月曜日, 5月 13, 2024
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東北花火紀行2023春/大曲~陸前高田 《見上げてごらん!》14

【コラム・小泉裕司】 大曲の花火~春の章~4.29 大会プログラムの一つ、45歳以下20人の花火師による「新作花火コレクション」に出品した山﨑煙火製造所(つくば市)の佐々木恵(けい)さんは、10号玉芯入割物の部で見事初優勝(大会結果)。作品名は「昇曲導付三重芯菊先銀点滅」(筆者撮影)。 筒から打ち出された花火は、「曲」と呼ばれる小さな花を開きながら上昇し、最高点で星が尾を引きながら4つの同心円(外側の円は芯に数えない)を描く菊型花火。消え際に銀色の煌(きら)めきを発する。 山﨑煙火は、昨年の土浦10号玉の部「五重芯銀点滅」で優勝、本年、創業120周年の節目を迎える老舗中の老舗。今や名実ともに不動の地位を確立した現会長の山﨑芳男氏の十八番(おはこ)は、脈々と弟子達に受け継がれ、「多重芯の山﨑」「銀点滅の山﨑」と言われるほど。 その完成度の高さ・安定度では、国内、野村花火工業(水戸市)と双璧をなす。本日、11月4日に土浦全国花火競技大会開催決定との報。茨城勢は今シーズンも盤石の予感。 陸前高田~三陸花火大会~4.30 「春の三陸 奇跡と軌跡」。大会翌日の某全国紙は、「奇跡の一本松」のモニュメントと彩り豊かな花火を重ねた写真を掲載し、再生が進んだ花火会場周辺をこう表した。 2014年、東日本大震災で壊滅的な被害を受けた岩手県陸前高田市を訪れた。近くの山を切り崩した岩や土を被災地域に運ぶベルトコンベアが、はるか高いところを石油パイプラインのように縦横に走る光景に圧倒された。 あれから9年、広大でフラットな海岸沿いは、大きな復興工事が終了し、津波被害を伝える「津波伝承館」や新商店街が整備されるなど、変容した高台からの眺めは、感慨深く、想念を巡らした。 2012年3月、土浦市立真鍋小学校、土浦第二中学校の児童・生徒はじめ40人近くが陸前高田市を訪れ、桜の植樹に参加し、地元住民と交流。真鍋の桜保存会は、県の天然記念物「真鍋の桜」のクローン苗1株を寄贈した。当時の桜は、2年後の2014年に根付いたのを、そして今回、緑の葉が幾重にも生い茂り、順調に育っているのを確認し、ほっとした次第。 大手食品スーパーのカスミ(つくば市)は、小浜裕正前会長のご縁をきっかけに、2011年から復興支援カレンダー「明日暦(あしたごよみ)」による募金活動をスタート。翌年からは、地域を越えた交流活動「陸前高田七夕まつり体験学習」など、陸前高田の復興支援に取り組んできた。 筆者は、暦を初編から複数部入手。職場の壁面に掲示し、月ごと、地元の皆さんの笑顔とメッセージコピーから届く逆エールに励まされたことを思い出す。 「三陸花火」は、こうした被災地支援活動の一つとして、2020年10月から始まった。土浦と大曲両大会で内閣総理大臣賞を受賞した㈱マルゴー(山梨県)が打ち上げを担当。年2回春・秋に開催。今回もコズミック(宇宙)系といわれる得意の時差式花火(筆者撮影)満載のプログラム。 次回は、今年の10月8日、「大曲の花火~秋の章~」の翌日に開催予定。東北花火紀行は、秋の編に続く。 「雨雲が近づいているようです」。大曲の会場入口で遭遇した花火鑑賞士仲間の情報は、冷雨で体の芯まで凍えながら見た1年前を想起。昨年、実行委員会本部長が参拝し、無事終了した土浦の実績(昨年11月20日掲載コラム)を踏まえ、天気の神様「気象神社」(東京高円寺)のお守りを持参したのだが、不用意にもホテルに忘れたことを後悔した。 結果は、風向きによる多少の煙待ちはあったにせよ、打ち止めのアナウンスまで、8000発の打ち上げをコンプリート。「天気よければ、すべて良し」。本日は、この辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

東北花火紀行2023春/大曲~陸前高田 《見上げてごらん!》14

【コラム・小泉裕司】 大曲の花火~春の章~4.29 大会プログラムの一つ、45歳以下20人の花火師による「新作花火コレクション」に出品した山﨑煙火製造所(つくば市)の佐々木恵(けい)さんは、10号玉芯入割物の部で見事初優勝(大会結果)。作品名は「昇曲導付三重芯菊先銀点滅」(筆者撮影)。 筒から打ち出された花火は、「曲」と呼ばれる小さな花を開きながら上昇し、最高点で星が尾を引きながら4つの同心円(外側の円は芯に数えない)を描く菊型花火。消え際に銀色の煌(きら)めきを発する。 山﨑煙火は、昨年の土浦10号玉の部「五重芯銀点滅」で優勝、本年、創業120周年の節目を迎える老舗中の老舗。今や名実ともに不動の地位を確立した現会長の山﨑芳男氏の十八番(おはこ)は、脈々と弟子達に受け継がれ、「多重芯の山﨑」「銀点滅の山﨑」と言われるほど。 その完成度の高さ・安定度では、国内、野村花火工業(水戸市)と双璧をなす。本日、11月4日に土浦全国花火競技大会開催決定との報。茨城勢は今シーズンも盤石の予感。 陸前高田~三陸花火大会~4.30 「春の三陸 奇跡と軌跡」。大会翌日の某全国紙は、「奇跡の一本松」のモニュメントと彩り豊かな花火を重ねた写真を掲載し、再生が進んだ花火会場周辺をこう表した。 2014年、東日本大震災で壊滅的な被害を受けた岩手県陸前高田市を訪れた。近くの山を切り崩した岩や土を被災地域に運ぶベルトコンベアが、はるか高いところを石油パイプラインのように縦横に走る光景に圧倒された。 あれから9年、広大でフラットな海岸沿いは、大きな復興工事が終了し、津波被害を伝える「津波伝承館」や新商店街が整備されるなど、変容した高台からの眺めは、感慨深く、想念を巡らした。 2012年3月、土浦市立真鍋小学校、土浦第二中学校の児童・生徒はじめ40人近くが陸前高田市を訪れ、桜の植樹に参加し、地元住民と交流。真鍋の桜保存会は、県の天然記念物「真鍋の桜」のクローン苗1株を寄贈した。当時の桜は、2年後の2014年に根付いたのを、そして今回、緑の葉が幾重にも生い茂り、順調に育っているのを確認し、ほっとした次第。 大手食品スーパーのカスミ(つくば市)は、小浜裕正前会長のご縁をきっかけに、2011年から復興支援カレンダー「明日暦(あしたごよみ)」による募金活動をスタート。翌年からは、地域を越えた交流活動「陸前高田七夕まつり体験学習」など、陸前高田の復興支援に取り組んできた。 筆者は、暦を初編から複数部入手。職場の壁面に掲示し、月ごと、地元の皆さんの笑顔とメッセージコピーから届く逆エールに励まされたことを思い出す。 「三陸花火」は、こうした被災地支援活動の一つとして、2020年10月から始まった。土浦と大曲両大会で内閣総理大臣賞を受賞した㈱マルゴー(山梨県)が打ち上げを担当。年2回春・秋に開催。今回もコズミック(宇宙)系といわれる得意の時差式花火(筆者撮影)満載のプログラム。 次回は、今年の10月8日、「大曲の花火~秋の章~」の翌日に開催予定。東北花火紀行は、秋の編に続く。 「雨雲が近づいているようです」。大曲の会場入口で遭遇した花火鑑賞士仲間の情報は、冷雨で体の芯まで凍えながら見た1年前を想起。昨年、実行委員会本部長が参拝し、無事終了した土浦の実績(昨年11月20日掲載コラム)を踏まえ、天気の神様「気象神社」(東京高円寺)のお守りを持参したのだが、不用意にもホテルに忘れたことを後悔した。 結果は、風向きによる多少の煙待ちはあったにせよ、打ち止めのアナウンスまで、8000発の打ち上げをコンプリート。「天気よければ、すべて良し」。本日は、この辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

つくばはじめ愛好家22軒参加 緑をつなぐオープンガーデン

バラやチドリソウの花々が見頃を迎える5月、ガーデニング愛好家が自宅の庭を公開するチャリティーイベント「つくばオープンガーデン2023」が20日と21日に開かれる。今年で22回目を迎えるイベントには、つくば市の11軒をはじめ、土浦、牛久、つくばみらい、常総、美浦など8市町村から22軒が参加する。期間中に集められた協力金や、苗や手作り品の売り上げは、例年通り、福島震災復興義援金として寄付する。 「立体的な庭になるよう工夫しました」と話すのは、つくば市春日の田澤貴子さん(58)。小ぶりで赤い「紅玉」というバラで作ったアーチが心地よい日陰を庭に作っている。隣に咲くベルフィニュームの鮮やかな青色も庭のアクセント。田澤さんがイベントに参加するのは今年が初めて。昨年、公開された園庭を訪ねた際に、主催者から声かけられたのがきっかけになった。一年前から丁寧に手を入れて準備を進めてきた。「優しい庭にしたいと思って手を入れてきました。見ていただけることで私自身の励みにもなります。皆さんに楽しんでいただければ嬉しいです」と明るく話す。 つくば市作谷の木村久美さん(65)も、初めてイベントに参加する。大谷石であしらった手製の花壇には白やピンクのバラ、赤く色づくハマナスの花などが、入り口付近にはカルフォルニアポピーやアグロステンマが鮮やかに咲き誇っている。「この地域は自然が豊かで静かなところ。庭も自然の景観を意識しました。風を感じたり、鳥の声を聞いたりしながら皆さんと交流できれば」と来場を呼びかける。 オープンガーデンの起源は20世紀初頭のイギリスで、看護師の育成と引退後の生活支援への寄付を募ったのが始まりだとされている。つくばでは2002年に、同市松代の田中公子さんがバラ好きの仲間らと3人で始めた。年々、愛好家の輪が広がり、来場者は昨年1000人を超えるまでになった。 つくば版「イエローブック」も作成 昨年からは「より多くの人にも楽しんでもらいたい」と田中さんの息子さんたちが中心になり事務局を開設、ウェブ制作など普段の仕事を生かし、メディア対応やSNSでの告知などを通じて活動をバックアップしている。 「20年間、活動を間近で見てきた」という長男の田中裕之さん(32)は「ガーデニング愛好家のみなさんは、素敵な空間で過ごしたいという気持ちで、個人で頑張っていた。それを公開してみると、共通の趣味を持つ人同士の出会いが生まれた」と言い、「庭園の愛好家同士が繋がる楽しさと、チャリティーとしての社会貢献。市民の中に気持ちのいい循環が生まれているんだと思います」と話す。 今年は、活動を後押しする試みとして、本場イギリスで発行されているオープンガーデンに参加する園庭の場所と公開日時を記した「イエローブック」のつくば版を作成した。「初めての試みですが、黄色い本を持っていたら『今年もオープンガーデンの季節だな』って思ってもらえたら素敵ですよね」と、今後の広がりに期待を込める。 「これまでに庭づくりを楽しんできたシニア層だけでなく、ガーデニングを始めたばかりの方やこれから始めようと思っている方には、是非、気軽に話を聞きにきていただければと思います。みなさん庭が好きなので、『それはこうやるといいですよ』など、いろいろアドバイスもあると思います。ガーデニングに関心を持つきっかけしていただければうれしい」 参加する園庭には、外からわかるところに大きい黄色いリボンが設置され、目印になっている。訪ねたイエローブックは一冊500円。当日、田中邸か篠原邸で購入できる。インスタグラムやTwitterのメッセージから取り置きの予約も可能。 20日には、つくば市松代の松代公園内と篠原昭子さんの庭で、ガーデンマーケット「ハンドメードと蚤の市」を開催し、篠原さんら作家による手製のカゴや小物、アクセサリーなどを販売する。売り上げの一部はチャリティーに寄付する。(柴田大輔) ◆時間、場所、予約方法などはつくばオープンガーデン2023のホームページへ。

ウクライナ侵攻1年 現地取材の武馬怜子さん つくばで報告会

ロシアによるウクライナ侵攻が始まって1年、現地を取材したフォトジャーナリストの武馬怜子さん(42)の取材報告会が4月1日、つくば市竹園のつくばカピオで開かれる。武馬さんは今年1月から2月の約1カ月間、ウクライナに入り、被災する街や日本で出会った難民の家族、戦時下で市民を勇気づけるアーティストなどを取材した。 武馬さんは1月29日に隣国ポーランドから陸路でウクライナに入国。西から東へ国内を横断し、首都キーウをはじめ、ザポリージャ、ドニプロ、バフムト、オデッサなど9カ所を訪ねた。現地で過ごした約1カ月について「戦時下では、常にみんなおびえ泣いているという先入観があった」と振り返る。 毎日2、3回、多いと5、6回空襲警報が鳴り響く日々だった。真夜中に響くミサイルの着弾音で目を覚ましたこともあった。被弾し崩れる家屋も目にした。それでも街の人たちは日々仕事に出かけるなど日常を営み、警報が鳴っても冷静さを失わず、必要な行動をしていた。「みんな慣れている。周りの落ち着きを見て、自分も落ち着けた」と話す。一方で「人はどんな環境にも適応する。でも、適応していいのだろうか」と複雑な気持ちになったという。 難民は身近な存在 関心を 武馬さんは愛知県出身、都内を拠点にフォトジャーナリストとして活動してきた。これまで、東日本大震災後に埼玉県に集団避難した福島県の人々や、同県相双地区の伝統行事「野馬追」を長期取材し、第2次世界大戦でのBC戦犯やインパール作戦のその後も追ってきた。 今回の報告会は、武馬さんと交流のある龍ケ崎市在住のライター、野口和恵さん(43)が企画した。その理由を野口さんは「雑誌の廃刊が続き、ジャーナリストが活動を続けにくくなっている中でも、武馬さんは、ずっとあきらめず、自分の取材を続けてきた。その姿勢を尊敬している。そんな武馬さんの活動を、多くの人にも知ってもらいたかった」と説明する。また「テレビや新聞でもウクライナの報道が減ってしまった今、現地の人々の様子を知ることができる貴重な機会。ぜひたくさんの方に来てほしい」と参加を呼び掛ける。 法務省によると、3月8日時点で日本国内のウクライナ難民は、全国46都道府県に2211人、そのうち茨城県には55人が暮らしている。日本に来たウクライナ難民とも交流する武馬さんは「ウクライナ難民は身近な存在。現地のことへの関心につなげたい」と思いを語る。(柴田大輔) ◆フォトジャーナリスト武馬怜子 最新ウクライナ現地報告会 4月1日(土)午後2時から、つくば市竹園、つくばカピオ3階中会議場で開催。入場無料、定員28人、事前予約制。予約、問い合わせはメールmingaglabal2017@gmail.comへ。

ふるさと納税の顛末記 ② 《文京町便り》11

【コラム・原田博夫】ふるさと納税制度は2008年5月からスタートしたが、当初それほど浸透しなかった。確かに、菅義偉前首相が総務大臣当時(2006年9月~07年9月)に創設を表明した制度だが、そもそもこの制度の普及・情報公開には総務省もそれほど熱心でなく、全国的な情報集約は(言い出しっぺの西川一誠・福井県知事=2003年~19年=のこだわりを反映して)福井県HPから閲覧する状況が、数年間続いた。 ふるさと納税の利用は、初年度(2008)の寄附受入5.4万件、受入額81.4億円で、09年度の住民税控除額は18.9億円、控除適用者は3.3万人に過ぎない。2011年3月の東日本大震災の際、この制度を利用して被災地への支援を行いたいという(当初の想定を超えた)動きが生まれたため、2012年度の住民税控除額は210.2億円、控除適用者は74.2万人に急増した。しかし翌年度には減少し、こうした支援意欲もなかなか持続しないと噛(か)みしめた。 寄附控除での自己負担分が(2011年以降)5000円から2000円に引き下げられたが、利用は漸増だった。それが、あるタイミングで変化した。2014年度の受入191.3万件、受入額388億5000万円、2015年度の住民税控除額184.2億円、控除適用者は43.6万人に急増。これには、トラストバンク(社長・須永珠代、2012年4月創設)が開設したポータルサイト「ふるさとチョイス」(2012年9月)が貢献している。これ以降、ふるさと納税はネット通販と化した。 さらに「ふるさと納税ワンストップ特例制度」(2015年4月)で利便性が高まり、2015年度の受入726万件、受入額1652.9億円、16年度の住民税控除額は1001.9億円、控除適用者は129.9万人に急増。直近の2021年度は、受入4447.3万件、受入額8302.4億円、22年度の住民税控除額5672.4億円、控除適用者740.8万人に達している。 返礼品をめぐるトラブル こうして大化けしたふるさと納税だが、いくつかの問題がある。たとえば、返礼品をめぐるトラブルあるいは騒動である。 この制度利用者の大半が(とはいえ、利用者は全納税義務者中の約12%)、実は返礼品目当てである。こうした過熱ぶりに総務省は、2019年5月、制度の趣旨を逸脱した返礼品で過度の寄附を集めたとして、大阪府泉佐野市を含む4市町を、この制度から除外すると決めた。泉佐野市はこの決定を不服として、国地方係争処理委員会に審査を申し立てた。 その後、この争いは高裁、最高裁まで及び、結局は国(総務省)が敗訴し、総務省は2020年7月に、泉佐野市などの本制度への復帰を認めた。しかしその後も、泉佐野市と国(総務省)との間では、特別交付税の減額をめぐって訴訟が続いている。 私見では、多額の返礼品に制限をかける総務省のスタンス(現在は寄附額の3割が上限)は、その通知をどのタイミングで発したかという手続き上の疑問・瑕疵(かし)はあるにせよ、基本的には妥当と考える。(専修大学名誉教授) ➡ふるさと納税の顛末記 ①(11月27日付)はこちら

ふるさと納税の顛末記 ② 《文京町便り》11

【コラム・原田博夫】ふるさと納税制度は2008年5月からスタートしたが、当初それほど浸透しなかった。確かに、菅義偉前首相が総務大臣当時(2006年9月~07年9月)に創設を表明した制度だが、そもそもこの制度の普及・情報公開には総務省もそれほど熱心でなく、全国的な情報集約は(言い出しっぺの西川一誠・福井県知事=2003年~19年=のこだわりを反映して)福井県HPから閲覧する状況が、数年間続いた。 ふるさと納税の利用は、初年度(2008)の寄附受入5.4万件、受入額81.4億円で、09年度の住民税控除額は18.9億円、控除適用者は3.3万人に過ぎない。2011年3月の東日本大震災の際、この制度を利用して被災地への支援を行いたいという(当初の想定を超えた)動きが生まれたため、2012年度の住民税控除額は210.2億円、控除適用者は74.2万人に急増した。しかし翌年度には減少し、こうした支援意欲もなかなか持続しないと噛(か)みしめた。 寄附控除での自己負担分が(2011年以降)5000円から2000円に引き下げられたが、利用は漸増だった。それが、あるタイミングで変化した。2014年度の受入191.3万件、受入額388億5000万円、2015年度の住民税控除額184.2億円、控除適用者は43.6万人に急増。これには、トラストバンク(社長・須永珠代、2012年4月創設)が開設したポータルサイト「ふるさとチョイス」(2012年9月)が貢献している。これ以降、ふるさと納税はネット通販と化した。 さらに「ふるさと納税ワンストップ特例制度」(2015年4月)で利便性が高まり、2015年度の受入726万件、受入額1652.9億円、16年度の住民税控除額は1001.9億円、控除適用者は129.9万人に急増。直近の2021年度は、受入4447.3万件、受入額8302.4億円、22年度の住民税控除額5672.4億円、控除適用者740.8万人に達している。 返礼品をめぐるトラブル こうして大化けしたふるさと納税だが、いくつかの問題がある。たとえば、返礼品をめぐるトラブルあるいは騒動である。 この制度利用者の大半が(とはいえ、利用者は全納税義務者中の約12%)、実は返礼品目当てである。こうした過熱ぶりに総務省は、2019年5月、制度の趣旨を逸脱した返礼品で過度の寄附を集めたとして、大阪府泉佐野市を含む4市町を、この制度から除外すると決めた。泉佐野市はこの決定を不服として、国地方係争処理委員会に審査を申し立てた。 その後、この争いは高裁、最高裁まで及び、結局は国(総務省)が敗訴し、総務省は2020年7月に、泉佐野市などの本制度への復帰を認めた。しかしその後も、泉佐野市と国(総務省)との間では、特別交付税の減額をめぐって訴訟が続いている。 私見では、多額の返礼品に制限をかける総務省のスタンス(現在は寄附額の3割が上限)は、その通知をどのタイミングで発したかという手続き上の疑問・瑕疵(かし)はあるにせよ、基本的には妥当と考える。(専修大学名誉教授) ➡ふるさと納税の顛末記 ①(11月27日付)はこちら

ウクライナの動物支援 愛護団体呼びかけ つくばでチャリティーライブ

戦禍のウクライナの動物を支援する「クリスマス・チャリティー・ジャズライブ」が18日、つくば市春日の積水ハウスつくば支店で開かれる。演奏は、松戸市在住のジャズピアニスト、竜野みち子さんとベース、ドラムのトリオで、クリスマスソングや誰もが知っているジャズの名曲などが披露される。 竜野さんは主に東京、横浜を中心に演奏活動をしているが、カリブ海のハイチやカナダのモントリオールジャズフェスティバルへの参加など、国外での演奏も経験している実力派だ。 ライブを主催するのは、つくば市を拠点に保護猫の譲渡活動やTNR(捕獲し、不妊・去勢手術を行い、元に戻す)活動を行っている動物愛護団体「Team.(チーム)ホーリーキャット」(2019年7月17日付)。 ロシアによる2月の軍事侵攻以降、ウクライナでは国民はもちろん、多くの動物が窮地に立たされている。国外脱出を余儀なくされた住民たちはペットをなんとか一緒に連れ出そうとしたが、多くの動物が残されているという。 代表の重松聖子さん(74)は東日本大震災が起きた2011年の10月、福島第一原発に近い警戒区域で置き去りにされた猫の救出作業を行った。ウクライナの惨状に、避難指示が出されて住む人のいない家で猫たちのむくろを見たことが思い出された。またウクライナの首都にあるキーウ動物園の餌がないという報道にも心を痛めた。 竜野さんは震災以降、被災地で動物たちの命をつなぐ活動を続けているグループを音楽活動を通して支援している。4年前、自宅近くの神社に住み着いた野良猫たちが地域猫として暮らせるよう、ホーリーキャットにTNR活動を依頼したことで、重松さんたちメンバーと親交を深めた。この出会いがつくばでのチャリティーライブ開催に結びついた。 竜野さん出演のウクライナ動物支援チャリティーライブは11月20日にも開催したが、市民への周知時間が十分でなかったため、重松さんの知人が会場を埋めるという結果になった。11月のライブを楽しんだ人の「また生演奏を聴きたいし、戦火におびえる動物への支援の輪を広げて」という声に押され、改めてクリスマスにちなんだライブを開催することになった。 重松さんは「災害で置き去りにされるのは動物たち。厳寒期を迎えるウクライナで戦闘に巻き込まれて傷ついたり、飼い主を待ちわびる動物たちを支援してほしい」と協力を呼びかける。(橋立多美) ◆ウクライナ動物支援「クリスマス・チャリティー・ジャズライブ」 18日(日)午後1時30分〜3時30分、積水ハウスつくば支店(つくば市春日2-28-1、駐車場有)で開催。10歳以上の50人定員。入場無料だが募金への協力を呼び掛けている。申し込みは電話090-8058-3129(重松さん)か、ホーリーキャトのホームページ内のブログから。締め切りは15日。募金は全額、寄付事情に詳しい竜野さんを通じてウクライナ動物支援の窓口へ送られる。

時の流れとノスタルジー《遊民通信》53

【コラム・田口哲郎】 前略 今年は鉄道150周年イヤーだそうです。1872年に新橋-横浜間に開業した路線が日本初の鉄道になりました。150年前は明治時代ですから遠い昔のように感じます。確かにそうなのですが、今わたしは43歳です。たとえば鉄道の150年のうちの43年間は自分にとってもリアルタイムだったことになります。 単純計算で、わたしが生まれたときは、鉄道は開業して117年だったわけです。歴史の一部が自分の半生にかかっているというのは、なんとも不思議な感覚です。いつも現在だった今が、いつの間にかある程度時間的な距離のある過去になってしまうほど、自分がこの世に存在してきたのだなと驚きます。 ふと気づいたら、高校球児がずいぶん年下になってしまうと言われますが、それが感覚的によくわかるようになりました。 40歳を超えたあたりから、振り返ることができる年月が10年単位になることにも気づきました。若かったとき、いわゆる中高生だった時代は30年前、最初の大学生時代は20年前になります。わたしにとって懐かしい時代は90年代、ミレニアム、そして2000年代です。あのころを思って、ノスタルジーにひたることになるとは思いもしませんでした。 バブル経済がはじけて、失われた10年といわれた時代。阪神淡路大震災に衝撃を受け、9.11同時多発テロに震撼した時代です。携帯電話の登場でコミュニケーションが劇的に変わり、インターネットの登場で情報が洪水のようにあふれるようになった時代です。当時新鮮だったことも、現在は当然のこととして常識になっていたりします。 ノスタルジーは人間の本能!? 人間は歳をとると、現在と過去を自由に行き来できるようになります。まさに今のことが何十年後には過去になってノスタルジーを引き起こすに違いありません。 不思議なのですが、「あのころはよかったな」と、若いときは絶対に言えなかったフレーズが自然と口をついて出てきてしまいます。思い出は美化されますから、過去が現在よりも絶対に良いということはないのです。でも、もう変えられない過去は、どこかふるさとのようなやさしい感覚をよみがえらせてくれるのでしょう。 人間が伝統を大切にするのは、こういう時間の流れへのささやかな抵抗を本能的にしてしまうからかもしれませんね。ごきげんよう。 草々(散歩好きの文明批評家)

時の流れとノスタルジー《遊民通信》53

【コラム・田口哲郎】 前略 今年は鉄道150周年イヤーだそうです。1872年に新橋-横浜間に開業した路線が日本初の鉄道になりました。150年前は明治時代ですから遠い昔のように感じます。確かにそうなのですが、今わたしは43歳です。たとえば鉄道の150年のうちの43年間は自分にとってもリアルタイムだったことになります。 単純計算で、わたしが生まれたときは、鉄道は開業して117年だったわけです。歴史の一部が自分の半生にかかっているというのは、なんとも不思議な感覚です。いつも現在だった今が、いつの間にかある程度時間的な距離のある過去になってしまうほど、自分がこの世に存在してきたのだなと驚きます。 ふと気づいたら、高校球児がずいぶん年下になってしまうと言われますが、それが感覚的によくわかるようになりました。 40歳を超えたあたりから、振り返ることができる年月が10年単位になることにも気づきました。若かったとき、いわゆる中高生だった時代は30年前、最初の大学生時代は20年前になります。わたしにとって懐かしい時代は90年代、ミレニアム、そして2000年代です。あのころを思って、ノスタルジーにひたることになるとは思いもしませんでした。 バブル経済がはじけて、失われた10年といわれた時代。阪神淡路大震災に衝撃を受け、9.11同時多発テロに震撼した時代です。携帯電話の登場でコミュニケーションが劇的に変わり、インターネットの登場で情報が洪水のようにあふれるようになった時代です。当時新鮮だったことも、現在は当然のこととして常識になっていたりします。 ノスタルジーは人間の本能!? 人間は歳をとると、現在と過去を自由に行き来できるようになります。まさに今のことが何十年後には過去になってノスタルジーを引き起こすに違いありません。 不思議なのですが、「あのころはよかったな」と、若いときは絶対に言えなかったフレーズが自然と口をついて出てきてしまいます。思い出は美化されますから、過去が現在よりも絶対に良いということはないのです。でも、もう変えられない過去は、どこかふるさとのようなやさしい感覚をよみがえらせてくれるのでしょう。 人間が伝統を大切にするのは、こういう時間の流れへのささやかな抵抗を本能的にしてしまうからかもしれませんね。ごきげんよう。 草々(散歩好きの文明批評家)

地域おこしをみんなの力で【北条宿でコーヒーブレイク】4

つくば市北条の街道沿いにある「北条ふれあい館」は大正末期に建てられた店蔵。2000年まで田村呉服店として現役で商売を営んでいた。現在は北条街づくり振興会が観光案内と無料休憩所をこの場に開設し週末に運営されている。 それは喫茶店なのか?と思うかもしれない。しかし訪れた人々へのもてなしでお茶やコーヒーを振る舞ってくれる。さらに北条米を練り込んだアイス「北条米スクリーム」を買い求めることができる。ここはもう番外でもかまわないので加えてしまおう。 「街道筋に発展した町は、江戸時代から続く商業の集積地で、昭和30年代がにぎわいのピークでしたね。確かに、喫茶店というものはここには無かったように記憶しています。なぜと問われたこともなかったけれど、なぜでしょうねえ」 振興会の会長を務める坂入英幸さんは、ふれあい館の近所で眼鏡・時計店を営む北条っ子だ。筑波研究学園都市の概成と市町村合併に伴う地域格差の顕在化、地元の少子高齢化など、地域を取り巻く問題は喫緊と言われながらドラスティックな解決策を見出せないまま現在に至る。 手をこまねいてはいられないと、市商工会の枠組みを超えて地元有志が集まり、町おこし活動を始めた。2007年度に始まり、茨城県のがんばる商店街支援事業にも採択され、北条の商店主だけでなく地域住民や筑波大生にも協力を求め、120人の会員で振興会が立ち上げられた。 震災、竜巻、コロナに折れることなく 人材集結や企画立案は少しずつ形になっていったが、2011年の東日本大震災、12年の竜巻災害で、町は甚大な被害を受け続けた。振興会は折れることなく復興に携わり、観光資源としての町の活用も形になってきたが、2019年から新型コロナウイルスという新たな局面に足を止められた。 震災以前に鉄道が廃線となり、筑波地区は市が唱えるように学園都市の周辺地域として取り残されるポジションとなっていた。公共機関の集積と商業が両立していただけに、元々は飲食業には目のある地域だったが、学園都市中心部とは比較にはならない。坂入会長はこう述べる。 「市にも進言しています。地域格差是正のためのR8(リージョン・エイト、市による周辺市街地活性化事業)にも期待はするけれど、余所の周辺地域はまだスタート地点に立ったばかり。先行してスタートした北条を地域振興のサンプルとして、もっと目を向けてもらいたい」 パン屋、うどん屋、ラーメン店も 北条米スクリームは、地域おこしのシンボルの一つ。北条米を使ったアイスクリームづくりを進めたのは、筑波大生だったそうだが、常識を越えた粘性が災いして「攪拌(かくはん)機が壊れるから製造できない」とも言われた。この粘性の改良の末、北条米の風味を生かした独特の粘りを持つ一品が誕生した。 ふれあい館のいろり端(正しくは集会テーブル)でこれをいただき振興会の人々と談話していると、ちょっとした古民家カフェの雰囲気を味わえる。 「地震と竜巻で、いくつかの歴史ある建築物が解体の憂き目に遭い、空き家問題なども起こっていますが、北条で喫茶店を営むというチャレンジに続いて、町なかに欲しいねと話題にしていたパン屋が2軒、うどん屋も2軒、洋食屋や行列のできるラーメン店が林立しています」と坂入会長は言う。(鴨志田隆之) 終わり

森林環境譲与税をご存じですか?《文京町便り》9

【コラム・原田博夫】今回は、森林環境譲与税を取り上げてみたい。そもそもどれだけの人が、2019年度から森林環境譲与税が施行されていることをご存じだろうか。 譲与税は、国(政府)から地方公共団体(都道府県と市町村)に、使途を細かく指定せずに譲与される。一般国民としては、追加的な税負担は生じないので、大半の国民が知らないのも無理はない。とはいえ、この譲与税の財源はどこにあるのか。 実は、東日本大震災(2011年3月)の後、全国で実施する防災施策対応分として、14年6月から10年間(23年度まで)、個人住民税均等割を年額1,000円(都道府県と市町村で各500円)引き上げていた。それが終了した段階で(24年度から)、この増税分を森林環境税(国税だが、市町村が賦課徴収)に切り替え、それ以降はこれを森林環境譲与税の財源にする、という仕組みが19年3月に成立、施行された。 追加的な税負担ナシでの見事なすり替えだが、この制度の目的には「パリ協定の枠組みの下におけるわが国の温室効果ガス排出削減目標の達成や災害防止を図るため、森林整備等に必要な地方財源を安定的に確保する観点から」、という大義が付与されている。 この譲与税額は全国で2019年度(初年度)200億円だが、20・21年度は各400億円、22・23年度は各500億円、24年度以降は600億円(平年度ベースの森林環境税)が見込まれている。都道府県と市町村への譲与は、それぞれの私有林人工林面積(林野率で補正):5割、林業就業者:2割、人口:3割で案分される。 市町村と都道府県への配分は、2019年度は(当初は市町村の支援を行う都道府県の役割が大きいと想定されるので)8:2だが、経年的に市町村分を引き上げ、25年度からは9:1になる。 使途が決まらず基金へ繰り入れ 譲与実績(2021年度決算)を総額順位で列挙すると(都道府県分と市町村分の合計を都道府県単位で集計)、1位北海道、2位東京都、3位高知県、…33位茨城県、…、45位富山県、46位沖縄県、47位香川県、である。譲与税の配分基準に人口要素が組み込まれているため、大都市部への配分が大きくなる、という問題点が指摘されている。 もう一つの問題点は、使途が決まらず基金への繰り入れの大きいことである。茨城県の2019~21年度の譲与総額は2億3965万円で、21年度末の基金残高は1億527万円なので、44%が基金に繰り入れられている。同期間で、つくば市の譲与総額は5921万1000円で、基金残高は5450万9000円。土浦市の譲与総額は3270万9000円で、基金残高は2358万9000円である。 県以上に、基金への繰り入れが大きい。つまり使途が定まっていない、ということである。これは、全国的な傾向でもある。 つまり、これらの課題は、財政ニーズがまだ顕在化していない段階で、この制度の設計・運用が開始されたことにある。同時に、時代を先取りし、国民を誘導する制度設計の難しさ・悩ましさも示している。(専修大学名誉教授)

森林環境譲与税をご存じですか?《文京町便り》9

【コラム・原田博夫】今回は、森林環境譲与税を取り上げてみたい。そもそもどれだけの人が、2019年度から森林環境譲与税が施行されていることをご存じだろうか。 譲与税は、国(政府)から地方公共団体(都道府県と市町村)に、使途を細かく指定せずに譲与される。一般国民としては、追加的な税負担は生じないので、大半の国民が知らないのも無理はない。とはいえ、この譲与税の財源はどこにあるのか。 実は、東日本大震災(2011年3月)の後、全国で実施する防災施策対応分として、14年6月から10年間(23年度まで)、個人住民税均等割を年額1,000円(都道府県と市町村で各500円)引き上げていた。それが終了した段階で(24年度から)、この増税分を森林環境税(国税だが、市町村が賦課徴収)に切り替え、それ以降はこれを森林環境譲与税の財源にする、という仕組みが19年3月に成立、施行された。 追加的な税負担ナシでの見事なすり替えだが、この制度の目的には「パリ協定の枠組みの下におけるわが国の温室効果ガス排出削減目標の達成や災害防止を図るため、森林整備等に必要な地方財源を安定的に確保する観点から」、という大義が付与されている。 この譲与税額は全国で2019年度(初年度)200億円だが、20・21年度は各400億円、22・23年度は各500億円、24年度以降は600億円(平年度ベースの森林環境税)が見込まれている。都道府県と市町村への譲与は、それぞれの私有林人工林面積(林野率で補正):5割、林業就業者:2割、人口:3割で案分される。 市町村と都道府県への配分は、2019年度は(当初は市町村の支援を行う都道府県の役割が大きいと想定されるので)8:2だが、経年的に市町村分を引き上げ、25年度からは9:1になる。 使途が決まらず基金へ繰り入れ 譲与実績(2021年度決算)を総額順位で列挙すると(都道府県分と市町村分の合計を都道府県単位で集計)、1位北海道、2位東京都、3位高知県、…33位茨城県、…、45位富山県、46位沖縄県、47位香川県、である。譲与税の配分基準に人口要素が組み込まれているため、大都市部への配分が大きくなる、という問題点が指摘されている。 もう一つの問題点は、使途が決まらず基金への繰り入れの大きいことである。茨城県の2019~21年度の譲与総額は2億3965万円で、21年度末の基金残高は1億527万円なので、44%が基金に繰り入れられている。同期間で、つくば市の譲与総額は5921万1000円で、基金残高は5450万9000円。土浦市の譲与総額は3270万9000円で、基金残高は2358万9000円である。 県以上に、基金への繰り入れが大きい。つまり使途が定まっていない、ということである。これは、全国的な傾向でもある。 つまり、これらの課題は、財政ニーズがまだ顕在化していない段階で、この制度の設計・運用が開始されたことにある。同時に、時代を先取りし、国民を誘導する制度設計の難しさ・悩ましさも示している。(専修大学名誉教授)

今、何をしているのですか? 前土浦市長の中川清さん【キーパーソン】

土浦市長を4期16年務め、現在は企業グループの「総帥」に復帰している中川清さん。市長を退いてから3年。新しい事業を考えているとの話が耳に入り、グループの会社が入る延増第三ビル(土浦市真鍋)を訪ね、いろいろと聞き出した。「経営者市長」は元の経営者に戻り、意欲的に経営戦略を練っている。 グループ主要社の社長と会長に復帰 中川グループ11社の主な会社は中川商事と中川ヒューム管工業。両社とも不動産管理会社・延増興産が所有するビルに本社を置く。年商は、商事が約230億円、ヒューム管が約100億円。今、中川さんは、商事の社長、ヒューム管の会長(社長はおいの喜久治氏=土浦商工会議所会頭)、興産の会長(社長は長男の弘一郎氏)に就いている。 グループの創業者は1922年に中川商店を起こした父の延四郎氏。先の大戦前、1部門として「鉄(筋)とセメントで造る」ヒューム管の事業を立ち上げ、戦後間もなく、中川商店を法人化して中川商事に改めた。今年は中川商店スタートから100周年になる。 農業、太陽光発電、ドローンに挑戦 「市長をしていた16年の間、会社を留守にしていた。戻ってから3年になるが、この間、経営の実態把握に傾注してきた。このままではダメなので、中核の中川商事の社長、中川グループの総覧者として、新しい分野にチャレンジしたい」という。 具体的に何を考えているのか聞いたところ、①脱炭素時代に必要な太陽光発電、②農業法人設立も視野に入れた農業や健康の分野、③(商事の1部門としてある)パソコンなど情報関連サービスの強化、④古い橋梁検査などに向いているドローン事業―などを挙げた。 「(家庭や事務所向け飲料水を製造販売している)系列会社『アクアクララ筑波山』の工場の屋根に太陽光パネルを敷き、本格展開に向け勉強している」「稲敷市に持っている農業用地などを活用し、農業や健康ビジネスをやりたい。すでに『飲むヨーグルト』を扱っている」「情報関連はずっと前に買収した会社の事業がベースになる」「ウクライナの対ロシア戦でも証明されたように、ドローンの可能性は大きい」 面白かったのは、「市長を終えて商事に戻ったら借金がゼロになっていた。悪いことではないが、借金をしてでも投資をしなければダメだ。そこで、銀行から10億円を借り入れ、つくば市内の不動産物件に投資した」という発言。財務の健全化も大事だが、将来への投資に頭を働かせなければとの経営哲学だ。 現市長、「話が全然見えてこない」 中川さんは市長時代、大震災で劣化した市役所を閉じ、大型スーパー撤退でガラ空きになった土浦駅前のビルに市役所を移した。また、駅横に市立図書館を移設、市民ギャラリーを併設し、駅周辺をつくり変えた。「常磐線の品川駅乗り入れも実現し、東京圏への通勤が格段に便利になった。これらによって、駅周辺にはマンションが次々と建ち、にぎわいが戻った」と、一連の施策を振り返る。 現在の安藤真理子市政への感想を求めると、「私が降りたあと、コロナ禍もあるのだろうが、やることがなくて困っているのではないか。話(市の施策)が全然見えてこない。何をやっているのか、さっぱりわからない」と、評価は厳しい。 【なかがわ・きよし】1971年、慶応大経済学部卒。中川商事社長、中川ヒューム管工業社長として経営に携わりながら、茨城県公安委員長、土浦商工会議所会頭などに就任。そのあと、土浦市長(2003~2019年)。現在、商事社長、ヒューム管会長。億萬山七福尊真延寺(土浦市真鍋)代表役員。1945年、土浦市まれ。同市在住。 【インタビュー後記】中川市政で感心したこと。湖畔の市営国民宿舎が大震災で劣化。再建か撤去かで議論になったとき、市長は市営での再建を拒否。毎年赤字の公営宿泊施設は時代遅れ、再建するにしても民間に任せる―がその理由。議会は再建を強く求めたが、民間に応じる会社なく、撤去を決断。会社はもちろん市政にも必要な「投資と運営」の好事例。(経済ジャーナリスト・坂本栄)

銀座通りの火の玉 《くずかごの唄》115

【コラム・奥井登美子】9月1日は防災の日。私は防災用品の点検をする日にしている。関東大震災を知っている人はいなくなってしまったが、子守歌代わりに震災の恐ろしさを聞いて育った私にとって、忘れられない日なのだ。 父は子供が大好きで、慶應義塾の学生時代、近所の子供たちを集めて、水泳を教えたり、絵本を読んだり、藤友会という「こども文庫」みたいなものをやっていた。母は、弟たちを藤友会に連れて来て、父と親しくなり結婚したらしい。 大正12年(1923)9月1日。20歳の母は妊娠8か月。東京中央区新富町に住んでいた。お昼時。食事をしようとしたら激震。周りは木造の家屋。竈(かまど)で薪(まき)をくべて煮炊きする時代だったから、地震でつぶれた家屋から発火し、引火して、町のほうぼうが火事。逃げるしかない。父と相談し、目の悪い姑(しゅうと)の手を引いて、3人で皇居前広場を目指して避難することになった。 火事の火を避けて歩いていたけれど、銀座通りを横切る時。すごい風が火の玉となってぶつかってきて、危うく死にそうになったという。 皇居前広場のあたりは、昔、三菱ヶ原と呼んでいた。父が子供の頃、トンボ取りをした原っぱがあったという。新富町あたりの子供たちは、4キロくらい離れた皇居前まで遊びに行っていたらしい。皇居前広場はたくさんの人が避難していて、喉が渇いて水が飲みたかったが、某国人が井戸に毒を入れたから井戸水は飲むなという「オフレ」が出て、つらかったという。 父は足を棒にして友達の家を探し回り、慶應同級生の亀山さんの目黒の家が焼けずに残っていたので、その家に転がりこんで、お世話になった。母は芝公園の中の仮設産院で兄を出産した。着るものがないので、亀山さんの妹の跡見女学校の制服を着ていったという。兄の加藤尚文(故人、経済評論家)の戸籍謄本には、出生地芝公園内2号地と書かれていた。 母から聞かされた震災の恐怖 母は震災後の精神的後遺症なのだろうか、10年間子供がつくれなかった。10年目に私が生まれて、物心ついた時。私を相手に、震災で避難の時の恐ろしさを、繰り返し、繰り返し、語っていた。 10年目に生まれた娘にその怖さを語ることで、精神的なゆとりを取り戻していったのだろう。幼い時、母から何百回も聞かされた震災の恐怖。母のPTSD(心的外傷後ストレス障害)を忘れないように、私はその日を、今でも防災用品点検日にしている。(随筆家、薬剤師)

銀座通りの火の玉 《くずかごの唄》115

【コラム・奥井登美子】9月1日は防災の日。私は防災用品の点検をする日にしている。関東大震災を知っている人はいなくなってしまったが、子守歌代わりに震災の恐ろしさを聞いて育った私にとって、忘れられない日なのだ。 父は子供が大好きで、慶應義塾の学生時代、近所の子供たちを集めて、水泳を教えたり、絵本を読んだり、藤友会という「こども文庫」みたいなものをやっていた。母は、弟たちを藤友会に連れて来て、父と親しくなり結婚したらしい。 大正12年(1923)9月1日。20歳の母は妊娠8か月。東京中央区新富町に住んでいた。お昼時。食事をしようとしたら激震。周りは木造の家屋。竈(かまど)で薪(まき)をくべて煮炊きする時代だったから、地震でつぶれた家屋から発火し、引火して、町のほうぼうが火事。逃げるしかない。父と相談し、目の悪い姑(しゅうと)の手を引いて、3人で皇居前広場を目指して避難することになった。 火事の火を避けて歩いていたけれど、銀座通りを横切る時。すごい風が火の玉となってぶつかってきて、危うく死にそうになったという。 皇居前広場のあたりは、昔、三菱ヶ原と呼んでいた。父が子供の頃、トンボ取りをした原っぱがあったという。新富町あたりの子供たちは、4キロくらい離れた皇居前まで遊びに行っていたらしい。皇居前広場はたくさんの人が避難していて、喉が渇いて水が飲みたかったが、某国人が井戸に毒を入れたから井戸水は飲むなという「オフレ」が出て、つらかったという。 父は足を棒にして友達の家を探し回り、慶應同級生の亀山さんの目黒の家が焼けずに残っていたので、その家に転がりこんで、お世話になった。母は芝公園の中の仮設産院で兄を出産した。着るものがないので、亀山さんの妹の跡見女学校の制服を着ていったという。兄の加藤尚文(故人、経済評論家)の戸籍謄本には、出生地芝公園内2号地と書かれていた。 母から聞かされた震災の恐怖 母は震災後の精神的後遺症なのだろうか、10年間子供がつくれなかった。10年目に私が生まれて、物心ついた時。私を相手に、震災で避難の時の恐ろしさを、繰り返し、繰り返し、語っていた。 10年目に生まれた娘にその怖さを語ることで、精神的なゆとりを取り戻していったのだろう。幼い時、母から何百回も聞かされた震災の恐怖。母のPTSD(心的外傷後ストレス障害)を忘れないように、私はその日を、今でも防災用品点検日にしている。(随筆家、薬剤師)

3年ぶり 11月5日開催決定 土浦全国花火競技大会

コロナ対策と安全対策を徹底 第91回土浦全国花火競技大会(同大会実行委員会主催)について、実行委員長の安藤真理子市長は5日の定例記者会見で、11月5日に開催することを決定したと発表した。同大会は2018年と19年は事故により途中で打ち切り、20年と21年はコロナ禍で中止となった。コロナ対策と安全対策を徹底して、3年ぶりに開催する。 安藤市長は「国内最高峰の大会であることから、3年連続で花火師が作品を発表する機会を失うことは日本の伝統文化である花火の技術を継承していくことに大きな影響を及ぼす」などと開催決定の理由を述べ、「大会を復活させなければならない使命を感じている。最後まで絶対成功させるという思いでいる」と強調した。 無料観覧席なくし有料のいす席に 新型コロナ対策として、観覧者が密集するのを防ぐため、打ち上げ会場近くの同市佐野子、学園大橋付近の桜川畔に設置する有料観覧席エリアの入場者を、例年の約8万1000席から今年は約3万5000席と4割に減らす。6800升設置する桟敷席を1升当たり6席から4席に減らすほか、桜川土手の無料の観覧席をなくし、来場者の情報を把握できるよう、すべて有料のいす席とする。例年なら桟敷席で約4万1000人、無料観覧席で約4万人が観覧できるが、今年は桟敷席2万7000人、いす席8000席になる。 さらに、有料観覧席エリア内では飲食の販売を行わず、飲酒は自粛を求める。ただし観覧席に飲食を持ち込むことはできる。一方、例年、大会時は有料観覧席周辺にも路面にたくさんの露店や屋台が並ぶ。同エリア外での飲食販売は実行委員会の規制の対象外という。 有料観覧席に入場する際は、非接触検温計(サーマルカメラ)による検温と手指消毒を求め、発熱者などの入場を制限する。会場では飲食時以外のマスク着用を徹底し、声援を送ったり歓声を上げるなど大声を出さないよう周知する。 帰宅する際は土浦駅が大混雑することから、駅構内の混雑を減らすため、駅西口への入り口を市役所前の大屋根広場1カ所に制限し、時差式で駅に入ってもらう。土浦駅前には土浦警察署のDJポリスが初登場し、ユーモアを交えながら節度ある行動を呼び掛ける予定だという。 ほかに、土浦駅から打ち上げ会場までのシャトルバスは1台当たりの乗車人数を制限する方向で現在、運行事業者の関東鉄道と協議している。 重ね玉を取り止め 安全対策としては18年と19年の事故を教訓に、打ち上げ場所付近の立ち入りを規制する保安距離を、県規程の110メートルから大幅に広くし、200メートル確保する。さらに4号玉の打ち上げでは、一本の花火筒に2つ以上の花火玉を入れて打つ「重ね玉」を取り止め、一本の筒に一つの玉を入れる一筒一発方式とする。 地域経済に影響 安藤市長は開催決定の理由についてほかに、飲食店や宿泊施設、旅行・交通事業者などたくさんの地域経済活動に影響を及ぼすこと、土浦と並ぶ日本三大花火大会の新潟県長岡と秋田県大曲でいずれも今年、3年ぶりに大会が開催されたこと、国の行動制限が行われない見通しであることなどを挙げた。 開催決定にあたっては、安藤市長自ら8月27日の大曲の花火のコロナ対策などを視察し、8月31日、実行委員会役員会を開いて開催を決定したという。 同大会は1925(大正14)年、霞ケ浦海軍航空隊殉職者を慰霊し、関東大震災で疲弊した商店街の復興を願って開催したのが始まり。コロナ禍で中止となった20年、21年は大会に代わり、霞ケ浦でサプライズ花火の打ち上げ(2020年11月3日付)などが催された。 11月5日の第91回大会は、スターマイン、10号玉、創造花火の3部門で競技が行われ、総合優勝者には内閣総理大臣賞が贈られる。3年前は65万人が観覧したが、今年の参加者について市商工観光課は「今のところ判断が付かない」とする。 ◆大会は11月5日(土)午後5時30分に競技開始。有料観覧席のチケット販売は9月中旬ごろ開始予定。料金は、桟敷席が4人で2万2000円、2人1万1000円。椅子席は打ち上げ場所からの距離によって3000円~4000円(金額はいずれも予定、消費税込み)。雨天の場合は同12日(土)または13日(日)に延期される。

1938年に八尺の浸水 土浦市田中の自然石に刻まれる【自然災害伝承碑の現在】㊦ 

土浦(市)の水害は江戸時代に街の形ができた頃から桜川の氾濫や霞ケ浦からの遡上で幾度となく浸水の被害が出ている。その抜本的な洪水対策に従事した政治家・色川三郎兵衛氏の活動を閲覧する予定だったが、土浦市立博物館は、本年7月から大規模改修で2年後の1月まで休館となっていた。 常磐線軌道を防災インフラとして整備 色川氏の業績は、現在の常磐線軌道建設時に盛土構造物を霞ケ浦寄りに築造させ、堤防の役割を与えたことが有名だ。これは東日本大震災時、宮城県の仙台東部道路が同じ機能を果たし、ある程度津波を防いだ。常磐線軌道ははるか明治時代に防災インフラとして整備されていた。色川氏はさらに、川口川河口付近での閘門設置にも尽力した。 川口川そのものは埋め立てられ消失しているが、旧川口川閘門鉄扉と排水ポンプは残されており、色川氏の業績を讃えた記念碑と像も建立されている。ただ、構造物自体は伝承碑の対象外であり、色川氏の記念碑にも業績を讃える文言しか刻まれていないため、治水の記録を捕捉銘板などで追加しなければ伝承碑として登録できる確率は低い。 防災サポーターが自転車で走り回り確認 これは意外な展開になった。本当に土浦市内にも水害伝承を記した石碑は皆無なのだろうか。つくば市同様、土浦市の防災危機管理課に足を向けた。 「現時点(8月17日)では自然災害伝承碑に登録されていませんが、1938(昭和13)年水害の記録を彫り込んだ自然石が存在します。この石碑は以前、市立博物館が災害の記憶をテーマとした企画展を催した際、水害の歴史事例として紹介したことがあります」 1938年6月末から7月にかけての台風水害は、真鍋から下高津までの桜川低地が冠水し、土浦町で約4800戸、真鍋町で1000 戸以上の床上浸水を生じた。氾濫した水の深さは8尺(約2.4m)に及んだという。 「地域防災サポーターの方が、市内を自転車で探し回り、この石碑を確認してくれました。市としては伝承碑に登録できる十分な条件を備えていると考えます」 それでも確認された石碑はこの一例だけだという。 「自然災害伝承碑そのものが、これから広く認知されていくのでしょう。市民の関心が高まり情報のやり取りが活発になれば、今は埋もれている災害の記録が2例目、3例目とよみがえっていくのではないでしょうか」 防災危機管理課でレクチャーしていただいた石碑を探して、中心市街地からは少し離れた神社にたどり着く。昔は一面の田園地帯だった。周辺の新市街地は80年代以降に形成され、社だけが長い歴史をたたえている。拝殿横の樹木を支えるように並べられた自然石の一つに、判読しにくいながらも「十三年」「大洪水」の文字が刻まれていた。 登録で歴史を再認識 この探訪は、国土地理院の地図と測量の科学館内で目にした自然災害伝承碑の紹介コーナーがきっかけだ。展示パネルのひとつに、つくば周辺の伝承碑4カ所が掲げられていたが、土浦市にもつくば市にも伝承碑の登録がないという事実に、驚きを禁じ得なかったのである。 そんな馬鹿な、と国土地理院に伝承碑の成り立ちを聞くところからスタートした。印象としては、災害伝承の多くは口伝えと文献に委ねられている。それらの維持保存は重要な意義を持つが、紙媒体もデジタル化した情報も、おそらく石碑のような堅牢さに比べれば、長期間にわたる伝承には限界がある。 そう言い切ってしまうと、地理院が進める伝承碑の情報収集・登録・ウェブ上での利活用に矛盾を与えてしまうが、各地の伝承碑がどこにあり、何を伝えているかのガイドとして地域の耳目が触れやすくしていくことに新たな意義が生まれている。 土浦市内の大洪水の碑は、近く自然災害伝承碑として登録されることだろう。大事なことは、登録後に改めて人々がその歴史を再確認し、災害に対して油断のない暮らしを営むことにある。(鴨志田隆之) 終わり

全国1500基登録間近 スタートは地域の機運【自然災害伝承碑の現在】㊤

つくば市北郷の国土地理院が、2019年からウェブ地図「地理院地図」で公開している「自然災害伝承碑」の登録数が、今年8月時点で全国1500基に近づいている。東日本大震災、熊本地震、西日本豪雨、北海道胆振(いぶり)東部地震といった大地震、大津波、土砂災害、河川氾濫に対して、過去の知見を見直そうという各地域の人々の関心が高まってのことだ。9月1日の防災の日を前に、自然災害伝承碑の地図記号制定(19年3月)から3年の土浦、つくば地域の現在を取材した。 土浦、つくばは登録なし 茨城県内においては、10市で35基が登録・公開されている。桜川と霞ケ浦の氾濫の歴史を持つ土浦市や、小貝川、桜川といった一級河川の流域に面したつくば市でも、水害の経験伝承は行われているはずだが、現時点では自然災害伝承碑の登録がない。ただ、地理院への打診はなされており、今後登録される可能性がある。 自然災害伝承碑の概略は、国土地理院が公開を始めた直後にNEWSつくばでも紹介している(2019年6月20日付)。どのような仕組みで登録や公開がなされるのか、国土地理院応用地理部に聞いた。 「伝承碑の情報収集は全国の地方公共団体等の関係機関に協力していただき、それに該当する石碑、モニュメントについて、国土地理院が策定した『自然災害伝承碑に係る調査業務実施の手引き』に基づき市区町村より申請を行ってもらうプロセスをとっています。国土地理院と各市区町村は、それぞれの地域住民から伝承碑になりえるのかどうかの相談を受け、条件に合致すれば正式に申請へと動きます」 国土地理院応用地理部地理情報処理課の宮下妙香課長補佐は「すべてのスタートラインは、地域の人々による自然災害記憶の継承機運が高まるところから始まるのです」と付け加える。 自然災害伝承碑は、それ自体が過去に被災した人々が後世に向けて記録を遺すという機運によって、何かしらの形で碑文を刻んだもの。国や自治体の指示指導によるものではないという。この過去からのメッセージが活かされたケースもあれば、存在自体が知られていても関心が薄く再発した災害の犠牲になった事例もある。 国土地理院が、埋もれた碑文に自然災害伝承碑という新しい価値観を見出し、地図記号もその他の記念碑とは分けて新規デザインした目的は、自然災害の記憶を現代につなぐことで、教訓を踏まえた的確な防災行動による被害の軽減や将来の避難計画策定に役立てることにあり、情報のデータベース運用や提供にある。事実、全国レベルで見れば3年間で1500基近くの相談・申請・登録が行われており、先人の記録を活かそうとする動きは活発だ。 土浦、つくばでは現時点で伝承碑の登録がないことは想像していなかったが、宮下補佐は「現時点で伝承碑が掲載されていない地域では、市区町村から掲載希望の連絡を受け申請の手続きをしている場合や伝承碑として採用できるかどうかの条件を満たさない場合もありますし、可能性がある碑そのものが、さまざまな事情で立ち入り禁止とされている場所に眠っていることも考えられます。また、その石碑が何を記しているのかがわからなくなってしまっている場合もあると思われます」と説明する。 現代において、災害伝承は速報から始まるニュース情報と、それを記録したアーカイブという仕組みになり替わっている。あるいは地域の口伝で事足りていたのかもしれない。(鴨志田隆之) 続く

飲酒に反対の声多数 県、計画のさらなる見直し示唆 洞峰公園説明会終わる

4回で延べ370人参加 つくば市二の宮にある県営の都市公園、洞峰公園(約20ヘクタール)を、パークPFI制度によりリニューアルする計画について、7月2日から計4回開催された県による住民説明会が31日、終了した。4回の説明会には延べ約370人が参加し、グランピング施設やバーベキュー(BBQ)施設での飲酒などに対して反対の声が多数上がった。 県は、多くの参加者から繰り返し反対意見が出されたことを受けて「さまざまな選択肢を考えながら検討し、つくば市とも協議して決定していく」と回答し、今回の説明会で示した計画をさらに見直すことを示唆した。 31日、洞峰公園体育館で開かれた第4回説明会には、近隣住民のほか、高校生や大学生を含め、つくば市内外から男女131名が参加した。毎回、質問が途切れず、予定時間をオーバーして終了しているが、最終回の31日は予定の2時間を大幅に超え、計4時間半に及んだ。 参加者「声を聞いてほしい」「賛成もいる」 「生の声を届けたかった」と話すのは、つくば市在住の30代の夫婦。住まいは公園から徒歩10分、数年前に県外からつくばに越してきたという。1歳になる子供が歩き始めた今年春ごろから公園を頻繁に利用するようになった。いつ来ても安心できることから、「地元の人が楽しむ憩いの場」だと感じてきた。リニューアル計画に盛り込まれる、公園内で製造・販売されるビールや、グランピングやBBQでの飲酒に対して心配の声が多数上がる中、「子どもが大きくなれば、公園を通って学校に通うことになる。その時、お酒の提供される公園を想像すると不安を覚える」と話す。質疑では「近隣住民、利用者の声を聞いてほしい」と県と事業者に訴えた。 「23日にも来ていた」と話す市内在住の60代の女性は、31日の説明会に再度参加した。その理由を、「賛成(する人)もいると伝えたかった」と話す。女性は、愛犬を連れてのドッグラン付きグランピング利用に期待を寄せる。自身の周囲にリニューアルを歓迎する人が多く、反対の声ばかりが取り上げられる報道に違和感があった。だから説明会に「自分の足で出向いてみた」。反対の人に対しても、「互いに歩み寄れたら」と話す。 現在の計画の対案も複数出された。公園の雰囲気を維持したいという男性は、グランピングではなく「公園を生かした植物園、バラ園を」と訴えた。また、公園での飲酒に反対する男性は、計画されるビール工房ではなく「たとえばヨーグルトではどうなのか?」とするなどの意見が参加者からあがった。 パークPFIは国の流れ  説明会開催に先立ち、つくば市から伝えられた懸念事項を踏まえて県は、匂いや騒音に対してBBQの位置や設備を変更し、樹木の伐採への懸念には伐採範囲を限定的にするなどの改善案を示してきた。 一方参加者からは、大規模修繕費や収支の内訳など、計画の不透明な部分への不安、酒類提供による治安への影響、樹木伐採による環境悪化への懸念、「慣れ親しんだ洞峰公園を変えてほしくない」という意見が、4回の説明会を通じて繰り返し伝えられた。 参加者からの「説明会を開いて(市民の声を聞いた上で)今後どうするのかを決めるのかと思っていた」という声に県は、「事業は4月1日からスタートしている」とし、「県民、市民の皆さんの声を伺い、現状のPFI事業をより良いものにしていくことで、皆さんのご理解をいただきたいと考えている」とし、説明会の意図が、参加者に伝わっていないことが見える場面も相次いだ。 県は、今回の説明会とアンケート調査を「事業計画に対する県民、近隣住民の意見を聞くというのが趣旨」であり、計画に対する「賛成、反対を問うものではない」としている。 また31日の質疑で、県は、現在リニューアル計画は停止状態にあるとしつつ、パークPFIによる事業そのものは、「官民連携」という国が普及・促進する都市公園の運営方針によるもので、洞峰公園もその流れの中にあることを、改めて強調した。市民団体が求める、公園管理者と利用者らによる「協議会」設置には、「その可否については、アンケート等の意見を集約し、市と相談して決める」ことであり、「都市公園法に規定される協議会は重みのあることと認識している」とした上で「その協議会に誰が入るかというのは、相当慎重な検討が必要と理解している」との姿勢を示した。 県によると、4回の説明会・アンケート調査で出た意見、未回答の質問への回答は、アンケート受け付け最終日の8月31日を待って、取りまとめたものをつくば市と共有する。その上で後日、何らかの形で県民に公表・回答するとしている。(柴田大輔) ▽31日、洞峰公園体育館で開かれた第4回説明会の主なやり取りは以下の通り。 参加者1 洞峰公園が建設されて40年になる。当初、維持管理はどのように考えられていたのか。大規模修繕は考えられていたと思う。(公園内の)どのような施設が、どのような規模で考えられていたのか。収支の説明があったが、コロナの影響で苦境の事業があった。収支を達成するためにどのくらいの人を呼ぶ計画か。 県都市整備課 40年前の維持管理がどういう計画だったか、詳細な資料は持ち合わせていない。当初から体育館、プール、テニスコートなど箱モノ施設があり、洞峰沼を中心とする豊かな自然環境がある。細かな修繕を繰り返しながら運営してきたと思う。40年経ち樹木も大きくなっている。どんどん増えていく修繕費を標準化して、修繕計画を立てながら、適切に運営していかなくてはならない。年平均8000万円かかると説明した大規模修繕費は、過去5年間の実績と今後5年間の将来計画を平均した金額だ。詳細は後ほど改めてお示ししたい。これまでに大きくかかった費用として例えば、体育館の屋根の上に載っている太陽光発電がある。大規模改修を数年前にやって修繕を行っている。まだまだ直しきれてないところもあり、計画的に修繕していく費用も(8000万円の)中に入れている。園路の照明の改修だったり、防犯灯のケーブルの交換だったり、目に見えないことにも経費が掛かっている。 コロナの影響だが、昨年と一昨年、コロナの影響で休館にした施設があった。休館の間は利用できず、見込んでいた収入が入ってこないので運営が厳しい状況だったが、(今は)利用者数は従前に近い形で戻ってきている。屋内施設に関しては基本的に(コロナによる)大きな影響は出ていない。 コロナによって近場のレジャーの人気が高くなり、グランピング施設はそういった意味で大変需要がある、将来的にも需要は継続していくのではないかということで各地でグランピング施設が増えている。 参加者2 洞峰公園のリニューアル計画が残念でならない。365日24時間利用できる施設がたくさんできる。ビール工房ができるなど、飲酒がいつでもできる公園になってしまうのがすごく残念。グランピングの周りが1.8メートルの木製ルーバー(柵)に囲まれる。(今の洞峰公園を)子供たちがたくさん通学で使っている。(今の公園は)子どもたちだけで安心して遊べる。このままであってほしい。前の説明会で「こういうことが自分たちの近所で起きて歓迎できますか」と聞いた。それをもう一度お聞きしたい。 県 治安に対する不安の声は聞いている。特に子供たちのことについて、不安の声が多くあると聞いている。(これらに対しては)24時間スタッフの配置だったり、問題が起きたらすぐに駆け付ける体制をとるので、十分、対応は可能だと考えている。アルコールは販売時間を限定する。飲酒できるエリアも限定する。対応するので大きな問題ないと考えている。一方で「公園の近くに住んでいる。夜暗くて不安だが、グランピングできることで明るくなって人目が増えて安心だ」という意見もいただいている。治安、防犯について、つくば警察署と相談を始めている。事業者も、安心、安全な公園にするのを第一に考えている。(説明会で示した対策で)特に大きな問題はないと考えている。 参加者3 近所に住んでいる。洞峰公園は新宿御苑とか皇居とかと同じ(聖域的な)存在だ。(グランピング施設でなく)噴水、植物園、バラ園をつくる方が(公園が)唯一無二の存在になるし、インスタ映えする。公園としての価値も上がる。良い公園かどうかを決めるのは利用者だ。パークPFIができなくなると6000万円の収入が不足するということだが、つくば市民1世帯当たりで割ると510円だ。洞峰公園の環境を守れるなら、そのくらいみんなで払う。 県 今さまざまな意見を伺いながら、立ち止まって検討しているところ。さまざまな選択肢を考えながら検討していくと、つくば市と話している。 参加者4 毎日犬の散歩で使っている。知事は洞峰公園に視察に来ているか。来てないのだったら今後来る予定はあるか。 県 公園に来たことはあると聞いている。 参加者4 野球場にフェンスをつくるとき反対した。(パン屋の交差点前にある洞峰公園の)モニュメントに7000万円かかったと聞いている。(パークPFIができなくなると不足すると説明があった)6000万円の根拠は何か。バランスシートを出してほしいと言っても長大は出してくれない。あろうことか、(パークPFI事業を)トライアンドエラーでやると言っている。できない場合は現状復帰で芝生にして返すと言う。40年かかかってできた公園をどうしてくれるんだと思う。 県 野球場のフェンスは、野球場は有料、お金をとって利用する施設なので、適正な管理運営を行うためにフェンスで囲った。モニュメントについては手元に資料がないので(7000万円かどうか)分からない。(パークPFI事業者の)洞峰わくわく創造グループの事業がトライアンドエラーというは、失敗を前提にしているとは理解していない。小さいエラーを、管理運営しながら、より良い管理運営方法を見出していくという意味だと理解している。 参加者5 (7月2日の)1回目の説明会に参加した。(4回目までの)1カ月間でいろいろな意見が出た。それに対して答えを聞かせていただけるかなと思っていたが、無かった。残念に思う。(計画を)白紙に戻して、原点から考えてほしいと提案する。近隣住民の意見を聞く前に、計画がどんどん進んでいった。民主主義のルールを破った計画だと思っている。都市公園の役割について、国交省が4項目を挙げている。一つ目は、良好な都市環境を提供すること。地球温暖化の防止やヒートアイランド現象の緩和、生物多様性の保全による良好な都市環境の提供は、国家的な課題だとある。(今回の計画は)逆行する計画で、国家的考えに背いたことになる。二つ目は、都市の安全性を向上させ、地震などの災害から市民を守ること。11年前の東日本大震災の時(洞峰公園の)この体育館は福島からの避難者で埋まっていた。前回の反省をし、防災機能をもっていただきたい。三つ目は、市民の活動の場、憩い場を形成すること。健康づくりや、子供たちの将来への役割がこの公園にはある。(グランピング施設を囲う)塀をつくって、塀の中と外をつくるというのは、貧困家庭の子供たちが6人に1人いるということを考えた時、そういう子の気持ちになって1メートル80センチの塀を眺めたとき、どう思うか、大人の見識が問われる。四つ目は、豊かな地域づくり、地域の活性化に不可欠であること。地域の歴史的資源を活用しながら人を呼び入れていくのが主題になるが、つくばは何もないところに研究学園都市をつくった。洞峰公園をつくった時のエンブレムは、鳥の顔やトンボの絵、魚の絵だ。自然環境を守っていくんだという、先人たちがつくったレガシーかと思っている。(洞峰公園は)開園から50年経てば登録文化財の資格が得られる。(今回の計画は)それを自ら手放してしまうことになる。市民からしたら、どう考えても許しがたい。 県 貴重なご意見ありがとうございます。繰り返しになるが、説明会とアンケート調査でさまざな意見を頂戴して、立ち止まって考えることにしている。都市公園の役割はその通りだ。ただ今回の計画は洞峰公園をがらっと変えることではない。野球場を変えるが、既存の環境は変わらない。 参加者6 何十年も洞峰公園を利用している。大好きな場所だ。グランピング施設やドッグランがつくられるということで、うれしく楽しみにしている。高齢の犬を世話しているので、ドッグランがあるグランピング施設に犬と泊まって、そこで遊ぶことを楽しみにしている。どのくらいで夢がかなうのか、見通しを示してほしい。宿泊費用はどのくらいか。 県 見通しだが、現在、説明会を開き、8月いっぱいアンケートをとる。その結果をもってつくば市と相談上で決めていくので、今のころなんとも言えない。 長大 グランピング施設の料金は柔軟に考えている。素泊まりなら施設によって、ドッグランが付いた施設なら1棟4万円から1.6万円ほど。1棟なので4人で利用すれば、÷(割る)4になる。シニア割や近隣住民の料金設定などは今後考えたい。 参加者7 今回の計画を皆さん、楽しみにしている。子供たちはグランピングの写真を見せただけでわくわくしていた。夜だれもいない公園と、夜、監視する人がいる公園と、どちらが安心か。ここ(説明会)に来ていない人も皆が楽しみにている。洞峰公園の隣に住み、洞峰公園のごみ拾いもしている。長年思っていたことが実現になる。どんどん進めてほしい。 県 ご意見ありがとうございます。 参加者8 今回のプランがどれくらい期待できるのか、永続性があるのか、具体的に聞かせてほしい。 県 県として洞峰公園を将来にわたって持続可能な公園にすることを目指してパークPFI事業者を公募し、事業者から提案をいただき、収支計画を立てた。 参加者8 収支計画の根拠を知りたい。(グランピング施設に)永続的に人が来るか考えないといけない。事業者が撤退する可能性はないのか。 県 事業者は、事業が成立する見込みがあると考えている。10年で一区切り、20年間担保する制度となっている。現段階で撤退は考えていない。 参加者8 安全対策として不審者をどうするかが強調されているが、問題を起こすのは不審者ではなくて、だいたい客。どういう問題を起こすか、データが調べられてると思う。具体的にどういうことを想定しているか。 県 グランピング施設に泊まる方が犯罪を起こす等、グランピング施設で何が問題になったかというのは今のところ把握できていない。 参加者8 犯罪ではなく、全裸で歩くとか、池に飛び込むとか、そういうことに対して、どう対処するのか。 県 つくば警察署と相談を始めているので、軽犯罪の対策の必要があるのか、必要があれば検討していきたい。 参加者9 先ほど、子どもたちはグランピング施設を望んでいるという意見があったが、私の知っている子どもたちは現状の洞峰公園を望んでいる。多くの中高生がランニングしたりしている。多くの観光客が来れば、ランニングする環境が失われる。従来の静かな洞峰公園がなくなってしまっては、つくばの中高生たちは健全な環境を失われてしまう。 県 公園全部を変えようという計画ではない。グランピング18棟は現状の野球場につくる。園路は変わらない。 参加者10 先ほど、夜だれもいない公園と、明るくにぎやかな公園という話があったが、洞峰公園では夜、若い女性が走ったり歩いたりしている。そのことをご存知でおっしゃったのか。そこに酔っ払いが出てきたらどうかと心配する。夜だれもいない公園ではない。だれにとっての魅力向上かということだが、高齢者は車を運転するなと言われて、緑を求めて遠くに行きたくても行けない。緑の中に身を置けるが洞峰公園だ。年寄りにとっての聖域をつぶしてつくるのがグランピングだと思う。 県 だれにとっての魅力向上かは、幅広い利用者であり、近くにお住まいの方から、県民まで、幅広い多くの利用者だ。静かな環境を維持するのは大前提になる。改変するのは一部のエリアだ。 参加者11 息子は公園を通学路として使用している。新事業によって飲酒が許される公園になることを大変心配している。息子は「偶発的に酔っ払いにからまれたら怖い」と話していた。洞峰公園が近隣の学校の通学路や課外授業の学習の場、マラソン大会で使用されていることはご存知か。これからでも遅くないので、近隣の学校の先生や保護者と話し合う機会を持っていただきたい。 県 洞峰公園の中が、通学路や学習の場、マラソン大会で使われていることは知っている。事業者の方で防犯対策を考えている。つくば市の教育委員会と協議をさせていただくことは必要と思っている。 参加者12 飲酒、喫煙反対だ。グランピング施設で飲酒をした人が(グランピングエリアの)外に出ることが心配だ。ビール工房の計画があるが必要性はなにか、ヨーグルト工房じゃだめか。 県 ビール工房は、つくばブルワリーと提携して、レストランで提供することが公園の魅力向上につながるとして計画している。 参加者12 再検討する可能性について伺いたい。 県 さまざまなご意見を伺い、立ち止まって再検討している。 参加者13 娘が3人いる。娘は洞峰公園で育ったといっても過言ではない。今、3人とも東京にいるが、いずれはつくば市に住んで、孫が出来て、洞峰公園で育っていくと思う。(計画は)これで決定なのか。協議会をつくって、住民の声を取り入れて、茨城県としての在り方を探るということはないのか。パークPFI事業者の公募期間は、質問締切から13日しかなかった。(洞峰わくわく創造グループの)3つの会社が集まって協議して提案書を出したということは、決まってたのかなと思う。住民の声をしっかり聞いて、もう一度白紙撤回してやり直した方がいい。 県 説明会を踏まえて、ご意見を8月31日まで集めている。パークPFIの公募は8月から9月の2カ月だった。質問締め切りからは短いが、公募期間は2カ月間。結果として1事業者からの応募だった。 参加者14 洞峰公園から100メートル以内に住んでいる。2日前の夜中、暴走族がぶんぶん走っていた。暴走族は定期的に走っている。(グランピング施設に宿泊するため)4万円払って(柵の中に)押し込められて、暴走族の音を聞きながら、都内から人が来たいと思うだろうか。グランピングは普通、山とか湖とかでやる。洞峰公園から車で23分以内にキャンプ場やバーベキュー場が8カ所もある。ここで、押し込めて、やる必要あるのか。生まれたときから(洞峰公園で)楽しんできたが、お酒を飲んでいる人や酔っぱらっている人を今まで1回も見たことがない。ビール工房ができると、飲んだくれ公園になる。利用者は、学生が通学できて、夜も1人で来て、静かにジョギングできる静かな公園を求めている。車で来て、飲酒して帰る人もいるかもしれない。その辺のことは考えているのか。 県 飲酒について心配の声があることは理解できる。飲食店も同じようなことがある。飲食店と同じ対策を考えている。警察署と相談もしているので対策を考えていきたい。暴走族の音については、分からないでなんともお答えできない。 参加者15 なぜパークPFIを唐突に導入したのか。そこまでして進めたいのは、だれが、何のためにかをはっきりさせてほしい。大井川知事は(説明会での参加者の意見は)反対のための反対で的確な意見が出てない、というようなことを言っていたが、本当にそうか。先ほど洞峰公園は皇居と同じくらいの価値があるという意見があったが、それに準じるものだ。グランピングやドッグランはどこでもやっているので差別化できない。長大は使命と目標でSDGsを標ぼうしている。グローバルに生きていかなくてはならない中で、あの程度のプランしかできないのは情けない。(洞峰公園に)財政問題があるなら、実際どうなのか、お金がないからどうすべきかという議論から始めるべきではないか。これで進めるという乱暴なことは(県は)ゆめゆめしないと思う。 県 民主的に県民の意見を聞くことを行っている。経費縮減と魅力向上を両立させて、限られた予算の中でやっていく。パークPFI事業という国交省の施策そのものを否定されるとなんとも言いようがないが、県としても(国などの)その流れを踏まえてやっていきたい。 参加者16 子供の安全についてだが、飲酒運転のことで懸念がある。公園の外にも通学路が巡っている。しかし飲酒運転はなくなっていない。民間はまだしも、公がビール工房の設置を進めるとか、周りに飲食店がたくさんあるのに、民業を圧迫することを公が進めていいのか。 県 飲酒運転の心配は理解しているが、即、飲酒運転を助長することではない。警察と適切な対応をとりながら進めていく。 参加者17 維持管理費用が財政を圧迫するので6000万円浮かしていきたいということだが、県の施設には指定管理費用が3億円、4億円の施設がいっぱいある。洞峰公園でこういうことをするということは、県としてこのアプローチをすべての指定管理の公園でやっていくということなのか。洞峰公園には体育館やプールなど教育的な施設がある。ヨーグルト工房でなくアルコールをもってくることが、他の青少年の施設に今後あり得る、他の施設も導入するということなら開示していただきたい。洞峰公園だけということならそれも開示していただきたい。つくばだけの話で、県全体に広げないなら、それも示していただきたい。つくばのこの公園だけということなら、地域ともっと話していただきたい。(南側駐車場の拡張による)伐採問題だが、今回、可能な限り伐採しないとおっしゃっているが、具体的にまったく触れていない。アシ原の景観が悪いから切っていくのか、600本よりもっと切っていくのか、調査して中長期的にプランを示してほしい。今回(都市公園法改正でパークPFI制度が設けられたのと合わせて)協議会設置が新たに導入されたことについて、国交省に電話して聞いてみた。「自治体の裁量と見識に任せている」ということだった。(洞峰公園のパークPFI事業の計画によって)地域が分断されたり、行政が分断されたり、(パークPFI事業者の)選定委員会委員が地域と話し合うべきだと言っているのにやっていない。長大はSDGsをポリシーにしている大手の会社。小さい会社の人でも、地域住民に説明したり、調査をするのは当たり前だと言っている。長大は、会社のポリシーに基づいてきちんとしたプランを提示していただきたい。それから、(障害のある子供もない子供も一緒に遊べる)インクルーシブ遊具をグランピングありきで設置するのは間違っている。グランピングとバーターにするものではない。 県 洞峰公園からパークPFIを広げていくのかという質問だが、順番は逆。県の施設の今後の在り方を検討した上で、今後どういった管理運営が望ましいのか、洞峰公園だけでなく、民間の管理運営を活用するのが望ましいということを検討している。各施設に特徴があるので、マーケットサウンディング調査をした上で、民間に任せて効果があるとして進めている。洞峰公園の結果を周りに広げていくということではない。つくば市の担当者とは、マーケットサウンディング調査の段階から情報共有しながら進めてきた。市民に直接意見を聞く方法もあったかと思うが、公園について、公園管理者が利用者からいただいた意見を、利用者の意見とした。つくば市の方はオブザーバーとして参加していだいた。(駐車場の拡張による)伐採する部分の測量ができてないということだが、これから場所を変更しようとしているので、測量や伐採本数もこれから精査する。そうした中で、駐車場拡張予定地の測量に入ってないのは事実。駐車場はさまざまな意見を聞いて、さまざまな選択肢を考えている。インクルーシブ遊具はグランピング施設とバーターではない。今回、グランピング、バーベキュー、インクルーシブ遊具等の提案を受けてそれを採用した。通常のものとしてインクルーシブ遊具に変えていくことやトイレの改修など、ほかにもやるべきところはあるが、できるところからやっていく。 参加者18 説明資料で、にぎわい創出で得た収益は指定管理費に譲渡されるとなっている。収益がなぜ指定管理者に入る仕組みになるのか。 県 にぎわい創出のグランピング、バーベキュー、トレーニングジム、カフェ、駐車場の拡張などにより新たな利用者が増える。それによって指定管理者の収入が増える。結果的に指定管理料が削減できるという意味合い。 参加者18 一番心配しているのは、にぎわい創出でどれだけ収益が上がるのかということだ。儲かったとして、指定管理料に入らない。例えば6000万円稼げなくて1000万円しか収益が無いとすると長大がかぶるのか。 県 端的に言うとその通り。 参加者19 (パークPFIにより)公園が私企業の活動のために使われ、自然環境がどんどんなくなっていく。今、洞峰公園に来ている人たちが離れる。全く悲しい傾向、絶対反対する。 参加者20 事業者選定に至るまでの過程に疑問がある。樹木の伐採について、公募資料によると、昨年8月、環境調査の事項を規定し、事業留意事項の中で、洞峰沼の周辺や外周は環境に留意するよう言っているが、最終的に樹木の伐採を行う事業者を選定している。公募資料で樹林の保全に留意してくださいとしているにもかかわらず、県と事業者の直接交渉の中で樹木の伐採を認めている。県を欺いていることにならないのか。今回、南側駐車場の拡張予定地は公園外周の緩衝帯樹林に該当しないのか。 県 緩衝樹林帯の保全に留意した計画だと理解している。今、事業者の方で、なるべく伐採する樹林を減らそうと考えているので問題ないと考えている。 参加者 賛成でも反対でもない。納得する洞峰公園であることを望んでいる。きちんと話し合える協議会設置をしてほしい。(説明会会場で)賛成意見を述べた人に対しても(参加者が)しっかり聞くこと大切だと思う。(説明会で)攻撃的な雰囲気を感じた。賛成意見も尊重する必要がある。県の行政に対しても(県職員に対する)個人的な人格攻撃が見受けられた。(洞峰公園のパークPFIは)ずさんな事業だと持っている。もう少し話し合うべきと思っているが個人的な攻撃をすることは問題だと思う。質問だが、谷田部総合体育館での説明会の議事録を読むと、具体的にどうするかは、つくば市と相談して決めるとあった。参加者からはアンケートついて「先に妥当性を吟味してから出すべき」「反対意見を書く場所が無い」という要望があった。アンケートのとり方は、信頼性や妥当性があるのか。先に吟味したのかお伺いしたい 県 アンケートの集計は、母数をどれだけ集めれば優位性があるかは今後検討したい。反対と書く欄がないというのは、今回は、賛成、反対の住民投票ではなく、事業計画に対する意見を聞きたいというやっている。 参加者21 大規模修繕にお金がかかる、だからパークPFIを導入しましょうということだが、パークPFIで長大が儲けた場合、大規模修繕費にいくのか。(パークPFIができなくなると6000万円の収入不足が生じるということだが)大規模修繕を県がやるなら、何のためにパークPFIをやるのか。これまで県が独自で修繕していた。(パークPFIによって)6000万円が修繕費としてプールされることはない。長大は大規模修繕の面倒を見ないということなら、(パークPFIを導入する)主旨としておかしい。 県 大規模修繕はあくまで、県が、県の予算で行う修繕を指している。パークPFIで大きな収益を上げた場合、どれだけ儲けたから県に還元しろということではなくて、しっかり運営して、その都度、協議しながら進めていく。6000万円というのは、これまでかかっていた指定管理料から、これからかかる指定管理料を引いて、浮いた分を大規模修繕にあてるということ。今までなかった6000万円が大規模修繕に充てられるということ。(県の)予算の枠組みには指定管理料も大規模修繕も含まれる。予算は県議会の可決で決まるが、これまでと同等の予算が付くとしたら大規模修繕に充てることは可能だ。 参加者22 そもそも法的にグランピング施設が建設できるのか。洞峰公園は都市計画法における第1種中高層住居専用地域。グランピング施設は、建築基準法48条のただし書きの許可を得ると(建設が)認められる。手続きを経て、つくば市の建築審査会に諮問し、許可、不許可となる。つくば市との意思疎通が十分なされてきたか疑問に思っている。(事業者選定にあたっての)質疑が県のホームページで公開されている。事業者は、48条を、いつ、どのように相談したらよいか聞いている。つくば市に確認したところ、昨年9月につくば市に3事業者から確認の問い合わせがあった。そのうちグランピングの相談は1事業者から。その時つくば市からは、特例許可の判断はできないと伝えた。今年4月1日から、長大による管理運営が行われている。特例許可の手続きは何も進んでおらず、これからになるのか。もしつくば市から許可が下りなかったらどのように対応するのか。(収益が)足りない分は値上げになるのか、事業者がかぶるのか。 県 建築審査会という手続きがある以上、つくば市の方で判断できないとの回答は当然だ。建築基準法48条のただし書きは、良好な住環境への対応を適切に行うことなので、事業者も、つくば市は許可を認めていただける可能性が高いという認識だ。仮に市が認めなかった場合、さまざまな選択肢の中で検討していく。県と市の関係において、県が市に特別な働き掛けをすることはない。 参加者22 協議会の設置について、4000人以上の署名を添えた要望書が出されている。洞峰公園の自然を守るよう求める要望書も出されてる。2つの要望書について今の検討状況はどうか。 県 協議会については、アンケートも踏まえて市と相談しながら検討していきたい。協議会は重みのあるものと考えており、どういった人に入っていただくかについて慎重に検討したい。環境影響調査についてはつくば市から要望をいただいている。つくば市や専門家の意見を聞きながら適切に考えていきたい。 参加者23 環境保全に対処しますという話だが、こういうふうにしますということを示していただきたい。例えば、木は切りませんと言いながら、木の数は数えていませんと言う。どんどん変わっていく。具体的に説明していただけないといつまで経っても終わらない。大井川知事は記者会見で住民に丁寧な説明をしていくと言っているが、この程度(の説明)でいいと言われたのか。 県 この説明会をもって納得してほしいということではない。まずは計画を見ていただいて、この件に関して意見をいただきたいということ。アンケートの結果を踏まえて、つくば市と協議するが、強行に決めようということではないのでその辺はご理解いただきたい。 参加者24 駐車場拡大のための木の伐採についてだが、県林政課森づくり推進室が。公園の森づくりを推進している。洞峰公園でも木を大事にすることをやっていただけないかと電話したら、今年から部署が変わった、新しい部署は土木部 都市局 都市整備課 公園緑地担当だと言われた。どんなことを担当しているのか。昨年度まで森づくり推進室が行っていた森づくりの引き継ぎはされてないのか。木を伐採しないで守るような洞峰公園の保全をしていただけないのか。 県 林政課が言っているのは自然公園ではないかと思う。我々がやっているのは都市公園。部署が変わったということはないので、引き継ぎもない。公園緑地グループは我々のグループで間違いない。都市緑地保全法の都市緑地を所管している。 参加者25 指定管理費を6000万円削らなくてはいけないという説明だが、指定管理者は黒字が出るのを嫌う。黒字が出ると指定管理料を減らされるかもしれない。笠松運動公園と、洞峰公園・赤塚公園の指定管理料を比べると、人件費は洞峰公園の方が1.6倍だ。洞峰公園は多過ぎるのではないか。面積は笠松運動公園(56ヘクタール)の半部だ。今までたくさん払い過ぎていたのではないか。洞峰公園の2020年度の人件費は2018年度に比べて多い。2020年度はコロナが始まった年で、施設が閉鎖した時期もあった。なぜ多いのか。 県 2020年度は職員がコロナ対策をしながら公園の管理運営をしていた。 筑波都市整備(洞峰公園の指定管理者) 2020年度は9000万円ぐらい計上した。19年度は8000万円弱なので1000万円くらい増えている。コロナでこの施設(体育館)も閉鎖したが、洞峰公園に務めているスタッフは常勤。閉鎖したから働くのを止めてくださいという職員ではない。常に給料は払い続けていた。(洞峰公園の)スポーツ教室には3000人の参加者がいる。施設を閉鎖した期間は、閉鎖するに当たって、直前に閉鎖が決まるので、一斉に連絡しないといけない。再開するにも直前に決まるので、一斉に連絡しなくてはいけない。現況の職員だけでは手が足りないので、そちらの人件費も計上したので金額が増えている。(閉鎖された期間中、職員が)遊んでいたということではなく、今まで出来なかった作業を行った。受け付けとかの業務とは別の、例えば、洞峰沼のアシの伐採を職員が自ら行った。2週間ぐらいかかった。 参加者25 例えば「ひだまりカフェ」の収益は収支に載ってない。(パークPFI事業でこれからつくる計画の)ビール工房も、安い賃料で貸して、外にいるところに儲けさせることをこれからも続けていくのではないか、疑わしい。 県 新都市記念館の事業は指定管理者に委ねている。賃貸料は適正な単価だと思っている。 参加者26 今年始まった第2次茨城県総合計画の理念は「県民が日本一幸せな県」だ。事業は、硬直的な運営はやらない、地方のことは地方で、とも言っている。説明会ではパークPFIがうまくいかないときの代替案を出していただいた、それは利用料の値上げだ。県の施設は安く設定されている。もう少し(利用料を)上げてもユーザーにご理解いただけると思う。そういう方向にかじを切っていただきたい。全国では、花壇のオーナー制度とか、いろいろ、地道なことをやっている。地道にやっていただきたい。代替案にかじを切っていただくことはできるか。 県 総合計画では、県民の意見を聞きながら、と言っており、今行っている(説明会)ことも一貫している。硬直的な事業運営を止めましょうということも柔軟に対応している。(利用料値上げの)代替案だが、今回お示ししたのは過程の試算だ。利用料は県の条例で単価を定めている。今回、可能性の一つとして、さまざまな選択肢の一つとして提案させていただいた。 参加者27 一番引っかかるのは県民、地域の住民の声を聞かないでパークPFIの計画を立てたこと。パークPFIをやろうということが先にあって、洞峰公園を後付けでもってきたのではないか。そのような印象をもつ。第2次茨城県総合計画では、地域づくりは地域が自主的、主体的に進めるとある。この説明会も順番が逆だ。計画をつくる前に私たちの声を聞いていただきたかった。総合計画の中に、身近な自然環境を保全していくとある。(洞峰公園の)木を切ってにぎわいをつくっていくことが自然環境の保全につながっていくのか。これだけ多くの疑問や不安が出ている。回答はこれから検討していくということだが、計画の見直しや中止も検討の中に含まれているのか。長大は、既存の利用者を意識した公園づくりといっているが、既存の利用者のことをどう考えているのか。説明会や、いろいろな質問、皆の声を聞いてから回答するということだが、いつまでにどのような形で回答するのか。回答したら、どのように私たちの声をフィードバックするのか。アンケートは、賛成、反対でなく、意見を聞く場とおっしゃったが、当然反対意見も出る。間口を広くして真摯に私たちの意見を聞いてほしい。知事が記者会見で、ろくな反対意見がなかったと言ったのは悲しくなる。総合計画では、県民の声を受け止めて、県と住民が一体となって地域づくりを進めていくとうたっているのでその通りにやっていただきたい。 県 アンケートは8月いっぱい受け付ける。つくば市と共有して、できるだけ速やかにホームページ等を通じてお示しする。様々な選択肢を想定しているので、つくば市とも相談した上で進めていきたい。説明会をやったから終わりとは考えていない。 長大 弊社は1980年につくば市内につくば事務所を立ち上げて、つくばに総合研究所を置いている。弊社の社員につくば市民がたくさんいる。弊社の会長もつくば市民。今回の事業提案を着想するにあたって、つくば市民である多くの社員と情報交換して、自分にとってどうしたら使いやすい公園になるのか、ヒヤリングをたくさんさせていただいた。つくば市民の100%が賛成するものではないが、事業をやる側として、そういったことを考えながら提案させていただいた。(今後については)どこが落とし所として一番最適か、茨城県と相談しながら検討していきたい、 長大 公園の使われ方について、現地踏査や関係者、既存の公園利用者にヒヤリングをして、多目的広場、体育館、園路は、ジョギングだとかいろいろな使われ方をしているので、そこはいじってはいけない、野球場は(いじっても)影響が少ないと、このような提案をさせていただいた。 参加者28 既存の洞峰公園の利用者は(新しくつくる)施設ではなくて、静けさ、環境を求めている。ビール工房やグランピング施設が建設されることによって、利用者が洞峰公園に求めているものが失われてしまう。 県 さまざまな考え方あるのでご意見として受け止めたい。環境を壊すことはないということで今の提案を立案している。その辺の配慮は十分された提案かと思っている。 参加者29 スポーツ教室を利用していた。娘に嫌なことがあって、意見箱に入れた。(指定管理者は)その意見を全く無視した。県に、返事がもらえていないと言ったら、初めて(意見を)掲示をした。指定管理者は都合が悪いことは掲示しない。(洞峰公園体育館で回収する)アンケートはどこが受け付けるのか。以前、都内に住んでいた。バーベキュー、カフェ等、都内からわざわざ来ない。テニスコートを増設する計画だが、スクールが利用すると聞いている。一般の人は利用できるのか。先日、娘がテニスコートで転んだ。既存の施設を直すなど、先にやることがもうちょっとある。住民の声を真摯に聞いてほしい。 県 アンケートの取り扱いだが、紙で受け付けているものは、その日の夕方、県庁に送ってもらう。ウェブは県のシステムで受け付ける。アンケートはつくば市と共有する。 参加者30 (パークPFI事業の)詳しいことがなかなか分からなかった。周辺住民にもまだまだ知らない人がいる。まず県民、市民に計画を周知するやり方がおかしい。収支計画がどうなっているのか。安全性や環境調査は、聞けば聞くほどしっかりされていない。子どもたちが自分の時間に遊べなくなったり、この公園が治安の悪化につながっていくなら引っ越そうかなと考えている。周辺住民が利用しなくなるのは、年に1回来るかどうか分からないグランピング利用者より打撃が大きいと思う。近隣住民、利用者の声をしっかりと聞いてほしい。朝昼夜の公園の様子をきちんと自分で見てほしい。 県 こういった場で、よく意見を聞いている。意見を聞きながら検討を進めていきたい。朝昼晩、そこまでは見てないが、今の事業者グループの中には(指定管理者の)筑波都市整備が含まれており、公園利用者の声を聞いている。我々は(筑波都市整備を)信頼している。 参加者31 洞峰公園自体、広域防災拠点の指定を受けている。(パークPFIの)プランに一言も(防災拠点の)問題意識がない。グランピングと聞いて、非常時の対策のために使えるなと思った。東日本大震災のときは体育館が福島の人のためにフル稼働した。50メートルプールに水が蓄えられている。防災拠点の意義を再検討していただきたい、 県 防災の視点が説明では漏れていたが、県の防災計画でも防災拠点に位置付けられ、災害時に使える防災トイレや貯水槽、かまどベンチなどを整備した。グランピングも場合によって災害時に使えると思う。 参加者32 行政として基本のキである市民の声を聞いてから進めるべき。ボタンの掛け違いがあるので、しっかり聞いて進めてほしい。アンケートには(賛成、反対を書く欄がないが)反対と書いてもいいと聞いている。意見だけを書いても、反対と数えなかったことがあったので、反対ということを書いた方がいい。 県 アンケートは自由に書いていい。こういう理由で反対だということも書いていただきたい。 参加者33 説明資料の収益の還元と利害の喪失についてだが、収益の中のどれくらいの割合を還元するのか。大規模修繕に必要だとされる8000万円の積算根拠が不明確だ。昨年度までの実績では年平均いくらになるか。計画は積み上げれば積み上げるほど大きくなるので、実績から8000万円の根拠を明確に示してほしい。長大は説明会で毎回、駐車場台数の数字を訂正しているが、なぜ資料自体を訂正しないのか。 県 数字の根拠は後日改めてホームページで示したい。長大の資料の訂正は、第1回の説明会の直前で気づいた、資料は毎回(説明会開催ごとに)アップデートしていくわけではない。できるだけ多くの人に聞いていただきたいと、説明会を開催している。 参加者34 利用者の声をよく知っている指定管理者が(パークPFI事業者に)入っているということだが、子供たちの利用状況とかスクールとかを分かっている筑波都市整備が(洞峰公園に)アルコールをもってくる。スクールに通わせている保護者や子どもたちにどういうメリットがあるのか。なぜアルコールを(公園に)入れるのか。なんで、と不信感をもってしまう。事業者として説明してほしい。長大の社員はつくば市の住民で、住民の意見をよく聞いてプランつくったというが、40年前、国のプロジェクトで、つくば市全体の緑のネットワークをつくる計画の中で、中核的なものとして洞峰公園がつくられた。にぎわいをつくると儲かると言うが、これが一番最初のボタンの掛け違いだ。長大のような力量のある会社なら、地域住民の調査も、環境調査もできる。市対県という、対立構図で報道されることがあってほしくない。プレスが喜ぶ対立構造にもっていってほしくない。 参加者35 (県や事業者と)けんかしたいとは思ってない。(洞峰公園は)昔からの里山を残した公園なので、樹齢100年くらいの木がたくさんある。木はできるだけ切ってほしくない。10年、20年経ったら芝生にして返すとあるが、森は戻ってこない。 参加者36 (県の説明によると)にぎわいをつくるのは何のためかというと、収益を上げるため。収益を修繕費や管理費に回していくという説明だった。洞峰公園近くに30年住んでいるが、昔は静かな公園だった。今はかなりにぎわっている。特にコロナでもっとにぎわうようになった。これ以上、にぎわいをつくる必要ない。つくば市はグランピングに反対だということなので、洞峰公園の運営管理をつくば市にやらせればいいのではないか。洞峰公園は県民のものだが、私は近くに住んでいる。エゴが強いので、洞峰公園はつくば市のものだと思う。洞峰公園をつくば市に買ってもらえばいいのではないか。 参加者37 グランピング施設はだれのためかというと、長大は茨城県民のためというが、グランピングが好きなわずかな人のためだ。茨城県民のためというのはおかしい。野球場は、無料で子供たちとキャッチボールするのに使えていた。(洞峰公園を含む周辺の自然環境は)県が洞峰公園と赤塚公園の管理をやっていて、ペデストリアンデッキはつくば市が管理をやって、間に産総研と気象研がある。4つがしっかりやってきたから自然が残っている。あの辺、切っちゃいますよと言って、県が切ったら、産総研も切ってもいいのかと思ってしまうかもしれない。気象研も建物を建ててしまうかもしれない。そのようなきっかけになるようなことは止めてほしい。先ほど、アンケートに意見だけでなく「反対」と書いた方がいいという意見あった。一度出したアンケートを出し直して大丈夫か。 県 アンケートを記名でするのは、1人で2通、3通出すのは止めていただきたいということ。記名したアンケートは出し直して大丈夫。計画については、やるという前提で説明させていただいたが、さまざまな意見を聞いてこれから議論していく。様々な選択肢を考えている。(説明会示した計画通り)やることが前提じゃないと受け取っていただいて結構だ。 以上

原発は再開すべきか、脱・廃を目指すべきか 《文京町便り》6

【コラム・原田博夫】ここ数カ月で、原発に関して、方向性の異なる判断(いまだ決定には至っていない)が、国内外で続いている。ここでは、「原発再開」と「脱原発」と区分けしておこう。 日本国内における原発に関する裁判も、方向性は異なっている。まずは、最高裁で6月17日に、東日本大震災による福島第1原発事故の避難者の集団訴訟で、国に責任なしとの判決が出た。そもそも東京電力の賠償責任は確定しているが、2審で判断が分かれた国の責任についての審理である。これは、政府の地震調査研究推進本部が2002年7月に示した「長期評価」だけでは国の法的責任は問えない、という判断である。 しかし、この判決には3対1の少数(反対)意見があり、国の社会的・政治的責任にも言及されている。ともあれこれは、条件付きながらも「原発再開」である。 他方「脱原発」は、東電株主代表訴訟で、東電の当時の経営陣5名に対する22兆円の損害賠償責任を問う裁判(東京地裁)では、4名に対して総額13兆円超の損害賠償額を認めた。判決文では、特に「水密化」(電源設備のある敷地・建物・部屋への段階的な防水・浸水対策)が、造船・潜水技術で古くから確立されていたにもかかわらず、かつ、「長期評価」(2002年7月)と、貞観地震(869年)の津波モデルの知見および予見可能性を無視したことなどに瑕疵(かし)を認めている。 EUタクソノミー、気候変動対応オペ ところで、2022年2月下旬のロシアのウクライナへの軍事侵攻以来、資源エネルギー価格が世界的に上昇している。ロシアは、国際的な経済制裁に対抗すべく、ガスの供給・輸出の締め上げを実際に始めている。それに対抗するにはこの際、原子力の利活用が必要ではないか、という議論が浮上している。「原発再開」の復活である。 そもそも欧州議会では2021年春以降、EUタクソノミー(持続可能なグリーンエネルギーに原発とガスを含める)の事務局原案が公表・議論されてきた。 賛否両論が交錯する中、6月14日の合同委員会(環境委員会と経済金融委員会)では賛成62、反対76だったが、7月6日の本会議では賛成328、反対278、棄権33と逆転し、原発とガスをEUタクソノミーに含めることが決まった。ただし、オーストリアやルクセンブルグは提訴を表明している。ともかく、欧州議会の方針は「原発再開」である。 他方、日銀は、「気候変動対応オペ」を2021年6月以降検討していたが、同年12月、金融機関からの応募を受け付け、24日、資金供給を実施した(複数の地銀への2兆円超)。この制度の期限は2030年度末で、金融機関がこの制度を利用するには、情報開示が条件づけられている。 日銀は、躊躇(ちゅうちょ)しながらも踏み切ったこの政策の狙いを「脱炭素に向けた呼び水」効果だとしている。次回オペのオファーは7月20日である。この政策は、EUタクソノミーに原発、ガスが含まれる以上、結果的には、「原発再開」を推進するだろう。 というわけで、脱炭素と脱原発に向けての政策は、両輪・両立か二律背反かのダッチロール気味である。(専修大学名誉教授)

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