土曜日, 8月 8, 2026
ホームつくば震災乗り越え100年 浪江からつくばに 眼鏡店主 原田功二さん

震災乗り越え100年 浪江からつくばに 眼鏡店主 原田功二さん

東日本大震災後に福島県浪江町から避難した原田功ニさん(48)が、つくば市学園の森に2018年にオープンさせた眼鏡店「グラングラス」が今年、創業100年を迎える。1925年5月に浪江町で誕生した「原田時計店」による眼鏡専門店だ。本店は震災で被災し、現在、避難先の福島県二本松市に店舗を構えている。(21年3月1日付同3月2日付)。

各地で浪江を伝えた

「福島出身のお客様から『私、双葉だったよ』『私は楢葉だった』と声掛けてくださることがある。『浜通りトーク』をすると、僕も浪江を思い出すきっかけになるし、いつまでも浪江を忘れないでいられる。本当にありがたい」と、「グラングラス」店主の原田功ニさんが、笑顔を浮かべる。

千葉県出身の原田さんは、千葉で過ごした学生時代に浪江出身の妻、葉子さんと出会い、結婚した。震災時は、葉子さんの実家であり、浪江で3代続く原田時計店の跡取りとして義父母、妻らと働いていていた。時計店はJR浪江駅から徒歩10分程の、理髪店や精肉店、靴店などの個人商店が軒を連ねる商店街の中にあり、長年、地域の暮らしを支えてきた。原田さんが震災に遭ったのは、浪江に来て9年が経つころで、地元消防団や商工会への参加を通じて、街の一員として歩み始めた最中のことだった。

3月11日の震災では、地震によりガラスが割れたり、物が散乱したりするなど店舗が被災した。直後に出された津波警報により家族と高台に避難し車中で夜を明かすと、翌日には福島第一原発事故による避難指示が出た。手に取れるものだけ持ち出し避難した。1号機が爆発したのは隣町の親戚宅に滞在しているときだった。2019年に一家でつくば市で暮らし始めるまで、福島県内外5カ所を移動した。

各地を転々とする中で原田さんが浪江の商工会青年部の仲間らと始めたのが、地元の名物「なみえ焼そば」を、避難所など浪江の人たちが身を寄せる各地で提供することだ。浪江の状況を伝えていく活動だった。慣れない土地で、家族や友人らと離れて暮らす人たちは「故郷の味」に涙することもあった。

つくばに眼鏡店を開いたのは2018年。避難先で生まれた長男と妻の葉子さんが暮らす、原田さんの実家がある柏市から1人でつくばに通いながらのスタートだった。翌年、家族でつくばに転居した。つくばへの出店は一目ぼれだった。「先につくばに避難していた浪江の知人の紹介でつくばに来た。郊外に広がる山と田畑が浪江に似ていた。開発中のこれからの街というところにもひかれた」と振り返る。

学園の森にあるグラングラス

やっと生活が安定してきた

オープン以来、原田さんが1人で切り盛りしてきたつくばの店は、昨年から従業員を1人増やし2人態勢にした。「14年が経ち、やっと生活を安定させることができてきた。ようやく余裕を持てるようになってきたのだと思う」。浪江で過ごした時間より、震災後の月日の方が長くなった。「震災後の時間が短かったとは思えない。いろいろなことがあり過ぎた。まだ実感できていないことが多い」と話す。

最近は、浪江で活動を共にした仲間たちとの再会が増えている。おととしから年に数回、ゴルフをしたり、食事をしたりして楽しんでいる。集まる場所は、それぞれの避難先であるつくばや、福島県の郡山、いわきなどだ。各地域に暮らす人が持ち回りで企画する。

「震災後は、バラバラに避難していたが、時間とともに、徐々に連絡を取らなくなっていた人もいた。またつながりができるというのは、うれしい。昔話をしたり、情報交換をしたり、懐かしい時間を楽しんでいる」

100年は家族の目標だった

原田時計店は5月に創業100年を迎える。「震災前も、家族で100年目をどう迎えようかと話をしていた。2017年11月に義父が二本松で店を再開し、僕はつくばで店を開いた。100年というのは家族の目標だった。それまでは店をつぶすわけにはいかないと。婿で入った僕を育ててくれたのが、原田時計店」だとし、「思いが一番強いのは(義父の)社長とお義母さん。『100年目、何かしますか?』っていったら、あまり考えていなくて(笑)。ただ、浪江で何かしたいという話はしていました」。

昨年は、今年100歳を迎える祖母の誕生日を浪江の宿泊施設で開いた。各地に暮らす親戚らが集まって、にぎやかな1日を故郷で過ごした。震災後に生まれた一人息子の長男は、4月に中学生になる。「これまでにも墓参りなどで浪江に連れて行く機会はあったし、3.11の映像を見る機会もあった。息子なりに理解するところはあると思う」と言う。

店の入り口には、浪江にあった本店のロゴが刻まれている

つくばでも長く続くお店になれば

つくばに暮らし始めて7年目を迎える。「私も妻も、子どもやお客様を通じて少しずつ地域につながりができてきた。私たちにとってつくばは『帰ってきた』と思える街になった。周りの方に応援され、サポートしていただけたことが僕にとっては大きなこと。原田時計店も多くの支えがあって100年を迎えられる。感謝でしかありません」

つくばの店では、眼鏡が楽しくなるようなデザイン性の高い個性的なものや、子ども向けのフレームを充実させている。「地域柄、お子様も多い。キッズスペースもあるので家族で来ていただいて、大人も子どももゆったり眼鏡を選んでほしい」と話す。以前「眼鏡屋さんになりたい」と言っていた長男は「他の夢も見つけているよう」だという。「彼の中で世界が広がっているんだと思う。自由に育ってもらえたらいい。彼がやりたいことはサポートしていきたい」と話す。

「最近、眼鏡を購入してくださったお子さんが、後日、おばあちゃんと来てくれることがあった。2世代、3世代で来てくださる。本当にありがたい。孫からおばあちゃんまで、つくばでも少しでも長く続いていけるお店になれば」と語る。

100年は通過点。原田さんが、新たな歴史をつくばで刻んでいく。(柴田大輔)

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