つくば市小田の築105年の古民家でこのほど、「能に親しむ会」が開かれた。地元、筑波東中2年の飯塚太一さん(13)が、観世流能楽師で重要無形文化財総合指定保持者の高梨良一さん(69)と共演し、「橋弁慶」の牛若丸を力強く舞った。普段見られない能の装束付や、高梨さんから能を学ぶ子どもたちの発表会もあり、秋の夜空の元、約300人が能づくしの舞台を楽しんだ。
日本が誇る伝統芸能の能を地域の人に親しんでもらおうと、NPO法人「華の幹(はなのき)」(つくば市小田、飯塚洋子代表)が、高梨さんら観世流の能楽師を招いて毎年開いている。今年で5回目。
舞台は2部構成で、例年、第1部は高梨さんが地域の子どもたちを対象に古民家で月1~2回開く能楽教室の発表会、第2部はプロの能楽師の舞台だが、今年は、上達を認められた生徒の太一さんが、子方(子役)として初めて第2部の出演に抜擢(ばってき)された。
太一さんは母親で同NPO代表の洋子さんに勧められ、小学5年から同教室で能を始めた。「橋弁慶」は今年初めから稽古を開始したが、高梨さんの厳しい指導に「泣いてしまうこともあった」という。一方で「よくできたときはとても褒めてもらえる。それが励みになった」と振り返る。
この日、太一さんは、白鉢巻きをきりりとしめて、きらびやかな能装束に身を包んだ。京都の五条の橋に見立てた舞台の上で、長刀(なぎなた)を繰り出す高梨さん演じる弁慶と堂々と太刀で渡り合い、大きな拍手を浴びた。
「練習通りの演技を100%出すことができて満足です」と太一さん。高梨さんは目を細め、「成長が著しい。今後はもっと教室のレベルアップを図り、子どもたちだけの(第2部)舞台も実現したい」と抱負を述べた。
これに先立つ舞台では、ふだん一般には公開しない能装束付けの実演なども行われ、演者に豪華な装束を着付けていく様子を観客はじっと見入っていた。
第1部の舞台では能楽教室の子どもらが着物姿で舞台に上がり、正座で腹からしっかりと謡で声を響かせたり、扇を手に堂々とした仕舞を踊ったりした。ゲストに招かれた日立市出身で現役大学生の津軽三味線奏者、高橋拓美さんも力強い演奏を披露した。(大志万容子)
能楽教室への問い合わせは、特定非営利活動法人華の幹(電話080・5544・5360)