【伊藤悦子】新型コロナウイルスの感染拡大から、乳幼児健診や育児相談事業が中止や延期になっている。1歳未満の赤ちゃんは乳児一般健康診査受診票を使用し、医療機関で健康診査を受けられるが、今の時期、乳幼児を連れて病院へは行きづらい。特に赤ちゃんの股関節脱臼が見逃されやすい懸念があるため、つくば市在住の医師が10日から、自身のツイッターアカウントで無料相談を開始した。
「乳児股関節パトロール」と名付けた活動を強化しているのは小児整形外科医、中川将吾さん。4月、5月に健診を受ける冬生まれの赤ちゃんは、原因は分かっていないが股関節脱臼になりやすい傾向にあるためだ。中川さんによると、股関節脱臼は乳児健診で見つかるのがだいたい8割程度で、15%は1歳ごろになって、歩きだしてから初めて分かることがほとんどだそうだ。生後半年を過ぎてわかった場合、治療は手術になることが多いという。
「股関節脱臼は1カ月発見が遅れただけで治療法が変わってしまう可能性がある。小児整形外科医としてできることはないか」と考え、Twitterを利用しオンライン上で無料相談に乗ることにしたという。オンラインなのでつくば市や土浦市だけでなく、全国どこに住んでいても相談を受け付ける。
ハッシュタグ「#股関節心配」で
最近は、乳児の股関節脱臼を診ることができる医師も減っているという。特に生後1カ月程度だと、股関節が外れても簡単に戻ったりするため、一般の整形外科や小児科に行っても見つからないこともあるそうだ。
チェックポイントは、足の開き方の左右差、足にできるしわの数の左右差、逆子、女の子、冬生まれ、股関節脱臼の家族歴がある赤ちゃん。いくつかあてはまるなど不安がある場合は、相談してほしいと話す。 相談方法は、赤ちゃんの足のしわの状態や動きを撮影し、ツイッターで「#股関節心配」というハッシュタグをつけて動画をアップするか、DM(ダイレクトメール)を中川さんのアカウントに直接送る。
◆動画撮影のポイントは次の通り。
- ズボンやロンパースは脱いでオムツにする→脚のシワを見やすくする
- 動画の撮影はおへそまで→動いている部分が見やすくなる
- 正面からの撮影→傾いていると判定が難しい
- 靴下ははかない→脚の向きがわかりやすくなる
(中川将吾さんのツイッターより)
両市の乳幼児健診再開は未定
乳児・母子健診の延期・中止について、土浦市・つくば市の担当者に話を聞いた。
土浦市では、4、5月の4カ月児の健康診査のほか、赤ちゃん身体計測、10カ月児育児相談、つちまる育児相談は当面の間中止だ。また1歳6カ月児健康診査、3歳児健康診査は延期。おやこの歯科検診は当面の間中止で振替の予定はない。市健康増進課母子保健係によると、中止の連絡は個別に案内を送付、「心配なことや不安なことがあれば個別に電話で問い合わせを」と記載した文書を同封したという。
1歳未満の赤ちゃんは「乳児一般健康診査受診票」を使用して医療機関で健診を受診することになっているが、体重の増え方などに不安がある場合など、保健師が面接して相談に乗っている。また1歳の子どもの保護者や妊娠後期の母親には、電話をして様子を聞いているという。健診の再開時期は未定だが、「再開が決まったら市のホームページに掲載するほか、個別に連絡する」そうだ。
つくば市では、生後3カ月から7カ月未満、9カ月から12カ月の赤ちゃんは「乳児一般健康診査受診表」を使用して県内の医療機関で健康診査を無料で受診することになっている。
同市母子健診担当によると、今の時期に個別で病院に健診に行くのが不安な保護者には、平日午前8時半から午後5時15分まで電話相談を受け付けて対応しているという。
また毎月予約制で行っている「すこやか健康相談」も現在は見合わせているが。予約なしで体重を測りに来た場合は、保護者が自分で測定することができる。さらに「母乳が足りているか」「体重の増え方が心配」など不安がある場合、随時対応で、短時間だが相談に乗っているという。赤ちゃん訪問も見合わせているが、ケースによっては同意を得て訪問も行っている。
4、5月の1歳半・3歳健診は延期となった。ともに法律で定められている健診なので、時期を過ぎても1歳半健診は2歳の誕生日前日まで、3歳健診は4歳の誕生日前日まで受けられるようになっている。今回は延期がいつまで続くのか分からないため、誕生日を過ぎても受けられるように体制を整えている。「6月に実施するかどうか、方針はまだ出ていない」として、「もし実施する場合は人数を減らしたり、車で待機してもらったりなど工夫する。しっかり対応しながら行うので、心配しないでほしい」ということだ。