【鈴木宏子】つくば市が、公募の上、内定していた市政治倫理審査会の市民委員を、公募はなじまないとして、議会提案を見送ることがわかった。11日開会の市議会6月定例会に「市民」を削除する同審査会条例改正案を提案する。
同委員は、政治倫理条例に基づいて市長や市議会議員などが、年1回公開する資産報告などを審査する。昨年暮れ、7人のうち2人を公募した。委員になるためには市議会の同意を得なければならず、もともと3月議会最終日の3月20日に提案する予定だった。同日の本会議直前に開かれた議会運営委員会に諮り、その直後、提案自体が見送りとなった。
6月議会に改めて市民委員を提案するかが注目されたが、条例に定められた「市民」委員を削除し、「市民で地方行政に関し優れた識見を有する者」に改める。具体的には部長級市職員や教育委員の経験者などを想定しているという。
議会から意見
市民委員の公募は、五十嵐立青市長が掲げた「各種検討委員会に市民公募委員を必ず導入する」などの公約に基づいて実施している。市は2018年に市民参加推進指針を策定し、市付属機関・懇談会委員の市民公募要綱を作った。要綱に基づいて昨年暮れ、政治倫理審査会でも初めて市民委員を公募し、面接などの審査を経て、今年1月、2人が内定した。
関係者によると、3月議会最終日に開かれた議会運営委員会では市民委員に対し「どのような経緯で公募したのか」「公募するのにふさわしい案件なのか」などの意見が出たという。市民委員に賛成する意見は出なかったという。審議会委員は、議員らの資産報告が正しいことを証明するための預金通帳や残高証明書、納税証明書、源泉徴収票、固定資産評価書、借用証書などを見て審査するため懸念が出たとみられる。
一方、担当の市法務課によると、3月議会の後、市内部で検討した結果「審査会委員は、議員や市長、副市長、教育長などの職務内容に関する知識と市政全般に関する知識を有している人が適任」だとして、条例の条文を改めるという。
「はしごはずされた」
これに対し公募に応募し、今年1月、同審査会の市民委員に内定していた鳥居徹夫さん(69)は「5月下旬に担当課から電話で経過説明と、条例改正をするという説明を受けた。市民参加を言いながら、2階に上げられてはしごをはずされたと感じる。議会に諮って否決されたなら分かるが提案もしないというのが分からない」と話す。「守秘義務については面接のときに説明を受けたし、条例にも守秘義務規定がある」とする。
周辺市町村では、守谷市や取手市が政治倫理審査会委員の公募を実施しており、隣のつくばみらい市は今年度から同委員の公募を開始する。20年近く前から公募を実施している守谷、取手両市は「(公募した市民委員が審査したことによって)これまで問題が発生したことはない」としている。