日曜日, 11月 8, 2026
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アオコに監視の目を 国立環境研究所「環境儀」で特集

【相澤冬樹】国立環境研究所(つくば市小野川)は最新の研究情報誌「環境儀」73号で、「アオコの実像―シアノバクテリアの遺伝子解析からわかること」を取り上げ刊行した。地域環境研究センターの冨岡典子さん(58)、生物・生態系環境研究センターの山口晴代さん(38)両主任研究員の研究成果とインタビューをまとめている。

湖面に緑のペンキを流したようなアオコの発生は1970年代以降、霞ケ浦の水質汚濁の深刻度を測る現象だった。その大量発生は2011年以降、北浦を除く水域では認められていない。同号の研究は霞ケ浦のアオコに限定してはいないが、研究者は土浦入りや高浜入りなど西浦に関しては現状、「収束」もしくは「沈静化」との見方をとっている。

しかし、今季すでに発生が見られた北浦はもとより、西浦についても脅威は潜んでいる。アオコには「毒性」が特定されており、上水の取水源となっている以上、湖にもっと関心を振り向けるべきだし、監視の目を緩めるべきではないと今回の特集に至った。従来、水質面からのアプローチが主だったが、アオコの生物学的な研究に踏み込んだのが同号の特徴だ。

いわゆるアオコという生物種はいない。富栄養化が進んだ湖沼等でみられる現象で、主に「ミクロキスティス」とよばれるらん藻類が引き起こす。らん藻類は光合成を行うようになった原核生物(シアノバクテリア)で、他の真核生物である藻類と区別される。アオコ現象を解明するためには、原因となるシアノバクテリアの多様性・存在量を正確に把握することが必要と、同研究所では1976年から霞ケ浦での研究を続けている。

図1 シアノバクテリアのリボソームRNA遺伝子の1999年4月から2018年12月までの湖水中濃度変化(冨岡典子さん作成)

日照次第で今夏の大発生も

冨岡さんは84年からアオコ研究に携わり、霞ケ浦全域調査でシアノバクテリアの数や体積を計測してきた。顕微鏡の観察ではうまくできないため、99年から測定のためにDNAによる定量法を開発した。今回の誌面には、その成果である「シアノバクテリアのリボソームRNA遺伝子の湖水中濃度変化」(図1)を載せている。グラフのタテ軸に出てくる「coples/ml」という単位が計測値。2001年から10年まで夏のピーク時でも赤いラインを超えることはなかったが、11年にこの値を超えてアオコが大量発生した。

グラフから、11年以降も“危険水位”をしばしば超えているのが分かる。冨岡さんは「諸条件が重なってアオコの発生にいたる。今年も気温が上がらないからアオコが発生しないというわけではなく、むしろ日照不足が原因。晴れた日が2、3日続けば、西浦でもアオコが出てくる要素は十分にある」という。

所内の微生物系統保存施設(NIESコレクション)には約4000の藻類や原生動物の培養株が保存されている。山口さんはこれらからアオコ原因シアノバクテリアの遺伝子解析を行っている。特に警戒するのは、ミクロキスティスが持つ肝臓毒ミクロキスチンだ。塩基配列を解析すると、12系統に分類でき、うち3系統がアオコの毒素の一種であるミクロキスチンを産出することを明らかにした(図2)。

図2:ミクロキスティス12の種内系統群のうち肝臓毒であるミクロキスチンを産生するのは、系統AとX、系統Bの一部(山口晴代さん作成)

山口さんは「現状では、水道水として飲んでも泳いでも魚を食べても問題になる毒性ではない。しかし将来に向けモニタリングは欠かせないし、定量化して数値規制していく方策も必要になるかも知れない」と指摘した。

▼「環境儀」73号は同研究所ホームページ(→http://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/73/02-03.html)からも閲覧できる。

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