常総水害から10日で6年。被災した住民は何に直面し、どう乗り越えようとしてきたのか。被災者団体が同日、生活再建に向けた住民の6年間の苦闘を記録した冊子を発行した。「常総市大水害・6年の軌跡」編集委員会による「常総市大水害の体験を語り継ぐ 被害者主人公の活動~6年の軌跡」(A4判、87ページ)は、鬼怒川水害はなぜ起こったのか、被災者の声を元に支援制度をどう改善していったのか、なぜ国の責任を追及する裁判に立ち上がったのかなど、5つの章で構成された。
当初、床上浸水1メートル以上でないと支援金が出ないとされた被災者生活再建支援制度、利子3%、連帯保証人を付けよとされた災害救護資金の貸し付け、ペット同伴では入居できないとされた公営住宅、基準がなかった災害関連死の認定など、生活再建に向けて踏み出した住民が直面した問題と、市、県、国と粘り強い交渉を続け、制度を一つずつ改善していった過程と成果、改善できなかった課題などが記されている。
被災者でもある住民12人が編集委員となり、住民から聞き取ったり、住民自身が執筆した体験をまとめ、計1000部作成した。当初5周年を期に発行する予定だったが、新型コロナで集まることができなくなり発行が1年延びた。
発行責任者を務める同市豊岡町の染谷修司さん(77)は、「6年になっても水害は終わったことにはできない。店を再開したけど借金を抱えている人など、今現在も困っていることが続いている。被害者が泣き寝入りするのではなく、声を挙げて粘り強く交渉することで、一歩前進した部分となかなかそうはいかない部分があった」と話し「自然災害はどこで起こってもおかしくない。常総市で6年間体験したことが語りつがれて引き継がれていけばいい」と話した。
震災関連死で妻を亡くし体験談を寄せた赤羽武義さんは「妻は持病があったが半年やそこらで亡くなる病気ではなかった。今も帰ってくるんじゃないかと毎日過ごしている。周りの人からは時間が経つと和らぐよと言われるが、時間が経てばたつほど(河川行政を担う)国に対する怒りが大きくなる。妻の死の原因がどこにあったか、国が何をやったか、何をやらなくてはならなかったか。なぜ妻は死に至ったのか、国に説明を求めたい」などと話した。
◆記録誌の問い合わせは染谷さん(メール:kinusoshu@outlook.jp)まで。