ブランド名「J:COM茨城」の土浦ケーブルテレビ(本社・土浦市真鍋)は元々土浦地区を対象にしたケーブルテレビ会社として発足したが、今では県南を中心とした13市町村にサービスエリアを拡大、テレビ番組の放送だけでなくインターネットを活用する各種サービスを提供する会社になっている。サービスメニューとエリアを広げる戦略について海老澤孝一社長に聞いた。
ネットがサービスの柱に
本社は「つくば霞ケ浦りんりんロード」沿いに建つビルの中にある。裏手にはJ:COMロゴ入りの軽自動車を止める駐車場が確保され、県南地区へのサービス提供に出動できる体制が整っていた。
発足時(1983年)と現在の違いを聞いたところ、「元々ケーブルテレビ事業者、つまり電波障害を解消する補完メディアとしてスタートした。その後、インターネットによる通信サービスを事業に加え、今ではネットに付随するインフラを地域に提供する会社。メディア事業者として地域密着のテレビ番組も情報発信しており、生活インフラサービスとメディアとして地域情報を提供する特異な会社と言える」
サービスメニューは豊富で、電信柱経由で各戸に引き込まれた同軸ケーブルと、光ファイバーを使った①多チャンネルテレビ②インターネット接続③固定電話のサービスをベースにしながら、④ネット経由の防犯カメラ設置⑤住宅への太陽光発電パネル付設⑥電気・ガス・格安スマホ・小額短期保険の販売―にまで手を拡げている。
ケーブルは光ファイバー化
ユーザーとの契約は、インターネットとスマホは増えているものの、多チャンネルテレビは横ばい、固定電話は減少傾向にある。一方、アマゾンプライムビデオ、ネットフリックスなどの動画サービスを高速・大容量ネットで視聴する若者層が増えていることから、同軸ケーブル網を光ファイバー網に切り替えている。
工事は2024年夏から始まっており、サービスエリア(J:COM契約が可能な23万世帯)の光ファイバー化の完了は27年春になる。投資額は25億円という。
水戸地区でもサービス展開
光ファイバー化は、ベースになるサービスの強化、ケーブルを活用した新サービスの提供を狙ったものだが、対象エリアも広げている。自社ケーブルだけではなくNTTの光ケーブル網を借り受け、インターネットと固定電話の契約に絞って、今年から水戸・笠間エリアでもサービスを開始したそうだ。
「茨城はケーブルTV事業者が少ない。県庁所在地に事業者が存在しない唯一の県。事業者が存在する日立、県西、つくばの各エリアには進出しないが、今後は県央、県北、鹿行の各エリアには(他社ケーブルを借りる形で)出て行く」
言い換えれば、フルサービス地区の市町村(かすみがうら市、つくばみらい市、つくば市茎崎地区、阿見町、美浦村、牛久市、取手市、守谷市、常総市、石岡市、土浦市、利根町、龍ケ崎市)に安住することなく、メニューを限定して他エリアにも事業を拡大するということだ。
番組は地域密着が基本
J:COM茨城は、県南を中心としたローカル番組を地デジ11チャンネルで、全国展開するグループ局の番組などを同10チャンネルで提供している。最後に「地域に密着するテレビ番組」について聞いた。
「地域のイベント、暮らし、安心安全情報などを取材した『ジモト・トピックス』などの番組で放送していく。好評の高校野球番組は、夏季大会の生中継だけでなく、地元チームの監督や選手への事前インタビューにも力を入れる」「昨年末には、全国37カ所で開かれた花火大会のダイジェスト版を一挙放送した。今後もこういった企画番組を通じて地元を活性化するメディアでありたい」
【えびさわ・こういち】大学中退後、小金井市民テレビ(現ジェイコム東京)入社。ジェイコム埼玉東日本常務を経て、2024年6月から土浦ケーブルテレビ社長。水戸市出身、57歳。地元資本で発足した同社は1995年からジュピターテレコム(当時は住友商事が出資、2010年にKDDIも資本参加、契約先560万世帯)のグループ会社に。J:COM茨城の契約先は6万9000世帯。売上高86億円、純利益5億5000万円(2024年3月期)。
【インタビュー後記】県南に張り巡らしたケーブルを使って各種サービスを展開。多チャンネル番組も自前チャンネル番組もこのケーブルを経由。地上波TV局がない茨城ではJ:COMの番組は貴重。番組充実と視聴エリア拡大を期待。(経済ジャーナリスト、坂本栄)