水曜日, 4月 23, 2025
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また中止された土浦の花火を考える 《吾妻カガミ》116

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土浦の花火(土浦市提供)

【コラム・坂本栄】11月第1土曜日に予定されていた土浦全国花火競技大会が中止になりました。コロナ禍の収束が読めない今、2カ月先の催事にGOは出せないとの判断です。昨年もコロナ禍を受けて中止。2年前と3年前は事故で途中取り止め。花火好きの私にとって、中止はもちろん事故も残念です。大音量スピーカーで来観者に挨拶できない土浦市長もさぞ残念でしょう。

桟敷で観るのが正しい作法

中止に至った経緯については「無念の中止決定 土浦の花火 第90回記念大会」(9月6日掲載)をご覧ください。土浦の花火は、地域住人の秋の娯楽であるとともに、全国の花火ファンに楽しんでもらう観光事業であり、煙火会社の意匠と技術を競うコンテストでもあります。競技花火は、伊勢神宮の花火(三重県伊勢市、8月上旬)、大曲の花火(秋田県大仙市、8月下旬)もありますが、土浦大会に参加する会社が最も多く、競技花火の締め役を担っています。

大相撲や歌舞伎と同じように、私は土浦の花火を家族や知人と桟敷席で観るようにしています。日本酒とウイスキーを持ち込み、重箱に詰めた肴(さかな)をつまみながら、大音をお腹に感じ、大声で讃(さん)を送る。これが正しい作法です。

湖面にも映る霞ケ浦打ち上げ

2回の事故と2回の中止を機に、土浦の花火について少し考えました。コロナ禍はいずれ収束しますから、大事なのは事故対応です。2年連続して、導火不良で破片が落下、それが地上で燃え、ケガ人も出ました。打ち上げ場所が桜川の土手周辺、観る場所もその近くですから、火薬の塊を数多く上げる花火の性格上、事故ゼロは容易でありません。といって、ヘルメットをかぶって観るというのも無粋です。

土浦の花火(同)

そこで、打ち上げ場所と鑑賞場所を少し引き離すため、打ち上げ場所を霞ケ浦に移し、湖岸に桟敷席を設け、そこから鑑賞できるようにしたらどうでしょう。事故防止のために花火と観客の「密」をなくすだけでなく、湖面に映る「逆さ花火」も観られます。

このアイデア、昨年の花火中止を埋め合わせる「サプライズ花火」(日時と場所を明示しない、観てほしいのかそうでないのかわからない、何かおかしなイベント)の形で試行されました。遊覧船がつながれている土浦港付近から約500メート沖に、タテ約10メートル、ヨコ約25メートルの船台を4つ連結して、打ち上げ場所を造ったそうです。時間は30分と正規の5分の1ぐらいでしたが、霞ケ浦まで徒歩10分の私の家からもよく見えました。

秋のほか春夏冬に縮小版を

湖上であれば、不燃片が鑑賞区域に落ちる可能性はほぼゼロですから、安全面では優れています。また、桟敷席を湖畔に設けることも可能です。さらに、霞ケ浦周辺のどこからも観られるメリットもあります。競技花火の審査員が桜川の土手から湖上の船上に移っても、採点に支障はないでしょう。

問題は、常磐線西側(市街地)から同東側(すぐ霞ケ浦)に移すとなると、大会にやって来る車の流れ、打ち上げ場所に向かう人の流れが変わり、交通整理を全面的に見直す必要があることです。そこで提案。秋の花火は事故対策を整えて従来通りとし、将来の場所移転の勉強と練習も兼ねて、縮小版大会を、春、夏、冬、湖上で催したらどうでしょう? 地元住民の楽しみを増やし、全シーズンで観光客を呼び込むために。(経済ジャーナリスト)

<後記> 執筆に際しては沼尻健・土浦市花火対策室長に情報を提供してもらいました。

企業経営で意識しておきたい3つの流れ 《地方創生を考える》20

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ダイヤモンド筑波

【コラム・中尾隆友】これからの企業経営では、3つの大きな流れを抑えておくことが欠かせない。

1つめは、「人口減少」だ。日本のマーケットは縮小に向かうわけだから、そのことを想定してビジネスを展開しなければならない。たとえば、国や地方自治体が将来の人口推計を公表しているので、自社のビジネスにいつごろ、どのような影響が及ぶ可能性があるかをイメージしてほしい。

2つめは、「デジタル化」だ。AIによる自動化と言い換えてもいいかもしれない。図らずもコロナ禍で注目されて加速することになったが、たとえパンデミックがなかったとしても、国や企業の基本方針として着実に進展していくはずだ。

3つめは、「地球温暖化」だ。世界が脱炭素実現へギアを上げる中、企業も環境保全をはじめとする持続可能性を強く意識した経営が求められる。2030年や2050年の具体的な成果に向けて、国内外のルールや法制度も段階的に刷新されていくだろう。

危機は新ビジネスのチャンス

実は、この内容は過去数年、全国の企業経営者の前で話し続けていることだ。コロナ前でもコロナ後でも、企業経営にとって変わらない本質的な話だ。(今年は茨城県経営者協会でも講演させていただいた)

それに加えて、世界的に危機が起こった時は、新しいビジネスが生まれるチャンスでもある。リーマン・ショック時の米国では、Airbnb(エアビーアンドビー)やUber(ウーバー・テクノロジーズ)など新興テック企業が数多く誕生した。

コロナ禍において、人々のライフスタイルや働き方、価値観などに変化が起きている。新しいビジネスチャンスが広がる中で、茨城の企業経営者が次々と新しいアイデアを生み出すことを期待したい。

また、茨城で起業する若者が増えることにも期待したい。総合的に判断して、茨城は起業するのに最も有利な都道府県の一つだと考えているからだ。そういった意味でも、筑波大学や茨城大学には革新的な取組みを求めたい。(経営アドバイザー)

黄色のリュック型も選択可能に 土浦市 新1年生にランドセル贈呈

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展示中のランドセルと通学用リュックサック=土浦市教育員会

土浦市では、市立小学校や義務教育学校に入学する子どもたちのために、1976年から毎年、入学祝品としてランドセルを贈呈している。来年度から、従来の赤と黒のランドセルに、黄色のリュックサックタイプが加わり、3種類の中から選べるようになった。

従来の赤と黒のランドセルは人工皮革で、重さ約1キロであるのに対し、黄色のリュックサックタイプは850グラム。軽量化のニーズに応え、選択肢を増やした。

同市教育委員会学務課の担当者は「実際に背負い比べた子どもたちは軽いと言う。子どもにとって150グラムの差は大きいのではないか」と話す。

ファスナーを開いた状態のリュックサック=同

黄色のリュックサックタイプは、ポリエステル製。出し入れしやすいようにファスナーが大きく開き、教科書やノート類は、中のベルトで固定できる。

背中は汗をかいてもべたつきにくいメッシュ仕様。背負いひもにはランドセルと同様にフック(ナスカン)があり、防犯ブザーを付けることができる。

2020年度まで、同市の贈呈ランドセルは「女子は赤色、男子は黒色」と決まっていた。保護者から「好きな方を選べるようにしてほしい」という問い合わせが増えたことから、21年度より子供たちが好きな色を選べる選択制に変更している。担当者は「ジェンダーの考えが、社会に浸透してきていることも影響しているのでは」と話す。

同市の22年度小学校入学予定者は6月1日現在969人で、内訳は男子513人、女子456人。ランドセルは17日現在で約100人の申し込みがあり、リュックサックタイプを選んだ子どもは2、3人だという。黒色を選んだ女子、赤色を選んだ男子はまだいない。

ランドセルの実物は10月29日まで市教育委員会学務課窓口(土浦駅前、同市大和町、ウララ2)で展示している。申し込み期間は10月31日まで。(伊藤悦子)

プライドと劣等感 《続・気軽にSOS》93

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【コラム・浅井和幸】①周りを低く見る言動をする。②自分は素晴らしいという評価を周りに押し付ける。ちょっとでも悪く言うと怒りだして、①や②の言動で周りを攻撃してくる。程度の差はあれ、誰にでもある性質です。ささいなことならば、子どもっぽくてかわいいで済みますが、程度がひどく、繰り返す場合は、厄介な人で、できれば関わりたくない人ですね。

関わらずに済むのなら簡単な話ですが、それが家庭、教室、職場でいつも顔を合わす人だと大変。気を使いすぎて、抑うつ状態になって、相談室を訪れる人もいるぐらいです。

DV、児童虐待、いじめ、パワハラなど、「自分のことをきちんと評価してほしい」という願望の持ち主(加害者)によって、弱者が苦しめられるという構図がしばしばあります。

「自分のことをきちんと評価してほしい」という願望は、「周りの評価が気になる」という性質と、「自分は正当な評価を受けていない」という気持ちが強ければ強いほど、大きくなります。これらの性質は、つまりは劣等感だと言うことです。

パワハラ上司と付き合う方法

自分とパワハラ上司という関係で考えてみてください。「自信満々で、自分のことを責めてくる上司が、劣等感を持っているなんて信じられない。大きな声で怒鳴られて、縮こまって苦しんでいる自分の方が劣等感の塊だ」と考えますよね。

上下関係で上から力で押さえつけられるわけですから、力が強い上司が劣等感を持っているはずがないと考えても当然です。しかし、力で押さえつけてくる上司は、誰にでも同じ態度をとっているでしょうか。もしかしたら、その上司にも頭の上がらない人がいて、小さくなっている場面があるかもしれません。

その上司が、誰かに悪い評価を受けることを怖がっていて、それを受け入れられないから、より弱いあなたを見つけて、強さを誇示することで高い評価を得ていると感じようとする動きとも考えられます。怒り出すのは、キャパシティいっぱいで、パニック状態なのかもしれません。

対抗するには、ひたすら謝ったり、こびへつらい続けたりしなければいけないのでしょうか。そのような方法も取らなければいけないこともあるでしょう。しかし、それ以外にも自分自身が本当に上司のことを尊敬できるところ(ちょっとは褒めてやろうかと思えるところ)を探して、伝えてみるとよいでしょう。どんな人でもよいところの一つや二つはあるものです。

もう一つは、そのような上司と面と向かうときに、こちらが緊張しすぎないことです。緊張が劣等感を持つ上司にも伝わり、上司を不安にします。不安になった上司は、自分が悪くみられているという気持ちになり、評価を上げようとパワハラをしてくるのです。しかも、無意識だから質が悪い。

完全にリラックスした最高の笑顔で接しろとは言いません。ひどい言動をする上司は劣等感に追い詰められて大きな声を出すのだなと考えて、ほんのちょっとだけ余裕を持つことを意識するところから始めましょう。(精神保健福祉士)

オンラインお見合い開始 いばらき出会いサポートセンター

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いばらき出会いサポートセンター県南センター=牛久市中央

少子化対策のカギは若者の未婚化・晩婚化対策にあるといわれる中、いばらき出会いサポートセンターは9月から、コロナ禍でもスマートフォンやパソコンでお見合いができる「オンラインお見合い」サービルを開始した。県外からも幅広く入会できるよう入会条件を緩和し会員の出会い強化に乗り出した。

同センターでは、すでに4月から新AIマッチングシステム(スマートフォン対応・AI診断機能搭載)の運用を開始し、男女の出会いと結婚を支援している。その結果、新規入会者数やお見合いの実施組数等が大幅に増加しているという。

AIマッチングシステムの特徴は、会員個人のスマートフォンやパソコンからお相手を検索したり、お見合いの申し込みが出来、価値観診断テストの結果からAIが相性の良い相手を紹介する。加えて9月からは、対面によるお見合いのほか、オンライン上でのお見合いが選択できるようになった。

入会の条件は、結婚を希望する人で、インターネットが利用できる人。

入会登録料(2年間有効)は県内在住か在勤、親が県内に在住か、あるいは県内への移住に関心がある人は1万1000円(消費税込み)。

9月からはこれらの条件以外の希望者も入会できるようになった。入会登録料は2万2000円(税込)。

現在の会員登録者数は1635人(うち新システム導入後の新規入会者は694人)。コロナ禍の4月からの活動実績をみると、お見合い実施が730組、交際開始が319組で、いずれも前年同期の3倍という好調さだ。(山崎実)

◆いばらき出会いサポートセンター(水戸市三の丸、県三の丸庁舎内)は電話029-224-8888、同県南センターは(牛久市中央)電話029-830-7502。

コロナ禍での認知症 《くずかごの唄》94

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【コラム・奥井登美子】

「コロナが心配で、心配で、朝まで眠れないんだ。睡眠薬5ミリではだめなので、今度10ミリにしてもらった」

近所に住むAさんが処方箋を持ってやってきた。ゾルビデム5ミリグラムが10ミリグラムなっている。この薬は向精神(こうせいしん)薬で、認知症を促進するデータがあるといわれている薬である。Aさんと高校時代からの同級生で仲良しのBさんに聞いてみた。

「このごろ、2人で散歩していないわね。けんかでもしたの?」

「けんかなんかしていないよ。けれど、A君このごろ、ちと、おかしい。いつもと同じ道を歩いているのに、違う道だ、なんて言うんだ」

「困るわね」

「散歩に誘っても来ないし、僕も心配しているんだ」

薬なしで眠れる方法をトライ

認知症でない人が、コロナで外に出ない。人と会話ができないなど、日常生活での刺激がなくなって、認知症になってしまうケースも多いと聞く。もし、認知症になってしまったら、一番苦労するのは家族である。

Aさんが、もし認知症になってしまったら一番困るのは、Aさんの奥さん。ご近所だから、ゴミ出しの時などお世話になっている人である。私は、NHKテキスト「きょうの健康」8月号の「コロナ禍での認知症」特集のコピーを持って家に行ってみた。

「ご主人の睡眠薬マイスリーが5ミリから10ミリになっているの。どうして増えてしまったのかしら? 認知症になってしまってからでは遅いわ。奥さんが、ご主人をだまし、だまし、誘導して、認知症予防をしなければ大変よ」

「眠れない、眠れないって、大騒ぎなの。眠れないと、夜中に公園に行ってしまうの。真っ暗だから、もし転んで倒れても、誰も助けてくれない。どうしたらいいのかわからないので、医者に行って、もう少し効く薬出してもらいなさい、なんて、私が言ってしまったの」

「薬に頼り過ぎるのよ。薬なしで眠れる方法を、2人でトライしてみたら?」

昼間、重労働して身体を動かせば、夜は否応なしに眠くなってしまう。眠れないというのは贅沢だ。自動化、機械化が、人間をいつのまにか、むしばんでしまっている。(随筆家、薬剤師)

1週間前倒し19日で解除 県独自の非常事態制限

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茨城県庁(イラストは「いばらきアマビエちゃん」)

学校は分散登校とリモート授業併用

26日まで延長するとしていた県独自の非常事態宣言について、大井川和彦知事は16日、1週間前倒しし、19日で解除すると発表した。2学期が始まってもリモート授業となっていた学校は、解除後の21日から、週1~2回の分散登校とリモート授業の併用となる。

部活動は平日のみ2時間以内なら練習できるようにし、休日は引き続き禁止とする。ただし大会2週間前からは休日も3時間以内なら練習できるようにする。他校との練習試合などは引き続き自粛を要請する。

県の施設は図書館や美術館は20日以降、順次再開する。一方、水族館や自然博物館、フラワーパークなどの施設は休館を継続する。

国の緊急事態宣言は30日までとなっていることから、飲食店の酒類提供の終日停止、夜8時以降の時短営業要請などは30日まで継続される。一方、すべての商業施設などに通常時の2分の1とするよう要請していた入場制限は20日から解除する。

県内の感染状況は、ピークだった8月23日の新規感染者数318.5人と比べ9月15日は133.1人と半減し、減少傾向が続いている。9月10日から16日まで直近1週間の人口1万人当たりの新規感染者数はつくば市が2.73人、土浦市が5.95人。

病床稼働状況は重症者数は高止まりしているものの、新規感染者数の減少により、病床稼働状況が改善しているとした。

つくば市 1回接種率42位、2回43位

14日時点の市町村別のワクチン接種率が発表され、つくば市の12歳以上のワクチン接種率は1回接種が63.5%で44市町村中42位、2回接種率は47.1%で43位と県内でも接種率が低いことが分かった。県平均は1回目72.9%、2回目57.7%。

大井川知事は、特に人口の多いつくば市や古河市などについて、県として大規模接種会場を使って優先的に枠を振り分けるなど、接種率向上をしっかりと図っていきたいとした。

市町村別ワクチン接種率(%)
1回目順位市町村1回目2回目
1大子95.181.8
2八千代   89.073.2
3城里88.762.4
4大洗88.667.4
5利根88.180.9
6河内86.780.2
7潮来83.369.5
8桜川80.963.4
9つくばみらい   80.065.8
10境町78.766.5
11牛久78.364.4
12鹿嶋77.565.4
13鉾田77.563.7
14常陸大宮77.563.3
15美浦76.163.6
16取手75.660.3
17五霞73.564.3
18常総73.151.2
19北茨城72.853.8
20高萩72.458.4
21筑西72.454.8
22稲敷72.360.3
23龍ケ崎71.9   61.0
24下妻71.957.5
25行方71.758.5
26水戸70.454.6
27東海70.451.4
28茨城70.156.9
29神栖69.750.5
30阿見69.352.3
31笠間69.257.6
32坂東69.257.3
33小美玉68.745.2
34守谷68.452.4
35かすみがうら68.352.2
36那珂   67.055.7
37結城66.558.7
38土浦66.552.7
39常陸太田66.153.7
40ひたちなか64.349.8
41日立63.750.1
42つくば63.547.1
43古河63.4   51.0
44石岡63.1   51.0
9月14日時点

一転、つくば市が使用を許可 食材無料提供 25日松見公園で開催

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つくば市松見公園で開催された食材無料提供会の様子

つくば市から公園の使用許可が出ず、開催が危ぶまれていた「学生応援プロジェクト@つくばPEACE(ピース)」(冨山香織代表)の食料支援について、NEWSつくばの取材後、公園を管理する市公園・施設課がつくばPEACEに対し、松見公園の使用を認めたことが分かった。

これを受けつくばPEACEは、無料の食材提供会を25日午前10時から正午まで、同市天久保の松見公園で開催する。人流を抑制するため事前予約制とし、参加時間をそれぞれ指定して実施する。

緊急事態宣言により飲食店などが時短営業や休業を余儀なくされる中、アルバイトが減って困窮する学生や母子家庭などを支援するのが目的。

今月9日、つくばPEACEは市から、緊急事態宣言により公園の使用を許可できないと断られ、翌10日、開催場所未定のまま開催告知をツイッターなどSNSで発信した。

NEWSつくばは14日、市に対し、なぜ公園を貸さないのか電話取材した。その直後、つくばPEACEに対し市から連絡があり、冨山代表が市役所を訪ねたところ、市から「一度断ってしまって申し訳なかった。人流抑制ができる体制であれば開催できる見込みがある」などの回答があり、同日夕方、公園を使用できる旨の連絡があったという。一方、市役所での話し合いの際、冨山代表は公園の使用基準について説明を求めたが、市は明確な基準を設けておらず、それ以上の説明はなかった。

松見公園での開催が決まったことに対し、冨山代表は「初めは相手にされず、話し合う余地もなく断られた。今まで頑張ってきた活動が行政に理解されないことはひじょうに悔しかった」とし、「公園での開催が認められたときは、行政が思い直してくれて本当に安心した。経済状況が悪化する中で、節約のためにわずかな明かりで夜を過ごす学生や、カップ麺に水を注いで食べる学生もいる。今回は取材が入ったおかげで、松見公園での開催決定にこぎつけた。さらなる周知活動が必要だと改めて感じるとともに、引き続き行政への働きかけをしていきたいと思う」と語った。

食料支援の利用者の一人である筑波大学情報学群1年の学生は「市に協力してもらえてよかった。学生を含め、多くの人が利用しやすくなると思う」と話した。(武田唯希)

障害者の権利のために闘ったリーダー 《電動車いすから見た景色》22

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つくば市に寄贈した「わたしが人間であるために-障害者の公民権運動を闘った『私たち』の物語」

【コラム・川端舞】今月、障害者団体「つくば自立生活センターほにゃら」がつくば市の中学校等に寄贈した「わたしが人間であるために—障害者の公民権運動を闘った『私たち』の物語」(現代書館)。アメリカの障害者リーダーであるジュディス・ヒューマンの自伝本だ。

アメリカは、障害児が最大限に可能な範囲で、障害のない子どもとともに教育を受けることを原則としている。しかし、ともに学ぶことを法律で規定するまでには、障害者たちの長い闘いがあった。

幼少期から車椅子で生活していたジュディスは、障害児だけが通う学校で学び、自分はアメリカの一般の教育制度から排除された存在であることを自覚していく。同じ学校に通う障害のある仲間たちと、なぜ自分たちは障害のない子どもたちと異なる扱いを受けているのか話し合うこともあった。

大学入学後は、階段がある校舎に入れないなど、障害のために不利益を被ることがあっても、同じ経験をする障害学生同士で話し合ことで、障害という問題の原因は自分たちにあるのではなく、自分たちを受け入れない社会にあるのだと考えるようになった。

障害者が他の人と同じように学校や社会に参加できないのは、社会の在り方に問題があるという考え方を「障害の社会モデル」という。私は障害者運動に関わる中でこの考え方を学んだが、その後も無意識に障害のある自分が悪いと思ってしまう癖が残っている。社会モデルの考え方を自分の経験から導き出したジュディスたちの聡明さを見習いたい。

悩みながら戦い続ける

ジュディスは上院議員のアシスタントとして、障害児が障害のない子どもとともに教育を受けることを保障する法案の起草にも関わった。幼少期に障害のない友達と同じ学校に行けない悔しさを味わったジュディスは、「傷だらけの経験を、子どもたちの人生を変える法律の立案に役立てられることにワクワクした」と書いている。

私も通常学校で学んだ障害者として、障害児教育をよりよくしたいと思っているが、障害児教育に関わることは、自分の辛かった経験とも向き合い続けることになり、痛みを伴う。

しかし、障害者が他の人と平等に生きる権利を獲得するために政府などと闘い続けたジュディスも、差別を受けた時は動揺したり、政府と闘う前日まで自分は正しいのか悩んでいた。私も悩みながら、インクルーシブ(障がいのあるものとない者が共に学ぶ)教育を実現するために自分のできることをやり続けたい。(つくば自立生活センターほにゃらメンバー)

「公園が借りられない」 つくばの食料支援団体 場所未定のまま開催を告知

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公園の使用許可が下りなかったつくば市の松見公園

「公園が借りられない」。そう話すのはつくば市の食料支援団体「学生応援プロジェクト@つくばPEACE(ピース)」の冨山香織代表(40)だ。コロナ禍、毎月1回程度、食材の配布を行っているが、今、開催の危機にひんしている。

筑波大学近くの松見公園(同市天久保)を中心に活動している。9月は25日または26日に開催する予定を立て、公園を管理する市公園施設課に申し込んだところ「緊急事態宣言の延長により屋外であっても公園は貸せない」と利用を断られた。

やむを得ず、つくばPEACEはツイッターなどのSNSで、25日か26日に必ず開催することを利用者に知らせた。安心してもらうために日付けのみの告知を行ったという。しかし配布日が約10日後に迫っているにも関わらず、いまだ開催場所は決まっていない。

2020年12月に食料支援活動を立ち上げた。コロナ禍でアルバイトが減って困窮する学生や母子家庭などに食材や日用品を無償提供することにより、生活の心配を減らし安心して勉強してもらうための活動を行っている。

猛暑となった夏期も、屋外の炎天下での活動は、食材が傷んでしまったり、利用者の学生やスタッフが熱中症になる危険を避けるため、屋内の公共施設の利用を申し込んだが、いずれもコロナ禍を理由に断られ、場所探しに奔走した経緯がある。

長蛇の列ができた今年4月の食材無料提供会=松見公園

今回、松見公園の利用を許可しなかった市は、取材に対し「緊急事態宣言の延長もあり、すべての団体に(使用できない旨を)一律で伝えている。人流を抑制するためにも不要不急のイベントは控えてもらいたい」と話した。

市は、つくばPEACEに対しても「緊急事態宣言が出でいるから」の一点張りで、利用の基準等について何も説明はなかったという。一方、つくばPEACEは、コロナ禍で困っている人にとって食料支援はライフラインになる場合もあるとし、一律に使用させないのではなく、利用の基準を設けるべきだとする。

冨山代表は「毎月、必ず開催したい。活動を続けてほしいという声も多く聞く。仕送りが減り学業に専念することができない学生や、二つ以上の仕事を掛け持ちするWワークをせざるを得ない人がいる。(第5波の経済的影響が顕著になる)今からが本当に大変な時期になる。だからこそ支援活動を続けていかなきゃいけない」と語った。

食料支援を利用している利用者の一人で筑波大医学群看護学類3年の女子学生は「今、実習中でバイトが禁止されている中、様々なものを支援していただけて本当にありがたい。特に生理用品や即席で作れるレトルトはとても役立っている。コロナ禍でも支援してくださる人の温かさを感じることができてうれしく思う」とし「まだ開催場所が決まってないと聞き心配。早く会場が決まってほしい」と話す。

冨山代表はさらに「支援者の中には、毎月寄付金を送ってくださる方、配布会ごとに毎回、段ボール3箱ほど持ってきてくださる方もいる」とし「寄付は全国各地から集まってきている。また、スタッフの中にもレトルト食品や寄付金を行っている人もいる。活動を続けていくためにもより多くの寄付をお願いしたい」と話す。(武田唯希)

県産米ナンバー1を決定へ コンテスト出品米を募集

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稲刈りの様子

茨城県産米のおいしさを広くPRするため、茨城県は今年初めて「いばらき 米の極み頂上コンテスト」を開催する。10月15日まで出品米を募集している。

県産米ナンバー1を決定し、首都圏などへ売り込むのが狙い。認知度を高め、県産米の消費拡大とブランド化を目指す。

応募資格は、おいしい米づくりに取り組む県内の生産者または法人で、首都圏への販売PR、販路拡大に意欲的な農家。

出品要件は、今年、県内で生産された水稲うるち玄米で、コシヒカリ、あきたこまちなど産地品種銘柄であること、農産物検査受検済みで等級1等であることーなど。出品数は1経営体(個人、法人)に付き1点のみとし、首都圏での販売PR用に、出品した生産物と同一ロットを5俵を低温貯蔵でき、精米袋商品(2キロ以下)を提供できるーなど。

募集受付は9月1日から10月15日(必着)まで、11月上中旬に1次、2次審査を行う。2次審査への関門(必須条件)は玄米水分が14~15.5%、整粒歩合70%以上、食味値80以上ーなど。2次審査は食味分析機器での評価となる。

2次審査を通過した上位6点を、ホテルの料理長やお米マイスターなどが評価し、順位を決定する。

上位3点について、1位=ローズドール賞(最優秀賞、賞名の意味は金のバラ)、2位=アルエット賞(優秀賞、同ヒバリ)、3位=プリューネ賞(優良賞、同ウメ)を表彰する。

ローズドール賞に輝いた受賞米は、茨城県産の農林水産物と併せ、県が都内の高級レストランなどに提案する。さらに銀座のアンテナショップ「イバラキセンス」で販売、県ウェブサイトやSNSを活用した情報発信など、積極的にPR活動を展開する。(山崎実)

エキスポセンター「ほしまるカフェ」 《ご飯は地球を救う》39

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【コラム・川浪せつ子】つくばエキスポセンター(つくば市吾妻)は、科学万博つくば’85のとき、万博の第2会場として建設されました。その後も科学館として運営されています。H-Ⅱロケットの模型は、つくば市の象徴の一つでもありますね。

だいぶ前、レストランがあったのですが、閉鎖。とても残念でした。それが、今年夏、1カ月ちょっと、カフェがオープンしているとのこと。施設に入らずとも食事ができるというので、早々に行ってみました。

さすが科学館のカフェ。料理を注文するのはQRコード。配膳してくれるのは「SERVI」(サービー)というロボットです。QRコードでの注文は、スマホで時々使っていたので、どうにかアクセスできましたが、サイトに飛んでからがうまくいきません。仕方がなく店員さんを呼んで、教えてもらいながら入力。無事に配膳され、食べることができました。

「IT時代、ついて行けないわ」

最近のネットの進化は、私などがついて行けないぐらいのスピード。茨城県のコロナ対策のお店に行ったら、QRコードで登録ぐらいはできますが…。

3月からスマホで「P」という支払い方法を使っています。半年でポイントが2000円たまりました。また、店独自のポイントがたまるカード(現金支払いOK)で、ポイントを使い、おセンベイを2袋買いました。「買う」というよりも「もらった!」という感じですね。

100万円貯金しても年10円ぐらいしか利息がつかない時代。ポイントってすごい。と言っても、お金を使わないとたまらないのですが…。スーパーで他の方が使っているお店独自のカードを調べたのですが、ネットからの申し込み方がわからずに断念。デジタル庁が発足したようですが、「IT時代、ついて行けないわ」です。

「ほしまるカフェ」は人気で、9月10日から、土日限定のリニューアルオープンになるそうです。(イラストレーター)

コロナ禍の心に夢の時間を パデュー麻耶さん【秋アート’21⑥】

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つくば市豊里の杜、夢工房で18日、ピアノリサイタルを開くパデュー麻耶さん

出身地つくばで演奏会

つくば市出身で、現在はオーストリアのザルツブルグ・モーツァルテウム音楽大学で学ぶピアニスト、パデュー麻耶さんのソロコンサートが18日、つくば市豊里の杜のギャラリー夢工房で開かれる。オーストリアを中心に演奏活動を展開している彼女の2年ぶりの帰郷コンサートで、「クラシックの本場で研修を積みながら受け取った音楽のパワーを、今こそ皆さんに聞いてほしい名曲に乗せてお届けする」という。

母は日本人、父はアイルランド系。吾妻小、並木中等教育学校を卒業後、上野学園大学ピアノ演奏家コースに進み、日本クラシック音楽コンクール大学生の部全国大会に入選などした。大学在学中に渡欧し、オーストリア国立グラーツ音楽大学を経て、現在はモーツァルテウム大学でピアノと室内楽を学ぶ。プロ演奏家としてもオーストリアを中心に活動している。

日本では毎年夏に帰郷コンサートを開催していたが、コロナ禍の影響で2年ぶりとなる。7月に赤坂カーサ・クラシカで2日間の演奏会を開き、地元つくばでは18日にノバホール小ホールでリサイタルを予定していたが、緊急事態宣言に伴う休館で、ギャラリー夢工房に会場を変更した。

夢工房でのリハーサルの様子

地域の多様性お見せしたい

今回の演奏会のコンセプトについて「クラシックはひとくくりに見られやすいが、さまざまな多様性がある。その違いをお見せしたい」と話す。

例えば、今の留学先のザルツブルグは街並みが世界遺産になった地方都市で、最初に訪れたウィーンは壮麗な大都会。その対比として、ザルツブルグ出身のモーツァルトによる、子ども向けのかわいらしい「きらきら星変奏曲」を演奏する。ウィーンの曲としてベートーベンのピアノソナタ「ワルトシュタイン」を披露する。馬上の騎士が石畳を華麗に駆けるような勇ましさがあるという。

続いてポーランドの作曲家、ショパンを3曲。「ショパンはまた雰囲気が違い、美しさの中に陰りや憂い、悲しみなどが潜む」。日本の曲は久石譲さんの、ジブリ映画のテーマ曲を演奏する予定。クラシックの影響を受けているが雰囲気はぱっと変わり、日本的な情景が広がる。その音色や空気感、イメージの違いを伝えたいという。

おしゃべりでも、クラシック伝えたい

ザルツブルクから毎週、札幌シティFMのラジオ番組「マヤパデューの音楽日記」を放送している。今年1月にスタートした。番組では、音楽づくしの自身のピアニスト生活にスポットを当て、毎日8~10時間に及ぶ練習の中での気付きや、クラシックが根付いているヨーロッパでの生活から思うことなどを話し、毎回、その日の1曲を選んで演奏している。

「今回の演奏会でもおしゃべりを多くしたい。ピアニストとして自分の音を聞いていただくだけでなく、言葉も含めて、クラシックに詳しくない人にも分かりやすいようしっかり伝えていきたい。それが私のこれからやっていきたいスタイル」。

そして、自分の生きがいである音楽を通じて、コロナ禍による自粛期間中の心に、うるおいと喜びを届けたいという。「私自身、去年は帰国できず寂しさを感じることも多かった。今は皆さんが近くに感じられ、夢のような時間を過ごしている。現実は大変なときだが夢のような気持ちを、ひとときでも感じていただけるといい」。(池田充雄)

◆パデュー麻耶ピアノリサイタルは、9月18日(土)午後3時から、つくば市豊里の杜2-2-5、ギャラリー夢工房で開催。ライブ配信あり。チケットなどの問い合わせはhttps://lit.link/mayapurdue

新型コロナとは-西村秀一さんの本から 《邑から日本を見る》95

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県北の谷津田でも進む稲刈り

【コラム・先﨑千尋】前回のコラム(8月23日掲載)で、「菅総理は即刻お辞めください」と書いた。間に合ってよかったと思っている。菅さんは、内実は居残りのために策を弄(ろう)したが、万策尽きて天を仰ぐことになった。安倍さんも菅さんも「コロナに打ち勝つ」と言っていたが、結局コロナに負けたのだ。菅さんが辞意を表明したら、東京都の新たな感染者が減り続けている。

そんな時、コロナウイルスに関する興味深い本を手にした。国立病院機構仙台医療センターウイルスセンター長・西村秀一さんの『もうだまされない新型コロナの大誤解』(幻冬舎、1300円+税)だ。帯に「従来株も変異株(デルタ株)も空気感染。飲食店のアクリル板などは、ウイルスが滞留してかえって危険。テーブルや椅子、ドアノブの消毒なんて無意味。家庭内感染は手洗いでは防げない。ご遺体を密封するなんてまったく必要ない。不織布マスクと換気とうがい、予防策はそれしかない」とある。

奥付の著者紹介には、西村さんの専門は呼吸器系ウイルス感染症、特にインフルエンザ。呼吸器系感染症研究の日本における中心人物のひとり、とある。

コロナウイルスは空気感染とか、不織布マスクと換気が予防策という知識はあったが、「飲食店や郵便局、銀行窓口、店舗のレジなどにあるアクリル板、よく見かけるファイスシールドなどでは何も防げず、手のアルコール消毒は無意味」などの西村説はまったく知らなかった。

本書を手にした方も多いと思うが、西村さんは「はじめに」で、「新型コロナウイルス感染症はやっかいな病気。人体に悪影響を及ぼすウイルスによる感染症を怖がることは必要だが、過剰な対策で不必要な不自由が生じている。身を守るためには、やらなくともいい対策を冷静に判断し、やらない、あるいは拒否していく必要がある」と書いている。

新型コロナは空気感染

本書は「新型コロナは空気感染だと知れ」「手洗いよりうがいのすすめ」「PCR検査をただ増やせば良いという大誤解」「ウイルスに勝つマスクの達人になる」「こうすれば飲食店も営業できる」「ウイルスと細菌は違います」「新型コロナはいつ終息するのか」の7章から成っている。それぞれの章にまとめがあり、私はそれをコピーして友人、知人に配っている。その中からいくつかを紹介しよう。

「ウイルスは皮膚からは感染しないので、接触感染は気にしなくて良い。手洗いよりもうがいの方が大切。緑茶を飲む。PCR検査だけを増やしても、陽性者を受け入れる体制が整っていなければパニックになる。ウレタンマスクは、効果はほぼゼロ。風が吹いていて、人が密になっていない戸外ではマスクは不要。バイキングや大皿料理は問題ない。食べ物からコロナウイルスは感染しない。レジのお金の受け渡しに感染リスクはない」など。

最後に、「新型コロナは、治療法が確立されることはあっても、ウイルスそのものを撲滅することはまずできない」とある。コロナに打ち勝つことはありえないとすれば、正しい知識を身に付け、理屈に合った対策を取っていくことが必要だ。そのために本書は役に立つ。(元瓜連町長)

県内企業の女性管理職8.9% 過去最高も低水準にとどまる

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つくば駅前

帝国データバンク

民間調査機関、帝国データバンク水戸支店の「女性登用に対する県内企業の意識調査」によると、県内の女性管理職の割合は、過去最高となったが、8.9%にとどまっていることがわかった。政府が目標と定める女性管理職の割合は30%。

就労人口の減少などから女性活躍が企業にとって不可欠となっている。国も男性の育児休業促進策を盛り込んだ育児・介護休業法を改正するなど環境整備を急いでいるが、現実は疑問が付いているのが実情のようだ。

調査結果によると、従業員全体に占める女性の割合は平均27.5%(前年度比3.5ポイント増)で、比較可能な2014年以降では最高となった。一方で10%に満たない企業も30.6%あった。

女性管理職の割合を企業規模別にみると、小規模企業が平均14.1%と最も高く、規模の小さい企業ほど割合が高い。小売業(15.3%)、卸売業(13.8%)、サービス業(12.9%)は県平均の8.9%より高かった。

しかし建設(8.2%)、製造(5.6%)、運輸・倉庫(4.9%)の3業種は県平均を下回った。企業側は「採用に男女の区別はしていない。だが応募は圧倒的に男性が多い」「現場の仕事が主なので、女性には不向き」と職種を指摘する声もあった。

役員については、全員が男性の企業は50.3%と半数超にのぼった。

女性の就労には男性の協力も不可欠だ。今年6月、出産や育児などによる離職防止、仕事と育児の両立を目的に、改正育児・介護休業法が施行され、来年4月からは男性の柔軟な育児休業取得推進に向けた枠組みが創設される予定だ。

そこで男性の育休取得に関する進ちょく状況を質問したところ、「積極的に取得を推進している」県内企業は7.9%にとどまった。「今後推進する」とした企業は41.2%で、合わせて49.1%と約半数近くになるが、「特に何もしない」と回答した企業も42.9%と4割以上に及んだ。

調査は今年7月、県内企業376社を対象に、景気動向調査と一緒に実施された。有効回答企業数は177社、回答率は47.1%だった。(山崎実)

夏の終わる朝に 《続・平熱日記》93

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【コラム・斉藤裕之】夜明けが大分遅くなってきた。近くの公園に犬と散歩に出かける。低く刈り込まれたサルスベリの赤い垣根が満開でほのかに匂う。まだ薄暗い中でヒグラシの鳴き声が物悲しい。そういえば、夕方にこの公園を散歩していていた時に面白い場面に出会った。

公園の奥の方には、以前は田んぼだったと思われる貯水池のような広大な窪(くぼ)地が広がっている。その周りを囲む遊歩道の足元数メートル下、歩道と直交するように人が通れるほどの大きな土管が埋まっている場所がある。その土管の右側の湿地からウシガエルの鳴き声が聞こえる。するとそれに応えるかのように、今度は土管の左側の草むらからやや低めのウシガエルが鳴く。その2匹の声が土管にエコーして低音の金管楽器の演奏さながらで、しばらく聞き入った。

余談だが、ウシガエルは長い竹の先につるした三本針にたんぽぽの花を餌にして釣った。名人の小池君は針だけで引っ掛けた。「太ももの黄色いカエルがおいしいんよ」と小池君は言っていたが、実際に食べていたかは定かではない。

家の近くまで帰って来ると、今度はムクドリの大群が現れて電線に止まる。騒音に近いさえずり声だが、見ていると明らかに隣同士で会話をしている。そのうち誰かが号令でもかけるのか、大きな羽音を立てて一斉に飛び立った。それにしても、鳥といいセミといいあの小さな体でよくもあんな大音量を出せるものだと感心する。

まだ周りに家も少なかったころ、家から1キロ以上離れたところにある田んぼから、カエルの声が聞こえることに驚いたことを思い出した。声はさほど大きくないのに。

今年はクズの花を見かけない

早朝とはいえ少し汗ばんだ。コーヒーを飲みながら開いた新聞には、地球の温度上昇の予測の記事が出ている。「食べなければ痩せる」という一番簡単な答えはわかっているのに、悩んでいるダイエッターのようだと思った。

先日は散歩の途中でカミさんと虹を見た。蛙(カエル)という字は虫偏だが、虹も昔は虫の仕業ということで虫偏らしい。確かに虹を見つけると少しうれしくなるが、虹の向こうに夢をはせるロマンチックな時代は終わるのか。というのも、この夏は虹をよく見かけた。つまりゲリラ豪雨が多かったという証しだ。

生まれ育った瀬戸内は「雨が少なく温暖な気候」と習うのだが、今は線状降水帯の天気図を見るたびに事なきを祈るばかりだ。

その実家の2階には桃の木が手の届きそうなところにあって、夏の朝はこの木に群がるクマゼミの大合唱で目が覚めたことを思い出す。温暖化と共に箱根の関を超えたというが、ここら辺りではあのシャンシャンという声(故郷ではシャム=蝉=と呼んでいた)はまだ耳にしない。あのころはクーラーもなく、じっとりと寝汗をかいたのが懐かしい。

不思議なことに、今年はクズの花を全く見かけない。今年はクズの花の絵を描こうと思っていたのに…。ビーサンの鼻緒の痕もぼんやりとした夏が終わる。(画家)

東海第2「事故が起こればつくばにも被害」 再稼働反対で街頭宣伝

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「原発はいらない」などの横断幕を掲げる参加者たち=つくば市吾妻のつくばセンター広場

東海第2原子力発電所(東海村)の再稼働反対と廃炉を訴える各地の市民団体の連合体「東海第2原発いらない首都圏ネットワーク」が11日、つくば、土浦両市など県内6カ所を含む全国45カ所で一斉に街頭宣伝活動を行った。全国各地での統一行動は、同ネットワークが発足後初めて。

このうちつくば市では、脱原発を掲げる市民有志らで組織する同ネットワークつくば実行委員会の会員ら約20人が、同市吾妻のつくばセンター広場周辺で「声をあげよう 東海第2原発はいらない」「いのちこそ宝 原発は即廃炉に」の2種類の横断幕を掲げる「サイレントスタンディング」を行い、同原発運転差し止めを認めた今年3月の水戸地裁判決を解説したパンフレットを通行中の市民らに配布した。

当初はシール投票などのイベントも予定していたが「コロナ禍でもあり、できるだけ人と接触しない、サイレントでのスタンディングを」と今回の形式となった。

実行委員会の阿部眞庭代表(73)は「原発が再稼働するということは、何か事故が起きれば(原発)30キロ圏内だけでなく、つくばにも被害が及ぶ」と訴えた。福島第1原発事故での住民の被害状況を念頭に「東海第2で事故があれば、私たちも(福島の)二の舞になる。自分たちや子どもたち、孫たちにそんな思いをさせたくない」と述べた。

しかし、直接請求署名を8万6703筆(法定必要数の1.78倍)を集めて昨年6月の県議会に提出された「東海第2原子力発電所の再稼働の賛否を問う県民投票条例」案は賛成5、反対53で否決された。運転差し止めを認めた今年3月の水戸地裁判決に対しても、同原発を運営する日本原電が東京高裁に控訴して係争中と、脱原発を訴える声が広まりにくい現状にある。

原発再稼働問題については、賛成・反対派双方が同じ考えの人々だけで固まり、多くの人々に問題が共有されにくい現状を踏まえ、阿部代表は「無関心な人たちをどうやって『政治が自分たちの日常に深く関わっている』を知ってもらうことが必要」と無関心層に原発問題を含め政治に関心を持ってもらう必要性を説いた。(崎山勝功)

父の許しで里帰り展 実家は土浦「矢口家住宅」【秋アート’21⑤】

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実家「矢口酒店」の前でポーズを決める=土浦市中央

イラストレーター「かえるかわる子」こと矢口祥子さん(49)が10月2、3日、土浦市中央の実家「矢口酒店」に戻って初の個展を開く。「矢口家住宅」と呼ばれる歴史的建造物だが、約5年前の改修以降、通りに面した格子戸はほぼ閉じられたままで、ギャラリーとして公開されるのは初めて。ここに至るまで何かと敷居が高かった。

「矢口家住宅」は、天保12年(1841)9月12日(180年前!)の大火後に建て替えられたという土蔵造の建物で、1980年県指定文化財になった。旧水戸街道沿いに面し店蔵、袖蔵、元蔵の3つの2階建ての蔵が並び、江戸時代の雰囲気を残す貴重な町屋建築とされる。

2011年の東日本大震災で損傷したため、約5年かけて解体修理工事が行われた。以来、酒類の販売は裏手の店舗で行われるようになり、建物は改修後も文化財見学会などの機会に公開されるにとどまっていた。矢口さんは今回、約250点の作品を土蔵の1、2階に持ち込み、全面展開する計画でいる。

「自分が変われば周りも変わる」

和装の矢口さんが、土浦の街なかを歩けば「がんばって」と声がかかる。地元愛をふんだんに盛り込んだ手描きの「矢口新聞」は発行6年目に突入した。街で見つけたお店や食べ物、人物を、色鉛筆を使った独特のタッチでつづる。元絵はA4判の紙に描いてA3判に拡大コピー。それを四つ切りの画用紙に貼り付けて読者に配っている。

紙面には語り手が登場し、自身を投影したキャラクター「かえるかわる子」が、ツッコミ役の「土浦れんこんけし」と丁々発止やりとりする。筑波山のカエルも土浦のレンコンも、地域の名物だと知らない若い世代にアピールする趣向で、「妄想が1割入ってる」矢口ワールドに巻き込んでいる。

実家で初個展を告げる「矢口新聞」(一部)

市内のアパートで、スマホやパソコン、テレビも持たないアナログ生活。「発行部数は50枚くらいだけどカラーコピーは1枚30円。掛け算すると出費が大変」とも。コロナ禍で、週2日ほど働いてきた筑波山のホテルの手伝いができなくなった。

祥子さんは酒店の3人姉妹の末娘。勤めていた土浦市内の会社を2014年に辞めた後、東京・池袋の西武百貨店のコミュニティーカレッジで傾倒するイラストレーター、田村セツコさんの名を見つけ、講座に通った。「自分が変われば周りも変わる」という、かえるかわる子のコンセプトが形づくられ、田村さんの指導とアドバイスから「矢口新聞」が誕生した。

2016年6月には土浦市内で初の個展を開いている。新聞発行が軌道に乗り、土浦の街なかで壁新聞よろしく掲出してくれる店も増えてきた。すると、次第に実家を会場に個展を開きたい思いが募ってきた。地元愛が行き着くところだ。

父親の酒店10代目当主、矢口成也さん(82)に何度か相談したが、首をたてに振ってもらえなかった。実家と知ったファンが「ここで絵を見せてもらえないか」と訪ねてきたこともあったというが、応対は今ひとつだったらしい。

ほしいも神社へ2度のお参り

新聞が通巻200号を超えたころ、作品の評価はいきなり、全国区になった。2020年岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)に初応募で入選したのだ。今年に入っての岡本太郎美術館(川崎市)での特別展示には「土浦の情熱」を出品した。展示スペースいっぱいに200枚以上もの「矢口新聞」を掲示して、岡本太郎流にいえば「爆発」した。

これ以来、都内の画廊の展覧会などにも招待作家として出品するようになり、複数のテレビ番組にも取り上げられた。「風向きが変わった」と矢口さんは感じた。

この春、一人でひたちなか市のほしいも神社に参拝した。「矢口新聞が出版できるよう」願掛けしたのだったが、帰宅後、個展開催について父に相談すると「ああ、いいよ」と二つ返事でOKをもらった。「拍子抜けするほど簡単に許してもらった。うれしくって、6月ごろ、もう1回ほしいも神社にお礼参りに行きました」

どういう心境の変化があったか理由はたずねていない。「シャイだから答えないと思う。だけど商店街の周囲の人から『娘さん、がんばってるね』って声をかけられたりして、応援がうれしかったんじゃないかな」。自分が変われば周りも変わる、とばかり歴史的建造物の空気も入れ替えようとしている。(相澤冬樹)

◆かえるかわる子 実家「矢口酒店」で初個展 10月2日(土)3日(日)午後1時~4時、土浦市中央1丁目矢口家住宅(県指定文化財)

宇宙天気を朝ドラに出すぞ! 《食う寝る宇宙》93

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【コラム・玉置晋】僕がコラム54で「求ム!宇宙天気防災カリスマリーダー」と、看板人物の募集を出したのは2020年1月でした。その後、同年4月に宇宙ビジネスサロン「ABLab」で宇宙天気プロジェクトを設立しました。そこに加入してくださったのが、気象予報士の斉田季実治さんでした。

斉田さんはNHKの「ニュースウオッチ9」で気象キャスターを担当されており、ご存知の方も多いと思います。そんな斉田さんですが、将来、宇宙天気キャスターを目指しており、プロジェクトマネジャーになってもらえないかというお願いを聞いてくださり、ABLab宇宙天気事業の顔となっていただきました。

今年4月、斉田さんから相談があって、気象考証を担当するNHKの朝の連続テレビ小説で宇宙天気を話題にしてみないか、というものでした。このコラムでは宇宙天気という言葉を当たり前のように使っていますが、世の中の認知度はまだまだです。

朝ドラで宇宙天気が話題に出れば、たくさんの方に知っていただけるに違いない。というわけで、斉田さんとプランを練り始めました。物語の流れとしては、主人公は気象予報士で、その職場の民間気象会社で新規事業を提案するコンペが開催されます。その中で、ボツになる提案の中に宇宙天気を取り込むというものでした。

「面白いね、最高! 才能あるよ」

9月7日、ついにオンエアー。お笑いの「もう中学生」さん演じるプレゼンターが、得意の段ボール工作で「宇宙天気プロジェクト」を猛アピール。社長さんに「面白いね、最高! 才能あるよ」と褒められるも、「宇宙天気を観測する衛星を打上げるには何百億円もかかる」「宇宙天気はまだまだ大きな利益は見えにくい。今の暮らしに役立たなきゃ、我々の仕事じゃない。なので、却下」と言われてしまいました。

これ、僕がこの10年間、民間会社でずっと言われてきたことで、斉田さんにシナリオ提案の際に組み込んでもらったものでした。ドラマでは却下になってしまいましたが、僕たちは本気で宇宙天気の普及を進めようとしています。仲間も増えてきました。今後に備え、仕込みもいろいろ進めているところです。(宇宙天気防災研究者)

「体験を語り継ぐ」被災者団体が記録誌 常総水害から6年

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10日発行の記録誌を掲げる編集委員=常総市水海道橋本町、えんがわハウス・カフェ

常総水害から10日で6年。被災した住民は何に直面し、どう乗り越えようとしてきたのか。被災者団体が同日、生活再建に向けた住民の6年間の苦闘を記録した冊子を発行した。「常総市大水害・6年の軌跡」編集委員会による「常総市大水害の体験を語り継ぐ 被害者主人公の活動~6年の軌跡」(A4判、87ページ)は、鬼怒川水害はなぜ起こったのか、被災者の声を元に支援制度をどう改善していったのか、なぜ国の責任を追及する裁判に立ち上がったのかなど、5つの章で構成された。

当初、床上浸水1メートル以上でないと支援金が出ないとされた被災者生活再建支援制度、利子3%、連帯保証人を付けよとされた災害救護資金の貸し付け、ペット同伴では入居できないとされた公営住宅、基準がなかった災害関連死の認定など、生活再建に向けて踏み出した住民が直面した問題と、市、県、国と粘り強い交渉を続け、制度を一つずつ改善していった過程と成果、改善できなかった課題などが記されている。

被災者でもある住民12人が編集委員となり、住民から聞き取ったり、住民自身が執筆した体験をまとめ、計1000部作成した。当初5周年を期に発行する予定だったが、新型コロナで集まることができなくなり発行が1年延びた。

発行責任者を務める同市豊岡町の染谷修司さん(77)は、「6年になっても水害は終わったことにはできない。店を再開したけど借金を抱えている人など、今現在も困っていることが続いている。被害者が泣き寝入りするのではなく、声を挙げて粘り強く交渉することで、一歩前進した部分となかなかそうはいかない部分があった」と話し「自然災害はどこで起こってもおかしくない。常総市で6年間体験したことが語りつがれて引き継がれていけばいい」と話した。

震災関連死で妻を亡くし体験談を寄せた赤羽武義さんは「妻は持病があったが半年やそこらで亡くなる病気ではなかった。今も帰ってくるんじゃないかと毎日過ごしている。周りの人からは時間が経つと和らぐよと言われるが、時間が経てばたつほど(河川行政を担う)国に対する怒りが大きくなる。妻の死の原因がどこにあったか、国が何をやったか、何をやらなくてはならなかったか。なぜ妻は死に至ったのか、国に説明を求めたい」などと話した。

◆記録誌の問い合わせは染谷さん(メール:kinusoshu@outlook.jp)まで。