収穫と修学の秋に-、茨城大学農学部(阿見町)の学生が土浦市の農業現場で働き始めた。21日には同市藤沢のサツマイモ畑で、3人の大学生がイモの葉を刈り取り、マルチシートを取り除く作業などに取り組んだ。
農学部とJAグループ茨城(水戸市)が新たにスタートさせた就農体験学修プログラムによる。今回は、保育園やツアー客のイモ掘り体験に向け準備作業中の圃(ほ)場に、農学部3年の下島航さん(21)、渡辺夏実さん(21)、川口夢奈さん(21)の3人が訪れ、汗を流した。
農学部とJA茨城の接点は双方、コロナ禍からの立ち直りを模索する中で生まれた。農業現場では新型コロナの感染拡大から、海外からの研修生に頼れなくなり農作業の人手不足が深刻化した。農業現場で働きたい人と農家とを結ぶマッチングアプリの導入が考えられ、昨年度からアグリトリオ(愛知県豊橋市)開発のマッチングツール「農 How(ノウハウ)」の普及を図ってきた。全国のJAでは初めての導入となる。
茨城大学では、学部3年次の第3クオーター(9月下旬~11月)を「iOP(インターンシップ・オフキャンパス・プログラム)」の期間と定め、原則的に必修科目を開講せず、海外研修やインターンシップといった主体的な学修活動を促進してきた。農学部では付属農場(国際フィールド農学センター)での農学実習などを通じて学生たちへ農業体験の機会を提供しているが、農業の実態を深く理解し、必要な技術を身に付ける上でも、大学外における農業体験を促進したいと考えてきた。しかし特に今年の3年生は、コロナ禍で入学時から対面による活動が大きく制限されてきたそう。
農学部の地元にあるJA水郷つくば(本店・土浦市)が間に入る形で、同市北部の農家7世帯8人が作る次世代農業プロジェクトワーキンググループ「ヨリアイ農場」(栗原広治代表)が就農体験を受け入れることになった。学生は、今月から4軒の農家で、サツマイモの掘り取り、ナシ圃場の整備作業、グラジオラスの出荷、ショウガの収穫作業などを手伝う。
マッチングツールには作業内容や勤務時間が記され、アルバイト料も明示される。学生には修学と就業の一挙両得となる機会だが、農学部3年、下島さんは「アルバイトは阿見町の飲食店でもしている。農業の現場で働ける意義がより大きかった。授業では1時間程度の作業しかないが、4-5時間働いてみると農作業への見方が変わる」という。3人とも非農家の出身で、卒業後農業への就業を特に考えているわけではない。
学生を受け入れた土浦市藤沢の飯塚利之さん(51)は「思い詰めて働きに来られるようでも困る。マイペースでやってもらっても、農家には手の回らない仕事がたくさんあるので大いに助かる」と語る。
JA茨城では「今はアプリの実装を図っている段階、県内の農家や一般に就業を促していくのは次のステップと考えている」(県域営農支援センター農業経営支援室・金澤泰俊さん)そうだ。(相澤冬樹)