水曜日, 4月 23, 2025
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「はやぶさ2」帰還カプセル展示 10日からつくばエキスポセンター

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大気圏突入時の痕跡を残すカプセル「背面ヒートシールド」

小惑星探査機「はやぶさ2」帰還カプセル展示が10日から、つくばエキスポセンター(つくば市吾妻)で始まる。14日まで。展示されるのは、2020年12月に「はやぶさ2」が地球に持ち帰った、小惑星リュウグウで採取した砂や石などの調査サンプルを収容していたカプセル。

「はさぶさ2」は、地球の水や有機物の起源、生命誕生の秘密に迫ることを主な目的に、2014年12月に種子島宇宙センターから打ち上げられた小惑星探査機。近地球型とよばれる小惑星「イトカワ」を探査し2010年に地球に帰還した「はやぶさ」の後継機にあたる。「はやぶさ2」が目指したのは、直径900mメートル小惑星リュウグウ。接近時、地球から約3億キロの距離にあった。

そこには太陽系が誕生したとされる約46億年前の水や有機物の痕跡が残るとされる。総飛行距離約52億4千万キロの末に持ち帰ったサンプルは、日本を中心とした14 カ国、109の大学と研究機関、269人が参加する国際チームで進められている。

展示会場には、金色の耐熱材が部分的に残る大気圏突入時の高温にも耐えたパーツや、大気圏を通過後に着地時の衝撃を和らげるためのパラシュートなどの実物が並ぶ。他に、一連のプロジェクトの詳細を解説したパネル展示、映像コーナーも設けられている。

充実したパネル展示=つくばエキスポセンター

企画を担当する、エキスポセンター展示・催事主任の佐々木貴史さんは「焼け残った金色の耐熱材が残るなど、宇宙を旅した実物が持つ迫力を感じてもらえるはず。宇宙とのつながりを実感してもらうことで、将来、宇宙に関わる分野に進んでくれるお子さんが増えたらうれしい」と話す。

展示と並行し、エキスポセンター内のプラネタリウムでは関連企画として、「HAYABUSA 2〜REBORN 帰還バージョン」(上坂浩光監督)が上映される。

新型コロナ感染対策から、展示、映像作品上映ともに完全事前予約制。ウェブサイトから手続きができる。また上映スケジュールも、同サイト内で確認できる。期間はともに14日までの5日間。(柴田大輔)

県独自の非常事態宣言を延長 リモート授業26日まで

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茨城県庁(イラストは「いばらきアマビエちゃん」)

新型コロナの感染拡大により12日まで延長していた茨城県独自の非常事態宣言について、大井川和彦知事は9日、期間をさらに2週間延長し26日までとすると発表した。延長に伴って学校のリモート授業も26日まで延長される。

第5波により8月16日に発令された県独自の非常事態宣言は42日間に及ぶこととなる。一方、8月20日に発令された国の緊急事態宣言も30日まで、18日間延長される。

現在の県内の感染状況について大井川知事は、週平均の1日当たりの新規感染者数は8月23日の週の318.5人をピークに、9月8日の週は213.2人と減少傾向にあるとした。病床稼働状況は、入院患者数が8月27日の499人をピークに、9月8日は381人と減少したがまだ高止まり状態が続いており、特に重症患者数はは8月29日の32人をピークに9月8日も26人と予断を許さない状況が続いているとした。

医療提供体制は、9月1日からコロナ病床を791床に拡充、重症化リスクの高い感染者を対象に、31病院で600件の抗体カクテル療法を実施したとし、投与を受けた9割が入院せずに宿泊・自宅療法を継続し、入院した1割についても重症化した事例はなかったなど効果があったとした。酸素ステーションについては、県南の宿泊療養施設内で3人を受け入れたと報告した。

県独自の非常事態宣言の延長に伴って、学校はリモート授業を26日まで延長する。部活動の全面禁止、学校行事の延期または中止の期間も26日まで延長される。再開する場合は、分散登校をするなど段階的に状況をみながら元の学校生活に戻していきたいとした。

図書館や美術館、公民館など公共施設の休館も26日まで延長となる。

一方、新規感染者数の減少傾向が継続し医療崩壊が防げる場合は、26日を待たずに非常事態宣言を解除するとした。

国の緊急事態宣言は30日まで延長となる。飲食店は酒類の提供を終日停止し、営業時間を夜8時までとする、商業施設は来店客数を通常時の2分の1とするなどの要請も30日まで延長される。飲食店などに対する協力金支給期間も30日まで継続される。

子どもたちのための科学イラスト集 つくばで絵本原画展【秋アート’21④】

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仮展示のため画廊を訪れた島本真帆子さん=つくば市天久保

茨城県立医療大学(阿見町)の「アイラボキッズ」活動から生まれた絵本の原画による「子どもたちのための科学と医療のイラスト展」が18日から、つくば市天久保のギャラリーYで始まる。同市在住で絵本作家をめざす島本真帆子さん(51)にとって初の個展となる。

科学の巨人、アルキメデス、ガリレオ・ガリレイ、マリー・キューリー、レントゲンらの肖像画をはじめ、動植物や医療器具などを丹念に描いたイラスト多数を展示する。島本さんが長年描きためた長女の成長を追う色鉛筆画のコーナーも設ける予定だ。

島本さんは、東京理科大卒の元薬剤師。「どういうわけか化学だけは得意だった」ため、親の勧めで薬学部に進んだが、薬局勤務は今一つ性に合わなかったそう。「数学と美術はいつも赤点ぎりぎりだった」のに、デザイン専門学校で学び直した経験もある。結婚後、娘が生まれ、その寝姿や仕草をスケッチしているうちに絵の上達に気づいた。

自宅をアトリエに、4コマ漫画を同人誌に投稿するなどしていたが、今は絵本作家としての自立を志す。「10冊ぐらいに出来上がったら出版社に持ち込もうと思っている」という絵本は、最近2年間、医療大学の「アイラボキッズ」活動の中から生まれた作品だ。

小学校に出前授業「アイラボキッズ」

同活動は、地域の小学生対象に医療と科学の体験教室の開催を意図し、20年度から医療大の地域貢献研究費の助成を受けて活動を開始した。大学内にあるシミュレーション教育実習室「あいらぼ」に子供たちを招き、科学実験や観察会を行う予定だったが、新型コロナ感染拡大の影響で、阿見町立君島小(秋山美穂校長)への出前授業としてスタートした。

教室は、医療大放射線技術科学科の鹿野直人准教授がまとめ役になり、毎回テーマを決め体験教室と関係する科学者のお話との2本立てで行う。昨年10月の1回目では「霧箱とレントゲン」と題し、蒸気の凝結作用を用いて荷電粒子を検出するための装置「霧箱」で放射線の飛跡を観察した。島本さんはドイツの物理学者、レントゲンのエピソードなどを紹介する絵本を副読本として制作し、自ら児童に読み聞かせた。

「アイラボキッズ」用に作成された絵本

2回目ではガリレオ・ガリレイを取り上げ、3回目は芳賀和夫さん(芳賀サイエンスラボ所長、元筑波大学教授)を特別講師に、折り紙で正五角形作り(オリガミクス)を行った。21年度は5月を休止としたものの、6月と7月は開催。島本さんは毎回体験型の実験を考え、絵本を手作りして開催に臨んでいる。

君原小は全校の児童数が65人。教室で「密」にならないよう、1日3グループに分けて日程を組んでいる。「学校は(20年度に)小規模特認校になったばかりで、体験教室でアピールしたい意向がある。町にはもう2、3校増やしてほしい要望もあるみたい」だそう。ただ、実験装置づくりが大変で、行政からの助成頼みには限界を感じている。

「展覧会はやっぱり子供たちに見てもらいたい。コロナ禍でいっぱい来てねとは言いにくいけど、初めての個展だから、そんなに集まらないですよね」と控えめな期待をふくらませた。(相澤冬樹)

◆島本真帆子「子どもたちのための科学と医療のイラスト展」 18日(土)から26日(日)まで午前11時~午後7時、つくば市天久保1丁目グリーン天久保2階、ギャラリーY(電話029-852-1930)

ヨーロッパは負けない 五輪閉会式パリ紹介動画に思う 《遊民通信》24

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【コラム・田口哲郎】
前略

TOKYO2020オリンピック・パラリンピックが紆余曲折(うよきょくせつ)を経て開催され、閉会しました。今回はオリンピック閉会式で印象的だったことを書きたいと思います。

次の五輪開催地はフランス共和国の首都パリです。東京都知事小池百合子氏からパリ市長のアンヌ・イダルゴ氏に大会旗が手渡される際に、パリ大会の紹介動画が流れました。オーケストラが、パリの名所を背景に、フランス国歌のラ・マルセイエーズを奏でます。これは何の変哲もない紹介動画として受け流すこともできますし、かつて世界の首都を誇った古都がクラシック音楽にのせられて映し出されることに違和感を覚える必要はないでしょう。

しかし、私は驚きました。口をついてでた言葉は「なぜ?」です。パリはかつての勢いを失っているなどと言われますが、大国フランスの首都であり、ヨーロッパ有数の巨大都市に変わりはありません。パリは古いと同時に新しい。いまだにファッション、ポップカルチャーの発信地でもあります。世界的に文化はサブカル化しています。日本のアニメ、ゲーム、そしてKawaiiは世界を席巻している。正統ではなく亜流がウケる時代のはず。

現に東京五輪への引き継ぎ式のために、安倍前首相はリオデジャネイロでNintendoのマリオに扮して土管から飛び出したではありませんか。ポップ化する世界。当然パリもポップな先進性を強調する動画を流すと思っていました。

しかし、フランス人はクラシック音楽で首都を飾ったのです。背景にはルーブル美術館にある「サモトラケのニケ」の像も移っていました。これは古代ギリシアの彫刻。つまり、ヨーロッパ人はギリシア・ローマ人の末裔(まつえい)であり、古典的文化を継承しているという主張です。古代中国文明圏にありながら近代化した日本はアジア的大らかさを持っている。和を重んずる性善説の人々です。よそ様が喜ぶとなれば、浮かれてコスプレもする。

でも、我々に近代化を迫った欧州人は、浮かれたようなふりをして実は大真面目に自文化を堅守している。決しておどけたりしない。このコンセプトで行くならば、安倍氏は羽織袴(はかま)を着て、琴・三味線を引き連れて「六段の調」をBGMに旗をもらうべきです。

コロナ禍に勝ったヨーロッパ

そして、コロナ禍にも関わらずトロカデロ広場に密集する群衆が映り、エッフェル塔展望台のマクロン大統領は「共に!」と叫びました。「了解」と私はつぶやきました。ヨーロッパはコロナ禍に打ち勝ったという主張を受信したからです。ヨーロッパは負けません。むしろ勝とうとします。

彼らは確固たるルーツと世界に誇る古典文化を持ち、「教化」しようとします。コロナ禍後の新生活様式により、グローバル化はますます進展します。ヨーロッパ・スタンダードは国のみならず個人に直接働きかけるでしょう。明治以来の日本の近代化はまだ継続中で、我々は欧州に対抗する自覚を持つべきです。ごきげんよう。

草々(散歩好きの文明批評家)

大規模事業評価スタート つくば市 陸上競技場計画で

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第1回大規模事業評価委員会の様子。会場に来たのは横張真委員長だけで、ほかの委員はリモートで参加した=つくば市役所

つくば市の第1回大規模事業評価委員会が8日市役所で開かれ、10億円以上の大規模事業について必要性や効果などを客観的に評価する大規模事業評価が、陸上競技場の整備計画を対象に始まった。

委員は、東京大学大学院・横張真教授、筑波技術大学・生田目美紀教授、高橋博之公認会計士、筑波大学・藤井さやか准教授、堀賢介弁護士、国立環境研究所・松橋啓介室長の6人。横張教授が委員長、生田目教授が副委員長を務める。任期は今年8月から来年3月末まで。

上郷高校跡地に建設予定の陸上競技場について、必要性、妥当性、優先性、有効性、経済性・効率性、地域への対応の6項目を評価する。

現地視察なども含めて計4回委員会を開催し、11月上旬から中旬に答申をまとめる。答申に基づいて、市は事業を計画通り実施するか、見直すか、撤退するか検討する。

第1回委員会では、市側が事業の必要性など6項目について、委員に説明した。

必要性については、小中学生の公式記録がとれる陸上競技場が市内になく、市PTA連絡協やスポーツ団体から長年にわたる意向がある。妥当性については、未利用地の利活用に資する。優先性については、陸上競技場整備は市民要望の高い長年の課題であるにも関わらず、実現に至ってないため、これ以上先延ばしにすることなく早急に事業に着手することが適切だなどとした。

有効性については、スポーツ推進計画など政策目標が達成され、施設運営や植栽管理など雇用創出が見込まれる。集客に加え、利用者による地域の農産物、特産品の購入や飲食店、公共交通機関の利用が見込まれる、合宿の誘致により宿泊施設の利用が見込まれるなど経済波及効果があるとした。

経済性や効率性については、維持管理費は年間8000万円程度で、民間活力を導入するなどコスト低減を図る。地域への対応については、道路沿いのほとんどが農地であるため渋滞による周辺生活環境への悪影響は少ない、民家が点在するため騒音や光害などに配慮するーなどと説明した。

需要予測は年6回、維持管理費は年8000万円

委員の一人から「需要予想が年6回だとすると他の施設を借りても問題ないことになる。もう少し需要予測が立っていた方がいい」などの意見が出た。

需要予想については、小中学校の記録会や市陸上競技選手権大会の年6回と、そのほか、トラックの内側のインフィールドで、部活動、サッカー、グランドゴルフ、敷地内の園路や多目的広場でジョギングや日常の憩いの空間として活用されると説明された。維持管理費が年8000万円程度で、年6回の開催需要の場合、1回当たりの開催経費は維持管理費分だけで1333万円になってしまう。

陸上競技場の計画概要は、400メートルトラック8レーン、インフィールドは天然芝で投てき競技に対応できるようにし、メーンスタンドは1500席、芝生スタンドは2500席、日本陸上競技連盟の4種公認(整備内容は3種相当)とする。敷地内には多目的広場やジョギングコースなどを整備する、駐車場は400~500台でバス33台分に転用可能。付帯施設としてセミナーハウスを整備する。災害時は避難場所として活用する。

事業費は22億2200万円か22億3600万円。ただしセミナーハウスの整備費、校舎や体育館の解体費、周辺道路の拡張費などは明らかにされなかった。

整備スケジュールは2022年度に基本計画、23年度に基本設計と実施設計を策定し、24~25年度に建設工事、26年度から利用開始となる。

大規模事業評価は、住民投票で白紙撤回になった市総合運動公園事業を教訓に、五十嵐立青市長が2018年9月に要綱を定めた。

一方大規模事業評価をめぐっては、つくばセンタービルのリニューアル事業は10億円を超えるのに、大規模事業評価を行わないのは違法だとして、住民訴訟が起こされている。(鈴木宏子)

延期が決定 つくばの街と山をつなぐ芸術祭【秋アート’21③】

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展示会場に予定されていた旧小林邸ひととき前で実行委員長の野堀真哉さん=つくば市筑波

つくばでこの秋最大のアートイベントになると注目されていた「つくばの街と山をつなぐ芸術祭(つくばアートサイクルプロジェクト2021)」が7日までに、開催の延期を決めた。仕切り直しての開催は早くても来春以降にずれ込みそうだが、主催のつくばアートサイクルプロジェクト実行委員会では「いっそうの内容の拡充を図りたい」(野堀真哉さん)と再トライする構えでいる。

芸術祭は14日から26日まで、つくばの街と筑波の山に分散する複数の会場での展開を予定していた。テーマに「アントロポセン-分岐点を超えた景色」を掲げる。アントロポセン(人新世)は、新しい地質年代をさす造語。地質学的な意味づけは「人類の活動が地球規模で環境を激変させ、⻑期的な痕跡を残す時代」。この時代にアーティストは何を感じ表現するのかを問いかけた。

初開催にもかかわらず、参加する作家は35組。国内外から30代、40代の若手が名乗りをあげた。会場はセンター地区(センター広場、県つくば美術館、桜民家園)、研究学園(イーアスつくば内サイバーダインスタジオ)、南麓エリア(筑波山神社、登山道、筑波山温泉江戸屋、旧小林邸ひととき、神郡石蔵シテン、北条川田邸)の3つのエリアで展示を行う計画だった。

旧小林邸ひとときでの展示が予定されていた佐藤綾さんの「PUPASLEEP-CYCLE」=主催者提供

実行委員長の野堀真哉さん(37)は、筑波山でゲストハウス「旧小林邸ひととき」を運営する。「つくばという場所で現代アート展を開く意味を提案したかった。地域はホワイトキューブ(白い天井に白い壁の立方体の展示空間)ではないし、アートは主役ではないけれど、この地に確実に残される表現を五感を使って受け止めたい」と運営委員長の山中周子さん(ネオつくばプロジェクト代表)らとプロジェクトを進めてきた。

8月末まで150万円を目標にクラウドファンディングを募集、目標に及ばなかったが142人から114万円余を集めた。9月には会期中各会場を回るための共通パスポート(1500円)の販売も準備していた。運営ボランティアの募集にも、手応えがあったという。

18日のトークイベントは催行

しかし、新型コロナの感染拡大で緊急事態宣言が発出され、県境をまたぐ形となる作家たちの移動も困難となった。会場のひとつ桜民家園は管理するつくば市側から使用が差し止められ、代替会場も見当たらなかったことから、9月初めの会議で延期を決めた。

18日午後5時から、サイバーダインスタジオで予定していたトークイベント「地域×アート」は、オンライン開催で実施される。

延期の日程や内容は作家たちとの仕切り直しになるが、メーン会場のひとつ、県つくば美術館の予約が再調整となることから、開催は早くても来年3月以降となる見込み。改装を控えているつくばセンター広場での展示についても、出展場所の変更や状況を生かした検討を講じるとしている。協賛者やクラウドファンディング支援者には決まり次第連絡を取るという。(相澤冬樹)

詳細情報の確認は「つくばアートサイクルプロジェクト2021」のホームページで。

講演「現在の日本の立ち位置と再生の基軸」 《ハチドリ暮らし》5

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ナスの収穫とニンジンの間引き

【コラム・山口京子】日本コーポレート・ガバナンス・ネットワークの特別プロジェクト「失われた30年 どうする日本」のシリーズ第2回(8月24日)で、寺島実郎氏のオンライン講演を視聴しました。今回は、寺島氏の「現在の日本の立ち位置と再生の基軸」の内容を紹介します。

今の日本で本気に問題にすることは何か? ディベロップメント(開発)を実現させつつ、サステナブル(持続可能)であることではないか。知っておくべきファクトは、埋没する日本を直視すること。「健全な危機感」が問われているとして、世界に占める日本のGDP(国内総生産)の推移を示した。1950年3%、1964年4.5%、1994年17.9%、2000年14%、2010年7%、2020年6%、2030年予想4%―。GDPの額で見ると、日本は2008年来、ほぼ実質ゼロ成長という現実。

アベノミクスを総括すると、三本の矢の一つ目の異次元金融緩和、二つ目の財政出動で調整インフレ政策がとられたものの、資金需要はなく、貸し出しは増えなかった。他方、ジャブジャブマネーは株高と円安に向い、円安は輸出産業の競争のハードルを下げた。しかし、産業構造で食とエネルギーを海外に依存するこの国では、マイナスの面を持つとして、工業生産力モデルにとって円安が望ましいという固定観念には異議を向ける。

アベノミクスは、資本主義の競争を通じて切磋琢磨(せっさたくま)するということより、マネーゲームでラクをして生きる方向に舵(かじ)を切らせたのではないか。株式市場についていえば、公的資金も株高を支えている。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)や日本銀行のETF(上場投資信託)買いなどで85兆円も注入されており、そのため実力以上の株価になっているのは、「自堕落な資本主義」だと釘(くぎ)を刺す。

「食料自給率は現在の38%から70%に」

そして、日本再生の基軸として、脱工業生産力を提起する。今までの「豊かさを実現すれば、平和と幸せはついてくる」というコンセプトから、「国民の安全と安定」(経世済民)と「持続可能な成長」(SDGs)にシフトさせる。ファンダメンタルズは、原点回帰の産業基盤強化で、食と農・医療・防災に取り組む。イノベーションは、DX(デジタルトランスフォーメーション)、グリーン(環境、脱炭素エネルギー)で対応する。

また、食料自給率をカロリーベースで現在の38%から70%に上げる。食と農についていえば、生産・加工・流通・調理のサイクルを強化し、イノベーションを利用し付加価値を高める。医療では臨床研究を重視し、防災は道の駅を防災拠点とする構想を掲げる。

ファンダメンタルズとイノベーションは両方が大切としたうえで、ファンダメンタルズを立て直さないと、日本の安全と安定は図れないと強調する。「戦後、工業生産力モデルでひた走り、忘れてきたことを立て直すことが求められている」という言葉の意味するところは深い。

自分がどこにいるのか、どういう社会に暮らしたいのかを考えるきっかけとなる貴重な講演でした。実家では、ナスの収穫とニンジンの間引き、次の野菜づくりのために土地を耕しました。見渡すと、手入れをする人がいなくなった畑や田んぼの荒れた様子が目立ちます。(消費生活アドバイザー)

カフェベルガ、25年の歴史に幕 つくば 障害者が働くレストラン

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吉田美恵さん(左)と就労支援事業を利用し働くスタッフ=カフェベルガ

つくばカピオの敷地内にあるレストラン「カフェベルガ」(つくば市竹園)が17日に閉店する。25年間、障害者に働く場を提供するとともに、店内で近隣住民が演奏会を開催するなど、市民の憩いの場にもなってきた。「障害者の就労支援とカフェの両立が難しいと感じるようになった。今後はパソコンを活用した就労支援に力を入れていきたい」と代表の吉田美恵さん(71)は話す。

今後は障害者の就労支援に特化

障害者の親たちが1996年4月、障害者の働く場を作ろうと設立した有限会社「友遊舎」により、カフェベルガの営業が始まったのは同年8月1日、つくばカピオが開業した当日だった。メンバーは飲食店の経験がなく、最初は経営することで精一杯だった。学習障害の息子を持つ吉田さんは、開店当初は店長としてカェベルガに関わり、2005年に「友遊舎」の代表になった。

現在は発達障害者を専門としているが、当初はまだ「発達障害」という言葉自体が社会で知られておらず、引きこもりや不登校の人も店舗に通っていた。

同店には障害者支援のための特別なプログラムはない。皿洗いや接客などの仕事を通して、ビジネスマナーやコミュニケーションを身に着ける。吉田さんなど運営側は、障害のある店員に対し、一人ひとりの気持ちを尊重し、やってくれたことには感謝を伝えながら、自分の得意なことと苦手なことが理解できるように接してきたという。

引きこもり等の人の中には、店の手伝いをしているうちに、元気を取り戻し、学校に行けるようになったり、高齢者施設や一般企業に就職した人もいる。発達障害者が主な対象だったが、車いす利用者や知的障害者が働いていたこともある。これまでに30人以上が店員として働いた。

歩行者専用道路側からのカフェベルガ外観

店舗運営と障害者支援の両立への葛藤

障害者自立支援法改正により、発達障害者も障害者福祉サービスの対象になったのを機に、2012年に発達障害専門の就労支援事業所として正式に県から指定を受けた。店舗での接客が苦手な発達障害者もいるため、13年にはパソコンでの作業を中心に行う訓練事業所「カフェベルガ・サポートオフィス」(つくば市天久保)を新しく立ち上げた。テープ起こし、動画編集等の作業や、パソコンを使った調べ学習を通して、コミュニケーション能力や問題解決能力をつけていく。就職に向けて自分の特性などを周囲に伝える練習もする。

「人間関係が苦手で、自分は仕事ができないと思ってしまう人が多い。しかし、パソコンを使えれば、世界中の人とつながることや、様々なソフトを使い、自分の技術を超えたものを作ることができる。社会に出るのが怖いと思っている人にも、パソコンを通して、自分にも働く力があることに気づいてもらえるような支援がしたかった」と吉田さんは話す。

レストランで働ける人数は制限されることもあり、現在は店よりもサポートオフィスに通い、パソコンを学ぶ障害者がほとんどだ。

閉店を決めた理由として、吉田さんは「就労支援として障害者一人ひとりと話し、個々人に合った仕事内容を提案したいが、カフェの場合、接客が優先になり、話を聞いてほしい時に聞いてあげられない葛藤があった」ことをあげる。障害者が働く中で、問題が起これば一緒に解決策を考えたいが、レストランでは時間的余裕がない。

吉田さんは「引きこもっている障害者もたくさんいる。これからは、もっと多くの障害者に対して、一人ひとりと向き合い、困ったときに相談できる力をつけてもらえるような支援をしていきたい」と意気込む。(川端舞)

写真で感じる科学の世界 産総研に特設サイト【秋アート’21②】

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産総研の研究室で撮影する伊藤さん=写真提供:産総研

フォトグラファー伊藤之一さんが産業技術総合研究所(つくば市梅園)で撮影した写真による最新作「if-then」(青幻舎)を刊行したのを受け、産総研は特設サイト「来るべき明日のために」を公開、18日からはトナリエつくばスクエアキュート(つくば市吾妻)で写真展が始まる。

同サイトは8月27日に公開された。写真自体は産総研ならではの研究ではあるものの、どこの研究所・研究者や科学者以外の人にも共感してもらえる普遍的なサイトとなることを意識したという。

産総研によれば、「世界には多様な研究現場があり、研究に打ち込む研究者たちがいる。産総研は国内最大級の公的研究機関として様々な研究テーマに取り組んでいるが、今回は産総研という場で撮影された写真を通じて、科学の魅力を感じてもらうことを目指した」そうだ。

「キログラム」定義改定がきっかけ

写真のきっかけとなったのは、「キログラム」の国際的な定義が130年ぶりに改定された際の撮影依頼。日本国キログラム原器を管理してきた産総研では、新しい定義に則った1キログラムに相当する原子数のシリコン球を作成した。この撮影を依頼されたのが伊藤さんで、「その写真は科学という営みを人々に伝える映像について研究者が考えていた固定概念とは、異次元のものだった」という。原器から物理定数へ、2019年5月、新しい定義改定は施行された。

特設展トップにあるシリコン球の写真

以降、通常非公開の研究室での撮影が許されることになり、3年間にわたって撮影が続けられた。伊藤さんは「この写真集は科学を捉えることへの、捉え続けることへの意思表明のような位置付け」と述べている。

写真集は25センチ判型、351ページの大型本で、6月に刊行された。計量標準総合センターのキログラム原器のほか、生命工学領域、エネルギー・環境領域など7領域にわたる実験室風景、研究素材などの写真が収められている。本体価格7000円。

さらに、写真を大きなサイズで展覧したいという声と、撮影の舞台となった産総研のあるつくばで一歩目の写真展を踏み出したいという伊藤さんの思いから、写真展の開催が準備された。(如月啓)

◆写真展「if-then」-科学研究現場の今 9月18 日(土)~26 日(日)午前10時~午後8時(会期中無休)、トナリエつくばスクエアキュート2階(つくば市吾妻)

菅政権の限界と次期政権の課題 《雑記録》27

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【コラム・瀧田薫】9月3日、菅義偉首相(自民党総裁)は党総裁選に立候補しない旨表明した。このところ、菅内閣の支持率が低迷し、菅総裁の再選が危ぶまれる状況ではあった。しかし、菅氏は2日、二階幹事長に総裁選出馬の意向を伝えており、その翌日の辞任表明はあまりに唐突である。コロナ禍への対処を誤って衆院解散のタイミングを失い、総裁と衆院議員の任期切れという時間的制約にも追い込まれ、まさかの「辞任」につながったものと推察する。

報道各社は、総裁辞任の第一原因をコロナ対策の失敗にあると見ている。しかし、菅政権がそうした対応しかできなかった理由は、危機管理能力の欠如とか見通しの甘さといった次元で説明できるものではない。

より深刻な理由がある。それは安倍政権の時から水面下で進行していた政府機関と党組織の劣化そして制度疲労である。自民党歴代政権を行政学の立場から「官僚主導型」と「官邸主導型」の二つに分けた場合、安倍政権が敷いた「官邸主導路線」をそっくり踏襲したのが菅政権である。安倍一強政権が、小選挙区制と人事権を武器として自民党派閥と省庁の統制・管理に乗り出したとき、その先頭に立ったのが、安倍内閣官房長官の菅氏であった。

官邸主導路線は菅政権になって弾みが付く。2020年9月、就任間もない菅首相は日本学術会議が推薦した会員候補のうち6名について任命を拒否した。現行の任命制度になった2004年以降、推薦された候補を政府が任命しなかったことは一度もない。会議側からの抗議に対して、菅氏は政府に人事権があるとの主張を繰り返すだけで、任命しない理由については一切説明しなかった。

こうした強権的な手法によって、権力側の意図が通りやすくはなるだろう。しかし、その副作用もある。官邸主導型政治によって自民党派閥の活力は奪われ、党内民主主義は後退した。また、人事権を奪われた官僚機構からは政策立案能力と実践力も失われ、忖度(そんたく)官僚のみが跋扈(ばっこ)することとなった。

まずコロナ対応に新機軸を

菅政権のこの1年を振り返ってみると、この政権が果した役割は、第一義的には現状の維持であって、党内改革でも国政の刷新でもなかった。一方、岸田文雄元政調会長は、総裁選出馬表明で、党組織と制度の刷新を宣言した。菅政権の局面打開能力に疑問符をつけ、「現状維持路線」の限界を指摘したものであろう。

次期総裁が誰になろうと、まずはコロナ禍への対応に新機軸を打ち出さねばなるまい。同時に、政府機関と党組織の劣化や制度疲労の修復・改善に取り組んでほしい。そのほかにも、経済と財政、福祉と社会保障、国と地方の関係など、課題は山ほどある。眼を外に転じれば、米中対立、安全保障、エネルギーと環境など、ここでも課題は目白押しである。

ともあれ、まずは総裁選と衆院選を通じて、諸課題が議論の俎上(そじょう)にのぼることを期待しよう。状況の変化は政治の遅滞を許してくれない。(茨城キリスト教大学名誉教授)

無念の中止決定 土浦の花火 第90回記念大会

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定例会見に臨む安藤真理子土浦市長=同市役所

土浦市最大の観光イベント、11月の全国花火競技大会の中止が決まった。安藤真理子市長が6日の定例記者会見で明らかにした。事故による2018、19年の中途打ち切り、新型コロナ禍による20年の中止に続き、4年連続での打ち上げストップに、安藤市長は「非常に残念」と無念さをにじませた。

土浦市などでつくる大会実行委員会は第90回記念大会となる今回、11月6日開催予定で開催準備を進める一方、新型コロナの感染状況を見極め、ぎりぎりまで開催判断を先伸ばししてきた。しかし、茨城県を含む21都道府県で緊急事態宣言が発出され、ひっ迫する医療現場の状況を踏まえ大会運営に万全を期すことが困難と判断し、中止を決定した。緊急事態宣言が解除されても中止の決定は変わらない。

同市のワクチンの2回目接種状況は、8月30日時点で44.2パーセントと順調に進んでおり、10月の早い段階で希望者の接種終了が見込まれることなどから、開催の準備を進めていた。有料観覧席上限を2万人とするなど新型コロナ対策を強化。19都道府県から55の花火業者が参加を決め、競技大会の出品の種目も決定していたという。

花火業者や開催の関係者である警察や消防、JRなどには誠意もって市から直接中止の報告を行う。

安藤市長は「ぜひ開催したかった。歴史がある土浦の花火競技大会は、たくさんの人が楽しみにしている貴重な地域資源。全国の花火大会再開の先駆けにしたいと準備していた。安全を期す準備を進めていたが非常に残念。苦渋の決断だった」と述べた。

市花火対策室によると、延期も検討したが11月過ぎの気候では安全な花火大会が開催できるか不明であることから断念したという。密を避けるため、2日に分けての開催も検討したが、警備などの負担が増えることや、花火の公正な審査が困難であるとし、中止を決断した。来年開催する場合は、11月の第一週土曜日になる。(伊藤悦子)

天然由来の材料と手法で つくばで藍染風布展【秋アート’21①】

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丹羽さんの手で染められた作品=つくば市小野崎

つくば市神郡で染織工房「藍染風布」(あいぞめふうぷ)を営む丹羽花菜子さん(36)が19日まで、同市小野崎の蔵ギャラリー「Shingoster LIVING(シンゴスター リビング)」で「空高く澄みて 藍染風布+TANSU 展」を開いている。東京都内の仕事仲間であるユニットTANSU(たんす)と企画した共同個展。

丹羽さんの作品は、無農薬栽培された藍から染め上げられた生糸や生地、衣服などがさまざまな色彩の蒼(あお)を描き出す。展示されている小物のカフケースやルームクロス「Orifuse(おりふせ)」などは、TANSUの制作による手仕事作品だ。

丹羽さんは北海道出身、武蔵野美大在学中の2007年から東京都青梅市の藍染工房壺草苑(こそうえん)で働き始め、約9年間勤務した。2016年につくば市に移住。常総市の畑で藍を育て、藍染の原料・蒅(すくも)を作るようになった。藍染風布として活動を始めるのは17年で、20年に筑波山の麓に工房を移転した。

昔ながらの染色で、自然界にある原料だけを使った天然灰汁(あく)発酵建てという手法を用いる。丹羽さんは「心地のよい循環と持続性を伝えてくれます。TANSUさんの作る小物たちも、とても微笑ましくて、手に取って見たくなる風合いに満ちています」と説明する。

カフ・ケースやルームクロス「Orifuse」などは、TANSUの制作

個展は水曜日から日曜日まで(月・火曜定休)の午後3時から6時まで。日曜日のみ午後1時から開場。丹羽さん自身は週末に在廊している。Shingoster LIVINGは、つくば市小野崎448-1、カフェCOX敷地内に所在。駐車場は同店のものを利用となる。(鴨志田隆之)

新型コロナの感染拡大は緊急事態宣言下、依然出口を見いだせないでいる。しかし、日々の営みは続き、季節はめぐる。「芸術の秋」の新しい日常に、アーティストたちの取り組みをたどる。

後期高齢者の区分に入りました 《吾妻カガミ》115

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3点セット:スマホ、パソコン、タブレット

【コラム・坂本栄】9月初めの誕生日で後期高齢者になりました。一生の分け方はいろいろあると思いますが、~20歳を「準備期」、~65歳を「仕事期」、~75歳を「引退期」とすれば、75歳~は「そろそろ期」でしょうか。先日観た「キネマの神様」の元映画人(沢田研二)は、懐かしい映画と自作の脚本をダブらせながら、上映館の座席で死んでいきます。78歳でした。私もあと3年ぐらいは頑張りましょう。

体は劣化しても頭は20代後半?

数年前から使っているフェイスブックでは、「関心は政治/経済/軍事。身体は劣化しているが頭は20代後半。独製セダンから国産SUVに乗り換え若ぶっている」と自己紹介しています。直すか考えましたが、そのままにすることにしました。10年数前の顔写真もそのままにし、SNSの世界では仕事期が続いていることにします。

大学の方は今年度いっぱいで講師の任期が終わります。時事問題を織り交ぜながら、国際経済や国際政治の構造について講義してきました。仕事期(経済記者)の知識を最新版に更新でき、私にとっても勉強になりました。若い先生たちとの懇親はとても愉快でした。

主流メディアはネットにシフト

フェイスブックでも大学講義(一部リモート)でも、ネットの便利さを痛感しています。携帯するスマホ、デスク上のパソコン、その間の使い勝手のタブレット。これら3端末を使い分けながら、各方面とコンタクトできます。いつでも、昔の仕事仲間、今の仕事仲間とつながります。以前は文字と写真の活用が主でしたが、最近、映画もネットで観るようになりました。

新聞もネット経由です。今、朝日を紙とネットで、日経とウォール・ストリート・ジャーナルをネットで購読しています。3新聞とも紙メディアの限界を感じているのか、ネット経由の発信に力が入っています。企画記事などはネットを優先、紙よりも先にネットに載せるようになりました。紙<ネットに、経営戦略をシフトしたようです。私の仕事期には想像もできなかったことです。

「そろそろ期」でも何か起きる?

私の仕事期45年のうち、4分の3は通信社、残り4分の1は地域紙でした。転職したとき、新聞業界紙の取材に「ニュースの卸売業を卒業して小売業に転じた」と答えましたが、これは理由の一つ。通信社のネット開発部門を任されたものの、その可能性に無理解な(従来の媒体モデルにこだわる)トップと衝突、情報伝達手段の先を読めない経営陣にサヨナラしたのがもう一つの理由でした。

仕事期最後の10年と引退期前半の5年を、地域紙に関われたことはハッピーでした。いろいろな分野の方と知り合えたからです。4年前、ネット媒体(本サイト)に参画できたこともハッピーでした。「そろそろ期」でも何か起きそうです。「頭は20代後半」ですから。(経済ジャーナリスト)

高橋氏が初当選 県議補選土浦市区

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初当選を決め支持者らとバンザイの高橋氏=5日午後10時ごろ、土浦市小岩田

茨城県知事選に合わせて5日投開票が行われた県議補選土浦市区(欠員1)は同日午後8時から、同市大岩田、霞ケ浦文化体育会館(水郷体育館)で開票が行われ、無所属新人で歯科医師の高橋直子氏(37)が初当選を決めた。いずれも無所属新人で元国会議員秘書の吉田直起氏(39)、無職の赤須理世自氏(59)は及ばなかった。投票率は31.96%、有権者数は11万6746人。

県議補選土浦市区(欠1)
当21,579票 高橋 直子 37 歯 科 医 師  無新
 12,050票 吉田 直起 39 元代議士秘書 無新
  1,189票 赤須理世自 59 無    職 無新 
  5日午後10時 土浦市選管確定

高橋氏は土浦日大高、日大歯学部を卒業。王子リボン歯科に入社し、つくばリボン歯科院長を務める。島岡宏明市議の長女で、島岡市議が所属する会派の市議らが応援した。

選挙戦では、すべての子どもたちに明るい未来を残したいと、子育て支援や教育格差の是正、福祉の充実、地盤産業の確立と中小企業の振興、TX土浦延伸などを訴えた。

お母さん議員として精一杯

午後9時45分、開票速報が知らされると、高橋直子氏の選挙事務所では、大きな拍手と歓声が起こった。祝勝会には安藤真理子市長らも駆けつけた。

あいさつに立った高橋氏は「右も左も分からない中、皆さんの支えがあってここまでくることができた。私一人の力ではなし得なかった。今、感謝しかありません。まだまだ未熟ですが、皆さんの期待に応えられるよう、子どもたちに見せられる背中をもつ、お母さん議員として、精一杯頑張っていきます」と決意を述べた

高橋直子氏 歯科医師 37 無新

【公約】①教育格差の是正や食育・子ども食堂の充実など子供たちに明るい未来づくり②健康な歯8020運動の徹底など福祉の充実③TX土浦駅延伸
【略歴】土浦日大高校卒、日大歯学部卒、王子リボン歯科入社、現在つくばリボン歯科医院長。

米国発「私たち」の物語を中学校に つくばの障害者団体が寄贈

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森田充教育長(左)に本を贈呈する川島映利奈さん(右)=2日、つくば市役所

障害者団体「つくば自立生活センターほにゃら」(つくば市天久保)が2日、同市内の中学校・義務教育学校16校に『わたしが人間であるために―障害者の公民権運動を闘った「私たち」の物語』(現代書館)を寄贈した。アメリカの運動家で、世界的な障害者リーダーであるジュディス・ヒューマンさんの自伝本。重度の障害があっても自分らしく生活できる地域づくりを目指している同センター代表の川島映利奈さん(39)は、つくば市役所での寄贈式で「障害のある子とない子が小さい頃からともに過ごす大切さを感じてもらえたら」と話した。

「分離こそ差別」

ジュディスさんは障害のために学校から排除され、「なぜ友達と同じ学校に行けないのか」と疑問に思った経験から、障害を理由に学ぶことや働くこと、地域で暮らすことから排除される社会と闘ってきた。障害が医学的な問題ではなく、人権の問題として扱われるために、1970年代からアメリカの法制度の整備に尽力した。

障害女性としての葛藤を抱きながらも、障害者が「人間であるために」当たり前の権利を獲得すべく、仲間とともに闘ってきた彼女の半生が記されている。

日本語版は2021年7月に刊行された。 四六判336ページ、2750円(税込)。翻訳に当たった曽田夏記さんは、都内の自立生活センターの職員であり、自身も障害を持ち、地域での障害者支援や全国での権利擁護運動に従事する。訳者あとがきの中で、曽田さんは「差別を受け、人間として扱われず、障害者の公民権運動を始めざるを得なかった障害者自身が語るストーリーを日本にも伝えたかった」と記している。

川島さんは寄贈式で、「障害のある子とない子が小さい頃からともに過ごすことで、お互いを知り、認め合うことができる。本書で『分離こそ差別』と書かれているが、分離することでお互いを知る機会が減ることが一番の課題。これから社会を作っていく生徒の皆さんが、少しでも障害者の歴史や課題を知り、考えていくきっかけになれば」と話した。

生徒にも先生にも読んでほしい

贈呈式に参加した森田充教育長は、「私たちは一人ひとりの違いを尊重し、互いに支え合って生きていける社会を作ることができる子どもたちを育てたいと思っている。本書には主人公が決して後ろ向きにならずに生きていく姿が描かれていて、生徒だけでなく先生にも読んでほしい」と感謝を伝えた。

寄贈された本は近日中に各学校に1冊ずつ配布される予定。同センターは2年前に、同じ志を持って東京で活動している重度障害者、海老原宏美さんの著書『わたしが障害者じゃなくなる日―難病で動けなくてもふつうに生きられる世の中のつくりかた』(旬報社)を、つくば市内の小学校・義務教育学校に寄贈している。(川端舞)

千年前、千葉県沿岸で巨大地震 歴史記録にない津波跡を発見 産総研

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写真1は今回発見された津波堆積物を含むはぎ取り標本。木枠の幅は20.5センチで、茶色の層が泥炭層、灰色の層が砂層。一番下の砂層はこの場所が海だった当時に堆積したもの。写真2は各モデルでプレート間のずれが起こると想定された範囲。いずれも産業技術総合研究所提供

産業技術総合研究所(AIST、つくば市東)は3日、千葉県九十九里浜沿岸で歴史上知られていない津波の痕跡を発見し、それが房総半島沖で発生した巨大地震によるものであると発表した。活断層・火山研究部門の澤井祐紀上級主任研究員、行谷佑一主任研究員らが、カナダ・ サイモンフレザー大学ら複数の研究機関との共同研究で明らかにした。

かつて陸地と海の境にあり現在は陸化した「海岸低地」と呼ばれる地形の地下堆積物は、過去数千年間の環境変動を記録し、数百~数千年に一度という低頻度の巨大津波の履歴を調べるのに適している。

一方、地震計や精密な地形計測など近年の機器観測は小さな断層のずれまで測定できるが、それらの機器ができる以前の断層のずれ(地震)は観測することができない。さらに歴史記録は人がいた場所しか記録されず、今回のような1000年前は泥炭地だったところは記録に残っていなかった。

産総研はこれまでに、過去に発生した津波の痕跡を調べる地質調査を日本各地で行ってきた。今回、海岸低地だった千葉県九十九里浜地域での掘削調査により、過去の津波の痕跡である津波堆積物を2層発見し、古い方の津波堆積物(砂層B)は約1000年前に堆積した、歴史上知られていない津波の痕跡であることが分かった。

太平洋プレートが沈み込むタイプは記録なし

九十九里浜地域は太平洋プレート、大陸プレート、フィリピン海プレートが1箇所で接するプレートの三重点に隣接しており、各プレート境界で形成されている日本海溝、相模トラフ、伊豆・小笠原海溝の周辺で発生する地震・津波の脅威にさらされている。

今回発見した津波がどのようなメカニズムで起こったのか明らかにするために、相模トラフ(モデル1~4)、日本海溝(モデル5~8)、フィリピン海プレートに対して太平洋プレートが沈み込む境界(モデル9,10)などを検討したところ、モデル10の領域での滑り(地震)が九十九里浜地域の浸水に大きな役割を果たしたと考えられた。

房総半島沖で発生する地震について、これまでは主に相模トラフと日本海溝で発生する地震の繰り返しが検討されており、フィリピン海プレートに対して太平洋プレートが沈み込むタイプの地震はこれまでに記録されていなかったことから、検討されてこなかった。

シミュレーションの結果では、砂層Bを堆積させた津波の震源はマグニチュード8クラスと大きかったと想定された。今回の発見は、フィリピン海プレートに対して太平洋プレートが沈み込むタイプの地震についても、さらなる検討が必要であることを示している。(如月啓)

あす投開票 県議補選 土浦

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知事選と県議補選(右)のポスター掲示板=土浦市川口

知事選に合わせて、県議補選の投開票があす5日行われる。土浦市区(欠員1)はいずれも新人で無所属の歯科医師、高橋直子氏(37)、元国会議員秘書、吉田直起氏(39)、牛久市在住で無職の赤須理世自氏(59)の3氏が立候補している。1日現在の有権者数は11万7943人。

投票は5日午前7時から午後6時まで市内50カ所で行われ、午後8時から同市大岩田、霞ケ浦文化体育会館(水郷体育館)で即日開票される。県議補選の大勢判明は午後10時30分ごろの見込み。

同市の3日午後8時までの期日前投票の投票率は知事選9.7%(8月20日から15日間)、県議補選が8.4%(同28日から7日間)。

高橋氏は、すべての子どもたちに明るい未来を残したいと、子育て支援や教育格差の是正、福祉の充実、地場産業の確立と中小企業の振興、TX土浦延伸などを訴えている。

吉田氏は、土浦の魅力を生かして、首都圏の受け皿として郊外住宅地として発展させ、自然と歴史を感じながら子育て世代がのびのび育める街にしたいなどと訴えている。

赤須氏は、現県政と従来の温かい住民密着型県政との調和をベースにした県政の実現、クリーンな政治。お金を使わない選挙の発信を選挙公報で訴えている。

「何を伝えたいか」の一つ先を 《続・気軽にSOS》92

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【コラム・浅井和幸】引きこもって家から出ないお子さんを持つ親御さんが、相談室に来談することがあります。私は、お子さんの人とのつながりがどのようなものかお聞きします。外に出ることもないので全くないという回答もあります。

親御さんに、お子さんとどれぐらいのコミュニケーションがあるのかお聞きしますと、「ほとんどない」「全くない」と答える方は多いものです。全くないということは、意思疎通が全くないということですから、「生きていけるのかな?」と疑問を持ち、例を挙げて詳細に質問をします。

例えば、テレビを見て雑談はするか? ご飯は食べるかと聞いてうなずくか? 全く顔を合わせることがないとしても、食事をドアの前においたら、食べ終わった食器をドアの前に置いておくか?

ここに挙げたような例もないという答えもありますが、ほとんどは、それぐらいのやり取りはあるようです。コミュニケーションというと、「笑顔での会話」と捉えていることが一般的のようですが、私は「意思疎通」だと思っています。このようなズレを、まさにコミュニケーションで縮めていくために、相談時間を費やすことも多いものです。

ネット検索では反論も併せて検索

自分が感じたり考えたことを、言葉や身振り、表情などで伝え、それを相手が感じ取り、解釈して返事をしたり、質問をしたりする。これを繰り返すことが大切です。特にうまくことが進まないときは、こういったやり取りを丁寧にする必要があります。

物事を単純化して、「元気になるためのたった3つのこと」とか「世の中には2つの人間しかいない」とか「簡単〇〇ダイエット」とか「これをするだけでお金持ち」といった表現がもてはやされますが、それでうまくいかないことの方が多いはずです。

全てを信じること、全てを疑うこと―どちらも同じぐらい危険や不便をはらんでいます。なので、ネットで検索するときは反論も併せて検索するとよいでしょう。人の言うことを全て鵜吞(うの)みにしていたら詐欺に引っかかるかもしれませんが、全てを詐欺と疑っていたら郵便物さえ受け取れなくなってしまいます。

失敗し、悩み、事実を受け入れながら行動をして学んで、また次に学びを生かしていくことが大切です。これさえやればよい、あるいは大逆転―といった方法はそうそうありません。

「何を伝えたいか」は日常的によく考えることだと思います。その一つ先、「どのように伝わるか」を考える習慣をつけてみましょう。そして、さらに一つ先の「物事がどのように動いて、どうなってほしいか」という目的にかなう手段として、コミュニケーションを考えてみてください。などなどと、独りよがりの押し付けの文章を書きながら、自問自答する毎日です。(精神保健福祉士)

ペイペイボーナスを9人に重複発送 8人に返金請求へ つくば市

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つくば市役所

コロナ禍、新生児を対象につくば市が独自に実施した、3万円相当のペイペイ(PayPay)ボーナス(ポイント)を贈る「ベビーポイントギフト事業」について、同市は3日、9人に3万円相当のポイントを重複して発送してしまったと発表した。一方、対象になっていたにもかかわらず発送してなかった新生児が5人いたという。

重複発送した9人のうちすでにポイントをチャージしてしまった8人に対しては、1人3万円を現金で返金するよう求めるという。1人はチャージしてなかったためポイントを取り消した。未発送だった5人には改めて発送する。

1人10万円の国の特別定額給付金の対象外となった、昨年4月28日から今年3月31日までに出生したなどの新生児全員を対象に実施した。市内の2114人の新生児に計6342万円相当のポイントを贈ったという。

市こども政策課によると、今月10日、ポイント支給担当の市経済支援室から9人分を重複して発送してないか照会があり、対象者をリストアップする担当のこども政策課が調査したところ、昨年12月1日から31日生まれの9人に、3万円相当のポイントを重複して贈ってしまったことが分かった。ほかに今年2月11日以降に市内に転入してきた5人に、ポイントを贈ってなかったことも新たに判明した。

同課によると、対象者のリストアップを出生時期ごとに4回に分けて行った際、年度切り替え時期の引継ぎ不足や複数人でのチェックができてなかったために重複が発生してしまったという。

再発防止策として、複数人での確認を徹底するなどとしている。

五十嵐立青市長は「ご迷惑をお掛けした対象者にお詫びすると共に、再発防止の徹底を図っていきます」とするコメントを発表した。

「建物の輪郭や広場の形状維持を」市民団体が再要望 つくばセンタービル

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小久保貴史つくば市議会議長に2度目の要望書と6月27日のシンポジウム報告書を手渡すつくばセンター研究会の冠木新市代表(右)

つくばセンタービルリニューアル計画について、つくば市が実施設計の入札を7日に予定している問題で、市民団体「つくばセンター研究会」(冠木新市代表)は3日、五十嵐立青市長と小久保貴史市議会議長に、建築物の輪郭や中央広場の形状を維持し、改修は室内に限定するよう求める2度目の要望書を提出した。西側エスカレーターの設置見直しや中央広場を囲う一部の壁の撤去見直しなどを求めている。

市のリニューアル計画の主な内容は▽西側(クレオ側)にエスカレーターを新設する▽現在の1階ノバホール小ホールや廊下、市民活動センターなどに市民活動拠点をつくる▽ノバホール西側外階段の半分をスロープにする―など。これまで市は、市議会の意見を受けて、北側(ホテル側)のエスカレーターについては設置を取り止めた。

これに対し要望書は、つくばセンタービルはプリツカー賞を受賞した磯崎新氏のポストモダン建築の代表作であり、築50年の2033年には登録文化財となることが間違いないのに、市のリニューアル計画では貴重な申請資格が失われることになりかねないとしている。その上で、建物の歴史的、文化的意義を尊重し、建物や広場の空間的な輪郭はそのまま保持して、リニューアルは室内改修に限定すべきだとしている。

具体的には、西側エスカレーターについて、2基の計画のうち北側の1基を市議会の決断で撤回したことは評価するが、西側(クレオ側)エスカレーターについても見直すよう求め、10メートルも離れてない位置に既存のエレベーターがあること、既存エレベーターを改修する方が安全でコストが安いこと、エスカレーター設置に伴う中央広場を囲う壁の改変や屋根の設置は広場の価値を損なうなどと指摘している。

市民活動拠点の整備については、中央広場を囲う壁の4分の1を撤去し、開閉式の透明なガラス扉に置き換える計画に対して、中央広場の特徴であるメタリックな正方形とガラス窓、ガラス扉のバランスで構成された空間構成を台無しにし、世界的に価値が認められた広場の形状を壊すとしている。

さらに市民活動拠点などを整備するに際し、1階室内の幅4メートルの廊下を2メートル以下に狭めたり、廊下をふさぐなどの計画に対して、1階からの中央広場へのアクセスが狭められ、機材の搬入や搬出がほとんど不可能となってしまい、つくば市がエスカレーターを設置する目的にしている中央広場の活性化の弊害になると指摘している。

幅が半分になり小ホール側の壁が壊されるつくばセンタービル正面玄関入り口の通路

併せて、ノバホールと小ホールの間の幅4メートルの通路は、センタービルの正面玄関入り口となっているばかりか、中央広場の楕円の長軸に沿って筑波研究学園都市の南北の主要軸を形成しており、正面玄関入り口の堅牢な石造りの壁を壊すことは、筑波研究学園都市の骨格を破壊することになるとしている。

ほかにノバホール西側の外階段を改変し、車両用のスロープを新設する計画に対しては、スロープの傾斜角度が13度を超え、急な傾斜になるとみられることから、自転車などが加速し過ぎて停止できなかった場合、歩道と、交通量が多い土浦学園線の車道に行きつき、危険な事故の誘発要因となる恐れがある危険なスロープだとし、加えて、車両の通行に限定しないと建築基準法違反の勾配になるが、人や自転車の進入を24時間防ぐことは、かなり困難だなどと課題を指摘している。

階段の半分をスロープにする計画のノバホール西側外階段

要望書を提出した冠木代表は「6月1日にエスカレーター設置の見直しを求める要望書を出し、北側の1基はなくなったが、まだまだ大きな問題点があって市民に知らされないまま実施計画に入ろうとしている。つくば市の改造計画は磯崎新さんの設計ビジョンを無視したもので、プリツカー賞をとったことに対する敬意があるのか、疑問に思う」と話している。

再要望を受け取った小久保貴史市議会議長は「(議員全員で)要望書を共有し、中心市街地の特別委員会で協議していただくことになる」と述べ、飯野哲雄副市長は「(要望書を)読ませていただいてからの話になると思う」としている。(鈴木宏子)