火曜日, 11月 11, 2025
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2台ピアノで奏でるオーケストラ 年明けのつくばリサイタルで実現

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中井恒仁&武田美和子デュオによる2台ピアノ演奏の様子=つくばリサイタルシリーズ提供

「2台ピアノで奏でるオーケストラ~名曲を旅する」をテーマに、第11回つくばリサイタルシリーズ(同シリーズ実行委員会主催)が来年1月23日、つくばカピオホール(つくば市竹園)で開かれる。筑波大学の有志学生が「つくばの地で市民や学生に気軽にクラシックを楽しんでもらいたい」と毎年開催している公演。今回は、国内外で活躍する中井恒仁&武田美和子ピアノ・デュオを迎え、ピアノで奏でるオーケストラの名曲を聴く。

実行委員会の佐藤祐人さん(筑波大人文学類2年)によれば、「一流の演奏を一般1000円、学生無料という手頃さで堪能できるのは、つくばリサイタルシリーズならでは。普段あまりコンサートになじみのない学生にも、気軽に足を運んでほしい」という。

今回はピアノが主役で、管弦楽を中心的に扱ってきたリサイタルシリーズ10年の歩みにとっても新鮮な公演となる。国内外問わずその深く誠実な音楽性で高い評価を得るピアニスト夫妻、中井恒仁・武田美和子の連弾と二重奏が彩る。「中井さんと武田さんは日本のピアノデュオ界をけん引し続けている演奏家。プログラムにはベートーベン『歓喜の歌』をはじめ世界中で広く親しまれている名曲を取り揃えており、クラシック初心者から通な人まで楽しめるコンサートになっている」と佐藤さん。

実行委員会の岩永彩花さん(同 比較文化学類3年)は「前回の公演が終わってから、ピアノが主役のコンサートをやってみたいという声があがっていた。ピアノを自ら演奏する実行委員もいる。多くの人にとって身近な楽器であり、関心が強かった」と話す。「通常はピアノが1台のカピオに、さらに東京から1台持ってくる。カピオホールでピアノが2台というのは迫力の舞台になるはず。その響きをぜひ実際に体験してほしい」。

今回のテーマは「旅」。「プログラムの曲は、ウィーン、プラハ、パリなどヨーロッパの由緒ある美しい都市を彷彿(ほうふつ)させる。演奏を聴きながらまるでヨーロッパを旅している気持ちになれるはず。コロナ禍でなかなか旅行に行けないが、コンサートで晴れやかな気分になってもらえたらうれしい」と岩永さん。(山口和紀)

◆中井恒仁&武田美和子ピアノ・デュオ(第11回つくばリサイタルシリーズ) 2022年1月23日(日)午後2時開演。プログラムは、連弾でJ. シュトラウスII世「美しく青きドナウ」ほか、2台ピアノでベートーベン「歓喜の歌」(交響曲第9番第4楽章)ほか。チケットは一般1000円、学生無料。未就学児入場不可。チケットの予約はこちら。つくばリサイタルシリーズ公式ブログはこちら

ブラタモリで紹介された地質標本館《遊民通信》31

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地質標本館の立体地質図

【コラム・田口哲郎】

前略

つくば市東に産業技術総合研究所(産総研)があり、その敷地内に地質標本館があります。先日、NHKでブラタモリの「つくば」編が放映され、国土地理院とともに紹介されていました。地質標本館は産総研・地質調査総合センターの中の一組織です。1882(明治15)年に設立された、初の国立研究所である地質調査所を前身としています。地質にかかわる研究を行い、地質図を作成し、国民の利用に供することが使命だそうです。

ブラタモリでは、ボーリング調査(長い筒で地面を掘り地盤を調べる)で筒の中に残るコア資料の収蔵庫、地質資料調整グループなどが紹介されていました。地質資料調整グループには岩石を30ミクロンという厚さの薄片にまで削る技術があり、これであのゴツゴツした岩石の成分を顕微鏡で見ることができるようになります。

地質標本館の使命は日本の地下の地質を調べること。全国各地から採取された岩石の成分を調べられることは、発信する地質情報の証拠を取ることになります。薄片を作るという地道な作業は、標本館、ひいては産総研の研究を支える中核事業なんですね。

地質の研究者が全国の山や谷を、道なき道を分け入り、苦労して採取してきた岩石を、高度な技術で薄くして、調べて地質図にする。その成果が立体地質図として展示されています。日本列島の立体模型にプロジェクションマッピングで、様々な地質情報を映します。これは圧巻ですし、一見に値すると思います。

博物館は収集好きのあこがれ

さて、ブラタモリでは紹介されていませんでしたが、私が心ひかれた展示は岩石・鉱物・化石の分類展示です。美しく珍しい石から、火山活動でできた灰色の岩、そして古代生物の化石がずらりと並べられています。

パワーストーンでおなじみの水晶やアメジストなどの大きな原石や、私たちが住む大地をつくり上げている岩石があり、アンモナイトやナウマンゾウの歯の化石があります。あらゆる石には標本館が保証するプロフィールがきちんとつけられているのです。たくさんの石に囲まれて、私はなんともいえない幸福感に包まれました。

博物館の第一の役目は資料の収集と保存です。最近、博物館は魅力的な企画展、イベントでしっかりアピールして、来館者数を増やすことが求められているそうです。来館者にとっては楽しみが増えて学べるのでよいと思います。でも、モノを集めてめでるというオーソドックスな使命もやはり博物館の醍醐味(だいごみ)だと思うのです。

私は文学研究をしていますが、本を集めるのが好きです。読み切れない本が部屋に積み上がり、机は本に埋もれそうです。読書よりも買書だねとからかわれます。でも、好きなものに囲まれる幸せは何にもかえがたいです。断捨離(だんしゃり)もよいですが、モノにあふれた空間が妙に落ち着く人間もいます。博物館はそういう意味で収集家の憧れの場所でもあります。ごきげんよう。

草々(散歩好きの文明批評家)

現金10万円を年内一括給付に変更 つくば、土浦市

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つくば市役所(左)と土浦市役所

18歳以下の子供に1人当たり10万円相当を給付する国の子育て世帯臨時特別給付金について、つくば、土浦市はいずれも現金10万円を年内に一括給付する方針に変更した。つくば市は24日、土浦市は23日に振り込む。県内では44市町村のうち、つくば、土浦市を含む29市町村が現金10万円を年内に一括給付するという。

両市とも当初は、年内に現金5万円、年明けに残り5万円を、児童手当を受給している中学生までの世帯などに給付する予定だった。手続きを早め、年内一括給付で間に合わせた。

つくば市は12月議会最終日の22日、本会議に追加予算を提案し、一括給付に変更することを決めた。24日に対象となる世帯に振り込む。5万円を先行給付する通知を14日に発送していたが、一括給付に変更する通知を24日に改めて送付する。

一方、児童手当給付対象外の高校生のみの世帯などに対しては、来年1月4日に申請書を発送し、申請書類が届き次第、所得制限などを審査した上で、1月下旬から現金10万円を一括で給付する。

給付対象となるつくば市の18歳以下の子供は約2万5000世帯の約4万人で、給付総額は約39億7800万円となる。

土浦市はあす23日、対象となる児童手当受給世帯などに現金10万円を一括で振り込む。給付金額を10万円に変更する通知はきょう22日発送した。

一方、児童手当給付対象外の高校生のみの世帯などに対しては、来年1月4日に申請書を送付する。申請書は市ホームページでもダウンロードできるようにして4日から申請を受け付け、所得制限などを審査した上で1月中旬ごろから現金10万円の一括給付を開始する。

給付対象となる土浦市の18歳以下の子供は約1万3000世帯の約2万1000人で、同市の給付総額は約21億円になる。

人口減の土浦に夢と元気は如何にして《土着通信部》48

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暮色の土浦市

【コラム・相澤冬樹】土浦市の「広報つちうら」12月15日号は、かすみがうらマラソン兼国際ブラインドマラソンの来年4月17日開催決定について、フロントページで大々的に報じていた。NEWSつくばには記事がなかったなあ、などと思いながら、ページをめくっていると、「パブリックコメントを実施します」とある一覧表に目が留まった。

3本の計画案について、市民(市内在住・在勤・在学者)の意見も求めるものだが、2本目に「第9次土浦市総合計画について」(案)があがっていて、これは見逃しちゃいけないと思った。総合計画は将来のまちづくりの指針で、22年度から5年間の市政運営の基本方針となる。表には担当は政策企画課、コメントの提出期限は16日から1月12日までとあったが、情報はそれだけともいえ、マラソンの参加者募集に比べたら素っ気ない。

実は、同課には約ひと月前、メールによる問い合わせをしたばかりだ。2020年に行われた国勢調査の結果概要が11月30日に公表され、同市の人口は14万2074人で、前回調査(2015年)から1270人(0.9%)の増加に転じていたのが気になった。増加理由の分析と「下げ止まったと見られるか」を質問した。

回答は、増加傾向に転じた要因として「外国人の技能実習生や留学生等の増加、土浦駅周辺への転入者の増加、土浦協同病院の移転に伴う、おおつ野地区における医療従事者や看護学生等の転入者の増加、宅地造成が市内の複数箇所で進み、分譲が開始されたことによる転入者の増加、老人福祉施設が増設されたことによる入居者の増加」などをあげた。

しかし、「常住人口は、2000年をピークに減少に転じており、住民基本台帳人口においても緩やかな減少が続いていることから、今回の国勢調査の結果をもって、少子高齢化の進行による人口減少に歯止めがかかったとは受け止めておりません」との回答だった。なるほど、市の常住人口は12月1日現在13万7802人、すでに14万人を割り込んでいる。

パブコメ募集中 年を越す課題

で、総合計画である。人口の見通しこそは、計画の根幹をなす。パブコメ向けに市のホームページにアップされている「計画(案)」をのぞくと、人口動態を事細かに分析している統計データを見ることができる。それらから、総合計画の将来目標人口(2031年)は12万8000人とはじき出されていた。

第9次総合計画は「夢のある、元気のある土浦」を将来像に掲げる。しかし、右肩上がりの人口増を見込めないなかで、地域経済やコミュニティー活動に夢や元気が易々と出現するわけもない。実際「人口の社会移動の推移をみると、特に、20歳代後半から30歳代といった若い世代において転出超過の傾向が顕著な状況が継続」しているのが現状といえる。

計画(案)を読み進めていくと、人口の量的拡大が難しいなかで、質的な拡張を意図していることがうかがえる。市外からの来訪者である「交流人口」、さらに地域や地域の人々と多様に関わる「関係人口」を拡大させる必要がある-と説いたりしている。マラソン大会の人集めは大事なのだ。

計画(案)は4つのリーディングプロジェクトを示し、数字をあげて成果指標を示し、具体的な取り組みを書き込んでいる。ただし、読みこなすにはマラソンランナー並みの持久力がいりそうだ。そのうえで、12日までにパブコメ提出するとなると、正月休みはほぼ返上だ。若年人口には取り組めそうにない、年を越す課題である。(ブロガー)

私立幼稚園のおかず代補助申請案内を53人に誤送付 つくば市

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つくば市役所

つくば市は20日、私立幼稚園に通う園児のおかず代を補助する申請案内を、給付対象とならない53人に送ってしまったと発表した。

市幼児保育課によると、16日に通知を出した際、名簿の対象者の抽出を誤ってしまったことが原因という。

おかず代補助(副食費の補足給付事業)は、私立保育園に通う、世帯年収360万円未満相当の世帯と、第3子以降の子供が対象で、ごはんやパンなどの主食を除いた、おかずやおやつ、牛乳などの副食の食材費を月額4500円分まで補助する制度。

同市では本来、幼保連携型など子ども・子育て支援新制度に対し未移行の、市内の私立幼稚園5園などに通う園児327人が対象になる。

20日、通知を受け取った利用者から問い合わせがあり、対象とならない認可外保育施設や対象外の私立幼稚園の利用者に送付していたことが分かった。

市は21日付で、誤って送付してしまった53人に謝罪の通知を出すとしている。

さらに再発防止策として、通知の発送時にチェックシートを作成し、複数の職員で発送内容の確認を徹底するとしている。

【訂正】22日、記事中「副食の食材費4500万円」は4500円の誤りです。訂正します。

「ありがとうの1年でした」 コロナ禍、食材無料配布続けた冨山香織さん つくば

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食材を手渡す学生応援プロジェクト@つくばPEACEの冨山香織代表(左)=19日.つくば市天久保、松見公園

コロナ禍、アルバイトが減った学生やひとり親家庭などに食材の無料配布を続けてきたつくば市の市民団体「学生応援プロジェクト@つくばPEACE」の活動が12月で1年を迎えた。冨山香織代表(40)にインタビューし、1年間で何が見えてきたのか聞いた。

―つくばPEACEの発足のきっかけは何ですか。

冨山 私自身が筑波大近くで飲食店を経営していて、困窮している学生を目の当たりにして、何かやってあげられることはないかと思い、知人や友人に声を掛けたのが始まりです。コロナ禍でバイトがなくなってしまった人や仕送りがなくなったという声も行動を起こすきっかけとなりました。

―1年経った感想はいかがですか。

冨山 初めはこんなに続くと思っていませんでした。この活動が続くということはそれだけ困窮している学生がいるということでもあり、素直に喜ぶことはできませんが、カンパをくれたり野菜を届けてくれる支援者がいてこそ活動が続けられたので、とても感謝しています。配布を受ける学生の人数に波はあったものの、頼れる場所になることができてよかったと思います。支援者の皆さんには本当に感謝しかありません。しかし、支援物資の提供を頼んだ時に「大学生ってそんなに生活に困ってないでしょ」と、困窮している大学生がいるという実情を知らない人もいました。一方でカンパを寄せてくれた人から、顔も知らないのに「活動応援しています。がんばって」という励ましのメールをもらったこともありました。支援する立場であるはずが、逆に励まされることもたくさんありました。

―1年を通して印象に残った出来事は何ですか。

冨山 ある学生に食材配布を行ったらお礼のメールが来て、その学生はもらったものをすべて実家に送っていることを知ったことです。実家には幼い弟と身体的に不自由な母がいて、その学生は自分のことよりも弟と母親を優先させていることに涙が出てきてしまいました。その状況に胸が痛くなりました。その学生は、自分に時間があったら手伝いたいとも言ってくれました。自分自身が生きるのに精一杯なのに。心からの優しさを感じ、私自身も視野が広がりました。

―活動を通して周囲にどんな変化がありましたか。

冨山 私たちの活動がSNSや口コミで地域に知れ渡り、支援してくれる人が増えました。私自身も今まではカンパを集めることに必死でしたが、今では少し心の余裕ができました。また、利用者が増加し、延べ3200人になりました。リピーターも多いです。

―活動を通してうれしかったことは何ですか。

冨山 学生たちが笑顔で(食材を)持って帰ってくれること。顔を合わせて直接話せることもうれしいです。この活動を通して地域住民や大学生、農家の方や企業などとも関わることができました。また、今年5月ごろから学生スタッフが増えました。スタッフになってくれた学生は、最初は自分が支援される立場として配布会に来て、「何かお手伝いできることはありませんか」と自ら声を掛けてくれた人たちです。一緒にダイコンを配ったこともありました。懐かしい。いろいろな人と出会うことができました。

―ほかに印象に残ったエピソードがあれば教えてください。

冨山 支援者の中には10万円を匿名で持ってきてくれた人がいました。その方は名前こそ教えてくれませんでしたが、「前からこの活動を気にかけていました。支援のきっかけを作ってくれてありがとう」とおっしゃった。またメディアに載ったことで今年1月と2月にカンパが増えました。配った食材でつくった料理をSNSでアップして報告してくれた学生もいました。そんなツイートを見かけるとうれしくなります。スタッフも10代から70代まで本当に幅広い人たちに支えてもらいました。一年間走り続けてきて、支援者とスタッフには感謝しきれません。たくさんのありがとうをもらいました。

―今後について聞かせてください。

冨山 これからも学生支援を引き続き実施できるよう努力していきたいと思います。皆さまのご支援、よろしくお願いします。本当にありがとうございます。

聞き手・武田唯希

つくバスが接触 つくばセンターの風よけ強化ガラス落下

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つくば市役所

つくば市は20日、同市吾妻、つくば駅前のつくばセンターバスローターリーで18日午後7時15分ごろ、市が運行するコミュニティバス「つくバス」が、バス乗り場の風よけスクリーンの支柱に接触し、強化ガラス3枚が車道側のロータリーに落下したと発表した。けが人はおらず、バスの運行時間の遅れもなかったという。

市総合交通政策課によると、強化ガラスは3枚が重なっており、1枚当たりの大きさは縦97センチ、横162センチ。重さは不明。いずれもガラスは割れなかった。

接触事故を起こしたのは、つくばセンター発筑波山口行きの北部シャトルで、つくばセンター3番乗り場に停車する際、乗り場に寄り過ぎてしまい、バスのサイドミラーが接触してしまったという。

市は運行を委託している関東鉄道に対し、安全運行の徹底と再発防止を指示した。一方、風よけ強化ガラスの修復がいつ行われるかは20日時点で未定としている。

総合運動公園問題 つくば市政の重荷《吾妻カガミ》122

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つくば市役所正面玄関サイド

【コラム・坂本栄】今年もいろいろなことを取り上げてきました。最終回はつくば市の総合運動公園用地跡処理問題を話題にします。五十嵐さんを市長に押し上げる強力なテコになった運動公園問題。今では五十嵐市政迷走のシンボルになっています。因果な話です。

用途限定・一括・民間売却

市長5年目の五十嵐さん、このほど用地跡処理の最終案(?)をまとめました、市民の反応を踏まえ、この案に沿った形で「GO !」を出したいようです。その概要と意見聴取の手続きについては、記事「…運動公園用地を一括民間売却へ … 防災拠点は大幅縮小」(11月11日掲載)、同「売却の目安は68億5000万円…」(12月1日掲載)をご覧ください。

ポイントは、事業提案による土地の利用を「工業団地」「物流倉庫」など4分野に絞り、民間にまとめて売却し、敷地内に防災倉庫と防災広場をつくってもらい、それを市が借り上げる―というものです。入札に際しては、用地取得額+借入金利息=68.5億円を念頭に置いてほしいと言っています。

この処理案については様々な声が聞こえてきます。市が保有し続けてスポーツ施設などに活用すべきだ、学園都市らしく研究機関用に残すべきだ―など民間売却に反対する意見。工業団地や物流倉庫は周囲の雰囲気になじまない―など利用形態への異議。市は売り払って財政難対策の足しにしたいと言っているが本当か―など売却の理屈に対する疑問。

反対、異議、疑問はありますが、この「用途限定・一括・民間売却+賃借防災倉庫」案は五十嵐さんの勝負玉と言えるでしょう。

「成功」に潜む「不調」のタネ

五十嵐さんは運動公園問題を上手に利用しました。前市長が立てた計画(UR都市再生機構から買った土地に陸上競技場+総合体育館+サッカー・ラグビー場を整備)に反対する市民運動を盛り上げ、住民投票で計画を葬ったこと。そして、「運動公園問題の完全解決」を目玉公約に掲げ、市長選挙で勝利したこと。大成功です。

ところが、市長就任後は問題解決に苦労しています。主公約の柱「用地返還交渉」は不調に。その後「民間売却」案を示したものの、価格面で市民に反対され頓挫(とんざ)。代わりにまとめた「3分の1・市有防災施設+3分の2・民間売却」も引っ込め、現案を公表。大不調・迷走です。どうしてこんなことになったのでしょうか?

成功の中に不調・迷走のタネが潜んでいたからです。前市長の運動公園計画を撤回に追い込んだことで、自前の計画に陸上競技場などを組み込むのが政治的に難しくなりました。結果、用地利用の選択肢が狭められ、民間売却案の周りをグルグル回っています。成功の高揚感からか、「用地返還」を主公約にしたものの、売買契約上無理とわかり、対UR交渉は失敗に終わりました。結果、公約の信頼性が失われました。(経済ジャーナリスト)

<参考> 総合運動公園用地問題・市民説明会(12月10日、同12日)全記録

毎月開催し1年 筑波大生ら延べ3200人利用 食材無料提供

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19日催された松見公園での配布会で食材配布を手伝う留学生(左)

コロナ禍でアルバイトが減った学生を支援しようと、つくば市天久保の松見公園で開かれている食材無料提供会が12月で1年を迎えた。市民団体「学生応援プロジェクト@つくばPEACE」(冨山香織代表)が昨年12月から毎月欠かさず、無料でコメや野菜、日用品を配布してきた。1年間で筑波大生ら延べ約3200人が利用した。

「まだ助け必要としている」

19日、松見公園で開かれた食材提供会は約200人が利用した。事前にSNSで募集した配布の予約は開始から3時間弱ですべて埋まった。冨山代表は「学生たちはまだまだ助けを必要としている」と語る。一方で「コロナ禍ということもあり(事前予約制という)制限を掛けざるをえないのは心苦しい」ともいう。

配布会では毎回、利用者にアンケートをとり結果をまとめて、A4判裏表のニュースを作成し、カンパを寄せてくれた支援者に報告している。

10月31日に行ったアンケート調査では、行政に望むことは何かという質問に対し66.7%が「現金給付」と回答した。ほかにも、「学費の引き下げ」(50%)、「給付型の奨学金」(44.1%)、「最低賃金の引き上げ」(32.8%)などと答えている。

助け合いの輪広がる

冨山代表が知人に声を掛けて始めたプロジェクトだが、現在では学生スタッフ15人が新たに加わり、10代から70代と幅広い市民が配布を手伝っている。

SNSのフォロワーも現在約1200人まで増え、支援者の輪が広がりつつある。10月には、茨城大学農学部から新米1.2トンの支援があった。

配布会会場の地面に矢印で方向を示し、人の流れを一方向にしている

19日、配布会に来た、筑波大大学院1年の土田隼久さん(23)は「持ちきれないくらいたくさんもらえた。毎月の食料配布はひじょうにありがたい。支援してもらえた分、将来自分が社会貢献をして還元したい」と話した。

中国人留学生で筑波学院大経営情報学部の王丹晨さん(23)は「友達から今回の配布会があることを教えてもらった。サツマイモなどの野菜をもらうことができてとてもうれしい。コロナのため、3年半国に帰ることができていないが、友達や周りの人に支えてもらっている。このような配布は本当にうれしい」と笑った。

19日の配布会では「私もこのプロジェクトに関わりたい」と声を掛けてきた学生もいた。学生スタッフの多くは、もともと配布会に来て食材を受け取っていた。共助の輪は少しづつ広がっている。(武田唯希)

季節感じる工作体験をプロデュース つくば スタジオ’Sで「キッズアートおうえん展」

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「2021冬のキッズアートおうえん展」の展示風景=つくば市二の宮のスタジオ'S

子供たちに楽しいアート体験を提供する「2021冬のキッズアートおうえん展」が26日まで、つくば市二の宮のスタジオ’Sで開催されている。関彰商事と筑波大学の連携による芸術活動「スタジオ’S with T」の企画だ。今年は展覧会形式で、筑波大生が考案した自由工作の完成品と、その作り方を動画やパネルで一緒に紹介している。昨年の冬はオンラインでの開催だった。

筑波大学で芸術を学ぶ学生たちの協力により、毎年開催している。展示は6ブースで、今回は投票箱が置かれ、気に入った作品に投票して応援できる。内容はクリスマスのリースやとんがりハット、毛糸のコースターなど季節感あふれるものが多い。

展示の一つ「クリスマスリースをつくろう!」。右のタブレットで作る方を紹介している

お正月向けの「書き初めでカレンダーを作ろう!」は、台紙の下半分がカレンダーになっていて、身近な場所などに飾って1年間楽しむことができる。

館内の飾り付けも、天井や壁の星型のペーパークラフトや、正面奥の大きなクリスマスツリーが、クリスマスの気分を盛り上げている。ツリーに飾られた写真入りのオーナメントカードも自由工作の一つ。24日にはキットのプレゼント(なくなり次第終了)と、カードに入れる写真の撮影サービスもある。

ツリーの隣にあるメッセージカードのコーナーでは「今年あったハッピーなできごと」を書き込んで壁に貼り、1年を振り返ってみるのもいい。土浦市から来た青山杏奈さん(小4)と咲良さん(4歳)の姉妹も、カードを書くのを楽しんでいた。杏奈さんが一番気に入った工作は「かわいいきのこを作ろう」。理由は「図工の授業で、粘土の作品づくりをするときに参考になりそうだから」とのこと。

手書きのメッセージカードが完成し記念写真を撮る

期間中の土・日曜日に、工作の制作キットを日替わりでプレゼントする。キットには説明書と共に、粘土や絵の具といった主要な材料も入っているので、家にあるはさみやのりなどの道具を使い、すぐに工作に取りかかることができる。各キットとも先着15人限定。配布日はスタジオ’Sのホームページか、フェイスブックを参照。(池田充雄)

◆2021冬のキッズアートおうえん展は18日(土)~26日(日)、つくば市二の宮1-23-6、関彰商事つくば本社内スタジオ’Sで。開館時間は午前10時~午後5時、入場無料。

相手を理解するとは?《続・気軽にSOS》99

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【コラム・浅井和幸】「相手を理解する」とは優しく思いやりを持って接することですから、敵や嫌いな相手は理解なんてしたくないものですよね。当たり前のことのようですが、それは必ずしも正しいことではないようです。

理解するという言葉には、「正しく分かる」という意味と「思いやる」という意味があります。「敵を知り、己を知れば、百戦してあやうからず」という孫子の言葉があります。孫子とは中国の春秋時代の武将です。当時の戦争で、相手に負けない方法としての教えであり、現代においてビジネスの場で好まれている考え方です。

この「知る」は、「理解する」と言葉を変えてもよいでしょう。命も取られかねない戦争の相手に、思いやりを持って対応しようということではありません。敵にやさしく接していこうという教えではありません。相手の性質を正確に知ることにより、さらに自分の性質を正確に知ることにより、負ける危険がないということです。

友人Aと私の会話

A「嫌な上司がいて困っているんだ。何とかうまい対応の仕方はないかな?」

浅井「どんな上司なの?」

A「自分では新しいアイデアを出せないくせに、人が出した案に対して、重要じゃない小さな部分をネチネチと指摘してくるんだよ」

浅井「それは嫌だねぇ」

A「そうだろ? なんで、あんなつまらない指摘をするんだろうね?」

浅井「ま、物事の優先順位が分からないからだろうね。分からないなりに、良くしようとか、指摘できるところを見せて、自分をよく見せようとしてるんじゃないかな」

A「いやいや、そんな生易しいものじゃなくて、本当に嫌な奴なんだよ」

浅井「そうなんだ」

A「だって、機嫌が悪いときは、怒鳴ったりするやつなんだよ。いい大人が、どうして怒鳴ったりするんだろうか?」

浅井「きっと、キャパシティが小さくて、何か別でもストレスがあるんだろうね。もしかしたら、その上司も別の人から怒鳴られているかもね」

A「は? なんで浅井は、そんなつまらない上司をかばうんだ? 俺の方が悪者だと言いたいのか?」

浅井「いやいや、かばってないし、そもそも善悪の判断をしようとは思っていないよ。むしろ、今の嫌な状況を変えるためには、その上司の性質を理解した方が対応しやすいと思うよ」

A「ふざけるな。そんな上司に対応する必要もないし、悪い奴を理解する必要なんてない。そんな上司の肩を持つような奴とは話しているだけ無駄だ」

自分は悪くない、相手が悪い

問題を解決するときは、嫌な相手を理解し、自分の見たくない部分も理解することは大切なことだと思います。ま、この会話は、問題解決をするという共通認識がないままに進んだ会話であって、問題解決する前に、悪者が誰で善人が誰で、敵が誰か、味方が誰かをはっきりさせることが必要だということになります。

日常では、「問題解決」よりも、「自分は悪くない、相手が悪い」と同感する方が何倍も重要であるという場面は多いものです。(精神保健福祉士)

水素燃料電池バスでPCR検査 筑波大、市と実証実験

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水素燃料電池バス「SORA」の外部給電口を示す鈴木広道教授=つくば市役所駐車場

災害などで電源を失った場所でも、高精度の感染症検査を可能にするシステムを開発中の筑波大学(つくば市天王台)が、同市のPCR検査会場で実証実験を行った。17日までの3日間、市独自のPCR検査が行われた会場に水素燃料電池バスを持ち込み、装置の稼働状況、検査から通知までの所要時間を調べるなどした。

検査会場の市役所本庁舎駐車場に持ちこまれたのは、トヨタ自動車の燃料電池バス「SORA(ソラ)」をベースに車内を改装した車体(11月18日付)。医学医療系感染症内科学の鈴木広道教授、システム情報系の鈴木健嗣教授らが、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラムにより開発している。車内にはPCR検査に使う全自動の遺伝子解析装置や核酸抽出装置などが設置されている。今回大学と市が協力し、PCR検査希望者の協力を得て実証実験を行った。

つくば市では新型コロナ感染拡大の第6波に備え、10月から無症状の市民や市内在勤・在学者を対象にPCR検査を行っている。15日は45人、16日には54人が実験への協力に同意した。受付で検査キットを受け取り、検体として唾液を採取。キットは「SORA」の車内に持ち込まれて検査された。検査結果はQRコードを読み込み、識別情報を入力するとメールで通知されるシステムを想定しており、16日までの集計では、受付から検査結果が返ってくるまで最短48分、中央値は53分だったという。

PCR検査の様子

鈴木広道教授は「いつでもどんな場所でも同じ質の検査を提供できることを目指す。現場によって状況や人の流れも異なるため、不具合が起きないかどうかを検証している。少しでも早く検査結果が分かるよう検査受付から結果通知まで常に60分を切ることが目標」と話す。検査自体の時間はこれ以上短縮することが難しいため、今後は通知システムの改良を重ねていく考えだ。

年を越し足を延ばす実証実験

17日には市の公用車である水素燃料電池自動車「MIRAI(ミライ)」を「SORA」にケーブルでつなぎ、電力を供給した。車内で行うPCR検査に必要な電気は「SORA」だけでまかなえるが、「MIRAI」をつないで電力供給することによりさらに遠隔地に出向くことが可能になるそう。

来年1月からは狭い場所を行き来できるマイクロバスの検査車も導入し、大型バスと2台で県央や県北、鹿行地域に赴いての実証実験を予定している。2月から3月には大学内外のイベントで無料のPCR検査を行い、社会実装に向けて調整を続けていく。

緊急時、災害時の感染症対策は地域の課題解決につながるとして、市は今後も筑波大に実証実験の場の提供を行っていく予定だという。(田中めぐみ)

大好きな霞ケ浦のあれこれ① 《夢実行人》3

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霞ケ浦の日の出

【コラム・秋元昭臣】霞ケ浦は茨城県南東部に位置し、その先端が利根川に流れ込む、日本第2の面積の淡水湖です。西に土浦・高浜を持つ「西浦」、北に鉾田を持つ「北浦」、それに「常陸利根川」などを併せた総称ですが、一般的には「西浦」を霞ケ浦と呼んでいます。

その管理は、利根川の一部として「国交省関東地方整備局霞ケ浦河川事務所」が行っています。日本1の琵琶湖は国交大臣の委託を受けて滋賀県知事が管理しています。

昔は東京湾の一部で、「流れ海」と言われた時代もあります。海からの塩害防止の「河口堰(かこうぜき)」ができるまでは、汽水湖でした。銚子とは3時間遅れで潮の満ち干の影響があり、シジミや海の魚も獲れました。

そのころは水質もきれいで、湖岸には砂浜や13カ所の「湖水浴場」あり、学校の授業でも使われていました。小魚が泳ぐ姿を見て、子供ながら工夫して釣りを楽しんだものです。大きな黒いタンカイ(淡水域にすむ中型の貝)を足でほじくって遊びましたが、この貝が「貝ボタン」になっていたとは知りませんでした。

湖の干拓:霞ケ浦10%、八郎潟80

昔、霞ケ浦の広さは2位ではなく3位でした。では、2位はどこだったのでしょう。秋田県の八郎潟です。しかし、1956年から1977年にかけ、その80%が干拓事業によって農地になり、現在は18位です。

戦後の食料不足を補う干拓で、霞ケ浦唯一の島だった「浮島」も、本新島干拓(1942~1956年)によって陸につながりました。このように、10%もの水面が干拓されて農地になったものの、霞ケ浦の現在の広さは2位です。ちなみに、3位は北海道のサロマ湖、4位は福島県の猪苗代湖です。

霞ケ浦の流域人口と面積は、茨城県の約3分の1を占めています。琵琶湖の流域面積は滋賀県の79%、流域人口は12%です。

アオコが猛威を振るって湖面が緑色になり、腐敗臭が出たのは1974年ごろで、50年も前になります。最近10年の水質の指標「透明度」(30センチの白い円盤を沈めて見えなくなる深さ)は 50~90センチと、泳げたころの100~150センチには届きませんが、湖心では100センチも珍しくなくなっています。

今欲しいのが砂浜です。国交省では「里浜」造りを進めていますので、霞ケ浦が昔に戻りつつあることはうれしいことです。(元ラクスマリーナ専務)

別人の住民票コードを誤登録 つくば市

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つくば市役所

つくば市は17日、6年前に海外から転入してきた外国人の住民登録をした際、誤って、他県で住民登録されている別の外国人の住民票コード(住民基本台帳に記録される無作為の11桁の数字)を登録してしまったことが分かったと発表した。

市市民窓口課によると、2015年7月に海外から初来日しつくば市に転入してきた外国人の住民登録をした際、すでに他県で住民登録されていた別の外国人と氏名、生年月日、国籍、性別がすべて同じだったことから、他県から転居してきたと思い込み、他県の別人の住民票コードを誤って登録してしまったという。

他県の外国人が今年10月、マイナンバーカードの交付を申請したことがきっかけで誤りが判明した。他県の外国人のマイナンバーカードがつくば市に届いた一方、他県の外国人にはカードが届かなかったことから、カードを発行する機関から照会があり分かった。

6年前に市が住民登録をした際、本人に直接聞き取りをするが、日本語があまりしゃべれず、当時の担当者の確認が十分でなかったとみられるという。

市は、誤登録があった2人の外国人にそれぞれ事情を説明して謝罪し、市内に住民登録した外国人の住民票コードを訂正した。

再発防止策として市は、外国人の届け出を受ける際は、通訳用のタブレットを使用したり、外国語に堪能な職員が対応するなど窓口での本人の聞き取りを正確に行い、届け出内容の確認を徹底して再発防止に努めるとしている。

誤登録による個人情報の流出などはないとしている。

まちづくり会社3億円調達にメド つくばセンタービル オフィス改修継続へ

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特別委員会で報告する内山博文社長(中央)

つくば市が出資するまちづくり会社、つくばまちなかデザイン(同市吾妻、内山博文社長)の資金調達問題(10月16日付)で、内山社長は17日開かれた市議会中心市街地まちづくり調査特別委員会(ヘイズ・ジョン委員長)に出席し、前日の16日にファンド(投資信託)から資金調達の承認を受けることができ、3億1600万円を調達できると報告した。

同社は10月に、つくばセンタービル1階内部のアイアイモール解体工事を始めた。一方、貸しオフィスに改修する工事費用は10月時点でまだ調達できておらず、「資金調達ができない限り、改修工事に着手しない」としていた。16日に調達できたことから工事を継続して改修を実施する。

内山社長の議会での説明によると、国交省の「老朽ストック活用リノベーション推進型まちづくり事業」を活用し、政府系金融機関の民間都市開発推進機構(民都機構)が約2億円、地域金融機関の常陽銀行が約1億円を出資して、投資事業有限責任組合という形態のファンドを設立する。ファンドは、まちなかデザインが発行予定の3億1600万円の劣後社債を引き受ける。NECキャピタルソリューションの100%出資会社、オハナパナ(OHANAPANA、東京都港区)がファンドを運営する。

年利3%の社債で、まちなかデザインは10年間で返済する。10年目の2031年は未返済の残り1億4600万円を借り換えて、32年以降は約3000万円ずつをさらに4年間で返済していくという。

市内の飲食店などと協働運営

一方、改修後の貸しオフィスなど「働く人を支援する場」は来年4月オープン予定で、運営について、カフェは飲食店「フィンラガン」(つくば市天久保、松島壮志さん経営)、子連れワーキングスペースはNPO子連れスタイル推進協会(同市梅園、光畑由佳代表)とそれぞれ協働運営するほか、コワーキングスペースでのイベントは、市内で同様の施設を運営するしびっくぱわー(同市天久保、堀下恭平社長)と協働運営するとした。(鈴木宏子)

エスカレーター取り止め つくばセンタービル 改修計画を大幅見直し

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エスカレーターの設置が取り止めになったセンター広場西側。すぐ脇にエレベーター (右)が設置されている

専門家や市民団体から見直しを求める要望が出ていた、つくば市によるつくばセンタービル(同市吾妻)の改修計画について、市は17日開かれた市議会中心市街地まちづくり調査特別委員会(ヘイズ・ジョン委員長)で、エスカレーターの設置を取り止めるなど当初の改修計画を大幅に見直すことを明らかにした。

建築デザイン残す形に

見直し計画は、エスカレーターの設置を取り止めるほか、センター広場を囲む外壁、ノバホールと小ホールの間の1階大通路、ノバホール西側の外階段をいずれも取り壊さず、現在の建築デザインをそのまま残す。センター広場の床にテントを固定する床穴を開ける計画も取り止める。

今回の見直しについて五十嵐立青市長は「市民、(市議会)特別委員会、利用者からの意見を反映し、意匠にさらなる配慮をした」などと話した。

つくばセンタービルは、プリツカー賞を受賞した磯崎新さんが設計したポストモダン建築の代表作だと世界的に評価されていることから、建築意匠が専門の筑波大学、鵜沢隆名誉教授の見解をもとに、市民団体「つくばセンター研究会」(冠木新市代表)が、五十嵐市長や小久保貴史市議会議長に対し、計画の見直しを求める要望書を2度、提出していた。

メタリックな正方形のアルミ板とガラス窓などが残されることが決まったつくばセンター広場の外壁。タープの床穴も空けられないことになった

さらに市が10月1日から31日まで市ホームページで実施した意見募集では、エスカレーターについて意見を出した17人中、15人がエスカレーターの設置は必要ないなどの意見を出していた。

市議からは「そもそも市民説明会を最初からやっていればそんなことはなかった。見直し案ではなく、やり直し案。エスカレーター2基とも無くなるような計画は行政としてあり得ない」(飯岡宏之市議)、「基本設計をやる前に市民意見を聴取していなければならなかった。大きな誤りだったと感じている」(山中真弓市議)など厳しい意見が出た。

価値喪失など懸念する指摘受け

西側(旧ライトオンビル側)に設置予定だったエスカレーターを取り止める理由について市は、意匠への配慮、費用対効果などのほか、市民窓口を当初予定のつくばセンタービル1階から隣接のBiViつくば2階交流サロンに移すため、エスカレーターの利用者が減るなどとした。エスカレーターについては、2基の計画のうち北側の1基を今年6月、議会の意向を受けて市が設置を取り止めた。今回取り止めが決まった西側のもう1基については市民団体から、設置に伴いセンター広場の外壁を改変することになり、センター広場と不可分な空間として国際的に高い評価されてきた広場の価値を喪失させる、10メートルも離れてない位置に既存のエレベーターがある―などと指摘していた。

センター広場を取り囲む外壁は、現在の壁を撤去し開閉式のガラス扉に取り換える計画だったが、意匠へのさらなる配慮と費用対効果を考慮しそのまま残す。市民団体は、中央広場の壁はメタリックなアルミの正方形とガラス窓、ガラス扉のバランスで構成されており、外壁を撤去することは中央広場の形状を変えることになるなどと指摘していた。

取り壊さないことになったノバホール小ホールの通路の壁

ノバホールと小ホールの間の1階通路の片側の壁を壊して通路を狭める計画は、意匠に配慮して取り止める。併せて市民活動総合センターの設計を見直す。通路については市民団体から、堅牢な石造りの壁でできた通路は研究学園都市の都市軸を形成しているなどの指摘があった。一方、通路を保全することに伴って、高校生が勉強などするフリースペースが、現在の市民活動センター部分から通路部分に移動する。現在の通路は照明が暗く室温の調整もなされてないことから、照明を明るくしエアコンを整備して室内環境を向上させるという。一方「気の毒。落ち着いて勉強できるのか」(橋本佳子市議)など、課題を指摘する意見も出た。

危険性が指摘されスロープ設置を取り止めることになったノバホール西側の外階段

ノバホール西側外階段は、土浦学園線から車両の乗り入れができるよう半分を改変しスロープをつくる計画だったが、安全性を考慮して取り止める。市民団体は、スロープの傾斜角が急で、車いすやベビーカーには使用できず建築基準法やバリアフリー法からみて問題。急勾配のスロープを下りた自転車などが、歩行者と接触したり、交通量が多い土浦学園線で事故が発生する危険がある、すでにキッチンカーが出入りしている既存の車用スロープを利用すれば足りるなどと指摘していた。

市による今回の大幅な見直しについて、建築意匠を守るよう要望していたつくばセンター研究会の冠木代表(70)は、「全面的に市の計画が変わりびっくりしている。(当初の計画が)すべて撤回され、ひじょうに良かった。ただここまでこじれたのは手続き上、問題があったのだと思う」と話している。(鈴木宏子)

薬の品切れにふりまわされて《くずかごの唄》99

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イラストは筆者

【コラム・奧井登美子】来年はトラ年。薬剤師は薬のトラブルを絶対起こしてはいけない職業である。半年前から、どういうわけか、コロナ禍の中で薬の原料の輸入品がストップしてしまったらしい。処方箋調剤薬局は、薬の品切れに悩まされている。60年間、経験しなかったことである。

「すみません。薬の中でビソプロロ―ル・フマル酸塩錠が、今、品切れなのです」
「えっ品切れ、冗談じゃないよ。心臓の薬で、狭心症を予防する薬だから、キチンと飲むように医者から言われている大事な薬だよ」
「ごめんなさい。明日の朝、飲む分はありますか?」
「ないよ」

探してみれば家にあるのに、こういう時、心配で、必ず「ない」と答える人が多い。

「困ったわね。今日中に、何とか手に入れて、お宅までお届けするしかない」
「必ず届けてくれ。なかったら、別の薬局へ行ってみるしかない」
「メーカーが品切れなので、よその薬局も厳しいと思います」
「じあ、どうすればいいんだ」

私が、客を怒らせないように、気を使いながら話をしている間、事務員さんが必死になって知り合いに電話して在庫を探っている。

「ハイ、よかった。ありました。うちのもう1軒の薬局にありました。お届けします。メーカーは違ってしまっても、成分は今までの物と変わりありません。安心してお飲みください」

とんでもない、考えられなかった事態

薬の卸業者、何軒かの取引先に電話してもないとなると、同業者に頼んで分けてもらうしかない。電話して、頭下げて、分けてもらい、取りに行って、患者さんの家にお届けする。

コロナ禍で、不足薬品の調達という、とんでもない、考えられなかった仕事が、処方箋調剤薬局に降りかかっている。(随筆家、薬剤師)

遊びと学びを各世代に届ける 筑波山麓に森の学校プレオープン

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目の前には関東平野の眺望。左から関口さん、星野さん、上渕さん、塚本さん=つくばグリーンスクールBEK

つくば市内でフリースクールやカルチャースクールなどを運営する教育研究施設、BEK Lab(べくらぼ)の第2拠点となる「つくばグリーンスクールBEK」が10日、同市国松にプレオープンした。4月からの本格稼働に向け、無料見学会・説明会や記念イベントを実施中。今後は2拠点でそれぞれに、つくばの都市的な面、自然豊かな面を生かして活動していく予定だ。

身の回りの素材を生かして

グリーンスクールBEKは、筑波山のふところに抱かれた静かな環境にあり、所有する森やミカン畑などを活用しながら、街なかではできないような体験型学習を、幼児や小学生に向けて提供していく。

体験型学習は「1つのアイテムで100の学びを」をモットーに、教科書は使わず、自然環境や身の回りの素材などを生かして、学校の教科学習にもつながるようなプログラム作りを心掛けているという。代表の星野つばささんは「例えば1本の木を題材にとり、理科や社会の学習に結び付けたり、見て触れて感じたことを言葉や絵、音楽で表現したりなど、さまざまな学びへと発展させられる。たくさんの驚きや発見、感動の機会を得られるようにしたい」と語る。

週末にはライブラリーラウンジとして開放される。絵本のほか幼児教育や子育て関係の専門書など、蔵書は常時1000冊以上で、季節によって内容を入れ替える。

開催中の上渕翔絵画展。手前の「祈り」など、コロナ禍中に前向きのメッセージを込めた作品が多い=同ギャラリー

併設するギャラリーではオープニング記念として18日まで、同市在住のペインティングとウッドバーニング作家、上渕翔さんの作品展を開催している。ここ5年ほどの近作を小品も含め25点ほど展示し、作品はいずれも購入可能。19~25日の展示は三谷多加子さん。初めて会った人のイメージを直観的に描いた「インスピレーション絵画」など、鮮やかな色彩と繊細なタッチを特徴としている。

このほかライブや各種ワークショップ、マルシェなどのイベントを随時開催。星野さんは「好きな場所で本を広げたり、アートや音楽を鑑賞したり、森を駆けまわったりなど、大人も子どももそれぞれ、自分に合った楽しみ方を見付けることができる」と来訪を呼び掛ける。

オカリナとピアノによるセッションの様子=同ライブラリーラウンジ

学習サポートと講座

BEK Labが目指すのは、あらゆる立場の人に幅広く対応できる学びの場。さまざまな世代が行き交い、国籍の違いやハンデによる分け隔てなどもなく、ボーダーレスに集える場所だという。

子育て関連ではプレママ・ママ倶楽部や、幼児向けのプリスクール、小学生から高校生までを対象としたフリースクールを運営する。BEK Lab創始者の関口加代子さんは、特にフリースクールの設置は地域にとっても喫緊の課題だと考えている。「不登校の小中学生はつくば市内でも400人近くいる。そのうち自分に合った学びに出会えた子はわずか2割ほどで、ほかの子は自宅や児童館で過ごしている。個人に合った居場所や学びの場を提供し、自立をうながすような支援をしたい」

2つの拠点のうち、つくば市東にあるラーニングスペースでは、個別や小人数での学習サポートを展開するほか、曜日や時間ごとに趣向を変えた講座を開く。それぞれの講座によって生徒や教室の雰囲気が異なるという。(池田充雄)

◆つくばグリーンスクールBEK 12月のイベント
[ライブ]18日=海東美紀子(オカリナ)&塚本英之(ピアノ)、19日=宇都野紘子(ピアノソロラウンジ)、24日=クリスマスJAZZナイト
[ワークショップ]18・19日=簡単気軽なピタパン作り、24日=森の恵みで作るオーナメントほか
申し込み・問い合わせはメールinfo@beklab.com、電話029-857-2798

誰も自分と同じ経験をしないために 《電動車いすから見た景色》25

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【コラム・川端舞】今年は怒涛の1年だった。4月に本サイトで重度障害のあるライターとして取り上げられたのをきっかけに、他メディアからも取材を受けた。しかし私にとって一番大きかったのは、中学時代の出来事を複数のメディアに語ったことだ。

小中学校時代、介助員から支援を受けながら普通学校に通った私は、一時期、介助員との関係がうまくいかないことがあった。その時のことを公に話すと、当時の介助員を批判してしまうことになるため、ずっと話さないでいようと思っていた。

しかし、自分の経験を公表することで、現在、普通学校で介助員から支援を受けている障害児が自分と同じような経験をすることを防げるかもしれない。ずっと心の片隅でそう思っていた私は、今年、複数のメディアから中学時代の介助員との出来事を話す機会をいただき、自分の経験が普通学校で学ぶ障害児の役に立てばと願いながら、メディアで当時のことを話す決意をした。

私は中学時代の介助員を責めるつもりは全くない。当時、私が介助員との関係で悩んでいたといことは、介助員も同様に私との関係で悩んでいたということだろう。

関係がこじれた時、私と介助員双方の話を聞いてくれ、すれ違いを一緒に解決しようとしてくれる大人が近くにいれば、問題が複雑にならないうちに、関係を修復できたかもしれない。障害児の支援を介助員1人だけに任せ、他の教職員は支援に関与しないという状態では、何か問題が起きた時に過度に障害児や介助員を苦しめることになりかねない。

他の障害児者と出会う機会

障害児が必要な支援を受けながら、健常児と同じ学校に通うことは、大人になってから障害者と健常者が共に生きていくためにも大切なことだ。同時に、障害児が普通学校に通っていても、地域に住む他の障害児者と出会い、周囲からどのように支援を受ければいいのかなど、自分と同じような障害のある人に相談できる環境も必要なのかもしれない。

私は高校時代まで自分のような障害者に会ったことがなかった。中学時代、介助員との関係を他の障害者に相談できていたら、解決方法を見つけられたかもしれない。

内閣府によると、令和元年現在、日本の障害者は人口の7.6パーセントを占める。1つの学校に障害児が数人しか通っていないこと自体、不自然なことなのだ。(障害当事者)

年内、年明けに5万円ずつ現金で つくば、土浦両市の10万円給付

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つくば市役所(左)と土浦市役所

18歳以下の子供に1人当たり10万円相当を給付する国の子育て世帯臨時特別給付金について、つくば、土浦市はいずれも、現金5万円を年内に振り込み、残り5万円は年明けに現金で給付する方針だ。

つくば市こども政策課によると、先行して給付する現金5万円について、児童手当を受給している中学生までの世帯などに13日、通知を発送した。24日に銀行口座などに振り込む。

給付対象となる同市の18歳以下の子供は約2万5000世帯、約4万人。24日にはそのうち約1万7000世帯の約3万人に振り込む。

一方、児童手当給付対象外の高校生など約8000世帯の約1万人は申請手続きが必要で、来年1月4日に申請書を送付し、申請書類が市に届き次第、順次、口座に振り込む。残り5万円については、1月以降に準備ができ次第、現金で振り込むとしている。

土浦市も5万円ずつ、現金で給付する方針だ。市こども政策課によると、先行給付の5万円について市は14日、児童手当を受給している中学生までの世帯などに通知を発送した。23日に現金5万円を振り込む。

給付対象となる同市の18歳以下の子供は約1万3000世帯、約2万1000人、23日にはそのうち約8600世帯の約1万5000人に振り込む。

児童手当対象外の高校生など申請手続きが必要な約4400世帯約6000人に対しては、来年1月4日に申請書を送付し速やかに給付する。残り5万円については、年明けのなるべく早い時期に現金で支給する方向で検討中だとしている。

国は当初、5万円を現金、残り5万円をクーポンで給付する方針を示していたが、13日、自治体の判断で年内からでも10万円現金一括給付を選択肢に加えることを認める方針に転換した。14日には自治体向け指針を出し、①1回目現金、2回目クーポン②1回目現金、2回目現金③現金10万円を一括給付の3通りを示した。

10万円一括給付についてはつくば、土浦両市とも、手続きが間に合わないとしている。