日曜日, 7月 6, 2025
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野良犬猫の避妊・去勢手術拠点を開設 NPOが土浦に動物福祉病院

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土浦市沢辺にオープンした保護犬・保護猫専門の「パルTNR動物福祉病院」

【鈴木宏子】野良犬、野良猫の避妊・去勢手術を専門に行う県内初の動物病院を、動物愛護団体、認定NPO法人CAPIN(キャピン、動物愛護を考える茨城県民ネットワーク)=土浦市、鶴田真子美理事長=が土浦市沢辺に開設した。

「パルTNR動物福祉病院」で、昨年末オープンした。現在、神奈川県川崎市にあるTNR日本動物福祉病院(結昭子代表)の支援を受けて、獣医医らが月1~2回、保護した野良猫などの避妊・手術を実施している。4月に本格オープンする。

殺処分を減らすため、同会は犬や猫を保護して避妊・去勢手術をしたり、病気やけがの治療をして、里親を探す活動を県南地域で展開している。2008年から活動をスタートし、12年間で避妊・去勢手術を実施した野良猫は6000匹以上、里親を見つけた保護猫は4000匹以上になるという。

土浦市内に保護犬や保護猫を収容するシェルターを運営し、現在、200匹を超える犬や猫を保護し、約100人のボランティアが毎日交代で、えさやりや散歩などをしている。

けがや病気の犬猫も多く、毎年2500万円を超える医療費がかかる。自前の動物病院があれば、より安く避妊・去勢手術が実施でき、スタッフの負担も軽減されることなどから、動物病院の運営ができないかとずっと考えていたと鶴田代表(56)は話す。

シェルターの近くに、閉院して空き家となっている2階建ての元動物病院があることを知り、昨年、土地と建物を取得した。延べ床面積約200平方メートルで、1階は診察室、2階は難病の猫のシェルターなどとして活用する予定だ。里親探しの会場にもする。本格オープンする4月以降は、一般のペットの診療なども実施する方針だ。

しかし10年近く空き家となっていたため、雨漏りがするなど、今後、屋根の改修が必要で、同会では25日までクラウドファンディングを実施し、支援を呼び掛けている。

18日朝現在で、すでに約640万円の支援が集まり、そのうち500万円で屋根の補修や室内の改装を実施する。さらに集まれば、超音波や血液検査、CTなどの医療機器を購入し、駐車場や外構の整備なども実施したいという。

「殺処分ゼロの砦」

鶴田代表は「国内では殺処分の大半が猫で、7割は子猫。殺処分される子猫が生まれないようにするためには避妊・去勢手術が効果的な手段になる。動物病院は殺処分ゼロの砦(とりで)になる」と話す。

年老いた保護犬をかわいがる鶴田真子美代表=土浦市内のシェルター

同会は鶴田代表が、2008年に筑波大学周辺で野良猫を保護し、避妊・手術をして、保護した場所に戻す活動からスタートした。茨城県の犬猫殺処分数が全国ワースト上位だった当時から、県などに殺処分ゼロを働き掛け、16年には県犬猫殺処分ゼロを目指す条例制定にこぎつけた。現在も毎週、県動物指導センター(笠間市)を訪問し、殺処分を無くすため、保護犬などを引き取る活動を展開している。福島原発事故や常総水害、熊本地震などでは被災地に赴き、取り残された犬猫を救出して飼い主に返す活動を実施してきた。

◆クラウドファンディングはこちら

◆パルTNR動物福祉病院は土浦市沢辺559-4。2~3月は猫の避妊・去勢手術を実施する。実施日は2月28日(日)、3月7日(日)・28日(日)。会員以外でも、保護した野良猫の避妊・去勢手術を実施してほしい人は受け付ける。手術費は有料。完全予約制。猫の送迎が必要。予約・問い合わせはCAPINホームページで受け付ける。4月以降は未定。

《くずかごの唄》80 「牛乳ごはん」の思い出

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【コラム・奥井登美子】1歳のとき、ジフテリアで死に損なった私は、幼い頃よく熱を出した。発熱で何も食べたくないとき、父はよく「牛乳ごはん」を作って食べさせてくれた。炊き立てのご飯に牛乳をかけただけのものと、スープで味付けしてあることもあった。

父は、明治25年、京橋区の新富町生まれである。近くに芥川龍之介の父上が経営している牛乳屋さんがあって、新鮮な牛乳が手に入ったそうで、牛乳とチーズの入った料理が好きで上手だった。明治時代、外国船の入る明石町近辺は、外国の人も多かったという。

「龍之介は僕よりひとつ上の学年で、同じ鉄砲洲小学校にいたこともある。お父さんは牛乳屋さんで、渋沢栄一と一緒に、東京に牧場まで造って、おいしい牛乳を売っていた」

「まさか、東京に、牧場?」「うん、新宿だか、田端か、そのあたりらしい」。東京の新宿に牧場なんて、あるはずがない。私は父の冗談だと思っていた。

20年くらい前、近藤信行さんが山梨県文学館の館長の時に、「芥川龍之介展をするから見に来ないか」と誘われたことがある。そこで私が見たのは、小学3年生の龍之介少年の手書きのポスター「牛乳を飲みましょう」だった。父の言っていたことは本当だったのだ。

「白米に牛乳なんぞかけるやつがあるか」

土浦に嫁に来て、つわりで何も食べたくなかったときに、突然、なぜか、なつかしい牛乳ごはんが食べたくなってしまった。私はさっそく作って、家族の人たちにも、食べて喜んでもらおうとふるまった。

「牛乳ごはんなの、食べてみて…」「白米というのは、特別の尊い食べ物だ。それに牛乳なんぞかけるやつがあるか。僕は、絶対に食わんぞ」。舅(しゅうと)は断固拒否。見るのも不潔でいやだという。

父と舅。年齢はほとんど同じなのに、この違いは何なのだろう? 渋沢栄一に聞いてみたい。料理が、地域特有の物だった「証」と考えればいいのだろうか。(脚本家、薬剤師) 

つくば市長の五十嵐氏 名誉棄損で元市議を提訴 「市民の声新聞」で

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昨年発行された「つくば市民の声新聞」

【鈴木宏子】つくば市長選が行われた昨年、市民団体「つくば市民オンブズマン」(代表・亀山大二郎元市議)が市内に配布したチラシ「つくば市民の声新聞」の記載内容について、名誉や社会的評価が著しく棄損されたなどとして、つくば市長の五十嵐立青氏(42)が、亀山元市議(79)を相手取って、130万円の慰謝料や謝罪文の住民全員への郵送などを求める訴えを、土浦簡易裁判所に起こしていたことが17日までに分かった。

公約は「返還」か「返還交渉」かなど争いに

市民の声新聞は昨年、新聞折り込みで複数回、市内に配布された。五十嵐市長の1期4年間を振り返り、総合運動公園問題やクレオ買い取り問題など市政の課題を、批判的に検証している。

五十嵐氏はこのうち、6月から8月に発行された計3回の同新聞に記載された内容のうち、22カ所について「公人としての信頼を根本的に揺るがし、社会的評価を低下せしめ名誉を棄損するもの」だと指摘している。

訴えによると、総合運動公園問題については「(同用地の元の所有者であるUR都市機構への)『返還』を公約としたことは無いにもかかわらず、(市民の声新聞は)『返還』が公約であったと表現した」、「実際に公約として掲げたのは『返還』することではなく『返還交渉』であった」などとしている。

さらに「(同新聞は)都市再生機構とわずか一度交渉しただけ」などと記載しているが、「実際には都市再生機構と複数回の交渉を行っている」などとしている。

クレオの買い取り問題に関しては「(同新聞は)五十嵐市長は、自分が当選したら『クレオを買い取り中心市街地の活性化を図る』ということを重要な公約として訴えてきた」などと記したが、「クレオを買い取り中心市街地の活性化を図るということを公約としたことはない」などとしている。

その上で五十嵐氏は訴状で「ゆがんだ情報によりいったん選挙結果が生じれば、一時的とはいえ、地方自治体の体制を混乱に陥れることにもなりかねない重大な結果を招く」などとしている。

「批判許さない圧力」

五十嵐氏は17日、自身のフェイスブックで「名誉毀損の訴訟を提起した」と発表し、「(同市民の声新聞は)数多くの虚偽の内容を記載し、市民に正しい情報を伝える機会であるべき選挙において重大な影響を与えた」「常に誹謗中傷や虚偽が多く出てしまうつくば市の選挙で、これ以上同じ行為が行われないために訴訟という措置を取った」などと投稿した。

一方、亀山元市議は「市民の声新聞は五十嵐市政がどういう4年間だったか、総合運動公園や中心市街地活性化など、重要な政策と実績を検証したもので、基本的に事実に基づいて書いている。五十嵐市長は、言葉使いや枝葉末節を取り上げて名誉棄損だと言っているが、有権者に選ばれた市長が、有権者に監視され、評価されるのは当然の話。些末(さまつ)なことを名誉棄損だと訴えるのは明らかに表現の自由の侵害であり、自らに対する批判を一切許さない圧力だ」などと話し、全面的に争うとしている。

口頭弁論は3月1日開かれる予定という。

【20日追加】裁判は土浦簡易裁判所から土浦地方裁判所に移され、第1回口頭弁論の期日は20日時点で未定という。

超小型衛星を野口聡一さんの元へ 打ち上げ待つ筑波大発宇宙ベンチャー

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21日打ち上げの補給船に搭載される超小型衛星(模型)を手にする常間地悟CEO=つくば市竹園

【相澤冬樹】筑波大学発宇宙ベンチャー、ワープスペース(本社・つくば市吾妻)開発の超小型通信衛星が、国際宇宙ステーション(ISS)へ向かう補給船に搭載され、21日未明(日本時間)に米国から打ち上げられる。17日、常間地悟(つねまち・さとる)CEOが会見し、「県内の民間企業としては初めての衛星の軌道投入になる」と意義や狙いを語った。

21日午前2時36分、米国東海岸のワロップ島海軍基地からアンタレスロケットで打ち上げられる。補給船に搭載されるのは、一辺が約10センチ角の立方体で、重さ1.3キロの超小型衛星「WARP-01(ワープゼロワン)」。同社にとって初号機で、「日輪」の愛称を持つ。

宇宙飛行士の野口聡一さんが滞在中のISSに届けられた後、地上約400キロの低軌道に放出され実証試験に移る。放出時期は未定だが、1-2カ月の間と見通されている。常間地CEOは野口さんと同郷(神奈川県茅ケ崎市出身)で、「ぜひ滞在中に放出の機会が訪れてほしい」と話す。

「WarpHub InterSat」のイメージ図(ワープスペース社提供)

同社が目指すのは、光通信モジュールを搭載した中継衛星を高度1万キロに打ち上げ、低軌道衛星のデータを受け渡す「WarpHub InterSat(ワープハブ インターサット)」というネットワークシステムの構築。地球に近すぎて通信しづらい低軌道衛星の難点を克服する「世界で初めて取り組み」だとしている。今回の実証実験では軌道やオペレーションを検証し、実用機に反映させるのが狙いだ。最長で2年間の運用を見込んでいる。

同社の目論見では、2022年に中継衛星の1号機を打ち上げ、23年に2機を追加し計3機によってネットワークを展開。地上局とユーザーの低軌道衛星との間を24時間365日にわたって常時接続できるシステムの構築を目指している。中継衛星は現在、設計に着手したところだ。

常間地CEOによれば、従来の人工衛星は数百キロから数トンのサイズのものを高度数万キロに打ち上げていたが、現在は数キロから数十キロの小型衛星を低軌道に放出するケースが一般的で、事業開発コストが大きく下がった。これにより2030年の小型衛星の数は1万2000基と、22年見込み比で1.8倍の規模まで増える見通しという。

こうした動きに伴い世界全体の地球観測市場は急速に拡大。これまでは政府機関が観測データの主要ユーザーだったが、近年は金融や流通業界に加え漁業や農業など第一次産業向けのニーズも高まっている。世界各地で頻発している山火事や洪水など大規模な自然災害の把握にも有効とされ、発生直後から撮影した映像情報を途切れることなく入手し、被害を最小限に抑制できることなどが期待されるという。

ワープスペース社は2016年設立、約3年前から光通信を利用した人工衛星向けの通信インフラ事業に取り組んできた。常間地CEOは筑波大学・同大学院卒。

筑波山に魔女が来た!?  アロマテラピーの「学校」開く

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古民家をリノベーションした「魔女の学校」。アジサイのドライフラワーを見上げるいしざき緑子さん=つくば市国松

【相澤冬樹】「筑波山に魔女がやってきたって評判になったみたいです」。自嘲気味に語るのは、つくば市国松に「魔女の学校」を開いた、いしざき緑子さん(年齢不詳)。筑波山西麓の古民家を魔改造(リノベーション)して移り住み、地域の植物や果実を自家蒸留するアロマテラピーの設備を整えた。地元にも門戸を開き、何やら画策している。

国際アロマセラピスト連盟認定のプロフェッショナルエッセンシャルオイルセラピストという肩書を持つ植物療法家で、筑波大学付属病院精神神経科で認知力アップのデイケア講師も務める。約10年間暮らした同市研究学園を離れて昨年秋、家族4人で移り住んだ。

「フクレミカンがつなぐ縁。西欧流のハーブなどより、在来の香りがするものが好きで、何でも蒸留してしまう。今ならハルジオンとかフキノトウとか、ノビルやスギからも香りを抽出できる。地元の素材を探してフクレミカンに出会い、人の縁がつながってたどりついた」

もう一つ、決め手になったのが、筑波山から湧水を引き込む山水道の存在。飲料には不適だが蒸留に使うにはもってこいの水質、有償で契約できると知って移住を決めた。エッセンシャルオイルは、素材を入れたお湯を沸かし、発生させた水蒸気を冷却部にくぐらせて芳香成分を抽出する。

「魔女の学校」にようこそといしざきさん

リノベーションで、住居と区分された校舎「魔女の学校」には蒸留室など作業場を併設、教室には神棚が残されている。ここで、アロマテラピーの知識や技術を専門に教えるほか、ハーブの石けんやアロマスプレー、食品などを手作りする。

メーンは1クール6回の魔女修行。魔女を自称するのは「きれいごとじゃない人間の本質に迫りたかったから。魔女は真の女に通じるんじゃないかと思っている」そう。

コロナ禍の中での開校となったが、昨年9月の第1回、今年1月の第2回募集とも定員12人を集めた。「東京、埼玉などからも来てくれる。カルチャースクールとしては適正な規模、集まり過ぎずかえって良かったかも」

5月には旧筑波小でイベント

最初は「魔女が来た」と警戒していた地元とも積極的な意思疎通を図っている。「(2018年廃校になった)旧筑波小学校を使ったイベントがしたくて、市の教育委員会を訪ねたのだけど校庭しか許可してくれない。地元の人に相談したら、話を通してくれてね。教室も借りられることになった」

イベントは手作り品などを販売するマルシェ、ドイツ各地で毎年4月30日に行われる魔女まつり「ヴァルプルギスの夜」をお手本に、「魔女のフェスタ」と銘打ち開催する。「この辺は4月末だと田植え時期。一緒に参加してもらいたいからと5月29日開催を決めた」という。「ぜひいらしてね、ドレスコードは黒よ」。魔女は微笑んだ。

問い合わせは電話070-4331-7787。ホームページはこちら

《ご飯は世界を救う》32 手作りお惣菜「まる環」

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【コラム・川浪せつ子】県独自の緊急自粛宣言が続いています。先月も書きましたが
「(コラムで取り上げるお店を)来月はどうしよう?」が、解決しました。テイクアウト
です。

今回、どうして「まる環(わ)」さん(つくば市下平塚)になったのか? 私は県建築
士会に準会員として入会しています。コロナが猛威を振るい、今年度の女性部の企画会と新年
会がZOOM会議になりました。ZOOMなんて私には無理ムリ!と思ったのですが、なんと
!お弁当付きなのでした。

お弁当につられ、ZOOMに挑戦することに。そのお弁当が「まる環」さんでした。おいし
いご飯と、スケッチもできるし、会議にも参加できるという一石三鳥。

2時間半の会議はけっこう長かったのですが、久々に仲間に会い、充実した時間を持つこ
とができました。後日、まる環のお惣菜を買い物したり。なんでも挑戦していくのってス
テキですね。

ZOOMで審査委員会

その後、またZOOM会議。市民審査員として参加している「つくばショートムービーコンペテ
ィション」(2月15日付)1次審査です。コンペの審査員長は、映画監督でつくば市出身の中村義洋さ
んです。

▽主催:つくばショートムービーコンペティション実行委員会、つくば市、筑波学院大学
▽支援:公益財団法人つくば文化振興財団
▽協賛:公益財団法人つくば科学万博記念財団、ほか2社
▽後援:一般財団法人つくば都市交流センター、ほか2社

ただのオバサンが審査員で大丈夫なのか?と思いながらも、もう6年です。そして、今回はZOOM
会議。いやぁ~、仲間内のワイワイ会議とは違い緊張でした。

最近の映像技術は素晴らしすぎて、ZOOMでは、シミ、シワ、クマ、くっきりです。顔出
ししないバージョンもありますが、やはりお顔は見えないとね。ZOOM会議のために、化
粧方法も研究しなくては!!(イラストレーター)

つくばショートムービーコンペティション>上映作品視聴期間=2月27日(土)13:00~3月7日(日)、受賞作品発表=2月27日(土)15:00~

戻ってきた「科学の甲子園」 並木中等、第10回つくば大会に挑む

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「科学の甲子園」に出場する並木中等教育学校チーム(同校提供)

【相澤冬樹】10回目を迎える「科学の甲子園全国大会」に出場する都道府県代表47校が決定した。主催する科学技術振興機構(JST、濵口道成理事長)が15日発表した。茨城県からは並木中等教育学校(つくば市並木)が2年ぶり4回目の出場を決めた。大会は3月19日から21日にかけて、同市竹園のつくば国際会議場とつくばカピオを会場に無観客で開催される。

高校、中等教育学校後期課程、高専校などの生徒を対象に、理科4科目(物理、化学、生物、地学)と数学、情報にまたがる複数分野からの課題をこなす競技。1チーム8人で、筆記と実技(実験、工作)の得点を競う。

第8回優勝の海陽中等教育学校(愛知)を抑えた同県代表の旭丘高校、第7回優勝の栄光学園(神奈川)、筑波大学附属駒場高校(東京)など47校が出場する。全国606校から7168人がエントリーし、都道府県の代表選考を勝ち抜いた。

茨城県予選は昨年11月に行われ、18校・33チーム、198人が参加、2チームを送り込んだ並木中等のAチームが出場権を得た。予選で6人編成だったチームに2人を加え、規定の8人登録で全国大会に挑む。全員5年生(高校2年)、科学部のほかに水球部部員などを交えた混成チームだ。

過去最高は総合4位(第7回大会)、ご当地開催に生徒たちは「女の子たちとの楽しい放課後を犠牲にしてきた。練習の成果を出し切れるよう頑張る」と意気込んでいる。

昨年のさいたま市開催は新型コロナウイルスの感染拡大で急きょ中止となり、つくばでの開催は第6回大会以来4年ぶり。JSTでは感染症の状況により開催方法などが変更になる可能性もあるとしている。

差別をなくすために つくばの障害者団体が職員研修

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オンライン研修会に参加し差別について議論する職員ら

【川端舞】障害者差別をなくすために、障害者と健常者の関係はどうあればいいのかー。差別を考えるオンライン研修会が6日と13日、2日間にわたり開かれた。障害者支援団体「つくば自立生活センターほにゃら」(つくば市天久保)が、主に内部職員向けに開催した。障害者と健常者が互いに尊重し合える関係のつくり方について、活発な議論が展開された。

自立生活センターは全国各地にあり、「障害者のことは障害者が一番理解している」という理念のもと、障害者が中心となって運営される。障害者主体の団体に、これまで健常者がどう関わってきたかを知ることで、センターで働く健常者の職員が「障害者支援を通して、自分も社会を変えていく一員なのだ」とより自覚できるのではないか。そのような思いから、センター設立当時からの職員、松岡功二さん(52)が今回の研修会を企画した。

「健常者は手足になれ」

参加したのは同センター職員のほか、かつて筑波大学で部落差別を中心とした差別問題を研究していた筑波大名誉教授の千本秀樹さん(71)、千本さんの教え子など約30人。

初日は、センターで介助のアルバイトをしている筑波大障害科学類4年の山口和紀さんが、自身の卒業論文をもとに「健全者手足論」について問題提起した。

1970年代、どんな重度障害者でも暮らしていける地域社会をつくることを目指す、障害者たちの社会運動「青い芝運動」が関西で広がった。重度障害者が社会運動を続けるためには、介助する健全者(=当時、現在は健常者)が必要だ。しかし当時は公的な介助制度もなく、ボランティアとして障害者を介助していた健全者は、青い芝運動の中で不安定な立場だった。当初は青い芝運動に共感していた健全者だが、立場の不安定さから障害者との関係がこじれ、障害者を見下す言動が出てきた。運動における障害者と健全者の関係を再確認しようとする中で、障害者から「健全者は組織運営に口を挟まず、組織の手足になれ」という「健全者手足論」が出てきた。「健全者は敵だ」とまで言い切ることもあった。

「健全者と障害者の関係がこじれた時に、『健全者は手足になれ』と主張するのではなく、互いに協働する道もあったのではないか」と、山口さんは問いかけた。

共に差別と闘う

2日目は、千本さんがこれまでの研究活動をもとに、健常者として障害者差別とどう向き合うのかについて論じた。

千本さんは、学生時代から部落解放運動などの反差別運動に関わる中で、障害者運動とも出会った。障害者とともに運動していく中で、自分自身の中にも障害者差別があることに気づく。当時、千本さんはともに運動していた障害者たちに、「自分が差別的な言動をしたら、指摘してほしい」と頼んだ。障害者と本音で語らないと、自分の中にある無意識の差別に気づけない。「自分の中の差別意識に気づくことは怖いかもしれないが、新しい考え方に気づくのは楽しかった」と、千本さんは当時を振り返る。

障害者差別が黙認されている社会では、全ての人間が、自分では自覚していなくても、無意識に「自分は障害者でなくて良かった」という差別的考えを持たされる。

全ての健常者は障害者差別をする側になりえるため、「健常者は敵だ」と考えたのが、青い芝運動の「健全者手足論」だ。そこには、反差別運動は、差別される者だけで行うものだという考え方がある。

しかし「障害者だけでなく、健常者も運動に加わらないと、差別はなくならない」と千本さんは主張する。差別される障害者と、差別する側になりうる健常者が、互いに尊重できる関係になり、差別を内包する社会と共に闘うことが重要だ。

介助者として関係を模索

研修会では、同センター職員による活発な議論も行われた。

現在の障害者介助では、かつての「健全者手足論」とは別に「介助者手足論」が広まっている。介助者は、障害者の手足のように、障害者が頼んだことだけを行うべきだという考え方だ。自分の手足を動かせない重度障害者にとって、自分のやりたいことをしていくために、自分の指示通りに介助員に動いてもらうことは欠かせない。

その共通理解のもと、「しかし、介助者は障害者の手足として、障害者の指示に従ってさえいればいいのだろうか」「障害者差別をなくすためには、まずは介助者が障害者と互いに尊重できる関係を作ること、そして障害者が介助者以外の健常者とも同じような関係を作れるように、両者をつないでいくことも大切なのではないか」など、日々、介助者として障害者と向き合っているからこその意見が多数出された。

障害者と介助者、健常者の関係はどうあればいいのか、つくば自立生活センターの模索は続く。

《つくば法律日記》15 ドストエフスキー生誕200年

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堀越さんの事務所があるつくばセンタービル

【コラム・堀越智也】普段、今から100年前や200年前は何が起きていただろうと考えることで、歴史との距離感をつかむようにしています。今年は、ドストエフスキー生誕200年です。

ドストエフスキーの小説は、大学入試に出たので、どんな小説だろうと思い、手に取ったのが最初でした。代表作の「罪と罰」に始まり、短編小説も読むようになりました。入試のために知識を詰め込んでいるころは、なぜ大学入試で出題されるのか、あまり深くは分かりません。しかし、大学生になり、さらに社会人になり、年を取ると、少しずつその理由が分かってきます。

20代前半で読んだばかりのころは、何が言いたいのか、はっきりは分かりませんでした。ロシア文学独特の長い上に、1人複数ある登場人物の名前を必死に覚えながら読む重労働感は、多くの読者と同じです。長いカタカナの名前は、ボクシング世界戦で来日したナパ・キャットワンチャイやシリモンコン・ナコントンパークビューで鍛えたので自信がありました。しかし、ロシア文学の登場人物は、本名もあだ名も長く、あだ名は本名の跡形も残っていないことがあります。

それでも今、ページの隅々までぎっしり文字で埋められたドストエフスキーの小説を読んだ経験は、自分の財産として残っています。産業革命後、資本主義により貧富の格差が広がり、貧しい人への救いもない世の中で、人が犯した罪と罰についてどう考えるべきか考えることは、法律、政治、経済、その他、多岐にわたる分野の思考力を養います。大人になると、様々な不条理を経験します。そんな不条理とどのように向き合うべきかを考えるヒントにもなります。

貧富の差やコロナ禍による不条理

以前、久米宏さんがニュースステーションで、若者の本離れをテーマにしていた時に、若いころにドストエフスキーを読んでとてもいい世界に入って行けたと言っていました。僕がドストエフスキーを読んだのは、Windows95が出たばかりのころで、スマホはもちろん、インターネットも十分に普及していない時代でした。そして、今のコロナ禍です。

不条理の文学と言えばカミュが有名で、代表作に「ペスト」があります。インターネットやスマホが普及し、ドストエフスキーやカミュの時代とはがらりと違うように見える現在ですが、貧富の差やコロナ禍による不条理。ドストエフスキーやカミュの小説を読み直すと、若いころに読んでから今までの人生経験が線でつながり、何かに気づけるかもしれないと期待しています。

そして、また20年後に何を考えているのかを楽しみにしたい。できれば、それを誰かと語り合いたい。なので、生誕200年のドストエフスキーを多くの人に読んでほしいと願う2021年です。(弁護士)

つくば短編映画祭 応募148作品、題材に新型コロナも オンラインで27日から

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つくばショートムービーコンペティションのロゴマーク(同実行委提供)

【池田充雄】短編映画祭「つくばショートムービーコンペティション2021」(つくば市、筑波学院大学など主催)の作品上映と受賞作品発表が27日からオンラインで催される。今年は全国から148作品が寄せられた。すでに1次審査を終え、10作品が最終候補にノミネートされている。

つくばからの文化発信と次世代の才能発掘を目指した、10分以内の短編映像のためのムービーフェスティバル。2013年に始まった。

今年は大型ドームスクリーンで上映する「全天周映像部門」が新たに設けられ、つくばエキスポセンター(同市吾妻)プラネタリウムホールで開催予定だったが、新型コロナ感染拡大のためオンライン方式に変更する。昨年も新型コロナで上映会が中止になった。

同実行委員長の堀聖司・筑波学院大学メディアデザイン学科助教は「例年同様に多くの作品が集まった。いずれも熱のこもったクオリティの高いものばかりで10本に絞るのが難しく、うれしい悲鳴を上げている」と話す。

応募作品の内訳は自由部門86本、3分以内のショートショート部門49本、つくば部門7本、全天周映像部門6本。昨今の状況を色濃く反映し、コロナ禍や感染症を題材にした作品や、撮影や編集をリモートで行った作品も多いという。

初めての募集となった全天周映像部門については「今年は審査会場につくばエキスポセンターを予定していたので、プラネタリウムホールの大型ドームスクリーンを活用できる映像を募集した。コロナ禍のためお見せできなくなり非常に残念。いずれ改めてドーム上映の機会を設けたい」と堀委員長。

2019年3月に開催された上映会と表彰式の様子=つくば市吾妻、つくばイノベーションプラザ

通常の審査会や上映会は中止になったものの、それらをオンラインで行うという新たな取り組みも生まれた。「会場に足を運べない方にも気軽に参加していただけると思う。反響が楽しみ。今回は試験的な実施だが、次年度以降も併設を考えていきたい」という。

市民審査員を募集

27日の受賞作品発表を前に同実行委は、「市民審査員賞」を選ぶための投票をオンラインで行う市民審査員を募集している。募集は18日まで。視聴および投票の期限は22日。同実行委(info@tsukuppe.org)宛てに名前と居住市町村名を明記したメールを送信し、登録が完了すると、返信メールに記載された動画視聴用URLから、ノミネート作品を視聴できる。視聴できるのは全天周映像部門を除く9本。所要時間は計約60分。上位3作品に順位をつけて投票する。

グランプリおよび各賞の発表は27日午後3時から、またオンライン上映会は同日午後1時30分から、いずれもつくばショートムービーコンペティション公式ホームページで。

《吾妻カガミ》100 つくばの市長案件 まだ迷走続く?

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つくば市役所正面玄関サイド

【コラム・坂本栄】本コラムも100回を迎えました。安全保障や国際経済などグローバルなことも話題にしたいのですが、つくば市政への読者の関心が強いこともあり、今回もローカルな話にします。大台入りのテーマは、五十嵐市長の政治案件(運動公園問題)はまだ迷走するのではないかという話です。

2つの成功と2つの失敗

本サイトの記事「旧総合運動公園用地の利活用調査 再スタート つくば市議会」(2月3日掲載)を読んで、「変な話だな」と思いました。五十嵐さんが「(用地の)一部は防災倉庫に活用して残りは民間に売却したい」とTVインタビューで発言。これに、議会の審議を軽視していると市議が言いだし、次の特別委員会に市長を呼び、何を考えているのか問いただすことになった、という内容です。

運動公園問題の流れは、前市長が計画(UR都市再生機構から買った用地に陸上競技場などを建設)を発表(A)→多額の建設費に反対する市民運動が活発化(B)→住民投票で建設反対が多数を占め前市長は計画を断念(C)→「運動公園問題の完全解決」を目玉公約に掲げた五十嵐市長が誕生(D)→この公約の柱「URとの返還交渉」に失敗(E)→次の手「民間業者への一括売却」案に議会が難色(F)—に要約できます。この先に、「一部を防災倉庫の活用」案が加わったことになります。

住民投票で前市長の計画を葬り(C)、その勢いに乗って市長に初当選したこと(D)は、市民活動家の五十嵐さんにとって大成功(〇〇)でした。しかし、用地をURに買い戻させる交渉は失敗(E)、その後の民間業者へ一括売却する案(F)も実現せず(✕✕)、五十嵐市政にとって運動公園問題は悩ましい政治案件になっています。

間違いはどこにあったのでしょうか? 私の見立てでは、コラム「つくば市長の看板公約を検証する」(昨年8月17日掲載)でも指摘したように、最初の市長選のときに「就任後直ちにURと(用地)返還交渉を行う」(Dの柱)と、主公約に掲げたことにありました。しかし、市との売買契約ではURが解約に応じることはあり得ず、この公約の実現可能性はほぼゼロでした。「成功誘因」の中に「失敗因子」が潜んでいたわけです。

もう1バツが増える?

話を議会の動きに戻します。先の記事(2月3日掲載)から推測するに、議会では①なぜ運動公園用地に防災倉庫を持ってくるのか②それは同用地に陸上競技場を造る選択肢を封じることになる③防災倉庫を建てる場所なら他にもある―といった意見が出るでしょう。五十嵐さんがこれらの疑問や指摘に十分答えられないと、✕印がもう一つ増えることになります。

私は、防災倉庫は廃校跡や廃庁舎跡の方が適地ではないか、運動公園用地に建てると土地の形が悪くなり(虫食い状態になり)、残った土地の売却にはマイナスではないか、と余計なことを考えています。(経済ジャーナリスト)

「データ活用し次のステップへ」つちうらMaaS始動

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式典であいさつする「つちうらMaaS推進協議会」の松上英一郎関東鉄道社長

【伊藤悦子】次世代の交通システム「つちうらMaaS(マース)」の実証実験が15日スタートするのを前に、開幕式典が14日、同市川口のりんりんポート土浦で開かれた。主催者の「つちうらMaaS推進協議会」会長で関東鉄道(同市真鍋)の松上英一郎社長は「MaaSの実装に向けて準備を進め、いよいよ明日から実験できることになる。15日から3月12にまで4週間実施する。今回の取り組みが土浦市の課題解決の一助になれば」とあいさつした。

電動キックボードに試乗する安藤真理子土浦市長

MaaSは複数の公共交通やモビリティーを最適に組み合わせ、アプリを利用して検索・予約・通信・決済などを一括して行うサービスのこと。土浦市は、国交省の「2020年度日本版MaaS推進・支援事業」に選定され、準備を進めてきた。市民の移動手段の確保、観光客の周遊促進などが目的だ。

同協議会副会長の安藤真理子土浦市長は「実証実験で集まったたくさんのデータを活用し、次のステップにいくことを大いに期待する。実証実験が成功することを切に願っている」と力強くあいさつした。

同副会長で、土浦商工会議所の中川喜久治会頭は「MaaSの実証実験は、土浦がテレワークやワーケーションに適した土地であることの大きな発信力にもなる。実証実験を成功させ、土浦の大きな発展の礎になるようにしたい」と抱負を語った。

式典では地元選出の衆院議員、県会議員、市議らがあいさつし「何としても実験を成功させたい」と訴えた。

式典終了後、りんりんロード駐車場内で電動キックボード試乗会が行われた。実際に乗った安藤市長は「やり方がわかれば誰でも乗れる。バランス感覚もそれほど必要ではない。力を使わず楽に、簡単に移動ができる」と感想を話した。

バス路線廃止区域で実験 「何がいいのか、データとる」

 式典後、同推進協議会会長の松上英一郎・関東鉄道社長は今回の実証実験の意義などについて次のように話した。

―実証実験の意気込みは?

松上 昨年の7月から会を発足させて半年でここまでこぎつけた。関係者の尽力に感謝したい。実証実験では(バス停から自宅までの)ラストワンマイルの移動手段として、電動キックボートとラクロ(自動運転一人乗りロボ)の2種類を提案している。電動キックボードはシニアから若い人まで各層で使える。折りたたんで電車やバスに持ち込み、自宅から駅、駅から会社までの移動手段など、1日4回使える乗り物になると提案している。ラクロは都市部で実証実験が済んでいるので、私どもは新治地区の、人混みはないが車がスピードを出して走っている地区で安全走行ができるかを試す。きわめて有効な乗り物だと私どもは思っている。

ラストワンマイルだけでなく、飲食店や交通機関が利用できるモバイルチケットも発売する。ぜひ市内、市外からお越しの方に、モバイルチケットを使ってもらい、土浦市の魅力を再発見していただけたら。

新治地区でコミュニティバスの実験もする。顔認証システムとマイナンバーカードを使った実験で、来年度に向けて、バスの自動運転やマイナンバーカードを使った完全キャッシュレスの実験をしていきたい。

ーデータをとるということだが、目指すところは何か?

松上 実験だから、私どもの仮説は当然ある。しかし、いろいろな方に使っていただいて、まず、不便だとか、もっとこうした方がいいとか、意見を頂戴したい。答えを求めて実験するわけではない。日本のいろいろな地区で参考になるデータが集まればいいと考えている。

ー「つちうらMaaS」は国交省の「日本版MaaS推進・支援事業」に選ばれた全国38カ所の一つだが、全国で初めて行われる実験はあるか?

松上 新たなテクノロジーを使った実験ではないが、「つくば霞ケ浦りんりんロード」で行う電動キックボードのすれ違い実験などは、初めて、安全性走行試験を長距離で実験する。そのデータを各関係者が活用していただければ幸いだ。

ー将来、今回の実証実験の組み合わせで新たな交通手段はできるか。

松上 バスやタクシーの運転手、物流トラックの運転手も国内では減っている。おそらく時間給に見合った労働ではないからだと思っている。バスの運転手は安全運転とお客さんの集金など業務は多岐にわたり、大変な仕事だ。運転手を続ける人が少なくなっている中で、こういった自動運転システムを早晩つくっていかないと公共交通はなくなってしまうかもしれない。こういった実験を我々もやっていこうと思う。

ー今回、実証実験をする新治地区は、以前、コミュニティバス「新治バス」の試験運行を実施したが、成功しなかった(2019年10月29日付)。今回はラクロ(自動運転一人乗りロボ)やAIバスの実証実験をするが、ラクロはバスの運行に寄与するのか。

松上 ラクロも電動キックボードも自宅からバス停までや、駅までの移動手段として有効だと思う。都市部では実証実験が進んでいる。地方都市も同じだ。我々は新治地区でコミュニティバスの実験をやる。以前、関東鉄道のバスが走っていたが1年足らずでやめた。今回は、利用者のデータをもとに、どんな要望があるのかということからバス停の場所を決める。バスが走っても人が乗らなかった地域で、タクシーがいいのか、自転車がいいのか、ラクロがいいのか。私どもはラクロがいいと考えて今回、実証実験をする。

➡つちうらMaaSの過去記事はこちら

「だるま市」に人出繰り出す 筑波山麓 飯名神社縁日

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日曜開催ににぎわう「だるま市」=つくば市臼井

【相澤冬樹】筑波山麓で「弁天様」と親しまれる飯名神社(つくば市臼井、八木下健司宮司)の縁日が14日、開かれた。旧暦の正月初巳(はつみ)に行われる例祭で、弁財天信仰にちなんだ縁起物のだるま市が立ち、露店商も集まりにぎわう。コロナ禍の今年は事前のPRを控えての開催となったが、行楽日和の日曜日、例年を上回る多くの人出が繰り出した。

コロナ禍、餅まき行わず

神社総代の鮏川良一さんによれば、今季の開催は最後まで悩んだという。県独自の緊急事態宣言に合わせ、筑波山梅まつりの開催延期が続く中、総代会を開き、ようやく決行を決めた。例年のような餅まきは行わず、パック詰めした紅白の餅を250個用意して、1時間ごとに神社拝殿で配る形式とした。

それでも総代メンバーが午前5時集合で準備を始めると、6時には最初の参拝者が現れるなど、出足から早かった。「初巳が日曜日と重なるのは久しぶりで、家族連れが目に見えて増えた」。鮏川さんらは参拝の行列が密にならぬよう呼び掛けたり、「銭洗い弁天」の場所を教えたり、混雑整理に追われた。

栃木県小山市から来たという上野さん一家は長男、蒼大君(13)の「御朱印集め」に付き添っての参拝。各地の情報を収集してこの日の開催を知ったといい、「やっぱり厄払いしたかった」と話した。

山裾の参道には縁日屋台のほかに、筑波みかん、海産物、竹細工などの雑貨、農業用資材などを扱う昔ながらの露店が集まる。境内に立つだるま市は、購入者の求めに応じ、赤いだるまの背に祈願文を書き入れてくれる。話を聞くと「やっぱり、家内安全、商売繁盛が圧倒的だね。疫病退散の注文はまったくない」ということだった。

《食う寝る宇宙》79 宇宙飛行士と人工衛星の「試験」

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【コラム・玉置晋】日本人宇宙飛行士の募集が今秋に予定されています。僕の周りにも宇宙飛行士を目指している人が何人かいるので、彼らを応援しています。JAXA(宇宙航空研究開発機構)のホームページを見ると、宇宙飛行士の募集・選抜・基礎訓練に関する意見募集や情報提供依頼が出ています。どのような選抜試験になるのか興味津々です。僕は受験するのかって? いやいや、まずは腹のぜい肉をどうにかしろと奥さんに言われておりますよ。

人工衛星も試験を受けなければ宇宙には行けません。宇宙に行くということは過酷です。ロケット打ち上げ時の音響レベルは飛行機エンジンの近くぐらいで、ロケットの噴射による振動は地球重力に匹敵する加速度となります。丈夫じゃないと壊れてしまいます。

そして、無事に宇宙空間に到達したらさらなる困難が。高真空、±100℃の温度差、高い放射線量―。特に放射線は、僕が研究している「宇宙天気」に大きく依存します。地上で素晴らしい働きをしている電子機器でも、耐性がなければ地球一周も持たず機能を失ってしまうでしょう。

小型衛星環境試験設備シェアリングサービス

人工衛星が、ロケットで宇宙に運ばれるのに耐えられて、宇宙空間でも健全に動作することを確認するために、地上で試験を行います。電気性能試験、電磁適合性試験、機械環境試験、熱真空試験、放射線耐性試験など、様々な試験が必要ですが、申請や機材の準備、試験場や試験人員の確保などのノウハウがないと難しくて、これまで宇宙参入の障壁となっていました。

ここに目をつけた人が、僕が所属する宇宙コミュニティ「ABLab」の仲間にいます。「小型衛星環境試験設備のシェアリングサービス」と題して、宇宙ビジネスアイデアコンテストS-booster2019に応募し、見事JAXA賞を受賞しました。そして準備期間を経て、2021年度からサービス提供を開始します。詳細は本サイトの記事「JAXA認定ベンチャー 宇宙・衛星ワンストップサービス提供へ」(1月21日付)をご覧ください。(宇宙天気防災研究者)

<2月前半の宇宙天気>太陽のコロナホールから流れ出した高速太陽風の影響で、2月7日に弱い磁気嵐が発生しました。2月11日現在の宇宙天気は静穏です。新たなコロナホールが見えていますので、本コラムが掲載されるころには高速太陽風が吹いているかもしれません。それではよい宇宙旅行を!

茨城県南部で震度5弱 つくば・土浦で約2万3000軒が停電

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信号機が停電のため点灯していない交差点=13日午後11時過ぎ、つくば市柴崎

【山口和紀】13日午後11時08分に発生した福島県沖を震源とする地震で茨城県南部で震度5弱を観測した。つくば・土浦地域では約2万3000件が停電したとみられる。

気象庁は緊急地震速報を発表、地震の規模(マグニチュード)は7.1と推定された。土浦市で震度5弱、つくば市で震度4を観測した。

東京電力によれば、深夜0時ごろ、つくば市で28地区、土浦市で44地区が停電した。つくば市桜地区(1万810軒)、同小田(760軒)、土浦市並木(2600軒)、同神立中央(2250軒)、神立東(1140軒)、藤沢(約1200軒)などだ。

つくば市危機管理情報局によれば、今回の地震ではつくば市での災害等は発生していない。

柴咲交差点の信号機が停電のため点灯していない様子=同

つくば、土浦の震度は以下の通り。
震度5弱=土浦市常名
震度4=つくば市天王台 つくば市研究学園 つくば市小茎、土浦市田中

《茨城鉄道物語》9 今度は「ひたちなか海浜鉄道」に乗ってみた

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ひたちなか海浜鉄道湊線の車両:JR勝田駅ホーム

【コラム・塚本一也】新春企画第2弾として、今回は、現在県内で注目の的となっているひたちなか海浜鉄道湊線に体験乗車してきた。

正月明けに、鉄道関係者にとって耳を疑うようなニュースが飛び込んできた。それは、ひたちなか海浜鉄道湊線が、終点の阿字ヶ浦駅から国営ひたち海浜公園までの3.1キロを、2024年度の運行開始を目指して延伸することが認可されたという、ビッグニュースである。

ひたちなか海浜鉄道は、茨城交通とひたちなか市が出資する第3セクターが2008年から運営する鉄道会社であり、湊線は非電化の単線路線である。

私はJR東日本に技術者として15年間勤務した経験をもとに、本コラムを執筆しているが、国鉄の分割民営化以降、LRT(近代的路面電車)以外の地方ローカル線が延伸されたという話は聞いたことがない。バブル崩壊後、景気の低迷や人口減少のあおりを食った形で、地方ローカル線のほとんどが存亡の危機にひんしている。

鉄道経営の特徴として固定費がかかるという問題がある。つまり、空でも電車は時刻表通りに動かさなければならないので、営業収入が無くても人件費やメンテナンス費用がかかる。ゆえに、旅客数の減少は直接純利益に影響するのである。

そのような厳しい経営環境のもとで、営業キロが14.3キロ、駅数が10駅の地方路線が2割以上延伸し、3駅も新設するというのは、無謀ともいえる計画のような気がする。現状を確かめるべく、体験乗車に出向いた。

黄金色に輝く干し芋が見えた!

JR常磐線勝田駅から乗車すると、2駅目の金上(かねあげ)駅辺りまでは住宅地の中を縫うように走っていく。この辺の風景は都心の私鉄とあまり変わらない。そこを抜けると、田園地帯の中を真っすぐひた走る。路線の半分以上は線形が直進ではないか、と思わせるのはこのあたりのせいであろう。

那珂湊駅に着くと、何となくローカル線の雰囲気が漂い、駅舎のたたずまいや人の気配もそれらしくなってきた。これで雪でも降っていたら、高倉健の「駅」を彷彿(ほうふつ)させるロケーションである。いや、「犬神家の一族」の旧作にもラストシーンでもこんなホーム上家があったような気がする。

終点の阿字ヶ浦駅舎

そんなことを考えていると出発時刻になり、ディーゼル車のエンジンがうなり始めた。ここから先は海岸線に沿って走ることになるが、風光明媚(めいび)というわけにはいかず、相変わらずの農村地域を走っていく。広大な畑作地帯はひたちなか名産の干し芋の材料となるサツマイモ畑であろう。

人家の周りのビニルハウスの中には、その干し芋が黄金色の輝きを放ちながら、所狭しと並べられているのが見える。そのビニルハウスの彼方に、突然、大きな観覧車が姿を現し始めた。ひたちなか海浜公園である。「結構遠いなあ」と考えていたら、終点の阿字ヶ浦駅に到着した。

今回の取材で、ひたちなか海浜鉄道に初めて乗車した。延伸の目的は、経営戦略として住民サービスだけでなく、観光客を取り込んで増収を図ることであろう。地域の日常を支えると同時に、観光のキーワードである「非日常」をいかにして演出していくかが今後の課題だ。(一級建築士)

《遊民通信》10 神秘体験記(1)奈良の二上山

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當麻寺曼荼羅(左)と二上山清水

【コラム・田口哲郎】

前略

この世には誰にも疑えない現実がある一方で、「信じるも信じないも、あなた次第」としか言えない超現実があります。神秘体験はそれを垣間見ることです。でも、自分が不思議だと思うことは他人にとっては不思議ではないことがあります。神秘体験を他人と共有することは難しいです。

5年ほど前に奈良を旅行しました。東大寺や平城京、薬師寺を観光しましたが、メインは二上山(にじょうざん)でした。折口信夫の小説『死者の書』を読んでぜひ行きたいと思っていたのです。山頂には大津皇子(おおつのみこ)の墓があります。物語は藤原南家の郎女(いらつめ中将姫)が大津皇子の亡霊に導かれて神がかりのように曼荼羅(まんだら)をひと晩で織り上げ、自らも極楽浄土に誘われるというもの。その曼荼羅は山麓にある當麻寺(たいまでら)のご本尊になっています。

二上山は藤原氏に所縁(ゆかり)深い場所で、藤原氏の祖・藤原鎌足が天皇のための清水を探し彷徨(さまよ)っていたところ、二上山で発見したという伝承があります。私の父方の家紋は藤原氏の家紋、下り藤です。長崎平戸藩の家老の家系ですが、たどれば藤原氏に行きつくはずです。

さて、二上山は標高500メートル程度ということで、簡単なガイドブックを頼りに上り始めました。二上神社口駅から山頂に行き、當麻寺方面に降りるというコースです。最大の過ちは持参したペットボトルに少量の水しか入っていなかったこと。

鎌足公の水? 癒しの清水

山頂には難なく着きました。大津皇子の墓に拝礼し下山する段で水が切れました。高尾山頂のように自販機はありません。仕方ないと歩き始めたら見知らぬおばさんに話しかけられました。當麻寺に行きたい旨を伝えると、「こっちが近道やで」と指さされた方に進みました。

ところが行けども當麻寺に着かず、断崖絶壁に行き当たり、出遭った人に聞くと當麻寺とはまるで反対方向だと言われ、山頂に戻ることに。その途中でも堂々巡りをして喉の渇きと疲労に絶望していました。すると水の音がします。湧き水です。清水が竹筒から涼し気に流れ落ちています。飲める水だと札が立っています。私は夢中で飲みました。

あれほどおいしい水はなかったです。渇きが癒され、力を得たら見落としていた道に気づき、進むと木漏れ降り注ぐ緩やかな林道になり、しばらくして當麻寺に着きました。當麻寺の曼荼羅を眺めているうちにハッとしました。あの水が鎌足公の清水だったのでは…。ここは藤原氏の山で、自分は遠い祖先に導かれて無事に曼荼羅を拝めているのではないか。

言葉にできない感覚に満たされ、阿弥陀(あみだ)仏の前で感涙を零(こぼ)しました。後で地図を見返したら、おばさんのお節介がなければ、水がある道には入れなかったことも分かりました。私はこれを神秘的体験だと思いますが、ただの偶然の連続とも言えます。この手の体験は当事者でない場合、信じるも信じないも、あなた次第ということになってしまいます。ごきげんよう。

草々(散歩好きの文明批評家)

チビっ子炭治郎ら鬼退治 つくばの雷神様でコロナ退散願う

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アニメ「鬼滅の刃」の登場人物に扮して豆まきをする子どもたちや参加者=つくば市上郷の金村別雷神社

【崎山勝功】新型コロナウイルスの収束を願い、つくば市上郷の金村別雷(かなむらわけいかづち)神社で11日、節分祭が催された。邪気を払い、疫病退散にパワーを持つ祭神をまつることから、境内には人気アニメ「鬼滅の刃」のキャラクターに扮した参拝客が多数参集、一風変わった「鬼は外」が展開された。

暦の節分から9日遅れての節分祭には、市内外から約150人が参加した。所雅彦宮司(60)が感染症の収束を願う祝詞(のりと)を奏上し、コロナ禍以前の生活に戻るよう祈願した。現在のコロナ禍や2011年の東日本大震災を念頭に、「歴史は繰り返すので、雷神様の故事にならって『コロナ禍が収束していい暮らしになる』よう願う神事にした」という。

雷神様は神社の祭神の別雷大神(わけいかづち)のこと。雷を支配する神で、雷除けや疱瘡(ほうそう、天然痘のこと)治癒の神としても信仰されている。

節分祭の運営に協力した上郷市街地活性化協議会によると、雷神様はとどろき渡る雷鳴のようなことば「霹靂一聲(へきれきいっせい)」で邪気を払うのだそうだ。これをアニメの登場人物、我妻善逸(あがつまぜんいつ)の必殺技「壱ノ型 霹靂一閃(へきれきいっせん)」に引っかけて、同アニメのコスチュームでの参加をSNS上で呼び掛けたという。

竈門炭治郎に扮したチビっ子ら=同

すると、アニメの主人公、竈門炭治郎(かまどたんじろう)や嘴平伊之助(はしびらいのすけ)の扮装をした子供たちを中心に参加者が集まった。つくば市上郷の坂入恭輔さん(33)は冨岡義勇に扮して参加。「少ないかなと思ったけど、来てみたらけっこう多くの人がいた。皆さんの息抜きになっていいのではないか」と語った。

境内では地元バンド「ケンニイバンド」らがアニメの登場人物に扮して、アニメ主題歌「紅蓮華(ぐれんげ)」を演奏。登場人物に扮した子どもたちが「コロナは外」の掛け声に合わせて豆まきをした。つくば市の三谷心奈美さん(11)は「楽しかった」と鬼退治に興じた。

金村別雷神社は931(承平元)年の創建と伝わる。1707(宝永4)年ごろに天然痘ウイルスの流行や富士山噴火、宝永の大地震など自然災害が相次ぎ、翌1708年に災害収束を祈願して同神社の本殿を再建したという。こけら葺きの本殿などが県指定有形文化財(建造物)になっている。

スマホで住民票や転出届手続きサービス つくば市が12日開始

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スマートフォンで住民票を請求する操作のイメージ図(つくば市提供)

スマートフォンから住民票の写しの請求や転出届の手続きができる「スマート申請」サービスを、つくば市が12日午前0時から開始する。市民窓口課によると、スマホで住民票の申請ができるサービスは全国の市町村で6番目、県内初という。同市が取り組む「書かない・待たない・行かないデジタル窓口の推進」の一環で実施する。

スマホとマイナンバーカードを使って、市役所に行かなくても手続きができる。利用したい市民は、市ホームページから手続き専用サイトにアクセスし、マイナンバーカードの署名用電子証明書の暗証番号(英数字6~16桁)で本人認証をして手続きをする。手数料はクレジットカード決済で支払う。申請後、住民票は4日程度で自宅に郵送される、転出届は転出先市町村に通知される。ただし専用アプリ(Graffer Identity)のダウンロードすることが必要。

市によると、現在マイナンバーカードをもっている市民は3割程度、住民票はマイナンバーカードがあれば、近くのコンビニでその場で交付を受けることができる。今回のスマートフォンによるサービスは交付までに4日程度かかることから、市では月数件の利用を想定しているという。初年度のシステム導入費用とサービス維持管理費は計約50万円。

一方、転出届は通常、窓口に出向くか、または郵送により、必要書類を市に提出し、転出証明書の発行を受け、同証明書を転出先の市町村に届け出ることが必要になる。スマートフォンによるサービスを利用すれば、転出先の市町村に通知がいく手続きが大幅に簡単になることから、転出入者が増える3月、4月に計30件程度の利用があると見込んでいるという。

利用できるのは15歳以上。親元を離れて市内の高校などで寮生活をしている高校生などの利用も想定している。

同課は「来庁できない忙しい人に活用してほしい」と話している。2021年度中にさらに、印鑑登録証明書もスマホで取得できるようになるようサービスの拡充を図っていくとしている。

《映画探偵団》40 つくばセンタービルを展望する

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イラストは筆者

【コラム・冠木新市】「今日、真に躍動している中心的存在は科学と政治である。アートと建築は端の方に追いやられ、あたかも余分なもののように感じられる」(世界的建築家・アレッサンドロ・メンディーニ)

世界的な建築写真家・二川幸夫が「つくばセンタービル」にほれ込み、完成から10年後に全40ページの写真集『GA69』(1993年刊)を出版した。18~19ページに見開きで、ノバホール側から見たセンター広場とホテルの全貌が写しだされている。そして、ページ真ん中の奥の方にポツンと小さな「展望塔」が見える。

中心市街地の松見公園に立つ高さ44.4メートルの展望塔は、菊竹清訓の設計で1976年6月1日に開設された。外観から地元では「栓抜き」と呼ばれていたが、展望塔という素っ気ない名称になり、40数年前のつくばの雰囲気をよく伝えている。

この塔に登ると、筑波山とつくばセンター地区が一望できる。不思議なのは、センター地区のセンタービルに視線が向いてしまうことだ。展望塔が出来てから7年後、1983年6月10日に完成した高さ44.85メートルのセンタービル。この2つは一直線でつながっている。同じ時期の6月に完成、ほぼ同じ高さ、素っ気ない名称から、設計者・磯崎新は展望塔をリスペクトして、センタービルを構成したことが理解できる。

『GA69』には、メンディーニが文を寄せている。「何世紀もの歴史が凝縮した未來主義的エジプトスタイルが、たった一つの広場の回りに集められて、建築史の百科事典的シンボルになっている。それは俯瞰(ふかん)的な広い視野の中で作り上げた『信念』のユートピアと言うべきもので、そのユートピアは、現代の不安定さと混沌から類型的、様式的、制度的に保証する限りなく権威ある流れに反するものである」。

市川崑監督『おはん』の2人で1人

私がつくば市に越してきたのは1993年。写真集刊行と同じ年である。センタービルと展望塔の間に、デパートの映画館、新刊書店、レンタルビデオ店、図書館、美術館、喫茶店、古民家、市民ギャラリー、プラネタリウムなどが集まっていて感激しきりだった。

なかでも、展望塔近くに何軒も連なる古本屋街には何度となく通ったものだ。この2つの建築を結ぶ空間は、歴史と未來の物語が輝くアートゾーンだと思った。いや今でも思っている。

センタービルが出来た翌年、『おはん』(市川崑監督)という映画が公開された。古道具屋の幸吉(石坂浩二)が、ほとんど自己主張しない女房おはん(吉永小百合)と嫌いになったのでもないのに別れ、上昇志向で気の強い芸者おかよ(大原麗子)と一緒になる。しかし、ふとした拍子におはんと寄りが戻り、ラストではおかよと暮らすことになる。一人の男性が二人の女性の間を行ったり来たりする話である。

どちらの女性を好むかは人によるが、市川監督は二人合わせて一人の女性として描いた。地味ながら渋い作品に仕上がっていた。センタービルと展望塔の間を歩くと2つの建築物が一体であると感じられ、この作品がよみがえってくる。

破壊されようとしている壁と階段

今、センタービル広場の一角が破壊されようとしている。ホテル側にエスカレーターを設置するために、階段を造り替えてしまうからだ。そのため、展望塔に向いた壁が取り壊される。だが、その壁には人間の目の形をしたデザインが施されてあるのだ。広場中心にある噴水を見るこの目の形が無惨にも壊されてしまう。

ほかにも、「広場窓ガラス全部の取り替えが決まっているよ」とある人が教えてくれた。初耳だった。オープンハウスの説明会では聞かなかったからだ。つくば市は予算が余り、使いみちに困っているのだろうか。無駄遣いをして文化財を改造するのはよした方がよい。

あと2年でセンタービルは40周年を迎えるが、『GA69』を携えてつくばを訪れる建築愛好家がいたら、あまりの改造ぶりを見て涙を浮かべるに違いない。展望塔は、つくば市役所と市議と科学と政治を優先する市民の行為をジッと見ている。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)