月曜日, 12月 29, 2025
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ホーム開幕戦はドロー つくばFCレディース

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後半アディショナルタイム、松田のシュートはオフサイドの判定(撮影/高橋浩一)

プレナスなでしこリーグ(日本女子サッカーリーグ)2部、つくばFCレディースの今季ホーム開幕戦が2日、つくば市山木のセキショウチャレンジスタジアムで開催され、静岡SSUボニータと対戦し0-0で引き分けた。現在の通算成績は0勝1分1敗、2日時点の順位は10チーム中9位。

プレナスなでしこリーグ2部・第2節(4月2日、セキショウチャレンジスタジアム)
つくばFCレディース 0-0 静岡SSUボニータ

つくばFCにとって、なでしこ2部で2季目となるシーズンが始まった。昨季は天然芝ピッチのひたちなか市総合運動公園陸上競技場をホームスタジアムとしていたが、今季はセキショウチャレンジスタジアムがJFA公認のロングパイル人工芝に張り替えられたため、慣れ親しんだつくばの地で、ファンやサポーターの応援を身近に受けながら戦うことができる。

新主将の原嶋祐芽は「久しぶりのセキショウで応援の力を感じた。新しい芝は長めでボールが走らないので、ビルドアップからパスがつながるよう、止める蹴るの基礎をしっかりやることを意識した」と話す。

前半、中盤でパスを散らす原嶋(同)

対戦相手の静岡SSUボニータ(静岡SSUアスレジーナから名称変更)は、昨季3位でシーズンを終え、つくばには2戦2勝している強豪だ。つくばは右の山口恵実、左の藤井志保らがサイドを起点にボールを運ぼうとするが、なかなか前線に収まらない。一方、相手FWの三好茜はまだ18歳ながら前線の仕事を一人で幅広くこなし、センターバックの渋谷巴菜、高田莉緒とたびたび激しいバトルを繰り広げた。前後半を通じてのシュート数は、静岡の17本に対しつくばはわずか4本。

「相手は体格や足元の技術など個の力が高く、われわれはその差を集団で補おうと、ボールを簡単に手放さず、勇気を持って運ぶことを心掛けた。もっと守備からだけでなくこちらのリズムで試合をしたかった」と、試合後の橋野威監督。

ただし惜しい場面も作った。後半36分、沖土居咲希の右サイド深くからのクロスに、石田永愛がゴール前へ飛び込み、つま先で合わせるが、惜しくもゴール左へ外れた。さらに後半アディショナルタイム、藤井のクロスを岸川りなが頭で折り返し、中央で松田留光那が反転シュート。これはネットを揺らすもののオフサイドの判定となった。

後半36分、石田がゴール前へ飛び込む(同)

「最初はオーバーヘッドしようかと思ったが、相手DFが来てなかったのでトラップして打った。オフサイドになりすごく悔しい。今日は私の誕生日なので絶対勝ちたかった。次こそ勝ち点3を取れるよう頑張る」と松田のコメント。

次節は9日、ヴィアティン三重レディースと、アウェーの朝日ガスエナジー東員スタジアム(三重県東員町)で対戦する。今季なでしこ2部に昇格し、昨季までチームメートだった鈴木朝恵も在籍するクラブなので、プライドに懸けてもつくばは負けられない。(池田充雄)

試合後、ポーズをとるつくばFCイレブン(同)

「解のない時代、社会の求める人材に」 筑波学院大学で入学式

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新入生代表として宣誓する伊藤陸さん=つくば市吾妻、筑波学院大学

筑波学院大学(つくば市吾妻)で2日、2022年度の入学式が行われた。留学生3人を含む61人が入学し、新たな一歩を踏み出した。新入生代表でILA(国際リベラルアーツ)コースの才川峻大(さいかわしゅんだい)さんが入学誓約書を提出した。

望月義人学長は、ロシアのウクライナ侵攻や、国内の経済成長の停滞などについて触れ、「激動の時代、解決の難しい時代に私たちはどのように対処すればよいのか、その答えを見つけ出すのは容易なことではない」と述べた。また4月1日から成人年齢が20歳から18歳に引き下げられたことについて「皆さんには権利と共に責任が求められる。選挙権も与えられ政治参加の機会も持っているが、この権利を生かすも殺すも皆さんの意識次第。その権利を生かすためには、何よりも判断力の元となる幅広い教養を身に付けること」だと呼び掛けた。

同大には昨年度から、英語ですべての授業を行うILA(国際リベラルアーツ)コースが設けられた。新入生は、様々な専門分野を学ぶ総合コースかILAコースのいずれかのコースで学び、2年次から人文科学、社会科学、経営学、情報デザインの4つの分野を専門科目として選択する。4つの分野は専攻の壁を越えて履修することができる。

望月学長はこのようなカリキュラムの特徴についても説明し「これらの授業を満遍なく履修することで、英語で仕事ができる公務員、経営に強いデザイナー、プログラムが書けITに強いビジネスマンなど社会の求める人材になれると確信している」と話した。さらに「何かの答えを見つける際にインターネットで検索すればすぐ答えが見つかる気がするかもしれない。しかし、解のない時代、本当に大事な場面で生きるのは、自分で考え抜き、試行錯誤をした経験だと思う。専門性を追求するのも大事だが、それ以上にベースとなる教養をまず身に付けてほしい。本を読んで、人と議論し、新聞などのメディアに接して、さまざまな世界があることを知る。入学を機会に、考え、試行するという過程を大切にしていただきたい」と式辞を述べた。

橋本綱夫理事長は、小さな達成と新しい刺激を積み重ねて、来たるべきチャンスに備えてほしいと話し、「いろんなことに興味を持って、疑問を持って、そこから学びを深めていってほしい。いろんな専門分野の先生がいらっしゃるので、皆さんの好奇心、探究心にどんどん応えていってくれると思う。ぜひ教職員の先生方を活用し、学びを深めていってほしい」とあいさつした。

緊張した面持ちで式典に臨む新入生たち

これを受け、新入生代表の伊藤陸さんは「このコロナの逆風の中で、あきらめず進み続けられた私たちならば、それぞれの目標を達成できると信じている。私たちは運命でつながっており、大学生活においても互いに協力することができる。この恵まれた環境で学ぶことの楽しさや新しい仲間との出会いを大切にし、大学生活をより良いものにしていきたい。それぞれが掲げている目標に向かってかじを取るのはもちろんのこと、物事を多角的視点から見られるようになるためにこれから様々なことに挑戦したい。ゆくゆくは社会に貢献できる人間に成長したい」と宣誓した。

式典に臨んだ新入生の髙橋つかささんは「この日を迎えられてうれしい。大学ではサークル活動をしてみたい」と大学生活への希望を話した。

式典は、新型コロナ感染防止のため新入生と教職員のみで行われ、保護者の出席はなかった。新入生は入り口での検温と手指のアルコール消毒を行って入場、1席ずつ開けて着席した。(田中めぐみ)

キャンパスの風景変える開放系のファサード【つくば建築散歩】2

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筑波大学 総合研究棟D(写真はNPOつくば建築研究会発行「つくば建築フォトファイル」から斎藤さだむさん撮影・提供)

筑波大学 総合研究棟D

2000年代初頭、筑波大では部分的なキャンパスリニューアルを進め、次世代研究や授業の拠点となる施設を新築した。中でも、従前の大学施設に見られる茶褐色系の落ちついた意匠から離れ、メタル系の外装とガラスカーテンウオールを駆使した斬新な建物として2004年に完成したのが総合研究棟Dだ。本連載のコメンテーターである筑波大学名誉教授の鵜沢隆さんの設計作品でもある。

視点の移動で表情が変化

【鵜沢名誉教授コメント】「学内を環状に循環するループ幹線道路の南端の敷地に、新たな大学院教育・研究施設を設計するにあたり、道路に沿って湾曲した建築のボリューム計画が、その必然的なスタートラインであった。それに対して大学施設部からは、他の大学施設との連続性から、キュービックなボリュームの建築が強く求められたが、最終的にはデザインに対する全面的な理解と支持を獲得して実現した。

総合研究棟D(同)

主要な設計意図は、緩くカーブする開放的で、柔らかな外観の表現と、連続的に変化する道路からの視点に応じて表情が変化する、建築の外観の実現にあった。

そこで採用されたファサード(正面の外観)の素材が、開放的なガラスとFRP(繊維強化プラスチック)のグレーチング(格子状の構造材)であった。FRPのグレーチングは、視点の移動による表情の変化が意図されただけでなく、直射日光や西日のコントロールのためにも採用された素材であった。その結果、教育・研究施設としての開放的な空間を実現したばかりか、筑波大学の新しい建築のシンボルとして学内外から受け入れられることにもなった。

建築の外観のみならず、各階のインテリアには様々なデザイン的仕掛けが施されているが、教員や学生たちには、それらのデザインはすでに日常的な風景となっているようだ」

総合研究棟Dの内部。各階のインテリアには様々なデザイン的仕掛けが施されている(同)

次世代のイメージを実現

【建築散歩】この建築プロジェクトで、名誉教授で建築家の鵜沢隆さんと出会った。

当時、芸術学系教授であった鵜沢さんは、学生が通って快適さを感じる開放的な建物を提案した。建物はキャンパス内をループする周回道路沿いの建設敷地で、周回道路に沿った外観を特徴とするような配置計画を描き、実際の研究棟も道路側ではけやき通りからかえで通りに連なる道の、アールに寄り添うような曲面で建設されている。

このファザードが、今ではスタンダードとなった金属製ルーバー(細長い板を平行に複数並べたもの)による意匠表現を与えられ、研究棟本体がコンクリートの塊である様子を感じさせない。ルーバーの内側はサッシュ(窓枠)を含めたガラスのカーテンウオールが見え隠れしており、質実剛健な印象を与えた他の総合研究棟に対して、並木道と融合した次世代のキャンパスイメージを実現させた。

設計は、東京ビッグサイトの設計で有名な佐藤総合計画が協力している。佐藤総合計画は、土浦市役所旧庁舎(2020年5月17日付)や改修以前の土浦市民会館(20年5月16日付)を手がけた佐藤武夫建築設計事務所が前身だ。(鴨志田隆之)

筑波大学大学会館にある、もう一つの鵜沢隆名誉教授設計の「総合交流会館」夕景。開学30周年記念として2006年に竣工した。鵜沢名誉教授は「学内外の交流と大学の情報発信の象徴的な拠点として、大学会館の閉鎖的な空間とは対照的に、開放的な『ガラスボックス』を大学会館に貫入させる意匠となった。この施設の実現によって、学外からの車による直截的なアクセスが視覚化された」とコメントしている(同)

続く

➡つくば建築散歩1 槇文彦、筑波大学大学会館はこちら  
➡つくば建築散歩3 坂倉建築研究所、つくば国際会議場はこちら 
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➡つくば建築散歩7 磯崎新、つくばセンタービルはこちら (敬称略)

認知のゆがみ《続・気軽にSOS》106

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【コラム・浅井和幸】私の若いころ、不良少年同士で目が合うと、ケンカをすることがよく起こりました。たまたま目が合うだけで、相手がケンカを売ってきたから、ケンカになった。悪いのは相手であり、自分は売られたケンカを買っただけと、お互いが言うのです。

まったくケンカをすることもない、オタクっぽい容姿の生徒が見ただけでも、「ケンカ売ってんのか、おらぁ」となります。これは、血気盛んな若者だからという理由だけでなく、うまく物事が捉えられない、認知のゆがみからくるものかもしれません。

当人は、相手が自分と目が合うことは、ケンカを売ってきていると決めつけて、世界を捉えています。ケンカを売る気はない相手の行動を、ケンカを売ってきていると、本気で感じているのです。

これは、昔の不良少年に限った話ではありません。物事を決めつけ、マイナス思考をして、飛躍した結論を出す。生きづらさを抱える人が日常的にやっていることがあります。

例えば、一つの仕事がうまくいかなかったことに対し、自分は運が悪い。まじめに仕事をしているから、うまくいかない。周りのうまくいっている人たちは、ズルいことをしているから、うまくいく。自分は、ズルができないから、周りからバカにされている。

例えば、自分は相手のためにアドバイスをしてやったのに、相手はその通りに動かない。相手は自分をなめている。自分はバカにされている被害者だ。自分は被害者なのだから、相手とこの社会から賠償金を取らなければいけない。

人間の力はそう大差はない

これらは極端ではありますが、デマに流されやすい人、いつも自分が不幸である人、陰謀論に流され自分だけは世界の裏や真実を知っていると考えている人は要注意です。世の中、良いことも悪いこともあるし、少々の能力差はあっても、人間の力はそう大差はないものです。

自分だけ大きな力を持っている、自分だけ大きな不幸を背負っている、周りの人は何の苦しみもなくうまく生きている―というような極端なことはありません。

人は1人でいると、考え方、感じ方が偏るものです。孤独は思考を深めますが、極端に非合理な方向に向かってしまうことがあります。何かうまくいかないな、悪循環になっているなと思ったら、そしてそれがとても苦しいものだったら、カウンセラーや医師に相談してみてください。

「自分はどうかな」と思ったら、ネットで「認知のゆがみ」「認知行動療法」とかで検索してみてください。何かに気づくことがあるかもしれません。人や社会は、良いところも悪いところもあるし、ポジティブな部分もネガティブな部分も持っているものです。

どちらもあるし、その中間もある。その程度問題の中で、自分が向かいたい方向を見つけられる言動を積み重ねましょう。(精神保健福祉士)

学園都市黎明期の原風景【つくば建築散歩】1

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筑波大学 大学会館(写真はNPOつくば建築研究会発行「つくば建築フォトファイル」から斎藤さだむさん撮影・提供)

筑波大学 大学会館

2022年は、筑波研究学園都市の開発建設に関する閣議了解、正確には国の省庁・機関を茨城県南部へ移転させる閣議了解(1967年)から55年、国家公務員宿舎の入居開始(1972年)から50年にあたる。半世紀にわたる都市の成長、成熟の中で、建設省(現国土交通省)、住宅・都市整備公団(現UR都市再生機構)などの公的機関が多くの建築物を手がけ、様々な建築家や設計事務所を採用したことで、筑波研究学園都市自体が都市開発と建築物の博物誌を醸成する結果となった。

現存するつくばの名建築を紹介する第1弾として7カ所を紹介する。しかしこれは「つくばでうまいラーメン屋はどこでしょうか」と問われるのとあまり変わりなく、あちらを立てたらこちらもか、建築ごとに好き嫌いの意見も分かれそうだ。

今回、つくば市在住の建築家であり、筑波大学名誉教授の鵜沢隆さんに建築物の紹介をお願いした。写真は、同じくつくば市在住の写真家として活躍する斎藤さだむさんが、書籍「つくば建築フォトファイル」に収録した竣工当時の撮影写真を提供していただいた。同書を出版するNPOつくば建築研究会からも、収録写真の使用について快諾をいただけた。

どこから始めたものかで迷った中、初回は槇総合計画事務所、槇文彦さんの設計による筑波大学大学会館とした。連載のスタイルとして、まず鵜沢名誉教授の建築紹介から始める。

筑波大大学会館講堂(同)

その後の大学の外観意匠決定付ける

【鵜沢名誉教授コメント】「筑波大学開学初期の中心的施設で、その外壁の暗い赤茶色の仕上げとキュービックなボリュームが、その後の各大学施設の外観意匠を決定付けた。大学諸施設に落ち着いた統一感は生まれたものの、全体的に沈鬱(ちんうつ)なキャンパスの印象をつくり出した点も否定できない。

キャンパスの中心的施設でありながら、学内のペデストリアンに対してのみ開かれた建築であるため、大学外部からのアクセスは不明瞭で、孤立した大学施設の印象は否めない。

そうしたネガティブな機能を補完するため、大学会館に接続し、大学の新たな玄関口となる空間の設計を大学本部から私が依頼された。こうして2006年に竣工したのが、開学30周年記念「総合交流会館」(あす2日付で紹介)である。

学内外の交流と大学の情報発信の象徴的な拠点として、大学会館の閉鎖的な空間とは対照的に、開放的な「ガラスボックス」を大学会館に貫入させる意匠となった。この施設の実現によって、学外からの車による直截的なアクセスが視覚化された」

キャンパスの顔

【建築散歩】旧東京教育大学を改称し、1973年に設置された筑波大学は、研究学園都市の研究学園地区内に4つのコアをゾーニングして整備された。そのうち中央コアと呼ばれる、文字通りキャンパスのセンターゾーンに、同じ槇文彦さんが設計し1974年に完成した大学会館が所在する。

中央コアは複数の建物が中庭を囲むように配置されており、学内行事に活用される会館のほか、外来者にも対応したレストランや商業店舗、宿泊機能が網羅されている。80年代に都市整備を所管していた住都公団(UR都市再生機構)の案内でキャンパスを訪ねた折、公団担当者は「東京大学との比較は無意味かもしれませんが、筑波大は、広く世界と交流し、物事を提案する人材育成を目指しています」と語っていた。

大学会館は、学生達がコミュニケーションを図り、内外への情報発信を行う空間であり、研究学園地区を貫くペデストリアンデッキからもキャンパスの「顔」としてたたずむ。用途は開放形だが、会館を含む中央コアの建物群は、さながら要塞のようにも見える。

大学会館と共に槇さんは体芸棟を設計した。壁面がガラスのブロックパネルで構成された体芸棟は、筑波山に向かって大学会館を目指す門の役割を果たす。

筑波大学体育芸術専門学群中央棟(同)

槇さんは、ヒルサイドテラス(東京都渋谷区、旧山手通り)、幕張メッセ、同新展示場・北ホール(千葉市)や朱鷺メッセ(新潟市)、横浜アイランドタワー(横浜市)、東京体育館等で知られるが、85年のつくば科学博Aブロック外国展示館、民間企業研究所といった、つくばでの建築も手がけている。(鴨志田隆之)

続く

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こどもと一緒に本を読むということ 《ことばのおはなし》44

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【コラム・山口絹記】娘と一緒に本を読むようになって、かれこれ7年近くになる。ゼロ歳の頃から読み聞かせを始めて、一体何冊読んだだろうか。我が家には娘の本が200~300冊あるのだが、図書館からも2週間ごとに20冊借りている。本によっては同じものを何百回と読み返すから、単純に何冊という話でもなさそうだ。

こう書くと、育児や教育に熱心という印象を抱かれそうだが、私はお世辞にも良い父親ではない。娘に「公園に行こうよ」と言われても、「えー、ヤダ!」なんて言う親だ。私は出不精だけど本ならいくらでも読んでくれる、ということを、2歳の頃には娘なりに認識し、本の束を抱えて私のところに持ってくるようになった、というだけのおはなしだ。

7年間。ずいぶんと、いろいろなことがあった。

母親がいないと常に泣いていた娘が、いつしか『くつしたくん』や『バスなのね』を読めば泣き止むようになった。上野公園で買ってもらった『よるくま』のぬいぐるみとはいつも一緒だったし、『あいうえお でんしゃ じてん』は一緒に暗記するまで読み込んだ。

『くまたくんシリーズ』や『リサとガスパールシリーズ』は私が好きで一人で読んでしまい、娘に見つかってよく怒られた。私が脳内出血で失語になったときは、娘が『だいすき ぎゅっ ぎゅっ』を代わりに読み聞かせてくれた。

休みの日は、絵本を10冊読むことから始まり、私がトイレの便座に座っているときも本が運び込まれ、本屋に行けばまず1時間は帰れないし、私が自分の本を読んでいるときも「声に出して読んで」と頼まれる。

そして今、斉藤洋さんの『ルドルフとイッパイアッテナシリーズ』や、角野栄子さんの『魔女の宅急便シリーズ』、畠中恵さんの『しゃばけシリーズ』、上橋菜穂子さんの『守り人シリーズ』あたりを一緒に読んでいる。

6歳児と34歳が知識を探り合う

もともとは、もうすぐ小学生になる娘の読み聞かせ卒業に向けて、昨年から準備を始めたのがきっかけだった。今まで一緒に本を読むときは、読み聞かせというよりは、読みながらおしゃべりをするような感じだったのだが、本を読むというのは、本質的には孤独な行為だ。

読書という行為の、底の見えない深淵(しんえん)の淵に手をつないで一緒に立ち、共に底をのぞいてみる。つまり、「一人で本を読むというのも、こんな感じで面白い」という体験をさせる、読書独り立ちしていく娘への、私なりのはなむけのようなつもりだったのだ。

だがしかし、絵本を読むそのノリで、小説を読むのが楽しくなってしまったようだ。そして、私も楽しい。完全に予想外である。

6歳児と34歳がお互いの語彙(ごい)や知識を真剣に探り合い、共有しながら物語の中を進むとどのようなことになるのか。というおはなしはまた次回にしよう。(言語研究者)

【1日午後1時30分】写真を差し替えました。

嘉納治五郎の書を初公開 筑波大体育ギャラリーリニューアル

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リニューアルオープンした筑波大体育ギャラリー。中央には筑波大ゆかりの嘉納治五郎、金栗四三、野口源三郎のレジェンド3人のタペストリーが展示されている

東京2020まで五輪の系譜たどる

筑波大学(つくば市天王台)体育ギャラリーが31日、リニューアルオープンした。明治時代、日本のオリンピックの礎を築いた同大ゆかりの柔道家、嘉納治五郎直筆の書から、昨年の東京五輪で活躍した筑波大出身アスリート49人の写真パネルまで、五輪にまつわる約90点の資料や記念品を展示し、同大にかかわる五輪の系譜をだとっている。

同ギャラリーは新型コロナ感染拡大防止のため約1年半休館していた。今回、内容を一新して再オープンした。

展示されているのは、初公開となる嘉納直筆の書、昨年7月つくばで開催された東京五輪聖火リレーのトーチ、昨年の東京オリンピック・パラリンピックで活躍した筑波大出身アスリート49人の写真など。

嘉納治五郎直筆の書について説明する大林太朗体育系助教

嘉納は筑波大の前身の東京高等師範学校校長で、東洋初の国際オリンピック委員会委員を務め、日本のオリンピック初参加に尽力した。展示を企画した同大体育系の大林太朗助教によると、直筆の書は嘉納が70代の時にしたためた。「天下で大きな成功をなす者は皆、努力をしている。名をなす者は小さな積み重ねを大事にしている」という意味の書で、大林助教は「筑波大アスリートにもつながる人生訓」だと説明する。

聖火リレーのトーチは、昨年つくばの最終ランナーを務めた元体操選手の加藤澤男名誉教授(75)が実際に持って走ったトーチだ。加藤名誉教授は東京教育大出身(現筑波大)で、五輪3大会に出場し8個の金メダルを含む計12個のメダルをとった。31日のリニューアル記念式典に参加した加藤さんは「嘉納先生の活躍から今日までの流れを大事に、これから変容していく中でも、精神を生かしていけるよう願っている」と後輩の筑波大アスリートに言葉を贈る。

つくばの最終ランナーとして昨年実際に持って走った聖火リレートーチを見る加藤澤男筑波大名誉教授

写真パネルは縦1.8メートル、横3.7メートルで、昨年の東京オリンピック・パラリンピックで競技した選手たちの躍動する写真が1枚のパネルに貼られている。ギャラリー手前の廊下に展示されており、一般の見学者が筑波大アスリートに向けて、ボードの余白に直接メッセージを書くことができる。

記念式典であいさつに立った永田恭介学長は「力を尽くした人たちがいたことをレガシーとして次の世代に伝え、スポーツがもつ力やスポーツが何をなし得るかを皆で考えていければ」と話した。(鈴木宏子)

昨年の東京オリンピック・パラリンピックに出場した筑波大アスリートの写真が貼られた巨大パネル

◆筑波大学体育ギャラリーは体芸棟(5C棟)2階にあり、平日のみ開館。だれでも無料で見学できる。

Leo Esakiメインホールに つくば国際会議場大ホール ネーミングライツで命名

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「Leo Esaki メインホール」と命名されるつくば国際会議場大ホール(写真は関彰商事提供)

つくば市竹園のつくば国際会議場大ホールが4月1日から「Leo Esaki(レオ・エサキ)メインホール」、同市大角豆(ささぎ)の大角豆歩道橋が「桂不動産 大角豆歩道橋」になるー県が今年、ネーミングライツ(施設命名権)を公募し、つくばの2施設の新たな通称名が決まった。

県は2019年度に初めて2施設でネーミングライツを導入した。3年後の今年は歩道橋などのインフラ系施設も対象にするなど、募集件数を164施設と大幅に増やして募集をかけ、このほど契約延長2施設を含め18施設を選出した。146施設は応募がなかった。

つくば国際会議場大ホールは関彰商事が年間550万円で3年間の命名権を獲得し、大角豆歩道橋は桂不動産が42万円で5年間の命名権を得た。

県全体ではこれまでの2施設(年額計1720万円)から18施設(4916万円)となり、県の命名権料収入は2.9倍に増えた。

大井川知事は24日の定例記者会見で「県の資産もただ単に何もしなければ、維持費がかかるだけというところに、民間とのウィンウィンの形で、少しでも収益を上げるということは、県の財政、県民の負担に対して一つの工夫になる」と話し、今後も積極的に進めたい意向を示した。

つくば国際会議場大ホールを「Leo Esaki メインホール」と名付けた理由について関彰商事は「つくば国際会議場には、関彰商事が賞の創設以来、単独協賛を行っている『江崎玲於奈賞』の主催者でもある茨城県科学技術振興財団やつくばサイエンス・アカデミーが入居していることから、今後も科学技術の発展に貢献したいと願い応募した」とした。

さらに「国際的な催事も開催される施設なので、企業名を付けるのではなく、茨城県やつくば市が持つ魅力のひとつである世界に誇る科学技術力を広く発信するようなネーミングが相応しいと考えた。そこで、ノーベル物理学賞を受賞し、長年にわたり茨城県科学技術振興財団の理事長として尽力されている江崎玲於奈先生の功績をたたえ、感謝の意を込めて江崎先生の名前を付けることが最適であるとの考えに至り、本人にも相談の上、命名した」としている。(花島実枝子)

▶ネーミングライツを新規に導入した16施設

施設名命名権を獲得した企業ネーミング(通称名)命名権料
(万円/年)
契約期間
(年)
取手競輪場ケイドリームス楽天ケイドリームスバンク取手8003
つくば国際会議場 大ホール関彰商事Leo Esaki メインホール5503
笠松運動公園 陸上競技場水戸信用金庫水戸信用金庫スタジアム4904
大洗マリンタワー・港中央公園ひたちなかエネルギーロジテックHELTEC大洗マリンタワー
・HELTEC港中央公園
3402
総合福祉会館関彰商事セキショウ・ウェルビーイング福祉会館3303
いばらき量子ビーム研究センター中山商事AYA’S LABORATORY
量子ビーム研究センター
2003
さしま少年自然の家坂東太郎ばんどう太郎 さしま少年自然の家1802
茨城空港駐車場トヨタレンタリース茨城トヨタレンタリース 茨城空港駐車場1203
里美野外活動センター学校法人リリー文化学園リリーアカデミー キャンプセンター 502
笠原歩道橋桂不動産桂不動産 笠原歩道橋 425
白山西小学校前歩道橋桂不動産桂不動産 白山西小学校前歩道橋 425
大角豆歩道橋桂不動産桂不動産 大角豆歩道橋 425
境町山神町歩道橋ほしいもの百貨干し芋カフェHOSHIIMONO100 Café 境町山神町歩道橋 365
文京二丁目歩道橋桂不動産桂不動産 文京二丁目歩道橋 325
阿見町役場歩道橋桂不動産桂不動産 阿見町役場歩道橋 225
県庁東公園柴建築設計事務所県庁東公園 SHIBA 205

▶ネーミングライツを更新した2施設

県民文化センター廣澤精機製作所  ザ・ヒロサワ・シティ会館9003
笠松運動公園 屋内水泳プール兼アイススケート場山新山新スイミングアリーナ7203

柚のランドセル 《短いおはなし》1

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挿絵は筆者
伊東葎花さん

【ノベル・伊東葎花】

わたしの名前は柚(ゆず)。4月から小学生になるの。

ママにもらったランドセルはオレンジ色。

太陽の色だねってママが言った。

わたしはママとふたり暮らし。

ママは隣町の研究所で働いているから、わたしはいつもお留守番。

だけど寂しくないわ。だってもうすぐ小学生だもの。

今日、ママは会社をお休みした。

「柚、いっしょに小学校へ行くわよ」

ママはそう言って、よそ行きのお洋服を着せてくれた。

小学校へ行くのは初めてだったから、すごくうれしかった。

ママはわたしの手をぎゅっと握った。顔が少し怖い。

小学校は、とても大きかった。広い庭を囲むように、桜の木が植えられている。

まだ3分咲き。入学式にはきっと満開ね。

ママは、口をぎゅっと結んで職員室に入った。

「教頭先生、入学を承認して下さい」

「またあなたですか」

窓辺に座っていた教頭先生が、あきれた顔をした。

「今日は娘を連れてきましたの。ほら、見てください。どこから見ても立派な6歳児でしょ。他の子と、何ら変わりありません。お願いします。柚を入学させてください」

教頭先生は、困ったようにため息をついた。

「確かにこの子はよくできています。人間そっくりだ」

「人間ですよ。年齢に合わせて成長させるし、感情だってあるんです」

「どんなに人間そっくりでも、ロボットの入学は認められません」

「柚は人間です」

「参ったなあ」と、教頭先生は頭をかいた。

「ちょっと調べさせていただきましたが、あなた、数年前に娘さんを亡くされてますね。小学校の入学前だったとか。それで娘さんそっくりのロボットを造った。お気の毒だと思います。お気持ちはわかりますよ。だけどね、その子は人間じゃない。どんなに高性能でも機械だ。残念ですが、何度来ても答えは同じです」

ママは唇をかみしめて、今にも泣きそうな顔をした。

帰り道、ママは手をつないでくれなかった。

ただ悲しそうに、桜の花を見上げていた。

家に帰っても、ぼんやり空を見ていた。

顔をのぞき込むと、ママは泣いていた。

わたしが小学校へ行けないから。わたしがロボットだから。

悲しい気持ちは理解できるけど、わたしの目から涙は出ない。

いっしょに泣いてあげられなくてごめんね。

西の窓から夕陽が射し込んで、ランドセルを照らした。

「ママ見て。夕焼けとランドセル、同じ色だね」

ママは振り向いて、少し笑った。

そしてわたしをぎゅっと抱きしめて「ごめんね、柚」と何度も言った。

きっとわたしじゃなくて、天国の柚に言ったんだ。

柚が行くはずだった小学校。柚のランドセル。

夕焼け空が、夜の色に変わっていく。

ねえママ、明日もわたし、ママの子どもでいいんだよね。(作家)

【いとう・りつか】小説ブログを始めて12年。童話、児童文学、エンタメ、SFなど、ジャンルを問わずに書いている。文学賞にも挑戦中するもやや苦戦気味。第19回グリム童話賞大賞、第32回新見南吉童話賞特別賞、第33回日本動物児童文学優秀を受賞。妄想好き。猫好き。趣味は読書と太極拳。東京生まれ、美浦村在住。伊東葎花はペンネーム。

ビオトープコンクール受賞 つくばこどもの森保育園を大岡環境副大臣が視察

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子どもたちと記念植樹する大岡環境副大臣(左から3人目)。地域で養蚕が盛んだったころから守られてきたヤマグワの木を植えた。甘い実は鳥たちが好み、子どもたちのおやつにもなるという

つくばこどもの森保育園(古谷野好栄園長、つくば市沼崎)を30日、大岡敏孝環境副大臣が視察し、記念植樹をした。同園の園庭は1月23日に開かれた全国学校・園庭ビオトープコンクール2021(日本生態系協会主催)で、上位5賞の一つである環境大臣賞を受賞した。幼児期から自然や生き物と日常的に触れ合える環境づくりが評価された。

大岡副大臣は、さまざまな木や草花が育つ園庭を視察。園児たちが育てている麦畑や野菜畑、カブトムシ牧場にもなっている堆肥ヤードなどを巡った後、子どもたちと一緒にヤマグワの苗木を記念植樹した。

その上で「ビオトープを中心に自然と共生した保育園で、子どもたちが伸び伸びと健やかに育っていることがよく分かる。好奇心を刺激するものがたくさんある環境で、自然科学への興味の持ち方など、子どもたちの将来を広げる大きなモデルの一つになると思う。今後少子化などが進む中、幼児をどのような環境で育てたらいいか、全ての大人に一緒に考えてもらいたい」と話した。

土に親しむ子どもたちを見守る大岡副大臣

同園は平地林の自然公園、豊里ゆかりの森に接した場所にあり、2012年の開園当初から、自然環境の中でいろいろなものに触れて遊び、学べる「ビオトープがある保育園」を特色としてきた。園庭には樹林、田んぼ、畑などがある。

同園を監修したビオトープの専門家、三森典彰さんは「平地林の環境を残すと共に、その縁に水辺環境として田んぼを作ることで、地域の生き物を呼び込み、人間の暮らしと生物の暮らしが共存できる場になった。いろんな色の木々や草花、日差しの暖かさや木陰の涼しさ、水の音や落ち葉の音など、五感を生かした多様な体験をもたらしてくれる」と、そのコンセプトを話す。

農家や造園家、樹木医などさまざまな人々が支援に携わり、また職員もビオトープ管理士の資格を取得するなど、内外のサポートにより高いレベルを維持し、活動の幅や奥行きをますます広げていることも評価されたという。

樹林に囲まれた園舎前で記念撮影

古谷野園長は「忙しい中で管理は大変だが、子どもたちの目の輝きや、自然を使った遊びにのめり込む姿を見て変わってきた。オオバコ相撲や、麦わらストローでのシャボン玉づくりなど、職員自身も生き物に興味を持ち、一緒に取り組んだことでステップが上がり、環境を通していろんなものを教えていけた」と振り返る一方、今回の受賞と視察について「子どもたちの自然な姿を見てもらえ、職員も気持ちが高まった。これをきっかけにさらに豊かな環境を育み、地域を巻き込んだ活動を発展させていきたい」と展望した。(池田充雄)

「千本桜」通し新たなつながりを つくば市研究学園で第1回さくらまつり 

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会場となるつくば市学園南、研究学園駅前公園のカンヒザクラ前で、左から島田由美子さん、椎名敏江さん、長谷川里美さん、吉田絵里子さん

4月2日 4つの市民団体が連携

つくばエクスプレス(TX)研究学園駅周辺には、もともとの集落住民や地権者らが2007年から植樹してきた「千本桜」がある。千本桜を通して住民同士の新たなつながりをつくりたいと、4つの市民団体が実行委員会をつくり、4月2日、同市学園南の研究学園駅前公園などで「第1回研究学園さくらまつり」を開催する。公園内の8種類の桜を探すゲームなど手作りのイベントが楽しめるまつりだ。

千本桜は、同駅周辺を彩豊かで潤いのある街にしようと、地権者団体「葛城・遠東地区まちづくり協議会」(現在はNPO法人研究学園・葛城、いずれも飯島昇代表)が2007年、「千本桜まちづくり事業」として調整池の周囲に植樹したのが始まり。以来2019年まで、駅周辺の調整池や公園などにソメイヨシノ、ヤマザクラ、河津桜、しだれ桜などの苗を800本以上植樹してきた。TX沿線開発前からある桜と併せると1000本を超えるという。

「さくらマップ」きっかけ

さくらマップ

今年1月、NPO研究学園・葛城が、植樹した桜と開発前からある桜の見どころを写真や地図で紹介する「さくらマップ」を作成し、周辺地区の家庭に配布した。

この「さくらマップ」をきっかけに、地域住民がつながり、いずれは地区を代表するようなイベントをつくりたいと、同地区を中心に活動する4つの市民団体が連携して実行委員会をつくり、さくらまつりを企画した。

4団体は、地域で住民の交流を図る活動をする「研究学園グリーンネックレス タウンの会」(島田由美子代表)、研究学園駅前公園の雑木林で毎月子どもの遊び場を開設している「つくばdeプレイパークひろめ隊」(吉田絵里子代表)、研究学園でウォーキングを楽しむ「つながる@研究学園」(北坂あやの代表)、新しい投てきスポーツ、モルックを楽しむ「モルックステーションつくば」(松崎良範代表)だ。

実行委員の中心となっているグリーンネックレスの島田由美子さん(60)は毎月、駅周辺でごみ拾い活動を行っている。「街の美化だけでなく、人と人のつながりをつくっていきたいとの思いで活動している。今回のさくらまつりを機会に、もともとの住人と新しい住人、高齢の方と子どもたちといった縦のつながりと、市民グループ同士の横のつながりの両方をつくっていきたい」と話す。

同じグリーンネックレスの椎名敏江さん(77)は「ここで育った子どもたちが心のふるさとと思えるようなまつりにしていきたい」と意気込みを語った。プレイパークの吉田絵里子さん(47)は「さくらまつりを主催するのは一市民。来る人も、ただ参加するだけでなく、一緒になって楽しんでつくっていけるまつりにしたい」と話す。(門脇七緒)

◆「第1回研究学園さくらまつり」は4月2日(土)午前10時~午後2時まで、会場は研究学園駅前公園など。開催イベントは以下の通り。
▷セグウェイとゴミひろい=午前10時、学園の杜公園南側に集合、研究学園駅前公園までセグウェイとの歩行を楽しみながら歩道のごみ拾い
▷青空図書館、輪投げ、プレイパーク=午前11時から午後2時まで、研究学園駅前公園の遊具付近や雑木林にコーナーを用意
▷セグウェイ試乗会=午前11時30分から午後1時、同公園で
▷さがせ!さくらエイト=同公園内に植樹されたソメイヨシノ、八重桜など8種類の桜の木を探す
▷さくらまつりシールラリー=4つのイベント参加者に先着で花の種、植物の種で花の形のマグネットを手作りできるキットなどの景品を贈呈

◆当日の問い合わせは、グリーンネックレス タウンの会のFacebookページ(https://www.facebook.com/kenkyugakuen.town)、または研究学園さくらまつり実行委員会の島田由美子さん(電話090-1738-3699)へ。

ウクライナ危機と日本の戦略 《ひょうたんの眼》46

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メジロの来るツバキ

【コラム・高橋恵一】プーチン大統領のロシア軍が、ウクライナへの理不尽な侵攻をしてから1カ月が過ぎてしまった。ヨーロッパ各国をはじめ、ほぼ全世界が非難する中で、プーチン大統領は、核兵器使用や第3次世界大戦も厭(いと)わないという、無茶(むちゃ)ぶりだ。ウクライナの市民と動員されたロシア側兵士の生命がどれだけ失われるのだろうか?

日本は、この事態にどう対処すればよいのだろうか。当面は、経済的負担、支援をしながら、欧米に歩調を合わせて行くしかないのだろう。今後は、安易に、防衛力の一層の強化が叫ばれるのだろうか?

しかし、今回のプーチン大統領の侵略行為が、先の戦争における日本の行動によく似ていることを考えれば、日本の軍事力強化策は、世界や日本国民が受け入れるとは思えない。また、兵器は限りなく進化(?)高度化(?)するので、絶対安全な軍備などはありえないことも明らかになった。中国で「矛盾」という言葉ができたのは何千年前なのだろう?

絶望的な2度にわたる世界大戦の反省から、戦後の世界秩序を構築したのは、国連であり、戦勝国の武力を抑止力とした。しかし、武力の裏付けは経済力競争になり、結局、人類に平和をもたらしていない。ウクライナ以外にも、危険な地域はたくさんある。

一方、先の大戦の反省から生じた考え方、行動規範に、ユネスコ憲章があり、日本国憲法がある。日本国憲法は、平和の実現のために武力を使わないという日本の姿勢を、「国際社会における名誉ある地位」とし、ユネスコ憲章では、国家間の平和を維持するためには「政府間の政治的、経済的取り決めではなく、国民間の相互理解・尊重と連帯が必要」としている。

現在の、国際紛争の要因として、経済力の成長競争があり、所得格差の拡大がある。裏返して、軍拡競争にもなっているが、人間生活の真の豊かさ、安心を考えたとき、基準を考え直して、地球規模で持続可能な社会構築に目標を置くよう提案されている。

自らの国民力・多面的な自給力

日本がとるべき戦略は、自らの国民力・多面的な自給力をつけることではないか。「日本は小資源国なので」という認識が一般的だが、温帯地帯の自然環境にあり、広大な海洋に囲まれていて、知的技術的水準の高い日本の地政学的な可能性は膨大である。耕作放棄地の再生や養殖の拡大による水産業などによる、食糧自給率の確保。太陽光や地熱、風力などと共に、森林資源やバイオ燃料の発電。昔、水車のあった渓流や小河川ならダムを作らなくとも小水力発電ができる。

挙げればきりがないが、自らの国土や海洋が有する資源を活用して、自給率を高める取り組みは、太平洋諸国やアジアの諸国でも一緒に協力して推進できる取り組みだ。日本の、そのような行動こそ、国民同士の理解、相互尊重が向上し、アジア太平洋地域、ひいては世界の平和実現に実質的な役割を担うことができると思う。(地図好きの土浦人)

陸上競技場整備は「概ね妥当」 大規模事業評価委が答申 つくば市

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大規模事業評価委員会の様子

つくば市が上郷高校跡地(同市上郷)に建設を計画している陸上競技場の必要性や効果などを検証する第8回大規模事業評価委員会(委員長・横張真東京大学大学院工学系教授)が29日、同市役所で開かれ、整備事業は「概ね妥当」とする答申をまとめ、同日、五十嵐立青市長に提出した。

一方、事業の必要性については、市単独で整備するという手法に対し「大規模な施設を整備する際は、原則として市単独での実施は避け、他自治体や企業、国公立の研究・教育機関と共同で整備する可能性など、さまざまな方法を検討し、相互比較し、プロセスも開示しながら、最も妥当な方法を選択すべき」だなどとして、今後も、他自治体や機関との共同利用などの可能性を検討すべきだなどとする注文が付いた。

評価委は昨年9月から計8回の委員会を開き、事業の必要性、妥当性、優先性、有効性、経済性・効率性、地域への対応の6項目について調査した。

結果は、事業の妥当性について、規模は想定される需要を上回る過度な計画にはなってない、候補地選定は比較が行われたなどから、概ね妥当だとした。

事業の優先性は、財政支出を平準化するなど市の財政に影響を与えるものではないことが検討されている、サッカー場は3カ所と数が少なく稼働率が高いなどから、妥当だとした。

有効性についても、市スポーツ推進計画の「成人の週1回以上のスポーツ実施率を65%以上にする」などの数値目標達成に貢献するなどとして、妥当だとした。

経済性・効率性については、費用がどれだけ膨らむ可能性があるか把握することが重要だとして、評価委側が、すでに公表している概算事業費約22億円以外についても費用を明らかにするよう求めた。市側は、既存校舎解体とセミナーハウス新設費が最大約5億円、道路約300メートル区間を4メートル拡幅する道路拡幅費が約7200万円、排水取り出し工事費が50万~450万円、受水槽設置工事費が1600万~3200万円などの金額を新たに示し、整備事業費は約6億円増えて総額28億円になることが新たに明らかになった。一方、維持管理費は年間8000万円程度、将来の大規模修繕費用は5年目2800万円、10年目6200万円、15年目1億5000万円が見込まれることも分かった。これを受けて評価委は、経済性と効率性について、概ね妥当だとした。

地域への対応についても、地元から「騒音、道路、進入路などの含めて考えてほしい」「騒音や駐車場問題への対応を検討してほしい」などの意見があり、交通環境を中心に周辺地域に与えるインパクトは大きいとしながら、渋滞が懸念される施設出入り口は既存道路に右折左折レーンを設けたり、駐車場の位置を工夫して渋滞を緩和する方針があるなどとして、概ね妥当だと結論付けた。

答申を受けて市スポーツ施設整備室は「答申を踏まえて、なるべく市の早く方針を決定したい」としている。

大規模事業評価は当初、計4回程度開催し、11月にも答申をまとめる予定だった。しかし委員から、他自治体や機関などと共同したり連携するなど代替の整備手法を検討したか、市民にどのようなメリットがあるのか、上郷地区だけでなく市全体の需要を見込んでいるか、陸上競技場本体だけでなく費用がどれだけ膨らむ可能性があるのかなど、たびたび追加資料の提出を求められ、委員の任期が終わる3月末にようやく答申がまとめられた。

市が昨年4月策定した陸上競技場整備基本構想によると、計画概要は、400メートルトラックを8レーン、インフィールドは天然芝、観客席はメーンスタンド1500席、芝生スタンド2500席とし、日本陸上競技連盟の施設基準で第3種公認相当規模の整備をする。付帯施設として、サブトラックのほか、ジョギングコースとして利用できる園路広場、セミナーハウスを整備するーなど。基本構想時点の利用開始は2026年度の予定。(鈴木宏子)

報道をにぎわした「国際女性デー」 《令和楽学ラボ》17

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【コラム・川上美智子】3月8日は世界中の女性のための日、「国際女性デー」でした。1975年の国際婦人年に、国連がこの日を「国際女性の日」に制定しました。今年は「持続可能な明日に向けて、ジェンダー平等をいま」がテーマとなりました。国連が2050年に向けて目指す、SDGs 17の目標中の5番目のゴールが「ジェンダー平等を実現しよう」です。

イタリアではこの日、黄色のミモザの花を女性に贈り祝います。私は長年にわたり、県や市町村の男女共同参画計画策定に携わってきましたので、マスコミの紙面で大きく取り上げられるようになったのをうれしく思います。

国際女性デー。1908年のアメリカの縫製労働者の労働条件改善に立ち上がった女性のストライキに端を発し、1910年に社会主義インターナショナルが女性の選挙権獲得などの声を上げ、「女性の日」としたのがその前身です。時を同じくして、日本では1911(明治44)年、平塚らいてうが『青鞜(せいとう)』発刊し、自我の覚醒、女性解放の声を上げました。フェミニズムの登場です。

そもそも日本の女性差別の構造は、鎌倉時代の武家社会の確立と共にあると考えられています。NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」が人気となっていますが、小栗旬演じる主人公の北条義時の息子、北条泰時(鎌倉幕府第3代執権)が定めた武家法「御成敗式目(ごせいばいしきもく)」は、仁、礼、忠義、道理など、儒教思想の影響を受けています。

その世界観は、江戸期の封建社会でも貫かれ、強化され、『女大学(おんなだいがく)』に記される三従思想となり、明治期へと受け継がれます。明治国家は平等、人権などの西欧近代思想を取り入れつつも、男女不平等などの基となった家父長制は継承し、労働の分野では若い女性が安い労働力として組み込まれました。

女性の能力が100%発揮できる社会目指して

役割分担意識は今もなお、女性の生き方の足枷(かせ)になっています。「アンコンシャス・バイアス」と言葉は変えられましたが、我々の潜在意識に潜んでいます。

社会へのアクセスなどの男女差(男女比)を示す指標として、世界経済フォーラムによるジェンダーギャップ指数(GGI)があります。日本の2021年のGGIは世界156カ国中120位、順位は年々下がってきています。健康(82位)、教育(92位)、経済(117位)、政治(147位)と、国会議員や閣僚、行政府の長の在任年数の男女差が大きいのが影響しています。

そうは言っても、就業分野への女性の進出はこの40年余で大きく上昇しました。写真にあるように、かってM字型就業と言われていた女性の年齢階級別労働力率は、馬の背型を経て、台形に近づき、女性の就業率は71%に上がりました。結婚しても、子どもが生まれても、離職しないで働き続ける女性が普通になってきました。

ただ、その実態は、非正規雇用が58%となかなか正規雇用に就けません。また、正規雇用であっても職位の差があり、給料は男性の76.8%に止まっています。まだまだ、社会の受け入れは女性に厳しい状況にありますが、女性の能力が100%発揮できる社会を目指して、バイアス解消に努めていかなければなりません。(茨城キリスト教大学名誉教授)

水道管が漏水し約10軒が断水 つくば市平沢

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つくば市役所

つくば市は28日、同市平沢の市道で、26日午後9時30分ごろ、市が発注した道路改良工事を実施するため施工業者が路面を掘って水道管を移設する準備をしていたところ、地表に出ていた水道管の接続部が外れて漏水し、近隣約10軒の住宅が断水する事故が発生したと発表した。

市道路整備課によると、施工業者は市道を24時間通行止めにし、前日の25日日中まで、路面を掘って地中に埋まっていた水道管を地表に出すなどの工事をしていた。翌26日は工事を実施しなかったことから工事関係者は現場におらず、水道管は地表に出た状態のままになっていた。

26日午後9時30分ごろ、工事現場の看板に出ていた施工業者の連絡先に、近隣住民から、水道管から漏水していると連絡があった。市道路整備課と水道工務課職員も施工業者と共に現場に駆け付けたところ、地表に出ていた水道管の接合部が水圧のため外れ、漏水していることが分かった。

市は速やかに施工業者に復旧作業を指示し、約6時間後の2日午前3時ごろ、復旧した。

この間、近隣の約10軒が断水した。夜遅く、すでに明かりが消えている住宅もあったことから、市は、明かりがついている住宅を1軒1軒回り、事情を説明した。給水を実施するよう求める住民はなかっため、断水の間、給水は実施しなかった。

市は27日朝、断水した近隣の約10軒を改めて回り、謝罪した上で、漏水事故について説明した。

再発防止策として市は、受注業者に対し、適切な施工管理を行うよう指導したとしている。

古民家「百年亭」再生プロジェクトがスタート 宍塚の自然と歴史の会

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再生を待つ「百年亭」と名付けられた古民家=土浦市宍塚

土浦市を拠点に、宍塚大池周辺の里山保全活動に取り組む認定NPO法人「宍塚の自然と歴史の会」(森本信生代表)が、新たな活動拠点の一つとして古民家を改築し利用する「百年亭再生プロジェクト」をスタートさせた。

里山保全活動の交流拠点に

土浦とつくばを結ぶ県道24号線(土浦学園線)沿いに、使われないまま時間が経った古民家がある。残存する記録から、少なくとも築100年以上の歴史があると考えられるという。ちょうど売りに出たのを、同会副理事長の佐々木哲美さん(69)は知り、会の活動拠点に古民家利用を考えた。佐々木さんは、会の活動をより多くの人に知ってもらいたいと考えていた。

「宍塚の自然と歴史の会」副理事長の佐々木哲美さん

同会は、古民家から徒歩数分のところから広がる谷津田や、その奥に位置する宍塚大池と周囲の里山で、林の整備や植生管理を通じた里山保全活動、外来生物の取り除きによる池・湿地の保全、野鳥の観察、田んぼや畑作業など、幅広い活動を展開してきた。活動を通じて、より広い人に里山への関心を持ってもらい、地域に残された100ヘクタール余の里山を守ることが目的だ。

活動には、幼い子供を連れた家族や、東京などからの学生も多いが、これまで参加者が一時的に過ごせるスペースがなかった。そこで佐々木さんは、この古民家を改修し、活動参加者の宿泊・休憩所、さらに、資料展示や映像上映、講習会などを通じて里山を紹介するための場所を作り、「訪れる人同士の交流の場と活動の拠点になれば」と考えた。

同会は1989年の発足以来、開発計画と闘いながら里山を次世代に引き継ぐため活動を続けてきた。多様な活動が評価され、2013年には国連生物多様性の10年日本委員会(UNDB-J)が推奨する事業として認定を受け、14年には農水省の「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」の優良事例に選定されるなど、国内外から注目されてきた。

里山の暮らしの中で生まれた家屋

「百年亭」の細部に細かな職人の手仕事が残る

「『百年亭』を残すことは、里山を残すという会の趣旨と合致する」と話すのは、古民家再生を請け負う土浦在住の建築士、児玉理文さんだ。児玉さんは学生時代、京都の宮大工に技術を学び、現在は県内の設計事務所で古民家再生に携わっている。

この古民家には、建具や欄間(らんま)などに細かい装飾が見られることから、「地域に、それだけ職人が手をかけ、建物を作れるような豊かな文化があったというのがよく分かる」と話す。また、屋根裏にかかる長さ10mを超える松の丸太は、「おそらく地元の里山からとってきたものではないか」という。「里山とは人の暮らしと共にあるもの」と児玉さんは考える。そして「人の生活があったから里山があった。里山は人の生活とは切れないもの。そういう意味でも、里山と一緒に培われてきた集落の文化が一緒に残ることで、里山保全の活動が、より魅力と深みを増すのではないかと思っている」と話す。

里山から切り出されたと見られる松の木

佐々木さんは、里山を残すために若い世代といかに協働していくことが大切かと考えている。「児玉さんのような若い人の夢をかなえる場にもなれば」と話し、「会の目的は、100ヘクタールの里山を自然公園として残すこと。より多くの若い世代を巻き込みたい、会の活動を多くの人に知ってもらわないといけない」と、百年亭への思いを語った。(柴田大輔)

読書文化の復権を願って―水戸の佐川文庫 《邑から日本を見る》108

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【コラム・先﨑千尋】3月19日、水戸市の郊外、河和田町にある佐川文庫の木城館で行われたピアノ・リサイタルに足を運んだ。文庫を主宰する千鶴さんのお誘い。ここでのコンサートは若手の音楽家がメイン。この日は、東京芸大卒業後、ベルリン芸術大学でピアノを学んだ北村朋幹さんの晩年のベートーベンのピアノソナタ3曲。静かな、時には体全体を鍵盤にたたきつける動きに魅了され、ベートーベンを堪能した。

佐川文庫は、1984年から1993年まで水戸市長を務めた佐川一信さんの姉千鶴さんが「ぼくの好きな本や音楽を集めて一般に公開したい」という一信さんの夢を実現させて、2000年に開館した。3万冊の書籍と1万枚のクラシックCDでスタートし、現在は書籍が5万冊、CDが2万5千枚になっている。

佐川文庫は、生前に彼が集めた蔵書を自宅の後ろに小屋を建て、児童書も置いて、近所の子供たちに公開したことに始まる。彼が市長の時に建設した西部図書館はドーム形のデザインが特徴。周囲に大回廊があり、芝生の上でも本が読める。音響もよく、ここでCDを聴くとコンサート会場にいるような気分に浸ることができる。この図書館にも法律関係の専門書と洋書5千冊が寄贈され、佐川文庫という一室に収まっている。

「若い子が本を読むのには開放感がある方がいい」

一信さんは学生時代、図書館が開館すると入り込み、閉館になるまで本を読んでいるという読書三昧の生活を送っていて、図書館には強いこだわりがあった。その時の思い出が「読書文化の復権」という理念につながり、水戸芸術館とともに佐川市政の柱の一つになった。それを千鶴さんが引き継ぎ、読書と音楽の城=一信さんのメモリアルホールとしての「佐川文庫」に結晶したということだ。

ゆったりとした書棚。本を読むテーブルは庭に面し、ガラス張り。とても明るく開放感がある。座るスペースも一つ一つ広く作られていて、周りを気にしないでいい。「若い子が本を読むのには開放感がある方がいい。土日には子どもたちが勉強に来る」と千鶴さんは言う。絶えず静かな音楽が流れている。公共の図書館にはない雰囲気に浸れる。私はここでお茶をいただきながら、千鶴さんとしばしのおしゃべりを楽しむ。

一信さんは高校で私の2級先輩。下駄(げた)のような角張った顔で、生徒会長をしていたのを思い出す。早大大学院卒業後、大学で講師を務めながら会社を経営し、1984年に「市民派市長」として当選。水戸芸術館の建設や千波湖の浄化などの実績を残した。93年に当時の県知事がゼネコン汚職で逮捕された後の知事選に出馬し、いわれのない中傷を浴び、僅差(きんさ)で敗北。95年に54歳で亡くなった。セルバンテスの理想を追う姿に共感していた一信さんは、さながら現代の「ドン・キホーテ」だったのではないか、

佐川文庫に入ると、ぎょろりとした目の一信さんに、「お前、この頃どうしているんだ、がんばっているか」と声をかけられている気がする。(元瓜連町長)

高安、惜敗 決定戦で初優勝逃す

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初優勝をかけた優勝決定戦に臨む高安に声援を送る安藤市長(中央・左)と、中川後援会長(中央・左)=土浦市役所1階

大相撲春場所は27日、千秋楽を迎え、3敗で並んだ土浦市出身の東前頭7枚目、高安(32)=田子ノ浦部屋=は、優勝決定戦で新関脇の若隆景(27)=荒汐部屋=に敗れ、惜しくも初優勝を逃した。高安の地元土浦では、駅前の市役所1階でパブリックビューイングが行われ、約100人の市民らが、応援の横断幕やうちわを掲げながら、大きな声援を送った。

千秋楽結びの一番で若隆景が敗れると、本割で敗れた高安との優勝決定戦が決まった。初優勝への望みをつないだ高安に向けて、会場から拍手が起きた。しかし、念願はかなわなかった。立ち会いから攻めた高安だが、土俵際で若隆景の上手出し投げに敗れた。正面の大型モニターに土俵に崩れる高安の姿が映ると、会場からは大きなため息と悲鳴が漏れた。

観戦席の最前列で声援を送った「高安土浦後援会」会長の中川清・元土浦市長は「小さい体でよく粘った。残念。が、頑張った。まだ若い。また来場所応援してやってください」と本人をねぎらった。

中川会長の隣に座る安藤真理子・土浦市長は「コロナ禍の閉塞感の中で、みんなで応援できたのがうれしい。優勝を信じてるし、望みは次につながると思う」と来場所への期待を語った。

応援に駆けつけた、後援会の立ち上げに関わった自営業の冨山みどりさんは「高安関が序二段の頃から応援している。家族ぐるみの付き合い。ショックだが、これからも頑張ってほしい」と力を込めた。

後援会幹事の横山和裕さんは「本当によく頑張った。本人が一番悔しいと思う。胸張って、頑張って次につなげてほしい。また美味しいお酒を一緒に飲みたい」と励ましの声を送った。

高安は5回目の敢闘賞を受賞した。一方、優勝した若隆景は福島県出身。新関脇での優勝は、69連勝の記録を持つ横綱・双葉山が記録した1936(昭11)5月場所以来、86年ぶりの記録となる。(柴田大輔)

つくばで桜が開花

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科学万博記念公園のテニスコート横で咲き誇る桜=御幸が丘、科学万博記念公園のテニスコート脇

つくば市御幸が丘、科学万博記念公園で27日、ソメイヨシノが開花した。前日までの冷たい雨が上がり、この日、同市は最高気温が20.4度まで上昇する暖かな1日となった。同日、東京では桜が満開との気象庁の発表があった。

約300本の桜が植えられている科学万博記念公園ではこの日、開花した桜の木の周囲で、花にカメラを向ける愛好家の姿が見られた。散策やピクニックを楽しむ家族連れや、半袖でスポーツをするグループなどの姿もあった。

桜の花の下で、ペットのミニチュアダックスフントとスマートフォンで写真撮影をしていた40代の夫婦は「栃木県からつくばに買い物に来た。今年初めての桜が見られてうれしい」と笑顔で話した。

桜の花には、花粉団子をつけたミツバチが花から花へと飛び交う姿も見られた。

桜の花の間を飛び交うミツバチ=同

県内は21日に国のまん延防止等重点措置が解除されたが、県は引き続き基本的な感染防止対策を徹底するよう求め、花見の際は、マスクを正しく着用する(会話の際は必ず着用)、3密を回避し2メートル以上の社会的距離を確保する、大声、回し飲み、コップやはしの共用は避けるよう呼び掛けている。(門脇七緒)

待機児童数 再びワースト1に つくば市

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各年度10月1日現在の茨城県とつくば市の0待機児童数の変化

茨城県内の待機児童数は2021年10月1日現在で197人、つくば市はそのうちの30%を占める59人で、市町村別で再びワースト1位となった。県子ども未来課が22日発表した。つくば市は昨年4月1日付の調査でワースト1位を返上したばかりだった(2021年8月9日付)。

県は主な発生要因として「女性の就業率の向上等による入所希望者の増加や保育士不足」をあげている。

県全体の待機児童数は2017年の850人をピークに減少に転じ、つくば市でも182人から59人と減少している。この間の保育所などの利用児童数は県全体で5万7150人から6万2947人に増加している。

197人の内訳は0~2歳児が181人で、92%を占めた。主に0~2歳児を対象とした小規模保育事業、家庭的保育事業、事業所内保育事業など地域型保育事業の施設数は2017年から21年に、県全体では81カ所増加した。つくば市は12カ所増えた。

つくば市を含めた県南地域の待機児童数は119人で。県全体の60%を占めた。

ワースト10位までの市町村別待機児童数

県は保育士不足を解消するため、同課が事務局となり2月に「いばらき保育人材バンクポータルサイト」をオープンさせている。保育士や保育の仕事に就きたい人材と県内の保育施設をつなぐ総合情報発信サイトの役割を担う。求職側の人材、保育士養成校の学生などは無料で会員登録ができ、事務局が求人保育施設とのマッチングをし、就職決定までサポートする。現在609施設の情報が登録されている。

対策のもう一方の柱、受け皿拡大について同課は「保育需要は当面増加する見込み」としながらも「将来的な少子化による需要減を見据える必要がある」として、「小規模保育事業や家庭的保育事業など地域の実情に応じた保育の受け皿拡大を図りたい」とするにとどまった。(花島実枝子)