土曜日, 5月 4, 2024
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「土浦の花火」~未来へ~《見上げてごらん!》8

【コラム・小泉裕司】天気、風力、風向き良好。佐藤亨・土浦市産業経済部長が参拝した日本で唯一の「気象神社」の御利益なのか(10月16日掲載)、近来まれにみる好条件に恵まれた第91回土浦全国花火競技大会は、「無事」終了した。今回の「無事」は、Safe(安全)に加えて、No problem(問題なし)、All good(すべてよし)、Complete(完璧)、Success(達成)と英訳したいほど、見事な大会だった。 とりわけ、18都道県から出品された89作品すべての打上げが完了し、コロナ禍を含め4年間途絶えていた歴代入賞者一覧に、新たに業者名が追記されたことがうれしいし、未来につなぐ第1歩を刻むにふさわしい大会になったと思う。 出品作品については、全般的に斬新性や話題性というよりも、今年1年の集大成的な作品が多かったように思う。むしろ、そうした秀作・力作の数々が土浦の夜空に集結し、披露されたことそのものが、贅沢(ぜいたく)の極みなのだ。 部門別では、10号玉の部における茨城県勢の安定した完成度が際立った。特に、優勝した山﨑煙火製造所の作品「昇曲付五重芯銀点滅(のぼりきょくつき いつえしんぎんてんめつ)」は、色のコントラストもさることながら、5つの芯と一番外側の輪を加えた6層の同心円が見事に真円を描いた。聞けば30代の花火師の手によるとのこと。 コンダクター役の山﨑智弘社長は「昨年から、競技大会は若手で作り上げようと取り掛かった。諸先輩から継承した技術を若手がどこまでできるのか試してみたかった」と、「攻め」を強調した。「この業界は次の世代にどう伝承させていくかがとても重要」と続けた。 期せずして、最近の若手花火師の活躍に触れた佐々木繁治前大曲商工会議所会頭の言葉が重なる。「若手は勝手には育たない。素晴らしい実績を残した先輩がいて、初めて若手が育つ」。まさに言い得て妙。 創造花火の部では、女性花火師の感性豊かな作品が高評価を得た。特に、私のお気に入りの花火師、芳賀火工の石村佳恵さん(5月14日掲載)の作品「アマビエに願いを込めて☆」が準優勝。表彰式の集合写真では、最前列に安藤真理子土浦市長と横並びに着座。この土浦で石村さんの笑顔を拝見できたことが、とてもうれしい。 3年後は「土浦の花火100年」 山﨑社長は「コロナ禍、たくさんの方々の支えがあり、大曲や土浦で多くの方に応援をいただき感謝の気持ちでいっぱい。来年は挑戦者として謙虚な気持ちで挑みたい」と、てらいのない言葉で結んだ。主催側の大会実行委員会本部長を兼ねる佐藤部長も山﨑社長と同様、「成功体験を大切にしながら、慢心することなく、反省すべきは検証し、未来につなげたい」と、緊褌一番(きんこんいちばん)の決意を語った。 煙火業者や実行委員会の面々のこれまでの様々な努力や苦労は、部外者には計り知れないものがあったと思う。あらためて、「無事」の開催を成し遂げた皆さんに、慰労と祝福の拍手を送りたい。そして、過去に懲りずに、再訪いただいた観客の皆さんには、心からの感謝の念を伝えたい。「これからも、よろしくお願いします」と。 一方、競技部門ごとのあり方や、スタッフの入れ替えに伴う運営の不慣れなど、確かに気になる点もあった。「土浦の花火100年」に向けて、次回以降、本稿でも再確認してみたい。 これも3年ぶり。翌日早朝の清掃活動は、いまだかつてないぐらい、観客の行儀の良さを実感しながら、拍子抜けするほどの短時間で終了。大会から10日が過ぎて、安全対策の看板類も撤去され、桜川沿いの自宅周辺は、晩秋の静寂な情景を取り戻した。本日はこの辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

「土浦の花火」~未来へ~《見上げてごらん!》8

【コラム・小泉裕司】天気、風力、風向き良好。佐藤亨・土浦市産業経済部長が参拝した日本で唯一の「気象神社」の御利益なのか(10月16日掲載)、近来まれにみる好条件に恵まれた第91回土浦全国花火競技大会は、「無事」終了した。今回の「無事」は、Safe(安全)に加えて、No problem(問題なし)、All good(すべてよし)、Complete(完璧)、Success(達成)と英訳したいほど、見事な大会だった。 とりわけ、18都道県から出品された89作品すべての打上げが完了し、コロナ禍を含め4年間途絶えていた歴代入賞者一覧に、新たに業者名が追記されたことがうれしいし、未来につなぐ第1歩を刻むにふさわしい大会になったと思う。 出品作品については、全般的に斬新性や話題性というよりも、今年1年の集大成的な作品が多かったように思う。むしろ、そうした秀作・力作の数々が土浦の夜空に集結し、披露されたことそのものが、贅沢(ぜいたく)の極みなのだ。 部門別では、10号玉の部における茨城県勢の安定した完成度が際立った。特に、優勝した山﨑煙火製造所の作品「昇曲付五重芯銀点滅(のぼりきょくつき いつえしんぎんてんめつ)」は、色のコントラストもさることながら、5つの芯と一番外側の輪を加えた6層の同心円が見事に真円を描いた。聞けば30代の花火師の手によるとのこと。 コンダクター役の山﨑智弘社長は「昨年から、競技大会は若手で作り上げようと取り掛かった。諸先輩から継承した技術を若手がどこまでできるのか試してみたかった」と、「攻め」を強調した。「この業界は次の世代にどう伝承させていくかがとても重要」と続けた。 期せずして、最近の若手花火師の活躍に触れた佐々木繁治前大曲商工会議所会頭の言葉が重なる。「若手は勝手には育たない。素晴らしい実績を残した先輩がいて、初めて若手が育つ」。まさに言い得て妙。 創造花火の部では、女性花火師の感性豊かな作品が高評価を得た。特に、私のお気に入りの花火師、芳賀火工の石村佳恵さん(5月14日掲載)の作品「アマビエに願いを込めて☆」が準優勝。表彰式の集合写真では、最前列に安藤真理子土浦市長と横並びに着座。この土浦で石村さんの笑顔を拝見できたことが、とてもうれしい。 3年後は「土浦の花火100年」 山﨑社長は「コロナ禍、たくさんの方々の支えがあり、大曲や土浦で多くの方に応援をいただき感謝の気持ちでいっぱい。来年は挑戦者として謙虚な気持ちで挑みたい」と、てらいのない言葉で結んだ。主催側の大会実行委員会本部長を兼ねる佐藤部長も山﨑社長と同様、「成功体験を大切にしながら、慢心することなく、反省すべきは検証し、未来につなげたい」と、緊褌一番(きんこんいちばん)の決意を語った。 煙火業者や実行委員会の面々のこれまでの様々な努力や苦労は、部外者には計り知れないものがあったと思う。あらためて、「無事」の開催を成し遂げた皆さんに、慰労と祝福の拍手を送りたい。そして、過去に懲りずに、再訪いただいた観客の皆さんには、心からの感謝の念を伝えたい。「これからも、よろしくお願いします」と。 一方、競技部門ごとのあり方や、スタッフの入れ替えに伴う運営の不慣れなど、確かに気になる点もあった。「土浦の花火100年」に向けて、次回以降、本稿でも再確認してみたい。 これも3年ぶり。翌日早朝の清掃活動は、いまだかつてないぐらい、観客の行儀の良さを実感しながら、拍子抜けするほどの短時間で終了。大会から10日が過ぎて、安全対策の看板類も撤去され、桜川沿いの自宅周辺は、晩秋の静寂な情景を取り戻した。本日はこの辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

土浦全国花火競技大会 5年ぶりフィナーレまで完走

色とりどりの花火が大音響と共に土浦の夜空に戻ってきた。第91回土浦全国花火競技大会(主催・大会実行委員会、委員長・安藤真理子市長)は5日、土浦市佐野子、学園大橋近くの桜川河川敷で開かれ、開催を待ちわびた多くの見物客でにぎわった。 内閣総理大臣賞をかけて花火師が技を競う国内最高峰の大会の一つ。2018年と19年は事故により途中で打ち切り、20年と21年はコロナ禍で中止となった。今年はコロナ対策と安全対策を徹底して、3年ぶりに開催された。 大会は、従来より30分早い午後5時30分に最初の一発が上がり、午後8時過ぎまで約2時間半にわたり、音と光のスペクタクルが繰り広げられた。空高く轟音を伴って打ち上がる10号玉、トリッキーでユニークな形状の楽しめる創造花火、土浦の花火名物といわれる華やかなスターマイン、競技大会参加の93作品、広告花火を加えると100近いプログラムが次々に夜空を染めた。 新型コロナ対策として、有料観覧席の入場者を例年より4割減らし約3万5000席に制限し、入場する際は検温と手指消毒を求め、飲食時以外のマスク着用を徹底した。 18年と19年の事故を教訓に、安全対策として打ち上げ場所付近の立ち入りを規制する保安距離を200メートル確保したほか、一本の花火筒に2つ以上の花火玉を入れて打つ「重ね玉」を取り止めて臨んだ。 待ってましたの観客でごった返す 会場周辺は開催を待ちわびたファンで早々に混雑し、ごった返した。午後3時過ぎにはJR土浦駅から会場に向かう人たちで、桜川左岸の堤防道路に長い行列ができた。屋台の仕込みが始まり、堤防下の河川敷では早々にブルーシートが広げられ、場所取りが始まった。 土浦大橋から学園大橋の間の桜川左岸は桟敷席以外も有料の椅子席となり、堤防道路との間は黒い遮へい幕で花火の打ち上げも見られないようシャットアウト、立ち止まらないよう警備員らが早い時間から交通整理に張り付いた。実行委員会は約2000人で誘導など行う警備体制を敷いた。 生田町のスーパーでは仮設トイレを設け、駐車場を開放した。駐車場にシートを敷いて見物する家族連れなどでごった返した。桟敷席対岸の下高津側では市の用意した駐車場が早々に埋まり、1台3000円が相場の民間の駐車場前にも車列が出来た。 あまりの人出と警備誘導にあきらめ、見通しのきく道路の路肩に座り込んで花火見物する人たちも少なくなかった。11月の花火に「やっぱり寒い。10月開催に戻してほしい」との声も聞かれた。 打ち上げが始まると観客の一部は入場が制限されていた河川敷に入ったが、収拾がつかない状況には至らず、草むらから整然と花火を見上げ、歓声をあげた。ほかに目立ったトラブルもなく大会は終了。軽快なビートの躍動と共に繰り広げられる花火のロックンロールで5年ぶりのフィナーレを迎えた。

待ちわびた土浦の花火まで あと19日《見上げてごらん!》7

【コラム・小泉裕司】今回のコラムは、土浦全国花火競技大会実行委員会への取材を元に、煙火業者と出品作品の両面から、今大会(11月5日午後5時30分~8時)の注目ポイントにアプローチしてみた。 花火愛好者が今、最も注目する業者といえば、8月27日の全国花火競技大会(秋田県大仙市大曲)の部門別で優勝2、優秀賞1と圧倒的な成績で内閣総理大臣賞を受賞したマルゴー(山梨県)だろう。キレのよい色使いが持ち味。土浦では、2007年(第76回)、スターマインの部で優勝、同時に内閣総理大臣賞を受賞している。 土浦と大曲の両大会で同大臣賞を受賞したのは、マルゴーのほか、紅屋青木煙火店(長野県)、野村花火工業、山﨑煙火製造所(いずれも茨城県)の4社のみ。このビッグ4は、各競技大会で常に上位に名を連ねており、今大会もファンの期待を超える作品を打ち上げてくれるに違いない。 今年2月11日、霞ケ浦湖畔で開催した「2大花火競技大会『大曲』『土浦』夢の競演」(土浦全国花火競技大会実行委員会 YouTubeチャンネル)に、雪深い大曲から遠路駆けつけてくれた大曲の小松煙火、北日本花火興業、和火屋、そして10数年ぶりに出品する響屋大曲煙火の4社は、いずれも過去、土浦で部門優勝している強豪。こちらも要チェックだ。 ただし、煙火業者によっては、作品の製作担当がいつも同じとは限らず、社内コンペや順番で割り振られるケースもあるので、企業ブランドや過去の成績という先入観は、いったん脇に置いて、55社各社の得意玉を鑑賞してほしい。 土浦は種目別オープン選手権 花火競技は、10号玉の部、創造花火の部、スターマインの部の3部門に分かれる。10号玉の審査は、開花して4~8秒間の間に、形や色のコントラストの鮮明さなどを見極めて採点するのだが、「四重芯菊(よえしんぎく)」や「五重芯菊(いつえしんぎく)」ともなると、芯の数を数えているうちに花火は消え失せてしまう。 特に五重芯は、私たちの動体視力の限界を超えたと言われているが、今大会45玉のうち史上初となる6玉がエントリーされている。過去4大会連続で五重芯が優勝していることからも、この中から優勝作品が選ばれる可能性は高いが、正円で明瞭な色彩の四重芯であれば高得点で優勝争いに加わることができるかもしれない。 創造花火は、その名のとおり、花火のクリエーティブさを競う競技種目。前もって作品タイトルとコメントを見ておくことで、感性豊かな製作者の人柄を想像しながら、作品をより深く味わうことができる。5号玉(直径15センチ)7発の組み合わせで表現する。 今大会は、四季折々の草花や輝く宝石を表現する作品が多いようだが、はやりのパステルカラーをこれでもかというほど仕込んだ花火が主流ではないかと、想像を膨らませている。 以前は速射連発と言われたスターマインは、時間制限2分30秒、4号玉(直径12センチ)から2.5号玉(同7.5センチ)400発以内と、玉数の多さからも土浦はスターマイン日本一を決める大会と言われている。 全作品音楽付は例年と変わらないが、英文字やカタカナだらけの曲名リスト、タイトルやコメントを読んでも、ストーリーは具体化しない。スターマインは、むしろ余計な先入観を排除した白紙の状態で、各社の「持ち味」を堪能するに限る。 「気象神社に行ってきました」。土浦全国花火競技大会実行委員会本部長を兼ねる土浦市産業経済部長の佐藤亨氏は、休暇を取ってJR高円寺駅近くの「高円寺氷川神社」境内に鎮座する「気象神社」を参拝。無事の開催祈願のお札とお守りを受けてきたとのこと。 日本で唯一のお天気にご利益のある神社として実績があるそうで、必ずや願いがかなうことを信じて、あと19日。本日はこの辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

待ちわびた土浦の花火まで あと19日《見上げてごらん!》7

【コラム・小泉裕司】今回のコラムは、土浦全国花火競技大会実行委員会への取材を元に、煙火業者と出品作品の両面から、今大会(11月5日午後5時30分~8時)の注目ポイントにアプローチしてみた。 花火愛好者が今、最も注目する業者といえば、8月27日の全国花火競技大会(秋田県大仙市大曲)の部門別で優勝2、優秀賞1と圧倒的な成績で内閣総理大臣賞を受賞したマルゴー(山梨県)だろう。キレのよい色使いが持ち味。土浦では、2007年(第76回)、スターマインの部で優勝、同時に内閣総理大臣賞を受賞している。 土浦と大曲の両大会で同大臣賞を受賞したのは、マルゴーのほか、紅屋青木煙火店(長野県)、野村花火工業、山﨑煙火製造所(いずれも茨城県)の4社のみ。このビッグ4は、各競技大会で常に上位に名を連ねており、今大会もファンの期待を超える作品を打ち上げてくれるに違いない。 今年2月11日、霞ケ浦湖畔で開催した「2大花火競技大会『大曲』『土浦』夢の競演」(土浦全国花火競技大会実行委員会 YouTubeチャンネル)に、雪深い大曲から遠路駆けつけてくれた大曲の小松煙火、北日本花火興業、和火屋、そして10数年ぶりに出品する響屋大曲煙火の4社は、いずれも過去、土浦で部門優勝している強豪。こちらも要チェックだ。 ただし、煙火業者によっては、作品の製作担当がいつも同じとは限らず、社内コンペや順番で割り振られるケースもあるので、企業ブランドや過去の成績という先入観は、いったん脇に置いて、55社各社の得意玉を鑑賞してほしい。 土浦は種目別オープン選手権 花火競技は、10号玉の部、創造花火の部、スターマインの部の3部門に分かれる。10号玉の審査は、開花して4~8秒間の間に、形や色のコントラストの鮮明さなどを見極めて採点するのだが、「四重芯菊(よえしんぎく)」や「五重芯菊(いつえしんぎく)」ともなると、芯の数を数えているうちに花火は消え失せてしまう。 特に五重芯は、私たちの動体視力の限界を超えたと言われているが、今大会45玉のうち史上初となる6玉がエントリーされている。過去4大会連続で五重芯が優勝していることからも、この中から優勝作品が選ばれる可能性は高いが、正円で明瞭な色彩の四重芯であれば高得点で優勝争いに加わることができるかもしれない。 創造花火は、その名のとおり、花火のクリエーティブさを競う競技種目。前もって作品タイトルとコメントを見ておくことで、感性豊かな製作者の人柄を想像しながら、作品をより深く味わうことができる。5号玉(直径15センチ)7発の組み合わせで表現する。 今大会は、四季折々の草花や輝く宝石を表現する作品が多いようだが、はやりのパステルカラーをこれでもかというほど仕込んだ花火が主流ではないかと、想像を膨らませている。 以前は速射連発と言われたスターマインは、時間制限2分30秒、4号玉(直径12センチ)から2.5号玉(同7.5センチ)400発以内と、玉数の多さからも土浦はスターマイン日本一を決める大会と言われている。 全作品音楽付は例年と変わらないが、英文字やカタカナだらけの曲名リスト、タイトルやコメントを読んでも、ストーリーは具体化しない。スターマインは、むしろ余計な先入観を排除した白紙の状態で、各社の「持ち味」を堪能するに限る。 「気象神社に行ってきました」。土浦全国花火競技大会実行委員会本部長を兼ねる土浦市産業経済部長の佐藤亨氏は、休暇を取ってJR高円寺駅近くの「高円寺氷川神社」境内に鎮座する「気象神社」を参拝。無事の開催祈願のお札とお守りを受けてきたとのこと。 日本で唯一のお天気にご利益のある神社として実績があるそうで、必ずや願いがかなうことを信じて、あと19日。本日はこの辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

土浦の花火から消える「風物詩」 《吾妻カガミ》143

【コラム・坂本栄】11月5日、桜川畔の「土浦の花火」大会が3年ぶりに開かれることになりました。コロナ禍がまだ残っていることもあり、実行委員長の安藤土浦市長はどうするか迷ったようですが、知恵を絞ったコロナ対策を立て、開催を決めました。そのメニューを聞くと、緊張感が伝わってきます。 河川敷の席取りがなくなる 人が密になるのを避けるため桟敷席の密度を減らすとか、観覧区画の入口で体温を計るとか、おしゃべりを減らすため飲酒はできるだけ控えてもらうとか、いろいろな手を組み合わせるそうです。具体的な対策は、記事「3年ぶり 11月5日開催決定 土浦全国花火競技大会」(9月5日掲載)をご覧ください。 記事には載っていませんが、花火の「風物詩」がいくつか消えるのは残念です。その一つは、有料桟敷席手前の河川敷に向かい、できるだけよい場所を押さえようと、陣取りに走る光景がなくなることです。これまで、パワフルな場所取りの話を聞くと、花火が近づいたことを感じたものですが…。 早い者勝ちだった河川敷の一画は、今年は有料の椅子席になります。密をつくらないようにする対策ですが、椅子席新設で収入を増やす狙いもあるようです。市も考えるものです。 市の大会補助は以前と同じ 土浦市花火対策室長の菊田雄彦さんによると、今年の大会予算は2億2000万円(収入は有料席販売が中心)。市財政からの補助は8500万円、警備要員(警察官と市職員は除く)は450人と、いずれも従来とほぼ同じということ。運営方法はいろいろ変えても、補助金と警備体制は維持されます。 無くなる「風物詩」のもう一つは、桟敷席券の販売風景が消えたことです。以前は、販売日の早朝、霞ケ浦総合公園内の体育館入口に設けられた販売所には、長蛇の列ができました。私は散歩を兼ねてその列を見に行き、桟敷席への思いを聞くのが楽しみでした。これも密を避けるという理由で、今はやりのネット販売に切り替わりました。 土手の露店は2割減の800? 無くなりはしないものの、抑えられる「風物詩」もあります。催事を盛り上げる露店です。花火の帰り、値引きされた焼きソバや焼き鳥を買うのは楽しいものですが、これも密を減らすために、従来の約1000店から約800店になる可能性もあります。 菊田室長によると、土浦橋から桟敷席に向かう土手は露店ゼロになるそうです。桜の古木が連なるアクセス路のお祭りムードは抑えられます。打上げ区画前の桟敷席に向かうとき、気分を高めてくれる露店チェックができなくなるのは残念です。 コロナ禍はいろいろなことを変えました。仕事もパソコンを使い遠隔でやるのが当たり前になりました。花火大会の運営も変わり、「風物詩」が無くなるのは仕方ありません。災い転じて福となす。コロナ禍によって花火大会も洗練された形になります。(経済ジャーナリスト) <参考>花火大会の安全対策については、コラム116「また中止された土浦の花火を考える」(2021年9月20日)で、打上げ場所の話などを取り上げました。

土浦の花火から消える「風物詩」 《吾妻カガミ》143

【コラム・坂本栄】11月5日、桜川畔の「土浦の花火」大会が3年ぶりに開かれることになりました。コロナ禍がまだ残っていることもあり、実行委員長の安藤土浦市長はどうするか迷ったようですが、知恵を絞ったコロナ対策を立て、開催を決めました。そのメニューを聞くと、緊張感が伝わってきます。 河川敷の席取りがなくなる 人が密になるのを避けるため桟敷席の密度を減らすとか、観覧区画の入口で体温を計るとか、おしゃべりを減らすため飲酒はできるだけ控えてもらうとか、いろいろな手を組み合わせるそうです。具体的な対策は、記事「3年ぶり 11月5日開催決定 土浦全国花火競技大会」(9月5日掲載)をご覧ください。 記事には載っていませんが、花火の「風物詩」がいくつか消えるのは残念です。その一つは、有料桟敷席手前の河川敷に向かい、できるだけよい場所を押さえようと、陣取りに走る光景がなくなることです。これまで、パワフルな場所取りの話を聞くと、花火が近づいたことを感じたものですが…。 早い者勝ちだった河川敷の一画は、今年は有料の椅子席になります。密をつくらないようにする対策ですが、椅子席新設で収入を増やす狙いもあるようです。市も考えるものです。 市の大会補助は以前と同じ 土浦市花火対策室長の菊田雄彦さんによると、今年の大会予算は2億2000万円(収入は有料席販売が中心)。市財政からの補助は8500万円、警備要員(警察官と市職員は除く)は450人と、いずれも従来とほぼ同じということ。運営方法はいろいろ変えても、補助金と警備体制は維持されます。 無くなる「風物詩」のもう一つは、桟敷席券の販売風景が消えたことです。以前は、販売日の早朝、霞ケ浦総合公園内の体育館入口に設けられた販売所には、長蛇の列ができました。私は散歩を兼ねてその列を見に行き、桟敷席への思いを聞くのが楽しみでした。これも密を避けるという理由で、今はやりのネット販売に切り替わりました。 土手の露店は2割減の800? 無くなりはしないものの、抑えられる「風物詩」もあります。催事を盛り上げる露店です。花火の帰り、値引きされた焼きソバや焼き鳥を買うのは楽しいものですが、これも密を減らすために、従来の約1000店から約800店になる可能性もあります。 菊田室長によると、土浦橋から桟敷席に向かう土手は露店ゼロになるそうです。桜の古木が連なるアクセス路のお祭りムードは抑えられます。打上げ区画前の桟敷席に向かうとき、気分を高めてくれる露店チェックができなくなるのは残念です。 コロナ禍はいろいろなことを変えました。仕事もパソコンを使い遠隔でやるのが当たり前になりました。花火大会の運営も変わり、「風物詩」が無くなるのは仕方ありません。災い転じて福となす。コロナ禍によって花火大会も洗練された形になります。(経済ジャーナリスト) <参考>花火大会の安全対策については、コラム116「また中止された土浦の花火を考える」(2021年9月20日)で、打上げ場所の話などを取り上げました。

土浦花火大会復活へのシナリオ《見上げてごらん!》6

【コラム・小泉裕司】土浦の秋の風物詩、土浦全国花火競技大会(11月5日午後5時30分~8時)が戻ってくる。安藤真理子市長は5日の記者会見で、「今年の大会を開催する」と力強い声で発表し、大会は3年ぶりの開催に向け、ついにスタートラインに立つことができた。 11月5日まで2カ月。この時期の決定は、国内最高峰の内閣総理大臣賞を贈るにふさわしい安全な大会としての環境整備にめどが立ったということだろうし、参加業者にとっては、競技大会の「特別な作品」の製造に要する時間を考えると、リミットでもあったろう。 コロナ禍、相次いだ花火大会の中止で危機的な経営状況に陥り、事業の継続性や技術の継承の問題が顕在化していた煙火業界だが、18都道県から55業者が参加するとのことで、まずはほっとしている。今年1年の集大成となる土浦大会で、どんな感動と出会えるのか、期待に胸が膨らむ。 ところで、花火大会はお祭りだろうが競技大会だろうが、何よりも安全第一。観客にとっても、花火師にとっても、主催者にとっても安全でなければならない。花火関係者すべての合言葉であると同時に、今大会を開催に導くためのキーワードでもあった。 イベント報道では、今年前半から、決まり文句のように「3年ぶり」の見出しが急増しており、土浦の場合も同様だ。決して間違いではないのだが、どうも違和感がある。実は土浦大会だけが抱えている「安全」上の深刻な事情があるからだ。 2018年、2019年と、2年続いた花火事故による途中中止に加えて、コロナ禍による2年間の取り止めを加えると、競技大会としての成果は4年連続で残せていない。これは太平洋戦争中の5大会に次いで、史実に残る長期の空白となっている。先人が営々と築いてきた競技大会としての伝統を継承するべく、実行委員会には、安全な大会を再構築し、復活させるという、きわめて重い使命が課せられていたのである。 事故対策では、専門家をはじめ関係機関の協力・理解を得ながら安全対策に心血を注ぎ、再起のめどがついた頃、コロナ対策で出鼻をくじかれた。通常でも大会開催までの準備はほぼ1年を要する土浦市最大のイベントに、未経験の大きな課題が2つも加わっている。それでもこの高い壁を乗り越えなければ、土浦の花火の未来はないのだ。 <具体的な課題対策は、本サイトの記事「3年ぶり 11月5日開催決定 土浦全国花火競技大会」(9月5日掲載)をご覧ください> ウィズコロナの花火鑑賞 さて今年、私が鑑賞した花火大会は、県内外合わせて2桁に到達したが、心がけているのはコロナ対策である。観覧席、道路や駅など人混みでの距離感が気になる空間では、「時差式発光花火」(4月17日掲載の本コラム)にあやかって、遅めの会場退出や電車予約など時間差で「密」回避策をとっている。 同様の行動パターンをされる方は、結構多いように感じている。一方で、観覧席に持ち込んだテーブルいっぱいに、弁当や酒類を広げて、声を張り上げ宴会を楽しむ観客も少なくない。 花火の楽しみ方は人それぞれでよいのだが、アルコールが進めば、その後訪れるトイレ行列。打ち上げ中にもかかわらず、千鳥足で観客の面前を横切り、花火師の魂の1発を背中で鑑賞する。今年に限り、こうしたお作法はいったん封印をいただき、土浦の夜空を見上げて、珠玉の「全89作品」を見尽くしてみませんか。 もしかすると、苦虫をかみつぶしたようなお顔のお客さんが、お隣でにらんでいるかも知れませんよ。本日はこの辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

土浦花火大会復活へのシナリオ《見上げてごらん!》6

【コラム・小泉裕司】土浦の秋の風物詩、土浦全国花火競技大会(11月5日午後5時30分~8時)が戻ってくる。安藤真理子市長は5日の記者会見で、「今年の大会を開催する」と力強い声で発表し、大会は3年ぶりの開催に向け、ついにスタートラインに立つことができた。 11月5日まで2カ月。この時期の決定は、国内最高峰の内閣総理大臣賞を贈るにふさわしい安全な大会としての環境整備にめどが立ったということだろうし、参加業者にとっては、競技大会の「特別な作品」の製造に要する時間を考えると、リミットでもあったろう。 コロナ禍、相次いだ花火大会の中止で危機的な経営状況に陥り、事業の継続性や技術の継承の問題が顕在化していた煙火業界だが、18都道県から55業者が参加するとのことで、まずはほっとしている。今年1年の集大成となる土浦大会で、どんな感動と出会えるのか、期待に胸が膨らむ。 ところで、花火大会はお祭りだろうが競技大会だろうが、何よりも安全第一。観客にとっても、花火師にとっても、主催者にとっても安全でなければならない。花火関係者すべての合言葉であると同時に、今大会を開催に導くためのキーワードでもあった。 イベント報道では、今年前半から、決まり文句のように「3年ぶり」の見出しが急増しており、土浦の場合も同様だ。決して間違いではないのだが、どうも違和感がある。実は土浦大会だけが抱えている「安全」上の深刻な事情があるからだ。 2018年、2019年と、2年続いた花火事故による途中中止に加えて、コロナ禍による2年間の取り止めを加えると、競技大会としての成果は4年連続で残せていない。これは太平洋戦争中の5大会に次いで、史実に残る長期の空白となっている。先人が営々と築いてきた競技大会としての伝統を継承するべく、実行委員会には、安全な大会を再構築し、復活させるという、きわめて重い使命が課せられていたのである。 事故対策では、専門家をはじめ関係機関の協力・理解を得ながら安全対策に心血を注ぎ、再起のめどがついた頃、コロナ対策で出鼻をくじかれた。通常でも大会開催までの準備はほぼ1年を要する土浦市最大のイベントに、未経験の大きな課題が2つも加わっている。それでもこの高い壁を乗り越えなければ、土浦の花火の未来はないのだ。 <具体的な課題対策は、本サイトの記事「3年ぶり 11月5日開催決定 土浦全国花火競技大会」(9月5日掲載)をご覧ください> ウィズコロナの花火鑑賞 さて今年、私が鑑賞した花火大会は、県内外合わせて2桁に到達したが、心がけているのはコロナ対策である。観覧席、道路や駅など人混みでの距離感が気になる空間では、「時差式発光花火」(4月17日掲載の本コラム)にあやかって、遅めの会場退出や電車予約など時間差で「密」回避策をとっている。 同様の行動パターンをされる方は、結構多いように感じている。一方で、観覧席に持ち込んだテーブルいっぱいに、弁当や酒類を広げて、声を張り上げ宴会を楽しむ観客も少なくない。 花火の楽しみ方は人それぞれでよいのだが、アルコールが進めば、その後訪れるトイレ行列。打ち上げ中にもかかわらず、千鳥足で観客の面前を横切り、花火師の魂の1発を背中で鑑賞する。今年に限り、こうしたお作法はいったん封印をいただき、土浦の夜空を見上げて、珠玉の「全89作品」を見尽くしてみませんか。 もしかすると、苦虫をかみつぶしたようなお顔のお客さんが、お隣でにらんでいるかも知れませんよ。本日はこの辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

3年ぶり 11月5日開催決定 土浦全国花火競技大会

コロナ対策と安全対策を徹底 第91回土浦全国花火競技大会(同大会実行委員会主催)について、実行委員長の安藤真理子市長は5日の定例記者会見で、11月5日に開催することを決定したと発表した。同大会は2018年と19年は事故により途中で打ち切り、20年と21年はコロナ禍で中止となった。コロナ対策と安全対策を徹底して、3年ぶりに開催する。 安藤市長は「国内最高峰の大会であることから、3年連続で花火師が作品を発表する機会を失うことは日本の伝統文化である花火の技術を継承していくことに大きな影響を及ぼす」などと開催決定の理由を述べ、「大会を復活させなければならない使命を感じている。最後まで絶対成功させるという思いでいる」と強調した。 無料観覧席なくし有料のいす席に 新型コロナ対策として、観覧者が密集するのを防ぐため、打ち上げ会場近くの同市佐野子、学園大橋付近の桜川畔に設置する有料観覧席エリアの入場者を、例年の約8万1000席から今年は約3万5000席と4割に減らす。6800升設置する桟敷席を1升当たり6席から4席に減らすほか、桜川土手の無料の観覧席をなくし、来場者の情報を把握できるよう、すべて有料のいす席とする。例年なら桟敷席で約4万1000人、無料観覧席で約4万人が観覧できるが、今年は桟敷席2万7000人、いす席8000席になる。 さらに、有料観覧席エリア内では飲食の販売を行わず、飲酒は自粛を求める。ただし観覧席に飲食を持ち込むことはできる。一方、例年、大会時は有料観覧席周辺にも路面にたくさんの露店や屋台が並ぶ。同エリア外での飲食販売は実行委員会の規制の対象外という。 有料観覧席に入場する際は、非接触検温計(サーマルカメラ)による検温と手指消毒を求め、発熱者などの入場を制限する。会場では飲食時以外のマスク着用を徹底し、声援を送ったり歓声を上げるなど大声を出さないよう周知する。 帰宅する際は土浦駅が大混雑することから、駅構内の混雑を減らすため、駅西口への入り口を市役所前の大屋根広場1カ所に制限し、時差式で駅に入ってもらう。土浦駅前には土浦警察署のDJポリスが初登場し、ユーモアを交えながら節度ある行動を呼び掛ける予定だという。 ほかに、土浦駅から打ち上げ会場までのシャトルバスは1台当たりの乗車人数を制限する方向で現在、運行事業者の関東鉄道と協議している。 重ね玉を取り止め 安全対策としては18年と19年の事故を教訓に、打ち上げ場所付近の立ち入りを規制する保安距離を、県規程の110メートルから大幅に広くし、200メートル確保する。さらに4号玉の打ち上げでは、一本の花火筒に2つ以上の花火玉を入れて打つ「重ね玉」を取り止め、一本の筒に一つの玉を入れる一筒一発方式とする。 地域経済に影響 安藤市長は開催決定の理由についてほかに、飲食店や宿泊施設、旅行・交通事業者などたくさんの地域経済活動に影響を及ぼすこと、土浦と並ぶ日本三大花火大会の新潟県長岡と秋田県大曲でいずれも今年、3年ぶりに大会が開催されたこと、国の行動制限が行われない見通しであることなどを挙げた。 開催決定にあたっては、安藤市長自ら8月27日の大曲の花火のコロナ対策などを視察し、8月31日、実行委員会役員会を開いて開催を決定したという。 同大会は1925(大正14)年、霞ケ浦海軍航空隊殉職者を慰霊し、関東大震災で疲弊した商店街の復興を願って開催したのが始まり。コロナ禍で中止となった20年、21年は大会に代わり、霞ケ浦でサプライズ花火の打ち上げ(2020年11月3日付)などが催された。 11月5日の第91回大会は、スターマイン、10号玉、創造花火の3部門で競技が行われ、総合優勝者には内閣総理大臣賞が贈られる。3年前は65万人が観覧したが、今年の参加者について市商工観光課は「今のところ判断が付かない」とする。 ◆大会は11月5日(土)午後5時30分に競技開始。有料観覧席のチケット販売は9月中旬ごろ開始予定。料金は、桟敷席が4人で2万2000円、2人1万1000円。椅子席は打ち上げ場所からの距離によって3000円~4000円(金額はいずれも予定、消費税込み)。雨天の場合は同12日(土)または13日(日)に延期される。

「花火は平和の象徴」 越後3大花火 《見上げてごらん!》5

【コラム・小泉裕司】古来、「3」という数字を尊ぶ伝統があるようで「3大〇〇」はその代表格。試しにネットで「#」してみると、「日本3景」「3大名園」「世界3大美人」など国内外を問わず、様々な分野に数多の「3大」が存在することがわかる。花火においてもしかり。「土浦全国花火競技大会」、大曲の「全国花火競技大会」、「長岡まつり大花火大会」の3つを「日本3大花火大会」と称している。 地域限定の「3大花火」もある。新潟県内で屈指の人気を誇り、全国から熱烈なファンが訪れる個性豊かな3つの花火大会を、県民の誇りとして「越後3大花火」と総称している。 日本海が舞台の「ぎおん柏崎まつり海の大花火」(柏崎市)。日本一長い信濃川河川敷が会場の「長岡」。そして、「浅原神社秋季例大祭奉納大煙火(片貝まつり)」(小千谷市)は神社裏手の山場が会場となる。打ち上げ場所を地名に冠して、「海の柏崎」、「川の長岡」、「山の片貝」とも呼ばれている。 まるで夏休みの絵日記に描かれる「3大」テーマのようだ。いずれの大会も、広大な地勢を存分に生かした10号(直径約30センチ)以上の迫力ある大玉花火を連続で打ち上げる演目が魅力。「柏崎」と「長岡」は正3尺玉(直径30センチ)、「片貝」にいたっては正4尺玉(直径40センチ)を打ち上げる。 観覧席を揺らす炸裂(さくれつ)音や、直径600~800メートルともいわれる超巨大な光の開花瞬間は、何もかも忘れられる刹那(せつな)を演出してくれる。もう1つ共通の特徴は、地域固有の歴史や伝統文化を継承するがゆえ、「第〇土曜日」とかではなく、曜日を問わず、開催日を固定していることである。したがって、週末休みの場合は、少し縁遠いのかも知れない。 柏崎から長岡、そして片貝へ さて、前回コラム(7月17日掲載)で予告したように、7月26日、初めて参戦した「柏崎」では3つの衝撃的な花火と初対面した。空中に斜めに放出された花火玉が一度海中に沈み、再び浮上し扇状に開花する「海中花火」。2つ目は、視界に入りきれないほど超ワイドな「尺玉100発一斉打ち上げ×2」。そして、エンディングの「尺玉300連発」のど迫力。 いずれも高度な匠(たくみ)の技に裏打ちされた究極の花火を目の当たりにして、もっと早くに来るべきだったと後悔した次第。 8月3日の「長岡」は3度目の鑑賞となったが、慰霊・復興・平和への祈りの3つが花火大会のテーマだ。長岡大空襲の犠牲者を悼む慰霊の尺玉花火「白菊」3発で幕を開ける。冒頭のタイトル写真は、生涯にわたり大好きな花火大会を追い続けた放浪の天才画家、山下清画伯が戦後、長岡の花火を観たときのつぶやきと、このときの光景を描いた代表作「長岡の花火」(ちぎり絵)のレプリカである。 9月10日には「片貝」を鑑賞する予定。地元の人々が資金を出し合い、成人や還暦、鎮魂・慰霊など人生の節目に打ち上げる奉納花火には、人の思いとともに数々の物語が込められている。これをもって、「越後3大花火」の年間グランドスラム達成となりそうだが、夏休みの宿題提出には間に合わないかも。 ところで皆さん、久しぶりに夏休みの宿題をやってみませんか。テーマは「あなたが思う茨城3大花火とは?」。「#」しても回答は見つかりませんよ。本日はこの辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

「花火は平和の象徴」 越後3大花火 《見上げてごらん!》5

【コラム・小泉裕司】古来、「3」という数字を尊ぶ伝統があるようで「3大〇〇」はその代表格。試しにネットで「#」してみると、「日本3景」「3大名園」「世界3大美人」など国内外を問わず、様々な分野に数多の「3大」が存在することがわかる。花火においてもしかり。「土浦全国花火競技大会」、大曲の「全国花火競技大会」、「長岡まつり大花火大会」の3つを「日本3大花火大会」と称している。 地域限定の「3大花火」もある。新潟県内で屈指の人気を誇り、全国から熱烈なファンが訪れる個性豊かな3つの花火大会を、県民の誇りとして「越後3大花火」と総称している。 日本海が舞台の「ぎおん柏崎まつり海の大花火」(柏崎市)。日本一長い信濃川河川敷が会場の「長岡」。そして、「浅原神社秋季例大祭奉納大煙火(片貝まつり)」(小千谷市)は神社裏手の山場が会場となる。打ち上げ場所を地名に冠して、「海の柏崎」、「川の長岡」、「山の片貝」とも呼ばれている。 まるで夏休みの絵日記に描かれる「3大」テーマのようだ。いずれの大会も、広大な地勢を存分に生かした10号(直径約30センチ)以上の迫力ある大玉花火を連続で打ち上げる演目が魅力。「柏崎」と「長岡」は正3尺玉(直径30センチ)、「片貝」にいたっては正4尺玉(直径40センチ)を打ち上げる。 観覧席を揺らす炸裂(さくれつ)音や、直径600~800メートルともいわれる超巨大な光の開花瞬間は、何もかも忘れられる刹那(せつな)を演出してくれる。もう1つ共通の特徴は、地域固有の歴史や伝統文化を継承するがゆえ、「第〇土曜日」とかではなく、曜日を問わず、開催日を固定していることである。したがって、週末休みの場合は、少し縁遠いのかも知れない。 柏崎から長岡、そして片貝へ さて、前回コラム(7月17日掲載)で予告したように、7月26日、初めて参戦した「柏崎」では3つの衝撃的な花火と初対面した。空中に斜めに放出された花火玉が一度海中に沈み、再び浮上し扇状に開花する「海中花火」。2つ目は、視界に入りきれないほど超ワイドな「尺玉100発一斉打ち上げ×2」。そして、エンディングの「尺玉300連発」のど迫力。 いずれも高度な匠(たくみ)の技に裏打ちされた究極の花火を目の当たりにして、もっと早くに来るべきだったと後悔した次第。 8月3日の「長岡」は3度目の鑑賞となったが、慰霊・復興・平和への祈りの3つが花火大会のテーマだ。長岡大空襲の犠牲者を悼む慰霊の尺玉花火「白菊」3発で幕を開ける。冒頭のタイトル写真は、生涯にわたり大好きな花火大会を追い続けた放浪の天才画家、山下清画伯が戦後、長岡の花火を観たときのつぶやきと、このときの光景を描いた代表作「長岡の花火」(ちぎり絵)のレプリカである。 9月10日には「片貝」を鑑賞する予定。地元の人々が資金を出し合い、成人や還暦、鎮魂・慰霊など人生の節目に打ち上げる奉納花火には、人の思いとともに数々の物語が込められている。これをもって、「越後3大花火」の年間グランドスラム達成となりそうだが、夏休みの宿題提出には間に合わないかも。 ところで皆さん、久しぶりに夏休みの宿題をやってみませんか。テーマは「あなたが思う茨城3大花火とは?」。「#」しても回答は見つかりませんよ。本日はこの辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

花火を観るなら有料観覧席で 《見上げてごらん!》4

【コラム・小泉裕司】今月26日(火)は、3年ぶりに開催される「ぎおん柏崎まつり海の大花火大会」(新潟県柏崎市)への初参戦を予定。今シーズンは、4月末の秋田県大仙市大曲での開幕2連戦(5月14日付コラム)を幕開けに、6月の宮城県亘理町(6月19日付コラム)に続き、アウェー4戦目となる。 新型コロナ感染対策で中止が相次いだ全国各地の花火大会が、「3年ぶり」を合言葉のように次々に開催日程を発表し、観覧席の販売を開始した。このまま夏の花火シーズンに突入すると思いきや、「第7波」がやってきた。喜びもほんのつかの間となってしまうのか、新規感染者数の推移が気にかかる。 さて、花火大会主催者は、花火会場のベストロケーションに有料観覧席を設置するが、人気のある大会の場合、この「チケット」を求めて花火ファンが門前に列をなす。「宿」や「交通手段」とともに「花火旅」の三種の神器だ。 その販売方法は、地元に配慮した現地販売に加えて、遠隔地からも購入可能なネット販売を併用するパターンが多いが、茨城県外の現地販売に並ぶのは現実的に難しい。おのずからネット申し込みとなるが、これも「長岡花火」のような抽選方式もあれば、「大曲花火」のような先着方式もある。 抽選方式には家族や友人名義での複数応募、先着方式の場合は長年培った「瞬札技」を駆使することになるが、それでもアクセスが集中しパソコン画面が停止することもしばしば。過去、購入することができず鑑賞を見送ったこともあるが、今シーズンは幸いにも高勝率に恵まれている。 「プラチナチケット」を眺めながら 一方、茨城県内の花火大会は原則、現地販売に行列することにしている。先日、「いなしき夏祭り花火大会」(稲敷市)の「さじき席券販売」に並んだところ、例年の3倍となる120人が訪れたとのことで準備した整理券がなくなり、事務局が「来年は募集方法を再考したい」というほどの人気。 今月3日の全国花火競技大会(大曲の花火)の場合は、隣県からも訪れた800人が行列したとのニュースを聞いて、ネット販売に回る残席数が気がかりだったが杞憂(きゆう)に終わり、希望の席をゲットすることができ安堵したところだ。 過去、土浦市役所に奉職していた頃は、桟敷席購入のための抽選券配付に早朝から霞ケ浦文化体育会館(土浦市大岩田)に並び、当日知り合った行列仲間とともに当落に一喜一憂したものだ。こうして手に入れた「プラチナチケット」をよなよな眺めながら、大会当日への気分を醸成していくのが私の花火鑑賞の王道であり、この信条は今も変わらない。 こうした花火大会に向けたルーティンがある限り、私の「慢性煙分依存症」の治癒は、ほど遠いようだ。 故三浦春馬さんも土浦花火ファン 明日7月18日、土浦市出身の俳優三浦春馬さん(享年30)の三回忌を迎える。今も全国各地から多くのファンが聖地「土浦」を訪れている。春馬さんの逝去3カ月前に発行した「日本製」(ワニブックス)は、各地のメード・イン・ジャパンを訪ねた雑誌連載を書籍化したものだが、文中、土浦の花火の魅力を語っている。子どもの頃から親しんできた花火を観るために、上京してからも都合のつく限り帰ってきたという。 それぐらい土浦の花火が好きだった春馬さんは、いつも見ていた高台ではなく初めて桜川の河川敷で見たときは心から感動したそうで、「まだ土浦全国花火競技大会を見たことのない方は絶対に足を運んでほしいですし、茨城の誇りを見に来てほしいです!!」とコラムを結んだ。 一度も会場を訪れたことのないあなた、春馬さんの言葉を信じて、今年こそ会場に足を運んで、花火を見上げてみませんか。本日はこの辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

花火を観るなら有料観覧席で 《見上げてごらん!》4

【コラム・小泉裕司】今月26日(火)は、3年ぶりに開催される「ぎおん柏崎まつり海の大花火大会」(新潟県柏崎市)への初参戦を予定。今シーズンは、4月末の秋田県大仙市大曲での開幕2連戦(5月14日付コラム)を幕開けに、6月の宮城県亘理町(6月19日付コラム)に続き、アウェー4戦目となる。 新型コロナ感染対策で中止が相次いだ全国各地の花火大会が、「3年ぶり」を合言葉のように次々に開催日程を発表し、観覧席の販売を開始した。このまま夏の花火シーズンに突入すると思いきや、「第7波」がやってきた。喜びもほんのつかの間となってしまうのか、新規感染者数の推移が気にかかる。 さて、花火大会主催者は、花火会場のベストロケーションに有料観覧席を設置するが、人気のある大会の場合、この「チケット」を求めて花火ファンが門前に列をなす。「宿」や「交通手段」とともに「花火旅」の三種の神器だ。 その販売方法は、地元に配慮した現地販売に加えて、遠隔地からも購入可能なネット販売を併用するパターンが多いが、茨城県外の現地販売に並ぶのは現実的に難しい。おのずからネット申し込みとなるが、これも「長岡花火」のような抽選方式もあれば、「大曲花火」のような先着方式もある。 抽選方式には家族や友人名義での複数応募、先着方式の場合は長年培った「瞬札技」を駆使することになるが、それでもアクセスが集中しパソコン画面が停止することもしばしば。過去、購入することができず鑑賞を見送ったこともあるが、今シーズンは幸いにも高勝率に恵まれている。 「プラチナチケット」を眺めながら 一方、茨城県内の花火大会は原則、現地販売に行列することにしている。先日、「いなしき夏祭り花火大会」(稲敷市)の「さじき席券販売」に並んだところ、例年の3倍となる120人が訪れたとのことで準備した整理券がなくなり、事務局が「来年は募集方法を再考したい」というほどの人気。 今月3日の全国花火競技大会(大曲の花火)の場合は、隣県からも訪れた800人が行列したとのニュースを聞いて、ネット販売に回る残席数が気がかりだったが杞憂(きゆう)に終わり、希望の席をゲットすることができ安堵したところだ。 過去、土浦市役所に奉職していた頃は、桟敷席購入のための抽選券配付に早朝から霞ケ浦文化体育会館(土浦市大岩田)に並び、当日知り合った行列仲間とともに当落に一喜一憂したものだ。こうして手に入れた「プラチナチケット」をよなよな眺めながら、大会当日への気分を醸成していくのが私の花火鑑賞の王道であり、この信条は今も変わらない。 こうした花火大会に向けたルーティンがある限り、私の「慢性煙分依存症」の治癒は、ほど遠いようだ。 故三浦春馬さんも土浦花火ファン 明日7月18日、土浦市出身の俳優三浦春馬さん(享年30)の三回忌を迎える。今も全国各地から多くのファンが聖地「土浦」を訪れている。春馬さんの逝去3カ月前に発行した「日本製」(ワニブックス)は、各地のメード・イン・ジャパンを訪ねた雑誌連載を書籍化したものだが、文中、土浦の花火の魅力を語っている。子どもの頃から親しんできた花火を観るために、上京してからも都合のつく限り帰ってきたという。 それぐらい土浦の花火が好きだった春馬さんは、いつも見ていた高台ではなく初めて桜川の河川敷で見たときは心から感動したそうで、「まだ土浦全国花火競技大会を見たことのない方は絶対に足を運んでほしいですし、茨城の誇りを見に来てほしいです!!」とコラムを結んだ。 一度も会場を訪れたことのないあなた、春馬さんの言葉を信じて、今年こそ会場に足を運んで、花火を見上げてみませんか。本日はこの辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

あれから11年 東北未来芸術花火2022《見上げてごらん!》3

【コラム・小泉裕司】時折フラッシュバックする日帰り旅がある。東日本大震災から2カ月が過ぎた2011年5月の連休明け、地元の復旧作業の合間を縫って、甚大な津波被害を受けた宮城県亘理町荒浜地区を訪れた。 復旧間もない東北新幹線で仙台駅を経由し常磐線を南下、到着したJR亘理駅から歩くこと約1時間。途中目に映る「がれき」の山と被災者宅で活動するボランティアの勇姿は今でも鮮明に思い出される。未体験の現実を目の当たりにして呆然(あぜん)とするだけの自分に無力感を覚え、帰宅した後もしばらくの間は安易に訪れたことへの後悔の念にさいなまれる日々が続いた。 持参したカメラは、物見遊山と見られるのではないかと気がとがめ、一度もバッグから取り出すことはなかった。写真を撮影すればするほど記憶が曖昧になる「写真撮影減殺効果」という心理学の研究成果があるらしい。写真を撮ることが目的となってしまい、実際に体験したことが記憶に残らないというのだ。 逆に言えば、亘理町を訪問した11年前の記憶が今も鮮明なのは、一度もカメラのシャッターボタンを押さなかったことで、「減殺効果」が生じなかったからと言えるのかもしれない。 「茅ケ崎サザン芸術花火」 震災の月命日にあたる6月11日、犠牲者の鎮魂と新型コロナの早期収束を願い、「東北未来芸術花火2022」が亘理町鳥の海公園で開催され、1万人を超える観客が訪れた。この「芸術花火」は全国30カ所以上でツアー型花火大会として開催されており、花火と音楽のコラボによるストーリー性を重視した、1時間ノンストップで展開する花火イベントである。 2009年に国営ひたち海浜公園(ひたちなか市)で開催した「大草原の花火と音楽」から始まったもので、特に2018年の「茅ケ崎サザン芸術花火」(神奈川県茅ケ崎市)では、日本最高峰のバンド「サザンオールスターズ」の名曲と野村花火工業(水戸市)やマルゴー(山梨県)をはじめとする日本花火の「オールスターズ」がコラボし、茅ケ崎海岸に夜空のエンターテインメントショーを見事に演出した。 花火玉の燃えかす「ガラ」拾い 閑話休題、亘理町の花火に話題を戻そう。会場に到着後、震災犠牲者を慰霊する「鎮魂の碑」の前で手を合わせてから観覧席に着いた。当夜は、無風により滞留した煙の合間からしか見えない花火に観客からは落胆の声が聞かれたが、それでも私は頭上を見上げ続けた。雲の上の犠牲者の皆さんには美しい大輪の花火が届いていることを信じながら。 翌日は早起きして、花火会場で行われた「世界一楽しいゴミ拾い」に相棒と2人で参加した。「芸術花火」ではセットとなっている恒例のゴミ拾いイベントだ。時間経過とともに雨量が増す中、マスクや衣服がぬれるのもかまわず黙々と花火玉の燃えかす、いわゆる「ガラ」を拾い集めるボランティア参加者に感動さえ覚えると同時に、短絡的だが「東北人らしさ」を垣間見たような気がした。 花火打ち上げ後、花火師は花火筒の撤去と同時に大きなガラや黒玉(不発玉)を集めるのが通例だが、夜間、小さなガラまで拾い集め切ることはできないため、どこの花火大会でも欠かすことのできない仕上げ作業である。 亘理町との「ご縁」に導かれた今回の花火旅は、荒浜漁港の海鮮丼とカニ汁、アンコウの肝あえで清掃作業の空腹感を満たし、ゴミ拾いイベントの抽選会で当選した豪華なご褒美「牛タンの詰め合わせ」とともに会場を後にした。本日はこの辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

あれから11年 東北未来芸術花火2022《見上げてごらん!》3

【コラム・小泉裕司】時折フラッシュバックする日帰り旅がある。東日本大震災から2カ月が過ぎた2011年5月の連休明け、地元の復旧作業の合間を縫って、甚大な津波被害を受けた宮城県亘理町荒浜地区を訪れた。 復旧間もない東北新幹線で仙台駅を経由し常磐線を南下、到着したJR亘理駅から歩くこと約1時間。途中目に映る「がれき」の山と被災者宅で活動するボランティアの勇姿は今でも鮮明に思い出される。未体験の現実を目の当たりにして呆然(あぜん)とするだけの自分に無力感を覚え、帰宅した後もしばらくの間は安易に訪れたことへの後悔の念にさいなまれる日々が続いた。 持参したカメラは、物見遊山と見られるのではないかと気がとがめ、一度もバッグから取り出すことはなかった。写真を撮影すればするほど記憶が曖昧になる「写真撮影減殺効果」という心理学の研究成果があるらしい。写真を撮ることが目的となってしまい、実際に体験したことが記憶に残らないというのだ。 逆に言えば、亘理町を訪問した11年前の記憶が今も鮮明なのは、一度もカメラのシャッターボタンを押さなかったことで、「減殺効果」が生じなかったからと言えるのかもしれない。 「茅ケ崎サザン芸術花火」 震災の月命日にあたる6月11日、犠牲者の鎮魂と新型コロナの早期収束を願い、「東北未来芸術花火2022」が亘理町鳥の海公園で開催され、1万人を超える観客が訪れた。この「芸術花火」は全国30カ所以上でツアー型花火大会として開催されており、花火と音楽のコラボによるストーリー性を重視した、1時間ノンストップで展開する花火イベントである。 2009年に国営ひたち海浜公園(ひたちなか市)で開催した「大草原の花火と音楽」から始まったもので、特に2018年の「茅ケ崎サザン芸術花火」(神奈川県茅ケ崎市)では、日本最高峰のバンド「サザンオールスターズ」の名曲と野村花火工業(水戸市)やマルゴー(山梨県)をはじめとする日本花火の「オールスターズ」がコラボし、茅ケ崎海岸に夜空のエンターテインメントショーを見事に演出した。 花火玉の燃えかす「ガラ」拾い 閑話休題、亘理町の花火に話題を戻そう。会場に到着後、震災犠牲者を慰霊する「鎮魂の碑」の前で手を合わせてから観覧席に着いた。当夜は、無風により滞留した煙の合間からしか見えない花火に観客からは落胆の声が聞かれたが、それでも私は頭上を見上げ続けた。雲の上の犠牲者の皆さんには美しい大輪の花火が届いていることを信じながら。 翌日は早起きして、花火会場で行われた「世界一楽しいゴミ拾い」に相棒と2人で参加した。「芸術花火」ではセットとなっている恒例のゴミ拾いイベントだ。時間経過とともに雨量が増す中、マスクや衣服がぬれるのもかまわず黙々と花火玉の燃えかす、いわゆる「ガラ」を拾い集めるボランティア参加者に感動さえ覚えると同時に、短絡的だが「東北人らしさ」を垣間見たような気がした。 花火打ち上げ後、花火師は花火筒の撤去と同時に大きなガラや黒玉(不発玉)を集めるのが通例だが、夜間、小さなガラまで拾い集め切ることはできないため、どこの花火大会でも欠かすことのできない仕上げ作業である。 亘理町との「ご縁」に導かれた今回の花火旅は、荒浜漁港の海鮮丼とカニ汁、アンコウの肝あえで清掃作業の空腹感を満たし、ゴミ拾いイベントの抽選会で当選した豪華なご褒美「牛タンの詰め合わせ」とともに会場を後にした。本日はこの辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

四季ごとに打ち上げる 「土浦花火百年の計」商工会議所提言  

土浦全国花火競技大会が4年連続中止となっている状況の中、土浦商工会議所(中川喜久治会頭)は25日、「花火のまち土浦の発展に向けて」と題した提言書をまとめ、安藤真理子市長に手渡した。年間を通して四季ごとに特徴のある花火打ち上げを検討する、土浦花火館を創設するーなどを提言し、長期ビジョン「土浦の花火百年の計」を策定するよう求めている。 会場は現行の桜川河川敷が適地 ①恒久的・安定的に花火競技大会が運営できる会場の設定②年間を通じた花火のまちの創出③花火に関する拠点とネットワークの整備ーの3点を提言している。 会場については、現在の同市佐野子、桜川河川敷は、全国花火競技大会の中でも日本一臨場感がある、駅から会場まで交通アクセスが良いなどから、現在の会場が適地だとした。一方、近年は開催時期に大雨が相次ぐなどしていることから増水対策など改善を図るよう提言している。 一方、長期的な取り組みとして50年先を見据えて、大会会場を買収し市有地化する、会場を防災公園として整備し、花火大会開催時は、打ち上げ場所、観覧席、保安距離区域などの安全を確保することが考えられるとしている。さらに100年先を見据えて、霞ケ浦湖上、土浦港周辺、霞ケ浦総合公園など会場移転の研究を進め、霞ケ浦周辺自治体と連携した広域大会の可能性も研究するよう提言している。 年間を通じた花火のまちの創出については、春夏秋冬と四季ごとの打ち上げを提言し、例えば、春は桜川畔の夜桜と花火が競演する「桜花火」、夏は土浦新港で二尺玉の打ち上げが見られる「キララ花火」、秋は「土浦全国花火競技大会」、冬は水郷イルミネーションとコラボした「ウインターイルミネーション花火」の打ち上げを提言している。 さらにコロナで中止となった花火大会の代わりに20年と21年に市が打ち上げたサプライズ花火を「コロナ禍、密の回避と共に、沈滞した人々の心を元気づけた」と評価し、これを応用し、企業や個人が記念日や祝い事などにプライベート花火を打ち上げられる仕組みをつくる、花火競技大会のライブ配信を継続するなどを提言している。 常設の資料館創設で拠点化 拠点とネットワークの整備については、総合的な情報発信拠点として「土浦花火館」など常設の資料館を設置し、観光スポットになるような、プラネタリウムなどで実物大のバーチャル花火を体験できるコーナーを設けたり、花火に触れ合えるイベントを開いたり、小中学生が花火の歴史や花火の作り方を学んだりする施設の創設を提言している。 ほかに、花火競技大会の運営をサポートするボランティア団体「土浦花火倶楽部」の創設、市の玄関口となる土浦駅前の市役所庁舎壁面への花火プロジェクションマッピングの実施、花火関連事業者の市内誘致、花火に関する土産品、グルメ、家庭用花火などの商品開発支援、インターネットや雑誌などを活用した情報発信の強化などを提言している。 提言は同会議所創立75周年にあたり、25日市内で開かれた通常総会に合わせて発表された。来賓として総会に出席し、提言を受け取った安藤市長は「提言を重く受け止め、先人が築き上げてきた宝をもっと磨き上げて、チャレンジさせていただきたい」などと話した。具体的には、今後検討したいとしている。 毎年秋に開催される土浦全国花火競技大会は、秋田県の大曲、新潟県の長岡と共に「日本三大花火」と称され、県内のほか首都圏各地から例年70万人が訪れる。一方、2018年と19年の大会は事故によりけが人が出て途中で中止、20年と21年は新型コロナの影響で中止となっている。 こうした状況を踏まえ、商工会議所は昨年8月から企画委員会(大山直樹委員長)で検討を重ね、提言に至った。(鈴木宏子)

また中止された土浦の花火を考える 《吾妻カガミ》116

【コラム・坂本栄】11月第1土曜日に予定されていた土浦全国花火競技大会が中止になりました。コロナ禍の収束が読めない今、2カ月先の催事にGOは出せないとの判断です。昨年もコロナ禍を受けて中止。2年前と3年前は事故で途中取り止め。花火好きの私にとって、中止はもちろん事故も残念です。大音量スピーカーで来観者に挨拶できない土浦市長もさぞ残念でしょう。 桟敷で観るのが正しい作法 中止に至った経緯については「無念の中止決定 土浦の花火 第90回記念大会」(9月6日掲載)をご覧ください。土浦の花火は、地域住人の秋の娯楽であるとともに、全国の花火ファンに楽しんでもらう観光事業であり、煙火会社の意匠と技術を競うコンテストでもあります。競技花火は、伊勢神宮の花火(三重県伊勢市、8月上旬)、大曲の花火(秋田県大仙市、8月下旬)もありますが、土浦大会に参加する会社が最も多く、競技花火の締め役を担っています。 大相撲や歌舞伎と同じように、私は土浦の花火を家族や知人と桟敷席で観るようにしています。日本酒とウイスキーを持ち込み、重箱に詰めた肴(さかな)をつまみながら、大音をお腹に感じ、大声で讃(さん)を送る。これが正しい作法です。 湖面にも映る霞ケ浦打ち上げ 2回の事故と2回の中止を機に、土浦の花火について少し考えました。コロナ禍はいずれ収束しますから、大事なのは事故対応です。2年連続して、導火不良で破片が落下、それが地上で燃え、ケガ人も出ました。打ち上げ場所が桜川の土手周辺、観る場所もその近くですから、火薬の塊を数多く上げる花火の性格上、事故ゼロは容易でありません。といって、ヘルメットをかぶって観るというのも無粋です。 そこで、打ち上げ場所と鑑賞場所を少し引き離すため、打ち上げ場所を霞ケ浦に移し、湖岸に桟敷席を設け、そこから鑑賞できるようにしたらどうでしょう。事故防止のために花火と観客の「密」をなくすだけでなく、湖面に映る「逆さ花火」も観られます。 このアイデア、昨年の花火中止を埋め合わせる「サプライズ花火」(日時と場所を明示しない、観てほしいのかそうでないのかわからない、何かおかしなイベント)の形で試行されました。遊覧船がつながれている土浦港付近から約500メート沖に、タテ約10メートル、ヨコ約25メートルの船台を4つ連結して、打ち上げ場所を造ったそうです。時間は30分と正規の5分の1ぐらいでしたが、霞ケ浦まで徒歩10分の私の家からもよく見えました。 秋のほか春夏冬に縮小版を 湖上であれば、不燃片が鑑賞区域に落ちる可能性はほぼゼロですから、安全面では優れています。また、桟敷席を湖畔に設けることも可能です。さらに、霞ケ浦周辺のどこからも観られるメリットもあります。競技花火の審査員が桜川の土手から湖上の船上に移っても、採点に支障はないでしょう。 問題は、常磐線西側(市街地)から同東側(すぐ霞ケ浦)に移すとなると、大会にやって来る車の流れ、打ち上げ場所に向かう人の流れが変わり、交通整理を全面的に見直す必要があることです。そこで提案。秋の花火は事故対策を整えて従来通りとし、将来の場所移転の勉強と練習も兼ねて、縮小版大会を、春、夏、冬、湖上で催したらどうでしょう? 地元住民の楽しみを増やし、全シーズンで観光客を呼び込むために。(経済ジャーナリスト) <後記> 執筆に際しては沼尻健・土浦市花火対策室長に情報を提供してもらいました。

また中止された土浦の花火を考える 《吾妻カガミ》116

【コラム・坂本栄】11月第1土曜日に予定されていた土浦全国花火競技大会が中止になりました。コロナ禍の収束が読めない今、2カ月先の催事にGOは出せないとの判断です。昨年もコロナ禍を受けて中止。2年前と3年前は事故で途中取り止め。花火好きの私にとって、中止はもちろん事故も残念です。大音量スピーカーで来観者に挨拶できない土浦市長もさぞ残念でしょう。 桟敷で観るのが正しい作法 中止に至った経緯については「無念の中止決定 土浦の花火 第90回記念大会」(9月6日掲載)をご覧ください。土浦の花火は、地域住人の秋の娯楽であるとともに、全国の花火ファンに楽しんでもらう観光事業であり、煙火会社の意匠と技術を競うコンテストでもあります。競技花火は、伊勢神宮の花火(三重県伊勢市、8月上旬)、大曲の花火(秋田県大仙市、8月下旬)もありますが、土浦大会に参加する会社が最も多く、競技花火の締め役を担っています。 大相撲や歌舞伎と同じように、私は土浦の花火を家族や知人と桟敷席で観るようにしています。日本酒とウイスキーを持ち込み、重箱に詰めた肴(さかな)をつまみながら、大音をお腹に感じ、大声で讃(さん)を送る。これが正しい作法です。 湖面にも映る霞ケ浦打ち上げ 2回の事故と2回の中止を機に、土浦の花火について少し考えました。コロナ禍はいずれ収束しますから、大事なのは事故対応です。2年連続して、導火不良で破片が落下、それが地上で燃え、ケガ人も出ました。打ち上げ場所が桜川の土手周辺、観る場所もその近くですから、火薬の塊を数多く上げる花火の性格上、事故ゼロは容易でありません。といって、ヘルメットをかぶって観るというのも無粋です。 そこで、打ち上げ場所と鑑賞場所を少し引き離すため、打ち上げ場所を霞ケ浦に移し、湖岸に桟敷席を設け、そこから鑑賞できるようにしたらどうでしょう。事故防止のために花火と観客の「密」をなくすだけでなく、湖面に映る「逆さ花火」も観られます。 このアイデア、昨年の花火中止を埋め合わせる「サプライズ花火」(日時と場所を明示しない、観てほしいのかそうでないのかわからない、何かおかしなイベント)の形で試行されました。遊覧船がつながれている土浦港付近から約500メート沖に、タテ約10メートル、ヨコ約25メートルの船台を4つ連結して、打ち上げ場所を造ったそうです。時間は30分と正規の5分の1ぐらいでしたが、霞ケ浦まで徒歩10分の私の家からもよく見えました。 秋のほか春夏冬に縮小版を 湖上であれば、不燃片が鑑賞区域に落ちる可能性はほぼゼロですから、安全面では優れています。また、桟敷席を湖畔に設けることも可能です。さらに、霞ケ浦周辺のどこからも観られるメリットもあります。競技花火の審査員が桜川の土手から湖上の船上に移っても、採点に支障はないでしょう。 問題は、常磐線西側(市街地)から同東側(すぐ霞ケ浦)に移すとなると、大会にやって来る車の流れ、打ち上げ場所に向かう人の流れが変わり、交通整理を全面的に見直す必要があることです。そこで提案。秋の花火は事故対策を整えて従来通りとし、将来の場所移転の勉強と練習も兼ねて、縮小版大会を、春、夏、冬、湖上で催したらどうでしょう? 地元住民の楽しみを増やし、全シーズンで観光客を呼び込むために。(経済ジャーナリスト) <後記> 執筆に際しては沼尻健・土浦市花火対策室長に情報を提供してもらいました。

無念の中止決定 土浦の花火 第90回記念大会

土浦市最大の観光イベント、11月の全国花火競技大会の中止が決まった。安藤真理子市長が6日の定例記者会見で明らかにした。事故による2018、19年の中途打ち切り、新型コロナ禍による20年の中止に続き、4年連続での打ち上げストップに、安藤市長は「非常に残念」と無念さをにじませた。 土浦市などでつくる大会実行委員会は第90回記念大会となる今回、11月6日開催予定で開催準備を進める一方、新型コロナの感染状況を見極め、ぎりぎりまで開催判断を先伸ばししてきた。しかし、茨城県を含む21都道府県で緊急事態宣言が発出され、ひっ迫する医療現場の状況を踏まえ大会運営に万全を期すことが困難と判断し、中止を決定した。緊急事態宣言が解除されても中止の決定は変わらない。 同市のワクチンの2回目接種状況は、8月30日時点で44.2パーセントと順調に進んでおり、10月の早い段階で希望者の接種終了が見込まれることなどから、開催の準備を進めていた。有料観覧席上限を2万人とするなど新型コロナ対策を強化。19都道府県から55の花火業者が参加を決め、競技大会の出品の種目も決定していたという。 花火業者や開催の関係者である警察や消防、JRなどには誠意もって市から直接中止の報告を行う。 安藤市長は「ぜひ開催したかった。歴史がある土浦の花火競技大会は、たくさんの人が楽しみにしている貴重な地域資源。全国の花火大会再開の先駆けにしたいと準備していた。安全を期す準備を進めていたが非常に残念。苦渋の決断だった」と述べた。 市花火対策室によると、延期も検討したが11月過ぎの気候では安全な花火大会が開催できるか不明であることから断念したという。密を避けるため、2日に分けての開催も検討したが、警備などの負担が増えることや、花火の公正な審査が困難であるとし、中止を決断した。来年開催する場合は、11月の第一週土曜日になる。(伊藤悦子)

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