火曜日, 5月 14, 2024
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日本の四季や風景を中心に35点 土浦で「茨城写人会」展始まる

【田中めぐみ】写真愛好家サークル「茨城写人会」の写真展が新治ショッピングセンター「さん・あぴお」(土浦市大畑)2階ギャラリーで始まった。日本の四季をテーマとした風景や人物の写真35点を展示している。16日まで。 会の代表、石川隆史さん(46)は、県内の風景を手巻き式のフィルムカメラで撮影し、自ら現像したモノクロ作品4点を出展。「小学4年生からカメラを始め、30年以上続けている。デジタルカメラで撮ることもあるが、最初に手にしたのがフィルムカメラで、その良さにひかれ戻ってきた」とアナログ撮影の魅力を語る。やわらかい質感を表現するため、紙質やプリンターにもこだわっている。 鈴木憲治さん(72)は、20歳からカメラを始め、途中仕事で中断していたが定年後再び撮影を始めたという。「年をとっても楽しめるのがカメラの魅力。とにかく自分が美しいと思うものを展示している。自分たちが楽しんで作っているので、観る人も楽しんでくれるのでは」と話す。 土浦市内から来場した女性(70)は、「自分も友達もカメラをやるので興味があって見にきた。山歩きも趣味なので、行ったことのある場所が撮影されていておもしろい。表現がとても詩的できれい」と話した。 会は2002年に発足。元は市内のカメラ店を拠点に活動していた「PhotoGenix(フォトジェニックス)」という会で、2007年から「茨城写人会」に改称した。現在は40代から70代の会員9人が所属し、交流を深めているという。同写真展は毎年6月と11月に開催されており、今回で32回目となる。 開催は午前10時から午後5時(最終日は午後4時まで)。入場無料。問い合わせは代表石川さん(090-9017-9692)

【直売所めぐり】7 新米の季節、至高の卵かけご飯に出会う JA水郷つくば「さんふれつくば店」

【田中めぐみ】新米の季節。つやつやに炊き上げたご飯を何のおかずで食べようか? 秋のうれしい悩みだ。最高のお米とおかずを探しに、今回はつくば市研究学園、イーアスつくばの敷地内にある直売所「さんふれつくば店」を訪れた。 朝7時、産みたてだという卵を運んできたのは岡田養鶏場の岡田恒雄さん。小松菜、大豆、米ぬかなどの材料を発酵させたこだわりの自家配合飼料で育てた鶏の卵だという。「臭みがないので生で食べるのが一番。卵かけご飯がお勧め」と話す。新米が発酵卵と出会う至高の卵かけご飯。まちがいない、朝ご飯はこれで決まりだ。 卵の後ろ側には新米が並ぶ。スタッフの遠藤拓海さんによると、夏の台風や日照不足の影響で例年よりやや少ない出来で、値段も1キロあたり10円ほど高くなっているとのこと。先月から「新米はまだ? いつ?」と心待ちにするお客さんが訪れ始め、先月半ばに新米が並ぶと売れ行きは好調。下旬からは筑波山麓で作られたブランド米として名高い北条米も並び、人気を集めていると話す。1キロから購入可能で好みに合わせて精米してくれるのもうれしい。卵かけごご飯用に奮発して北条米の特栽品を購入し、精米してもらった。 遠藤さんの話では、外国人のお客さんが多いのが特色というつくば店。外国人に人気のナスやカボチャは見慣れない種類が6~7種類ほど、また、10種類以上のハーブや香味野菜が並ぶ専用売り場もある。ハーブは外国人だけではなく日本人にも人気で、週3回品出しするが、売り切れることも多いそうだ。 小玉スイカを運んできたのは大関水耕さん。主にレンコンを作っているという。「ハウスがあるので、秋に食べたい人もいるかなと思ってすいかを作ってみた。遊び心でね」と笑う。まだ値札のラベルは貼られていない。 「いくらですか」と聞くと、「悩んでいるんだよね、どうしようか。300円から500円くらいかなあ」。遠藤さんに「スイカはいくらだと思う」と相談している。生産者さんが自分で値段を決めているのが直売所のおもしろさだ。 秋は果実も見逃せない 「今は果物も美味しいですよ。特にナシ」とお勧めを紹介してくれたのはスタッフの高野たいさん。「ナシの甘太という品種は他で売っていないからと、わざわざ探して買いに来るお客さんもいます」と試食用に甘太を切ってくれた。同店では今年から出しているという甘太は、その名のとおり甘みが強い。果汁が多くやわらかめの果肉。ちょうど梨を品出ししていた井形克美さんによると今年の出来は上々とのこと。秋の果物も見逃せない。 スタッフの井上松子さんは「イーアスの敷地内にあるので若いお客さんが多い。カボチャの煮方やナスの食べ方を教えると喜んでくれ、次に来た時、あの作り方おいしかったよと言ってくれるのがうれしい」と話す。 「漬物の加工者さんからお客さんに手紙をもらったという話を聞いた。その後、偶然話したお客さんから『漬物がおいしくて生産者さんに手紙を書いた』と聞いてびっくり。手紙をもらいうれしく思う生産者さん、味に感動したお客さんがいて、それをつないでいるのが直売所だなと思った」と相好を崩した。 【サンフレッシュつくば店】 住所:つくば市研究学園C50街区1(イーアスつくばアウトモール内) 電話:029-828-8313 営業時間:午前9時~午後7時 定休日:なし(年末年始は休み) ➡直売所めぐりの過去記事はこちら

【霞ケ浦を遊ぶ】女性に人気のSUPヨガで土浦の魅力発信 開放感たっぷり、癒やしに

【田中めぐみ】水に浮かべたボードの上でヨガをする「SUP(サップ)ヨガ」が女性を中心に人気を集めている。ゆらゆら揺れる水面で行うため体幹を鍛えるエクササイズとしての効果が高いといわれる。ヨガを体験したことがある記者も数年前から興味を持っていた。今回、霞ケ浦で「SUPヨガ」のクラスが開講していると聞きつけ、早速参加してみた。 講師は石岡市出身の滑川織美(あやみ)さん。プロのボディーボーダーでSUPヨガインストラクターだ。霞ケ浦は海と違って波や風が穏やかなため、初心者も難なく楽しめるという。女性に人気のSUPヨガで、霞ケ浦の魅力を発信したいと考えている。 土浦駅東口近くに今年3月オープンしたばかりの「りんりんポート土浦」(同市川口)で待ち合せた。コインロッカー、シャワー室、トイレなどを完備し、無料駐車場がある主にサイクリスト向けの休憩スペースで、屋上には展望スペースもあり、県外客や市民の憩いの場になっている。滑川さんは「りんりんポートは土浦インターから約20分と交通アクセスが良い場所にある。トイレやシャワーが利用できるので、手ぶらで来て体験しシャワーを浴びて帰れる」と話し、この「りんりんポート」を自転車ばかりでなく、SUPヨガの拠点にできればという。 SUPヨガの「SUP」とはスタンド・アップ・パドルボードの略で、ボードの上に立ってパドルをこぎ水面を移動していくアクティビティ。ゆっくりとした動きで進むため、初心者でも簡単に楽しめるのが特徴だ。 この日、SUPを初めて体験する私のために、滑川さんは初心者向けでバランスの取りやすいボードを用意してくれた。ボードはレンタルできるので手ぶらでOKだという。ただし水に落ちたときに備えて水着着用が条件。水着さえ着てくれば、SUPヨガ用のウェアも貸し出してくれる。 体験場所は、ボードに乗って水に入りやすいスロープがある土浦新港。岸壁に囲まれ波が穏やかだ。 まずSUPの操縦の仕方、基本動作の説明があり、その後準備運動を行ってからボードに乗る。最初は座った状態でこぎ出し、ボードが進み出してから立ち上がるのだが、落ちるのではという恐怖感がありうまく立つことができない。行きたい方向を見る、遠くを見るといったコツを教えてもらい、パドルの使い方についても指導を受けると徐々に慣れてきた。 確かにコツをつかめば簡単で、パドルの使い方に慣れたころには恐怖感は一切なくなっていた。湖面はとても静か。滑るように進むボードの上で徐々に気持ちが穏やかになってゆくのを感じる。目線を遠くにやると、土浦港を出入りするボートやヨットで遊ぶ人も目に入る。開放感たっぷりだ。 港湾の真ん中までこぎ出し、いよいよヨガのレッスン開始。まずはボードをまたぎ、足を水に浸けて水温を確認する。この日の気温は高めで汗ばむ。水温も温かく気持ちがいい。透明度も意外と高く、パドルで確認してみると80センチ程度の深さまで見えるようだ。水に落ちて泳いでみてもいいかなという気分になる。 最初に四つんばいになりポーズをとる。陸上で行うヨガと同じポーズも、水の上では体幹の強さが必要で、体幹がかなり鍛えられるのが分かる。続いてお尻を空に突き出して足と腕とボードで三角形を作る「犬のポーズ」。水面ではぐらぐらするのでいつも以上に集中力が必要だ。呼吸を整えることを忘れず、心地よい風を感じながらゆっくりとヨガの動作を行う。最後は立ちポーズにもチャレンジ。合掌であいさつして終わった。 SUPは愛犬と一緒に楽しめるのも醍醐味。滑川さんの愛犬も途中からボードに乗って霞ケ浦を満喫していた。水辺が好きなワンちゃんが居たらぜひ一緒に楽しみたい。 レッスン後はりんりんポート土浦に戻り、シャワーで汗を流す。シャワーは30分200円。ドライヤー、ボディーソープ、シャンプーもあり、快適だ。 ◆SUPヨガはSUPボード、パドル、ウェアのレンタル込みで2時間4000円。レッスンは予約制で、毎週日曜日と月曜日に開講している。霞ケ浦は海と比べて穏やかだが、天候によっては中止する場合もある。予約・問い合わせは電話080-2370-9848(滑川さん)。メール 2019.beach.life@gmail.com。フェイスブックhttps://www.facebook.com/ayami.namekawa。インスタグラムhttps://www.instagram.com/ayami_namekawa/ ◆土浦新港を使用する場合は許可が必要。問い合わせは指定管理者のラクスマリーナ(電話029-822-2437) ◆りんりんポート土浦は土浦市川口2丁目13番25号、開館時間は午前9時から午後6時。 ➡「霞ケ浦を遊ぶ」シリーズの過去記事はこちら ➡りんりんポート土浦の過去記事はこちら

生と死を見つめる現代美術家たち 23日までつくば市民ギャラリー

【田中めぐみ】主に県内在住の写真愛好家や美術家たちによる作品を集めた「フォトMAX美術展」が18日、つくば市吾妻の市民ギャラリーで始まった。2015年から毎年開催されており、今年で5回目となる。31人が写真や絵画などで死生観や人生観を表現した現代アート作品43点を展示している。 主催者の佐々木元彦さん(アース808ギャラリー代表、牛久市)は、「命を救う手(心臓外科S執刀医)」と題した作品を出展。今年3月に心臓の手術を受けた際に自ら撮影、加工して作品にしたという。外科医の手や、病床からの視点、胸の手術痕がモチーフになっている。手術で自身の生死を見つめたという佐々木さんは、「芸術家はいつも向こう側、つまり死を見ている。芸術はいつも自分の中にあり、アートとは自分自身。手術はなかなか無いことなのでぜひ撮影したいと考え、病院に頼んで許可をもらった」と話す。 水戸市在住の岩崎雅美さんは「俺ハ死ンデイル」と題する作品を出展。文字と写真を組み合わせた垂れ幕形の作品だ。岩崎さんは1999年の東海村臨界事故の衝撃や、2003年に父を亡くした体験から「死」をテーマにした作品を作り始め、表現の模索を続けているそう。「写真の枠を打ち破るような作品を作りたいと思っている。このような作品を受け入れてくれる展覧会はフォトMAX美術展以外にない。展示された作品には遊び心があり、作っている側が心から楽しんでいるのが見る人に伝わるのでは」と話す。 市内から訪れた72歳の男性は「自分も写真が趣味で、毎年欠かさず見に来ている。作家さんたちそれぞれが独自の考えを持って作品を作っているのが面白く、毎回開催を楽しみにしている」と話した。 ◆ フォトMAX美術展Vol.5「過去~現在~未来の自伝」 会期は23日(月)まで。開館は午前9時半~午後5時(最終日は3時まで)。会場はつくば市市民ギャラリー(つくば市吾妻2-7-5)エキスポセンター入り口中央公園レストハウス内入場無料。展示作品の販売も行っており、売上金は国際NGO「国境なき医師団」に寄付される。問い合わせ:佐々木元彦さん(080-1210-1695)

【戦後74年の夏】1 戦時下の土浦 「どんな時も楽しみを見つけた」

戦後74年目の終戦の日が今年も巡ってくる。戦争体験者が高齢化し、戦争の実態を次世代にどう伝え、平和への願いをどう引き継げばいいのか。74年前と今をつなぐ夏の景色を追った。 【田中めぐみ】土浦市に住む山口あささん(98)は、16歳で母を亡くし、戦時中は父と妹と3人で土浦駅のそばで暮らした。兄は兵士として中国に行き、弟は横須賀海軍航空隊に所属した。 信仰が心の支えに あささんが小学4年生の時、長屋の前を通っていると美しい讃美歌が聞こえ、思わず中に入った。キリスト教の講義所だった。大人たちが優しく招き入れてくれたのがきっかけで講義所に通うようになり、クリスチャンとなった。戦時中も週に1度は集まりに参加した。「一生懸命努力して自分の力を出して働きなさい、そして良いことを行いなさい」という牧師の話を聞くと、いつも元気になって帰ることができたという。教会では皆が協力して食べ物を持ち寄り、行けばいつでも食べ物があった。教会は心の支えだったと話す。 あささんは戦前から、叔父の経営する会社で洋裁の技術を生かし、学生服を縫って働いた。太平洋戦争が始まる1941年には、社長だった叔父が従業員を並べ、「これから戦争になる。縫うものにも混ぜ物が入るかもしれない」と話をした。「こんな大きい戦争になるとは思いもしなかった」という。 男子が兵隊に取られ、労働力が不足すると、一時期、東京に出て、品川の軍需工場で働いた。しかし、洋裁のことも忘れなかった。学生服だけではなく家族が着る物も縫えるようになりたいと、夜間は五反田にある洋裁の製図専門学校に通った。昼間は軍需工場でラジオの真空管を作り、夜は学校に通う生活が1年半ほど続いた。仕事の行き帰りや昼休みには、同僚と干し芋を食べるのが楽しみだったという。「みんな同じ境遇だから辛くはなかった。どこに行っても楽しみはあるもの」と話す。戦中から今に至るまで、洋裁の仕事を辞めずに続けてきたことが誇りだという。 阿見大空襲、町が赤く燃えた 土浦に戻ったある日、大岩田の畑にじゃがいもを植える勤労奉仕をしていた時、数匹の猫を見つけ、嫌がってひっかくのを無理やり抱いて1匹連れ帰った。猫はすぐになつき、「ミーちゃん」と名付けかわいがった。空襲警報のサイレンが鳴ると、猫を抱いて一緒に防空壕に逃げた。 土浦ではほとんど怖い経験はなかったが、1945年6月10日の阿見大空襲の時は、B29に爆撃された町が赤く燃えているのを見て恐ろしかったと振り返る。 駅前は歩けないほどの人混み 終戦の年、あささんは24歳だった。8月15日の玉音放送の日、土浦駅前は人でごった返した。玉音放送がよく聞こえず何が起こったか分からない人、敗戦を信じられない人、日本が負けたと悟っている人、多くの人々が互いに情報を求め、駅前に詰めかけていた。 歩けないほどの人混みの中、教会に向かっていると、途中で泣いている若い女性と出会った。夫が霞ケ浦海軍航空隊に所属しているという。女性は何が起こったのか分からず、とにかく海軍航空隊に行けば情報が得られるのではと考え、遠くから来たということだった。泣く女性を連れて教会に行くと、牧師はいつも通り落ち着いていて、「大丈夫だから」と話してくれた。あささんは安心し、その女性も気持ちを落ち着け、帰っていった。駅前の人々もそれぞれの方法で納得し、帰ったようだった。 町を見下ろし涙があふれた 幸いなことに、終戦後すぐ中国に出征していた兄が帰ってきた。追って横須賀の海軍航空隊にいた弟も無事戻った。父は兄と弟の無事を心から喜んだ。 戦時中は貴重品などの荷物を真鍋の親戚に預けていた。終戦の翌年の2月、預けていた荷物を取りに行き、真鍋の坂から土浦の町を見下ろした時、思わず涙があふれてきた。「これでやっと終わった」。あささんは、この時初めて終戦を実感しほっとした。その翌日、土浦に雪が降ったことを覚えている。 ➡昨年の終戦の日連載企画「戦後73年の記憶」はこちら

誰もが楽しめる博物館へ 筑波技術大が手話通訳ガイド育成プロジェクト始動

【田中めぐみ】博物館の手話通訳ガイドを育成するプロジェクトが、筑波技術大学(つくば市天久保)で始動している。プロジェクトは、視覚障害者と聴覚障害者が学ぶ同大の生田目美紀教授(感性科学)の研究室が立ち上げた。誰もが分かりやすい展示と案内によって情報のバリアフリー化を進め、みんなが楽しめる博物館を実現していくための一歩だ。 生田目教授の研究室では、水族館や動物園、植物園など科学系博物館で、どのようにすれば情報が分かりやすく伝わるか、また、誰にでも直感的に理解できる情報とはどのようなものかといったことについて研究をしている。 研究室で、全国の科学系博物館に調査を行ったところ、手話通訳ガイドを導入している施設はほとんどなく、聴覚障害者が十分に情報を得られていない現状があったという。 誰もが学びの満足度を高め、博物館を楽しめるようにしようと、プロジェクトを立ち上げた。クラウドファンディング(資金調達)を実施し、6月6月、目標金額を上回る130%の達成率で150万5千円を集めて成立した。 今後は、手話や道具を用いて展示内容を説明するボランティアガイドの育成を目指す。3人を募集するという。博物館の現場で育成に取り組み、アクアワールド県大洗水族館(大洗町)の事例では、手話だけでなく、動画や、3Dプリンタで作成した展示物のフィギュア、ぬいぐるみなども用いて説明を行う。 さらにガイド育成の知見を集め、マニュアルをまとめたい考えだ。博物館側の意向も取り入れながらガイドを育て、ガイドを必要とする全国の博物館とガイドとのマッチングも行う予定だという。要望があれば市内の科学系博物館にもガイドを派遣していきたいと話す。 生田目教授は「博物館の良さはリアルなこと。説明文を読むだけでは得られない発見が博物館にはある。また、来館者が分からないことがあったら質問すると、ガイドは来館者に応じて教え方を変えるなど、人との会話やコミュニケーションの中に新しい学びがある。ICT(情報通信技術)などの技術は今後も進歩していくので心配ないが、技術でコントロールできない部分は人の力が絶対に必要。将来に向けて人材育成が大切と考え、プロジェクトを始めた」と話す。

霞ケ浦でボートサーフィン 県外から人気上昇

【田中めぐみ】サーフショップ「茨城ボートサーフィン」(龍ケ崎市、遠藤知之代表)が、霞ケ浦で開催しているボートサーフィンが人気だ。ボートを走らせ、ボートの後ろに発生する波に乗って楽しむスポーツで、ボートで作る「永遠の波」を求めて、東京や埼玉、千葉からサーファーたちがやってくるという。 毎年4月末から11月中旬ごろまで開催しており、今年で4年目となる。梅雨明けにはシーズンを迎え、例年繁忙期には1カ月に20日間以上の予約があるという。ボードの上に立って波に乗るサーフィンだけでなく、ボディボードの練習もでき、女性にも好評だ。 代表の遠藤さんによると、ボートサーフィンは、海でのサーフィンとは異なり、波を待つ必要がなく、連続して波に乗ることができるため、海で練習するよりも早く上達できるという。また、風が強くて波の状態が悪く、海に出られない時でも、霞ケ浦ならサーフィンができる場合があるそうだ。練習を充実させ、技を磨きたいとプロサーファーが訪れることも多いという。 やり方は、まずボートで沖まで行き、その後ボートの後ろでロープを持ち、サーフボードの上に腹ばいに寝そべった状態で引っ張ってもらう。サーフボードが波に乗ったら手からロープを離し、サーフボードの上に立ち上がる。 波の大きさ、速さは好みに応じて調整できるが、基本的には海の波と同じスピードでボートを操縦して、海と同じ大きさ、高さの波を作ってくれるという。何度も同じ波に乗ることで、苦手な技を繰り返し練習し、習得することができるそうで、船尾とサーファーの距離が近いため、友達同士で参加して声を掛け合い、フォームをチェックし合ったり、動画・写真を撮影したりするのも簡単だ。 自身も35年サーフィンを続けているという遠藤さんは「ボートサーフィンは県内の方だけではなく県外からもたくさんのサーファーが来てくれている。ボートサーフィン1回は海での練習の10倍以上と言われるほど濃い内容の練習ができ、1年前にサーフィンを始めた方が信じられないくらい上達している。初心者からプロまで幅広く、自分の目標に沿った練習が出来るのがボートサーフィンの特徴。地域のみなさんも是非、挑戦してみてください。」と魅力を語る。 ボートは土浦市川口、土浦港のヨットハーバー、ラクスマリーナから出航している。料金は1時間1万3000円で、最低2人、2時間以上から運行。団体貸し切りも可能。天候によっては中止する場合もある。ボードなどのレンタルもある。 ◆「茨城ボートサーフィン」龍ケ崎市貝原塚町3717-1 オーシャンプレイス1F 予約・問い合わせは、電話090-1602-7312 (茨城ボートサーフィン・遠藤さん)。 フェイスブックメッセンジャー・インスタグラムでの予約・質問も可能。 インスタグラム https://deskgram.net/boat_step フェイスブック  https://www.facebook.com/茨城ボートサーフィン-1128319013922247/ https://youtu.be/Xush3yATlLk

来年50周年の「創造市場」 6月に土浦と小美玉で公演 地域劇団の駆け込み寺の役割も

【田中めぐみ】土浦を拠点に活動し、来年で結成から50周年を迎える社会人劇団「創造市場」(同市西真鍋町、代表・稜地一週〈五頭良二〉さん)が6月に土浦市と小美玉市で「不思議の国のアリス」を公演する。 「創造市場」は元は1970年に結成されたジャズバンドで、音楽だけにとどまらず、芝居、文学、絵画など、総合的な芸術を追求する若者たちの集まりだった。当初は社会風刺的な内容の芝居を公演していたが徐々に活動が少なくなり休止。その後、74年に再結成し、以降休むことなく活動を続けている。 現在は土浦市内やつくば、牛久、龍ケ崎、鉾田市などから、高校生から60代までおよそ25人の団員が集まり、週2回、2時間程度の稽古と年4回の公演、ワークショップを行っている。地域の劇団から相談があれば、持っている音響、照明設備、衣装なども無償で貸し出しており、現在は地域のアーティストの駆け込み寺のような役割も担っている。 今年4月に開催された「第11回沖縄国際映画祭」で上映された「エキストロ」(監督村橋直樹、脚本後藤ひろひと、NHKエンタープライズ)で、山本耕史さん、斉藤由貴さんらと共演し、主演を務めた萩野谷幸三さん(63)は同劇団メンバーだ。 チャレンジし続け、おもしろさ追求 「不思議の国のアリス」の脚本・演出を手掛けた稜地(五頭)さんは「はちゃめちゃなストーリーのアリスは、伝統や歴史、しきたりを重んじる英国社会を風刺した作品とも言われている。まるでおもちゃ箱やキャンディー箱をひっくり返したようなゆかいなアリスの世界観を楽しんで、見る人それぞれに何かを感じてもらえれば」と語った。「エキストロ」の萩野谷さんは今回出演しないが、キャストの演技指導を行っている。 アリスのキャストの1人でつくば市在住の入江諭さん(39)は、人見知りで話すのが苦手な自分を変えたいと演劇を始めたという。「創造市場」に入団する前は別の演劇系サークルで1年弱活動していたが、本格的に舞台に立ってみたいと一昨年からメンバーに加わった。「人と関わって成長したいと覚悟を決めて入団した。活動はとにかく楽しい。仕事が終わってここに来て、いつもメンバーと笑っている。楽しむところは楽しみながらも、めりはりをつけて稽古している」と話す。 同じくキャストの森裕嗣さん(36)は「創造市場は歴史の重みがありつつも、常に新しいことにチャレンジし続け、おもしろさを追求している。だからこそ年齢関係なく人が集まってくるのだと思う。アリスの世界は狂った、よく分からない世界だが、セリフの端々に現代の我々にもはっとするような気付きがある。アリスが名作として残っているゆえんなのだろう」と語った。 舞台人口を増やしたい 現在、団員を募集している。稜地(五頭)さんは「芝居、ダンス、バンド、民謡、コンテンポラリーアートなど、ジャンルを問わず、とにかく舞台人口を増やしたい。年齢も経験も問わない。やってみたいと思う人はぜひ来てほしい」と語る。 ◆「不思議の国のアリス」の公演日程は ▽土浦市亀城プラザ=8日(土)午後6時、9日(日)午後3時開演 ▽小美玉市生涯学習センターコスモス=22日(土)午後5時、23日(日)午後3時開演 いずれも30分前開場 ▽チケットは全席自由。前売り一般1600円(当日は1900円)、18歳以下1300円(同1600円)、親子ペア2600円。3歳以下は無料。小美玉公演のみ同市内在住・在勤・在学者は無料 ▽チケットプレイガイドは〈土浦公演〉劇団創造市場HP・電話予約、さんあぴお(電話029-862-1311)、亀城プラザ(電話029-824-3121)。〈小美玉公演〉生涯学習センターコスモスか劇団創造市場 ◆団員(スタッフ・キャスト)募集の問い合わせは 劇団創造市場 土浦市西真鍋4-43 電話029-821-9405(夜間のみ・日中は留守番電話) メールアドレス sozoichiba@yahoo.co.jp ツイッター @sozoichiba

剣の道通じ地域の青少年を育成 運武館80周年 かすみがうら

【田中めぐみ】剣道場、運武館(かすみがうら市深谷)が今年2月、創立80周年を迎えた。これを記念し6月に「運武館活人剣八十年」が発刊される。県剣道連盟名誉会長の中里誠さん(82)は「孟母三遷というが、子どもの教育は環境が大事。運武館は豊かな自然の中にあり、静かな雰囲気で、ここに来るだけで心が洗われるよう。館には文化的な価値がある」と話す。 運武館は、現在の館長である川島安則さん(80)の祖父、運平さんが1939(昭和14)年、私財を投じ自宅敷地内に設立した。前身は運平さんが1927年に開校した私立の男子校、昭和文農学校で、農村で質実剛健な気風を養いながら社会で活動する教育を施すことを目的に、英語、数学、国語、漢文、農業、珠算などの他、剣道を教えていたという。1941年に国民学校令が施行され、男子私立学校の多くが廃校とされる中、同校も廃校となり剣道場だけが残った。 同年には安則さんの父、武さんが召集令状を受け運武館での稽古は中断。しかし戦後、進駐軍の目を避けながら稽古を始め、1948年にシベリアに抑留されていた武さんが戻ると、再び本格的に道場を開始した。1970年半ばごろになると少年部の入館者が激増し、1977年に門下生や保護者を中心とする後援会が発足。地域一体となって青少年の育成に尽力してきた。 1997年には現館長である安則さんが3代目館長に就任。運武館と同学校で学んだ地域の青少年は1000人以上になるという。現在は木曜日と土曜日の2時間程度、就学前の子どもから70代までおよそ30人が練習している。 安則さんは幼いころから敷地内の道場で、父武さんや他の先生たちが稽古する様子を見ていて自分も剣道をやってみたいと思い、11歳から剣道を始めたという。中・高・大学と剣道部に所属し、父の死後も伝統を後世に残したいと道場を継いだ。「後援会のみなさんのご支援とご協力で80周年を迎えることができた」と話す。 一昨年からは市教育委員会と連携し小学1年から中学3年までを対象に月2回、土曜日の学習支援教室「寺子屋運武館」を開校している。市出身の大学生が講師となり「地域の子どもは地域で育てる」という基本理念のもと、学校の宿題などを中心に支援を行っている。  

【霞ケ浦を遊ぶ】憧れのヨットに乗る ラクスマリーナでイベントに参加㊦

【田中めぐみ】霞ケ浦の入り口、土浦港にあるラクスマリーナ(同市川口)で年4回開催されている「誰でも楽しもう霞ケ浦」(セイラビリティー土浦など主催)は、カヌーやヨットに乗って、障害者も初心者も大人も子供もだれでも霞ケ浦を満喫しようというイベントだ。日頃、霞ケ浦でヨットの練習をしたりクルーズなどを楽しんでいる市民や、障害者カヌー協会に関わるボランティアが、参加者にこぎ方を教えたり、安全を見守るなどしてイベントを支えている。 全国に先駆けてマリーナのバリアフリー化を進めてきたラクスマリーナ(当時は京成マリーナ)が、初心者でも操縦できる転覆しないヨット「アクセスディンギー」を導入し、体験乗船会を開いたのがきっかけ。2005年から始まり、今年で14年目になる。口コミで評判が広まり、土浦やつくば市のほか、毎回、首都圏からもたくさんの参加者が集まる。今年度第1回目の5月5日は約270人の参加者に混じって霞ケ浦を体験した。 ガイドは中学1年の海洋少年団 カヌーから降りて、次はアクセスディンギーという小型のヨットに乗ることにした。霞ケ浦の沖を走っているヨットを眺め、前から1度乗ってみたいと憧れていた。 これはスタッフが操縦してくれる。桟橋の乗り場でしばらく待っていると、現れたスタッフは何と少年。青少年育成団体「霞ケ浦海洋少年団」に所属する中学1年生の市原遼人さんだ。ボランティアスタッフとして参加したという。一緒にカヌーに乗ったつくば市の中学1年、志賀明彦さんも「えっ僕と同じ中1?すごい」と驚いている。市原さんのアクセスディンギーに乗り込んだ。 主に春から夏のシーズン、霞ケ浦でいろいろな種類のヨットに乗っているという市原さん。「アクセスディンギーは絶対に転覆しないので安全ですよ。操縦も簡単です」と堂々のガイドぶりだ。一番好きな船だという。うみの少年に頼もしさを感じる。 おかげで安心して景色を楽しむことができた。ヨットは風を受けてゆっくりと進み、穏やかで気持ちいい。 15分ほど乗って降りたら一度お昼休憩。午前中は熱中していてあまり気にならなかったが、この日は快晴、じりじりと焼かれるような日差しで、帽子を忘れてきてしまったことを悔やみながら日焼け止めを塗り直した。 午後はドラゴンボートに乗ることに。20人で掛け声を合わせてこぐ木製の船だ。桟橋に行くと小さな子どもも数人待っている。前に並んだ子に聞くと5歳。「ドラゴンという名前がかっこいいので乗ることにした」という。小さな子どもでも大丈夫なのだろうか。少し不安を感じながらも船に乗る。船の底が低いので桟橋からだと段差がある。1人ずつ櫂(かい)を渡され、前には3人ボランティアスタッフが乗り込んだ。 櫂の使い方を習い、ゆっくりと少しずつ沖に出る。みんなやり方が分からず恐る恐るだ。 沖まで出ると「いいですか、万が一、誰かが落ちても絶対に助けに行かないでください。落ちることはほとんどないですが、万が一ということがありますので言っておきます。子どもさんが落ちてもすぐにスタッフが助けに行きますから親御さんは助けに行かないでください。バランスが崩れて転覆してしまったらどうにもなりませんので」とスタッフからの注意。 そうか、転覆もあるのかと緊張が走る。「ではみんなで少し練習してスピードを出してみましょう。ハイのところで漕ぎますよ。イチ、ハイ、ニ、ハイ、サン、ハイ…」 ドン、ドン…と太鼓の音に合わせて掛け声をあげ、みんなで息を合わせてこぐ。少しずつ少しずつスピードが上がっていく。気持ちいい。5歳の子どもも「ハイ」「ハイ」と言いながら一生懸命前の人のまねをしてこいでいる。老若男女、家族も他人も一体となってまっすぐ前進する感じ、なるほど、これはまたカヌーとは違った楽しさだ。 最後にカッターボートというアクセスディンギーに似た帆船に乗り、そこで時間切れとなってしまった。モーターボートやSUPにも乗りたかったが残念。次回のお楽しみということにしておこう。 体験乗船の問い合わせは電話029-822-2437(ラクスマリーナ) ➡【霞ケ浦を遊ぶ】ラクスマリーナでイベントに参加㊤はこちら

【霞ケ浦を遊ぶ】気分爽快!カヌー体験 ラクスマリーナでイベントに参加㊤

【田中めぐみ】私が産まれ育ったのは四国の海辺に近い田園地帯だ。自転車で20分も行けば浜に着く。小さいころは夏になるとよく川や海に連れて行ってもらい泳いで遊んだ。冷たい川の深いところまで冒険してみる楽しさやスリル、海水浴場で波打ち際に見たかわいい小魚たちを今も忘れることができない。中学、高校に入ってからは泳ぎに行くことはなくなったが、悩みがあるとよく自転車で海に行った。堤防に座って海を眺めているといつの間にか心は晴れていた。 茨城に移り住んでからも霞ケ浦や桜川を見ると心が躍る。凪(な)いだ霞ケ浦を眺めているだけで穏やかな気持ちになる。これほど豊かな自然があるのに、霞ケ浦や周辺の川で遊ばないのだろうか。周りに聞いてみたが遊んだことがあるという人はほとんどいない。霞ケ浦で遊んでみたいと5月5日、霞ケ浦の入り口、土浦港にあるラクスマリーナ(土浦市川口)で開催されたイベント「誰でも楽しもう霞ケ浦『子どもの日大会』」(セイラビリティー土浦など主催)に参加した。 さまざまな船に試乗 このイベントではカヌー、モーターボート、ドラゴンボート、和船のほか、小型ヨットのアクセスディンギー、ボードの上に乗って進むSUP(=サップ、スタンドアップパドルボート)など、さまざまな船に試乗できる。 すごい!すべての種類に乗ってみたいー。はやる気持ちを抑えてまずはカヌーの予約の列に並ぶ。 予約を取ったら安全のためライフジャケットを着て講習を受ける。ボランティアスタッフがパドル(櫂=かい)の持ち方を教えてくれる。2人乗りのカヌーを選んだ。後ろにはつくば市から参加した中学1年の志賀明彦さんが乗ることに。 いよいよ出発! 最初は2人でばたばたして桟橋の下に潜り込みそうになったが、スタッフに押してもらってなんとか沖に。それも面白くて2人でげらげら笑う。教えてもらった通りにこいでいるとだんだんコツが分かってきた。左に曲がりたい時は右をこぐと簡単に方向転換できる。すぐに操縦に慣れ「これは楽しいね」「最高だね」とどんどん沖に。怖くなるかと思ったがそんな心配は杞憂に終わり、すっかり病みつきになってしまった。 1回の試乗は15分。1度カヌーから降りて、すぐに「もう1回行こう」と意見は一致。予約を取り直し、次は1人用に乗った。最高の気分だ。岸から遠いところにも行って、戻ってを繰り返す。 突然「カヌーの人、どいてくださーい」とスタッフの声がかかる。遊覧船ホワイトアイリス号が出航するようだ。巻き込まれては大変と大慌てで移動するのもなかなかのスリル。ブレーキやバックの操縦も覚えた。中には勢いよく転覆する人もいる。頭までびっしょり。でも笑顔だ。夢中になってこぎ過ぎて腕がだるくなってきた。これは筋肉痛になる予感がする。 「誰でも楽しもう霞ケ浦」は年4回開催されている。今年度のこれからのイベントは7月14日(日)、10月13日(日)、1月12日(日)に開催予定だという。障害者も初心者も大人も子供も、年齢も性別も障害も関係なく、誰でも参加できる。参加費は保険料込みで大人1000円、小人500円。 イベント以外でもいつでもレンタルボートが楽しめる。カヌーの場合、1人乗り、2人乗りいずれも2時間3080円)。問い合わせは電話029-822-2437(ラクスマリーナ) (続く)

【土浦を受け継ぐ】116年変わらぬ味守る かりんとう「九万五千石」 前島製菓

【田中めぐみ】柔らかい食感にキラキラと輝くザラメ、後をひくゴマの風味が特徴的なかりんとう「九万五千石」で知られる前島製菓(土浦市真鍋)。1903(明治36)創業の老舗だ。創業者の前島憲吉さん、2代目の寿夫さん、3代目の寛誠(ひろなり)さん(65)と引き継がれ、今年で創業116年目になる。初代から「味を変えてはいけない」、「原料を変えてはいけない」と言われ、116年間味を守り続けている。昨年は市が認定する第1期土浦ブランドにも選ばれた。 前島製菓は創業当初からかりんとうや駄菓子などを販売してきた。戦時中は海軍から支給される小麦粉と油、砂糖などを用いてかりんとうを作り、青森県むつ市の大湊警備府(日本海軍の軍港)に一斗缶で納めていたという。砂糖や油をたっぷりと使ったかりんとうは高級品だった。 名前の由来は土浦藩 人気商品「九万五千石」は前島製菓の代名詞でもある。戦後の食料物資統制が終わった1950年ごろから本格的に作り始めたという。「九万五千石」は、江戸時代中期の土浦藩主で江戸幕府の老中も務めた土屋数直が、徐々に石高を増やし最終的には九万五千石を有したことにちなんで名付けられた。寛誠さんの父で2代目の寿夫さんが主となり考案し、1958年に商標登録した。 当初「十万石」という名にしようと考えていたが、土浦市の郷土史家永山正さんに相談したところ、正しくは九万五千石であると指摘され、それに従ったという。「石」は土地の価値を米の生産力に換算し表す単位だが、土浦城の石垣の意味にもかけて、見た目が石のようにゴツゴツとしたかりんとうを作り上げた。 「味を変えてはいけない」 創業以来、味を守り続け、1973年には第18回全国菓子大博覧会で名誉金賞を受賞した。 しかし、父である2代目寿夫さんが病で倒れ、寛誠さんに代替わりした1988年頃、一度だけ作り方の工程を変えたことがある。それまで父とかりんとうを作りながら「この工程は統一できるのではないか、簡素化しても味は変わらないのではないか」と考えており、「自分の代からは思うようにやってみよう」と変更してみた。「自分が一番かりんとうの味を分かっている。味は変わらない」という自信があったが、製法を変えた途端に売れ行きは急降下。慌てて元の作り方に戻したが、落ちた売り上げを戻すのに3年かかった。 寛誠さんは「自分よりお客さんの方がうちのかりんとうの味をよく分かっていた。うぬぼれていたことに気が付いた」と振り返る。お客さんの優しさにも助けられた。2代目が倒れたという事情をくみ、技術が足りなかった寛誠さんを気長に待ってくれた。寛誠さんは、お客さんには感謝の気持ちしかないと話す。「たくさんの品物があふれている今の時代にうちのかりんとうを選んでくれる。本当にありがたい」。 一度も褒められなかった 寛誠さんが3代目を継いで30年になる。5年前に103歳で亡くなった叔母には死ぬ前まで「初代の方がおいしかった」と言われ、一度も褒められなかった。戒めとなりありがたくはあったが、最期までおいしいと言わせられなかったことが悔しいと話す。 納得のいく味を追求し続ける。「使っている材料は変わらなくても、気温や湿度の変化や、材料の品質に微妙な違いがある」と寛誠さん。「夏と同じ物を冬食べるとかなり固くて、冬の物は夏溶けてしまう。四季折々に美味しく食べて頂きたいので、半月ぐらいの単位で同じ物に感じられるように調整している」と話す。 製造法をかたくなに守り続けようと思っているわけではない。今以上に効率的なやり方があれは変えたいと考えている。しかし「味を変えてはいけない」という原則を守るのに、今以上の作り方が見つからない。添加物を入れれば材料が扱いやすくなり大量生産が可能だが、味が変わってしまう。多く作ることはできないが、味を変えないためには製造法を守り続けるという。寛誠さんは「古いお菓子を新しいと感じる若い人もいる。大量には作れないが、全国の人にもぜひ食べてほしいと思う」と語った。

運動栄養学を学ぶ筑波大生 「アスリートレストラン」開催 事業化目指す

【田中めぐみ】筑波大学体育専門学群で運動栄養学を専攻する3年の佐々木雄平さんが、学生団体「つくばアスリートレストラン」(TAR)をつくり、昨年10月から同大の学生宿舎などで、アスリート向けの食事会「つくばアスリートレストラン」を開いている。26日には市内のパブで一般向けイベントを開催する。 「おなか減ったー」「いただきまーす!」。筑波大学の学生宿舎グローバルヴィレッジコミュニティステーション2階で4月28日、アスリートレストランが主催する食事会が開かれ、男子ラクロス部員35人が集まった。 TAR代表の佐々木さんがラクロス部のために考えた献立は、ひじきと豆腐のサラダ、水菜のコールスローサラダ、鶏むね肉のキノコあんかけ、ワカメと卵の味噌汁、カブのガーリックオリーブ炒め。ブドウと牛乳も付いており、17品目の食材を使っている。管理栄養士で同大大学院人間総合科学研究科1年の中村萌香さんが栄養バランスのチェックをした。佐々木さんと中村さんが調理のほとんどを行ったが、部員たちも率先して手伝った。 おかわりが進み、ご飯はあっという間に売り切れ。しっかり食べた後には栄養クイズ大会が開かれた。スマートフォンを使ってクイズに参加し、その日食べたものがどのような働きをするのか、楽しみながら学ぶ形式だ。1問ごとに得点順位が発表されると部員たちは一喜一憂し、会場は盛りあがった。 全料理で5大栄養素摂取 アスリートレストランは今回で8回目となる。主食・主菜・副菜・汁物・果物・乳製品を提供する。参加費は500円。すべての料理で身体に必要な5大栄養素を摂ることができる。食事会に協力しているスタッフは32人で、協力の頻度はまちまちだが集まれる人が参加して運営している。食事会には毎回20~30人のスタッフが集まっているという。 食事会の前には「食生活バランスチェックシート」に記入を行い、それぞれが日ごろの自分の食生活を省みる。ラクロス部で人間学類3年の早稲田拳さんは「シートに記入して牛乳や乳製品が足りていないことが分かった。元々あまり野菜が好きではなく、親と暮らしている時は食べたくないなあと思っていたが、1人暮らしを始めてから意識して食べるようにしている」と話す。社会工学類3年の岩見悠太郎さんは「部活の朝練をしているのに朝ご飯を食べずに授業に行くことがある。1人暮らしなので品数をそろえるのが難しい。毎回献立を決めるのも面倒なので食事会はありがたい」と話す。 きっかけはインスタ 佐々木さんは大学に入学してから料理の楽しさに目覚め、インスタグラムに自作の料理写真を投稿してきた。写真を見たアスリートの友人から「おいしそう」「食べてみたい」という声が挙がり、「材料費を出してくれたら家に食べに来てもいいよ」と友人を招いたのがきっかけでアスリートレストランを主宰するに至った。 食事会の開催にとどまらず、佐々木さんは、食を通じて地域とアスリートとのつながりを作る方法を考えている。この日使った材料のカブは千葉県我孫子市の農家が作った。同大の農業サークルの学生が手伝いに行き、代わりに提供してもらったという。「地域には、農作業をする人がいない、野菜が余っているといった声がある。若者の手を借りたい地域と、栄養のある食事をしてスポーツの応援をしてほしいという若者の声をマッチングさせるプラットホームを作ることができれば」とプロジェクトを練っている。 つくば市内の農家からの協力も得、今後、米やキノコ、ヤーコンなどの材料を提供してもらう予定だ。将来的には事業化を目指しており、つくば市都市計画部主催の「つくばR8地域活性化プランコンペティション」=メモ=に応募するという。「人が喜ぶこと、人の役に立つことが一番の原動力になる」という佐々木さん。アスリートの食事を充実させ、食を通じて人々の交流を創生するのが目標だと語る。 ◆26日の一般向けイベントは、アスリートレストラン開催10回目の記念として、パブ「ブラッセリー&バー・フィンラガン」(つくば市天久保2-9-2、リッチモンド2番街B-203)で開催する。午後6時から午後9時までの間の予約が可能で、無農薬の有機野菜を使ったメニューを予定しているという。料金は学生800円、一般1200円。定員40名。予約は掲載のQRコードから。 ◆つくばアスリートレストランは ホームページ https://www.u.tsukuba.ac.jp/~s1711833/index.html インスタグラム https://www.instagram.com/tar_pr_/?hl=ja ツイッター https://twitter.com/TAR_PR ※メモ 【つくばR8地域活性化プランコンペティション】つくば市がR8(北条、小田、大曾根、吉沼、上郷、栄、谷田部、高見原)を元気にするための地域活性化プランを募集するもの。コンペで採用されたプランに1 件最高200万円の支援金を支給し、提案者に実証事業として取り組んでもらう。 ➡筑波大生の活動に関する過去記事はこちら

【霞ケ浦コイ養殖場の今と展望】㊦ 親子で発酵飼料を開発も見えざる未来

【田中めぐみ】櫻井鯉養魚場(かすみがうら市牛渡)は、2度の廃業危機の苦境に立たされながらもなんとか経営を立て直した。質のよいコイを生産したいと自家製の発酵飼料を開発。2代目の隆士さんがニジマス養殖業者のエサをヒントに発案したという。開発は父の謙治さんが中心となり10年以上の歳月を要した。試行錯誤を繰り返し、コイの様子を見ながら経験則で自家配合しているという。 自家配合のエサの材料は、大豆、米ぬか、おからなど。養殖場の側にある有機飼料工場で発酵機に入れて発酵させて作る。できあがったエサはきな粉のようでほのかに甘い香りがする。乾燥させたものをペレットマシーンに入れて粗い粒子状にすればできあがり。500キロずつ袋に入れて専用のクレーンで船に積み込み、網いけすまで運ぶ。 養殖は小割式養殖業(網いけす養殖)というやり方で行われている。沖に150面の網いけすが張られ、発酵飼料を自動給餌機に入れて給餌する。自動給餌機に餌を入れるのは3日に1回ほど。エサをよく食べ成長する6月~10月には1日半に1度ほど給餌機に補充する必要があるという。水中の酸素量や水温を細かくチェックし、コイの状態を見ながら大事に育てる。沖で育ったコイは出荷前に地下水を貯めた「しめいけす」に入れられる。出荷までには1年~3年かかる。 得意先が納得する大きく味の良いコイを育てることへの熱意は冷めないが、消費は落ち込み続けている。3代目の後継ぎはいない。隆志さんは「後継ぎがいる養鯉場もこの辺では2軒ほどではないか。取引先だった山形、長野の問屋にも売れなくなった。このままでは廃業の未来しかない」と話す。 活路は外国人 隆士さんが一縷(いちる)の望みを抱いているのは、訪日外国人をターゲットにした市場の開拓だ。中国や東南アジア、ドイツやハンガリーなどヨーロッパでもコイなどの淡水魚を食べる食文化がある。上野アメ横にある地下食品街では外国人向けに新鮮な水産物が売られており、フナやコイがよく売れているという。国や地域でレシピも千差万別。揚げたり煮たり、つみれにしたりと調理法も幅広い。 つくば市内には大学や研究機関が集積していることから、多くの外国人が居住している。2018年のデータでは外国人が約8900人で人口の約4%を占める。日本全体では約1.8%(2016年末)であることと比べると、つくば市の外国人の割合は高い。コイの養殖場の未来は新たな市場を開拓できるかどうかにかかっている。(おわり)

【霞ケ浦コイ養殖場の今と展望】㊤ 昭和と平成、二度の廃業危機

【田中めぐみ】霞ケ浦の沖に向けてまっすぐ伸びた桟橋は、櫻井鯉養魚場(かすみがうら市牛渡)の網いけすにつながっている。代表の櫻井隆士さん(53)の後に続き桟橋を渡ろうと試みたが、思いのほか高く、足がすくんで進めない。橋が揺れているように見える。隆士さんは造作もない様子でどんどん進んでいき、すっかり離されてしまった。遅れた私を見かね「揺れてはいない。落ちた人は一人もいないから大丈夫」と声をかけてくれたが、私は視線を足元から離すことができない。帰れなくなっては迷惑がかかると判断し、謝って途中で引き返した。 80年代ピークに下降線 霞ケ浦のコイの生産量は年々減っている。コイを食べる風習のある山形県などの地域で食文化が廃れ、消費が減っていることが原因のひとつに挙げられる。 コイの養殖が始まったのは1965(昭和40)年ごろ。隆士さんは、半漁半農で生活していた人々が減反政策で米作りをやめ、コイの養殖を始めた背景があると話す。隆士さんの父である謙治さん(80)が周囲の人たちと養殖を始めたのも70年ごろのこと。養殖を始めてはみたが全くの素人が育てるのは難しく、廃業する人も少なくなかったという。謙治さんはめげず、失敗を繰り返しながらも養殖を体で覚え、生産量を伸ばしていった。 63年に常陸川水門(逆水門)が閉まったことで霞ケ浦の水質が変化、73年にはアオコの大発生で養殖ゴイが大量へい死(酸欠死)し、廃業の危機に追い込まれた。当時8歳だった隆士さんも当時のことはよく覚えているという。大量へい死で一時は生産量が落ち込んだものの、高度経済成長の追い風と釣り堀ブームにも後押しされて盛り返し、75には茨城県が生産量全国一となった。 茨城農林水産統計年報によると、82年に霞ケ浦(北浦含む)のコイの生産量は8670トンとなり、ピークを迎える。だがその後は下降の一途をたどった。2003(平成15)年にはコイヘルペスウイルスの発生で全量処分となり櫻井鯉養魚場は2度目の廃業危機に陥った。それでも出荷規制が解除になると立ち直り、なんとか危機を乗り切ったという。しかし、14年、霞ケ浦の生産量は968トンにまで落ち込んだ。(つづく)

霞ケ浦から2020年東京パラリンピックへ カヌー代表を目指す2選手

【田中めぐみ】パラリンピックのカヌー競技(パラカヌー)の普及や選手発掘、育成のための拠点となっている土浦市川口のヨットハーバー、ラクスマリーナで6日、「パラマウントチャレンジカヌー」イベントが開催され、2020年東京パラリンピックへの出場を目指す強化育成選手の小山真さん(38)と我妻進之さん(48)が参加した。 イベントは、水上のバリアフリーを体験して欲しいと日本障害者カヌー協会(東京都港区、吉田義朗会長)が一般向けに開いた。パラカヌーは2016年リオデジャネイロ大会からパラリンピックの正式競技に採用されている。 パラカヌーは、パドル(櫂)を使ってカヌーを漕ぎ、200メートルのタイムを競う短距離競争。公平に競うため、障がいの程度や運動機能によりL1からL3の3つのクラスに分けられている。小山さんと我妻さんは同じL3クラスの選手だ。 小山さんは10歳からカヌーを始め、昨年のパラカヌー海外派遣選手選考会で優勝。今年3月の同選考会2位入賞。昨年ラクスマリーナにパラカヌーの拠点ができてから、主に霞ケ浦で練習をしているという。 我妻さんは、元々はパラバドミントンの選手で、カヌーを始めて1年。東京パラリンピックへはカヌーとバドミントン2種目での出場を目指す。主に宮城県の鳴瀬川で練習しており、この日は同イベントのためにラクスマリーナを訪れた。「国内は天候が安定せず、風と波が立ってしまうと練習が難しい。天候が悪いと記録にも結び付かない」とカヌー競技の苦労を話す。 同種目の東京大会での出場枠等は未定だが、「クラスの同じライバル同士、お互いを沈めてしまいたい」と笑いながら冗談を言い合う2人。小山さんは「今年3月の大会で準優勝だったので、9月の日本パラカヌー選手権大会では必ず優勝してパラリンピック出場の枠を勝ち取りたい」と意気込みを語った。

ブラブラ歩きで発見 古い城下町の新しい魅力 11日に第5回「つちうら亀の市」

【田中めぐみ】土浦の旧城下町の由緒ある史跡や老舗の魅力を再発見して欲しい――と「つちうら亀の市」が11日、土浦市中央の中城山不動院・琴平神社の参道・境内や、中城通り商店街で開催される。「亀の市」は2017年4月から年2回開催されており、今回で5回目。中城通り商店街にも開催エリアを拡大し、これまでで最も広い範囲での開催となるという。 土浦には旧跡や建物、伝統の技術や社寺の行事など、有形無形の貴重な歴史的文化遺産が数多く残っている。「亀の市」では、文化遺産を活かし「温故創新(古きをたずね、新しきを作る)」の理念のもと、リメーク、リユース、スローライフ、手作りといったキーワードに沿った出店やイベントを企画。毎回多くの人でにぎわい、好評を博しているという。 参道、境内から中城通りには30を超える出店が並ぶ予定で、古本屋アンティーク、古布バッグなどはじめとする手作り品や、有機野菜、スイーツや軽食、コーヒーなどを販売する。「双六(すごろく)商店街」というゲームも企画。サイコロを振り、会場エリアの商店や出店を双六形式で回るまち遊びゲームで、参加者にはもれなくプレゼントを用意している。 落語会「中城寄席」を初開催 不動院の階段には音楽ステージを設置し、和太鼓やお箏(こと)、二胡(にこ)、昭和歌謡やギターの弾き語りなどのコンサートが楽しめるという。 今回初のイベントとして、落語会「中城寄席」も開催。演じるのは三遊亭圓窓(えんそう)師匠の指導を受け、県内各地で活躍している社会人噺家(はなしか)グループで、古典から新作落語、手品など披露する。 つちうら亀の市実行委員のひとり、石原之壽(いしはらのことぶき)さんは会社勤めのかたわらちんどん屋の活動を始めて18年、壽ちんどん宣伝社座長の肩書きを持つ。笑顔のやり取りをしたいとこれまで病院などでボランティア活動を行ってきた。今回は「体験型の企画を多く用意している。親子3代で楽しめる内容なので、みんなで来て楽しんでほしい。土浦の歴史ある街でちんどん屋として笑顔を届けたい。『ツェッペリンが舞い降りた日』の紙芝居も披露する予定。漫画チックな絵柄の新しい紙芝居を楽しんでほしい」と話す。 同実行委員で、当日お箏のコンサートに出演する髙梨美香子さん(生田流筝曲家)は、お箏歴25年の演奏家。仕事のかたわらお箏の活動を行い、参道沿いにある井戸端庵2階で教室も開いているという。「目的を決めず、ぶらぶらするのも楽しいイベントになっている。お箏のコンサートでは新しい曲も披露する」と話した。 ◆つちうら亀の市 11日(土)午前9時~午後3時。雨天の場合は12日に順延。ただし落語会は雨天の場合も開催予定。当日は無料駐車場が会場周辺に用意される。問い合わせは「土浦界隈まちづくり研究会」伊藤春樹さん(電話090・4059・4860)

【直売所めぐり】6 タケノコ、ワラビ、ウド…春野菜が続々 JA水郷つくば「さんふれ霞ヶ浦店」

【田中めぐみ】丸い外観が特徴的なJA水郷つくば(本店土浦市)の直売所、サンフレッシュ霞ヶ浦店(かすみがうら市深谷)。朝8時、スタッフの酒井貴さん(65)が店を開けながら迎えてくれた。酒井さんは主に移動販売を担当し、かすみがうら地区の下大津、牛渡、佐賀、美並、安飾、志士庫のそれぞれの地域を隔週ごとに車で回り移動販売を行っている。元設計士、定年退職してからもう少し働きたいとJA直売所のスタッフとして再就職した。直売所で働いて4年。移動販売では主におやつのお菓子の売れ行きが好調で、お客さんは買い物を楽しみにしてくれているのがうれしいという。酒井さんのお勧めは今が旬の春野菜だ。 話していると「朝掘りのタケノコだよー」とたくさんのタケノコが運ばれてきた。「ああ、重い」。ずっしりとした大きなタケノコ。値段はなんと250円から400円ほどだ。「わあ、大きいね」「安いねえ」、スタッフやお客さんから次々に声が上がる。「あくはどうしたらいいの」、「ぬかをサービスで付けるよ」、「縦に切ると皮が向きやすいよ。味噌汁とてんぷらはあく抜きしなくてもいいよ」、「穂先が黄色いのがいいのよ」と生産者。直売所のスタッフ、お客さん、春の恵みを囲んでみんなが笑顔だ。 「ワラビもきたよー」と声が掛かり、見ると穂先のくるくるぴんとした新鮮なワラビ。この日はお客さんの試食会があるとのことで、「もっとワラビ持ってこないと売れちゃうよ」、「もっと持ってこようか」と生産者同士でやりとりする。ワラビの生産者小泉たか子さんのお勧めは、あく抜きしたワラビを3センチほどに切ってめんつゆに漬けた漬物風。粘りがあるのでニンジンやするめなどを合わせて松前漬けにするのもいいという。なるほど確かにおいしそうだ。 桜井信雄さんは葉玉ネギとニラの生産者。葉玉ネギも今が旬。短い時期だけ食べられる野菜だ。食べ方を聞くと「葉玉ネギは葉から玉ネギの部分まで全部食べられるよ。油味噌炒めがお勧め」と話してくれた。食べやすく切った葉玉ネギを油で炒め、砂糖、味噌、醤油などで味付けする調理法だそう。知らなかった。買って帰って作ってみたところ、これがおいしい。新玉ネギのみずみずしい甘みと青い葉のよい香りが、油と味噌によく合う。 カブを品出ししていたのは生産者の石島貞良さん(82)。「いいカブができたと思いますよ。ちょっと寒かったかなと思ったけど育ちがいい」と明るい笑顔がこぼれる。「生涯現役。毎日一生懸命働いて、また明日、また明日と一日一日頑張っています」 春野菜のコーナーをじっくり真剣に見ていた押野清さん(67)は家族のためにウドを買いに来たという。妻の好物だそうだ。「ここには週に1回ほど買い物に来る。葉っぱはてんぷらに、茎は酢味噌にするとおいしい。なんといっても新鮮なものがそろっています」と、話してくれた。 サンフレッシュ霞ヶ浦店 住所▽かすみがうら市深谷3467-4 電話▽029‐897-0682 営業時間▽午前9時~午後6時(4月~9月)、午前9時~午後5時30分(10月~3月) 定休日▽なし(お盆・年末年始は休み) ➡直売所めぐりの過去記事はこちら

大学生のための「家出マニュアル」プロジェクト 筑波大生が企画、5月noteに公開へ

【田中めぐみ】虐待サバイバーの体験談を募集し、大学生のための「家出マニュアル」を作るプロジェクトを進めている学生がいる。筑波大学人間学群で社会福祉について学ぶ3年生の山口和紀さん(20)。体験談は5月にウェブサービスnoteに有料公開予定で、売り上げは執筆者に還元するという。 家出は虐待からの自主避難 山口さんは大学1年の時に、親からの虐待を生き延びたサバイバーたちが書いた手紙を収めた本『日本一醜い親への手紙 そんな親なら捨てちゃえば?』(Create Media編)を読んだ。同世代が手紙を寄せていることにショックを受け、ツイッターで本の感想をつぶやいたところ、この本の企画をしたライターの今一生(こんいっしょう)さんから返事をもらい、児童虐待防止をテーマとした講演会を企画した。昨年5月の2日間、コワーキングスペース「Tsukuba Place Lab」(つくば市天久保)に今さんを招いて「子ども虐待防止講演会」を開催した。 講演会には筑波大学の学生らを中心に2日間でのべ41人が参加。虐待問題について様々な議論が行われ、実際に虐待を受け、生きるために家出をした体験を語った人もいた。家出しなかったら死んでいたという話を聞き、山口さんはそれまでの価値観がひっくり返された気がしたという。「家出」という言葉には「してはいけないこと」「悪いこと」というイメージがあったが、体験者の話を直接聞き、「家出」は被虐待者の自主避難であることを知ったと話す。 また今年3月、ある地方大学に通う大学生が自らの虐待体験をつづって、インターネットにアップした記事を目にした。この大学生も「家出」することによって生き延びていた。2人の壮絶な体験から、「家出」がなければ死んでいたかもしれないサバイバーの実態を知り、山口さんは何かをしなければならないという気持ちにさせられたという。 5人の家出体験記を募集 被虐待者の家出には、ある種の技術が必要になるが、社会的に家出が推奨されることは少なく、支援する団体も多くない。具体的なやり方を教えてくれるところが無いため、家出成功者の体験談をモデルケースとして参考にするしかない。 そこで山口さんは、実際に家出に成功した大学生の体験談を集めた「家出マニュアル」を作ろうとプロジェクトを立ち上げた。目標は100人の体験談を集めることだが、まずはツイッターで呼びかけ5人を募集したという。 家出の定義は、「生活拠点を親元以外に移し、自分一人で生活を成り立たせていること」。親に内緒にしているかどうかは厳密には問わず、親に反対されている中強行する場合も家出に含める。虐待親の元で育った人、家出の経験がある人、2019年4月時点で大学生または大学院生であることを条件として募集したところ、すぐに5人の枠が埋まった。体験記を寄せてくれた5人には原稿料を渡したいと山口さんが自腹を切った。 少ない大学生への支援 なぜ大学生を対象にしたか、山口さんは「大学生は10代と20代、未成年と成年の間だから」という。18歳未満は児童相談所など公的支援が受けられるが、18、19歳への支援は薄い。また、20歳になれば賃貸契約などの契約行為に親の同意がいらなくなり、自分で決められることも多いが、未成年の内は親の同意が必要だ。女性の場合はDV(ドメスティック・バイオレンス)シェルターや支援を行うNPOなどもあるが、地方には少ないという。また、男性の場合の支援は必ず就労を前提としており、学生への支援は無いに等しいと話す。 「家出マニュアル」を作る目的は、一つは当事者のため、もう一つは「大学生の虐待」という問題に社会の目を向けることだと山口さん。このプロジェクトが問題提起とし、支援を増やしていきたいという。山口さんの専門は社会福祉で、自分の体験談を語ることは劣等感や屈辱感を低減することにつながり、癒しにもなることを学んだそうだ。「このプロジェクトによって教会のように困っている人たちが集まれる場所を作りたい。困っている人たちがつながり、助け合うコミュニティを作りたい」と目標を語った。 ➡「家出マニュアルプロジェクト」のnoteページ 執筆者を増やすための寄付支援もできる

声を出してもOKな体験学習型コンサート「音楽の歴史」 ノバホールで27日開催

【田中めぐみ】ことし「建築のノーベル賞」と言われるプリツカー賞を受賞した磯崎新氏設計によるノバホール(つくば市吾妻)、国内有数の音響効果のコンサートホールで、10連休初日を迎えるのはいかが。27日、音楽通史ムシカヒストリア(小又文江代表)主催による2部構成のクラシック音楽コンサートが開催される。午後4時からの第1部「音楽の歴史」は0歳から18歳までが入場無料(19歳以上1000円)となる体験学習型コンサート。子どもが泣いたり、声をあげたりしても気にする必要がない構成で、児童養護施設や特別支援学校などの子どもたちの参加も募集している。午後6時からは第2部「ピアノ協奏曲の愉しみ」を開催する。 27日の第1部では、ピアノの歴史と構造を学ぶ「ピアノ解体ショー」をはじめ、日本とオーストリアの修交150周年を記念するウィーン特集の演奏プログラムを組んだ。バイオリン奏者の内藤知子さん、ピアニストの上仲典子さんら牛久市やつくば市在住の音楽家が出演し、音楽の都ウィーンの300年の歴史を1時間でたどるプログラム。来場者も交えてマーラー「交響曲第5番」(第4楽章アダージェット)を演奏する予定という。 第2部は、NHK-Eテレ「らららクラッシック」出演などで知られる東京芸術大学准教授、林達也さんを迎え、楽曲の解説などを聞くレクチャーコンサートとなる。6人のピアニストが出演し、名器スタインウェイと普通より鍵盤の多い97鍵盤のベーゼンドルファー・インペリアルの2台のピアノを演奏し、響きの豊かさを体感してもらう。小学生以上が対象で、全自由席1000円となる。 ムシカヒストリア代表の小又さんはコントラバス奏者。自身の子育て経験を踏まえ、年齢を問わず気軽にクラシックを楽しんでほしいと、昨年から主につくば市民ギャラリー(同市吾妻)でコンサートを企画運営してきた。毎回、市内や同市近郊から様々な音楽家を招いている。今月14日と21日にも市民ギャラリーで箏(こと)とビオラのコンサートを開催する予定で、いずれも0歳から入場が可能。市内でのコンサート開催は27日で6回目となる。 小又さんは、「誰でも気軽にリラックスして音楽を楽しんでほしい。演奏家の人と近い距離で親しんでほしいので、紙のプログラムもあえて作らなかった」と話す。子どもから大人まで楽しめ、子どもたちが自発的に何かを発見できるようなコンサートを作りたいと目標を語った。 参加募集中 子どもたちを無料招待 ◆音楽通史ムシカヒストリア 27日(土)ノバホ-ル ▽第1部「音楽の歴史」午後4時開演(0歳から18歳まで入場無料。19歳以上は1000円。全自由席)▽第2部「ピアノ協奏曲の愉しみ」午後6時開演(全自由席1000円)▽いずれもノバホール受付にて前売り券を発売中▽児童養護施設や特別支援学校などの子どもたちの招待について問い合わせは小又さん(電話:090-8946-0535 メール:bassfumie117@docomo.ne.jp)まで。 ◆27日午前10時から1人10分ごと1000円で演奏(グランドピアノ使用)ができ、大ホールの響きを楽しむこともできる。ホワイエ(ノバホール入口スペース)で同日コンサートの前売り券を提示すれば無料で演奏が可能。(ホワイエはピアノなし) ◆「お箏の世界」日本の作曲家と共に 14日(日)午前11時からつくば市民ギャラリー 入場500円 ◆「ビオラちゃんこんにちは!」ビオラってどんな楽器? 21日(日)午前11時からつくば市民ギャラリー 入場500円

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