水曜日, 7月 9, 2025
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令和に響け 土浦で伝統の「刻の太鼓」

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刻の太鼓を打ち鳴らす保存会メンバーら=10日午前6時、土浦市中央1丁目の亀城公園内にある土浦城址櫓門

【谷島英里子】「時の記念日」の10日、土浦市中央1丁目の亀城公園内にある土浦城櫓門(やぐらもん)=県指定文化財=で、江戸時代に時刻を知らせた「刻(とき)の太鼓」を保存会が響かせた。12日までの3日間、午前6時と午後6時の2回打ち鳴らす。

江戸時代、櫓門の楼上では、午前6時と午後6時に太鼓を打って、城下に時刻を知らせていた。使用された太鼓=市文化財=は胴内に書かれた墨書から1770年に制作されたと分かっているという。

土浦の刻の太鼓は1872年ごろに途絶えたが、市制60周年を記念し、有志らが2000年に復活させた。07年に刻の太鼓保存会が設立され、現在は10~80代の42人が所属している。

保存会は午前6時になると、はっぴ姿で2人1組になり、ばちを太鼓に打ち付けて「ドーン」と約20分間威勢よく響かせた。保存会の須田義之会長は「令和元年、新たな気持ちで伝統を引き継いでいきたい」と話していた。

閣僚声明を採択し閉幕 つくば開催のG20会合

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貿易セッション後の記者会見に臨む(左から)河野太郎外相、世耕弘成経済産業相、石田真敏総務相=9日、つくば国際会議場

【相澤冬樹】つくば市で開かれた20カ国・地域(G20)貿易・デジタル経済相会合は9日、デジタル経済分野と貿易分野をまとめた閣僚声明を採択し閉幕した。世界貿易機関(WTO)改革の在り方や、米中が追加関税の応酬を繰り広げる中で、保護主義への対応について議論がなされた。世耕弘成経産相は「意見一致を見なかった点で議長声明を追加したが、ほとんどの点で合意にもとづく閣僚声明に至った」と成果を強調した。

議長を務めた河野太郎外相、世耕経産相、石田真敏総務相の3閣僚は採択後、会場となったつくば国際会議場で会見した。世界経済の成長を鈍化させる貿易摩擦で、WTOの紛争解決制度がうまく機能していないことが問題をこじらせている。米国とEU(ヨーロッパ連合)との間で意見が対立しており、最近では韓国による水産物の輸入禁止措置をめぐってWTO上級委員会で日本の主張が退けられた―などを背景に、G20は「切迫感をもって」その改革の必要性で一致したという。

保護主義への不公平感は表明されたものの、あくまで「ルールに基づく解決」が望まれた。「貿易と投資の便益が十分に行き渡っていない中小企業や女性たちが参画してこそSDGs(持続可能な開発目標)がいきる」(河野外相)、「人間中心の考え方に立つ『AI原則』で合意できたが、開発や利活用がもたらす生産性向上という果実を十分に行き渡らせることが重要」(石田総務相)などの点でも合意がみられた。

声明に文言こそなかったものの、河野外相は「地元の食材でもてなしていただいた茨城県に感謝」を表明した。「震災から8年、その安全性は確認されているのに、茨城産を含む海産物を依然規制する国がある。その解除に向けて働きかけていきたい」と述べた。

同じく議長会見で、石田総務相は「つくばの高校生のプレゼンテーションに感動した」と並木中等教育学校生徒の提言を記憶にとどめ、28,29日開催の大阪サミットにつなげていきたいとした。

1000人規模がつくばに

会期中、20カ国の閣僚のほか、招待国や国際機関の代表、メディアなど1000人規模の参加者がつくば市を訪れた。夜には歓迎レセプションやカクテルパーティーが開かれ、茨城県産の食材をつかった料理や日本酒などがふるまわれた。

各国の閣僚らによる市内視察も行われ、ロボットスーツを開発する筑波大発の企業サイバーダインやJAXAつくば宇宙センターなどを訪れた。

➡7日の歓迎レセプションの記事はこちら

2日間、つくば市で開かれたG20茨城つくば貿易・デジタル経済大臣会合を写真で振り返った。

歓迎レセプションであいさつする五十嵐立青つくば市長㊧と大井川和彦茨城県知事=7日夜、オークラフロンティアホテルつくば
8日午前開かれたデジタル経済セッションで、子ども食堂でボランティアをした経験をもとに、ドローンとAI(人工知能)、次世代交通システム「ハイパーループ」の技術を使って、貧困に直面する世界の子どもたちに新鮮な食材を届ける「もったいないシステム」の提案をする並木中等教育学校の高校2年生6人=8日午前11時50分ごろ、つくば国際会議場
デジタル経済・貿易合同会合後、閣僚らが整列して記念撮影=8日午後、同
閣僚らが保護主義への懸念を表明した貿易セッション=9日、同
会期中、会場のつくば国際会議場は緑色のフェンスに囲まれ、警察官や警備員らによって出入りが厳しく制限された=8日昼頃、つくば国際会議場の竹園公園に面した出入口付近
会場周辺の通行を規制する警察官=8日午後1時ごろ、つくば市竹園、つくば国際会議場隣接のオークラフロンティアホテルつくばエポカル前交差点
「たった20カ国で世界を引き回すな」などと訴え大臣会合開催に反対するデモ行進もあった=8日午後4時30分ごろ、つくば市春日

原始の火おこし茨城ゆめ国体へ 土浦の2会場で炬火イベント

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「都和地区の火」の炬火台にトーチで点火する児童たち=土浦市都和の都和公民館

【崎山勝功】9月28日開幕の「いきいき茨城ゆめ国体2019」に向け、市町村ごとにオリンピックの聖火に相当する炬火(きょか)の火種を採る「炬火イベント」が8日、土浦市でも始まった。この日の都和公民館(土浦市都和)と市青少年の家(同市乙戸)を皮切りに、7月20日までの間、市内全8カ所の地区公民館で行われる。

マイギリ方式で火おこしをする児童たち=同

都和公民館では、同公民館チャレンジクラブ所属の小学生19人が4グループに分かれて、「マイギリ方式」で火おこしに臨んだ。縄文時代から火おこしに使われた「キリモミ方式」を改良し、伊勢神宮などで採用されているやり方という。約90センチの長さの火おこし棒を、木の板の上でこすり付けて火をおこす。

イベントは、2019茨城国体土浦市実行委員会が主催。運営に当たった同市国体推進課の担当者は、「採火には反射鏡式もあるし火打ち石もあるが、子どもたちが楽しくできるものとしてマイギリ方式を取り入れた」と説明した。しかし、この日は断続的に雨が降る不安定な天気のうえ湿度が高く、着火は困難を極めた。

子どもたちは滑りやすい木の板に悪戦苦闘、火おこしに成功するグループが出てくるまでに40分ほど掛かった。やっと採れた火種は、ロウソクにともしてから炬火用のトーチに移した。その後、4本のトーチを持った児童たちは、公民館の敷地内でリレーを行い、「都和地区の火」の炬火台に点火した。

火おこしに参加した神林美空さん(10)=都和小5年=は「最初は煙が出てこなかったけど、段々と煙が出て火が点いた。思ったよりも大変で、ちょっとやっただけど腕が痛くなった」と苦労を語った。同じく火おこしに参加した長谷川秀弥さん(10)=同小5年=は「板の位置がずれるのが難しかった。他のみんなは火を起こせたけど、1人だけ起こせなかった」と残念そうな表情を見せた。

炬火の火種は同実行委員会の担当者がカイロで保存する。各公民館の炬火は、キララまつり初日の8月3日に「集火式」で集められ、9月28日、笠松運動公園(ひたちなか市)で開く国体開会式で、他の43市町村の炬火と一つにまとめられる。

公募はなじまない? 市民委員を削除 つくば市政治倫理審査会

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つくば市政治臨時審査会条例とつくば市市民参加推進指針の題字部分

【鈴木宏子】つくば市が、公募の上、内定していた市政治倫理審査会の市民委員を、公募はなじまないとして、議会提案を見送ることがわかった。11日開会の市議会6月定例会に「市民」を削除する同審査会条例改正案を提案する。

同委員は、政治倫理条例に基づいて市長や市議会議員などが、年1回公開する資産報告などを審査する。昨年暮れ、7人のうち2人を公募した。委員になるためには市議会の同意を得なければならず、もともと3月議会最終日の3月20日に提案する予定だった。同日の本会議直前に開かれた議会運営委員会に諮り、その直後、提案自体が見送りとなった。

6月議会に改めて市民委員を提案するかが注目されたが、条例に定められた「市民」委員を削除し、「市民で地方行政に関し優れた識見を有する者」に改める。具体的には部長級市職員や教育委員の経験者などを想定しているという。

議会から意見

市民委員の公募は、五十嵐立青市長が掲げた「各種検討委員会に市民公募委員を必ず導入する」などの公約に基づいて実施している。市は2018年に市民参加推進指針を策定し、市付属機関・懇談会委員の市民公募要綱を作った。要綱に基づいて昨年暮れ、政治倫理審査会でも初めて市民委員を公募し、面接などの審査を経て、今年1月、2人が内定した。

関係者によると、3月議会最終日に開かれた議会運営委員会では市民委員に対し「どのような経緯で公募したのか」「公募するのにふさわしい案件なのか」などの意見が出たという。市民委員に賛成する意見は出なかったという。審議会委員は、議員らの資産報告が正しいことを証明するための預金通帳や残高証明書、納税証明書、源泉徴収票、固定資産評価書、借用証書などを見て審査するため懸念が出たとみられる。

一方、担当の市法務課によると、3月議会の後、市内部で検討した結果「審査会委員は、議員や市長、副市長、教育長などの職務内容に関する知識と市政全般に関する知識を有している人が適任」だとして、条例の条文を改めるという。

「はしごはずされた」

これに対し公募に応募し、今年1月、同審査会の市民委員に内定していた鳥居徹夫さん(69)は「5月下旬に担当課から電話で経過説明と、条例改正をするという説明を受けた。市民参加を言いながら、2階に上げられてはしごをはずされたと感じる。議会に諮って否決されたなら分かるが提案もしないというのが分からない」と話す。「守秘義務については面接のときに説明を受けたし、条例にも守秘義務規定がある」とする。

周辺市町村では、守谷市や取手市が政治倫理審査会委員の公募を実施しており、隣のつくばみらい市は今年度から同委員の公募を開始する。20年近く前から公募を実施している守谷、取手両市は「(公募した市民委員が審査したことによって)これまで問題が発生したことはない」としている。

8日からG20貿易・デジタル経済大臣会合 開催地つくばで歓迎レセプション

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各国大臣らによる鏡開きの後、五十嵐市長の発声で乾杯=オークラフロンティアホテルつくば

【相澤冬樹】G20茨城つくば貿易・デジタル経済大臣会合が8日からつくば市で始まるのを前に7日、同市内のホテルで歓迎のレセプションが開かれた。大井川和彦知事が歓迎のあいさつ、五十嵐立青市長が乾杯の発声を行い、地酒をはじめとする県産品尽くしのふるまいで、各国代表をもてなした。

もてなしの県産品がところ狭しと並ぶ会場で大井川知事が歓迎のあいさつ=同

歓迎レセプションは午後7時から、同市吾妻のオークラフロンティアホテルつくばで行われた。G20メンバーの国と地域の閣僚はじめ、招待国の首脳、国際機関の代表など約400人が顔をそろえた。大井川知事は「グローバル企業が進出し、世界最先端の研究開発拠点になっている茨城はまた農業が盛んな地域で豊かな食材を用意できた」と歓迎のあいさつ。テーブルには県産レンコンや常陸牛などの料理、イバラキングメロンなどのデザートが並んだ。

各国大臣らが壇上に登っての鏡開きの後、五十嵐市長の発声で乾杯。「あすからの活発な議論を前に今夜はリラックスして交流を」と促した。会場では県内36酒造場から選りすぐりの地酒46銘柄が振る舞われ、歓談の輪が広がった。

9日までつくば国際会議場(同市竹園)をメーンに開かれる貿易・デジタル経済大臣会合は、G20大阪サミット(28、29日に開催)に併せて設定された8つの関係閣僚会合の一つ。自由貿易の推進やIoT、AI等の革新的技術を通じて、経済成長の強化などの取り組みについて議論される予定だ。

キャッシュレス決済に踏み切る 7月からつくば市のカフェ

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「SAKURA Café」の玄関に立つ岡﨑さん(中央)とスタッフたち=つくば市松代4丁目の松代ショッピングセンター

【橋立多美】スーパーTAIRAYAを核とする松代ショッピングセンター(つくば市松代)に5月オープンした「SAKURA Café」(サクラカフェ)が、7月から支払いに現金を使用しないキャッシュレス決済に踏み切る。同SC内の常陽銀行松代出張所が7月19日に営業を終えることから導入を決めたもので、これまで来店した客の反応は良いという。

丁寧にコーヒーを淹れる岡﨑さん=同

店主の岡﨑和男さん(60)は、今春まで同市立桜南小学校の校長だった。店名の「SAKURA」は日本人が最も親近感を抱き、学校を囲む桜が自慢の桜南小にちなむ。「子どもたちにより良い教育」を心掛けてきた思いを「松代地域にオアシスを」に切り替えた。夫婦共働きで料理をこなしていたため、厨房に立つことには慣れている。

約33平方メートルの広さの店内に客席は19席。採光を十分にとり、清潔感に満ちた快適な空間だ。これまでの来店客数は1日平均30人弱。オープン時などに広告は出さなかったが上々の滑り出しだった。

ところが今回、出張所の閉鎖に伴いATMも撤去されることになる。消費増税にあわせたポイント還元施策など、キャッシュレス化を後押しする環境が出来上がりつつありことも手伝って7月からの導入を決めたという。

入り口のドアにキャッシュレス決済を明記し、7月からの導入を客に告げると「逆に便利かも」と反応は良いという。日本の消費者はキャッシュレス化に後ろ向きと言われるが、必ずしも現金払いにこだわっているわけではなさそうと見る。岡崎さんは、各国を旅してキャッシュレス化が進んでいることを感じていた。「日本が現金社会なのは治安が良いからでしょう」と話す。

支払いはクレジットカードのほか、交通系の電子マネー、スマートフォン決済サービスで出来る。キャッシュレスに馴染めない高齢者などには配慮するそうだ。

看板メニューはブラジル産コーヒーとスリランカの紅茶。在職中、文科省が主導するブラジルとスリランカの日本人学校に赴任し、本場の味に心酔した。コーヒーは日本人好みにブレンドしている。

カレーやピザなどのメニューもあり、週替わりのランチが始まる。テイクアウトに応じ、高齢者向けのメニューを検討中。また貸し切りのパーティーにも対応する。営業時間:午前11時~午後2時・午後3時~同7時 定休日:水・日曜 電話:029-828-4573

搬送や脱出の救助技術訓練を公開 土浦市消防本部

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出場隊員が訓練成果を披露した「引揚救助」=土浦市田中町の市消防本部屋外訓練場

【谷島英里子】土浦市消防本部(飯村甚消防長)は6日、救助の技を競う「第46回県消防救助技術大会」に出場する救助隊員の訓練成果を一般公開した。11日に県立消防学校(茨城町)で開く県大会には、土浦本部から5チーム23人が出場する。

大会は、ロープを渡って人を救出する「ロープブリッジ救出」、5つの障害を乗り越える「障害突破」、救助者を搭上に引き上げる「引揚救助」の3種目で競われる。警防救急課によると、引揚救助は建設現場での転落や地下、マンホールなどでの災害を想定した訓練。要救助者を含む5人1組で、2人が空気呼吸器を着装して塔上から塔下へ降下、検索後に要救助者を塔下へ搬送し、4人で協力して塔上へ救出し脱出する。

隊員たちは同僚の声援を受け、息の合った動きでしっかりと声をかけ合いながら、日ごろの訓練の成果を披露した。県内24消防本部の精鋭が参加する県大会で上位に入賞すると関東大会への出場権が得られ、勝ち進むと全国大会に出られる。

救助隊の藤井浩二隊長(39)は「タイムがとても良かった、減点の有無も確認できたので全チームが関東大会に出場できるよう今後も訓練に力を入れたい」と話した。障害突破Aチームリーダーの田中洋平さん(32)は「救助技術に習熟したチームが揃っているので、県大会を突破したい。1本勝負を普段通りに発揮できれば」と意気込みを語った。

利用者200万人達成を祝う 土浦のキララちゃんバス

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「乗降者」とあるのはご愛敬、花束を持ち記念撮影する200万人目の「乗客」藤田三恵子さん(中央)とキララちゃんバスの関係者=土浦駅前

【谷島英里子】土浦市内を走る「まちづくり活性化バスキララちゃん」(通称・キララちゃんバス)の利用者数が4日、200万人に達し、土浦駅前で記念セレモニーが行われた。

200万人目となったのは同市港町3丁目の80代、藤田三恵子さん。キララちゃんバスがあるから、と78歳の時に運転免許証を自主返納したという。「買い物などとても便利に使わせていただき、助かっている」と笑顔。

セレモニーには理事やバスボランティア、キャラクター「キララちゃん」が出席し、くす玉割りや横断幕でお祝いムードとなった。バスを運行するNPO法人まちづくり活性化土浦の大山直樹理事長が藤田さんに花束と記念品を贈った。

大山理事長は「土浦中心市街地の足となり、買い物弱者に、土浦のまちなかで買い物をしていただきたい思いから運行を始めた。これからも親しんで乗ってもらえるように利便性を高めていきたい」と話した。

バスは土浦の中心市街地活性化を目的としたコミュニティーバスで、同NPOが関東鉄道、市と三者協定を締結し、2005年に運行を開始した。現在、土浦駅を拠点に3路線を走っている。乗車料金は大人150円、小学生以下80円。

ダイエットにフクレミカンの果皮 茨城大学が動物実験で検証

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論文を発表した佐藤瑞穂さん㊨と豊田淳教授=阿見町、茨城大学農学部の研究室

【相澤冬樹】筑波山麓特産のフクレミカン(福来みかん)の皮に含まれる食品機能性を、初めて動物実験で検証した研究論文がこのほど、茨城大学から発表された。肥満を抑える、ストレスに耐えるなどの食品機能性を消費者向けに打ち出すには、科学的知見に基づく根拠が必要になるため、論文の発表は、地域特産品の健康食品アピールに有力な手掛かりを与えそうだ。

論文は、同大農学部の連携大学院で学ぶ東京農工大学大学院博士課程3年、佐藤瑞穂さん(27)を筆頭著者に発表された。指導に当たった同大農学部の豊田淳教授、井上栄一教授、宮口右二教授らが名を連ねている。2論文あり、1つが未熟フクレミカンの果皮を含む飼料をマウスに与えたところ、体重増加と脂肪蓄積の抑制が認められたとする内容だ。

たわわに実った筑波山麓のフクレミカン=つくば市臼井

未熟のミカンの皮を使ったのは、あらかじめ県産業技術イノベーションセンターの分析で機能性成分量が完熟のものより多いことが分かっていたため。佐藤さんによれば、実験は2014年産ミカンを使って行われた。青いミカンを大量に購入し、研究室全員で皮むきをして乾かせ粉末にした。

動物実験は、体重約20グラムのマウスを2つのグループに分け、24時間明るさを保った環境で4週間飼育するもの。一方のグループには高脂肪食だけを、もう一方には果皮の粉末5%を混ぜた高脂肪食を給餌した。その結果、高脂肪食だけを与えたマウスは体重を6-7グラム増やしたのに対し、果皮の粉末入りを食べたグループは3-4グラムの増加にとどまった。また血中のコレステロール量と中性脂肪レベルについても、果皮の粉末入りのエサを食べたグループの方が低いことが確認された。

このことから、熟する前のフクレミカンの皮には、抗肥満効果やメタボリック症候群の予防効果があることが確かめられた。果肉を食べるよりも、果皮をジャムや香辛料に加工することが多い利用法も適切だったといえる。フクレミカンなどのかんきつ類には、ストレスに対する抵抗性である「レジリエンス」を獲得する作用をもった物質があり、これも動物実験で確認され、第2の研究論文になった。

豊田教授は「フクレミカンの機能性は以前から指摘されてきたが、その効果が動物実験で確認されたことは大きな前進だ。しかも英文による論文は初めてで大きな意義がある」という。フクレミカンの食品機能性は、こうした実証の積み重ねで確立することになる。

本社機能移転事業2年目 順調な進捗 県内で10社が採択

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県が誘致しオートリブの開発拠点が新設されたつくば駅前のL.Bizつくば(旧ライトオンビル)=つくば市吾妻

【山崎実】茨城県は、若者の雇用創出と地元定着対策の一環として、昨年度、本社機能などを移転する企業に最大50億円という、全国トップクラスの補助を行う企業誘致活動強化事業をスタートさせた。これまで既に10社の計画が認定(採択)され、順調な進捗(しんちょく)をみせている。2年目の今年度も引き続き事業を継続中で、県産業立地課は「緩めることなく、首都圏をターゲットに誘致活動を進めていく」と話している。

同課によると、従来、製造業などが企業誘致の中心だったが、ICT(情報通信技術)時代に対応するため、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)など、新たな成長分野の研究施設・本社機能の誘致を図る。

施策事業の中心である本社機能移転強化促進補助金の計画が認定された企業は8社=下表。ほかに本社機能移転促進補助金の対象企業としてシンワ機械が本社、及び工場を埼玉県から五霞町(圏央道五霞IC周辺)に移転。IT関連企業など、オフィス賃料補助金対象では、アプリシエイト(ソフトウエア会社)が東京の本社機能を水戸市に移転して「ITソリューション統括センター」を新設するなど、全体で10社の計画認定(採択)が決まった。

今年度も前年度の予算額を確保、維持しつつ、約56億円の枠で事業を推進するが、同課のほか土地販売推進課、産業基盤課など庁内関係各課の職員で派遣交渉班を構成。首都圏の企業約1万2000社以上にダイレクトメールを、また、本社や県内事業所、出張所、TX沿線などの200社以上の企業訪問を行い、誘致活動を展開している。

オフィス整備補助を拡充

事業の主な具体的な内容(カッコ内は補助額)は以下の通り。

▽本社機能移転強化促進補助(50億円)=AI、IoT、ロボット、次世代自動車など、新たな成長分野の研究所・本社機能などの県内移転が対象。補助要件は移転人数5人(研究所の場合は10人)以上で、補助額は投資額、移転人数などで算出。県内全域を対象に、50億円が上限
▽本社機能移転促進補助(2億円)=全業種(研究所・研修所を除く)が対象で、補助要件は移転人数10人以上。補助額は上限1億円。既存の本社機能移転促進補助金の対象エリアを県内全域に拡大した
▽IT関連企業等賃料補助(2400万円)=新たな成長分野の企業が、県内に移転した場合のオフィス賃料が補助対象で、補助率は2分の1(上限は240万円、3年間)。県内全域が対象
▽サテライトオフィスなど、モデル施設整備費補助(5000万円)=サテライトオフィス、小規模オフィスの整備費(整備面積50坪以上)に対する支援で、補助率は2分の1(上限は2500万円)。対象地域はJR常磐線、つくばエクスプレス(TX)沿線各駅の徒歩圏内エリアーなど。

さらに今年度はこれらの施策に加え▽オフィスビル整備促進補助(3億円)を、前年度の5000万円から拡充した。賃貸用オフィスビルの整備費用を本社機能などの入居実績に応じて支援するもので、補助率は15%(上限は3億円)。県内全域を対象に、新規施策として打ち出している。

経産省がまとめた昨年の通年工場立地動向調査によると、本県は工場立地面積(147ヘクタール)、及び県外企業立地件数(34件)で全国第1位、工場立地件数(68件)でも同3位だったが、全体的な傾向として圏央道沿線地域での企業立地が多く、68件のうち65%にあたる44件が県南、県西地域への立地だった。

「あっぱれ伊賀七」初公演前に公開稽古 舞台はつくば市谷田部の旧呉服店

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「あっぱれ伊賀七」真剣な稽古発表の一コマ=つくば市谷田部

【橋立多美】つくば市谷田部が生んだ発明家・飯塚伊賀七(※メモ)を題材にした芝居「あっぱれ伊賀七」の公演に先立って、谷田部内町の旧呉服店、アラキヤで1日、劇団「伊賀七座」の公開稽古と制作発表が行われた。集まった住民らが拍手を送り、店頭の駐車場では町内商店による露店販売でにぎわった。

かつての商業中心地ながらシャッター通りと化した谷田部内町に活気を取り戻そう、と伊賀七をシンボルにした町おこしが動き出すなかで、地元在住の劇作家・沼尻渡さん(70)が芝居公演を提案。今春、アラキヤを会場に地域住民の交流拠点となる「よりあいや伊賀七庵」と「伊賀七座劇場」を柱にする活性化プロジェクト「わわわやたべや」(長塚俊宏代表)が始動した。

座長の沼尻渡さん(ペンネーム北野茨)は、高校教師のかたわら脚本を書き、生徒に演劇を指導していた。50歳で退職し東京で演劇活動に打ち込んだが、東日本大震災で活動を支えていた地方巡業が次々にキャンセルになり、失意を胸に故郷に腰を落ち着けた。しかし今年、内町区長会の副会長になったことから「町おこしに協力を申し出た。焼けぽっくりに火がついた」と話す。

初公演に臨む出演者たち。左から伊賀七の妻役の高野培美さん、伊賀七役の沼尻渡さん、奉公人八兵衛役の羽田芳夫さん、奉公人加助役の中村壮志さん

「あっぱれ伊賀七」は、浅間山の大噴火や飢きんが続く江戸期に、農民の暮らしを楽にする大時計を発明した伊賀七が、自らの命を賭けて百姓一揆に打ってでる物語。沼尻さんは「自然災害や社会不安のある現在にからめて1週間で書き上げた」という。

座長以外は初舞台 22日、23日に初公演

劇団員は黒子(くろこ)を含めて地域住民7人で、座長を除く4人は今回が初舞台となる。演出家でもある沼尻さんから指導を受けてきた。伊賀七の奉公人・加助を演じる中村壮志さん(22)は大学時代に演劇サークルに属していた経験を生かした活躍ぶり。「客席への目線や発音などの指導を受けた。同年代の出演者を増やして町おこしを若い世代に広げたい」

こけら落とし公演は22日、23日。会場の収容人数は60人で両日とも半分が埋まり、追加公演を検討している。年4回の公演を予定しており、1公演4枚の入場券で年間16枚の入場券が利用できる1万円の特別協力券の購入を呼び掛けている。劇団員、裏方への参加は随時募集しており、問い合わせは電話090-3341-7351(沼尻さん)。

8日(土)の午後1時からは同所で「よりあいや伊賀七庵」を開催。町内外の住民が自由に集まれる場を目指し、趣味の作品展示やおかずのレシピ紹介などを企画している。

◆「あっぱれ伊賀七」 6月22日(土)、23日(日)午後3時から。大人1000円、中高生500円、小学生300円。チケットの問い合わせは電話090-5535-2845(八木下さん)

駐車場で開催された町内商店による露店=同

※メモ 飯塚伊賀七
江戸時代後期の発明家(1762-1836)。谷田部藩領の常陸国筑波郡新町村に生まれ、生涯を谷田部で過ごした。名主を務めるかたわら、建築や和算、蘭学などを学び、からくりや和時計の製作や五角堂を設計して村人を驚かせた。高さ2メートルの和時計の復元模型が谷田部郷土資料館に展示されている。

山里にホタル舞う 土浦「小町の館」周辺 見ごろは6月中旬まで

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乱舞するホタル(6秒露光写真10枚を合成)=土浦市小野の「小町の館」周辺で1日午後8時ごろ、市環境保全課提供

【谷島英里子】土浦市小野の「小町の館」周辺で、ゲンジボタルが飛び交い始め、乱舞する光が訪れた人たちを魅了している。見ごろは6月中旬まで。

1日夜には市環境基本計画推進協議会主催のゲンジボタル鑑賞会が開かれ、定員いっぱいの45人が参加した。講師は環境保全活動を行っているNPO法人ネイチャークラブにいはりの高田正澄理事長と黒澤順一さん。ホタルは日本に約40種、発光するのは10種類程度で、幼虫は主にカワニナを食べ生長する。成虫の寿命は約2週間と短い。この日見られたゲンジボタルはメスが体長2センチ、オスは1.5センチ、背に十字の黒模様があるのが特徴。ホタルの発光は求愛行動という。

午後7時30分すぎ、小町の館周辺一帯に生息するゲンジボタルが飛び交い、幻想的な光が見られた。参加者は「黄色に光ってきれい」「初めて見た」と喜んだ様子だった。

ホタルの生態を説明するネイチャークラブにいはりの高田正澄さん=土浦市小野の小町の館

ホタルは自由に鑑賞できるが、マナーとして「カメラ撮影やライトの使用を控える」「静かに鑑賞する」「ゴミを持ち帰る」「ホタルを捕まえない」の4項目が挙げられた。高田理事長は「皆さんにホタルを鑑賞していただいて、自然に対する意識が高まり、豊かな自然を守るきっかけになれば」と語った。

同協議会の川又文夫会長は「鑑賞会は3年目になるが参加者がどんどん増えている。ホタルを通して自然に興味を持つ人が増えるのはうれしいことなので、今後もこの環境を大切にしていきたい」と話した。

鑑賞会は8、15日にも予定しているがほぼ定員という。問い合わせは市環境保全課(電話029-826-1111)まで。

来年50周年の「創造市場」 6月に土浦と小美玉で公演 地域劇団の駆け込み寺の役割も

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公演を控え「不思議の国のアリス」の稽古をする団員たち=土浦市西真鍋町、「創造市場」

【田中めぐみ】土浦を拠点に活動し、来年で結成から50周年を迎える社会人劇団「創造市場」(同市西真鍋町、代表・稜地一週〈五頭良二〉さん)が6月に土浦市と小美玉市で「不思議の国のアリス」を公演する。

「創造市場」は元は1970年に結成されたジャズバンドで、音楽だけにとどまらず、芝居、文学、絵画など、総合的な芸術を追求する若者たちの集まりだった。当初は社会風刺的な内容の芝居を公演していたが徐々に活動が少なくなり休止。その後、74年に再結成し、以降休むことなく活動を続けている。

現在は土浦市内やつくば、牛久、龍ケ崎、鉾田市などから、高校生から60代までおよそ25人の団員が集まり、週2回、2時間程度の稽古と年4回の公演、ワークショップを行っている。地域の劇団から相談があれば、持っている音響、照明設備、衣装なども無償で貸し出しており、現在は地域のアーティストの駆け込み寺のような役割も担っている。

今年4月に開催された「第11回沖縄国際映画祭」で上映された「エキストロ」(監督村橋直樹、脚本後藤ひろひと、NHKエンタープライズ)で、山本耕史さん、斉藤由貴さんらと共演し、主演を務めた萩野谷幸三さん(63)は同劇団メンバーだ。

チャレンジし続け、おもしろさ追求

代表の稜地一週さん

「不思議の国のアリス」の脚本・演出を手掛けた稜地(五頭)さんは「はちゃめちゃなストーリーのアリスは、伝統や歴史、しきたりを重んじる英国社会を風刺した作品とも言われている。まるでおもちゃ箱やキャンディー箱をひっくり返したようなゆかいなアリスの世界観を楽しんで、見る人それぞれに何かを感じてもらえれば」と語った。「エキストロ」の萩野谷さんは今回出演しないが、キャストの演技指導を行っている。

アリスのキャストの1人でつくば市在住の入江諭さん(39)は、人見知りで話すのが苦手な自分を変えたいと演劇を始めたという。「創造市場」に入団する前は別の演劇系サークルで1年弱活動していたが、本格的に舞台に立ってみたいと一昨年からメンバーに加わった。「人と関わって成長したいと覚悟を決めて入団した。活動はとにかく楽しい。仕事が終わってここに来て、いつもメンバーと笑っている。楽しむところは楽しみながらも、めりはりをつけて稽古している」と話す。

同じくキャストの森裕嗣さん(36)は「創造市場は歴史の重みがありつつも、常に新しいことにチャレンジし続け、おもしろさを追求している。だからこそ年齢関係なく人が集まってくるのだと思う。アリスの世界は狂った、よく分からない世界だが、セリフの端々に現代の我々にもはっとするような気付きがある。アリスが名作として残っているゆえんなのだろう」と語った。

舞台人口を増やしたい

現在、団員を募集している。稜地(五頭)さんは「芝居、ダンス、バンド、民謡、コンテンポラリーアートなど、ジャンルを問わず、とにかく舞台人口を増やしたい。年齢も経験も問わない。やってみたいと思う人はぜひ来てほしい」と語る。

左から「不思議の国のアリス」キャストの森裕嗣さん、沼田裕行さん、入江諭さん

◆「不思議の国のアリス」の公演日程は
▽土浦市亀城プラザ=8日(土)午後6時、9日(日)午後3時開演
▽小美玉市生涯学習センターコスモス=22日(土)午後5時、23日(日)午後3時開演
いずれも30分前開場
▽チケットは全席自由。前売り一般1600円(当日は1900円)、18歳以下1300円(同1600円)、親子ペア2600円。3歳以下は無料。小美玉公演のみ同市内在住・在勤・在学者は無料
▽チケットプレイガイドは〈土浦公演〉劇団創造市場HP・電話予約、さんあぴお(電話029-862-1311)、亀城プラザ(電話029-824-3121)。〈小美玉公演〉生涯学習センターコスモスか劇団創造市場

◆団員(スタッフ・キャスト)募集の問い合わせは
劇団創造市場 土浦市西真鍋4-43
電話029-821-9405(夜間のみ・日中は留守番電話)
メールアドレス sozoichiba@yahoo.co.jp
ツイッター @sozoichiba

アーティストの末石真弓さん 「おっきなおっきな紙芝居」でホビー大賞最高賞

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ワークショップで子どもたちと作業する末石さん

【池田充雄】つくば市のコミュニティFMラヂオつくばのパーソナリティで、牛久市在住アーティスト、末石真弓さん(アーティスト名・なる)が常陸太田市で行ってきたワークショップ「おっきなおっきな紙芝居」が、手作りの作品や活動を表彰する今年度のホビー大賞で最高賞の文部科学大臣賞を受賞した。紙芝居を通じて子どもたちが地域の自然や伝統文化に触れ、たくさんのつながりを育んだことが評価された。末石さんは今も牛久と常陸太田を行き来しながら活動を続けている。

末石さんの常陸太田市との係わりは2014年から。地域おこし協力隊として現地に住み込み、絵本と子どもを軸に活動した。3年間の任期中に100以上のワークショップを開き、延べ3500人の参加者と触れ合ってきた。2年目からは同市の市民センターパルティホールとの協働で「おっきなおっきな紙芝居」をスタート。この活動は協力隊の任期を終えた後も続いており、今年5月には4作目の「とうめいな魚」が完成した。

今回は「ふるさとの川」をテーマに、市内全域の小学生からキャラクターとお話を募集。約180のアイデアが寄せられ、それらを末石さんがつなぎ合わせて一つの物語にした。製作に携わったのは「ぬりぬりはりはり隊」の約50人。休日に市内のさまざまな地区から集まって、子どもたちによる子どもたちのための紙芝居を作り上げていった。

完成発表は5月26日、パルティホールのフェスティバルの中で行われた。子どもたちも紙芝居の読み係、引き係、おはやし隊に分かれて参加。おはやし隊は金属のねじ、プラスチックのボウル、紙の筒などを鳴らして各場面を盛り上げた。

例えば主人公の魚は透明なので姿は見えないが、テーマ音によってその存在を知らせてくれる。音楽指導と伴奏はつくば市在住マリンバ奏者の高野綾さん。「子どもたちには身近なものからイメージに合う音を探してもらった。発表では全体の流れや音のタイミングを見ながら呼吸を合わせるため、いつもと違う難しさもあったと思うが、いっそう皆で作り上げた作品になったのでは」と話す。

「故郷を大切にする『郷育』(きょういく)を目指してきた。この活動が10年後の子どもたちの心に温かい思い出として残り、迷ったときに背中を押してあげられたらいい」と末石さん。絵本作家になった理由も、自分が好きで続けられることで子どもたちを笑顔にしたいと思ったから。「私自身も『おかえり』と言ってくれる場所があったから、あちこち飛び回れた。次は自分が誰かにとっての『おかえりなさい』の場所になりたい」という。

「おっきなおっきな紙芝居」第4作「とうめいな魚」の完成発表=5月26日、常陸太田市パルティホール

第3弾マーケットゾーンオープン 土浦駅ビル 「モデルつくり全国展開目指す」体験型書店が意欲

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土浦駅ビル「プレイアトレ土浦」2階マーケットゾーンに31日オープンした天狼院書店店内

【鈴木宏子】「日本最大級の体験型サイクリングリゾート」を掲げる土浦駅ビル「プレイアトレ土浦」(藤本沢子店長)2階南側に31日、体験型書店と地元茨城のフードショップを組み合わせたマーケットゾーン「ブック&テーブル」がオープンした。

書店は、読書会やゼミ、演劇、旅行会を開くなど、本の先にある体験を提供する次世代型書店として知られる「天狼院書店」(東京都豊島区)で、県内初出店となる。これまで京都や福岡など人口150万人規模の都市に出店してきたが、人口約14万人規模の地方都市に出店するのは初めて。三浦崇典店主は「『こんな本を置いてほしい』とか『こんなことをしてほしい』などお客様の要望を聞いて、要望に応じた店をつくっていきたい。街の本屋さんがどんどん撤退する時代だが、土浦店で新しいモデルをつくり、全国に100店の土浦型天狼院をつくりたい。寿命100年の時代にそのまちの知を担い続ける本屋でありたい」と意気込みを話した。

長い行列ができた地元茨城のスイーツとベーカリー店が出店したマーケットゾーン

第1弾のサイクリング拠点、第2弾のレストランゾーンに続く第3弾で、2020年にオープン予定のホテルを除き、体験型の新業態店舗すべてが姿を見せた。

フードショップは、土浦の老舗どら焼き専門店「志ち乃」、かすみがうら市発祥の焼き芋専門店「かいつか」、県南を中心に展開する自家製酵母を使用したパン屋「クーロンヌ」と、地元で人気の高いスイーツとベーカリー店が出店した。店内はむき出しの天井とコンクリートが特徴のおしゃれな空間で、自転車を押したまま入店できる。

31日、2階南側のマーケットゾーンには長蛇の列ができ、大勢の来店客でにぎわった。市内のアルバイト女性(68)は「右籾から50分かけて自転車で来た。パン屋を利用したい」などと話した。「地元の人が勤め帰りに買えるお惣菜のお店がほしい」(50代主婦)などの声もあった。

アトレ土浦の藤本店長は「地元茨城で人気のフードショップ3店をそろえた。地元の方はもちろん、観光客やサイクリングの方に茨城のおいしさを知ってもらって、お土産に持って帰ってもらえれば。土浦から全国区の人気店になるようPRしていきたい」と話した。

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スケール大きく 一色邦彦・直彦展「宙(そら)と大地」 6月4日から筑波銀行

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一色邦彦さん㊨と直彦さん=牛久市のアトリエで

【相澤冬樹】筑波銀行(本店・土浦市、藤川雅海頭取)は6月4日から、つくば市竹園の同行つくば本部2階ギャラリーで第22回ギャラリー企画展、一色邦彦・一色直彦展「宙(そら)と大地」を開催する。6月30日まで。

彫刻家の一色邦彦さん(83)は東京生まれ、土浦市育ちで、1968年アトリエを牛久市に移して以来、地元茨城を大切に活動している作家。第9回高村光太郎賞、中原悌二郎賞優秀賞など、現代彫刻展で受賞を重ね、美術振興に大きな足跡を残した。

日本画の一色直彦さん(52)はその長男、1992年東京藝術大学大学院日本画科を修了。日本画の枠にとどまらず、岩絵具や金箔などの画材を用いて、杉やケヤキなどの板材に描く立体的で神秘的な作品を中心に発表している。

銀行の地域振興部が運営する同ギャラリーの存在を評価していた邦彦さんは2016年、常総市の鬼怒川水害を悼み「淼湎(れいめん)」と銘打った個展を開いた。「水」は邦彦さんが長く取り組んだテーマだった。反響の大きさに、同行が次回展を持ちかけたとき「今度はさらに大きなテーマで」と返答していた。

それが今回の「宇宙と大地」になった。広大無辺の宇宙をテーマに取り組む邦彦さんと2人展を開きたい思いがずっとあったためだ。しかし邦彦さんは、親子展という言い方を嫌う。「子供だから一緒にと思ったことはない。同じ芸術家の立場でやりたかった」というと、「大変名誉に思います」と直彦さんも応じた。

今回、邦彦さんは立体造形の4作品を出展、直彦さんは近作を中心に40点を出展。週に一度は牛久市のアトリエに集まって、展示構成を練ってきた。初日の4日には、2人そろってオープニングに立ち会いたいという。

◆つくば本部2階ギャラリー(つくば市竹園1丁目、電話029-859-8111)入場無料、土・日曜日も開廊。

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TX沿線に3校新設急務 児童・生徒数増でつくば市 過大規模校に懸念の声

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市内で児童・生徒数が最も急増しているTXみどりの駅周辺のみどりの学園義務教育学校=つくば市みどりの

【鈴木宏子】つくばエクスプレス(TX)沿線で児童・生徒数が急増している問題で、つくば市は30日、人口が急増している地区の2033年度までの児童・生徒数推計を発表した。すでに用地を取得した万博記念公園駅周辺に香取台小学校(仮称)を新設するほかに、新たに、みどりの駅周辺のみどりの学園義務教育学校と、研究学園駅周辺の学園の森義務教育学校で教室が足りなくなり、学校の分離新設が急務であることを明らかにした。

同日開いた市議会全員協議会で推計値を報告した。みどりの、学園の森の2校はいずれも2018年4月に開校したばかり。今年度中に、みどりのは15教室、学園の森は特別教室を含め27教室を敷地内に増築する。しかし、みどりのは2022年度以降、学園の森は23年度以降から再び教室が足りなくなるという。これから用地を取得し学校を新設するには5年程度かかることから、開校までの間、2校ともさらに教室を増築することが求められる。

一方、みどりのと学園の森の2校が文科省が解消を促している過大規模校=メモ=になることも分かった。市の推計によると分離新設をしない場合、みどりのは開校時の2018年の児童・生徒数が719人だったのに対し、最大で2030年に6.3倍の4576人になる。学園の森は2018年の1151人に対し、最大で2027年に2.9倍の3427人になり、分離した新設校も過大規模校になってしまう懸念がある。

市議からは「あり得ない規模の学校になる。子どもたちへの影響や市財政への影響も示してほしい」「(推計値が)やっと出てきたが、想像以上でびっくりしている。適正なクラス数があり、それを無視して増築で対応してはいけない」など過大規模校への懸念が出た。

市教育局によると、2014年8月に策定した市学校適正配置計画の推計値と比べ、その後に、予想を上回る子育て世帯の流入があったという。さらに学校用地などを配置したTX沿線の土地利用計画では、小中一貫の義務教育学校の建設が想定されておらず、学校配置で土地利用のアンバランスが生じているとしている。

市は現在、同計画の見直しを進めており、今年度中に策定するとしている。人口が急増するTX沿線の学校は早急な対応が求められていることから、策定を待たずTX沿線に限定して推計値を公表し、先行して対応方針を明らかにした。

※メモ
【過大規模校】全校で31学級(1200人程度)以上の学校をいう。文科省は2015年策定の「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置に関する手引き」で、大規模校(25~30学級)や過大規模校には①教員集団として児童生徒一人ひとりの個性や行動を把握し、きめ細かな指導を行うことが困難で問題行動が発生しやすい場合がある②児童生徒一人当たりの校舎面積、運動場面積が著しく狭くなった場合、教育活動の展開に支障が生じる場合がある③特別教室や体育館、プールの利用に当たって、授業の割り当てや調整が難しくなる場合がある―などの課題が生じることを挙げている。特に過大規模校に対しては、速やかに解消を図るよう促している。

児童・生徒数が急増するTX沿線の小中学校・義務教育学校の対応方針
児童・生徒数推計 対応方針
みどりの学園 最大想定で、1~6年生は2028年まで増加し(最大約3240人)以降減少。7~9年生は32年まで増加し(約1630人)以降減少。 2019年度中に敷地内に15教室を増築し、21年度まで対応可能。新たな学校建設を検討するが、22年度以降は教室増築が必要
学園の森 最大想定で、1~6年生は2026年まで増加し(最大約2380人)以降減少。7~9年生は31年まで増加し(約1160人)以降減少 2019年度中に敷地内に特別教室を含め27教室を増築し、22年度まで対応可能。新たな学校建設を検討するが、23年度以降は教室増築が必要
竹園東小 2024年まで増加し(最大約720人)以降減少 既存校舎で対応
竹園西小 2025年まで増加し(最大約990人)以降減少 2019年度中に8教室を増築
竹園東中 2028年まで増加し(最大約880人)以降横ばい 2019年度に11教室を増築
手代木南小 減少から横ばいに転換し2024年がピーク(約340人) 既存校舎で対応
松代小 今後も減少 既存校舎で対応
葛城小 今後も増加し2031年にピーク(約720人) 北側の県有地を購入し校舎を増設
手代木中 2024年まで増加(最大約690人) 2021年度までは既存校舎で対応。22年度までに敷地内に校舎を増築
島名小 2027年まで増加し(最大約880人)以降は減少 2022年度までは既存校舎で対応。香取台小(仮称)を23年4月に開校
真瀬小 今後も緩やかに減少
高山中 2028年まで増加(最大約470人)し、その後、増減しながら横ばい 2021年度までは既存校舎で対応。22年度までに敷地内に校舎を増築

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健康体操で認知症を予防 つくば市高齢者ふれあいサロン

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シルバーリハビリ体操指導士の説明に耳を傾けながら体操にトライする参加者たち=つくば市上岩崎の特別養護老人ホームいちょうの木

【橋立多美】つくば市茎崎地区の特別養護老人ホーム「いちょうの木」で30日、「中高年の健康管理について」と題した講話と健康体操の指導が行われた。講師は健康管理士一般指導員でシルバーリハビリ体操指導士の橋本明さん。60~70歳代の地区住民10人が熱心に講話に聴き入り、椅子に腰かけたままできる健康体操に取り組んだ。

主催したのは「通学路の安全を守る会」(稲川誠代表)。同地区の中で牛久沼に突き出た台地にある富士見台や泊崎、あしび野などの住宅地の子どもは自転車で通学する。その子どもたちの安全を守ろうと2010年に発足した。今春、同市がスタートさせた「ふれあいサロン運営補助事業」=メモ=の実践団体として認可され、その第1回の集まり。

認知症の概要を紹介するシルバーリハビリ体操指導士の橋本さん=同

講話は認知症をテーマに進められた。15年の認知症患者520万人が25年には700万人と推定され、その65パーセントをアルツハイマー型が占めるなど、認知症の概要が説明された。また認知症を完治する薬はないが、早期に受診することで薬で進行を遅らせることができると説いた。

橋本さんは「認知症の予防に役立つのが適度な運動で、毎日10分の軽い運動で脳の機能は向上する」と語りかけた。そして室内の椅子に座った姿勢で気軽にできるシルバーリハビリ体操を指導した。腹式呼吸を取り入れた肩こりや失禁、誤嚥(えん)などに効果のある体操で、参加した宝陽台在住の片岡三郎さんは「毎日欠かさず続けていこうと思う」と話した。

近年、歯周病が認知症に関与しているという研究報告について触れ、橋本さんは「メカニズムが解明されたわけではないが新しい治療法への第一歩として期待できる」とし、丁寧なブラッシングが重要と結んだ。

講演会の最後に参加者が「施設に入所すると認知症が進行するのはなぜか」と質問した。橋本さんは「入所したことで、それまでやっていた身の回りのことを施設職員がやってしまう。忙しい職員を責められないが、残っていた機能が失われていくことが原因」と答え、施設の現状を浮き彫りにした。

※メモ

【ふれあいサロン運営補助事業】高齢者の介護予防及び孤立化の防止のための地域憩いの場を確保し、高齢者の福祉の増進に資することが目的。参加者を特定の者に限定せず、定期的に介護予防活動を実施することなどが条件。

原発事故を超えて つくばの原木シイタケ生産者 全国サミット開催へ奔走

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原木シイタケを栽培するホダ木を収めたハウスで飯泉孝司さん=つくば市なかのきのこ園

【相澤冬樹】茨城県の原木シイタケ生産量は2016年に401.6トン、福島第一原発事故後の出荷制限・自粛下にありながら静岡、鹿児島、群馬に次ぐ第4位となったことはあまり知られていない。さらに年間150トンを出荷するという生産者がつくば市にいることはもっと知られていない。「おそらく日本一のはず」と胸を張るのは、なかのきのこ園(つくば市中野、飯泉厚彦社長)の創業者、飯泉孝司さん(71)。事業を子息に任せ、自身は全国の生産者らに参集を呼び掛けて、8月につくばで「原木しいたけサミット」を開催すべく東奔西走の日々を送っている。

県内19市町で続く出荷規制

2011年東日本大震災時の原発事故に伴う放射性物質の影響により、県内産原木シイタケは大打撃を受けた。19市町で出荷制限・自粛の規制がかかり、10市町村で一部解除になったものの、現在も19市町すべてで継続中だ。「規制と風評被害に耐えかねて廃業してしまったものも多く、生産者が再出荷に向け線量検査など申請手続きを行わなければ出荷規制だけが残ることになる」(飯泉さん)。事故当時県内に約500人いた原木シイタケ生産者は150人ほどになった。

被ばく線量の基準値を下回ったつくば市は規制の対象から外れたものの、飯泉さんは原木のホダ木約200万円分を廃棄処分にした。このため丸1年、生産できない時期が続いたが、再開には次のハードルが待ち受けていた。原木の高騰である。

きのこ園では原木にコナラとクヌギを用いているが、つくば周辺の生産者5人で共同購入グループを組んで、調達先を福島・阿武隈山地に確保していた。1本の木からホダ木7本が取れる。グループの年間使用量40万本のためには1ヘクタール約7000本として、60ヘクタール分が必要。植林から伐採まで約20年かかるのを見込み、1200ヘクタールもの広さを手当てしていた。福島県内の、その調達先が消えた。

当座は在庫でしのぎつつ、長野県産に切り替えるなどの措置をとった。7センチ径で長さ70センチの原木1本が事故前は200円だったのが、今は倍の400円以上している。東電の震災復興基金からの助成が入るが、これも19年度までで打ち切りとなる。この先原木調達が生産コストを押し上げるのは必至だ。

「今後の活路見出す」

川上に自前の原木調達先を持たず、川下に安定した流通経路を確保していない産地には苦境が待ち受けている。飯泉さんは、生産、販売に関わる課題と情報を共有し、今後の活路を見出すべく、全国の産地に連携を呼びかけた。

所属団体の東日本原木しいたけ協会(古河市)を社団法人化する過程で知り合った大分県の阿部良秀さん(現日本椎茸農業協同組合連合会長)らと協議を重ね、実行委員会形式で初のサミット開催を打ち出した。行政に協力を求める一方、消費者も巻き込んで、森林や山村の豊かな環境を保全するなかで成長戦略を描く道筋を考えた。「全国規模となると原発問題は扱えないし、第1回とも打ち出せない。しかしSDGs(持続可能な開発目標)に懸ける思いは強くある」という。

「原木しいたけサミット」は8月29、30日、つくば市小野崎のホテルグランド東雲をメーン会場に開催。全国から約150人の参加を見込み、パネルディスカッションや6分科会での討議を予定している。2日目の現地視察はなかのきのこ園が会場、付属のレストランでシイタケ料理の試食会を行う計画でいる。

1年を通じ出荷作業の行われる原木シイタケ=同

菌床栽培全盛の中で

スーパーなどに並ぶシイタケには、生(なま)と干しの2種類あるのはご存知だろうが、生産の仕方でも2通りに分けられる。短く切った樹木に菌を植え付けて林地やハウスに並べて栽培する原木栽培と、粉砕した樹木のオガクズなどから作る菌床を用いてハウス栽培する菌床栽培である。人工的なシイタケ栽培が始まったのは大正年間で、そんなに古いものではないが、昔からの手間ひまかけて作るのが原木栽培で、近代化されたオートメーション促成型が菌床栽培といえる。

シイタケ菌を植え付けた原木をホダ木といい、これを寝かせて生育を待つだけで1年以上を要するのに対し、菌床なら3~4カ月で収穫でき、同じ面積のハウスなら4倍以上生産可能という。だから、今日では両者の生産量に圧倒的な差がついた。林野庁統計によれば、16年の生シイタケ生産量は全国で6万9707トン、うち原木栽培は7322トンに過ぎない。天候や気温の影響を受けやすい原木栽培は生産量が上下しがちだが、概ね全体1割前後にとどまっている。

1975年から一貫して原木シイタケ栽培に取り組んでいる飯泉さんによれば、見た目はもとより、食品成分を調べても両者の間に明確な差は認められないそうだ。それでもなぜ原木栽培を続けるかといえば、「食べれば分かる」という味覚へのこだわりにほかならない。大口出荷先の生協からも、飲食店からも原木シイタケ以外の取引はしないと言われている。

不登校生徒のフリースクール「ライズ学園」岐路に つくばで19年

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通園日の1時間目、4人の通園生が英語、国語、数学、社会担当のスタッフからマンツーマンで指導を受ける=つくば市谷田部の市民ホールやたべ

【橋立多美】不登校の子どもたちが学ぶフリースクール「ライズ学園」(つくば市谷田部)が岐路に立っている。経営が苦しく、3月末で一旦閉園して運営を検討しようとしたが、保護者の声に押されて教室を移転し、週に1日開級している。同園の礎を築いた小野村哲さん(59)は「これで終わりではない」と奮起する。

公立中学の英語教師だった小野村さんは、小さなつまずきから勉強に追い付けなくなり、「どうせ自分なんか…」と思ってしまっている生徒を見ていた。その一方で、落ちこぼれていく子どもに対応できない学校の限界を感じていた。保護者の「勉強が分からない子どもを見てくれる場所がない」に背中を押され、1999年に教職を離れた。

登園者延べ2万2585人

2000年7月にリヴォルヴ学校教育研究所(01年にNPO法人化)を設立し、不登校の児童・生徒が学力を身に付けることのできる「ライズ学園」の運営に乗り出す。定員15人の少人数制。週4日の時間割で、教員免許を持つ教科担当者が指導するほか、スポーツや絵画造形、農作業など体験型の学習を取り入れた。教室は谷田部内町の洋品店の2階(約132平方メートル)を借りた。

同園のモットーは「みんなちがって、みんないい」。不登校の背景にはいじめや学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)などが潜むケースがある。また勉強のつまずきは千差万別。子ども一人ひとりがどこに困難を感じているか理解した上で学習支援を行っている。

「ダメな子」とレッテルを貼られていた子どもが丁寧な指導で分かるようになると、意欲を出して変わっていくという。高校、大学への進学や、社会に適応できないと思われていた子どもが数年して独立していく。開園から今年3月末までの延べ登園者数は2万2585人に上る。

個に応じた学習支援を行うことで得た発達障害などへの対処法や成果を教材としてまとめ、その販売収益と月謝=メモ参照=、助成金、寄付金を活動経費に充ててきた。しかし、次第に負債が膨らみ始める。

4月に学園を巣立つ生徒が数人いても、それに代わる人数の入園生を迎えることはしない。春を待たずに「学校に戻る」ことを選択した子どもが「やっぱりライズに…」となった経験から、卒園生の居場所を確保しておこうという配慮だ。

ライズ学園のスタッフたち。左から事務局長兼国語担当の北村直子さん、英語担当の小野村哲さん、学園長で数学担当の本山裕子さん=つくば市千現のリヴォルヴ学校教育研究所事務局

こうした配慮が月謝収入を不安定にさせ、指導にあたるスタッフが転勤などで退いても経営難から新たなスタッフを採用できなくなった。スタッフ不足は定員に満たない運営につながり、数年前から新たな入園希望に応じられない状況に陥った。

「せめて週に1日でも」

リヴォルヴ学校教育研究所の理事やスタッフが話し合いを重ね、19年度は難局を乗り切り発展するために一時休園という結論に傾いた。ところが保護者から「活動をゼロにしないで欲しい」「せめて週に1日でも」の要望が相次いだ。

教室を近くの公共施設、市民ホールやたべの一室に移し、4月から毎週水曜日に開級している。現在、市内外の中学生2人と高校生4人(通信制2人)が通う。スタッフは数学担当で学園長の本山裕子さん、英語担当の小野村さんら計8人。

書類などを保管する棚がないためスタッフは毎回、教科書や辞書、実験器具、画材を運び込んでの活動だ。教室が変わったことで動揺する通園生はいなかった。授業時間外はスタッフとフレンドリーに言葉を交わし、学校でも家庭でもないライズ学園を子どもたちは心地よく思っていることが伝わってきた。

小野村さんは「今はライズが果たすべき役割を考えて基盤強化を図りたい。ライズ学園はこれで終わりではない」と言い切った。学ぶ意欲を育み、不登校の心に寄り添う挑戦が続く。

※メモ

【フリースクールの月謝】義務教育の教育費は無償だがフリースクールには公的な支援がなく、親が学費を負担する。文科省の調査によれば月会費の平均は3.3万円で親の金銭的な負担は大きい。その一方でフリースクールは月謝だけでは立ち行かず、職員が待遇面で我慢したり寄付金を集めるなど経営に苦しんでいる。

➡NPO法人リヴォルヴ学校教育研究所のホームページはこちら