火曜日, 12月 30, 2025
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ナマズを桜川の名物料理にして駆除しよう 《夢実行人》12

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ナマズの解体

【コラム・秋元昭臣】「移入され肉食害魚(緊急対策外来種)となったアメリカナマズを地元の名物料理に変え駆除する」。ナマズの害を被っている桜川漁業協同組合の鈴木清次会長のアイデアです。そこで今夏、土浦で料理教室を開いている吉田礼子先生、霞ケ浦湖畔でモーターボート販売会社を経営している伊藤一樹社長らと一緒に、同漁協事務所(つくば市松塚)を訪れ、ナマズ料理を味わってきました。

まずアメリカナマズを解体。吉田先生が骨に付いた肉をこそぎ落とし、タンカイ(淡水域にすむ中型の貝)の甘辛煮、ごり(淡水産のハゼ類)のつくだ煮、川えびの揚げ物と一緒に、「揚げボール」「唐揚げ」「かば焼き」などにしていただきました。揚げたては「サクサク」「ほっこり」で、桜の木陰で川風に吹かれながらの昼食会になりました。

ナマズは海外ではよく食べられますが、日本では一般的ではありません。家庭でさばくのが難しく、お店にもあまり並んでおりません。天然物は入手するのが難しく、霞ケ浦周辺で売っているのは、山野水産(かすみがうら市)、観光物産店「こいこい」(行方市)、なまず屋(行方市)ぐらいでしょうか。

確かに外見はグロテスクです。しかし、ビタミンB1、Eなどが豊富で、疲労回復、免疫向上、動脈硬化予防、老化防止によいそうですから、もったいない話です。それに、広く流通するようになれば、漁業者が迷惑している害魚=ナマズを減らすことにつながり、漁協にはプラスです。普及させるため、吉田先生は調理方法を考えるそうです。

川に大切さを知る「川の日」を!

ナマズ料理を試食しながら、桜川漁連の鈴木会長は、延長60キロの桜川のことについても話してくれました。

以前は、水かさが増したときなど、7カ所の堰(せき)を人力で徐々に開放していたそうです。ところが今は、自動で一気に開放され、急激な水位上昇により、護岸が崩落したり、泥が堆積(たいせき)したり、浮遊物が大量発生したり、いろいろ問題が起きています。また漁協は、魚道設置などを関係部署に要望しているそうです。

桜川流域の人に治水・利水に関心を持ってもらうため、川の大切さをアピールする「川の日」を設けるよう鈴木会長は提案しています。また、伊藤社長は「川を守るには釣り人のマナーが大切だ」と発言、河川保護の話でも盛り上がりました。

試食中、桜川での川遊びを終えた幼児から声を掛けられ、子供を連れて遊びに来られる川を残すのも我々の責務と感じた次第です。(元ラクスマリーナ専務)

つくば市の中学校など16校・3拠点にLGBTQ関連図書贈る ライフネット生命

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森亮介社長(左)から贈呈図書を受け取る五十嵐立青市長=6日、つくば市役所

ライフネット生命保険(本社・東京都千代田区)が6日、つくば市の中学校12校、義務教育学校4校、不登校支援拠点3カ所に、LGBTQ(エル・ジー・ビー・ティー・キュー)関連の児童書を寄贈した。つくば市役所での贈呈式で、五十嵐立青市長は「どのクラスにも当事者の生徒がいる可能性がある。これからこの問題により本質的に向き合い、生徒たちのSOSに気づける学校にしていきたい」と語った。

LGBTQは、レズビアン(Lesbian)、ゲイ(Gay)、バイセクシュアル(Bisexual)の3つの性的指向と、トランスジェンダー(Transgender)という性自認、クエスチョニング(Questioning)またはクイア(Queer)という性的指向と性自認の両方に関わる各単語の頭文字を組み合わせた表現。ライフネット生命はいち早く、この人権擁護の動きに歩調を合わせた事業に取り組んでいる。

特に性的マイノリティーの当事者は、思春期の頃から社会的ストレスを受けやすいとされることから、同社では2016年からLGBTQ関連の児童書を全国の学校などに寄贈する活動を行っている。LGBTQ関連イベントにフォトブースを出展し、写真撮影をした来場者1人あたり100円を積み立て、寄贈資金とする「レインボーフォトプロジェクト」だ。

茨城県では19年7月から、性的マイノリティーのカップルがパートナーシップ関係であることを宣誓する「いばらきパートナーシップ宣誓制度」を開始。つくば市でも市営住宅の入居申し込みを、同制度を利用した同性カップルからも受け付けている。

ライフネット生命の森亮介社長は、「つくば市はLGBTQ関連の取り組みを本格的に開始していると同時に、ファミリー層が多く、今後、教育の需要がより高まる地域。児童書を寄贈することで、大人も子どもも自分らしく生きることのできる社会を実現できたら」と話す。

教員の理解も深まる本

今回つくば市に寄贈されたのは『パワポ LGBTQをはじめとするセクシュアルマイノリティ授業』(少年写真新聞社)など3冊19セット。森田充教育長によると、寄贈された本は今後、主に各学校の図書室や保健室に置く予定だ。「今まで、学校ではLGBTQについては人権教育の1つとして扱ってきたが、今後は扱い方をもっと大きくしていきたい。そのために、現在は教員の理解を深める研修を行い、生徒の生きづらさに寄り添える教員を育てている。寄贈いただいた本により、生徒だけではなく、教員の理解も深められるだろう」という。

当事者探しにつながる懸念

自身がゲイであることを公表し、LGBTQの支援活動を行っている飛鳥斗亜さん(21)は、NEWSつくばの取材に応じ、「LGBTQ当事者は決して特別な存在ではなく、どこにでも当たり前にいる。LGBTQ関連の本が置いてあることで、そこにいる当事者の心の支えになる可能性がある」と話す。

学校などにLGBTQ関連の図書が置かれることで、当事者の児童生徒にとって逆効果になる場合もある。「大々的に本を設置してしまうと、学校の中で『当事者探し』などのいじめにつながってしまう可能性もある」と本の扱い方次第で悪影響となる懸念も払しょくできない。「学校内にさりげなく本を設置し、その本を目にして、何かを感じてくれる生徒が1人でもいればいいのでは。そして、本について生徒から質問された時に養護教諭等が対応できることが望ましいだろう」と飛鳥さん。

こうした懸念に対し、五十嵐市長は「ただ本を学校に置くだけではなく、LGBTQに対する理解を学校全体でしていき、『誰が当事者なのか』を考えるのではなく、多様な学校はどのような場なのかをみんなで考えていくきっかけにしていきたい。新型コロナの感染拡大初期の頃は、学校で感染者探しのようなことがあったが、『それはよくないことだ』と教員が伝え、子ども自身も考えたことで、同様のことはなくなった。そのようなことができるのが教育現場だろう」と答えた。(川端舞)

「できない」ことは「ダメ」ではない つくばで障害施設ドキュメンタリー上映会

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「少しでも多くの人に障害のある人々や、福祉のことを知ってほしい」と話す主催者の福原美紀さん

つくば市で17日、知的障害者支援施設・しょうぶ学園(鹿児島市)の日常を描いたドキュメンタリー映画「幸福は日々の中に。」の上映会と、しょうぶ学園の統括施設長、福森伸さんを招いた講演会が開催される。主催者で、知的障害のある子を持つ親として福祉現場に携わる、つくば市在住の福原美紀さん(50)にイベント開催への思いを聞いた。

障害のある人が自由に生きられる場所

緑あふれる敷地に点在するカフェやギャラリー。工房では障害のある人たちが、粘土や木工、壁や床に絵を描くなど、自由に好きなことに打ち込む。職員は、できたものを活かしてバッグなどへと製品化する。互いの特技を活かした協働作業。昨年6月、22歳の息子の入所先を探していた福原さんは、グループホームもあるしょうぶ学園を見学に訪ねた。まるで一つの街のような敷地内の光景に「これだ!」と思ったという。

この日は施設に空きがなく、すぐの入居は叶わなかったが「障害のある人が自分の基準で生きられる街。誰もがありのまま、自由でいていい。貴重な場」だと感じ、「この価値観を多くの人に知らせたい」と上映会を企画した。

しょうぶ学園は、知的障害者更生施設として1973年に鹿児島市で開設。現在、主に知的障害者を対象に、施設入所支援や生活介護、就労支援などの福祉サービスの提供、工芸品や農業など創作活動、敷地内での飲食店やギャラリー、交流スペースを通じた地域交流事業を展開する。アート制作など、ものづくりを軸に、障害の有無によらない互いに協働しあうコミュニティーづくりが注目されている。

成功体験を積み上げられなかった

「学校教育を含め、障害者が健常者側に合わせ『できる』よう指導する場面に違和感を持ってきた」と福原さん。息子に知的障害がわかったのは3歳の時だ。当時は同世代の他の子との違いは小さかったが、成長と共に「できない」ことが増えていく。ただ「普通に育てたい」という思いは強かった。「大変」「怖い」「暴れる」障害へのネガティブなイメージも頭にあった。

小学校は普通学校を選択した。「他の子より遅いが、言葉を覚え、トイレも行ける。いつか差は埋まるはず。諦めたくない」と思った。「自分の息子の障害を認めるのが怖かった。『普通』で行けるはず」という思いも背中を押しした。

小学校では「成功体験がなかった」。授業では計算ができない、時計が読めないことを指摘され、息子の絵には他人の手が加えられた。「他の子供と差が出てしまう」と思った教師の「善意」だった。運動会では一人、ぽつんと地面に絵を描いていた。周囲の子との軋轢もあった。「できない」だけが積み重なり「母も子も自信を失った」。普通学校での生活に限界を感じ、小5の時に特別支援学校に編入した。

支援学校で始まった新生活。保護者への連絡帳に教師がコメントを書く。「積極的に(同じクラスの)重い障害のある子の面倒を見ています」「元気に歌を歌いました」「きちんと挨拶をしています」。できることばかり書いてある。「思わず『先生、これ誰かと間違えてませんか?』って聞いちゃいました」。授業参観では「それまで自信がなくて下ばかり向いてた息子が、クラスのリーダーシップをとっていたんです」息子の新たな一面に「ここに入れてよかった」と思った。

もっと彼らを信頼していい

「一般的に、社会に出ると、障害のある人は余暇を過ごす場所が少ない」と福原さんは話す。生活にサポートが必要なため、自由な行動、出会いの機会が限られる。だから福原さんは健常者と同様に青春期を楽しみ、人生経験を積める場として、障害者総合支援法に基づき2年間利用できる「福祉型専攻科シャンティつくば」や、知的障害のある青年たちのバスケットボールチーム「スマイルバスケットボールクラブ」を作ってきた。それは孤独になりがちな母親たちの交流の場になればとの思いもあった。

「今の社会は障害者を信頼していないんだと思います」。福原さんも、つい息子に「なんでできないの?」と言ってしまう。しかし、バスケや活動を通じ互いに学び合う子供たちに接し「もっと信頼していい。私たちが彼らのルールを理解するのがいい」と実感した。

以前見学した企業を福原さんが振り返る。そこでは健常者の中で、知的障害のある人も得意な作業に従事する。「誰が障害者で、誰が健常者かひと目でわからない」空間が作られていた。「適材適所。みんなに同じことをさせ、できないことを障害のせいにしない。『得意』を見つけ実行すると『障害』がなくなる。『できる』ことをすればイキイキできる。それは健常者も同じですよね」

「障害は決して『ダメ』ではない。今の社会は『できない』ことを『ダメ』だと責める風潮が強い。でも、この映画からは『ありのままでいい』と感じられる。きっと、鑑賞後に世界観が変わるのではないか。健常者にも選択肢が増えたら」と上映会に込める思いを語る。

「障害ってなんだろう?」。以前、栃木県での講演会で福原さんが聞いた、しょうぶ学園・福森さんの言葉だ。「理解してほしいというよりも、少しでも多くの人に障害のある人々や、福祉のことを知ってほしいと思っています」と福原さんは呼びかける。

◆しょうぶ学園「幸福は日々の中に。」上映会・学園長福森さんお話会 9月17日(土)午後1時〜上映会、午後3時~福森さん講演会。定員30人(事前予約制)。料金(税込み)は上映会のみ・大人1500円、中学生以上の障害者1000円、講演会のみ:大人3000円、中学生以上の障害者1500円、両方参加:大人4000円、中学生以上の障害者2000円。介助者:全て1人まで500円。会場は老人福祉センターとよさと(つくば市遠東639)。問い合わせは、メール:smile-fiona418@sea.plala.or.jp、電話:090-8963-9296(福原)

ウクライナ戦争 原発砲撃の意図《雑記録》39

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【コラム・瀧田薫】戦争の終わらせ方には二つの類型があるという(防衛研究所主任研究官・千々和泰明著「戦争はいかに終結したか」中公新書)。すなわち、「根本的解決」と「妥協的解決」である。前者の場合は、自分たちの被る損害は覚悟の上で、相手を完膚なきまでにたたき、将来の禍根を断つ方法である。後者の場合は、相手と妥協し、その時点での損害を回避する方法である。

どちらを選ぶかは、戦争終結を主導する側、つまり優勢な側にとっての「将来の危険」と「現在の損害」の比較考量によって決まる。同氏によれば、その際「紛争原因の根本的解決と妥協的和平のジレンマ」という視角が浮上するという。戦争の終わり方は一見バラバラに見えるが、実はどの戦争もこのロジックをたどっていることから、過去の失敗から学ぶこともできるし、眼前の戦争の終結方法を検討することもできるというのだ。

この理論の限界を指摘しておきたい。ウクライナ戦争をウクライナとロシアの戦争として限定すれば、この理論が有効な分析装置たり得る可能性はある。しかし、この戦争の影響が地球全域に及ぶことがすでに明らかになっている状況では、この理論だけでこの戦争の先行きを見通すことは不可能だ。

恐いのは独裁者の判断力喪失

そのことを断った上で、この理論による有効な分析例を一つ取り上げよう。ザポリージャ原発への砲撃をロシア側からの攻撃(砲撃主体がロシアかウクライナか明確なエビデンスは今のところない)と仮定し、これに千々和氏の理論を適用する。ロシア側が、ザポリージャ原発を砲撃で破壊し、放射能を外部に漏出させることまで意図しているとすれば、ロシアは紛争の「根本的解決」を決断した可能性が高い。

その場合、ロシアはウクライナが自暴自棄になって原発を破壊したとのプロパガンダをまき散らす。そうすれば、核爆弾を投下することなしに投下同様の効果を得られると同時に、核使用当事国として全世界から非難、制裁されずに済むと考える(ロシアの勝手読み)からだ。他方、ロシアがウクライナと西側諸国へのブラフとして、原発砲撃をしているだけだとすれば、ロシア側は、ウクライナとの「妥協的解決」を留保しているという見方ができる。

考えたくはないが、ザポリージャ原発に対する砲撃、その照準が一つ間違えば、ブラフがブラフではなくなる。その場合、ウクライナ原発は全世界に放射能汚染をまき散らすことになる。その時点で、状況は千々和氏の理論の限界を超えることになる。

そもそも、戦争というものをロジックや数学的合理性の視点だけで説明できるだろうか。人間には情念、狂信、集団幻想など、取り上げれば数え切れないほどの不合理性がつきまとう。いわゆる権威主義体制において個人独裁システムが機能しているとして、独裁者が判断力を失った場合、この世界はどうなるのか。想像するだけで暗たんたる思いになる。(茨城キリスト教大学名誉教授)

3年ぶり 11月5日開催決定 土浦全国花火競技大会

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土浦の花火(土浦市提供)

コロナ対策と安全対策を徹底

第91回土浦全国花火競技大会(同大会実行委員会主催)について、実行委員長の安藤真理子市長は5日の定例記者会見で、11月5日に開催することを決定したと発表した。同大会は2018年と19年は事故により途中で打ち切り、20年と21年はコロナ禍で中止となった。コロナ対策と安全対策を徹底して、3年ぶりに開催する。

安藤市長は「国内最高峰の大会であることから、3年連続で花火師が作品を発表する機会を失うことは日本の伝統文化である花火の技術を継承していくことに大きな影響を及ぼす」などと開催決定の理由を述べ、「大会を復活させなければならない使命を感じている。最後まで絶対成功させるという思いでいる」と強調した。

安藤真理子土浦市長

無料観覧席なくし有料のいす席に

新型コロナ対策として、観覧者が密集するのを防ぐため、打ち上げ会場近くの同市佐野子、学園大橋付近の桜川畔に設置する有料観覧席エリアの入場者を、例年の約8万1000席から今年は約3万5000席と4割に減らす。6800升設置する桟敷席を1升当たり6席から4席に減らすほか、桜川土手の無料の観覧席をなくし、来場者の情報を把握できるよう、すべて有料のいす席とする。例年なら桟敷席で約4万1000人、無料観覧席で約4万人が観覧できるが、今年は桟敷席2万7000人、いす席8000席になる。

さらに、有料観覧席エリア内では飲食の販売を行わず、飲酒は自粛を求める。ただし観覧席に飲食を持ち込むことはできる。一方、例年、大会時は有料観覧席周辺にも路面にたくさんの露店や屋台が並ぶ。同エリア外での飲食販売は実行委員会の規制の対象外という。

有料観覧席に入場する際は、非接触検温計(サーマルカメラ)による検温と手指消毒を求め、発熱者などの入場を制限する。会場では飲食時以外のマスク着用を徹底し、声援を送ったり歓声を上げるなど大声を出さないよう周知する。

帰宅する際は土浦駅が大混雑することから、駅構内の混雑を減らすため、駅西口への入り口を市役所前の大屋根広場1カ所に制限し、時差式で駅に入ってもらう。土浦駅前には土浦警察署のDJポリスが初登場し、ユーモアを交えながら節度ある行動を呼び掛ける予定だという。

ほかに、土浦駅から打ち上げ会場までのシャトルバスは1台当たりの乗車人数を制限する方向で現在、運行事業者の関東鉄道と協議している。

重ね玉を取り止め

安全対策としては18年と19年の事故を教訓に、打ち上げ場所付近の立ち入りを規制する保安距離を、県規程の110メートルから大幅に広くし、200メートル確保する。さらに4号玉の打ち上げでは、一本の花火筒に2つ以上の花火玉を入れて打つ「重ね玉」を取り止め、一本の筒に一つの玉を入れる一筒一発方式とする。

地域経済に影響

安藤市長は開催決定の理由についてほかに、飲食店や宿泊施設、旅行・交通事業者などたくさんの地域経済活動に影響を及ぼすこと、土浦と並ぶ日本三大花火大会の新潟県長岡と秋田県大曲でいずれも今年、3年ぶりに大会が開催されたこと、国の行動制限が行われない見通しであることなどを挙げた。

開催決定にあたっては、安藤市長自ら8月27日の大曲の花火のコロナ対策などを視察し、8月31日、実行委員会役員会を開いて開催を決定したという。

同大会は1925(大正14)年、霞ケ浦海軍航空隊殉職者を慰霊し、関東大震災で疲弊した商店街の復興を願って開催したのが始まり。コロナ禍で中止となった20年、21年は大会に代わり、霞ケ浦でサプライズ花火の打ち上げ(2020年11月3日付)などが催された。

11月5日の第91回大会は、スターマイン、10号玉、創造花火の3部門で競技が行われ、総合優勝者には内閣総理大臣賞が贈られる。3年前は65万人が観覧したが、今年の参加者について市商工観光課は「今のところ判断が付かない」とする。

◆大会は11月5日(土)午後5時30分に競技開始。有料観覧席のチケット販売は9月中旬ごろ開始予定。料金は、桟敷席が4人で2万2000円、2人1万1000円。椅子席は打ち上げ場所からの距離によって3000円~4000円(金額はいずれも予定、消費税込み)。雨天の場合は同12日(土)または13日(日)に延期される。

つくば市政を迷走させる 困った市議会 《吾妻カガミ》140

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つくば市役所正面玄関サイド

【コラム・坂本栄】つくば市長リコール(解任)署名集めが未達に終わったことで、総合運動公園問題の次の焦点は住民訴訟の判決に移りました。市議会が運動公園用地跡売却の可否を議決にかけていれば、解任運動も住民訴訟もありませんでした。議会の怠慢が問題をこじらせているといえます。

署名運動の結果は、本サイトの「市長リコール請求を断念 … つくばの市民団体」(8月16日掲載)をご覧ください。また、用地処分契約の内容は「グッドマンと売買契約を締結 …旧総合運動公園用地」(8月30日掲載)に出ています。

未達の原因について、▽つくばには研究機関用地が必要だとの訴えに市民の関心が薄かった(市民の多くは東京通勤に便利な上質な街つくばに満足?)、▽訴えが多岐にわたり、問題の核心(市の用地売却手順の違法性)がぼけた、▽市民の関心が売却額(110億円)に集まり、用地売却の手順に向かわなかった―と、私は分析しています。

運動公園用地問題はまだ終わらない

解任運動を引っ張った酒井泉さん(研究者)は、市長解任を決意した理由を「今年1月の議会で、用地売却は議決不要との市執行部の判断が示された。売却案を議会に諮り、それを議会が承認するなら、それはそれで仕方ない。しかし、議会の議決も取らず、執行部の勝手な売却を許すというのなら、市民運動で止めるしかないと思った」と言っています。

その第1弾が水戸地裁への住民訴訟(5月下旬、判決は1年ぐらい先、訴状は下記リンク先に転載)、第2弾が不発に終わったリコール署名集め(7中旬~8月中旬)でした。

地裁判決後の流れは、A:市の売却手順は合法→有志市民は上級審に持ち込む、 B:市の売却手順は違法→市執行部は上級審に持ち込む―といった展開が考えられます。判断するのは、(議会を軽視する)行政でも(執行部に従順な)議会でも(あまり関心がない)市民でもなく、(法律に基づき裁く)司法ですから、どうなるか予想できません。いずれにしても運動公園問題はまだまだ終わりそうにありません。

市の「議決不要」を素直に受け入れ

有志市民が違法だと主張する「市の用地売却手順」のおかしさについては、コラム135「運動公園用地売却に見る つくば市の不思議」(6月20日掲載)で取り上げました。

私はこの中で、「不思議なのは、66億円で購入した運動公園用地が市の大事な財産であるにもかかわらず、帳簿上は市のものでなく、市のペーパーカンパニー『つくば市土地開発公社』の所有だから、その売却については議会に諮らなくてよい―という手続き論をタテに、議会の議決を回避したことです」と指摘しました。

笑えるのは、執行部の「議決不要」に議会が異論を唱えず、素直に受け入れたことです。市が運動公園用地を買ったときは、関連する議案を審議しています。ところが、売るときは必要がないというのでは、議会の仕事の放棄です。議決しておけば、この問題はずっと前に片付いていたのに、実に困った議会です。(経済ジャーナリスト)

<参考> 住民訴訟の訴状

気候変動再現の環境で栽培ロボット働く つくば・農研機構に人工気象室

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レタスを栽培しているロボティクス人工気象室の扉を開けて説明する米丸淳一インキュベーションラボ長=農研機構農業情報研究センター

作物を栽培する環境を再現できる人工気象室「栽培環境エミュレーター」に、ロボット計測装置を導入した「ロボティクス人工気象室」が農研機構(つくば市観音台)で運用を開始し、2日報道陣に公開された。スーパーコンピューター「紫峰」と連動した研究基盤として開発され、気候変動に伴う高温多湿などの環境において、収穫時期、収量、品質など作物の性能がどう変化するか、精密な推定を可能にする。

研究室内に野外の環境を人工的に模擬することを「エミュレート」という。作物の栽培環境を精密に再現できる「栽培環境エミュレーター」の開発は2019年度から始まり、農業情報研究センターの研究室に、内寸で幅172センチ×奥行き172センチ×高さ185センチのボックスが4基設置された。高機能タイプ2基、標準タイプ2基があり、温度は高機能では5度Cから35度C、標準では15度Cから32度Cの間で制御する。

湿度や二酸化炭素濃度のほか、LED光源により光量や紫外域を含む波長の調整もできるようになっている。風水害の再現はできないが、干ばつなど世界各国で顕著になっている気候変動の動態を、きめ細かなデータ制御によって再現する。

このエミュレーター内に置かれるのが、作物の大きさや色などの形質を連続で取得できる「ロボット計測装置」。水やりや液肥の循環装置などを備え、複数のカメラで作物を連続撮影する装置だ。2種の装置を組み合わせることで、人工気象室を開閉することなく、時間を追って取得された画像とセンシング情報を解析し、作物形質を連続的に計測できるという。

気候変動に伴う作物生産の不安定化に対して、作物の性能(収穫時期、収量、品質等)を明らかにする農業技術が求められている。これまで、これらの技術開発は野外での栽培試験を前提としていたが、主要な作物の多くは年に一度しか栽培試験ができない。様々な栽培環境に作物が反応し、形質を変化させる作物環境応答を明らかにするためには多くの場所と長い時間が必要だった。

栽培環境エミュレーターではイチゴや葉物野菜などのほか、コメやコムギ、ダイズなどの穀物の栽培も想定しているが、コメの場合だと1年に3回の作付け~収穫ができるといい、野外環境に比べ格段に早く、多くのデータを集めることができる。

スパコンとも連動する研究基盤

「ロボティクス人工気象室」は、農研機構のもつスーパーコンピューター「紫峰」とネットワーク接続している。高速ネットワークを介し、解析プラットフォームへリアルタイムで転送することにより、得られた作物環境応答データを利用した深層学習(AI解析)による形質解析ができる。イチゴ苗の連続撮影から、着果を見分け、その生育具合や大きさなどが日照時間とどう関連づけられるかなどを、AIが解析する。

さらに、「農研機構統合DB」に含まれる病害虫、気象、遺伝資源、ゲノム情報など、様々な農業データを用いた複合的な解析が可能となり、外部機関の施設等からもこれらの解析を遠隔で行える。民間企業、大学、公設試験研究機関、JA、産地等の外部機関からもこれらの解析を遠隔で行うことができるため、外部機関との共同研究のための基盤として利用できるということだ。(相澤冬樹)

関東鉄道が100周年 ビール販売や展示会など記念事業展開

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一般路線バス前面の100周年の方向幕(関東鉄道提供)

関東鉄道(土浦市真鍋、松上英一郎社長)が3日、創立100周年を迎えた。記念のロゴマークを制定したほか、今後1年間を「100周年イヤー」として、オリジナルビールの販売、記念展示会やスタンプラリー、バスツアーの開催などさまざまな記念事業を展開する。

同社は、鉾田線(石岡と鉾田を結ぶ鹿島鉄道線、2007年に廃線)を運行する鹿島参宮鉄道が1922(大正11)年9月3日に設立されたのが始まり。1944(昭和19)年に竜ケ崎線を運行する竜崎鉄道と統合し、1965年に常総鉄道(現在の常総線)と筑波鉄道(筑波線、1987年に廃線)を運行する常総筑波鉄道と合併し、関東鉄道に商号変更した。

筑波鉄道土浦駅で1922(大正11)年に撮影された大正時代のSL(同)

現在は、JR常磐線の取手駅とJR水戸線の下館駅を結ぶ常総線(51.1キロ)と、龍ケ崎市内のJR龍ケ崎市駅と竜ケ崎駅を結ぶ竜ケ崎線(4.5キロ)の二つの鉄道路線のほか、県南、県西、鹿行と千葉県の一部で路線バスなどを運行する。自動車事業や不動産事業も展開している。

同社総務部内部統制・企画担当の矢野課長は「いろいろあった100年だが、地域の人たちに支えられてここまでなんとかたどり着いた。感謝の気持ちに尽きる」とし「地域のふれあいパートナーとして、これからも地域に根差した事業を継続したい」と話している。(伊藤悦子)

100周年記念事業は次の通り。

100周年のロゴマーク(同)

▽創立100周年記念ロゴマークの制定
筑波山や霞ケ浦、亀城公園、水戸芸術館と各地の花火大会を表現したものに、関東鉄道の鉄道やバスを表現したデザイン。今後さまざまなイベントなどで使用する予定。

▽主要駅や路線バスで「100周年記念」の行き先表示
駅の案内表示器に「100周年」を表示するほか、一般路線バス255両に「100周年記念」の行き先表示をする。

▽関鉄ビールを販売
鹿島参宮鉄道をイメージした青いラベルのピルスナーと、常総筑波鉄道をイメージした赤いラベルのシュバルツ(黒ビール)の2種類のオリジナルビールを販売する。牛久シャトーが製造。いずれも330ミリリットル入りで、価格は青いラベルが550円、赤いラベルが650円。常総線守谷駅構内の関鉄ミニショップで販売している。筑波山ロープウェイつつじが丘レストハウス(つくば市筑波)、筑波山ケーブルカーコマ展望台店(同市筑波)、骨付きがぶり鶏がぶり亭土浦店(土浦市有明町)など飲食店でも味わうことができる。今後は通信販売も予定している。

▽イオンモール土浦で記念展示会
17日(土)~19日(月)の3日間、土浦市上高津のイオンモール土浦で記念展示会を開き、関東鉄道100年の沿革や主な出来事をパネル展示する。竜ケ崎線を走った蒸気機関車の段ボール製実物大模型(全長7.7メートル、高さ3.4メートル)も展示する。

竜ケ崎線の1号機関車(同)

▽常総線と漫画「茨城ごじゃっぺカルテット」コラボスタンプラリー
常総線や筑波山が登場する茨城を舞台にした人気の漫画「茨城ごじゃっぺカルテット」を発行する小学館とコラポし、常総線の主要駅で30日まで、作品に登場する常総線にちなんだキャラクタースタンプを集めるスタンプラリーを実施中。全部集めるとオリジナル缶バッジをプレゼントする。作者書下ろしの常総線フリー切符も販売している。

▽バスツアー
常磐神社、笠間稲荷神社、常陸国出雲大社などをめぐる「茨城県御朱印めぐり日帰りツアー」(出発日は3、4、10、11、17、18、24、25日、基本料金は1万1000円=消費税込み)など8種類のバスツアーを開催する。

▽100周年記念ソングをリリース
インディーズバンド「人類滅亡プロジェクト」とコラボし、100周年記念の「百年経っても」をリリースする。同バンドのYoutube(ユーチューブ)チャンネルやLINE MUSIC(ラインミュージック)などで配信し、10月3日にはシングルCDを発売する。

▽竜ケ崎駅旧硬券販売会
鹿島参宮鉄道、筑波鉄道、鹿島鉄道の旧硬券の販売会を、3日竜ケ崎線の竜ケ崎駅で開催する。創立100周年鉄道グッズの販売なども行う。

◆問い合わせは関東鉄道株式会社 総務部内部統制・企画担当 029-822-3710

土浦の理髪店主、国体出場へ パワーリフティングで県代表に

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国体パワーリフティングに出場が決まった斎藤真也さん=土浦市中央、理髪店sora前

土浦駅前の商店街通りにある理髪店sora(ソラ、同市中央)を経営する理容師の斎藤真也さん(45)が、栃木県で10月に開催される国民体育大会「いちご一会とちぎ国体」の公開競技パワーリフティングに茨城県代表として出場する。コロナ禍により国体の開催は2019年のいきいき茨城ゆめ国体から3年ぶり。

パワーリフティングの公開競技=メモ=は、開会式前の9月17日から19日に行われ、斎藤さんは19日に出場、ほかの出場者10人と記録を競い合う。

斎藤さんは同市真鍋出身、2006年から市内で理髪店を経営している。住まいは石岡市。

元自衛官で、現在も、災害時などに現職自衛官と共に活動する即応予備自衛官として年間30日の訓練に参加している。

パワーリフティングを本格的に始めたのは2021年7月。新型コロナで外出の機会が減り、体力の衰えを感じ、2020年からパーソナルトレーニングジムに通い始めた。そこで初めてパワーリフティングを知ったという。「中学から柔道をしていたが格闘技は実はあまり好きではない。パワーリフティングは記録と向き合う競技なので自分に合っていると思った」と話す。

ベンチプレスのトレーニングを行う斎藤さん=土浦市内のフィットネスジム

今年の4月に第41回県パワーリフティング選手権大会に出場。男子92キロ超級で、472.5キロの記録を出して2位に入賞した。7月に開催された第77回国体公開競技パワーリフティング関東ブロック予選大会では、男子120キロ級で490キロを記録し6位に入賞し、国体出場を決めた。

パワーリフティングは、3種目の競技で持ち上げたバーベルの合計挙上重量で順位を決定するスポーツ。3種目とは、バーベルを肩に担いでしゃがんで立ち上がる「スクワット」、ベンチ台にあおむけになって、胸の上でバーベルを持ち上げる「ベンチプレス」、床に置かれたバーベルを垂直に引き上げる「デッドリフト」。

斎藤さんは大会に備え、週に6日はトレーニングを行っている。「国体に出場できるだけでもうれしい。目標は520キロ。ベストを尽くしたい」と意気込みを語る。(伊藤悦子)

【メモ】公開競技は、都道府県対抗の天皇杯・皇后杯の競技得点の対象となる正式競技(37競技)とは別に行われる競技で、得点対象にはならない。とちぎ国体ではパワーリフティングを含め5競技が公開競技となっている。

痩せる=健康の落とし穴《続・気軽にSOS》116

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【コラム・浅井和幸】何年か前にラジオから次のような話が流れてきました。誰でも知っているような有名な落語家の師匠が入院していました。お弟子さんたちがお見舞いに集まり、ベッドに横になっている師匠のそばにいます。

師匠は言います。

「のどが渇いたから、何か飲み物を買ってきてくれ」

分かりましたと、お弟子さんが買い物に走りました。全くの世間知らずというほどの若いお弟子さんではなく、そこそこの人生経験のある人だったそうです。お弟子さんが帰ってきました。

「師匠、健康になるヘルシーなお茶です」

弟子はヘルシーと書かれた痩せるお茶を買ってきました。それを見た師匠。

「バカヤロー、俺は医者にもっと食べて、太れと言われているんだ」

何とか健康のためと気を使ったつもりのお弟子さんは、褒められるどころか怒られてしまいました。

怒りと笑いは似たところに存在する

これは笑い話として語られていました。私はこの話を聞いていて、怒りと笑いは似たところに存在するなと感じました。気持ちに余裕があると、怒りは笑いに変えられるのではないかとも考えるようになったのです。

私は気が短い方なので、この、怒りを笑いに変化させるということ、さらには怒りではなく笑いとして受け止めることが目標となりました。まだまだ練習不足なので、今後も研さんしていきたいと思っています。

もう一つの教訓が、大勢にとっての健康なものが、ある人にとっては健康を害する可能性があるということです。私たちは、ゴマが健康に良いとか、塩が健康を害するとか、食品単体について健康に良いとか悪いとかレッテルを張りがちです。

食品、というか栄養素には、ほとんどのものに欠乏性と過剰性があります。さらに、アレルギーがあったり、ラジオの話のように病気であったりと、そのときの状態によって良しあしは変わってくるものです。

では、優しい言葉、正義、気を回す、いたずら、サボる、逃げる、笑う、悲しむ、ポジティブ、ネガティブ、気を使う、気を使わない、わがまま、友人が多い、明るい、暗い、勉強ができる―などは、良いことでしょうか悪いことでしょうか。一度立ち止まってあれこれと悩んでみると、何かが見つかるかもしれませんよ。(精神保健福祉士)

「学校に行かない」に困ったら相談を つくばの支援団体

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毎月開かれている運営委員会の様子=8月23日、つくば市並木交流センター

長い夏休みが明けた9月は「学校に行かない」と言い張る子どもが多くなる。親はパニックになり、どう対処したらいいかと悩む。

そんな悩み相談に乗っているのが民間支援団体「つくば子どもと教育相談センター」(事務局・つくば市梅園)だ。代表で同市在住の穂積妙子さん(73)は「困ったら相談に来てください。きっとお力になれると思います」と呼び掛けている。

同センターは不登校が増え始めた1995年、元教員たちが学校生活の困りごとの相談に乗る組織として設立。以来、子どもの不登校や発達障害などに悩む親の相談を軸に、学校生活に不安を抱える子と親を支援する活動を続けている。

代表の穂積さんも創設メンバーの1人。センター始動後、臨床発達心理士になるためにお茶の水女子大、同大学院で学んだ後、資格を取得。臨床心理の専門家として相談者の悩みに耳を傾ける。

穂積妙子代表

9年に及び支援継続

ある日、公立中学2年のA君が母親と相談にやって来た。内容はA君の不登校だった。A君はポツンと「部活の先輩との人間関係がつらい」ー。

穂積さんは「つらいよね」とA君の気持ちを受け入れた。A君が言葉にならない悩みをため込んでいることが伝わってきたという。

母親はセンターが運営する「不登校親の会」に入会し、不登校を経験した先輩から助言を受けたことでA君を理解できるようになった。

3年になったA君は学校にいられる時間が少しずつ長くなった。義務教育を終えると通信制高校に進み、希望する関西の私大に入学したが、大学でも人間関係による悩みが再燃し、1年休学して5年かけて卒業した。

9年に及んだ相談を振り返り「深い悩みを抱えると簡単に結論は出ない。内容によっては解決まで10年以上かかることは少なくない」とも。公的機関の相談窓口は新規相談者を受け入れるため、概ね相談は年間3回までで継続相談は難しい。「私たち民間組織だからできる」と穂積さんは言い添えた。

相談は年間延べ150件

同センターは、専門職による個人相談をはじめ、不登校や引きこもりがちな青年の居場所事業、同じ立場の親たちが交流したり相談できる「親の会」の運営などを通して子どもと親を支援している。運営委員会が運営を担い、約270人が会員となって活動を支えている。

相談は年間延べ150件に上る。相談者の8割がつくば市在住者だという。ただし2020年は新型コロナ対策のため相談受付を3カ月間中止したことで3分の2に減少した。

長引くコロナ禍で相談変容

2020年春の突然の長期臨時休校以降、いじめの相談件数が減ったが、被害者の児童生徒が心身に苦痛を感じたり転校を考えるなど、深刻なケースが散見されるという。

また、これまで人間関係や勉強に悩む思春期の中学生で占めていた不登校の相談が、小学生と高校生に広がり、小学生の親からの相談の過半数を不登校が占めるようになった。

「小学生でも学校生活の中で生きづらさを感じる子が増えている表れで、長引くコロナ禍で制限のある学校生活に疲れた子どもが増えているのではないか。深刻ないじめもコロナ禍の生活へのストレスが一因では」と穂積さんは心を痛める。

社会に羽ばたいた子どもたちから近況を知らせる手紙がセンター事務局に届くという。さまざまな問題に直面しながらも、困難を乗り越えて成長していく姿が穂積さんや運営委員たちの励みになっているそうだ。(橋立多美)

◆つくば子どもと教育相談センターは同市社会福祉協議会などと協働事業を行っており、つくば市民を対象に無料で相談に応じている。受け付けは▽毎月第1、第3金曜午後1時~4時30分、同市筑穂1-10-4、大穂庁舎内 市社会福祉協議会相談室。電話029-879-5504▽毎週水曜日午前9時15分~午後0時30分、同市吾妻2-5-1、産業振興センター1階フリースクール「むすびつくば」相談室。電話080-3152-6298▽月1回土曜日午前10時30分~午後4時30分、同市谷田部2844-2、YMCAみどりの事業所相談室。電話029-828-8189。こちらは相談者の居住地や年齢制限なし。いずれも事前予約必要。つくば子どもと教育相談センターのホームページはこちら

あまり話さない息子と私の散歩道《ことばのおはなし》49

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【コラム・山口絹記】前々回の記事(7月1日付)で、我が家の1歳児の息子があまりことばを話さないというおはなしをした。私としては特に心配はしていなかったのだが、案の定ぼちぼちと話すようになってきた。

私が帰宅すると「パパ!パパ!」と駆け寄ってくるし、私のお気に入りのペンポーチ(長沢芦雪の「白象黒牛図屏風」に描かれた白い犬がモチーフ)を奪って逃げるときは、「わんわん!わんわん!」と絶叫しながら走り去っていく。「鼻」という単語を覚えてからは、「はなぁ!」と言いながら、どこまでも追いかけてきて、すさまじい勢いで家族の鼻の穴に指を突っ込んでくる。指が細いので思いの外奥まで到達して、正直かなり怖い。

また、こちらのことばの意味はかなり理解しているようで、「お姉ちゃんにコレ渡してきて」とか「冷蔵庫にしまってきて」みたいなお願いも言った通りにやってくれる。しかし、私とふたりきりの時は相変わらずあまり話さない。

話す相手を選ぶ 省エネモード

先日も息子が新しい靴を購入したので、「せっかくだからお散歩いこうか」と2人で散歩に出たのだが、2人とも基本的に無言である。放っておくとどこかに走っていってしまうので、「手、つなご」と声をかけると、無言で私の顔をじっと見つめてから右手を差し出してきた。また静かになる。

行きつけのコーヒー屋さんに着くと、まず店員のお姉さんに手を振ってご挨拶。コーヒー豆を買って、お姉さんに「牛乳あるけど飲む?」と聞かれると「ぎゅっぎゅ(ぎゅうにゅう)!」と笑顔で返答。なんだおまえ、お姉さん相手なら話すのか? 店内でサービスのドリンクを飲み干すと、自分でコップをお姉さんに返却して、しっかり手を振って笑顔で退店。そしてまた無言である。

帰り道のスーパーで私が簡単な買い出しをしている間も、1人で店内を歩き回っては、お姉さんを見つけるたびに笑顔で手を振って挨拶回りをしているのを、私は横目で確認した。そうか、そういうことなのか。父は理解したぞ。

なんてことはない、話す相手を選んでそれ以外は省エネモードを駆使しているらしい。帰り道、さすがに疲れたのか路上に座り込んだ息子は、私に両手を差し出して言った。

「ん!(抱っこだろ?察しなよ)」

結局、1時間弱の散歩道で息子が私に発したことばは、この「ん!」だけ。父としては、いろいろと複雑なのである。(言語研究者)

市民ネットの宇野信子氏が出馬表明 県議選つくば市区

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31日立候補表明した宇野信子氏(前列右)。左は永井悦子つくば・市民ネットワーク代表。後列は(左から)皆川幸枝、川村直子、あさのえくこ、小森谷さやか市議=つくば市竹園、筑波研究学園都市記者会

任期満了に伴って年末に実施される県議選に、新人で元つくば市議の宇野信子氏(57)=つくば・市民ネットワーク=が31日記者会見し、つくば市区(定数5)から立候補すると表明した。新人の立候補表明は同市区で初めて。

宇野氏は立候補を決めた動機について「市議として2期8年の活動の中でつくば市だけでは解決できない課題がたくさん見えてきた。県の影響が大きい課題が山積しており、最近では特に県立高校の中高一貫化や洞峰公園について、つくば市から5人も県議が出ているのに、情報がほとんど市民に届いてない」と指摘し、「(市民ネットが)つくば市で実践してきた市民参加と情報公開を生かして、県政をもっと市民・県民に見えるようにしたい」と話した。

公約としては①情報公開と市民参加で県政を見える化②持続可能社会の実現③子育て・教育・福祉の充実④東海第2原発の再稼働の是非について県民投票の実現ーを掲げることを検討しているとした。

宇野氏は高知市出身。広島大学卒業後、広島県職員となり、県立総合精神保健センターに心理技術員として勤務した。1992年につくば市に転居し、2012~20年まで市議を2期務めた。現在、政治団体「つくば・市民ネットワーク」(永井悦子代表)運営委員。

県議選つくば市区をめぐっては、現職5人のうち星田弘司氏=自民=、鈴木将氏=同=、山中たい子氏=共産=、塚本一也氏=自民=の4人が再選を目指しているほか、田村けい子氏=公明=が引退し、後継者として市議の山本美和氏が立候補する見通し。ほかに複数の名前が挙がっており激戦になるとみられている。

県議選の日程は9月8日に開かれる県選挙管理委員会で決定する予定。県議の任期は来年1月7日。4年前の県議選は12月9日投開票で行われた。

1938年に八尺の浸水 土浦市田中の自然石に刻まれる【自然災害伝承碑の現在】㊦ 

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土浦市内の1938(昭和13)年水害の記録碑。判読しにくいながらも「十三年」「大洪水」の文字が刻まれている=土浦市田中町

土浦(市)の水害は江戸時代に街の形ができた頃から桜川の氾濫や霞ケ浦からの遡上で幾度となく浸水の被害が出ている。その抜本的な洪水対策に従事した政治家・色川三郎兵衛氏の活動を閲覧する予定だったが、土浦市立博物館は、本年7月から大規模改修で2年後の1月まで休館となっていた。

常磐線軌道を防災インフラとして整備

色川氏の業績は、現在の常磐線軌道建設時に盛土構造物を霞ケ浦寄りに築造させ、堤防の役割を与えたことが有名だ。これは東日本大震災時、宮城県の仙台東部道路が同じ機能を果たし、ある程度津波を防いだ。常磐線軌道ははるか明治時代に防災インフラとして整備されていた。色川氏はさらに、川口川河口付近での閘門設置にも尽力した。

川口川そのものは埋め立てられ消失しているが、旧川口川閘門鉄扉と排水ポンプは残されており、色川氏の業績を讃えた記念碑と像も建立されている。ただ、構造物自体は伝承碑の対象外であり、色川氏の記念碑にも業績を讃える文言しか刻まれていないため、治水の記録を捕捉銘板などで追加しなければ伝承碑として登録できる確率は低い。

色川三郎兵衛氏の像

防災サポーターが自転車で走り回り確認

これは意外な展開になった。本当に土浦市内にも水害伝承を記した石碑は皆無なのだろうか。つくば市同様、土浦市の防災危機管理課に足を向けた。

「現時点(8月17日)では自然災害伝承碑に登録されていませんが、1938(昭和13)年水害の記録を彫り込んだ自然石が存在します。この石碑は以前、市立博物館が災害の記憶をテーマとした企画展を催した際、水害の歴史事例として紹介したことがあります」

1938年6月末から7月にかけての台風水害は、真鍋から下高津までの桜川低地が冠水し、土浦町で約4800戸、真鍋町で1000 戸以上の床上浸水を生じた。氾濫した水の深さは8尺(約2.4m)に及んだという。

「地域防災サポーターの方が、市内を自転車で探し回り、この石碑を確認してくれました。市としては伝承碑に登録できる十分な条件を備えていると考えます」

それでも確認された石碑はこの一例だけだという。

「自然災害伝承碑そのものが、これから広く認知されていくのでしょう。市民の関心が高まり情報のやり取りが活発になれば、今は埋もれている災害の記録が2例目、3例目とよみがえっていくのではないでしょうか」

防災危機管理課でレクチャーしていただいた石碑を探して、中心市街地からは少し離れた神社にたどり着く。昔は一面の田園地帯だった。周辺の新市街地は80年代以降に形成され、社だけが長い歴史をたたえている。拝殿横の樹木を支えるように並べられた自然石の一つに、判読しにくいながらも「十三年」「大洪水」の文字が刻まれていた。

登録で歴史を再認識

この探訪は、国土地理院の地図と測量の科学館内で目にした自然災害伝承碑の紹介コーナーがきっかけだ。展示パネルのひとつに、つくば周辺の伝承碑4カ所が掲げられていたが、土浦市にもつくば市にも伝承碑の登録がないという事実に、驚きを禁じ得なかったのである。

そんな馬鹿な、と国土地理院に伝承碑の成り立ちを聞くところからスタートした。印象としては、災害伝承の多くは口伝えと文献に委ねられている。それらの維持保存は重要な意義を持つが、紙媒体もデジタル化した情報も、おそらく石碑のような堅牢さに比べれば、長期間にわたる伝承には限界がある。

そう言い切ってしまうと、地理院が進める伝承碑の情報収集・登録・ウェブ上での利活用に矛盾を与えてしまうが、各地の伝承碑がどこにあり、何を伝えているかのガイドとして地域の耳目が触れやすくしていくことに新たな意義が生まれている。

土浦市内の大洪水の碑は、近く自然災害伝承碑として登録されることだろう。大事なことは、登録後に改めて人々がその歴史を再確認し、災害に対して油断のない暮らしを営むことにある。(鴨志田隆之)

終わり

戦争遺跡めぐる夏の宿題こなし 3、4日の土浦公演迫る

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公演関係の資料を前に石田さん=土浦市内の喫茶店

いっぱいの宿題を抱えた夏の終わり、「流れる雲よ2022茨城実行委員会」の委員長、石田和美さん(44)ら女性7人のメンバーは、9月3、4日クラフトシビックホール土浦(市民会館)で開く演劇公演の準備をようやく終えようとしている。

「記憶をつなぐ最後の世代かも」

「流れる雲よ」(脚本・草部文子、演出・田中寅雄)は、演劇集団アトリエッジ(東京)によって、2000年からミュージカル版やラジオドラマなどで上演されてきた作品。太平洋戦争末期の1945年夏、特攻(特別攻撃隊)基地で出撃を待つ若者たちの物語だ。

打ち合わせをする実行委員会メンバー=土浦市内のそば店

実行委員会をつくり、21年6月から公演準備を進めてきたのは、40代から50代の女性ばかり7人でつくる「えにしわぁくプロジェクト」のメンバー。「縁(えにし)と和」を茨城から未来でつなげていこうと立ち上げ、戦争遺跡を訪ねたり、軍関係者や遺族に話を聞くなどの体験を共有してきた。

「戦争の体験者がどんどん少なくなって、記憶を直接伝え聞けるのは私たちが最後の世代かもしれない」という石田さんは、土浦市在住の会社員。父親は元自衛官で、陸上自衛隊武器学校(土浦駐屯地、阿見町)に勤めていた時、連れていってもらった予科練記念館「雄翔館」をその後、何度も訪ねることになった。

多数の特攻隊員を戦地に送り出した予科練(海軍飛行予科練習生)の存在を忘れてはならないと思った。雄翔館を運営する公益財団法人「海原会」は昨年、事務局を東京から阿見町に移したが、事務局長を務める平野陽一郎さんは父親の同僚だった。

7人のメンバーは土浦市、神栖市、石岡市のほか東京在住の2人を含む。祖父や大叔父が戦死したりしており、多かれ少なかれ、こうした「縁」でつながっている。石田さん自身、大叔父が重巡洋艦、羽黒の副長を務めており、1945年5月16日のペナン沖海戦で撃沈された際、艦と運命を共にしたと聞かされていた。

羽黒の悲劇を舞台化していたのがアトリエッジで、「Peace in a Bottle(ピース・イン・ア・ボトル)」という作品があった。くしくも脚本の草部文子さんの叔父が、羽黒で航海長を務めていたことを知った。「縁」があった。

神栖市で海軍神之池基地の戦跡などを訪問していたメンバーの一人は10年来、同劇団の観劇を続けており、連絡をとったところ、「茨城・土浦なら、よりふさわしい作品がある」と「流れる雲よ」公演を持ち掛けられた。同劇団は、陸の「ぞめきの消えた夏」、海の「Peace in a Bottle」、空の「流れる雲よ」の3部作をレパートリーに、各地を公演していた。

土浦の会場を押さえ、1年以上先の9月公演の日程を決めたものの、イベントの開催には不慣れなメンバーばかり。コロナ禍による非常事態宣言や第6波、第7波の感染拡大で、集客に向けてのアピールにもブレーキがかかった。

鹿島・筑波、両海軍航空隊跡を訪ねる

海原会の協力を取り付けるなどの準備をしながら、メンバーは県内の戦跡などを訪ね、戦争の記憶を共有する作業にも取り組んだ。

この夏、クラウドファンディングで、廃墟と化した基地跡の保存と再生プロジェクトを始動させた鹿島海軍航空隊跡地(美浦村)を訪ねたり、総延長3キロ以上にわたって地下通路が張り巡らされていることが分かった筑波海軍航空隊旧司令部(笠間市)の遺跡発掘のボランティアに加わった。打ち合わせでも、海軍航空隊ゆかりの料亭、霞月楼(土浦市)を見学するなどしている。

「流れる雲よ」の出演者を招いて、予科練平和記念館(阿見町)の零戦レプリカ前で公演チラシ用の写真を撮った際にも、関係者から話を聞いた。今回の公演では、鑑賞チケット購入者には、同館の招待券が付けられる。

出演者たちと訪れた予科練平和記念館=阿見町(実行委員会提供)

石田さんは「まずはたくさんの人に見てもらいたい。近代史は、実は学校教育できちんと習わないから戦争の背景とか、国家や家族への思いなどを知ると気づくことが多い。その思いに寄り添って、子供や孫たちに伝えたり、茨城から発信する、それが私たち世代の役割だと思う」と語っている。(相澤冬樹)

◆流れる雲よ茨城公演 9月3日(土)午後6時30分から、4日(日)午後1時30分からクラフトシビックホール土浦(土浦市東真鍋町)小ホール。指定席8000円、自由席6500円(税込み)。問い合わせ電話080-1018-1124(石田)

グッドマンと売買契約を締結 つくば市旧総合運動公園用地

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グッドマンジャパンによる事業計画イメージ図。奥(北側)の建物2棟が物流施設、中央の建物7棟がデータセンター、手前(南側)が防災拠点施設で、緑化された大屋根で覆われている(つくば市提供)

つくば市が民間一括売却に向けて手続きを進めている同市大穂の旧総合運動公園用地(約46ヘクタール)について、同市は30日、「グッドマンジャパンつくば特定目的会社」(東京都渋谷区)と同日付けで売買契約を締結したと発表した。

土地所有者の市土地開発公社(理事長・飯野哲雄副市長)が約110億2900万円で一括売却する。売却にあたっては4社が応募し、評価点合計が最も高かったグッドマンが選定されていた(6月21日付)。全額が払い込まれた後、同用地は現状のまま、同法人に引き渡される。売買契約締結日から30日以内に全額払い込む契約になっている。

同特定目的会社は、外資系物流不動産会社「グッドマンジャパン」(東京都千代田区、グレゴリー・グッドマン社長)が、資産の流動化に関する法律に基づいて、特定資産を裏付けに有価証券を発行するなど資産の流動化に関わる業務を行うために設立した。

樹木が生い茂る現在の旧総合運動公園用地(酒井泉さん提供)

事業計画によると、約46ヘクタールのうち、道路予定地を除いた面積の5割をデータセンター、4割を物流施設、1割の約4.5ヘクタールを防災拠点施設とする。計画では、北側の高エネルギー加速器研究機構との間の道路に沿って、物流拠点を2棟建設し、データセンターを東側に4棟、西側に3棟の計7棟建設する。

防災拠点施設は住宅地に近い南側に整備し、防災備蓄倉庫、ヘリポート、救護施設、災害時がれき置き場などを設置する。駐車場は計200台を整備し、災害時は車中避難場所とする。ほかに、カフェや物販などのアメニティ施設、ドッグラン、フットサルコート、菜園、野外シアター、ジョギングコースなどを整備する。さらに防災備蓄倉庫やアメニティ施設などの上に大屋根を掛け、芝生広場とする計画。防災拠点施設については、今回の売買契約とは別に、市と特定目的会社との間で防災協定を締結するという。

今後の手続きは、現在、同用地は第2種住居地域や第2種文教地区になっていることから、来年4月の都市計画変更を目指し、用途地域を準工業地域に変更し、第2種文教地区から除外する手続きをする。現在茂っている樹木は、用地の引き渡しが済めば伐採はできるという。ただし伐根は市の開発許可が必要になる。

その後のデータセンターや物流施設の建設工事は、工区ごとに実施される。都市計画変更後の2023年4月ごろから3年以内を目標に一部施設が供用開始となる予定。その後も工区ごとに工事が順次実施される。

売却代金約110億円は、市が貸し付けた約68億円(用地購入費と利子)については市が市土地開発公社から返還してもらう。残り約42億円は市土地開発公社の所有になるが、使途については今後、検討するという。

一方、同用地をめぐっては市民団体「つくば市長リコール住民投票の会」(酒井泉代表)が市長リコール請求の署名集めを実施し断念した経緯がある(8月16日付)ほか、裁判でも争われている(7月13日付)。今回の売買契約締結に対し酒井泉さんは「今、大学が選択と集中で疲弊しているが、大学の枠を超えて新しい研究施設をつくらないと日本の科学技術の未来はない。そのためにあの土地は絶対必要。これからもやれることはやる」と話している。(鈴木宏子)

圃場整備記念碑にも洪水の記述 つくば市池田【自然災害伝承碑の現在】㊥

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つくば市池田地区、女堰由来の圃場整備記念碑

登録された茨城県内の自然災害伝承碑のうち、2022年8月時点で最も新しいものは、常総市本石下に所在する「水害復興の碑」だ。18年1月に建立された。15年9月の関東・東北豪雨で受けた鬼怒川の溢水(いっすい)・浸水に端を発する水害と復旧工事の証だ。このように近年の建立碑であっても、それが災害と対峙した記憶を刻むものであれば、地域住民の意志によって自然災害伝承碑として登録することができる。

土浦市と桜川、霞ケ浦の水害は江戸時代から河川改修と治水との戦いが繰り返されている。それらは文献で知ることができる。興味を持って歩けば、埋もれている碑文を見つけることができる。つくば市の場合は、小貝川沿岸や桜川流域のような低地に足跡が刻まれている可能性がある。

常総市に所在する自然災害伝承碑(国土地理院提供)

1986年台風10号、水害記録の保有なし

つくば市北条出身で、現在は笠間市在住の主婦に、1986年8月の台風10号を経験した話を聞くことができた。

「当時、筑波西中(現在は秀峰筑波義務教育学校に統廃合)に勤務していましたが、帰宅時に桜川を渡る国道125号の橋が、見たこともない水位と濁流になっていました。私は北条内町に住んでいましたが、泉の子育て観音(同市泉、慶龍寺)近くに家のあった親戚が避難してきました。(慶龍寺近くの)小泉の辺りは大半が床下浸水となったそうです。でも小貝川の決壊の方が大惨事だったようで、皆さんの記憶はそちらの方が強く残っているのではないでしょうか」

氾濫の記録や河川復旧を記した碑文のようなものは、あるのかどうかまではわからないということだった。つくば市の危機管理課に尋ねてみたが、「地域防災計画の策定時に、1938年水害、1986年台風の被害範囲が反映されていますが、当時の詳細な記録は保有していません。過去の水害情報に関する、伝承碑等の情報も把握しておりません」ということだった。

地域防災計画に反映されていながら水害記録の保有がない。危機管理に関して一抹の不安を感じるが、文献ならば存在するということだろう。市への訪問はあくまでも自然災害伝承碑となりうる碑文・石碑のあるなしを確認するものだったので、確認できない現実もひとつの現状だ。

桜川の堰「洪水のたびに流された」

同時に現地を訪ねてみたものの、これと思しき石碑を見つけるには至らなかった。偶然、筑波山に近い同市池田地区の用水路で「治水と豊穣」の記念碑と出合った。2006年に竣工したこの地区一帯の圃場(ほじょう)整備を記念したものだが、碑文の冒頭には明治以前の先人が桜川に堰を築いたが洪水の度に流されたという記述がある。カーナビゲーション上では、一般の石碑記号で掲載されている。

このような石碑には、自然災害伝承碑の可能性があるのだろうか。それについては国土地理院の廣瀬勝環境地理情報企画官が説明してくれた。

「自然災害伝承碑は『過去に発生した洪水、土砂災害、高潮、地震、津波、火山災害等による被災の教訓を後世に伝えようと、先人たちが残した独立した恒久的な石碑やモニュメントであることが基本条件です。自然災害に関する発生年月日、災害の種類や範囲、被害の内容や規模、教訓が記載されたものが伝承碑と位置づけてられます」

その上で「自然災害の伝承要素がない治水事業の完成・竣工記念碑、自然災害とは直接関係のない慰霊碑や事故の鎮魂碑、長期間にわたる降水量の不足によって起こった干ばつに関する石碑等、個人の業績をたたえることのみを目的とした顕彰碑、寺社、記念館等の施設は、伝承碑には該当しません」と廣瀬企画官は付け加える。

集められた先人の記憶は必ず役立つ

この条件だと、池田地区の記念碑は伝承碑としての要素が薄いが、伝承碑登録申請の手引きには『石碑等に具体的な自然災害の伝承要素の記載がない場合、又は洪水や津波の水位が刻まれているだけで文章の記載に乏しい場合でも、恒久的な設置を意図した説明板が付随しており、この説明板に該当する具体的な自然災害の伝承要素の記載があれば伝承碑と判定する場合があります』と明記されており、工夫次第だと解釈できる。

「国土地理院では、関係機関等から得た情報があれば、随時市区町村へ提供しています。地域住民の防災意識の向上を図る等の理由から、地域等から声が寄せられ市区町村からの申請としていますが、集められた先人の記憶は必ず今後の防災対策に役立ちます」と廣瀬企画官。

今、自治体ごとに作成されるハザードマップが防災上の有効手段として将来へつなげられている。ハザードマップや地域防災計画という現代のツールは、災害伝承のために遺された碑文や石碑に端を発する。これからつくば市内のどこかで、先人の苦労の痕跡が発見されればと期待を感じる。(鴨志田隆之)

続く

初の地区優勝、土浦で決める アストロプラネッツ

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胴上げで宙を舞う松坂監督(撮影/高橋浩一)

プロ野球独立リーグ・ルートインBCリーグの茨城アストロプラネッツは29日、土浦市川口のJ:COMスタジアム土浦で埼玉武蔵ヒートベアーズと対戦し、2-1で勝利。これによりルートインBCリーグ南地区(茨城、栃木、埼玉、神奈川)での優勝を決めた。茨城は球団創設4年目にして初のタイトル獲得となった。

【ルートインBCリーグ2022公式戦】
茨城アストロプラネッツ-埼玉武蔵ヒートベアーズ
埼玉 000000100 1
茨城 00020000X 2
(8月29日、J:COMスタジアム土浦)

2019年のBCリーグ加盟以来、3年連続で最下位に沈んできた茨城。だが今季は見違えるような活躍となった。開幕5連勝でスタートダッシュを決め、4月を6勝2敗で終えると、その後も5月は7勝2分4敗、6月は7勝8敗、7月は8勝3敗と好調を維持。8月はここまで6連勝を含む9勝5敗の成績で、16日に優勝マジック7が点灯してからは、順調にカウントダウンを続け、ついにこの日マジック1で埼玉戦を迎えた。

7回1失点と好投した先発の二宮(同)

「前2試合は勝ちきれず足踏みしてしまったが、今日はホームなので絶対に勝って優勝を決めようと、みんな気持ちが出ていた」と土田佳武主将。先発投手は二宮衣沙貴。ここまでハーラーダービートップの9勝を挙げ、7、8月は登板した8試合全てでチームに勝利をもたらしてきた。「チームとして大事な試合を任され、いつもより集中力が上がり、直球も変化球も思った通りにコントロールできた」と、危なげないピッチング。

エースの好投に打線が応え、4回裏には先制点。イサベルの右前打を皮切りに、死球と牽制悪送球で無死二・三塁となり、大生竜万が適時打。「相手投手の緩急とコースの投げ分けにやられてきたが、自分のところでチャンスが来て、何とかくらいついていこうと。当たりは良くなかったがしっかり振り切ることができた」と、ボール気味の直球を中堅へ運んだ。さらに次打者の高橋竣は、狙い球の変化球をレフトフライ。タッチアップには十分な飛距離で、1点を追加し2-0とリードした。

4回裏無死二・三塁、大生が中堅に適時打を放つ(同)

二宮は1点を失いながらも7回を投げ切り、8回は渡辺明貴、9回は森祐樹がそれぞれ3人で切って取りゲームセット。セレモニーでは村山哲二BCリーグ代表から優勝盾が贈られ、松坂賢監督、土田主将、山根将大代表らが次々と胴上げされ宙を舞った。

「キャンプで描いたロードマップ通り、シーズン40勝と8月中の優勝がほぼ達成できた。明日からは次の目標であるリーグ優勝と、ドラフト会議への選手輩出に向けて進んでいく。まだ道のりは途中」と松坂監督。

スタンドのファンや応援団と優勝の喜びを分かち合う(同)

今後の日程は、9月10、11日に常陸大宮市民球場で南地区2位のチームとプレーオフを戦い、勝てば北地区代表とのBCLチャンピオンシップ(9月17~25日、ホーム&アウェー方式)に出場できる。その先には四国・九州・北海道の各独立リーグ優勝チームと日本一を争う、日本独立リーググランドチャンピオンシップ(9月30日~10月2日、熊本県で開催予定)も待ち受けている。(池田充雄)

戦後77年の日本の8月《ひょうたんの眼》52

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庭のブルーベリー

【コラム・高橋恵一】戦後77年の広島・長崎原爆忌、終戦記念日の8月が過ぎようとしている。ロシアのウクライナ侵攻や旧統一教会関連の安倍元首相銃撃など、さらに暑い夏であった。過去の日本の戦争の愚かさ、恐ろしさを改めて思い知るとともに、現在のプーチンのウクライナ侵攻が、旧日本軍の行動を再現しているように見えて仕方がない。

ウクライナ侵攻を受けて、日本の防衛力強化が主張されている。侵略戦争で逆に惨敗し、相手国だけでなく、自国の兵士や民間人も無駄に死なせてしまった国。いまだに自虐史観などと言って、侵略破滅戦争の責任も認められない日本は、軍事力を強化し、軍事同盟を強化したら、また加害者になる心配はないのか?

本来日本が果たすべき役割は、平和憲法を掲げた、核廃絶と戦争停止・廃止だ。東京裁判で有罪になるも、その後釈放された政府幹部や軍指導部の中には、無謀な侵略戦争に突入し、敗北が確実なのに多数の同胞を無残な死に追いやった無策の責任も認めず、ほとぼりが冷めたと、また旧大日本帝国復興を妄想するやからが健在だ。

自虐史観とか、教育勅語の容認、平和憲法の改悪などを公然と主張する勢力を組織化し、保守政治に植え付けた。それが岸元首相であり、それを受け継いで、解釈改憲で安保法制や特定秘密保護法を立法化し、武器輸出3原則の無効化やジェンダーフリーなどの人権擁護課題を妨害し、憲法9条あるいは憲法前文にまで手を付けようとしていたのが、安倍元首相である。

元首相と統一教会の不可思議な共鳴

一方、元々、日本の植民地支配への復讐を動機に、世界支配を進めるカルト集団、旧統一教会の日本での活動を立ち上げから支援したのが、岸元首相である。教会の関連組織の勝共連合や原理研究会などの反共活動に共感したとしても、岸元首相と統一教会の行動規範は相いれないと思うのだが、不可思議な共鳴だ。この旧統一教会と保守政治との協力関係を引き継いだのも安倍元首相である。

この関係は、報道で知る限りでも深刻だ。多数の政治家が、集会であいさつしたり、選挙活動の人的支援を受けている。旧統一教会は、政策主張として、日本国憲法や教育基本法の改正、選択的夫婦別姓制度やジェンダーフリー・人権擁護法案への反対。専守防衛・非核3原則・武器輸出3原則の破棄などを提唱している。集会へのメッセージは見過ごせない。

出席した政治家は、教会におもねる意図も込めて、これらの政策提唱に賛同する発言をしていることは十分に想像できる。つまり、霊感商法や多額の寄付金で稼いだ活動資金で、与党の政治家の発言・行動に影響力を行使しているわけだ。

報道では、過去の選挙でも得票に大きく関与し、ほぼ丸抱えで当選した国会議員もいた。自民党など各政党は、所属議員と旧統一教会との関係を明らかにして、公表するという。都合の悪いことはすぐ忘れ、身内をかばうことが得意な政治家は信用できない。今度こそ、マスコミが取材力を発揮して、安倍元首相を含め、異常な関係を、徹底的に明らかにすべきだ。(地図好きの土浦人)

全国1500基登録間近 スタートは地域の機運【自然災害伝承碑の現在】㊤

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国土地理院=つくば市北郷

つくば市北郷の国土地理院が、2019年からウェブ地図「地理院地図」で公開している「自然災害伝承碑」の登録数が、今年8月時点で全国1500基に近づいている。東日本大震災、熊本地震、西日本豪雨、北海道胆振(いぶり)東部地震といった大地震、大津波、土砂災害、河川氾濫に対して、過去の知見を見直そうという各地域の人々の関心が高まってのことだ。9月1日の防災の日を前に、自然災害伝承碑の地図記号制定(19年3月)から3年の土浦、つくば地域の現在を取材した。

土浦、つくばは登録なし

自然災害伝承碑の地図記号(国土地理院提供)

茨城県内においては、10市で35基が登録・公開されている。桜川と霞ケ浦の氾濫の歴史を持つ土浦市や、小貝川、桜川といった一級河川の流域に面したつくば市でも、水害の経験伝承は行われているはずだが、現時点では自然災害伝承碑の登録がない。ただ、地理院への打診はなされており、今後登録される可能性がある。

自然災害伝承碑の概略は、国土地理院が公開を始めた直後にNEWSつくばでも紹介している(2019年6月20日付)。どのような仕組みで登録や公開がなされるのか、国土地理院応用地理部に聞いた。

「伝承碑の情報収集は全国の地方公共団体等の関係機関に協力していただき、それに該当する石碑、モニュメントについて、国土地理院が策定した『自然災害伝承碑に係る調査業務実施の手引き』に基づき市区町村より申請を行ってもらうプロセスをとっています。国土地理院と各市区町村は、それぞれの地域住民から伝承碑になりえるのかどうかの相談を受け、条件に合致すれば正式に申請へと動きます」

国土地理院応用地理部地理情報処理課の宮下妙香課長補佐は「すべてのスタートラインは、地域の人々による自然災害記憶の継承機運が高まるところから始まるのです」と付け加える。

自然災害伝承碑は、それ自体が過去に被災した人々が後世に向けて記録を遺すという機運によって、何かしらの形で碑文を刻んだもの。国や自治体の指示指導によるものではないという。この過去からのメッセージが活かされたケースもあれば、存在自体が知られていても関心が薄く再発した災害の犠牲になった事例もある。

国土地理院 地図と測量の科学館内での伝承碑紹介コーナー

国土地理院が、埋もれた碑文に自然災害伝承碑という新しい価値観を見出し、地図記号もその他の記念碑とは分けて新規デザインした目的は、自然災害の記憶を現代につなぐことで、教訓を踏まえた的確な防災行動による被害の軽減や将来の避難計画策定に役立てることにあり、情報のデータベース運用や提供にある。事実、全国レベルで見れば3年間で1500基近くの相談・申請・登録が行われており、先人の記録を活かそうとする動きは活発だ。

土浦、つくばでは現時点で伝承碑の登録がないことは想像していなかったが、宮下補佐は「現時点で伝承碑が掲載されていない地域では、市区町村から掲載希望の連絡を受け申請の手続きをしている場合や伝承碑として採用できるかどうかの条件を満たさない場合もありますし、可能性がある碑そのものが、さまざまな事情で立ち入り禁止とされている場所に眠っていることも考えられます。また、その石碑が何を記しているのかがわからなくなってしまっている場合もあると思われます」と説明する。

現代において、災害伝承は速報から始まるニュース情報と、それを記録したアーカイブという仕組みになり替わっている。あるいは地域の口伝で事足りていたのかもしれない。(鴨志田隆之)

続く