水曜日, 11月 12, 2025
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《ことばのおはなし》21 私のおはなし⑩

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【コラム・山口絹記何度かの試行錯誤の末、娘と妻の名、短いメッセージを書くことができた。これが、私が書きたかったことばだ。時計を見ると朝の6時半だった。

まだ「あ」から順に五十音を口にすると、何故か、さ行までしか言えないし、2文字以上の漢字からなる単語は書けなかったりと問題は多い。それでも6時間前に比べたら見違えるような改善だ。

目が覚めて、またことばが話せなくなっていたら…。丸暗記でテストに臨む前夜のような不安にかられながら目を閉じると、カーテンが開いて妻が現れた。

(えぇ…こんな早い時間から面会できるの?)

少しでいいから寝たい。しかし、泣き腫らした顔の妻に、「眠い」とは言えない。もう話せるけれど、言えない。すっかり忘れていたが、昨夜の私は脳腫瘍の疑いと診断され、妻はその説明を受けてから帰ったに違いない。

メッセージを書いたメモを見せつつ、ぽつりぽつりと話をした。乳幼児は入室禁止らしく、娘とは会えない、ついでに朝食も出ない、とのこと。残念である。

9時になると、脳外科の医師がぞろぞろとカーテンを開けて入ってきた。「あれ、話せてるじゃない」などと話し声が聞こえる。今日の夕方、MRI(磁気共鳴画像)で精密検査をするらしい。11時になると看護師が身体をきれいにして、寝間着に着替えさせてくれた。やっと、入院患者らしい見た目になった。

昼食は魚のパン粉焼き。なかなか美味しい。まだうまく動かない右手でどうにか食べ終わり、やっと1人になって気絶するように眠りにつこうとしたところに、今度は母が現れた。母は私の顔を見て、一瞬泣きそうな顔をしたが、踏みとどまったようだ。

(ね、寝たい…)

精密検査の結果を説明される

その後も、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士がかわるがわる病室を訪れ、休む時間もなかった。

結局1人になる時間はなく、夕方の精密検査の時間になる。ぐったりしながら車椅子に乗せられ、放射線室に連行される。点滴から、造影剤を入れているらしいが、もはやほとんど意識がない。左腕から上がってくる温かい感覚に途端に眠りに落ちる。気がつくと、再び車椅子に乗せられ廊下を進んでいた。爆睡している私を技師や看護士が車椅子に移してくれたのだろうか。申し訳ない。

HCU(高度治療室)から個室の部屋に移動になり、運ばれてきた夕食のカレーを食べながら、母と妻と話す。食事の量が足りない。あと、本が読みたい。

妻には、ありったけの食料と本を病室に持ってきてほしいと頼み、1人になってからは今日の記録をメモに残した。

翌朝。妻に持ってきてもらった、どんぶりいっぱいの手羽先とゆで卵、大量のお菓子が置かれた病室の机を挟んで、6名の医師から精密検査の結果を説明される。なんとなくシュールな絵面である。

昨日のMRIの結果、血管病変、腫瘍、感染症の原因のうち、血管の問題である可能性が高いらしい。再度検査が必要らしいが、「血管病変であれば、うちの病院は強いよ」と言いつつ、医師がニヤリとした。どこか楽しそうである。

ここで治療を受けよう。そう思った。-次回に続く-(言語研究者)

【高校生インタビュー】土浦初の市長㊥ 市政への思いは

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生徒たちからの質問に答える安藤市長=土浦市役所

土浦日本大学中等教育学校報道サークルが高校生の視点から、土浦市初の女性市長、安藤真理子氏にインタビューした。2回目は、女性という視点から土浦市政への思いについて聞いた。[聞き手はいずれも新6年(高校3年)生の坂本恵理さん、石田日菜子さん、笠倉斗真さんの3人、インタビューは3月に行われた]

ー市長になって変わったことはありますか。

一つは本当に忙しくなったなということ、そして、市長ということで今まで会えなかった方々にも会え、ありがたいです。「おー」と思ったのは、東京都の小池百合子知事から連絡があって、女性市長になったということでお会いしたいと言っていただいて、会いにいったこともありました。

活躍できる環境をつくる

ー市長は公約の一つに「子育て支援と女性の活躍の場所づくり」を掲げていれます。今の土浦はまだ女性の活躍の場が少ないと思います。その現状と今後、女性の活躍する場所をどのように見ているのか、子供たちのためにはどう取り組まれるのかを教えてください。

私の時代は、昔ほどではないんですが、生徒会長とかPTA会長とか、長になるのは男性でした。今は全然そんなことはないと思いますが、でも会社でも部長とか、社長とかまだまだ女性が少ない。それは私たちの世代が育ってきた時代の影響もあります。上に立つのは男の人だという風に育ってきた時代の最後の頃、ちょうど私たちの世代は過渡期ですね。一方で女性も活躍し始めました。私が会社をつくったくらいなので。多少は珍しいけれどバッシングはされない、そんな時代です。

でも今も、市役所の部長に女性がいないんですよ。ほんとだったらすぐ女性を部長にしたいと思います。でもやっぱりそのように育ってない年代なので、早く結婚して辞めちゃうとか、子供ができたら辞めちゃうとか、そうではなくて、力があればもうどんどん仕事をしていきましょうよ、部長にも、それこそ市長にも、社長にも、総理大臣にもなりましょうよっていう、そういう環境をつくっていきたいと思っています。

役職に就けばいいということでもないんですが、外に出やすい環境、子供が居るのでなかなか外に出られないとかではなくて、保育園できちっと預かっていただけたり、仕事をしていなくても子供を外出先に連れていけない時、託児所のような所をちゃんと整備しましょうと。そういうことから、女性が働きやすく、そして活躍できる環境を作っていきたいと思っています。

ー今後、子供たちのためにどういったことに取り組まれる予定ですか。

国が幼稚園、保育園の無償化ということで、今、無償で保育園や幼稚園に入れるんですが、まだ0歳、1歳、2歳は対象になっていないんですね。そこを支援して、お金を出すなどの制度をつくっていきたい。それから、小さい子って結構病院にかかるんですよね。それを公費で負担したい。もちろん、県や国の制度もあるんですが、漏れてしまう部分があるんです。例えば高校生が入院する場合、お母さんお父さんの収入によってはお金を払わないといけない方もいるんですが、お子さんがちゃんと大人になるまでは、制度として公に支援しましょうということをやっていきたいと思います。

あるいは、今だんだん民間の幼稚園、保育園が増えてきて、土浦市は全部民間にしようって進んできたんですけれども、私としては公立の役割が必要だなと思っているんですね。生活するのに大変なおうちのお子さんとか、みんなと一緒に生活するのが難しいお子さんもいる。そういうお子さんは、公として支援していかなければならないと思うので、手厚くしていきたいなと思っています。

土浦でよかったと思ってほしい

ー土浦駅前に図書館ができ、駅ビルがリニューアルされました。これから土浦の高校生のために取り組もうとされていることはありますか。

土浦市には高校が10校(※編注)あって、県内では水戸市に次いで2番目。本当にたくさん高校があり、土浦は高校生がいっぱいいる市なんです。(市内すべての高校が集結するイベントの)「学祭TSUCHIURA」では10校が集まって文化祭のようなことをしていただきました。

実は今年、市外の高校からも参加させてって言われました。それはいいことじゃないの、土浦発信で参加したいって思ってもらえるようなイベントにしましょう、ってことで、今後もどんどん広げていこうって話をしています。やはり土浦が高校生に優しい街だということ、高校生の希望や「こういうことがあったらいいな」という話を聞いて、学祭などをきっかけに、市に対していろいろ言ってほしいなって思うんです。

緊張した表情でインタビューに臨む3人。(左から)坂本恵理さん、笠倉斗真さん、石田日菜子さん=市長応接室

若い人たちに土浦の学校でよかったよ、土浦で勉強できてよかったよって思ってほしいんです。私は皆に日本中へ、世界へ羽ばたいてもらいたいと思うんですよ。土浦だけじゃなくて、いろんなところで活躍してもらいたい。でも例えば結婚したり、子供ができたり、あるいは定年退職する時に、ああ、土浦で結婚生活送りたいな、土浦で子育てしたいな、土浦で最期を迎えたいなって思ってほしいんですね。

土浦で遊ぼうとかデートしようとか、そう思ってもらえるような街にしたい。じゃあどうしたらいいか。皆さんが「こんな街にしてください、市長さん」って、どんどん言ってほしいなと思うし、皆、土浦に帰ってきてほしい。だからみんなどんどん言ってください。(㊦につづく)

(※編注)県立の土浦一、土浦二、土浦三、土浦工、土浦湖北、土浦特別支援と私立の土浦日大、土浦日大中等教育、常総学院、つくば国際大の各校。ことし8月1日に開く予定だった「学祭TSUCHIURA2020」は中止が決まった。

《食とエトセトラ》2 自然の恵み:筍と旬の関係

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アク抜き下処理後の筍

【コラム・吉田礼子】今年は例年より地元の筍(タケノコ)が店頭に出回るのが早い。東日本大震災のときは、福島第一原発事故による放射性物質の検出から出荷規制が何年も続き、土浦の場合で自粛がやっと解除になったのは2018年のこと、地元産の筍を再び味わえるようになった。

筍と旬、この2文字に関連性を感じる人は多いと思う。旬の読み方のひとつは「シュン」。広辞苑によると、①朝廷行事のひとつ、②魚介、野菜、果物がよくとれて味の最も良い時、③転じて物事を行うに適した時期―とある。

「ジュン」と読むと、ひと月を10日ずつ3つに分け、上旬・中旬・下旬といった使い方になる。筍は土の中から芽を出し、10日で竹になるということから、この字が使われたとのこと。食の世界では、旬を3つに分け、「走り」「盛り」「名残り」と言う。

「走り」は、出回り始めで味も香りも浅く、数量も少ないので値段も高い。先駆けの希少価値のところが好まれる。「盛り」は、字の如く、食材の風味・味も濃く、しっかりしている。収穫量も多く、値段も安い。

多種多様の料理を堪能したあと、「名残り」が来る。そのころには大きく育ち、繊維も強く、歯が立たない部分もあり、調理にも一工夫が必要に。すりおろして、お肉などと一緒に団子にして、油で揚げていただく。

どの旬でも、真空パックやビン詰めのような保存食にはない、今だけの、そして産地ならではの、自然の恵みを堪能していただきたい。

外出自粛で家にいる間はお料理を

先日、「筍、掘ったから届けるよ。今、実家から帰るところ」と、友人から電話があった。阿見の義母に電話して、糠(ぬか)をいただきに。そろそろ糠のリクエストのころと、精米に行く義父に用意してもらっていたとのこと。そんな、ささやかな心遣いにほっこり。

トンボ返りで戻ると、玄関に段ボールがあり、掘りたての見事な筍が届いていた。早速、下ごしらえに入る。よく訊かれるので、アクとえぐみを抑える下処理の仕方を紹介します。

  1. 大鍋を用意する。外側の土のついている筍は皮を1~2枚むく。先を人の字に切り落とす。下の切り口は洗い、土の付いているところは切り落とす。
  2. 鍋の直径に穂先から入る長さに切り、おさまりよく鍋に並べて、1~2カップの糠とタカの爪2本入れ、たっぷり水を入れ、落とし蓋をして60~90分茹でる。途中、上下を返し、湯も足して、根元に竹串を刺しスーッと入ったら、そのまま一晩(8時間ぐらい)置く。
  3. 翌日、皮をはがし真水に漬ける。姫皮も捨てないでとっておく。毎日、水を取り替える。または冷蔵庫に入れておくと、1週間ぐらいは美味しくいただけます。筍は繊維が強いので、卵、海藻、豆腐などを献立に一緒に入れることを勧めます。

今年は、いつ終息するか先が見えないコロナ禍に耐えている日々であるけれど、季節は確実に前に進んでいます。明けぬ夜はないと信じて乗り切りましょう。外出自粛で家にいる時間、家族でお料理をしてください。子どもたちにとっても、生きていく基礎力が身に付くチャンスです。(料理教室主宰)

赤ちゃんの股関節脱臼心配 ツイッターで無料相談 つくば市の医師

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中川将吾医師(本人提供)と背景は中川将吾こどもの整形外科ツイッターアカウント画面

【伊藤悦子】新型コロナウイルスの感染拡大から、乳幼児健診や育児相談事業が中止や延期になっている。1歳未満の赤ちゃんは乳児一般健康診査受診票を使用し、医療機関で健康診査を受けられるが、今の時期、乳幼児を連れて病院へは行きづらい。特に赤ちゃんの股関節脱臼が見逃されやすい懸念があるため、つくば市在住の医師が10日から、自身のツイッターアカウントで無料相談を開始した。

「乳児股関節パトロール」と名付けた活動を強化しているのは小児整形外科医、中川将吾さん。4月、5月に健診を受ける冬生まれの赤ちゃんは、原因は分かっていないが股関節脱臼になりやすい傾向にあるためだ。中川さんによると、股関節脱臼は乳児健診で見つかるのがだいたい8割程度で、15%は1歳ごろになって、歩きだしてから初めて分かることがほとんどだそうだ。生後半年を過ぎてわかった場合、治療は手術になることが多いという。

「股関節脱臼は1カ月発見が遅れただけで治療法が変わってしまう可能性がある。小児整形外科医としてできることはないか」と考え、Twitterを利用しオンライン上で無料相談に乗ることにしたという。オンラインなのでつくば市や土浦市だけでなく、全国どこに住んでいても相談を受け付ける。

ハッシュタグ「#股関節心配」で

最近は、乳児の股関節脱臼を診ることができる医師も減っているという。特に生後1カ月程度だと、股関節が外れても簡単に戻ったりするため、一般の整形外科や小児科に行っても見つからないこともあるそうだ。

チェックポイントは、足の開き方の左右差、足にできるしわの数の左右差、逆子、女の子、冬生まれ、股関節脱臼の家族歴がある赤ちゃん。いくつかあてはまるなど不安がある場合は、相談してほしいと話す。 相談方法は、赤ちゃんの足のしわの状態や動きを撮影し、ツイッターで「#股関節心配」というハッシュタグをつけて動画をアップするか、DM(ダイレクトメール)を中川さんのアカウントに直接送る。

◆動画撮影のポイントは次の通り。

  • ズボンやロンパースは脱いでオムツにする→脚のシワを見やすくする
  • 動画の撮影はおへそまで→動いている部分が見やすくなる
  • 正面からの撮影→傾いていると判定が難しい
  • 靴下ははかない→脚の向きがわかりやすくなる

(中川将吾さんのツイッターより)

両市の乳幼児健診再開は未定

乳児・母子健診の延期・中止について、土浦市・つくば市の担当者に話を聞いた。

土浦市では、4、5月の4カ月児の健康診査のほか、赤ちゃん身体計測、10カ月児育児相談、つちまる育児相談は当面の間中止だ。また1歳6カ月児健康診査、3歳児健康診査は延期。おやこの歯科検診は当面の間中止で振替の予定はない。市健康増進課母子保健係によると、中止の連絡は個別に案内を送付、「心配なことや不安なことがあれば個別に電話で問い合わせを」と記載した文書を同封したという。

1歳未満の赤ちゃんは「乳児一般健康診査受診票」を使用して医療機関で健診を受診することになっているが、体重の増え方などに不安がある場合など、保健師が面接して相談に乗っている。また1歳の子どもの保護者や妊娠後期の母親には、電話をして様子を聞いているという。健診の再開時期は未定だが、「再開が決まったら市のホームページに掲載するほか、個別に連絡する」そうだ。

つくば市では、生後3カ月から7カ月未満、9カ月から12カ月の赤ちゃんは「乳児一般健康診査受診表」を使用して県内の医療機関で健康診査を無料で受診することになっている。

同市母子健診担当によると、今の時期に個別で病院に健診に行くのが不安な保護者には、平日午前8時半から午後5時15分まで電話相談を受け付けて対応しているという。

また毎月予約制で行っている「すこやか健康相談」も現在は見合わせているが。予約なしで体重を測りに来た場合は、保護者が自分で測定することができる。さらに「母乳が足りているか」「体重の増え方が心配」など不安がある場合、随時対応で、短時間だが相談に乗っているという。赤ちゃん訪問も見合わせているが、ケースによっては同意を得て訪問も行っている。

4、5月の1歳半・3歳健診は延期となった。ともに法律で定められている健診なので、時期を過ぎても1歳半健診は2歳の誕生日前日まで、3歳健診は4歳の誕生日前日まで受けられるようになっている。今回は延期がいつまで続くのか分からないため、誕生日を過ぎても受けられるように体制を整えている。「6月に実施するかどうか、方針はまだ出ていない」として、「もし実施する場合は人数を減らしたり、車で待機してもらったりなど工夫する。しっかり対応しながら行うので、心配しないでほしい」ということだ。

【高校生インタビュー】土浦初の女性市長㊤ どんな経験をしてきたか

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安藤市長をはさみ、左から坂本恵理さん、石田日菜子さん、笠倉斗真さんの3生徒

土浦市に初の女性市長が昨年11月、誕生した。どのような経験をして市長になったのか、どのような思いを持って市政に取り組んでいるのか。土浦日本大学中等教育学校報道サークルの生徒が安藤真理子土浦市長を訪ね、高校生の視点でインタビューした。[聞き手はいずれも新6年(高校3年)生の坂本恵理さん、石田日菜子さん、笠倉斗真さんの3人、インタビューは3月に行われた]

ー安藤市長はどんな高校生でしたか。高校生の頃から政治のことに興味があったのですか。

特に興味があったということではないんですが、5歳の時から40年間、父(故・井坂信之氏)が市議会議員をやっていて、物心ついた時からそういう家族だったので、選挙が身近だったり、いろんな方が「こういうこと困っているんだよ」と家に来たので、そういうときにお茶出しをしたりしていました。そういう環境だったので、子供の時から意識しなくてもそれが普通という感じでいました。

愚痴ってもしょうがない、自分でもの申す

ー政治の仕事に就こうと決めたのはいつですか。

2007年です。13年くらい前ですね。市議会議員になろうと思いました。結婚して子供が生まれて、子育てをする専業主婦だったんです。当時は、子供が小学生くらいになったらパートでお仕事しようかと軽い気持ちで思っていたんですが、小さい子供がいるので就職もなかなかできなかった。

きちっと仕事をしたいと思ったんですが、なかなか就職できないので、これは私みたいな人もたくさんいるだろう、そういう人が働きやすい職場をつくろうと思って、自分で会社をつくったんですね。その時は私と社員2人の計3人。介護の小さい会社をつくりました。

当時は介護保険制度ができたばかりで、新しい制度だから、いろいろな問題がありました。小さい会社ですけど社員が集まると「この制度のここが良くないよね」とかいろいろ愚痴が出ました。そういう時に「ここでしゃべっていてもしょうがない。どうにかしなきゃいけない。これは国の制度なので国にもの申すしかない」と思いました。

私たちのような者がどうしたらいいんだろうと思った時に、市議会議員をやっていた父が高齢のため引退することになったんですね。介護保険とかそういう大きな問題をどうするか、政治の力を使うしかないと思って、ちょうど父が引退するタイミングと合ったんですけれど、私が市議会議員になって、いろいろなことを市、県、国にもの申していきたいと思ったのがきっかけです。

ー今までの政治家生活の中で苦労したこと、うれしかったことは何ですか。政治家のやりがいはどこにありますか。

ぱっと思いつくのはうれしかったことです。皆さんも町を歩いていたり、生活をしていて「もっとこうしたらいいのに」と思うこと、あるじゃないですか。政治をやっていると、いろいろな方から「これをこうしてほしい」「こうしたらどうか」という提案をもらったり、「困っている」という相談があります。私たちはそれを「なんとかしてくださいよ」「こうしましょうよ」とやっていくんですが、全部聞いてもらえるわけではない。でも、ほんとにそれは大事だねって市や県や国が思ってくれて、私が提案したことが実現して、そしてそれを喜んでくれるのは本当にうれしいことです。

苦労したこと、困ったことは、何度足を運んでも聞いてくれなかったり、いろいろな相談を受けて「私もそうだな、本当に変えてもらわなきゃ」って思うことが、何をしても変わらないとか、解決しないというのは、本当に苦労ですね。

でも政治家としてのやりがいは、自分の提案で街が変わっていく、本当に困っている人たちが「このことをお願いしたら変わった」と言ってくれる、そういうことがあるとやりがいを感じます。市民の声が届くことが、やはりよかったなあと思うことですね。

私しかいない、注目される

ー土浦市初の女性市長ということですが、女性と男性で違いがあると考えますか。男性市長ではできないことは具体的に何かありますか。

男性市長じゃなきゃできないこと、女性市長しかできないことっていうのは基本的にはないと思うんです。ただ、女性の目線じゃないと気付かないことがあると思うんです。私は女性で、母でもあり、子供もいて、女性として働いてきたという視点から、男の人が気が付かないことに気づきます。

具体的に言うと、災害の時、男性が長であると指示、命令は男性の目線ですよね。だけど、細かいことですけど、小さい子をお風呂に入れるにはどうしたらいいか、そのための設備が必要になりますよねとか、女性特有のニーズとかあるじゃないですか。男性はおそらく気が付かないですよね。そういうことも細かい視点でみてあげられます。

子育てに関しても、ただ制度をつくればよいのではなく、例えば、市役所1階に、お母さんが子供連れで来た時に使える遊びのスペースというのがあるんですよ。それを見て「これ?」と思っちゃったんですよね。多分男の人は気付かない。女性として母として「もうちょっと明るく、子どもたちが喜ぶようなものをここへ置かなきゃだめじゃない」って思いました。遊びのスペースもこれから変わります。

ー初の女性市長ということで、周りの印象的な反応はありましたか。

茨城県には44人の市町村長がいますけれども、今、女性市長は私しかいない。どういうことしてくれるんだろうっていう期待もあるし、単純に、何やるの?というような、興味もあると思います。多分、男性市長と同じことを女性市長がやったとしても注目はされると思います。結構取材もされます。土浦をPRしたいので、取材してもらえると土浦が広く発信できてありがたく思っています。(㊥に続く)

《ライズ学園日記》5 「育ち」を支えるために

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【コラム・小野村哲】その子を知らずして、良い支援などできるはずがありません。しかし、その子が今「どのあたりにいるのか」「何が上手にできて、何に、なぜ、どの程度の難しさを感じているのか」など、理解することはとても困難です。

アメリカの教育哲学者デューイは「教育は、子どもの能力や興味、習慣を見抜く、心理学的洞察をもって始められなければならない」と言っています。

大学生だった私は、「子どもたちをよく見なさい」というだけのことだと思っていました。しかしそれから20数年後、あらためて読み返してみると、私は「わかったつもり」でいた自分に気がつかされました。

デューイは「能力」「興味」「習慣」を見抜く「心理学的洞察」から始めよと言いますが、「能力:capacities」「興味:interests」「習慣:habits」とは具体的に何を指しているのでしょうか? 辞書にhabitは「くせ、習慣」などとありますが、「習慣を見抜け」とはどういうことなのでしょう?

habitはhaveと同じ語源から生まれた語で、ここでのhabitは「あとから身につけたもの」とでも理解すべきかと思います。具体的には、学ぶことに得意意識をもっているのか、それとも苦手意識を身につけているのかなどがあげられます。

仮に英語学習の場面であるなら、英語に近いフランス語を母語としているのか、それとも言語間距離が遠い日本語を身につけているのか、なども考えられるかと思います。

わからないからこそかたわらに寄り添う

英語教材のキャッチコピーに、「赤ちゃんは文法を勉強しません」というフレーズが使われていましたが、だからといって高校生や成人学習者に「赤ちゃんと同じ方法で英語を勉強しなさい」とするのは明らかに矛盾しています。これなどは、学習者のhabitを軽視した典型的な例として挙げられるでしょう。

英語ネイティブはこうしているから、日本語ネイティブも同じようにすればよいという発想は短絡的に過ぎます。けれど多くの人は、capacitiesもinterests、habitsも辞書を調べて、日本語に訳したら、それで「わかったつもり」になっています。これはまさに、現在の英語教育の問題点でもあります。

だからといって、「わからない」では何も始められない、ということもあるかと思います。しかし、「わかったつもり」になってしまっているのと、「わからないから、少しでもよく理解できるように、よりよく見よう」とするのとでは、結果に大きな差が生じるであろうことは言うまでもありません。

わかったつもりでいれば、見る姿勢からして損なわれてしまいます。わからないからこそかたわらに寄り添う。その心と姿勢こそが信頼を深め、子どもたちと支援者双方にとって意義ある学びを可能にするのではないでしょうか。(つくば市教育委員)

障害者の居場所を守るために 就労支援事業所の今

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ひまわり学園=つくば市上横場

【川端舞】新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、外出自粛を呼び掛けた「ステイホーム週間」が始まった。日中の障害者の居場所はどうなっているのか。県内3カ所の「ひまわり学園」で就労支援を行っている特定非営利法人「艫(とも)づな会」の理事長、大久保安雄さんに話を聞いた。

日常を守っていく

ひまわり学園つくば(つくば市上横場)は、一般企業等への就労を希望する障害者に、就労に必要な知識及び能力向上のための訓練をする就労移行支援と、一般企業等での就労が困難な障害者に、働く場を提供する就労継続支援B型を提供している。普段は40人の利用者が平日午前9時から午後4時まで通い、金属部品のバリ取りやサッシ部品の組立、調理作業などを行っている。

就労支援事業所が閉じてしまうと、障害者はほとんど自宅にいることになり、介助する家族の負担が増えるとともに、本人の身体機能の低下も危惧される。こうした不安も考慮し、学園では、利用者や家族に対する情報提供や、利用者・職員の健康管理を徹底しながら、通常通り開所している。それでも新型コロナ感染拡大の影響で、普段企業などから受注している仕事は減っているそうだ。

通所できない利用者への継続支援

特につくば市内の感染者が増え始めた3月からは、事業所がどんなに感染対策を行っても、持病のある利用者などは通所に大きな不安を持ち始めた。現在、6~7人の利用者は通所を中止し、日中も自宅にいるようになった。そうした利用者に対し、学園では毎日電話などで連絡を取り、困りごとの相談や、本人の機能低下を防止するために自宅でできる支援プログラムの提供を、家族とも連携しながら行っている。

身体障害のある男性利用者(25)は普段、つくば市のアパートで一人暮らしをしながら、平日ひまわり学園に通っているが、現在は感染予防のため下妻市の実家で生活している。いつもは介助者に自宅に来てもらってサポートを受けているが、実家にいる今は両親に介助をしてもらっている。

つくばのアパートでは車いすで自由に動け、トイレにも一人で行けるが、実家はバリアフリーではなく、ベッドで過ごすことが多くなった。ストレッチなどを可能な範囲でしているが、運動不足が心配だと男性本人は語る。学園にも通えなくなったが、学園職員が週に一度実家を訪問し、リース作りや折り紙など実家でできる課題を持ってきて、作業を一緒にやったりしている。

障害者の日常生活が変化すると、それだけで身体機能が低下する可能性もある。普段の生活が早く戻ってくることを就労支援事業所の利用者も職員も願っている。

《続・平熱日記》60 愛とお金とどっちが大事?

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【コラム・斉藤裕之】近ごろの若者に「愛とお金どっちが大事?」と聞くと、間髪入れずに「お金」と答える。ほぼ百パー。特に、女子に「お金にきまってるじゃん!」と突き放されると、少々へこむ。そこで同様の質問を、先日のグループ展の連絡用に作ったラインで同級生にしてみた。

「そりゃ愛、お金は無くなるけど愛は無くならない」「愛かな。お金のことを考えるよりも、愛のことを考える方がいい」「日常的にお金のことを考えることは多いけど、愛が励み。愛が大事」―。というわけで、回答は全員が「愛」が大事という、ややほっとする結果に。

この質問は、ズバリ、結婚の条件と言い換えてもいい。つまり「愛と金どっちとんねん?」と、なぜか関西弁になってしまう感じ。そりゃ、どっちもあるのにこしたことはないが、私たちの世代は「まず愛やろ。金は何とかなんねん」派が多数であるのに対して、今どきの若者は「愛はどうにかなるわ。まず金がないと話にならんちゅーねん」とくるわけだ。少子化の一因がここにあるのかもしれない。

今は、小学校でも起業についての話をしたり、経済の仕組みについて疑似授業をしたりしているのをテレビで見かける。小さいころから、しっかりとした経済観念や儲け方を学んでいるらしい。

これに対して、例えば私の場合、お金のことでガタガタ言うのは下品である、という教育をされた。例えば、人生ゲームのようなお金儲けシミュレーションゲームさえも父は嫌った。おかげで?金に縁のない人生を歩んでいる。

余談だが、弟も然り。では、愛が大事と答えた同級生はどうかといえば、多かれ少なかれお金に苦労してきたと察するが、おおむね愛のある日々を送っている。多分有名になって、これからリッチになるということにしておこう。そもそも、愛とお金が対立した二項ではないとは思うが。

私の8割減生活は普段と同じ

「先生、時給いくら?」と、平気で聞いてくる子供に初めは唖然としたが、実は家庭の中で、お金や仕事、年収などがリアルな話題として語られている、そういう時代。「マックの店員ぐらいかな」と答えることにしているが。

「先生、結婚しているの?」。これも、子供たちにとっては当たり前の質問。こちらは素直に、「はい」と答える。それが一番インパクトのある、子供たちにとって予想外の答えだから。

さて、愛もお金も大事だが、今は命あっての物種。「人との接触を8割減らしてください! 私の給料も8割減にしますから!」とか言われれば、政治家の愛を感じられるのに。しかし笑えるのは、私の8割減生活は普段とほとんど変わらないこと。直売所とホームセンターしか行かないもんな。

ここで一句。「コロナ禍の新聞の薄さほどの暮らしかな」。もうちょいで、なんとかなるよ。(画家)

苦境に打つ手も限られ 大型連休前の土浦・ラクスマリーナ

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自宅で天然温泉が楽しめる「温泉スタンド」=土浦市川口のラクスマリーナ

【崎山勝功】新型コロナウイルスの影響が厳しさを増している観光業界。遊覧船やキャンプ場などを運営するラクスマリーナ(土浦市川口)も例外ではなく、感染防止のため各施設を運休・閉鎖して、本来ならば書き入れ時の大型連休を迎えようとしている。苦境を乗りこえるための手立てを模索しているが、打てる手は限られている。

癒しにテイクアウトの温泉水

同社は霞ケ浦を遊覧する遊覧船「ホワイトアイリス号」を運航しているが、ウイルス感染が拡大して以降「利用者はほとんどいない」(坪田哲也船長)と厳しい状況だ。所有する船舶計13隻の維持費は、保険料も含めて年間数百万円以上に上るという。

遊覧船では「三密(密集、密閉、密接)」を避けるために、客席の間隔を空けたり、随時アルコール消毒を実施したりなどの対策を講じてきた。

しかし連休期間中のイベントは相次いて中止が決まり、観光需要は激減。毎年5月下旬に開かれる「潮来あやめ祭り」も中止となり、土浦ー潮来間を結ぶ「あやめ祭りクルーズ」も欠航した。「お客は欲しいけど感染拡大が怖い」(担当者)と、苦悩を垣間見せる。

事業として唯一動いているのは、自宅で温泉を楽しめるよう温泉水を汲みだして持ち帰れる「温泉スタンド」だけ。地下700メートルの岩盤層から湧き出る天然温泉がテイクアウトできる。「ステイホーム週間」の巣ごもり生活からの利用拡大に期待をかけている。

弱アルカリ、ナトリウム・カルシウ塩化物泉で、神経痛や筋肉痛、慢性婦人病、疲労回復などに効能あるそうだ。利用は20リットル100円(税込み)、持ち帰り容器の用意が必要だが、同社事務所でも温泉専用ポリ容器(税込み900円)を販売している。

「コロナに勝つ!」缶バッジ

そんな同社では、「コロナに勝つ!頑張ろう!」と呼び掛ける缶バッジを製作し、約200個を土浦市観光課などを通じ関係各団体に配布した。マスコットキャラクター「まりりんちゃん」が両手を上げてコロナ対策を呼び掛ける直径約6センチの缶バッジ。

市販はしておらず、同社では病院職員など現場で働くエッセンシャルワーカーを念頭に「缶バッジを通じて感謝の気持ちを表すきっかけになれば」としている。

問い合わせ先はラクスマリーナ(電話029-822-2437)

小中学校も5月31日まで休校延長 つくば、土浦

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つくば市内の義務教育学校

【鈴木宏子】新型コロナウイルスの感染拡大による学校の臨時休校について、つくば、土浦両市は27日までに、小中学校の休校期間を5月31日まで延長することを決めた。

県が24日、県立高校の休校期間を5月31日まで延長することを決め、小中学校についても同様の対応をとるよう各市町村に要請したことを受けて延長した(25日付)。4月初め時点では小中学校の休校期間は5月6日までだった。

つくば市教委は「この期間の子供たちへの生活支援については、メールや電話、ポスティング等を行い、家庭とやりとりできるようにし、子供たちへの支援に向け可能な限りの対応に努める」としている。

休校期間中、保護者が仕事を休めない子供については、引き続き放課後児童クラブなどで受け入れる。

小学校が休校になり、子供の世話をするため保護者に有給休暇を取得させた企業に対しては、正規、非正規を問わず、国が小学校休業対応助成金で賃金相当額(上限8330円)を助成する。個人事業主の保護者に対しては、国が小学校休業対応支援金で1日4100円を支援する。

公共施設も休館延長

学校の休校期間の延長に併せて、土浦市は市立図書館や博物館、地区公民館などの休館期間を6月1日まで延長することを決めた。

《邑から日本を見る》62 東海第2再稼働の是非は住民投票で

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飯野農夫也氏の版画「憩い」

【コラム・先﨑千尋】「いばらき原発県民投票の会」は22日、日本原子力発電東海第2原発の再稼働の是非を問う県民投票条例制定を求める直接請求署名簿を、県内全44市町村の選挙管理委員会に提出した。署名簿は90,899筆で、法定必要数の1.87倍にあたる。地域別では、県南地域が法定必要数の2倍近く、東海第2原発の再稼働にあたり事前同意が必要な周辺6市村では、東海村が1.95倍、水戸市が1.69倍、那珂市が1.47倍など。

各選管は署名が有効かどうかを審査し、その後署名簿は会に返付される。会では5月25日に大井川知事に条例案と署名を提出する予定だ。条例案は6月の県議会に上程される見通しだが、可決されるかどうかはわからない。

わが国では、国、都道府県、市町村いずれも間接民主制なので、国民、住民が事案に対して直接意思を表明できない。しかし、東京電力福島第1原発の事故でわかるように、原発の存廃は私たちのくらしに大きな影響を及ぼす。そのために、東海第2の再稼働には直接住民の意思を反映させよう、と投票の会が準備を進めてきた。

東海第2の再稼働に関しては、これまで報道機関の世論調査では県民のおおむね3分の2が反対という結果が出ている。また、茨城大学人文社会科学部の渋谷敦史教授らの調査では、住民・県民が直接意思表示する方法を望む人が7割を超えている。もし東海第2が再稼働され、事故が起きたときは、周辺住民の生命、財産は危険にさらされる。これだけは首長や議会に任せられない、自分たちの意思で決めよう、ということだ。

沖縄「辺野古」同様、軟弱地盤

東海第2原発については、昨年秋から今年にかけて動きが活発化してきている。日本原電は一昨年秋に、20年延長などの原子力規制委員会許認可を受け、再稼働の意向を表明し、なし崩しに安全対策工事を進めている。工事の内容は、電源の多重化や防潮堤の建設などだが、東海村など6市村の同意を得ていない。

日本原電と6市村で構成される原子力所在地域首長懇談会(首長懇)の会合が2月18日に開かれた。その席で原電側は、規制委に提出する書類に「原子力施設の使用開始予定時期は2022年12月」と記載し、安全対策工事の終了時期と再稼働時期を同時にしていた。これに首長側は反発。同月26日に、再稼働前に実施される使用前検査は再稼働に直結しないと確約せよと原電に申し入れた。

また、東海第2の再稼働に反対する市民グループの「とめよう!東海第2原発首都圏連絡会」は今月1日に、同意なき工事の中止を求める署名簿を原電に提出した。首長懇の申し入れを受け、日本原電は今月14日に「使用前の検査は再稼働に直結しない」という回答書を6市村に出した。

東海第2の所在地は沖縄辺野古と同様、軟弱地盤であり、津波に耐えられる防潮堤を造るのは無理、と専門家はみている。新型コロナウイルスの影響もあり、原電の思惑通り工事が進められるかはわからない。市町村が策定する避難計画策定も課題が多すぎて、進んでいない。東海第2が再稼働するかどうか、双方にとってこれからが真剣勝負になる。(元瓜連町長)

旅を通し、自分を成長させたい人を後押ししたい 「旅キャリ」武田直樹代表

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武田直樹さん

【池田充雄】交通手段や情報技術の発達によって世界はますます狭くなりつつある。地域活動でさえ、 グローバル世界との関係の中でとらえ直す必要があるとSDGs(持続可能な開発目標)の理念は示す。だれもが一度は外へ出て、大きな枠組みの中で自らの使命を考えるべきだ-と筑波学院大をこの春退職した武田直樹さん(50)は、自主運営組織「旅キャリ」を立ち上げアピールする。

自分の人生をデザインする力を

「旅キャリ」は、さまざまな人に体験学習、フィールドワーク、社会貢献活動、国内外スタディツアーといった「旅」の機会を提供する活動。観光地を訪ねるだけの旅行とは違い、年齢や社会的立場を問わず、旅を通して学びや成長を得ることに力点を置く。

「旅の中でキャリアを積み、社会力を磨く文化を創りたい」と武田さんは訴える。「社会力」はさまざまな人が協力し、より良い社会を作り上げる力のこと。筑波学院大学初代学長の門脇厚司さんが著書『子どもの社会力』(岩波新書)などで提唱した造語だ。

フォレストアドベンチャーつくばでの学生研修会(2015年、つくば市)=武田さん提供

「心の殻を破り、領域外へ出て挑戦するということ。旅先で人々の中に飛び込み、新しいものごとに触れ、そこで自分に何ができるかや何をするべきかなどを見つめ直し、自分の力で人生を作り上げられるようになる。それが今後、ますます重要なテーマになると思う」

さまざまな人の「旅」を応援

武田さん自身も、多くの仕事を通して社会と協働する経験を積み、専門性を磨いてきた。日本国際ボランティアセンターのタイ事務所スタッフや日本テレビの「24時間テレビ」のカンボジア事務所代表なども務めた。

2006年からは筑波学院大学で、社会力コーディネーターとしてオフ・キャンパス・プログラムを推進。これは学生が地域へ出て社会貢献活動を行い、社会力を育む取り組みで、20年までの14年間で約4800人の学生と約260の団体をコーディネートした。その間にも国際協力や災害支援で毎年のように海外を回り、訪れた国は79カ国に及んだ。

2015年9月のシリア難民視察で(イラク・クルド自治区、ナナカリ小児白血病専門病院)=同

退職後のリスタートに当たっても、身をもって「旅キャリ」のコンセプト実現を目指すことにした。まずは自らが世界中を旅するプロジェクトに、クラウドファンディングでの支援を呼び掛けている。

「今回の主な目的は、世界中に新たな人脈を築くこと。旅先でさまざまな生き方をしている人になるべく多く出会い、そこから次の時代に通用するアイデアを得て、限定コミュニティーSNS『旅キャリ』を通して情報発信する。このSNSでは相談や意見交換なども行い、皆さんと一緒に新たな価値を作り上げる場にしたい」

新しい生き方や価値観に期待

旅の開始は今年夏以降の予定だが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響から、先行きはまだ不透明だ。

「コロナの重圧はあまりにも大きいが、これを契機に世界中で新しい生き方や価値観が生み出されると思う。そこに注目していく。行き詰まると人はどうしても萎縮しがちだが、そんなときこそ『旅キャリ』的な生き方が力になると証明したい。そして世界中のみんなが夢と希望を持ち、未来へ向かって懸命に走るような生き方を応援したい」

→「旅キャリ」のクラウドファンディングページはこちら

《食う寝る宇宙》60 太陽から噴き出るガスの塊が地球へ

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【コラム・玉置晋】運用中の人工衛星に関わる仕事柄、僕は毎日、太陽を監視しています。とはいえ、望遠鏡をのぞいているわけではありません。人工衛星や地上の観測機器から得られた画像やグラフを見ながら、「今日の宇宙環境は静穏だから安心だね」とか、「太陽での爆発の影響が地球周辺にも及びそうだね」とか判断し、必要であれば人工衛星の運用者に注意喚起する取り組みを行っています。

こういった取り組みが仕事として確立しているのかといえば、まだ途上です。別な仕事の付帯的な位置付けで活動しつつ、徐々に確立していこうとしています。「求ム、宇宙天気アナリスト!」という求人情報が出る世界を目指しているところです。

地球のコアにはドロドロに溶けた金属が対流しており、電磁石の原理で地磁気を発生していますが、太陽から飛んできたガスの塊が太陽の磁場を運んできて、この地磁気を打ち消す現象が磁気嵐です。その結果、人工衛星が不具合を起こしたり、地上で停電が起きたりといった、影響が出ることもあります。

4月20日、太陽から噴き出すガスの塊が地球をかすめていたことを、皆さんは気付いていますか? この影響で、弱い「磁気嵐」が発生しました。

地球をかすめ、弱い磁気嵐が発生

弱いレベルの磁気嵐でしたので、幸いわれわれの生活への影響は皆無でしたが、もし、これが強力な磁気嵐だったらと思うと、恐ろしいものです。さて、この磁気嵐の元となった現象は、4月15日、太陽から淡いガスの塊が飛び出していたことにあります。地球を直撃するコースではなかったので、塊の端っこが地球にかすったようです。

僕は4月17日の時点で、このガスの塊の存在を認識していましたが、これが地球に影響を及ぼすかの判断は難しく、僕の予想では「磁気嵐は起きない」でした。まだまだ修行が足りませんなあ。

現在、情報通信研究機構宇宙天気予報センターから、24時間365日体制で、「宇宙天気予報」が出されています。みなさんも、是非、ご覧になってください。将来、「求ム、宇宙天気アナリスト!」が出たら、一緒に仕事をしましょう。(宇宙天気防災研究者)

臨時休校を5月31日まで延長 県立高校

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茨城県庁

【鈴木宏子】新型コロナウイルスの感染拡大による学校の臨時休校について、大井川和彦知事は24日、県立高校と特別支援学校の休校期間を5月31日まで延長すると発表した。小中学校についても同様の対応をとるよう各市町村に要請している。

4月初旬時点では5月6日までを休校期間としていたが、現在の感染状況から、ゴールデンウイーク明けに解除するのは現実的ではないと判断した。

休校中の生徒のケアについては、1~2週間に1回程度、学校が心身の健康状態を定期的に確認するほか、スクールカウンセラーや養護教諭による電話やウェブ会議システムを活用したカウンセリングなどを実施する。

学びの保障については、分散登校や家庭訪問時に、課題の提示と回収、確認とテストのほか個別の質問に対応する。さらにオンライン学習を促進し、授業動画を配信したり、ウェブ会議システムによる授業を推進するとしている。

県教育委員会は、県内の小中高校の先生たちが制作した授業の動画「いばらきオンラインスタディ」をYouTubeで配信している。

小学生向けは、https://sites.google.com/view/ibastudye/

中学生向けは、https://sites.google.com/view/ibarakionlinestudy-j/

高校生向けは、https://www.edu.pref.ibaraki.jp/board/gakkou/koukou/gakuryoku/dougasakusei/index.html

《茨城の創生を考える》15 新型コロナを機に企業も変わるべき

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ダイヤモンド筑波

【コラム・中尾隆友】新型コロナウィルスの感染拡大について、様々なメディアが心の暗くなるような報道ばかりをしている。しかし私は、茨城の企業が今回の出来事をバネにして、大きなチャンスをものにするように願っている。というのも、「テレワーク」という働き方が本格的に普及する環境になってきているからだ。

テレワークは日本の生産性を大幅に引き上げるポテンシャルを秘めている。日本の会社員にとって毎日の「通勤」は「痛勤」と揶揄(やゆ)されるほど肉体的または時間的な負担が大きいので、その負担をなくせるだけでも効果が大きいはずだからだ。

東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県と呼ばれるエリアの会社員は、毎日、満員電車や満員バスに押し込まれ、往復の長い移動だけで疲弊してしまっているが、茨城でも常磐線やTXで東京や千葉に通勤している会社員がいるし、圧倒的に多い車による通勤も決して楽ではない。

ところが、テレワークが一般的な働き方となった場合、毎日の通勤で体力を消耗することもなく、最初から仕事に集中できるようになる。仕事にあたる集中力を高めることができれば、業務の効率性は想定を超えて上がり、だらだらと長時間労働をする必要もなくなっていく。

これまで毎日の通勤にあてている体力と時間をすべて仕事に振り向けることができれば、どれだけの効果がもたらされるのか、想像してみてほしい。

テレワーク拡充で生産性をアップ

たとえば、午前7時から仕事を始め、午後3~4時に終わらせることが十分に可能となるのだ。これからテレワークの仕組みを拡充していくことで、ホワイトカラーの生産性を2~3割引き上げることは難しくはないというわけだ。

総務省の統計によれば、国内でテレワークを導入した企業の割合は2018年の時点で19%と、アメリカの85%と比べ4分の1以下の水準にすぎないという。新型コロナの感染拡大防止のため、足元では20%台後半にまで割合が増えているというが、残念ながら、茨城も含めて地方の中小企業ではほとんど普及が進んでいない。

企業のなかには、「労務管理が難しい」「営業マンに不向きである」といった意見が多いのだが、「できない理由を列挙する」のではなく、「できるためにはどうしたらいいか」を考える段階に来ているのではないだろうか。

日本人の働く場所が1週間のうち3日は自宅に切り替われば、ホワイトカラーの生産性が上がるばかりか、子育てや趣味にあてる時間が増えて生活に潤いが増えていくだろう。

そのうえで、私がお勧めする働き方は、自宅以外に集中力が高まる場所や空間をいくつも確保しておくということだ。たとえば、私は細かいデータを分析するときは、リラックスできる行きつけの喫茶店を利用したりしている。(経営アドバイザー)

つくば市長選・市議選は10月25日投票

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つくば市役所

【鈴木宏子】つくば市選挙管理委員会は24日、第1回委員会を開き、11月に任期満了となるつくば市長選と市議選について、10月18日告示、25日投開票の日程で同日選挙を実施することを決めたと発表した。

同市長選には、すでに現職の五十嵐立青氏(41)が2期目を目指して立候補を表明している。

前回の市長選は3氏が立候補して激しい選挙戦が展開された。投票率は53.31%だった。今回も激しい選挙戦になるとみられる。

市議選は前回、定数28に対し10人オーバーの38人が立候補した。a

感染拡大の中で生活を続けていく 障害者介助の今

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週に一度、事務所で会議を行っている川島さん(右)と職員

【川端舞】新型コロナウイルスの感染拡大により世の中全体が混乱している今、障害者支援にはどのような影響が出ているのか。介助者のサポートを受けながら一人暮らしをしている障害者の中には、介助者の派遣が止まってしまったら、食事をすることも、医療機関に電話で体調の相談をすることもできない人も多い。

変わってしまった日常

地域で生活している障害者を支援する「つくば自立生活センターほにゃら」(つくば市天久保)代表の川島映利奈さんは、自身も脊髄性筋萎縮症という障害を持っていて、24時間、介助者のサポートを受けながらつくば市内のアパートで生活している。

今までは、センターの活動で週に4日、私用で1~2日外出していたが、感染拡大が身近に迫ってきた4月初めからは、週に1~2回、買い物など本当に必要な数時間の外出しかしていない。食事やトイレ、痰の吸引など、日常生活すべてに介助が必要な川島さんは、自分が新型コロナに感染するよりも介助者にうつしてしまうことの方が怖いと話す。部屋のドアノブを一日一回は消毒したり、介助者に手洗いやマスク着用を徹底してもらったりなど、できる限りの感染予防をしている。

最悪を想定、一人一人の対応を検討

「ほにゃら」は、地域で生活している障害者に介助者派遣もしている。「障害者のことは障害者が一番よく知っている」という理念のもと、介助者の採用面接や研修、シフト作りに川島さんも関わっている。

通常、週に1度、利用者や介助者の近況報告・問題共有をするための会議を開いている。そこでは個別具体的な話もされるため、ビデオ通話では難しい。現在週に1度だけ、十分な感染対策をしながら、川島さんも同センター事務所に行っている。

同センターでは最悪の事態を想定した対応策を考えている。利用者一人が感染した場合、その利用者のところに入っていた介助者は濃厚接触者となり、他の利用者の介助にも入れなくなる。濃厚接触者を少なくするために、どの介助者がどの利用者の介助に入るか固定する方法も考えたが、複数の利用者の介助に入っている介助者も多いため、現実的ではなかった。

現状は、利用者と介助者の両方に、手洗いや検温の徹底、利用者の部屋の換気などをお願いするとともに、事務所内の仕事もなるべくそれぞれの家でできるように工夫している。そして、利用者が感染した場合に備えて、使い捨ての防御服や雨合羽、フェイスガードなどを少しずつ備え、どうやって介助するべきかというシミュレーションを利用者一人一人について考えているそうだ。

つくば自立生活センターほにゃらも加盟している全国自立生活センター協議会(東京都八王子市)でも、新型コロナウイルス対策についてのホームページを立ち上げ、感染した障害者を介助する際の注意点などを掲載している。

障害者にとって、介助派遣事業所が感染予防だけでなく、もし利用者が感染した場合の介助方法も事前に考えてくれていることは、何より心強く、不安な中でできる限りの感染予防をやりながら、自分らしい生活を続けていこうと思える力になるだろう。

《宍塚の里山》61 環境省のモニタリング1000調査

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生物相調査風景

【コラム・及川ひろみ】日本は、亜寒帯から亜熱帯にまたがる大小の島々からなり、屈曲に富んだ海岸線と起伏の多い山岳など、変化に富んだ地形や、各地の気候風土に育まれた多様な動植物相が見られます。

多様な生態系(高山帯・森林草原・里地里山・湖沼・砂浜・磯藻場干潟・サンゴ礁・島嶼)のそれぞれについて、環境省では全国1000カ所程度のモニタリングサイトを設け、基礎的な環境情報の収集を長期にわたって(100年)継続し、日本の自然環境の質的・量的な劣化を早期に把握することを目的に調査を行っています。

調査は記録を残すことだけが目的ではありません。結果を生かすことこそが大切なのではと、われわれは環境省のシンポジウムで質問しました。変化を捉えたなら、素早く保全に生かすことが調査の目的ではないかと主張しました。(環境省のHPには調査の目的に保全に生かすとは書かれていないことが残念です)

モニタリング調査を行う環境省の方針のもと、里地里山の調査内容について、日本自然保護協会が専門家、市民2団体と調査・検討を開始したのは2003年のことです。昆虫・植物・土壌・動物・水質などの調査項目が挙がる中、生態系を捉える上で、昆虫より上位に位置する動物の調査が必要だと提案した結果、アカガエルの卵塊調査、哺乳動物調査の項目が入り、試行錯誤をしながら、調査を開始しました。

より正確に里山の自然環境を把握

環境省は里地里山モニタリング調査を、当初、専門家に委託することを考えていました。しかし、身近な自然環境である里地里山調査は、年数回やって来る専門家による調査より、専門性を持った市民が足しげく通って調査する方が、より正確な里山の自然環境の把握ができるのではないか―と思い、(公財)日本自然保護協会と当会が2006年2月、モニタリングシンポジウムを土浦市民会館で開催しました。

そのとき、環境省「モニタリング1000」担当者を前に、これまで行ってきた市民調査を発表した結果、里地里山モニタリング調査は市民団体が行うことになり、その取りまとめを日本自然保護協会が行うという、現在の体制が確立しました。

市民調査と言っても、モニタリング調査に求められることは、正確さと全国一律の方法で実施することです。専門家が各サイトに出かけ、調査の正確さと手法(マニュアル)の指導を行うことで、この問題を解決しました。

われわれの会は、里地里山コアサイトとして、生物相調査(毎月)、アカガエルの卵塊(1~4月)、野鳥(繁殖期・越冬期)、中型哺乳類(5~10月)、カヤネズミ(6月・11月)、チョウルートセンサス(4~11月)、水質(年4回)―の調査を行っています。(宍塚の自然と歴史の会代表)

校舎増築を検討 教室不足のつくば特別支援学校

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県立つくば特別支援学校=つくば市玉取

【山崎実】特別支援学校の過密問題と教室不足対策が県議会などで議論されている。この問題に直面しているのが、人口急増地域に立地するつくば特別支援学校(つくば市玉取)だ。

同校は主に知的障害の子供たちが通う土浦特別支援学校の過密解消と、肢体不自由の子供たちが通う下妻特別支援学校の通学負担軽減を図るため、2007年4月、県内初の知肢併設型特別支援学校として開校した。

しかしその後、少子化傾向の中にあっても、特別支援学校の児童生徒数は増加。特に増加が著しく、過密状態のつくば特別支援学校は、2017年度に28教室が不足した。

2019年4月に石岡特別支援学校が開校したのに併せ通学区域を変更。急場をしのいできたが、しかしそれでも普通教室の不足が生じている。

5年後の2024年度ピーク

このため現在、一つの普通教室を仕切って二つに分けて使用したり、実習室などの特別教室を普通教室に転用するなどの措置を講じているが、今後、児童生徒数がピークを迎えると推計される5年後の2024年度には、不足教室が約17教室生じる見込みになるという。

このままではいつまでも問題は解決しない。県は特別支援学校の全県的な抜本的対策の検討に乗り出し、今年2月、県立特別支援学校教育環境整備計画を策定した。つくば特別支援学校は、近隣の用地取得を含め、校舎の増築など施設の拡充を検討するとしている。

つくば特別支援学校の教室不足対策は、整備計画の中でも優先度が高い。そこで県は、「児童生徒にとって学習しやすい環境を最優先に、防災の観点やスクールバスの動線、駐車場の確保など施設の配置を踏まえながら、教室不足の解消に向け校舎の増築を進めていく」(教育庁)方針だ。

増築にかかる必要な土地調査や、具体的な設計はこれからだが、「教育現場の意見を積極的に取り入れ、知的障害、肢体不自由の子どもたちが利用しやすい施設となるよう努力していく」(同)と議会答弁で約束した。

《ひょうたんの眼》26 10万円給付は手付金

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馬酔木の新芽

【コラム・高橋恵一】政府は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う対策として、やっと国民1人当たり10万円を支給することにした。経済対策というより、生活不安を和らげる意味合いの方が強いであろう。感染拡大と外出「自粛」によって、国民は極度の多重不安にさらされている。

中国での新型コロナウイルス感染症の発生と、それに続く武漢封鎖が1月中旬。さらに、感染拡大が中国周辺だけでなく、ヨーロッパにまで一気に広がったことには、驚いた。

日本で最初に感染者が出てから3カ月。報道によると、感染拡大を受けて、台湾や韓国は、検査の徹底により、どうやら危機は乗り越えた。欧州では、イギリスが賃金の80%保証、スイスの現金給付などにより、徹底した外出規制と国民の生活不安緩和を手早く措置しているように見える。ドイツは、隣国の患者まで引き受けるほどに万全な医療体制を組んだようだ。早々と。

新型コロナの感染拡大は、地震や津波、大空襲などによる都市の壊滅的な破壊と同じような状態になろうとしているのだ。日本は、世界の動きを横目に見ながら愚図愚図(ぐずぐず)としていて、現時点での具体的な対策は、各戸2枚の布マスク配布着手と、補償もはっきりしないままの外出自粛要請だけなのだ。

先ず、さっさと10万円を支給する。国民に一口水を飲んで貰って、落ち着きを促し、広範な休業補償、生活保障をすることを宣言して、新型コロナの感染拡大を抑え込むべきだ。

連休中に各人の口座に振り込め

10万円は、国が国民の命と生活を守り抜く決意の手付金みたいなものだ。だから、スピードが肝心だ。東日本大震災の津波被害を受けた北茨城市では、被害世帯の当座をしのぐために、市が保証して銀行を巻き込み10万円の緊急無利子融資を実施した。危機管理の好例である。

選挙の投票券のように、予算成立の時には、給付金申請の用紙が届いていてよい。実務は市町村だろうから、市役所は連休前半を稼働してもらって、連休を後ろ倒しにしてもらう。金融機関も、だ。どうせ、連休後も外出自粛は続けざるを得ないだろうが、連休中には、各人の口座に振り込まれていて欲しい。

10万円一律支給で13兆円くらい必要になる。今後の追加対策で、真水で100兆円を超えるかもしれない。財源は、国債発行になり、その面から慎重意見がある。しかし、日本は下手な経済財政運営で、すでに1100兆円、GDPの2年分に相当する国債を抱え込んでいるのだから、2カ月分増えるだけである。

経済政策として、「ベーシックインカム」を確保するという個人消費創出先行の考え方があり、すでに取り組んでいる国もある。供給側を優遇して内部留保と格差が拡大する、現代資本主義の見直しが模索されているこのタイミングに、今回の経済対策は、将来の経済政策のヒントになるかもしれない。(元茨城県生活環境部長)