土曜日, 5月 24, 2025
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キャッシュレス決済に踏み切る 7月からつくば市のカフェ

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「SAKURA Café」の玄関に立つ岡﨑さん(中央)とスタッフたち=つくば市松代4丁目の松代ショッピングセンター

【橋立多美】スーパーTAIRAYAを核とする松代ショッピングセンター(つくば市松代)に5月オープンした「SAKURA Café」(サクラカフェ)が、7月から支払いに現金を使用しないキャッシュレス決済に踏み切る。同SC内の常陽銀行松代出張所が7月19日に営業を終えることから導入を決めたもので、これまで来店した客の反応は良いという。

丁寧にコーヒーを淹れる岡﨑さん=同

店主の岡﨑和男さん(60)は、今春まで同市立桜南小学校の校長だった。店名の「SAKURA」は日本人が最も親近感を抱き、学校を囲む桜が自慢の桜南小にちなむ。「子どもたちにより良い教育」を心掛けてきた思いを「松代地域にオアシスを」に切り替えた。夫婦共働きで料理をこなしていたため、厨房に立つことには慣れている。

約33平方メートルの広さの店内に客席は19席。採光を十分にとり、清潔感に満ちた快適な空間だ。これまでの来店客数は1日平均30人弱。オープン時などに広告は出さなかったが上々の滑り出しだった。

ところが今回、出張所の閉鎖に伴いATMも撤去されることになる。消費増税にあわせたポイント還元施策など、キャッシュレス化を後押しする環境が出来上がりつつありことも手伝って7月からの導入を決めたという。

入り口のドアにキャッシュレス決済を明記し、7月からの導入を客に告げると「逆に便利かも」と反応は良いという。日本の消費者はキャッシュレス化に後ろ向きと言われるが、必ずしも現金払いにこだわっているわけではなさそうと見る。岡崎さんは、各国を旅してキャッシュレス化が進んでいることを感じていた。「日本が現金社会なのは治安が良いからでしょう」と話す。

支払いはクレジットカードのほか、交通系の電子マネー、スマートフォン決済サービスで出来る。キャッシュレスに馴染めない高齢者などには配慮するそうだ。

看板メニューはブラジル産コーヒーとスリランカの紅茶。在職中、文科省が主導するブラジルとスリランカの日本人学校に赴任し、本場の味に心酔した。コーヒーは日本人好みにブレンドしている。

カレーやピザなどのメニューもあり、週替わりのランチが始まる。テイクアウトに応じ、高齢者向けのメニューを検討中。また貸し切りのパーティーにも対応する。営業時間:午前11時~午後2時・午後3時~同7時 定休日:水・日曜 電話:029-828-4573

搬送や脱出の救助技術訓練を公開 土浦市消防本部

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出場隊員が訓練成果を披露した「引揚救助」=土浦市田中町の市消防本部屋外訓練場

【谷島英里子】土浦市消防本部(飯村甚消防長)は6日、救助の技を競う「第46回県消防救助技術大会」に出場する救助隊員の訓練成果を一般公開した。11日に県立消防学校(茨城町)で開く県大会には、土浦本部から5チーム23人が出場する。

大会は、ロープを渡って人を救出する「ロープブリッジ救出」、5つの障害を乗り越える「障害突破」、救助者を搭上に引き上げる「引揚救助」の3種目で競われる。警防救急課によると、引揚救助は建設現場での転落や地下、マンホールなどでの災害を想定した訓練。要救助者を含む5人1組で、2人が空気呼吸器を着装して塔上から塔下へ降下、検索後に要救助者を塔下へ搬送し、4人で協力して塔上へ救出し脱出する。

隊員たちは同僚の声援を受け、息の合った動きでしっかりと声をかけ合いながら、日ごろの訓練の成果を披露した。県内24消防本部の精鋭が参加する県大会で上位に入賞すると関東大会への出場権が得られ、勝ち進むと全国大会に出られる。

救助隊の藤井浩二隊長(39)は「タイムがとても良かった、減点の有無も確認できたので全チームが関東大会に出場できるよう今後も訓練に力を入れたい」と話した。障害突破Aチームリーダーの田中洋平さん(32)は「救助技術に習熟したチームが揃っているので、県大会を突破したい。1本勝負を普段通りに発揮できれば」と意気込みを語った。

利用者200万人達成を祝う 土浦のキララちゃんバス

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「乗降者」とあるのはご愛敬、花束を持ち記念撮影する200万人目の「乗客」藤田三恵子さん(中央)とキララちゃんバスの関係者=土浦駅前

【谷島英里子】土浦市内を走る「まちづくり活性化バスキララちゃん」(通称・キララちゃんバス)の利用者数が4日、200万人に達し、土浦駅前で記念セレモニーが行われた。

200万人目となったのは同市港町3丁目の80代、藤田三恵子さん。キララちゃんバスがあるから、と78歳の時に運転免許証を自主返納したという。「買い物などとても便利に使わせていただき、助かっている」と笑顔。

セレモニーには理事やバスボランティア、キャラクター「キララちゃん」が出席し、くす玉割りや横断幕でお祝いムードとなった。バスを運行するNPO法人まちづくり活性化土浦の大山直樹理事長が藤田さんに花束と記念品を贈った。

大山理事長は「土浦中心市街地の足となり、買い物弱者に、土浦のまちなかで買い物をしていただきたい思いから運行を始めた。これからも親しんで乗ってもらえるように利便性を高めていきたい」と話した。

バスは土浦の中心市街地活性化を目的としたコミュニティーバスで、同NPOが関東鉄道、市と三者協定を締結し、2005年に運行を開始した。現在、土浦駅を拠点に3路線を走っている。乗車料金は大人150円、小学生以下80円。

ダイエットにフクレミカンの果皮 茨城大学が動物実験で検証

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論文を発表した佐藤瑞穂さん㊨と豊田淳教授=阿見町、茨城大学農学部の研究室

【相澤冬樹】筑波山麓特産のフクレミカン(福来みかん)の皮に含まれる食品機能性を、初めて動物実験で検証した研究論文がこのほど、茨城大学から発表された。肥満を抑える、ストレスに耐えるなどの食品機能性を消費者向けに打ち出すには、科学的知見に基づく根拠が必要になるため、論文の発表は、地域特産品の健康食品アピールに有力な手掛かりを与えそうだ。

論文は、同大農学部の連携大学院で学ぶ東京農工大学大学院博士課程3年、佐藤瑞穂さん(27)を筆頭著者に発表された。指導に当たった同大農学部の豊田淳教授、井上栄一教授、宮口右二教授らが名を連ねている。2論文あり、1つが未熟フクレミカンの果皮を含む飼料をマウスに与えたところ、体重増加と脂肪蓄積の抑制が認められたとする内容だ。

たわわに実った筑波山麓のフクレミカン=つくば市臼井

未熟のミカンの皮を使ったのは、あらかじめ県産業技術イノベーションセンターの分析で機能性成分量が完熟のものより多いことが分かっていたため。佐藤さんによれば、実験は2014年産ミカンを使って行われた。青いミカンを大量に購入し、研究室全員で皮むきをして乾かせ粉末にした。

動物実験は、体重約20グラムのマウスを2つのグループに分け、24時間明るさを保った環境で4週間飼育するもの。一方のグループには高脂肪食だけを、もう一方には果皮の粉末5%を混ぜた高脂肪食を給餌した。その結果、高脂肪食だけを与えたマウスは体重を6-7グラム増やしたのに対し、果皮の粉末入りを食べたグループは3-4グラムの増加にとどまった。また血中のコレステロール量と中性脂肪レベルについても、果皮の粉末入りのエサを食べたグループの方が低いことが確認された。

このことから、熟する前のフクレミカンの皮には、抗肥満効果やメタボリック症候群の予防効果があることが確かめられた。果肉を食べるよりも、果皮をジャムや香辛料に加工することが多い利用法も適切だったといえる。フクレミカンなどのかんきつ類には、ストレスに対する抵抗性である「レジリエンス」を獲得する作用をもった物質があり、これも動物実験で確認され、第2の研究論文になった。

豊田教授は「フクレミカンの機能性は以前から指摘されてきたが、その効果が動物実験で確認されたことは大きな前進だ。しかも英文による論文は初めてで大きな意義がある」という。フクレミカンの食品機能性は、こうした実証の積み重ねで確立することになる。

本社機能移転事業2年目 順調な進捗 県内で10社が採択

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県が誘致しオートリブの開発拠点が新設されたつくば駅前のL.Bizつくば(旧ライトオンビル)=つくば市吾妻

【山崎実】茨城県は、若者の雇用創出と地元定着対策の一環として、昨年度、本社機能などを移転する企業に最大50億円という、全国トップクラスの補助を行う企業誘致活動強化事業をスタートさせた。これまで既に10社の計画が認定(採択)され、順調な進捗(しんちょく)をみせている。2年目の今年度も引き続き事業を継続中で、県産業立地課は「緩めることなく、首都圏をターゲットに誘致活動を進めていく」と話している。

同課によると、従来、製造業などが企業誘致の中心だったが、ICT(情報通信技術)時代に対応するため、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)など、新たな成長分野の研究施設・本社機能の誘致を図る。

施策事業の中心である本社機能移転強化促進補助金の計画が認定された企業は8社=下表。ほかに本社機能移転促進補助金の対象企業としてシンワ機械が本社、及び工場を埼玉県から五霞町(圏央道五霞IC周辺)に移転。IT関連企業など、オフィス賃料補助金対象では、アプリシエイト(ソフトウエア会社)が東京の本社機能を水戸市に移転して「ITソリューション統括センター」を新設するなど、全体で10社の計画認定(採択)が決まった。

今年度も前年度の予算額を確保、維持しつつ、約56億円の枠で事業を推進するが、同課のほか土地販売推進課、産業基盤課など庁内関係各課の職員で派遣交渉班を構成。首都圏の企業約1万2000社以上にダイレクトメールを、また、本社や県内事業所、出張所、TX沿線などの200社以上の企業訪問を行い、誘致活動を展開している。

オフィス整備補助を拡充

事業の主な具体的な内容(カッコ内は補助額)は以下の通り。

▽本社機能移転強化促進補助(50億円)=AI、IoT、ロボット、次世代自動車など、新たな成長分野の研究所・本社機能などの県内移転が対象。補助要件は移転人数5人(研究所の場合は10人)以上で、補助額は投資額、移転人数などで算出。県内全域を対象に、50億円が上限
▽本社機能移転促進補助(2億円)=全業種(研究所・研修所を除く)が対象で、補助要件は移転人数10人以上。補助額は上限1億円。既存の本社機能移転促進補助金の対象エリアを県内全域に拡大した
▽IT関連企業等賃料補助(2400万円)=新たな成長分野の企業が、県内に移転した場合のオフィス賃料が補助対象で、補助率は2分の1(上限は240万円、3年間)。県内全域が対象
▽サテライトオフィスなど、モデル施設整備費補助(5000万円)=サテライトオフィス、小規模オフィスの整備費(整備面積50坪以上)に対する支援で、補助率は2分の1(上限は2500万円)。対象地域はJR常磐線、つくばエクスプレス(TX)沿線各駅の徒歩圏内エリアーなど。

さらに今年度はこれらの施策に加え▽オフィスビル整備促進補助(3億円)を、前年度の5000万円から拡充した。賃貸用オフィスビルの整備費用を本社機能などの入居実績に応じて支援するもので、補助率は15%(上限は3億円)。県内全域を対象に、新規施策として打ち出している。

経産省がまとめた昨年の通年工場立地動向調査によると、本県は工場立地面積(147ヘクタール)、及び県外企業立地件数(34件)で全国第1位、工場立地件数(68件)でも同3位だったが、全体的な傾向として圏央道沿線地域での企業立地が多く、68件のうち65%にあたる44件が県南、県西地域への立地だった。

「あっぱれ伊賀七」初公演前に公開稽古 舞台はつくば市谷田部の旧呉服店

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「あっぱれ伊賀七」真剣な稽古発表の一コマ=つくば市谷田部

【橋立多美】つくば市谷田部が生んだ発明家・飯塚伊賀七(※メモ)を題材にした芝居「あっぱれ伊賀七」の公演に先立って、谷田部内町の旧呉服店、アラキヤで1日、劇団「伊賀七座」の公開稽古と制作発表が行われた。集まった住民らが拍手を送り、店頭の駐車場では町内商店による露店販売でにぎわった。

かつての商業中心地ながらシャッター通りと化した谷田部内町に活気を取り戻そう、と伊賀七をシンボルにした町おこしが動き出すなかで、地元在住の劇作家・沼尻渡さん(70)が芝居公演を提案。今春、アラキヤを会場に地域住民の交流拠点となる「よりあいや伊賀七庵」と「伊賀七座劇場」を柱にする活性化プロジェクト「わわわやたべや」(長塚俊宏代表)が始動した。

座長の沼尻渡さん(ペンネーム北野茨)は、高校教師のかたわら脚本を書き、生徒に演劇を指導していた。50歳で退職し東京で演劇活動に打ち込んだが、東日本大震災で活動を支えていた地方巡業が次々にキャンセルになり、失意を胸に故郷に腰を落ち着けた。しかし今年、内町区長会の副会長になったことから「町おこしに協力を申し出た。焼けぽっくりに火がついた」と話す。

初公演に臨む出演者たち。左から伊賀七の妻役の高野培美さん、伊賀七役の沼尻渡さん、奉公人八兵衛役の羽田芳夫さん、奉公人加助役の中村壮志さん

「あっぱれ伊賀七」は、浅間山の大噴火や飢きんが続く江戸期に、農民の暮らしを楽にする大時計を発明した伊賀七が、自らの命を賭けて百姓一揆に打ってでる物語。沼尻さんは「自然災害や社会不安のある現在にからめて1週間で書き上げた」という。

座長以外は初舞台 22日、23日に初公演

劇団員は黒子(くろこ)を含めて地域住民7人で、座長を除く4人は今回が初舞台となる。演出家でもある沼尻さんから指導を受けてきた。伊賀七の奉公人・加助を演じる中村壮志さん(22)は大学時代に演劇サークルに属していた経験を生かした活躍ぶり。「客席への目線や発音などの指導を受けた。同年代の出演者を増やして町おこしを若い世代に広げたい」

こけら落とし公演は22日、23日。会場の収容人数は60人で両日とも半分が埋まり、追加公演を検討している。年4回の公演を予定しており、1公演4枚の入場券で年間16枚の入場券が利用できる1万円の特別協力券の購入を呼び掛けている。劇団員、裏方への参加は随時募集しており、問い合わせは電話090-3341-7351(沼尻さん)。

8日(土)の午後1時からは同所で「よりあいや伊賀七庵」を開催。町内外の住民が自由に集まれる場を目指し、趣味の作品展示やおかずのレシピ紹介などを企画している。

◆「あっぱれ伊賀七」 6月22日(土)、23日(日)午後3時から。大人1000円、中高生500円、小学生300円。チケットの問い合わせは電話090-5535-2845(八木下さん)

駐車場で開催された町内商店による露店=同

※メモ 飯塚伊賀七
江戸時代後期の発明家(1762-1836)。谷田部藩領の常陸国筑波郡新町村に生まれ、生涯を谷田部で過ごした。名主を務めるかたわら、建築や和算、蘭学などを学び、からくりや和時計の製作や五角堂を設計して村人を驚かせた。高さ2メートルの和時計の復元模型が谷田部郷土資料館に展示されている。

山里にホタル舞う 土浦「小町の館」周辺 見ごろは6月中旬まで

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乱舞するホタル(6秒露光写真10枚を合成)=土浦市小野の「小町の館」周辺で1日午後8時ごろ、市環境保全課提供

【谷島英里子】土浦市小野の「小町の館」周辺で、ゲンジボタルが飛び交い始め、乱舞する光が訪れた人たちを魅了している。見ごろは6月中旬まで。

1日夜には市環境基本計画推進協議会主催のゲンジボタル鑑賞会が開かれ、定員いっぱいの45人が参加した。講師は環境保全活動を行っているNPO法人ネイチャークラブにいはりの高田正澄理事長と黒澤順一さん。ホタルは日本に約40種、発光するのは10種類程度で、幼虫は主にカワニナを食べ生長する。成虫の寿命は約2週間と短い。この日見られたゲンジボタルはメスが体長2センチ、オスは1.5センチ、背に十字の黒模様があるのが特徴。ホタルの発光は求愛行動という。

午後7時30分すぎ、小町の館周辺一帯に生息するゲンジボタルが飛び交い、幻想的な光が見られた。参加者は「黄色に光ってきれい」「初めて見た」と喜んだ様子だった。

ホタルの生態を説明するネイチャークラブにいはりの高田正澄さん=土浦市小野の小町の館

ホタルは自由に鑑賞できるが、マナーとして「カメラ撮影やライトの使用を控える」「静かに鑑賞する」「ゴミを持ち帰る」「ホタルを捕まえない」の4項目が挙げられた。高田理事長は「皆さんにホタルを鑑賞していただいて、自然に対する意識が高まり、豊かな自然を守るきっかけになれば」と語った。

同協議会の川又文夫会長は「鑑賞会は3年目になるが参加者がどんどん増えている。ホタルを通して自然に興味を持つ人が増えるのはうれしいことなので、今後もこの環境を大切にしていきたい」と話した。

鑑賞会は8、15日にも予定しているがほぼ定員という。問い合わせは市環境保全課(電話029-826-1111)まで。

来年50周年の「創造市場」 6月に土浦と小美玉で公演 地域劇団の駆け込み寺の役割も

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公演を控え「不思議の国のアリス」の稽古をする団員たち=土浦市西真鍋町、「創造市場」

【田中めぐみ】土浦を拠点に活動し、来年で結成から50周年を迎える社会人劇団「創造市場」(同市西真鍋町、代表・稜地一週〈五頭良二〉さん)が6月に土浦市と小美玉市で「不思議の国のアリス」を公演する。

「創造市場」は元は1970年に結成されたジャズバンドで、音楽だけにとどまらず、芝居、文学、絵画など、総合的な芸術を追求する若者たちの集まりだった。当初は社会風刺的な内容の芝居を公演していたが徐々に活動が少なくなり休止。その後、74年に再結成し、以降休むことなく活動を続けている。

現在は土浦市内やつくば、牛久、龍ケ崎、鉾田市などから、高校生から60代までおよそ25人の団員が集まり、週2回、2時間程度の稽古と年4回の公演、ワークショップを行っている。地域の劇団から相談があれば、持っている音響、照明設備、衣装なども無償で貸し出しており、現在は地域のアーティストの駆け込み寺のような役割も担っている。

今年4月に開催された「第11回沖縄国際映画祭」で上映された「エキストロ」(監督村橋直樹、脚本後藤ひろひと、NHKエンタープライズ)で、山本耕史さん、斉藤由貴さんらと共演し、主演を務めた萩野谷幸三さん(63)は同劇団メンバーだ。

チャレンジし続け、おもしろさ追求

代表の稜地一週さん

「不思議の国のアリス」の脚本・演出を手掛けた稜地(五頭)さんは「はちゃめちゃなストーリーのアリスは、伝統や歴史、しきたりを重んじる英国社会を風刺した作品とも言われている。まるでおもちゃ箱やキャンディー箱をひっくり返したようなゆかいなアリスの世界観を楽しんで、見る人それぞれに何かを感じてもらえれば」と語った。「エキストロ」の萩野谷さんは今回出演しないが、キャストの演技指導を行っている。

アリスのキャストの1人でつくば市在住の入江諭さん(39)は、人見知りで話すのが苦手な自分を変えたいと演劇を始めたという。「創造市場」に入団する前は別の演劇系サークルで1年弱活動していたが、本格的に舞台に立ってみたいと一昨年からメンバーに加わった。「人と関わって成長したいと覚悟を決めて入団した。活動はとにかく楽しい。仕事が終わってここに来て、いつもメンバーと笑っている。楽しむところは楽しみながらも、めりはりをつけて稽古している」と話す。

同じくキャストの森裕嗣さん(36)は「創造市場は歴史の重みがありつつも、常に新しいことにチャレンジし続け、おもしろさを追求している。だからこそ年齢関係なく人が集まってくるのだと思う。アリスの世界は狂った、よく分からない世界だが、セリフの端々に現代の我々にもはっとするような気付きがある。アリスが名作として残っているゆえんなのだろう」と語った。

舞台人口を増やしたい

現在、団員を募集している。稜地(五頭)さんは「芝居、ダンス、バンド、民謡、コンテンポラリーアートなど、ジャンルを問わず、とにかく舞台人口を増やしたい。年齢も経験も問わない。やってみたいと思う人はぜひ来てほしい」と語る。

左から「不思議の国のアリス」キャストの森裕嗣さん、沼田裕行さん、入江諭さん

◆「不思議の国のアリス」の公演日程は
▽土浦市亀城プラザ=8日(土)午後6時、9日(日)午後3時開演
▽小美玉市生涯学習センターコスモス=22日(土)午後5時、23日(日)午後3時開演
いずれも30分前開場
▽チケットは全席自由。前売り一般1600円(当日は1900円)、18歳以下1300円(同1600円)、親子ペア2600円。3歳以下は無料。小美玉公演のみ同市内在住・在勤・在学者は無料
▽チケットプレイガイドは〈土浦公演〉劇団創造市場HP・電話予約、さんあぴお(電話029-862-1311)、亀城プラザ(電話029-824-3121)。〈小美玉公演〉生涯学習センターコスモスか劇団創造市場

◆団員(スタッフ・キャスト)募集の問い合わせは
劇団創造市場 土浦市西真鍋4-43
電話029-821-9405(夜間のみ・日中は留守番電話)
メールアドレス sozoichiba@yahoo.co.jp
ツイッター @sozoichiba

アーティストの末石真弓さん 「おっきなおっきな紙芝居」でホビー大賞最高賞

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ワークショップで子どもたちと作業する末石さん

【池田充雄】つくば市のコミュニティFMラヂオつくばのパーソナリティで、牛久市在住アーティスト、末石真弓さん(アーティスト名・なる)が常陸太田市で行ってきたワークショップ「おっきなおっきな紙芝居」が、手作りの作品や活動を表彰する今年度のホビー大賞で最高賞の文部科学大臣賞を受賞した。紙芝居を通じて子どもたちが地域の自然や伝統文化に触れ、たくさんのつながりを育んだことが評価された。末石さんは今も牛久と常陸太田を行き来しながら活動を続けている。

末石さんの常陸太田市との係わりは2014年から。地域おこし協力隊として現地に住み込み、絵本と子どもを軸に活動した。3年間の任期中に100以上のワークショップを開き、延べ3500人の参加者と触れ合ってきた。2年目からは同市の市民センターパルティホールとの協働で「おっきなおっきな紙芝居」をスタート。この活動は協力隊の任期を終えた後も続いており、今年5月には4作目の「とうめいな魚」が完成した。

今回は「ふるさとの川」をテーマに、市内全域の小学生からキャラクターとお話を募集。約180のアイデアが寄せられ、それらを末石さんがつなぎ合わせて一つの物語にした。製作に携わったのは「ぬりぬりはりはり隊」の約50人。休日に市内のさまざまな地区から集まって、子どもたちによる子どもたちのための紙芝居を作り上げていった。

完成発表は5月26日、パルティホールのフェスティバルの中で行われた。子どもたちも紙芝居の読み係、引き係、おはやし隊に分かれて参加。おはやし隊は金属のねじ、プラスチックのボウル、紙の筒などを鳴らして各場面を盛り上げた。

例えば主人公の魚は透明なので姿は見えないが、テーマ音によってその存在を知らせてくれる。音楽指導と伴奏はつくば市在住マリンバ奏者の高野綾さん。「子どもたちには身近なものからイメージに合う音を探してもらった。発表では全体の流れや音のタイミングを見ながら呼吸を合わせるため、いつもと違う難しさもあったと思うが、いっそう皆で作り上げた作品になったのでは」と話す。

「故郷を大切にする『郷育』(きょういく)を目指してきた。この活動が10年後の子どもたちの心に温かい思い出として残り、迷ったときに背中を押してあげられたらいい」と末石さん。絵本作家になった理由も、自分が好きで続けられることで子どもたちを笑顔にしたいと思ったから。「私自身も『おかえり』と言ってくれる場所があったから、あちこち飛び回れた。次は自分が誰かにとっての『おかえりなさい』の場所になりたい」という。

「おっきなおっきな紙芝居」第4作「とうめいな魚」の完成発表=5月26日、常陸太田市パルティホール

第3弾マーケットゾーンオープン 土浦駅ビル 「モデルつくり全国展開目指す」体験型書店が意欲

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土浦駅ビル「プレイアトレ土浦」2階マーケットゾーンに31日オープンした天狼院書店店内

【鈴木宏子】「日本最大級の体験型サイクリングリゾート」を掲げる土浦駅ビル「プレイアトレ土浦」(藤本沢子店長)2階南側に31日、体験型書店と地元茨城のフードショップを組み合わせたマーケットゾーン「ブック&テーブル」がオープンした。

書店は、読書会やゼミ、演劇、旅行会を開くなど、本の先にある体験を提供する次世代型書店として知られる「天狼院書店」(東京都豊島区)で、県内初出店となる。これまで京都や福岡など人口150万人規模の都市に出店してきたが、人口約14万人規模の地方都市に出店するのは初めて。三浦崇典店主は「『こんな本を置いてほしい』とか『こんなことをしてほしい』などお客様の要望を聞いて、要望に応じた店をつくっていきたい。街の本屋さんがどんどん撤退する時代だが、土浦店で新しいモデルをつくり、全国に100店の土浦型天狼院をつくりたい。寿命100年の時代にそのまちの知を担い続ける本屋でありたい」と意気込みを話した。

長い行列ができた地元茨城のスイーツとベーカリー店が出店したマーケットゾーン

第1弾のサイクリング拠点、第2弾のレストランゾーンに続く第3弾で、2020年にオープン予定のホテルを除き、体験型の新業態店舗すべてが姿を見せた。

フードショップは、土浦の老舗どら焼き専門店「志ち乃」、かすみがうら市発祥の焼き芋専門店「かいつか」、県南を中心に展開する自家製酵母を使用したパン屋「クーロンヌ」と、地元で人気の高いスイーツとベーカリー店が出店した。店内はむき出しの天井とコンクリートが特徴のおしゃれな空間で、自転車を押したまま入店できる。

31日、2階南側のマーケットゾーンには長蛇の列ができ、大勢の来店客でにぎわった。市内のアルバイト女性(68)は「右籾から50分かけて自転車で来た。パン屋を利用したい」などと話した。「地元の人が勤め帰りに買えるお惣菜のお店がほしい」(50代主婦)などの声もあった。

アトレ土浦の藤本店長は「地元茨城で人気のフードショップ3店をそろえた。地元の方はもちろん、観光客やサイクリングの方に茨城のおいしさを知ってもらって、お土産に持って帰ってもらえれば。土浦から全国区の人気店になるようPRしていきたい」と話した。

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スケール大きく 一色邦彦・直彦展「宙(そら)と大地」 6月4日から筑波銀行

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一色邦彦さん㊨と直彦さん=牛久市のアトリエで

【相澤冬樹】筑波銀行(本店・土浦市、藤川雅海頭取)は6月4日から、つくば市竹園の同行つくば本部2階ギャラリーで第22回ギャラリー企画展、一色邦彦・一色直彦展「宙(そら)と大地」を開催する。6月30日まで。

彫刻家の一色邦彦さん(83)は東京生まれ、土浦市育ちで、1968年アトリエを牛久市に移して以来、地元茨城を大切に活動している作家。第9回高村光太郎賞、中原悌二郎賞優秀賞など、現代彫刻展で受賞を重ね、美術振興に大きな足跡を残した。

日本画の一色直彦さん(52)はその長男、1992年東京藝術大学大学院日本画科を修了。日本画の枠にとどまらず、岩絵具や金箔などの画材を用いて、杉やケヤキなどの板材に描く立体的で神秘的な作品を中心に発表している。

銀行の地域振興部が運営する同ギャラリーの存在を評価していた邦彦さんは2016年、常総市の鬼怒川水害を悼み「淼湎(れいめん)」と銘打った個展を開いた。「水」は邦彦さんが長く取り組んだテーマだった。反響の大きさに、同行が次回展を持ちかけたとき「今度はさらに大きなテーマで」と返答していた。

それが今回の「宇宙と大地」になった。広大無辺の宇宙をテーマに取り組む邦彦さんと2人展を開きたい思いがずっとあったためだ。しかし邦彦さんは、親子展という言い方を嫌う。「子供だから一緒にと思ったことはない。同じ芸術家の立場でやりたかった」というと、「大変名誉に思います」と直彦さんも応じた。

今回、邦彦さんは立体造形の4作品を出展、直彦さんは近作を中心に40点を出展。週に一度は牛久市のアトリエに集まって、展示構成を練ってきた。初日の4日には、2人そろってオープニングに立ち会いたいという。

◆つくば本部2階ギャラリー(つくば市竹園1丁目、電話029-859-8111)入場無料、土・日曜日も開廊。

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TX沿線に3校新設急務 児童・生徒数増でつくば市 過大規模校に懸念の声

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市内で児童・生徒数が最も急増しているTXみどりの駅周辺のみどりの学園義務教育学校=つくば市みどりの

【鈴木宏子】つくばエクスプレス(TX)沿線で児童・生徒数が急増している問題で、つくば市は30日、人口が急増している地区の2033年度までの児童・生徒数推計を発表した。すでに用地を取得した万博記念公園駅周辺に香取台小学校(仮称)を新設するほかに、新たに、みどりの駅周辺のみどりの学園義務教育学校と、研究学園駅周辺の学園の森義務教育学校で教室が足りなくなり、学校の分離新設が急務であることを明らかにした。

同日開いた市議会全員協議会で推計値を報告した。みどりの、学園の森の2校はいずれも2018年4月に開校したばかり。今年度中に、みどりのは15教室、学園の森は特別教室を含め27教室を敷地内に増築する。しかし、みどりのは2022年度以降、学園の森は23年度以降から再び教室が足りなくなるという。これから用地を取得し学校を新設するには5年程度かかることから、開校までの間、2校ともさらに教室を増築することが求められる。

一方、みどりのと学園の森の2校が文科省が解消を促している過大規模校=メモ=になることも分かった。市の推計によると分離新設をしない場合、みどりのは開校時の2018年の児童・生徒数が719人だったのに対し、最大で2030年に6.3倍の4576人になる。学園の森は2018年の1151人に対し、最大で2027年に2.9倍の3427人になり、分離した新設校も過大規模校になってしまう懸念がある。

市議からは「あり得ない規模の学校になる。子どもたちへの影響や市財政への影響も示してほしい」「(推計値が)やっと出てきたが、想像以上でびっくりしている。適正なクラス数があり、それを無視して増築で対応してはいけない」など過大規模校への懸念が出た。

市教育局によると、2014年8月に策定した市学校適正配置計画の推計値と比べ、その後に、予想を上回る子育て世帯の流入があったという。さらに学校用地などを配置したTX沿線の土地利用計画では、小中一貫の義務教育学校の建設が想定されておらず、学校配置で土地利用のアンバランスが生じているとしている。

市は現在、同計画の見直しを進めており、今年度中に策定するとしている。人口が急増するTX沿線の学校は早急な対応が求められていることから、策定を待たずTX沿線に限定して推計値を公表し、先行して対応方針を明らかにした。

※メモ
【過大規模校】全校で31学級(1200人程度)以上の学校をいう。文科省は2015年策定の「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置に関する手引き」で、大規模校(25~30学級)や過大規模校には①教員集団として児童生徒一人ひとりの個性や行動を把握し、きめ細かな指導を行うことが困難で問題行動が発生しやすい場合がある②児童生徒一人当たりの校舎面積、運動場面積が著しく狭くなった場合、教育活動の展開に支障が生じる場合がある③特別教室や体育館、プールの利用に当たって、授業の割り当てや調整が難しくなる場合がある―などの課題が生じることを挙げている。特に過大規模校に対しては、速やかに解消を図るよう促している。

児童・生徒数が急増するTX沿線の小中学校・義務教育学校の対応方針
児童・生徒数推計 対応方針
みどりの学園 最大想定で、1~6年生は2028年まで増加し(最大約3240人)以降減少。7~9年生は32年まで増加し(約1630人)以降減少。 2019年度中に敷地内に15教室を増築し、21年度まで対応可能。新たな学校建設を検討するが、22年度以降は教室増築が必要
学園の森 最大想定で、1~6年生は2026年まで増加し(最大約2380人)以降減少。7~9年生は31年まで増加し(約1160人)以降減少 2019年度中に敷地内に特別教室を含め27教室を増築し、22年度まで対応可能。新たな学校建設を検討するが、23年度以降は教室増築が必要
竹園東小 2024年まで増加し(最大約720人)以降減少 既存校舎で対応
竹園西小 2025年まで増加し(最大約990人)以降減少 2019年度中に8教室を増築
竹園東中 2028年まで増加し(最大約880人)以降横ばい 2019年度に11教室を増築
手代木南小 減少から横ばいに転換し2024年がピーク(約340人) 既存校舎で対応
松代小 今後も減少 既存校舎で対応
葛城小 今後も増加し2031年にピーク(約720人) 北側の県有地を購入し校舎を増設
手代木中 2024年まで増加(最大約690人) 2021年度までは既存校舎で対応。22年度までに敷地内に校舎を増築
島名小 2027年まで増加し(最大約880人)以降は減少 2022年度までは既存校舎で対応。香取台小(仮称)を23年4月に開校
真瀬小 今後も緩やかに減少
高山中 2028年まで増加(最大約470人)し、その後、増減しながら横ばい 2021年度までは既存校舎で対応。22年度までに敷地内に校舎を増築

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➡竹園西小・竹園東中の過去記事はこちら

健康体操で認知症を予防 つくば市高齢者ふれあいサロン

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シルバーリハビリ体操指導士の説明に耳を傾けながら体操にトライする参加者たち=つくば市上岩崎の特別養護老人ホームいちょうの木

【橋立多美】つくば市茎崎地区の特別養護老人ホーム「いちょうの木」で30日、「中高年の健康管理について」と題した講話と健康体操の指導が行われた。講師は健康管理士一般指導員でシルバーリハビリ体操指導士の橋本明さん。60~70歳代の地区住民10人が熱心に講話に聴き入り、椅子に腰かけたままできる健康体操に取り組んだ。

主催したのは「通学路の安全を守る会」(稲川誠代表)。同地区の中で牛久沼に突き出た台地にある富士見台や泊崎、あしび野などの住宅地の子どもは自転車で通学する。その子どもたちの安全を守ろうと2010年に発足した。今春、同市がスタートさせた「ふれあいサロン運営補助事業」=メモ=の実践団体として認可され、その第1回の集まり。

認知症の概要を紹介するシルバーリハビリ体操指導士の橋本さん=同

講話は認知症をテーマに進められた。15年の認知症患者520万人が25年には700万人と推定され、その65パーセントをアルツハイマー型が占めるなど、認知症の概要が説明された。また認知症を完治する薬はないが、早期に受診することで薬で進行を遅らせることができると説いた。

橋本さんは「認知症の予防に役立つのが適度な運動で、毎日10分の軽い運動で脳の機能は向上する」と語りかけた。そして室内の椅子に座った姿勢で気軽にできるシルバーリハビリ体操を指導した。腹式呼吸を取り入れた肩こりや失禁、誤嚥(えん)などに効果のある体操で、参加した宝陽台在住の片岡三郎さんは「毎日欠かさず続けていこうと思う」と話した。

近年、歯周病が認知症に関与しているという研究報告について触れ、橋本さんは「メカニズムが解明されたわけではないが新しい治療法への第一歩として期待できる」とし、丁寧なブラッシングが重要と結んだ。

講演会の最後に参加者が「施設に入所すると認知症が進行するのはなぜか」と質問した。橋本さんは「入所したことで、それまでやっていた身の回りのことを施設職員がやってしまう。忙しい職員を責められないが、残っていた機能が失われていくことが原因」と答え、施設の現状を浮き彫りにした。

※メモ

【ふれあいサロン運営補助事業】高齢者の介護予防及び孤立化の防止のための地域憩いの場を確保し、高齢者の福祉の増進に資することが目的。参加者を特定の者に限定せず、定期的に介護予防活動を実施することなどが条件。

原発事故を超えて つくばの原木シイタケ生産者 全国サミット開催へ奔走

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原木シイタケを栽培するホダ木を収めたハウスで飯泉孝司さん=つくば市なかのきのこ園

【相澤冬樹】茨城県の原木シイタケ生産量は2016年に401.6トン、福島第一原発事故後の出荷制限・自粛下にありながら静岡、鹿児島、群馬に次ぐ第4位となったことはあまり知られていない。さらに年間150トンを出荷するという生産者がつくば市にいることはもっと知られていない。「おそらく日本一のはず」と胸を張るのは、なかのきのこ園(つくば市中野、飯泉厚彦社長)の創業者、飯泉孝司さん(71)。事業を子息に任せ、自身は全国の生産者らに参集を呼び掛けて、8月につくばで「原木しいたけサミット」を開催すべく東奔西走の日々を送っている。

県内19市町で続く出荷規制

2011年東日本大震災時の原発事故に伴う放射性物質の影響により、県内産原木シイタケは大打撃を受けた。19市町で出荷制限・自粛の規制がかかり、10市町村で一部解除になったものの、現在も19市町すべてで継続中だ。「規制と風評被害に耐えかねて廃業してしまったものも多く、生産者が再出荷に向け線量検査など申請手続きを行わなければ出荷規制だけが残ることになる」(飯泉さん)。事故当時県内に約500人いた原木シイタケ生産者は150人ほどになった。

被ばく線量の基準値を下回ったつくば市は規制の対象から外れたものの、飯泉さんは原木のホダ木約200万円分を廃棄処分にした。このため丸1年、生産できない時期が続いたが、再開には次のハードルが待ち受けていた。原木の高騰である。

きのこ園では原木にコナラとクヌギを用いているが、つくば周辺の生産者5人で共同購入グループを組んで、調達先を福島・阿武隈山地に確保していた。1本の木からホダ木7本が取れる。グループの年間使用量40万本のためには1ヘクタール約7000本として、60ヘクタール分が必要。植林から伐採まで約20年かかるのを見込み、1200ヘクタールもの広さを手当てしていた。福島県内の、その調達先が消えた。

当座は在庫でしのぎつつ、長野県産に切り替えるなどの措置をとった。7センチ径で長さ70センチの原木1本が事故前は200円だったのが、今は倍の400円以上している。東電の震災復興基金からの助成が入るが、これも19年度までで打ち切りとなる。この先原木調達が生産コストを押し上げるのは必至だ。

「今後の活路見出す」

川上に自前の原木調達先を持たず、川下に安定した流通経路を確保していない産地には苦境が待ち受けている。飯泉さんは、生産、販売に関わる課題と情報を共有し、今後の活路を見出すべく、全国の産地に連携を呼びかけた。

所属団体の東日本原木しいたけ協会(古河市)を社団法人化する過程で知り合った大分県の阿部良秀さん(現日本椎茸農業協同組合連合会長)らと協議を重ね、実行委員会形式で初のサミット開催を打ち出した。行政に協力を求める一方、消費者も巻き込んで、森林や山村の豊かな環境を保全するなかで成長戦略を描く道筋を考えた。「全国規模となると原発問題は扱えないし、第1回とも打ち出せない。しかしSDGs(持続可能な開発目標)に懸ける思いは強くある」という。

「原木しいたけサミット」は8月29、30日、つくば市小野崎のホテルグランド東雲をメーン会場に開催。全国から約150人の参加を見込み、パネルディスカッションや6分科会での討議を予定している。2日目の現地視察はなかのきのこ園が会場、付属のレストランでシイタケ料理の試食会を行う計画でいる。

1年を通じ出荷作業の行われる原木シイタケ=同

菌床栽培全盛の中で

スーパーなどに並ぶシイタケには、生(なま)と干しの2種類あるのはご存知だろうが、生産の仕方でも2通りに分けられる。短く切った樹木に菌を植え付けて林地やハウスに並べて栽培する原木栽培と、粉砕した樹木のオガクズなどから作る菌床を用いてハウス栽培する菌床栽培である。人工的なシイタケ栽培が始まったのは大正年間で、そんなに古いものではないが、昔からの手間ひまかけて作るのが原木栽培で、近代化されたオートメーション促成型が菌床栽培といえる。

シイタケ菌を植え付けた原木をホダ木といい、これを寝かせて生育を待つだけで1年以上を要するのに対し、菌床なら3~4カ月で収穫でき、同じ面積のハウスなら4倍以上生産可能という。だから、今日では両者の生産量に圧倒的な差がついた。林野庁統計によれば、16年の生シイタケ生産量は全国で6万9707トン、うち原木栽培は7322トンに過ぎない。天候や気温の影響を受けやすい原木栽培は生産量が上下しがちだが、概ね全体1割前後にとどまっている。

1975年から一貫して原木シイタケ栽培に取り組んでいる飯泉さんによれば、見た目はもとより、食品成分を調べても両者の間に明確な差は認められないそうだ。それでもなぜ原木栽培を続けるかといえば、「食べれば分かる」という味覚へのこだわりにほかならない。大口出荷先の生協からも、飲食店からも原木シイタケ以外の取引はしないと言われている。

不登校生徒のフリースクール「ライズ学園」岐路に つくばで19年

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通園日の1時間目、4人の通園生が英語、国語、数学、社会担当のスタッフからマンツーマンで指導を受ける=つくば市谷田部の市民ホールやたべ

【橋立多美】不登校の子どもたちが学ぶフリースクール「ライズ学園」(つくば市谷田部)が岐路に立っている。経営が苦しく、3月末で一旦閉園して運営を検討しようとしたが、保護者の声に押されて教室を移転し、週に1日開級している。同園の礎を築いた小野村哲さん(59)は「これで終わりではない」と奮起する。

公立中学の英語教師だった小野村さんは、小さなつまずきから勉強に追い付けなくなり、「どうせ自分なんか…」と思ってしまっている生徒を見ていた。その一方で、落ちこぼれていく子どもに対応できない学校の限界を感じていた。保護者の「勉強が分からない子どもを見てくれる場所がない」に背中を押され、1999年に教職を離れた。

登園者延べ2万2585人

2000年7月にリヴォルヴ学校教育研究所(01年にNPO法人化)を設立し、不登校の児童・生徒が学力を身に付けることのできる「ライズ学園」の運営に乗り出す。定員15人の少人数制。週4日の時間割で、教員免許を持つ教科担当者が指導するほか、スポーツや絵画造形、農作業など体験型の学習を取り入れた。教室は谷田部内町の洋品店の2階(約132平方メートル)を借りた。

同園のモットーは「みんなちがって、みんないい」。不登校の背景にはいじめや学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)などが潜むケースがある。また勉強のつまずきは千差万別。子ども一人ひとりがどこに困難を感じているか理解した上で学習支援を行っている。

「ダメな子」とレッテルを貼られていた子どもが丁寧な指導で分かるようになると、意欲を出して変わっていくという。高校、大学への進学や、社会に適応できないと思われていた子どもが数年して独立していく。開園から今年3月末までの延べ登園者数は2万2585人に上る。

個に応じた学習支援を行うことで得た発達障害などへの対処法や成果を教材としてまとめ、その販売収益と月謝=メモ参照=、助成金、寄付金を活動経費に充ててきた。しかし、次第に負債が膨らみ始める。

4月に学園を巣立つ生徒が数人いても、それに代わる人数の入園生を迎えることはしない。春を待たずに「学校に戻る」ことを選択した子どもが「やっぱりライズに…」となった経験から、卒園生の居場所を確保しておこうという配慮だ。

ライズ学園のスタッフたち。左から事務局長兼国語担当の北村直子さん、英語担当の小野村哲さん、学園長で数学担当の本山裕子さん=つくば市千現のリヴォルヴ学校教育研究所事務局

こうした配慮が月謝収入を不安定にさせ、指導にあたるスタッフが転勤などで退いても経営難から新たなスタッフを採用できなくなった。スタッフ不足は定員に満たない運営につながり、数年前から新たな入園希望に応じられない状況に陥った。

「せめて週に1日でも」

リヴォルヴ学校教育研究所の理事やスタッフが話し合いを重ね、19年度は難局を乗り切り発展するために一時休園という結論に傾いた。ところが保護者から「活動をゼロにしないで欲しい」「せめて週に1日でも」の要望が相次いだ。

教室を近くの公共施設、市民ホールやたべの一室に移し、4月から毎週水曜日に開級している。現在、市内外の中学生2人と高校生4人(通信制2人)が通う。スタッフは数学担当で学園長の本山裕子さん、英語担当の小野村さんら計8人。

書類などを保管する棚がないためスタッフは毎回、教科書や辞書、実験器具、画材を運び込んでの活動だ。教室が変わったことで動揺する通園生はいなかった。授業時間外はスタッフとフレンドリーに言葉を交わし、学校でも家庭でもないライズ学園を子どもたちは心地よく思っていることが伝わってきた。

小野村さんは「今はライズが果たすべき役割を考えて基盤強化を図りたい。ライズ学園はこれで終わりではない」と言い切った。学ぶ意欲を育み、不登校の心に寄り添う挑戦が続く。

※メモ

【フリースクールの月謝】義務教育の教育費は無償だがフリースクールには公的な支援がなく、親が学費を負担する。文科省の調査によれば月会費の平均は3.3万円で親の金銭的な負担は大きい。その一方でフリースクールは月謝だけでは立ち行かず、職員が待遇面で我慢したり寄付金を集めるなど経営に苦しんでいる。

➡NPO法人リヴォルヴ学校教育研究所のホームページはこちら

剣の道通じ地域の青少年を育成 運武館80周年 かすみがうら

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練習後、黙想する門下生たち=かすみがうら市深谷、運武館

【田中めぐみ】剣道場、運武館(かすみがうら市深谷)が今年2月、創立80周年を迎えた。これを記念し6月に「運武館活人剣八十年」が発刊される。県剣道連盟名誉会長の中里誠さん(82)は「孟母三遷というが、子どもの教育は環境が大事。運武館は豊かな自然の中にあり、静かな雰囲気で、ここに来るだけで心が洗われるよう。館には文化的な価値がある」と話す。

稽古に励む門下生たち

運武館は、現在の館長である川島安則さん(80)の祖父、運平さんが1939(昭和14)年、私財を投じ自宅敷地内に設立した。前身は運平さんが1927年に開校した私立の男子校、昭和文農学校で、農村で質実剛健な気風を養いながら社会で活動する教育を施すことを目的に、英語、数学、国語、漢文、農業、珠算などの他、剣道を教えていたという。1941年に国民学校令が施行され、男子私立学校の多くが廃校とされる中、同校も廃校となり剣道場だけが残った。

同年には安則さんの父、武さんが召集令状を受け運武館での稽古は中断。しかし戦後、進駐軍の目を避けながら稽古を始め、1948年にシベリアに抑留されていた武さんが戻ると、再び本格的に道場を開始した。1970年半ばごろになると少年部の入館者が激増し、1977年に門下生や保護者を中心とする後援会が発足。地域一体となって青少年の育成に尽力してきた。

館長の川島安則さん

1997年には現館長である安則さんが3代目館長に就任。運武館と同学校で学んだ地域の青少年は1000人以上になるという。現在は木曜日と土曜日の2時間程度、就学前の子どもから70代までおよそ30人が練習している。

安則さんは幼いころから敷地内の道場で、父武さんや他の先生たちが稽古する様子を見ていて自分も剣道をやってみたいと思い、11歳から剣道を始めたという。中・高・大学と剣道部に所属し、父の死後も伝統を後世に残したいと道場を継いだ。「後援会のみなさんのご支援とご協力で80周年を迎えることができた」と話す。

一昨年からは市教育委員会と連携し小学1年から中学3年までを対象に月2回、土曜日の学習支援教室「寺子屋運武館」を開校している。市出身の大学生が講師となり「地域の子どもは地域で育てる」という基本理念のもと、学校の宿題などを中心に支援を行っている。

運武館剣道場

 

JA水郷つくばのレンコン生産者4人 県版GAPを取得

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県県南農林事務所の佐藤明彦所長(右端)から確認証の交付を受けるJA水郷つくば蓮根部会霞ケ浦支部GAP推進班の斉藤由佳さん(茨城県提供)

【鈴木宏子】JA水郷つくば(本店土浦市、池田正組合長)のレンコン生産者4人が、東京オリンピック・パラリンピックへの食材提供が認められる県版GAP(ギャップ、農業生産工程管理)制度の認証を取得した。同GAPの取得はJAつくば市の筑波北条米などに次いで8件目。レンコンは初めて。

4人は同JA蓮根部会霞ケ浦支部の若手でつくるGAP推進班の全メンバー。28日、土浦市真鍋の県土浦合同庁舎で交付式が催され、班長代理の斉藤由佳さんが、県南農林事務所の佐藤明彦所長から確認証を受け取った。

大手スーパーなど小売業者の間で、食品の安全や農場の環境保全、労働の安全確保を図るGAP制度に関心が高まる中、今後、農産物にはGAPなどの認証が求められると見込んで、昨年から取り組みを進めてきた。

確認証を受け取った斉藤さんは「ほっとしている。GAPは消費者に安全・安心な農産物を提供していくためにも重要」などと話し、佐藤所長は「レンコンは本県にとって重要な食材。来年開催される東京オリンピック・パラリンピックの食材提供に向けて支援していきたい」と語った。

かすみがうら市のレンコン生産者でつくる同霞ケ浦支部は、160戸が計237ヘクタール(2018年)で栽培している。このうち今回、認証を取得した4人は計約20ヘクタールで生産する。

池田組合長は「持続可能な農業を進めていくには、収量や味だけでなく安全・安心な農産物の生産が求められる」とし「今回4人の若い生産者が取得したので、これを機に広げていきたい」と話した。

➡茨城県版GAP制度の関連記事は3月16日付4月17日付

交付式出席者。前列右から2人目が斉藤由佳さん、同3人目が佐藤明彦所長、前列中央が池田正組合長(茨城県提供)

古写真につづる千の言葉 「つくばアーカイブス」再構成し刊行

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集まった写真や図録に詳細な説明を付けて記録集にまとめた木村滋さん

【相澤冬樹】それは「A picture is worth a thousand words(1枚の写真は千の言葉の価値がある)を合い言葉に始まった」と総合科学研究機構(CROSS、土浦市)研究員の木村滋さん(79)。2007年から10年にかけ、同機構のつくばアーカイブス研究会で集めた昭和期の写真を中心にした記録約500点を再構成し、「目で見るつくばの歴史」にまとめて刊行した。

記録集「目で見るつくばの歴史」書籍と添付されるCD

刊行物はA4判232ページの書誌と画像収録のCDで構成され、「つくばアーカイブス大賞記録集」のサブタイトルがついている。農水省蚕糸試験場(現農研機構)で所長を務めるなどした木村さんは、退職後籍を置いた同機構で、副理事長だった高橋嘉右さんから相談を受けた。

「アメリカにA picture is worth a thousand wordsってことわざがあるが、実は社会運動のスローガンになっている。つくばでアーカイブ事業をやれないか」。写真を中心に、地域から失われつつある記録、消えそうな記憶を集めて未来に伝える。折しもつくばエクスプレス(TX)開業(2006年)直後で、つくばの変貌が加速する時代だった。筑波研究学園都市建設の閣議了解(1963年)から50年が迫っていた。

記憶集めに自腹と手弁当

アーカイブス研究会は、同機構に関わる役員や委員などの任意活動としてスタートした。報酬や経費の支給はなく、手弁当で記録収集に当たった。代表に就任した高橋さんは毎年自腹を切ってポスターを作成するなどし、募集の先頭に立ったという。

集められた写真は審査して、2007年から4回にわたりつくばアーカイブス大賞を選定するなどした。日本植物分類学の泰斗、牧野富太郎博士が筑波山に登り、蝶ネクタイ姿で収まっている記念写真(1939年撮影)などが選ばれている。しかし公募では次第に点数が集まらなくなり、つてをたどって地域の名士の家々などを訪ね歩き、採集するスタイルになった。

この取材の中心にいたのが木村さん。土浦市在住のカメラマン、御供文範さんと連れだって、古写真や図版類を複写して回った。「やってみて分かったのは、写真を手に入れても、それだけじゃあ何なのか実は分からない。持ち主や家族の話を聞いてやっと、そういうことかと氷解できることがある」

取材先はつくばにとどまらず、膨大な写真を収めた「浮島村改良養蚕組合写真帳」(1927年)の発見から、現在の稲敷市の保管先に行き当たる。何回か訪ねるうちに、養蚕農家が昭和初期に取り組んだカイコ飼育の技術革新を突き止めて、カイコ研究者だった木村さんは因縁を感じることになる。「千の言葉が必要になるときもある」と感じたという。

失われた郷土愛のありか

1914(大正3)年の筑波鉄道株式会社の設立総会時に撮られた集合写真が出てきたときも、これだけだと写っているのが誰か分からない。持ち主を訪ねて話を聞くうち、当時の株券やら絵はがきやらが出てくる。「筑波鉄道、のちの関東鉄道筑波線は1987年に廃線となる運命をたどる。経営的にはどうにも立ちいかなかったけれど、株券まで大事に残してるってことは金儲けをしようとこの鉄道を作ったんじゃない。郷土愛ってものが感じられるんだ」と木村さん。「それこそ今失われてしまったものだねえ」というのだ。

事業は4年間で収束したが、当時の資料提供者や関係者へ「きちんとお礼も報告もしていない」のが気になった。平成の終わる前に、と再点検に乗り出した。未整理の文献もあり、それらを建設・景観、民俗・祭事などのテーマごとにまとめ直してみると、時代に埋もれたきれぎれの記憶の断片が、体系化できるのに気づいた。

そんな思いをこめて、今回の書籍も自費出版。自分でワープロを打ち、版下を作って印刷所に持ち込んだ。独力で日本図書コードを取得して300部を刷ったが、あくまで関係先への「お礼」の部数。市販するには負担も大きく、今回は非売品扱い。書誌に収めきれなかった写真も含めて制作した添付CDならば、頒布も可能だが、提供方法は検討中ということだ。

◆総合科学研究機構(CROSS)土浦市上高津1601、電話:029-826-6251

エコバッグのような持ち運べる花器を開発 つくばの花屋店主

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「アクア・ブルームバッグ」を紹介する大澤眞理さん

【戸田さつき】つくば市梅園のフラワーギフト通販店、アクア・ブルーム店主の大澤眞理さん(54)が、持ち運べて、飾れて、つるせて、たためる、エコバッグのような花器「アクア・ブルームバッグ(AquaBloomBag)」を開発した。大きさは幅14センチ(上部)、高さ19センチで、ビニール製の袋にバッグのような持ち手が付いている。

花をもらっても自宅で生ける花瓶がない、花瓶を置くところもない、上手に生ける自信もない―。それらの不便を解決することが、生花を身近に置いてもらえる近道ではないかと考えた。

着想のきっかけは、昨年、市内で開催された花業者が集ったイベント「つくばフラワーマーケット」。出店した大澤さんは、石岡市のバラ生産者から直接買い付けた種類豊富なバラを、来場者が自由に選んで買う「ビュッフェスタイル」で提供したいと考えた。花を入れる容器として、軽くて鮮度を保って持ち帰れるバッグを開発した。すると、会場内にはそのバッグを持って買い物を楽しむ人たちの姿があふれ、用意した150個は完売した。

その後、このイベントでバッグを買った人が来店し、「バッグにそのまま花をさしてほしい」とリクエストされた。このまま持って帰れば生け直すこともなくて便利で重宝していると話してくれた。コンサートで来場者に配る花にしたい、壁につるせる特性を生かしてブライダルの壁面装飾に使いたい―。次々と要望が舞い込んだ。

しかし、改善しなければならない点もあった。まずは形。花を入れ過ぎると、重さでひっくり返ってしまう。次にデザイン。今は印刷したシールで対応しているが、デザイン性では劣る。工場で量産したい。資金をかけてまでやる意味があるのだろうか。悩みを友人たちに相談すると「応援するから、とことんやってみなよ」。

弁理士に相談し意匠権の申請をした。海外の生産工場との打ち合わせも四苦八苦。最難関にもぶつかった。量産するとして、どうやって販売していくか分からなかった。自分の店だけでは到底1万枚も販売しきれない。 自分の力でできるのは何だろうかと探していたところ、クラウドファンディングサイトでは資金調達だけではなく、予約販売の側面でメーカーが活用しているのを知った。同サイトで27日から予約販売を開始したばかり。

市場縮小 「生花を飾るきっかけに」

大澤さんが花の魅力を知ったのはカナダ留学中。語学習得のために、カナダ人が通うフラワースクールに入った。もともと雑貨の開発やバイヤーへの転職の一歩として留学した。帰国後、花をもっと深く学びたいと東京・白金の生花販売会社に入社。ホテルの装飾やブライダルの提案など幅広く手がけた。

その後独立し今の場所に店を構えた。「みずみずしい花を楽しんでほしい」という思いで「アクアブルーム」と名付けて15年。

昨今では、アートフラワー、プリザーブドフラワーが台頭し、生花の市場は縮小しているという。花を購入する機会は、母の日や結婚式、卒業式のような行事のみで、日頃、花を飾る習慣は遠のいている。

大澤さんは「このバッグをきっかけに、生花を飾ってほしい。四季を感じ、枯れゆく姿もまた生きているまぶしさとして愛おしく思えるはず」と話す。

さらに「正直、50代になってこういう思い切った挑戦をするとは思わなかった。この勇気もいつも応援してくれる仲間のおかげ。みんなの応援に応えられるように、これからの人生にも花を咲かせられるように精一杯頑張りたい」と続けた。

◆アクア・ブルームバッグは27日(月)から発売が開始されている。 価格は280円(消費税別)。事前予約販売ページはhttps://www.makuake.com/project/aqua_bloom_bag/

◆アクアブルームは、つくば市梅園2丁目8-14、電話029-863-6222。

【プラごみ分別開始】㊦ 「つくば市は浸透させる意志見せて」 試験回収した森の里自治会長

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団地内すべてのごみ集積所に自治会が掲示した、市役所からの要請文とプラごみの回収の仕方を図解したちらし=つくば市森の里

【岡本穂高】プラスチック製容器包装(プラごみ)の分別回収が、つくば市で4月から開始されるのに先駆けて、地区を限定してプラごみの試験的な回収が行われた。同市茎崎地区の森の里では、市の環境衛生課から依頼を受け、今年1月25日から3月31日までの約2カ月間、分別回収が実施された。森の里自治会長を務める倉本茂樹さん(77)が、実際に分別回収を行ってみて感じたことや課題を語ってくれた。

森の里自治会長を務める倉本茂樹さん

―森の里が試験回収の場に選ばれたのはなぜでしょう。

数年前に国立環境研究所(同市小野川)からごみの回収の仕方について調査を依頼されるなど、以前からごみ問題の解決に取り組んでいました。また、市の環境衛生課にはごみ集積所をボックス型にするための援助をしてもらったことがあり、そうした縁もあって今回森の里が選ばれたのだと思います。

―試験回収を行ってみて、住民の反応はどうでしたか。

実際に分別をしていた主婦の方に聞いたところ、やはり分別の基準がわかりづらいという意見が多かったです。また、回収できる状態にするには容器をきれいに洗ったり、ラベルを剥がしたりしなければならないため、手間がかかって面倒だという声も挙がりました。

―試験回収はどの程度成功したと思いますか。

最初のうちは慣れない部分も多く苦労しましたが、分別をすることによって全体の燃やせるごみの量は以前の3分の1以下に減りました。なので、大成功といってよいと思います。私の家でも、分別回収をする前までは40リットルのごみ袋を使っていたのですが、分別をするようになってからは30リットルの袋で足りるようになりました。こんなにリサイクル資源を無駄にしていたのかと驚きました。

―現在つくば市では広報が行き届いていないことが問題になっています。森の里ではどのようにして住民の皆さんに意識付けを行ったのですか。

自治会に入会している世帯に資料を全戸配付して理解と協力を求めました。団地の中には自治会に加入していない方もいらっしゃいます。そうした方々にも分別について知ってもらうために、すべてのごみ集積所にプラごみの回収の仕方と市役所からの要請文書を掲示しました。つくば市全域で戸別訪問をするのは難しいと思いますが、ごみ集積所への掲示は実施できるのではないかなと思います。

―倉本さんから見て、4月から始まった分別回収の問題点などはありますか。

ごみ出しは毎日の習慣づけが一番大切なので、最初から分別の習慣をきちんとつけないとこれから継続していくのは難しくなると思います。問題点はやはり分別回収についての情報があまり知られていないことではないでしょうか。また、公式パンフレットに「迷ったら燃やせるごみで出してほしい」と書いてあり、市が分別回収に消極的過ぎる気がします。市民に分かりやすいしっかりとした基準や、分別回収を浸透させようとする意志を見せてほしいです。

―これから分別回収が地域に根付いていくには、どんな取り組みが有効だと思いますか。

最初は大変だと思いますが、やはり慣れるまでは分別を各家庭で繰り返しやることが一番だと思います。実際に私たちの団地もそうすることでごみの減量に成功したので、市民の意識が一番重要なのかなと感じています。また、新設されたリサイクルセンターが4月から稼働を始めましたが、そうした施設の見学会を開くことで、実際にリサイクルの重要さを伝えていくことも効果的ではないでしょうか。(終わり)

➡プラごみ分別開始㊤はこちら