土曜日, 3月 25, 2023
ホーム つくば 地域おこしをみんなの力で【北条宿でコーヒーブレイク】4

地域おこしをみんなの力で【北条宿でコーヒーブレイク】4

つくば市北条の街道沿いにある「北条ふれあい館」は大正末期に建てられた店蔵。2000年まで田村呉服店として現役で商売を営んでいた。現在は北条街づくり振興会が観光案内と無料休憩所をこの場に開設し週末に運営されている。

それは喫茶店なのか?と思うかもしれない。しかし訪れた人々へのもてなしでお茶やコーヒーを振る舞ってくれる。さらに北条米を練り込んだアイス「北条米スクリーム」を買い求めることができる。ここはもう番外でもかまわないので加えてしまおう。

旧呉服店を地域の情報発信地に

「街道筋に発展した町は、江戸時代から続く商業の集積地で、昭和30年代がにぎわいのピークでしたね。確かに、喫茶店というものはここには無かったように記憶しています。なぜと問われたこともなかったけれど、なぜでしょうねえ」

振興会の会長を務める坂入英幸さんは、ふれあい館の近所で眼鏡・時計店を営む北条っ子だ。筑波研究学園都市の概成と市町村合併に伴う地域格差の顕在化、地元の少子高齢化など、地域を取り巻く問題は喫緊と言われながらドラスティックな解決策を見出せないまま現在に至る。

手をこまねいてはいられないと、市商工会の枠組みを超えて地元有志が集まり、町おこし活動を始めた。2007年度に始まり、茨城県のがんばる商店街支援事業にも採択され、北条の商店主だけでなく地域住民や筑波大生にも協力を求め、120人の会員で振興会が立ち上げられた。

ふれあい館で提供されたブレンドコーヒー

震災、竜巻、コロナに折れることなく

人材集結や企画立案は少しずつ形になっていったが、2011年の東日本大震災、12年の竜巻災害で、町は甚大な被害を受け続けた。振興会は折れることなく復興に携わり、観光資源としての町の活用も形になってきたが、2019年から新型コロナウイルスという新たな局面に足を止められた。

震災以前に鉄道が廃線となり、筑波地区は市が唱えるように学園都市の周辺地域として取り残されるポジションとなっていた。公共機関の集積と商業が両立していただけに、元々は飲食業には目のある地域だったが、学園都市中心部とは比較にはならない。坂入会長はこう述べる。

「市にも進言しています。地域格差是正のためのR8(リージョン・エイト、市による周辺市街地活性化事業)にも期待はするけれど、余所の周辺地域はまだスタート地点に立ったばかり。先行してスタートした北条を地域振興のサンプルとして、もっと目を向けてもらいたい」

パン屋、うどん屋、ラーメン店も

類を見ない粘り強さと米の風味を備える北条米スクリーム

北条米スクリームは、地域おこしのシンボルの一つ。北条米を使ったアイスクリームづくりを進めたのは、筑波大生だったそうだが、常識を越えた粘性が災いして「攪拌(かくはん)機が壊れるから製造できない」とも言われた。この粘性の改良の末、北条米の風味を生かした独特の粘りを持つ一品が誕生した。

ふれあい館のいろり端(正しくは集会テーブル)でこれをいただき振興会の人々と談話していると、ちょっとした古民家カフェの雰囲気を味わえる。

「地震と竜巻で、いくつかの歴史ある建築物が解体の憂き目に遭い、空き家問題なども起こっていますが、北条で喫茶店を営むというチャレンジに続いて、町なかに欲しいねと話題にしていたパン屋が2軒、うどん屋も2軒、洋食屋や行列のできるラーメン店が林立しています」と坂入会長は言う。(鴨志田隆之)

終わり

guest
名誉棄損、業務妨害、差別助長等の恐れがあると判断したコメントは削除します。
NEWSつくばは、つくば、土浦市の読者を対象に新たに、認定コメンテーター制度を設けます。登録受け付け中です。

0 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー

注目の記事

最近のコメント

最新記事

7月着工、来年3月ごろ開業へ つくば市旧茎崎庁舎跡地ドラッグストア

ドラッグストアの開業を提案した大和ハウス工業茨城支社(つくば市)を優先交渉権者に決定した、つくば市の旧茎崎庁舎跡地(同市小茎)の利活用について(22年9月26日付)、同市は24日、同茨城支社と23日、30年間の定期借地契約を締結したと発表した。 市公有地利活用推進課によると、今年7月に本格着工し、来年3月ごろまでにオープン予定という。当初、年内オープンを見込んでいたが、コロナ禍で契約締結協議などに時間を要し、開業が約3カ月遅れる見通しだという。 定期借地契約は今年7月1月から2053年6月末までの30年間で、土地賃借料は年約90万円。固定資産税評価額の改定があった時は見直す。 店舗予定地の敷地面積は約2700平方メートル、店舗面積は約1100平方メートル。 周辺住民から要望があった、青果や精肉などの生鮮食品を取り扱うほか、店内に約30平方メートル程度のフリースペースを設け、テーブルといすを置き、来店客が自由に利用できるようにする。さらに敷地内の店外に緑のあるオープンスペースを設け、テーブルといすを置き、来店客がバスを待ったりできるようにする。 茎崎庁舎は2010年4月に閉庁、16年1月に解体され、跡地は更地のままになっていた。(鈴木宏子)

お米を買ってもらい、谷津田を保全 《宍塚の里山》99

【コラム・福井正人】宍塚の里山を構成する重要な環境の一つに谷津田があります。冬にも水が張られた谷津田では、早春、ニホンアカガエルが多数産卵します。カエルが増えると、それを食べるヘビが増え、ヘビが増えるとそれを食べる猛禽(もうきん)類が増えるといった「生き物のつながり」が生まれます。このように、谷津田は生き物の生息域として重要な場所になっています。この環境を守ろうと始めたのが「宍塚米オーナー制」で、今年で25年目を迎えます。 人類が稲作を始めたころ水田が作られたのは、水が手に入りやすい谷津田のような環境だっただろうと言われています。しかし、現代のようなかんがい設備の整った水田耕作では、水が引きにくく、田んぼの形も不揃いで小さく、また周りの木々にさえぎられて日当たりも悪いといった問題があります。さらに、湧き水が入るために水温も低い谷津田の環境は、稲の生育にも作業する人間にとっても不利な状況になっています。 このように、生き物の生育環境としては重要でも、耕作条件としては不利な谷津田での耕作を続けていくためには、いろいろな工夫が必要です。例えば、里山のもつ公益的機能の恩恵を受けている非農家である都市部の市民にもお金や労力を提供していただくことです。私たちの会では、支援としての「宍塚米オーナー制」と労力としての「田んぼ塾」(現在の「自然農田んぼ塾」と「田んぼの学校」)を立ち上げ、谷津田での耕作を維持してきました。 「田んぼの学校」では、たくさんの子どもたちが自然と触れ合い、我々の主食である「お米」がどのように作られるのかを学ぶ場所になっています。 宍塚米のオーナーを募っています 宍塚米オーナー制では、毎年4~9月、谷津田の支援に賛同してくれるオーナーを募り、10月末に谷津田を耕作してくれている宍塚の農家からお米を買い取り、オーナーに発送しています。品種はコシヒカリで、宍塚の里山の猛禽類の象徴サシバにちなんで「宍塚サシバ米」と呼んでいます。

マスクを脱いで巣立ちも 筑波大で4260人の卒業式

筑波大学(つくば市天王台、永田恭介学長)の卒業式・学位授与式が24日、大学会館で行われ、スーツや袴に身を包んだ生徒らが新たな門出の日を迎えた。22年度の卒業・修了者は4260人。マスクの着用については自由で、一部の生徒らはマスクを外して式に臨んだ。 式典は学群が2回と大学院が1回の3回に分けて実施され、永田学長から各学群の代表者に学位記や卒業証書が手渡された。卒業生と修了生のみが参加し、家族や在校生らは会場の様子をライブ配信で視聴する形となった。式典後の祝賀会は開催せず、謝恩会については大学側が自粛を求めた。 永田学長は式辞で、筑波大が東京高等師範学校の創設から数えて150年を迎えたことや、昨年から文部科学省より指定国立大学法人に指定されていることを述べ、「みなさんがそれぞれに新しい挑戦をすることこそが、本学の価値を世界に発信することであり、みなさんに続く後輩たちの活動の幅を広げていく」と激励した。 卒業式で式辞を述べる永田学長 人文・文化学群日本語日本文化学類の鎌田真凜さん(22)は「コロナ禍での生活は、これまでの当たり前を覆すことばかりだった。オンラインが中心となり、友人や先生方と顔を合わせることすら難しくなった時期もあるが、同じ思いや悩みを抱えた仲間がいることが何よりも救いになり、変わり続ける状況の中でも学びを止めることなく進み続けてこられた」と述べ、教職員や地域の人々に支えてくれたことへの感謝の意を伝えた。 式典の前後には、卒業生が在校生や家族らと大学会館脇に咲く桜を背景にして写真を撮影し、喜びを分かち合った。人文・文化学群で西洋史を専攻し、卒業後は就職するという河野太一さんは「時の流れが速く感じ、うまく言葉にできない。対面授業からオンライン授業、オンライン授業から対面授業への切り替えに慣れるのが大変だったので感慨深い。卒業後は仕事と趣味を充実させたい」と話した。人間学群心理学類に所属する女性は「大学院に進学するので実感があまりない。臨床心理士の資格を取り、将来は心理の関係で働くことができれば」と将来の希望を話した。(田中めぐみ)

聖地土浦に「パトレイバー」デザインマンホール デビューを前に市役所で展示

土浦市オリジナルの「機動警察パトレイバー」デザインマンホール15種類が完成し、24日から市役所2階(同市大和町)で展示が始まった。4月9日まで展示したあと、土浦駅周辺道路に設置する。 カプセルトイのアクリル製マンホールキーホルダーも作成、4月下旬からまちかど蔵(同市中央)、きらら館(同市大和町)で販売する。デザインマンホールの情報をSNSで拡散した人には、オリジナルグッズとして紙製コースター(約2000個)を郵送する。 パトレイバーオリジナルキーホルダー 2022年に開催の「機動警察パトレイバー30周年突破記念 in土浦『TV-劇パト2+』展」では全国から約3000人のファンが来場した。根強いファンが多いため、デザインマンホールを設置することで同市を訪れる人を増やし、回遊性や消費を高めるのが狙い。 キャラクターの背景は土浦の風景や名産

記事データベースで過去の記事を見る