日にちが合えば一緒に練習することもある。初めての世界大会出場を決め、2人とも「目標は完走すること」と意気込みを語る。(伊藤悦子)

※メモ
【アイアンマン世界選手権大会】1978年から開催されているトライアスロン競技大会。米国、カナダ、フランス、オーストラリアなどさまざまな国から参加する。2024年の同大会は55-59歳クラスに134人が出場、60-64歳クラスは74人が出場した。同大会に出場するには、各国で開催される大会で優勝するなど条件がある。

いろいろな秩序や構造が変わる年に《吾妻カガミ》199

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書は梅澤煕子氏

【コラム・坂本栄】今年はこれまでの秩序や構造が大きく変わる年になりそうです。関税を引き上げて国内産業を守ろうとするトランプさん(自由貿易システムの破壊)、武力で政治目標を達成しようとするプーチンさん(古典的な戦争論の復活)といった政治経済の話だけではありません。メディアの世界も大きく変わるような気がします。

ネットにかじを切る新聞社

昨年12月、新聞を読んでいて納得した記事が2つありました。日本経済新聞の電子版有料読者が100万人を超えたとの告知記事(10日朝刊)と読売新聞が米ダウ・ジョーンズ社と提携して電子版有料経済ニュースサービスを始めるという告知記事(17日朝刊)です。前者はネット経由で経済情報を入手する人が大台に乗ったということ、後者は発行部数トップの新聞社もネットサービスを経営に組み込む時代に入ったということです。

国内の新聞部数はピークの半分以下に減っています。21世紀に入り、情報を伝える主役が新聞からネットに移りつつあることが主因ですが、新聞社も経営資源をネットに振り向けるようになりました。

7年前、本欄25「…部数10年で2割減…」(2018年2月19日掲載)の中で、新聞の部数は早晩「絶望的な数字になろう」と書きました。減少のテンポは予想よりも激しいようで、新聞社のネット・シフトは当然でしょう。新聞で育った団塊の世代(1940年代後半生まれ)が世を去り、新聞をあまり読まないネット世代の時代に入りますから、新聞社は業態名の変更を迫られるかも知れません。

新聞やTV業界にとってショックだったのは、YouTube、Facebook、X(旧Twitter)といったSNSの影響力が伝統メディアのそれを上回るようになったことです。都知事選挙(昨年7月)や兵庫県知事選挙(同11月)では、個人やグループがSNS経由で発信する動画や記事へのアクセスが増え、大手メディアの影が薄くなりました。

ニュースの伝達手段をペーパーに依存する新聞社、電波やケーブルに依存するTV・ラジオには、経営上の問題(有料購読者と広告収入の減少)解決のほかに、ネット上の記事や動画を好む有権者(伝統メディア離れ)にどう対応するかが新たなテーマになりました。

動画/音声コンテンツも大事

本メディアは、地域紙の血を引き継ぐ本サイトを発信の拠点にしながら、各種SNSや有力プラットフォーム(GoogleニュースやYahoo!ニュース)経由でも発信しています。

運営と編集の特徴は、①商業メディアでなく非営利のNPOメディア、②経費は法人の寄付や会員の会費などに依存、③取材にはアマチュア記者の参加も可能、④つくば・土浦エリアの話題を中心にリポート、⑤行政の監視も編集方針の柱、⑥識者による寄稿(コラム)を歓迎、⑦他の地域メディアとも連携―などに整理できます。

今年は特に⑦に留意します。本サイトは当初、地域紙のコンテンツ(情報内容)であった記事と写真だけでなく、苦手な動画や音声も展開しようと、地域のFM放送局、ケーブルTV局、ネットTV局などとの連携を図りました。ところが、コロナ禍でコンテンツの受託や提供が中止あるいは縮小に追い込まれたこともあり、動画と音声コンテンツが少ないからです。

ネットメディアの特性は、サイト内で記事や写真をまとめて閲覧してもらうだけでなく、記事1本1本をSNSやプラットフォーム経由でも伝えられることです。このサイト発信と分割発信を動画・音声コンテンツにも広げるため、動画・音声メディアとの連携を再度強めるつもりです。(NEWSつくば理事長、経済ジャーナリスト)

雪入という集落《写真だいすき》35

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雪入忘れ柿。寒くなると、なった木の実を鳥たちのために残す(撮影は筆者)

【コラム・オダギ 秀】集落を進むと、少し高地になったところに小さな墓地があった。辺りには彼岸花が咲いていて、とても安らぐような静かな土地だった。だが、話を聞いてみると、それなりに色々つらいことがあり、大変だなというのが、ボクの感想となった。

彼岸花を撮影していると、近所のお婆(ばあ)さんが声をかけてくれた。そして、見ず知らずのボクに「ナシ食べていきな」と言う。それじゃと思ってボクは、婆ちゃんの家へ行く。婆ちゃんはボクを上りかまちに掛けさせると、ナシをむきながら、色々と話してくれた。

「イノシシがひどくてね。作ったもの作るそばから、畑荒らされて、みんな食べられちゃうのよ。囲いをしても、その下掘って入ってくる。だから、教えてもらって、畑の周りに電気の囲いしたのよ。うちなんか、小さい畑だけど10万近くしたのよ、もう大変。最初はよかったけど、すぐ慣れて穴掘って入ってくる。お墓んとこにワナあったでしょ。仕掛けても入ってこないのよ、わかってて。困ったわねえ」などと。

途中の道路にウリボウ(イノシシの子。子イノシシはウリのような模様がある)が、車にはねられたのかなあ、死んでいましたよと言うと、「そう、車だって避けられないわよ。ちょいちょいいるんだから。気イつけてね」。

ぼっち珈琲を淹れながら…

この雪入(ゆきいり、かすみがうら市)という集落が、ボクは大好きだ。小さな部落だが、とても景色がよく、住む人がやさしい。ウロウロしていると、すぐ「どこに行くの?」と、誰かが声をかけて案内してくれる。子どもたちは、ニコニコしながら、あいさつしてくれる。そんな郷(さと)で聞く動物との闘いは、とても現実的だった。

集落の外れの小さな川辺で、ボクはぼっち珈琲を淹(い)れて飲みながら、撮影の反省をする。水源がどこかは知らないが、ちょっと跨(また)ぐには幅広すぎる小川が、そばの山地からきて集落の横を流れている。その水を、人々は田畑に引いているのだろうか。

清冽(せいれつ)な水で、流れを挟む草地に小さなキャンプ椅子を置き、その水の流れを眺めながら珈琲を飲んでいると、様々な思いが湧く。至福の時間だ。コンロにくべるわずかな火に癒やされたり、満たされたりする。カメラを磨いたりレンズを拭いたりする。色々な土地で、様々なものを撮り、たくさんの思いを抱く。だから、写真がだいすきだ。(写真家、日本写真家協会会員、土浦写真家協会会長)

学校心臓検診と心臓突然死《メディカル知恵袋》8

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筑波メディカルセンター病院

【コラム・髙橋実穂】学校心臓検診は海外にはない日本独特のシステムです。1958年、就学時に健康診断を行うことが定められ、73年から学校健診の必須項目に学校心臓検診が指定されました。95年から、小・中・高校の1年生全員に心電図検査が義務付けられました。該当する学年の生徒は、春に学校で一斉に心電図をとっています。小学4年生にも行う自治体も増加しています。

学校心臓検診の目的と1次検診の役割

当初の目的はリウマチ熱によって起こる心臓病の発見・管理でしたが、未発見の先天性心疾患や川崎病による冠動脈後遺症の発見・管理へと変化してきました。最近ではほとんどの先天性心疾患は学校心臓検診の前に診断されているため、遺伝性不整脈や心筋症などの発見・管理が重要になっており、心臓突然死の予防にシフトしつつあります。

現在の学校心臓検診の流れを図1に示します。1次検診で行うのは、心電図、学校医の内科検診、心臓検診調査票などです。遺伝性不整脈や心筋症の発見のためには12誘導心電図(胸6カ所と両手両足4カ所に電極をつけて、合計12個の波形を得る心電図)が望ましいですが、まだ省略4誘導の地域もあります。学校医の診察はとくに聴診が重要です。無害性心雑音とそうでない心雑音、心音の異常などを抽出する機会になります。

心電図や学校医の聴診所見に異常がなくても、調査票の項目で2次検診に抽出することもあります。とくに運動時胸痛や動悸、失神などの項目が重要になります。

学校心臓検診と心臓突然死

学校管理下の心停止の発生場所は、グラウンド、プール、体育館を合わせて約8割が運動に関連しています。運動によって増悪する疾患を見逃さないために、学校心臓検診は非常に有用ですが、すべて発見できるわけではありません。

学校心臓検診で発見可能な疾患は、先天性心疾患、心筋症(多くは肥大型心筋症)、WPW症候群、QT延長症候群、Brugada症候群、川崎病の冠動脈後遺症、肺動脈性肺高血圧症―などがあげられます。QT延長症候群は図2のようなtorsade de pointes(TdP)と呼ばれる特徴的な心室頻拍(ひんぱく)から心室細動に移行して、失神や突然死を発症する遺伝性疾患です。

いくつかの遺伝子型が報告されていますが、一番多い遺伝子型のLQT1は水泳中や運動中にTdPが誘発されるので、学校生活での制限が必要です。

学校心臓検診の心電図で発見がむずかしい不整脈として、カテコラミン誘発多形性心室頻拍(CPVT)を図3に示します。これも遺伝性不整脈のひとつです。安静時の心電図では徐脈傾向以外に異常を示さないことが多く、運動あるいは精神的ストレス時にしか、心室期外収縮や心室頻拍、心室細動がおこらないことが発見が難しい理由です。失神をてんかんと誤診され、抗てんかん薬を内服しているケースもあります。

心臓検診調査票での突然死の家族歴や失神の既往とその状況が発見の契機になるため、調査票が重要であることがわかります。普段は元気なので、病識(びょうしき)が薄く運動制限が守られないこともあります。

学校心臓検診で発見できない疾患は、先天性冠動脈異常、大動脈解離、心筋炎、心臓震盪(しんとう)、特発性心室細動などです。心臓震盪は、前胸部に鈍的衝撃が加わることで心室細動が発生し、突然死の原因になります。中学生から高校1年生にピークがあり、野球のボールで起こることが知られていますが、ソフトボール、アイスホッケー、サッカー、バスケットボールなどの報告もあります。

筑波メディカル

突然死ゼロをめざすためには?

学校心臓検診の役割としては、聴診や心電図以外に調査票からもハイリスクを抽出し、2次検診、精密検査へ進め、正確な診断・管理をすることが重要です。しかし、学校心臓検診だけで心臓突然死を防ぐことはできません。

胸骨圧迫などの蘇生術や自動体外式除細動(AED)を速やかに、かつ適切に行うためには、AEDの設置推奨場所の順守や、職員全員・児童生徒による定期的な救命講習を行う必要があります。大人だけでなく、小児期から救命を学ぶことにより、他人の命を大事にする、いわゆる命の授業にもつながっていきます。(筑波メディカルセンター病院 小児科専門部長)

鉾田市の「とっぷ・さんて大洋」《日本一の湖のほとりにある街の話》31

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イラストは筆者

【コラム・若田部哲】温泉のイメージがあまりないと言われる茨城県。ところが実は、県内各所に特徴あふれる様々な温泉があるのです。そのひとつが、鉾田市の公営複合温泉施設「とっぷ・さんて大洋」。

1992年の開館以来、鉾田市や鹿嶋市など近隣の方のみならず、休日になると県外からも多くの方が訪れる同施設は、多い年には年間約20万人もの人が来館するそうです。その魅力について、支配人の生井沢さんにお話を伺いました。

この温泉の特徴と魅力は、なんと言ってもそのお湯。毎分67リットルの湯量でとうとうと湧き出るお湯は、コーヒーと見まがうほどの黒褐色! 初めての入浴時、その色に目はくぎ付け。しばし見入ってしまうこと必至です。

この特徴的な色は、土壌中の植物性堆積物が分解される過程で生成する「フミン質」に由来するそう。お湯の肌触りはなめらかで、入浴後もポカポカとした温かさが続くと評判です。黒湯は物によっては色うつりすることがあり、「持参した白いタオルが黒くなってしまった」と、笑いながら話すお客さんもおられるとのこと。

元日は特別に朝6時から営業

お湯の魅力に加え、眺望の素晴らしさも特筆すべきポイントで、露天風呂の眼前には、木立越しに鹿島灘の大海原が広がります。

「黒湯と木立越しの大海原」という字面でのご紹介だと、まるで高級温泉リゾートのような雰囲気を感じるかもしれませんが、この施設はとても地域密着。土地の方々の地元言葉も賑々(にぎにぎ)しく、地元に愛される庶民派温泉という風情で、その点もたまりません。

生井沢さんに、より温泉を楽しむための方法を伺うと、「当館は温水プールやトレーニングジムが併設された複合施設。『温泉』と、そうした設備が併設された施設はなかなかありません。運動してからご入浴いただくことで、よりリラックス感を味わっていただけるのでは…」とのアドバイスが。

さらに、毎年元日は特別に朝6時から営業を開始し、温泉につかりながら鹿島灘から昇る初日の出を眺められるそうです。新しい一年の始まりを、個性あふれる黒湯の温泉で迎えてみてはいかがでしょうか。(土浦市職員)

<注> 本コラムは「周長」日本一の湖、霞ヶ浦と筑波山周辺の様々な魅力を伝えるものです。

これまで紹介した場所はこちら

宍塚・吉瀬にスマートIC《宍塚の里山》119

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土浦学園線の陸橋から見下ろした常磐自動車道(筆者撮影)

【コラム・森本信生】国土交通省は、常磐自動車道路「(仮称)土浦スマートインターチェンジ(IC)」の新規事業化を、2024年9月6日に決定した。土浦市は、すでに2024年度予算でスマートICの調査委託费として3070万円を計上し、2024年4月に、都市計画課内にスマートIC整備推進室も設置、4人の専任職員を配置している。

ICは、土浦市とつくば市の境で、常磐高速道路と交差する土浦学園線(県道24号線)北側に設置し、接続道路は、宍塚、吉瀬あたりの土浦学園線とされている。上の写真は、土浦学園線の桜橋から、常磐自動車道路を見たところであるが、この周辺にICが建設されると考えられる。

詳細な場所は、土地買収などに支障をきたす恐れがあるため、現時点では公表できないとのことだ。建設費用は、高速道路から料金所までを東日本高速道路株式会社が負担、料金所から土浦学園線までを地元自治体が負担する。自治体負担の費用は国の補助が2分の1程度交付される可能性がある。

今後、土浦市では測量を行い、計画を策定する予定ということで、国、東日本高速道路、茨城県などの関係機関と調整しながら、線形などの詳細検討を実施し、具体的な計画が推進される運びとなったら、地元地区への回覽や地元説明会の開催など、段階を踏んで説明していくとのことである。

生物相などへの影響調査が必要

ICの整備は、中心市街地へのアクセス向上およびアクセス圈の拡大に伴う観光振興の支援、新たな土地利用の創出による企業誘致の促進や物流の効率、救急医療の支援、さらには、大規模災害時のリダンダンシー(冗長性)の確保や早期復旧活動の支援などの効果が期待できるとしている。

国交省事の業認可発表時(9月6日)資料では、IC整備効果として「中心市街地へのアクセス向上と防災機能の強化」「物流の定時制向上•物流の効率化の支援」の2点があげられている。

具体的には、「土浦駅・つくば駅」の中心市街地への渋滞箇所を回避や、土浦市上高津地区やつくば市中根金田台地区への所要時間の短縮、定時制の向上があげられている。しかし、すでに建設されている巨大流通施設(ZOZOBASEつくば2、Amazon Flex茨城つくばDS)がある、つくば市の流星台とさくらの森の境に位置する4車線道路である藤沢荒川沖線が、土浦学園線に接続される。

さらに、新たな流通拠点や企業誘致に成功すれば、土浦学園線の交通量は飛躍的に増加するだろう。現時点でも、「つくば市~土浦市間の一部道路区間においては、ピーク時以外でも渋滞が発生」(『TX県内延伸調査の結果について』茨城県政策企画部交通政策課2023年3月31日)とういう認識となっており、さらに深刻な渋滞を招くだろう。

このようなことから、IC利用が想定される地域の開発の進行、それに伴う交通量の昼夜の推定、大気汚染、騒音、振動、道路で削られる予定地の生物相などのIC設置による影響調査が必要だ。(宍塚の自然と歴史の会 理事長)

片っ端から喫茶店②スターバックスひたち野うしく店《遊民通信》103

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【コラム・田口哲郎】

前略

片っ端から喫茶店、第2回はスターバックスひたち野うしく店です。ひたち野うしくのふれあい通りに面し、JR常磐線ひたち野うしく駅から徒歩9分ほどのところにあります。スターバックスらしいレンガ風の外観、そしてギリシャ神話の人魚サイレンがモチーフのロゴマークの看板を見ると、あの深煎りのコーヒーの香りが漂ってくるようです。

店内は清潔で明るく、ソファ席、テーブル席があり、外にはテラス席も。いつも賑わっている印象で、比較的若い層が多い気がします。店員さんたちは笑顔で人当たりよく、親切です。スタバといえば期間限定フラペチーノです。今はクリスマス・年末らしく、いちごとチョコレートをメインにしたもののようです。

スターバックスは米国のシアトルで1971年に開業し、日本に上陸したのは1996年、銀座の松屋通り店。松屋百貨店のすぐ裏にあります。20代のころは大学の帰りによく行きました。学生の私にとってはスタバに行くために銀座に行く感じでした。

日本にスタバを持ってきたのは、サザビーですから、当初はちょっとおしゃれなカフェといった感じでした。96年というと、東京では空前のカフェブームが起き、カフェが従来の喫茶店に代わって増えたあたりですね。

いまや茨城には42店舗も

関東ですと、スタバは東京にしかないというイメージでした。とんねるずの石橋貴明さんが十数年前、テレビ番組で、赤坂(おそらくTBSの近く)のスタバのドライブスルーの話をしていたことを覚えています。

石橋さんのことですから、スタバのドライブスルーが当時の最先端のトレンドであることを意識しての発言だったと思います。そのドライブスルーも、ひたち野うしく店にあり、車が並んでいることも多いです。

スタバは東京だけのものではなく、店舗数も増えて、いまや茨城県には42店舗あるそうです。ひたち野うしく店ができたのは、2009年あたりと記憶していますが、そのときは、茨城にもスタバができるなんてすごいと思いました。

現在、我が家からスタバが徒歩圏内ですが、東京の郊外に住んでいる知人の家よりも最寄りのスタバが近かったりすると、ちょっとした優越感を覚えるのは不思議です。それほど、スタバは都会の証という印象があるのです。

ひたち野うしく店は、ほどよくお客さんがいて、東京の店舗のように混雑していて座れないということもあまりなさそうですし、いつ行っても、ゆっくり休める場所としてとてもよいですし、テイクアウトして歩きながら、公園で一服もできますね。

行けば、シアトルスタイルのコーヒーはもちろん、フラペチーノ、多彩なフードも楽しめる都会的なカフェ、スターバックスは郊外住宅地ひたち野うしくでも魅力的な所です。ごきげんよう。

草々

(散歩好きの文明批評家)

悠仁さま「寮に暮らしていただきたい」 筑波大進学で永田学長

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定例記者会見に臨む永田恭介学長(左)=26日、筑波大学本部棟

秋篠宮家の長男、悠仁(ひさひと)さまが筑波大学生命環境学群生物学類の推薦入試に合格し、来春入学することについて、同大の永田恭介学長は26日の定例記者会見で「合格おめでとうございますというスタンス。他の学生もそうだが、入ったからには筑波大学での勉学、筑波大学という場所での勉学を十分に伸び伸びとやっていただきたい」と話した。

宮内庁が、赤坂御用地からの通学を検討していると発表していることについては「ご家族がお決めになることだと思っていて、現在のところどうなるかは我々として知り得ぬところ。実際にはご相談は何も受けてない」とする一方「希望を言えば、本当は寮に暮らしていただけるといいなあということもある」とし、仮に寮に入る場合でも既存の寮で対応でき、特別な寮を学内に建てるなどはないとした。

警備については、悠仁さまの警備によって「(一般学生の)通常の学生生活が阻害されるような警備や、開かれた大学が壊れるような警備はしないと思う」とも話した。

キャンパスの環境整備については、街灯の数が少なかったり、樹木が大きくなり根が舗装道路を持ち上げてがたがたしている自転車道などがあるので「この際、今まで不備があったところは手を入れたい」と話し、学生がよく通るところを中心に補修したいと述べた。

悠仁さまが入学する生物学類は定員80人。推薦入試は64人が受験し悠仁さまも含め22人が合格した。同大は学際的な学びを重視しているため、入学後は、自分が入学した学類以外の科目を6単位以上とらなくてはならないという。実習については、特に生物学類は学内の演習もいろいろあるほか、下田臨海実験センター(静岡県下田市)で海の生物に関する実習や、菅平高原実験所(長野県上田市)で授業や研修をすることもあるという。

小学生時代の昆虫食体験《くずかごの唄》145

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イラストは筆者

【コラム・奥井登美子】スーパーで干し柿の「市田柿」を見ると、つい買ってしまう。この柿には、私の異文化体験の思い出がぎっしり詰まっているのだ。

小学6年生のとき、空襲に備えて、都内の小学3~6年の子どもは強制的な疎開。田舎に親戚のない私は、学校単位で集団疎開したものの、あまりの過酷さに耐えられず、父に迎えに来てもらった。そして、父の知人の知人を頼って、長野県の下伊那に疎開できた。

天竜川が流れていて、両側はかなり急斜面の山間の村。おいしい干柿で評判になった市田村のお隣が山吹村だった(両村は後に合併して一つの町になった)。私は山吹小学校6年に転入した。クラスの友だち数人で、山の中のキャンプ場になりそうな空き地で食事会をしてくれるという。

昔からの昆虫食文化が残っている地域だ。田んぼが少ない。蚕(カイコ)に食べさせる桑(クワ)の木がいたるところに植えてあって、どこの家でも蚕をたくさん飼っていた。

蚕の蛹(サナギ)は子供たちの大事な蛋白(タンパク)質源だ。蚕の蛹を油炒めすると、キトキトと動くのが気になったけれど、食べてみたら魚の煮干しの味だった。会食のとき、男の子が蛇を採ってきて、きれいに皮を剥(む)き、5センチくらいに切ってフライパンの中に入れた。

蛇は怖くない 山の友達だ

私は生きた蛇を初めて見たので、ついつい「蛇が怖い…」と泣いてしまった。次の日、私が蛇が怖くて泣いた、という話がクラス中に知れてしまった。女の子は私を優しくかばってくれるが、男の子は、服装も言葉も違う疎開者をからかったり、いじめてみたりしたいらしい。

学校の帰り、生きた蛇をぶっつけられたこともある。蛇を怖がっていたら道も歩けない。草むしりもできない。私は怖くないフリをするしかない。「蛇は怖くない。山の友達だ」と、1人で唱えているうち、だんだん蛇の行動や性格がわかるようになった。

蜂(ハチ)の子は大ごちそう。高価なので子供たちの食事には出してもらえなかったが、私も教えてもらいながら、「蜂の子取り」に参加させてもらった。

蜂の足に真綿の目印をつける。山の中のどこを飛んでいるかよくわかるので、その真綿を目当てに、3~4人で追いかけて地蜂の巣を見つけ、それを掘り取って貴重な蜂の子をゲットする。蜂の幼虫は、チーズに蜂蜜をかけたような風味のある食べ物だった。

この村で味わった昆虫食体験は、今ではとても貴重な体験だったと思っている。(随筆家、薬剤師)

日本国際学園大生の作品が表紙に つくばエリア下宿探し情報誌

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矢治竜乃介さん(左)と、学生向けマンション・アパート情報誌の表紙になった矢治さんの作品

日本国際学園大学(つくば市吾妻、橋本綱夫学長)がこのほど学内で実施した「ひとり暮らしガイドブック」の表紙デザインコンペ(ジェイ・エス・ビーグループ協賛)で、4年の矢治竜乃介さんの作品が最優秀賞を受賞し、10月につくば市エリアで発行された学生向けマンション・アパート情報誌「学生下宿年鑑2025ダイジェスト版ーつくば市エリア ひとり暮らしガイドブック」(ジェイ・エス・ピーグループ UniLifeつくば店発行)の表紙になっている。年間で約5000部発行される。

優秀賞には同大4年の菊地祥真さんの作品が選ばれた。同大向けの冊子「日本国際学園大学・2025年度春入居のご案内」(同)の表紙となり、同大の受験生や来校者らに配布される予定だ。

学内コンペは、学生の作品を磨く力を伸ばし活躍の場を与えることを目的に、各エリア版の学生下宿年鑑「ひとり暮らしガイドブック」を各地で発行しているジェイ・エス・ビーグループの協賛で、昨年から実施している。今年の学内コンペには教育の一環として学生4人が応募した。

最優秀賞の矢治さんは「自分の部屋に似たイメージでデザインした。学生という立場から、自分の部屋の雰囲気を『本』の中に表現するというコンセプトで挑戦した。気合を入れて作った作品なので、評価をいただけて本当にうれしい」と喜びを語った。

矢治さんは山梨県甲府市出身、卒業後は都内の会社に就職が決まっている。今後は「イラストだけでなく、動画クリエーターにも挑戦し、総合クリエーターとして生きていけたらいい」と語る。

菊地祥真さんと菊地さんの作品

優秀賞の菊地さんは「自分の理想の一人暮らしの部屋を、設計図のように表現した。好きな色合いや木目調の素材感を取り入れたことが、評価されたポイントだと思う。遊び心が隠されてあるので探してみてほしい」とコメントする。

菊地さんは千葉県柏市出身、つくば市内の会社に就職予定で「会社に入ってからは総合的なデザイナーとしての役割があったり、ドローンを使った撮影などもやっていくことになっている。自分のやりたいことをやっていけたら」と話す。

主催者は「昨年よりデザインのクオリティーがより高くなっていて感心した。賞の選定は、どれも素晴らしく僅差の結果となった。来年も開催するので、さらに多くの素晴らしい作品が集まることを楽しみにしている」と講評する。

同大企画部広報課の原沙織さんは「2人のデザインは特に優秀で、教員からも評価をもらっている、2人は今年8月にタペストリーコンペティション(8月2日付)にも選ばれており、今後の活躍に期待したい」と述べる。(榎田智司)

クリスマス坊や《短いおはなし》34

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写真は筆者

【ノベル・伊東葎花】

子どもたちが巣立つと、クリスマスは普通の日になる。
ケーキも買わないし、ごちそうも作らない。
ツリーも飾らなければ、プレゼントを用意することもない。
夫婦2人で、鍋でもつついて終わり。
そう、あの子が来るまでは。

あるクリスマスの夜、その子はひょっこりやって来た。
まるで最初からそこにいたように、ちょこんと椅子に座っていた。
とても小さな男の子。絵本に出てくる小人のような男の子。

「あらあら、なんてかわいい坊やかしら」

私は急いで夫に電話をした。

「あなた、帰りに駅前でケーキを買ってきてちょうだい。かわいいお客様なの」

子どもたちが小さかったころを思い出して、チキンライスを作り、てっぺんに折り紙で作った旗を立てた。
小さな坊やに出してあげると、目を輝かせてきれいにたいらげた。
イチゴがたくさん載ったケーキを片手に帰って来た夫は、坊やを見て頬を緩めた。

「かわいいなあ」

ケーキを切り分けると、小さな手で上手にフォークを使って食べた。
満足そうな笑顔を残して、坊やはいつの間にか消えていた。

クリスマス坊やは、毎年やって来た。
どこから来るのか分からない。だけどそんなことはどうでもいい。
イブの夜、私たちは坊やを待ちわびて、ケーキを買ってごちそうを作る。
去年のプレゼントは、毛糸で編んだ小さな帽子。その前は手袋とポシェット。
坊やは大事そうにそれを持って帰り、次の年にはちゃんと身に着けて来た。

そして今年もクリスマスがやってきた。
プレゼントは赤い小さなマフラー。
水色の箱にリボンをかけてテーブルの上に置いておく。
もうすぐ来ると思うと、そわそわした。

しかしその日、クリスマス坊やは来なかった。

「私の手料理に飽きちゃったのかしら」

「いや、僕がいつも同じケーキを買うからだ」

夫も私もひどくがっかりした。

「まあ、せっかくのイブだ。シャンパンでも開けようじゃないか」

「あら、珍しい。日本酒しか飲まないあなたが」

夫がシャンパンを買ってくるなんて初めてのことだ。
ふたの開け方がわからなくて、ふたりであれこれ言い合ううちに、ポンと跳ねたふたが天井に当たって落ちた。

「あらいやだ。あなた下手ねえ」

そう言って大笑いした。

「夫婦2人でも、充分楽しいな」と夫が言った。

「そうですねえ」

私たちは、グラスを合わせて乾杯をした。

「メリークリスマス」

クリスマス坊やは来なかったのではなく、私たちに見えなくなっただけだ。
だって、テーブルに置いたプレゼントが、いつのまにかなくなっている。
それはきっと、坊やがいなくても楽しく過ごせることが分かったから。
坊やは「もう大丈夫だね」と笑いながら、来年は他の家に行くのかしら。

「ねえあなた、来年はプレゼント交換でもしましょうか」

「いいね」

(作家)