土曜日, 5月 4, 2024
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どうする?花火旅《見上げてごらん!》18

【コラム・小泉裕司】煙火業界は、あっちの大会、こっちの大会と大忙し。旅行会社の花火ツアーも好調で、各地の花火会場は赤や黄のツアー旗にワッペンを胸に付けた行列が続く。その人混みをかいくぐり、プラチナチケットを手に観覧席に向かう。今回は、コラム5「…越後3大花火」(2022年8月21日掲載)で書いた「海の大花火大会」(新潟県柏崎市)の会場に到着するまでの「どうする?」お話。 午前11時、JR土浦駅改札口に到着するや、「列車事故のため、土浦駅から取手駅間は運転を見合わせています。復旧の見込み時間は不明です」のアナウンス。この告知がトラウマの読者も少なくないはず。 駅員に確認したところ、「1時間以上の遅れ、取手駅から上野駅方面は通常運転」とのこと。本来、11時25分土浦駅発で上野駅へ向かい、12時46分発「とき321号」に乗車。いったん長岡駅で下車し、ホテルへ荷物を置いてから、柏崎市の花火会場に向かう予定。往復乗車券と新幹線特急券は「えきねっと」の「チケットレス」で、在来線特急は紙切符で予約済み。 遅延に慣れない筆者の心臓はバクバク。「さあ、どうする?」。思いついた選択肢は次のとおり。 ① 予約を変更し、運転再開まで土浦駅で待機する。 ② 土浦駅まで送ってくれた家族を呼び戻し、その車で取手駅に向かう。 ➂ ②と同様、家族の車で上野駅に向かう。 ④ 自宅に戻り、新潟県までひとり車で向かう。 ⑤ 中止する。 苦手な長距離ドライブ、しかもひとり 選んだのは、④の往復635キロのドライブひとり旅。花火をあきらめる考えなど毛頭ない。最大の理由は「自己完結」であること。家族の車で自宅に戻り、ガソリンを満タンにして、3本の高速道路をノンストップ、長岡市内まで4時間。宿泊ホテルに駐車後、長岡駅から信越本線で柏崎駅に17時50分到着。会場入りは18時20分。打ち上げ開始19時30分まで1時間の余裕だ。「花火を見る」に限れば、正解だった。 選択肢①の場合は? 新幹線予約を変更しようと土浦駅の駅員にたずねたところ、「ネット予約は駅窓口では対応できない。上野駅に着いたら電話で変更してほしい」と、渡された小さな紙切れには「えきねっとサポートセンター」の連絡先がプリント。早速電話したが話し中。この状況は終日続いた。つながったのは翌朝。かの常磐線は1時間20分後に運転再開したとの後日談だが、これでは上野駅に着いたところで、つながらず路頭(駅構内)に迷っていたに違いない。 車で長岡市に到着後、間に合わなかった信越本線柏崎駅までの特急券を払い戻そうと、並んだ長岡駅の窓口では「到着駅で手続きしてほしい」との案内。「花火大会で混雑する柏崎駅にたらい回し?」と切り返すと、「次の方どうぞ」と完全無視。不快な思いを残し、後日、サポートセンターと土浦駅窓口で払い戻しの手続きを完了。交通費に限っての収支は1,000円ほどの黒字で、苦手な長距離ドライブは、やはり正解だったのだろう。 以来、新幹線の予約は、割安な「eチケット」ではなく、「紙切符」に限ることにした。利用日間際に届く発券の催促メールが、少々わずらわしいのだが…。本日は、この辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

土浦花火弁当 お披露目

11月4日開催の「第92回土浦全国花火競技大会」で販売される土浦花火弁当がこのほどお披露目された。地元の飲食店が土浦の食材を使って作った料理を、花火の打ち上げ筒に見立てた3段重ねの容器に詰めた花火大会限定の弁当だ。昨年は飲食の制限があり300個ほどしか販売できなかったが、今年はコロナ禍前と同じ3000個の販売を目指す。 今年は日本料理店やレストランなど飲食店6店と1組合が提供する。販売するのは▽ふぐ・あんこうの「喜作」(同市神立中央)▽老舗料亭の「霞月楼」(中央)▽弁当・ケータリング・会食の「さくらガーデン」(宍塚)▽和食の「蓮の庭」(阿見町実穀)▽「寿司の旦兵衛」(大和町)▽つくだ煮とうなぎの「小松屋」(大和町)▽土浦飲食店組合。 土浦のレンコンや霞ケ浦のシラウオなどの地元食材や、常陸牛、アンコウなど茨城の食材をふんだんに使った炊き込みご飯、天ぷら、ローストビーフ、煮物などを提供する。花火大会は肌寒くなる季節に開催されることから、釜めしは観覧席で容器に付いたひもを引っ張ると加熱され熱々の状態で味わうことができるなど心づくしのメニューを用意する。 土浦花火弁当は、飲食店などでつくる「土浦市食のまちづくり推進協議会」(堀越雄二会長が、土浦名物の花火弁当をつくって全国から訪れる見物客に味わってもらおうと2006年から販売を始めた。同弁当部会の嶋田玲子部会長は「食を通して土浦の良さをPRしていきたい」と意気込みを話す。市観光協会の中川喜久治会長は「土浦の食材を使って腕によりをかけて提供する。去年はコロナの制約があったが、今年は何とかコロナ禍前に戻って、土浦のお店の力を全国に発信したい」と話す。 弁当の価格は物価高の影響で昨年より若干高くなり、2000円台から4000円台になる見込みという。 ◆花火弁当は事前予約が必要。花火大会当日、桟敷席近くで受け取ることができる。市観光協会のホームページ(HP)と各飲食店のHPで案内し、事前予約を受け付ける。詳しくは電話029-824-2810(市観光協会)へ。

筑波大学医学群発 「花火の力」療法《見上げてごらん!》17

【コラム・小泉裕司】千紫万紅(せんしばんこう)のごとく夜空を彩る打ち上げ花火は、見上げる人の心に「感動」や「癒やし」をもたらしてくれる。この「セラピー効果」は、「花火の力」そのものではないか。 筑波大生が学園祭で花火企画 今回は、筑波大学「雙峰祭(そうほうさい)」の花火イベント、第11回「ゆめ花火」を企画運営する同大医学群学生団体「つくばけやきっず」(構成員38人)の活動を紹介しよう。 「ゆめ花火」は2011年、同大医学系学生サークル「賢謙楽学」と「花火研究会」が共同して、同大付属病院で病気と闘う子どもたちを励まそうと、雙峰祭の後夜祭で花火を打ち上げたのが始まり。同病院小児科で闘病中の子どもたちの活動支援を行う「けやきっず」がこの活動を引継ぎ、今日に至る。 今年は、11月8日午後8時30分から、大学構内「虹の広場」で打ち上げ、観覧場所は後夜祭会場の「石の広場」。「ゆめ花火」60発、ミュージックスターマイン200発を計画している。子供たちには会場内特別ブースで楽しんでもらうという。 子どもたちの描いた絵を花火に 花火の形は、子どもたちが思い思いに描いた絵を夜空に再現するというもので、いわゆる「型物花火」といわれる種類の花火。大きさは4号玉(直径12センチ)を使用するとのこと。 第1回から花火づくりを担当する山﨑煙火製造所(つくば市、山﨑智弘社長)の花火師さんは、原画をできるだけ忠実に再現できるよう熟練の技術を傾注するとのこと。型物花火の難しさは、観客側から意図した形が見えるかがポイント。ひとつのデザインに3発使用するのはそのためだろう。子どもたちが大好きな曲に乗せて打ち上げる工夫も欠かせないという。 花火を見た子どもたちのアンケートには「絵が本物の花火になって最高の思い出だった」「辛い闘病生活だったけど花火を見てまた明日から頑張れる」「涙が出るほど感動した」などと。ご家族からは「娘にも私にも勇気を与えてくれた」などの感想が届いている。 現在、小児科病棟や外来で「絵集め」の真っ最中で、全てをどうにか花火として打ち上げたい!と思わせてくれるものばかりだそうだ。 闘病中の子どもに夢と希望を 「ゆめ花火」にかかる費用は、クラウドファンディング「闘病に励む子どもたちに、笑顔と希望の「ゆめ花火」を!」で募っている。筆者も応じてはいるが、昨今の火薬類や諸経費の価格高騰に対応するためには、募集終了日まで残り15日。あともう一踏ん張りというところ。 代表の穗戸田勇一さん(34)=医学類5年=は「第1回を『花火研究会』側で始めた自分が、今度は『つくばけやきっず』側で再び携わることにも感動している。今年はコロナの落ち着きもあって、たくさんの絵が集まっている。子どもたちに夢と希望を与えられるよう、最後まで精一杯駆け抜けるつもり。皆さんのご支援を心からお願いしたい」と話す。 穗戸田さんは、「花火プロデューサー」として、県内外の花火大会の企画運営にも携わるなど八面六臂(ろっぴ)の忙しい毎日を送る。 30年ほど前、3歳の娘が白血病で入院。脊髄注射など小さな体にはかわいそうすぎて目を背けたくなる辛い治療の3年間を、無菌室で過ごした。打たれ弱い筆者は、明日が見えない不安を抱きながら、下を向いて歩く日々が続いた。 「ゆめ花火」発案者の穗戸田さんが、30年前にワープしてくれていたら、「花火の力」療法で、少しでも前を向くことができていたのかもしれない! ちなみに娘は、医療スタッフのご尽力で寛解に至り、元気でいてくれるのが何より。本日は、この辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

筑波大学医学群発 「花火の力」療法《見上げてごらん!》17

【コラム・小泉裕司】千紫万紅(せんしばんこう)のごとく夜空を彩る打ち上げ花火は、見上げる人の心に「感動」や「癒やし」をもたらしてくれる。この「セラピー効果」は、「花火の力」そのものではないか。 筑波大生が学園祭で花火企画 今回は、筑波大学「雙峰祭(そうほうさい)」の花火イベント、第11回「ゆめ花火」を企画運営する同大医学群学生団体「つくばけやきっず」(構成員38人)の活動を紹介しよう。 「ゆめ花火」は2011年、同大医学系学生サークル「賢謙楽学」と「花火研究会」が共同して、同大付属病院で病気と闘う子どもたちを励まそうと、雙峰祭の後夜祭で花火を打ち上げたのが始まり。同病院小児科で闘病中の子どもたちの活動支援を行う「けやきっず」がこの活動を引継ぎ、今日に至る。 今年は、11月8日午後8時30分から、大学構内「虹の広場」で打ち上げ、観覧場所は後夜祭会場の「石の広場」。「ゆめ花火」60発、ミュージックスターマイン200発を計画している。子供たちには会場内特別ブースで楽しんでもらうという。 子どもたちの描いた絵を花火に 花火の形は、子どもたちが思い思いに描いた絵を夜空に再現するというもので、いわゆる「型物花火」といわれる種類の花火。大きさは4号玉(直径12センチ)を使用するとのこと。 第1回から花火づくりを担当する山﨑煙火製造所(つくば市、山﨑智弘社長)の花火師さんは、原画をできるだけ忠実に再現できるよう熟練の技術を傾注するとのこと。型物花火の難しさは、観客側から意図した形が見えるかがポイント。ひとつのデザインに3発使用するのはそのためだろう。子どもたちが大好きな曲に乗せて打ち上げる工夫も欠かせないという。 花火を見た子どもたちのアンケートには「絵が本物の花火になって最高の思い出だった」「辛い闘病生活だったけど花火を見てまた明日から頑張れる」「涙が出るほど感動した」などと。ご家族からは「娘にも私にも勇気を与えてくれた」などの感想が届いている。 現在、小児科病棟や外来で「絵集め」の真っ最中で、全てをどうにか花火として打ち上げたい!と思わせてくれるものばかりだそうだ。 闘病中の子どもに夢と希望を 「ゆめ花火」にかかる費用は、クラウドファンディング「闘病に励む子どもたちに、笑顔と希望の「ゆめ花火」を!」で募っている。筆者も応じてはいるが、昨今の火薬類や諸経費の価格高騰に対応するためには、募集終了日まで残り15日。あともう一踏ん張りというところ。 代表の穗戸田勇一さん(34)=医学類5年=は「第1回を『花火研究会』側で始めた自分が、今度は『つくばけやきっず』側で再び携わることにも感動している。今年はコロナの落ち着きもあって、たくさんの絵が集まっている。子どもたちに夢と希望を与えられるよう、最後まで精一杯駆け抜けるつもり。皆さんのご支援を心からお願いしたい」と話す。 穗戸田さんは、「花火プロデューサー」として、県内外の花火大会の企画運営にも携わるなど八面六臂(ろっぴ)の忙しい毎日を送る。 30年ほど前、3歳の娘が白血病で入院。脊髄注射など小さな体にはかわいそうすぎて目を背けたくなる辛い治療の3年間を、無菌室で過ごした。打たれ弱い筆者は、明日が見えない不安を抱きながら、下を向いて歩く日々が続いた。 「ゆめ花火」発案者の穗戸田さんが、30年前にワープしてくれていたら、「花火の力」療法で、少しでも前を向くことができていたのかもしれない! ちなみに娘は、医療スタッフのご尽力で寛解に至り、元気でいてくれるのが何より。本日は、この辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

日本の花火大会のルーツは?《見上げてごらん!》16

【コラム・小泉裕司】前回の15「花火を観るなら有料観覧席でⅡ」(6月18日掲載)で紹介した「隅田川花火大会」は、日本最古の花火大会とされている。大会公式HPでは、「両国の川開き」という名称で、享保17年(1732)、大飢饉(ききん)と疫病の流行による犠牲者の慰霊と悪疫退散を祈って江戸幕府8代将軍吉宗が催した水神祭に続き、翌年に両国橋周辺の料理屋が許可を得て花火を上げたことが始まりと解説している。 国内の花火企業約300社が加入する公益社団法人日本煙火協会の平成30年度版「花火入門」でも「通説」と前置きしながら、夏の花火大会のルーツとして紹介している。同様の記事は、様々なメディアで散見するので、このように承知されている読者も多いのではないだろうか。 ところが、「花火入門」の令和元年度版からこの記述は消失し、最新の令和5年度版(6ページ)でも、隅田川での花火鑑賞の記録としては、さらに100年以上前の寛永5年(1628)、浅草寺に来た天台宗の僧・天海を花火でもてなしたという記録にさかのぼり、その後の両国橋架橋により花火の名所となったとある。 記述変更の経緯について、テレビの花火解説でおなじみの日本煙火協会河野晴行専務にたずねたところ、墨田区すみだ郷土文化資料館開館20周年を記念して開催された特別展「隅田川花火の390年」の図録(2018年)に掲載されている同館福澤徹三学芸員の「論考-享保18年隅田川川開開始説の形成過程」を根拠にしたとのこと。 この論考では、過去の膨大な記録を読み解く中で、隅田川での花火の記録は寛永5年が初見であり、享保18年開始説の記録は存在しない。同時に、「享保説」は明治24年から昭和9年までの44年間にわたって3段階の付け加えが行われ、日時的にも根拠のない「創作」であると論じている。今後も有力な新資料が発見されない限り、現在流布している「享保説」を採用することはないとしている。 一方で河野氏は、「享保説を声高に否定するようなことはしない」とも言う。「粋」を信条とする花火師の世界。「眉間にしわを寄せて議論するような野暮(やぼ)は言いなさんな」ということなのだろう。 なお、「疫病」をコレラと表記している解説も一部見られるが、コレラが江戸で流行となったのは、「安政コロリ流行記-幕末江戸の感染症と流言」(白澤社、2021年)によれば、安政5年(1858)であり、これはもう「論外」。 花火見物は「特別な時間」 それにしても、4年ぶりの「隅田川花火」を2週間後にして、「何、無粋なこと言ってんだか」とお思いの読者には、「粋」なお話をひとつ。 両国橋周辺が花火の名所となった江戸時代後期の旧暦5月末から8月末まで、毎日20発ほどの花火が上がっていたそうで、遊び好きな江戸っ子にとって花火見物は堂々と夜遊びができる特別な時間。 1発打ち上げるのに30分以上かかっていたようで、次の花火を待つ闇夜に乗じ、素敵な人に声をかけるなんてこともあったとか。当時の浮世絵に見る川端に憩う女性のファッションで、気合いの入り方が読み取ることができるとも。本日は、この辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

日本の花火大会のルーツは?《見上げてごらん!》16

【コラム・小泉裕司】前回の15「花火を観るなら有料観覧席でⅡ」(6月18日掲載)で紹介した「隅田川花火大会」は、日本最古の花火大会とされている。大会公式HPでは、「両国の川開き」という名称で、享保17年(1732)、大飢饉(ききん)と疫病の流行による犠牲者の慰霊と悪疫退散を祈って江戸幕府8代将軍吉宗が催した水神祭に続き、翌年に両国橋周辺の料理屋が許可を得て花火を上げたことが始まりと解説している。 国内の花火企業約300社が加入する公益社団法人日本煙火協会の平成30年度版「花火入門」でも「通説」と前置きしながら、夏の花火大会のルーツとして紹介している。同様の記事は、様々なメディアで散見するので、このように承知されている読者も多いのではないだろうか。 ところが、「花火入門」の令和元年度版からこの記述は消失し、最新の令和5年度版(6ページ)でも、隅田川での花火鑑賞の記録としては、さらに100年以上前の寛永5年(1628)、浅草寺に来た天台宗の僧・天海を花火でもてなしたという記録にさかのぼり、その後の両国橋架橋により花火の名所となったとある。 記述変更の経緯について、テレビの花火解説でおなじみの日本煙火協会河野晴行専務にたずねたところ、墨田区すみだ郷土文化資料館開館20周年を記念して開催された特別展「隅田川花火の390年」の図録(2018年)に掲載されている同館福澤徹三学芸員の「論考-享保18年隅田川川開開始説の形成過程」を根拠にしたとのこと。 この論考では、過去の膨大な記録を読み解く中で、隅田川での花火の記録は寛永5年が初見であり、享保18年開始説の記録は存在しない。同時に、「享保説」は明治24年から昭和9年までの44年間にわたって3段階の付け加えが行われ、日時的にも根拠のない「創作」であると論じている。今後も有力な新資料が発見されない限り、現在流布している「享保説」を採用することはないとしている。 一方で河野氏は、「享保説を声高に否定するようなことはしない」とも言う。「粋」を信条とする花火師の世界。「眉間にしわを寄せて議論するような野暮(やぼ)は言いなさんな」ということなのだろう。 なお、「疫病」をコレラと表記している解説も一部見られるが、コレラが江戸で流行となったのは、「安政コロリ流行記-幕末江戸の感染症と流言」(白澤社、2021年)によれば、安政5年(1858)であり、これはもう「論外」。 花火見物は「特別な時間」 それにしても、4年ぶりの「隅田川花火」を2週間後にして、「何、無粋なこと言ってんだか」とお思いの読者には、「粋」なお話をひとつ。 両国橋周辺が花火の名所となった江戸時代後期の旧暦5月末から8月末まで、毎日20発ほどの花火が上がっていたそうで、遊び好きな江戸っ子にとって花火見物は堂々と夜遊びができる特別な時間。 1発打ち上げるのに30分以上かかっていたようで、次の花火を待つ闇夜に乗じ、素敵な人に声をかけるなんてこともあったとか。当時の浮世絵に見る川端に憩う女性のファッションで、気合いの入り方が読み取ることができるとも。本日は、この辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

「花火の原理がわかる手持ち花火」販売 火薬研究の第一人者が開発

発光の原理学び興味持って 火薬研究の第一人者で、つくば市在住の松永猛裕さん(62)が、手持ち花火と分光シートをセットにした「花火の原理がわかる手持ち花火Ⅰ 色火剤(いろびざい)」を開発した。分光シートをスマートフォンのカメラに貼り撮影することで、花火がどのような光を発しているか分解して観察できる。夏休みの自由研究や科学実験での活用を想定しているという。7月1日から販売を開始する。 松永さんは産業技術総合研究所の元研究者で、現在も招聘(しょうへい)研究員として研究を続けている。2011年1月に花火研究のベンチャー企業「グリーン・パイロラント」をつくば市東の産総研内に設立した。火薬研究の第一人者としての知見を生かし、同社ではテーマパークで用いる安全性の高い花火の受注開発や、火薬を扱うメーカーでの事故の現象解明などを手掛けてきた。コロナ禍でテーマパークからの注文が減ったことから、一般向けの手持ち花火の開発を始めた。分光シートと花火を組み合わせて観察できるようにした商品は他になく、特許庁に実用新案登録を受けている。 「手持ち花火Ⅰ 色火剤」は、黄、赤、緑、青、紫、ピンクの6色と炎色反応がある元素を入れない花火を加えた7本組が2セット(合計14本)と、分光シート、解説書が入っている。色火剤は、火炎に色を付ける金属化合物のこと。花火には基本的にナトリウム(Na)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、銅(Cu)が使われ、それらが炎色反応によって黄、赤、緑、青の4色に発光する。他の色はこの4色を混ぜ合わせて作り出している。 分光シートで観察すると、ナトリウムを使った黄色の花火は一つの波長の光しか出ない。ストロンチウムやバリウム、銅の炎色反応では複数の光が観測され、すべての花火でナトリウムに由来する黄色の波長が観測される。いろいろな物質の中にナトリウムが微量に混入しているためだという。 火薬の研究、危険と敬遠 現在は、ナトリウムと、ストロンチウムやバリウム、銅の炎色反応の原理の違いについて、大学院レベルでも学ぶことがなく、知る人が少なくなっていると松永さんは話す。研究者も火薬の研究は危険と敬遠しがちで、知識を持つ人が少なくなっている現状があるという。「高校生くらいの方に使ってほしい。花火にはいろんな原理が詰め込まれている。原理を知って花火を見ると、見る目が変わってくる。ワクワク感を大切にしてほしい」と松永さん。手持ち花火で発光の原理を学び、興味を持ってほしいと、教育現場での活用も見込んでいる。 今回発売するのはシリーズ第1弾で、商品名を「手持ち花火Ⅰ」とした。第2弾、第3弾の構想もある。第2弾は花火の輝きを観察するセットで、中に入れる金属粉をアルミ、チタンなど変化させ、その違いを見る。第3弾は酸化剤を変えた花火でどのくらい見え方が変わるか観察するセットだという。 松永さんは1960年、静岡県浜松市生まれ。中学生の頃、東京の大気汚染を目の当たりにし、光化学スモッグの研究をしたいと志を立て、東京大学工学部の反応化学科に入った。しかし、当時研究室に入った3人のうち、光化学スモッグについて研究できるのは1人だけ。1枠を賭けてじゃんけんをしたところ負けてしまい、火薬の研究をすることになった。この研究室は伝統ある火薬研究室で、教えを受けながら爆発性物質の研究を続け、1988年に通産省工業技術院化学技術研究所(現在の産総研)に入所した。高校時代に化学を教わった恩師が旧日本軍の研究所で火薬と毒ガス弾の研究をしており、2000年頃には、毒ガス弾の安全な処理方法の開発研究にも携わったことから、火薬や爆発の研究は導かれた天命と思うようになったという。火薬などの安全研究に携わる国内で数少ない専門家で、著書に『火薬のはなし』(講談社ブルーバックス)などがある。 ◆「花火の原理がわかる手持ち花火Ⅰ 色火剤(いろびざい)」はインターネットで販売。価格は2980円(消費税込)。グリーン・パイロラントの公式オンラインストアはこちら。

花火を観るなら有料観覧席でⅡ 《見上げてごらん!》15

【コラム・小泉裕司】シーズン到来で、2023年の花火事情が見えてきた。隅田川花火のように、コロナ禍を経て数年ぶりの開催に至る大会が増える一方で、資材や火薬そのものの高騰、安全対策への不安などから、開催をあきらめた大会もあると聞く。 開催を決めた土浦や大曲のように、やむなく有料観覧席の値上げで支出の増大に対応する大会もある中、今回のタイトル付けに逡巡(しゅんじゅん)したが、それでも、「主催者おすすめのビューポイントから花火を見上げてほしい」(2022年7月17日付の本コラム)の思いは、揺らぐことはない。 それはさておき、これまで全国の主要な花火大会の魅力を取り上げてきたが、この時期に至っては、遠方の宿泊施設を個人で確保することは困難。旅行会社のツアー頼みも割高感は否めない。ということで、今回は、つくば・土浦方面から日帰り可能な都内および茨城県内の花火大会をラインアップしてみた。 東京編 国は一昨年11月、基本的対処方針を決定し、大規模イベントの開催にあたり、細部の運用は都道府県に委ねた。結果、昨年、土浦をはじめ多くの花火大会が3年ぶりの開催を決める一方、東京都は国の対応への不満から、開催に難色を示し、都内ほとんどの大会が中止となっていた。 そして今年、方針の撤廃に伴い、東京の夏の風物詩「隅田川花火大会」が4年ぶりに帰って来る。7月29日(土)、第1会場(桜橋~言問橋)は、午後7時打上開始、最大5号玉(直径15センチ)。1.5キロ下流の第2会場(駒形橋~厩橋)は、午後7時30分から打上開始、最大3号玉(同9センチ)。打上玉数は2会場合計2万発、第1会場では選抜業者10社による「花火コンクール」も行われる。 間断なき高密な打ち上げが印象に残る花火大会だ。ちなみに、川幅が狭く、観客の安全確保のために定められた「保安距離」が確保困難のため、大玉の打ち上げはない。市民協賛席と呼ばれる有料観覧席の募集はすでに終了したが、ビルや船上など、鑑賞スポットの選択肢の多様さは都会ならでは。道路上、ビルとビル、街路樹の枝の隙間から花火を見上げる「東京人」のたくましさに圧倒される。 東京23区内で、打上総数1万発以上で、これからでも有料観覧席が購入可能な大会をまとめてみた。 開催日 大会名 会 場 打上玉数/煙火業者 7/22(土)19:20 足立花火大会 荒川河畔 1.5万発、北陸火工 7/25(火)19:20 葛飾納涼花火大会 江戸川河畔 2万発、イケブン 8/5(土)19:00 ※対岸同時開催 いたばし花火大会 戸田橋花火大会 荒川河畔 合計1.3万発 ホソヤエンタープライズ 8/5(土)19:15 ※対岸同時開催 江戸川区花火大会 市川市民納涼花火大会 江戸川河畔 合計1.4万発、宗家花火鍵屋 茨城編 4月16日付の本コラムで紹介した「おみたま花火大会」が加わり、さらに分散化した日程は、見る側、打ち上げる側の両者に好都合でもあり、「いばらきの花火暦2023」は、今までにない充実ぶりだ。 開催日 大会名 会 場 打上玉数/煙火業者 7/29(土)19:30 水戸偕楽園花火大会 千波湖畔 5千発、野村花火工業 8/12(土)19:00 とりで利根川大花火 利根川河畔 7千発、山﨑煙火、筑北火工等 9/16(土)18:00 利根川大花火大会 利根川河畔 3万発、野村、山﨑など4社 9/30(土)18:00 大洗海上花火大会 大洗海岸 1.2万発、野村花火 10/7(土)18:00 おみたま花火大会(新) 霞ケ浦湖上 5千発、山﨑煙火 10/21(土)18:00 ちくせい花火大会 小貝川河畔 2万1発、山﨑、森煙火、野村 10/28(土)17:30 常総きぬ川花火大会 鬼怒川河畔 詳細未定(4年ぶり) 11/4(土)17:30 土浦全国花火競技大会 桜川河畔 2万発、55業者(実績) ※昨年開催した「いなしき夏まつり花火大会」(8/19)、「鹿嶋市花火大会」(11/26)は、出稿時点で日程が未発表のため表から除いた。 どの花火に行こうか迷ったときは、土浦全国花火競技大会の結果など参考にして、打ち上げ業者で選ぶのも一興だが、いずれも申し分ない実績を誇ることだけは保証付き。本日は、この辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長) <注>表中の煙火業者は過去の実績であり、あくまでも参考

花火を観るなら有料観覧席でⅡ 《見上げてごらん!》15

【コラム・小泉裕司】シーズン到来で、2023年の花火事情が見えてきた。隅田川花火のように、コロナ禍を経て数年ぶりの開催に至る大会が増える一方で、資材や火薬そのものの高騰、安全対策への不安などから、開催をあきらめた大会もあると聞く。 開催を決めた土浦や大曲のように、やむなく有料観覧席の値上げで支出の増大に対応する大会もある中、今回のタイトル付けに逡巡(しゅんじゅん)したが、それでも、「主催者おすすめのビューポイントから花火を見上げてほしい」(2022年7月17日付の本コラム)の思いは、揺らぐことはない。 それはさておき、これまで全国の主要な花火大会の魅力を取り上げてきたが、この時期に至っては、遠方の宿泊施設を個人で確保することは困難。旅行会社のツアー頼みも割高感は否めない。ということで、今回は、つくば・土浦方面から日帰り可能な都内および茨城県内の花火大会をラインアップしてみた。 東京編 国は一昨年11月、基本的対処方針を決定し、大規模イベントの開催にあたり、細部の運用は都道府県に委ねた。結果、昨年、土浦をはじめ多くの花火大会が3年ぶりの開催を決める一方、東京都は国の対応への不満から、開催に難色を示し、都内ほとんどの大会が中止となっていた。 そして今年、方針の撤廃に伴い、東京の夏の風物詩「隅田川花火大会」が4年ぶりに帰って来る。7月29日(土)、第1会場(桜橋~言問橋)は、午後7時打上開始、最大5号玉(直径15センチ)。1.5キロ下流の第2会場(駒形橋~厩橋)は、午後7時30分から打上開始、最大3号玉(同9センチ)。打上玉数は2会場合計2万発、第1会場では選抜業者10社による「花火コンクール」も行われる。 間断なき高密な打ち上げが印象に残る花火大会だ。ちなみに、川幅が狭く、観客の安全確保のために定められた「保安距離」が確保困難のため、大玉の打ち上げはない。市民協賛席と呼ばれる有料観覧席の募集はすでに終了したが、ビルや船上など、鑑賞スポットの選択肢の多様さは都会ならでは。道路上、ビルとビル、街路樹の枝の隙間から花火を見上げる「東京人」のたくましさに圧倒される。 東京23区内で、打上総数1万発以上で、これからでも有料観覧席が購入可能な大会をまとめてみた。 開催日大会名会 場打上玉数/煙火業者7/22(土)19:20足立花火大会荒川河畔1.5万発、北陸火工7/25(火)19:20葛飾納涼花火大会江戸川河畔2万発、イケブン8/5(土)19:00 ※対岸同時開催いたばし花火大会 戸田橋花火大会荒川河畔合計1.3万発 ホソヤエンタープライズ8/5(土)19:15 ※対岸同時開催江戸川区花火大会 市川市民納涼花火大会江戸川河畔合計1.4万発、宗家花火鍵屋 茨城編 4月16日付の本コラムで紹介した「おみたま花火大会」が加わり、さらに分散化した日程は、見る側、打ち上げる側の両者に好都合でもあり、「いばらきの花火暦2023」は、今までにない充実ぶりだ。 開催日大会名会 場打上玉数/煙火業者7/29(土)19:30水戸偕楽園花火大会千波湖畔5千発、野村花火工業8/12(土)19:00とりで利根川大花火利根川河畔7千発、山﨑煙火、筑北火工等9/16(土)18:00利根川大花火大会利根川河畔3万発、野村、山﨑など4社9/30(土)18:00大洗海上花火大会大洗海岸1.2万発、野村花火10/7(土)18:00おみたま花火大会(新)霞ケ浦湖上5千発、山﨑煙火10/21(土)18:00ちくせい花火大会小貝川河畔2万1発、山﨑、森煙火、野村10/28(土)17:30常総きぬ川花火大会鬼怒川河畔詳細未定(4年ぶり)11/4(土)17:30土浦全国花火競技大会桜川河畔2万発、55業者(実績) ※昨年開催した「いなしき夏まつり花火大会」(8/19)、「鹿嶋市花火大会」(11/26)は、出稿時点で日程が未発表のため表から除いた。 どの花火に行こうか迷ったときは、土浦全国花火競技大会の結果など参考にして、打ち上げ業者で選ぶのも一興だが、いずれも申し分ない実績を誇ることだけは保証付き。本日は、この辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長) <注>表中の煙火業者は過去の実績であり、あくまでも参考

東北花火紀行2023春/大曲~陸前高田 《見上げてごらん!》14

【コラム・小泉裕司】 大曲の花火~春の章~4.29 大会プログラムの一つ、45歳以下20人の花火師による「新作花火コレクション」に出品した山﨑煙火製造所(つくば市)の佐々木恵(けい)さんは、10号玉芯入割物の部で見事初優勝(大会結果)。作品名は「昇曲導付三重芯菊先銀点滅」(筆者撮影)。 筒から打ち出された花火は、「曲」と呼ばれる小さな花を開きながら上昇し、最高点で星が尾を引きながら4つの同心円(外側の円は芯に数えない)を描く菊型花火。消え際に銀色の煌(きら)めきを発する。 山﨑煙火は、昨年の土浦10号玉の部「五重芯銀点滅」で優勝、本年、創業120周年の節目を迎える老舗中の老舗。今や名実ともに不動の地位を確立した現会長の山﨑芳男氏の十八番(おはこ)は、脈々と弟子達に受け継がれ、「多重芯の山﨑」「銀点滅の山﨑」と言われるほど。 その完成度の高さ・安定度では、国内、野村花火工業(水戸市)と双璧をなす。本日、11月4日に土浦全国花火競技大会開催決定との報。茨城勢は今シーズンも盤石の予感。 陸前高田~三陸花火大会~4.30 「春の三陸 奇跡と軌跡」。大会翌日の某全国紙は、「奇跡の一本松」のモニュメントと彩り豊かな花火を重ねた写真を掲載し、再生が進んだ花火会場周辺をこう表した。 2014年、東日本大震災で壊滅的な被害を受けた岩手県陸前高田市を訪れた。近くの山を切り崩した岩や土を被災地域に運ぶベルトコンベアが、はるか高いところを石油パイプラインのように縦横に走る光景に圧倒された。 あれから9年、広大でフラットな海岸沿いは、大きな復興工事が終了し、津波被害を伝える「津波伝承館」や新商店街が整備されるなど、変容した高台からの眺めは、感慨深く、想念を巡らした。 2012年3月、土浦市立真鍋小学校、土浦第二中学校の児童・生徒はじめ40人近くが陸前高田市を訪れ、桜の植樹に参加し、地元住民と交流。真鍋の桜保存会は、県の天然記念物「真鍋の桜」のクローン苗1株を寄贈した。当時の桜は、2年後の2014年に根付いたのを、そして今回、緑の葉が幾重にも生い茂り、順調に育っているのを確認し、ほっとした次第。 大手食品スーパーのカスミ(つくば市)は、小浜裕正前会長のご縁をきっかけに、2011年から復興支援カレンダー「明日暦(あしたごよみ)」による募金活動をスタート。翌年からは、地域を越えた交流活動「陸前高田七夕まつり体験学習」など、陸前高田の復興支援に取り組んできた。 筆者は、暦を初編から複数部入手。職場の壁面に掲示し、月ごと、地元の皆さんの笑顔とメッセージコピーから届く逆エールに励まされたことを思い出す。 「三陸花火」は、こうした被災地支援活動の一つとして、2020年10月から始まった。土浦と大曲両大会で内閣総理大臣賞を受賞した㈱マルゴー(山梨県)が打ち上げを担当。年2回春・秋に開催。今回もコズミック(宇宙)系といわれる得意の時差式花火(筆者撮影)満載のプログラム。 次回は、今年の10月8日、「大曲の花火~秋の章~」の翌日に開催予定。東北花火紀行は、秋の編に続く。 「雨雲が近づいているようです」。大曲の会場入口で遭遇した花火鑑賞士仲間の情報は、冷雨で体の芯まで凍えながら見た1年前を想起。昨年、実行委員会本部長が参拝し、無事終了した土浦の実績(昨年11月20日掲載コラム)を踏まえ、天気の神様「気象神社」(東京高円寺)のお守りを持参したのだが、不用意にもホテルに忘れたことを後悔した。 結果は、風向きによる多少の煙待ちはあったにせよ、打ち止めのアナウンスまで、8000発の打ち上げをコンプリート。「天気よければ、すべて良し」。本日は、この辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

東北花火紀行2023春/大曲~陸前高田 《見上げてごらん!》14

【コラム・小泉裕司】 大曲の花火~春の章~4.29 大会プログラムの一つ、45歳以下20人の花火師による「新作花火コレクション」に出品した山﨑煙火製造所(つくば市)の佐々木恵(けい)さんは、10号玉芯入割物の部で見事初優勝(大会結果)。作品名は「昇曲導付三重芯菊先銀点滅」(筆者撮影)。 筒から打ち出された花火は、「曲」と呼ばれる小さな花を開きながら上昇し、最高点で星が尾を引きながら4つの同心円(外側の円は芯に数えない)を描く菊型花火。消え際に銀色の煌(きら)めきを発する。 山﨑煙火は、昨年の土浦10号玉の部「五重芯銀点滅」で優勝、本年、創業120周年の節目を迎える老舗中の老舗。今や名実ともに不動の地位を確立した現会長の山﨑芳男氏の十八番(おはこ)は、脈々と弟子達に受け継がれ、「多重芯の山﨑」「銀点滅の山﨑」と言われるほど。 その完成度の高さ・安定度では、国内、野村花火工業(水戸市)と双璧をなす。本日、11月4日に土浦全国花火競技大会開催決定との報。茨城勢は今シーズンも盤石の予感。 陸前高田~三陸花火大会~4.30 「春の三陸 奇跡と軌跡」。大会翌日の某全国紙は、「奇跡の一本松」のモニュメントと彩り豊かな花火を重ねた写真を掲載し、再生が進んだ花火会場周辺をこう表した。 2014年、東日本大震災で壊滅的な被害を受けた岩手県陸前高田市を訪れた。近くの山を切り崩した岩や土を被災地域に運ぶベルトコンベアが、はるか高いところを石油パイプラインのように縦横に走る光景に圧倒された。 あれから9年、広大でフラットな海岸沿いは、大きな復興工事が終了し、津波被害を伝える「津波伝承館」や新商店街が整備されるなど、変容した高台からの眺めは、感慨深く、想念を巡らした。 2012年3月、土浦市立真鍋小学校、土浦第二中学校の児童・生徒はじめ40人近くが陸前高田市を訪れ、桜の植樹に参加し、地元住民と交流。真鍋の桜保存会は、県の天然記念物「真鍋の桜」のクローン苗1株を寄贈した。当時の桜は、2年後の2014年に根付いたのを、そして今回、緑の葉が幾重にも生い茂り、順調に育っているのを確認し、ほっとした次第。 大手食品スーパーのカスミ(つくば市)は、小浜裕正前会長のご縁をきっかけに、2011年から復興支援カレンダー「明日暦(あしたごよみ)」による募金活動をスタート。翌年からは、地域を越えた交流活動「陸前高田七夕まつり体験学習」など、陸前高田の復興支援に取り組んできた。 筆者は、暦を初編から複数部入手。職場の壁面に掲示し、月ごと、地元の皆さんの笑顔とメッセージコピーから届く逆エールに励まされたことを思い出す。 「三陸花火」は、こうした被災地支援活動の一つとして、2020年10月から始まった。土浦と大曲両大会で内閣総理大臣賞を受賞した㈱マルゴー(山梨県)が打ち上げを担当。年2回春・秋に開催。今回もコズミック(宇宙)系といわれる得意の時差式花火(筆者撮影)満載のプログラム。 次回は、今年の10月8日、「大曲の花火~秋の章~」の翌日に開催予定。東北花火紀行は、秋の編に続く。 「雨雲が近づいているようです」。大曲の会場入口で遭遇した花火鑑賞士仲間の情報は、冷雨で体の芯まで凍えながら見た1年前を想起。昨年、実行委員会本部長が参拝し、無事終了した土浦の実績(昨年11月20日掲載コラム)を踏まえ、天気の神様「気象神社」(東京高円寺)のお守りを持参したのだが、不用意にもホテルに忘れたことを後悔した。 結果は、風向きによる多少の煙待ちはあったにせよ、打ち止めのアナウンスまで、8000発の打ち上げをコンプリート。「天気よければ、すべて良し」。本日は、この辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

湖のほとりを紡ぐ花火の話 《見上げてごらん!》13

【コラム・小泉裕司】今年、茨城県内に新たな花火大会が1つ誕生する。小美玉市は、霞ケ浦高浜入りに面した「大井戸湖岸公園」周辺をメーン会場とし、10月7日(土)、約5000発を打ち上げるための費用1300万円を予算化した。 同公園付近は、すでに3月18日、小美玉市商工会青年部がサプライズ花火を打ち上げた実績がある。同市商工観光課によると、毎夏恒例の「ふるさとふれあいまつり」でフィナーレ花火を打ち上げてきたが、コロナ禍の3年の中止を経て、「おみたま花火大会(仮称)」として、新たな魅力創出を図るという。 ということで、今回は、花火シーズンを前に、霞ケ浦のほとりの花火大会を「つくば霞ケ浦りんりんロード」の霞ケ浦1周コース沿いに、北浦を加え、土浦市から時計回りにアラウンドする。 土浦市は、1925年に湖畔で開催した第1回土浦全国花火競技大会が最古となるが、その後、会場を桜川河畔に移し、湖畔では小規模な打ち上げが不定期に行われている。 かすみがうら市は、7月下旬の「あゆみ祭り」(歩崎公園)のエンディング花火。行方市は、8月上旬に「サンセットフェスタ IN 天王崎~なめがたの湖上花火~」(天王崎公園)。鉾田市は、8月中旬に「鉾田花火大会」(鉾田川下流)を2年に一度、北浦の北端で開催。 北浦の南端では、「鹿嶋市花火大会」(北浦湖上)が昨年11月下旬、3年ぶりの開催となった。潮来市では、8月中旬の「水郷潮来花火大会」(水郷北斎公園)。稲敷市は8月下旬、「いなしき夏まつり花火大会」を、古渡(ふっと)の入り江に注ぐ小野川沿いで開催している。 花火と自転車のコラボはいかが? 過去の実績を参考に紹介してきたが、本稿のきっかけは「久しぶりの土浦は、『花火の街』から『自転車のまち』に変貌しつつある」という東京在住の写真家のつぶやきを知ったから。初見、少々張り合い抜けしたが、プラス思考に転じ、WIN-WIN(ウインウイン)を構築できないものか瞑想(めいそう)したところ、春の妄想に至った。 土浦の花火を紹介する「花火館」を湖畔に建つ「りんりんポート土浦」に併設・整備して、花火と自転車のコラボはどうだろう。 「花火館」には、先に紹介した各花火大会のコーナーを設けながら、年に一度、リレー形式で「霞ケ浦湖畔一斉打ち上げ」を行う。その際は、土浦港での花火大会の恒例化が前提だが、石岡市、阿見町や美浦村のフルエントリーになれば、なおさらにうれしい。 この「花火館」整備については、昨年3月、土浦商工会議所が土浦市長に提言した「花火のまち土浦の発展に向けて」(2022年3月25日掲載)の柱の1つ。12月の土浦市議会定例会においても、一般質問で「花火ミュージアム」の新設が要望された。 さかのぼること27年前の1996年9月の定例市議会で、当時市議会議員であった安藤市長が「花火博物館の新設」として執行部に提案した経緯がある。 とはいえ、今どきの厳しい財政状況を思えば、公益施設とは言いがたい施設整備など、時代錯誤も甚だしいとしかられそうだ。ましてや前職、いわゆるハコモノ行政からの脱却など行財政改革に携わった身としては大いに心苦しい限りではあるが、エイプリルフール月にあやかって、春の妄想をお許し願いたい。 脱稿後、先の提言書を読み返し、最終ページ最終項の提案にあぜんとした。「りんりんロードの利用実績を踏まえ、霞ケ浦周辺の自治体と連携した湖上での打ち上げや、広域花火大会の可能性を研究されたい」とある。 入稿直前で改稿きかず。妄想でも瞑想でもなく、すべてがコピペの迷走となってしまった、あんぽんたんな提案をご容赦願いたい。本日は、この辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長) <参考>創立75周年記念提言「花火のまち土浦」の発展に向けて:土浦商工会議所(2022年3月)

湖のほとりを紡ぐ花火の話 《見上げてごらん!》13

【コラム・小泉裕司】今年、茨城県内に新たな花火大会が1つ誕生する。小美玉市は、霞ケ浦高浜入りに面した「大井戸湖岸公園」周辺をメーン会場とし、10月7日(土)、約5000発を打ち上げるための費用1300万円を予算化した。 同公園付近は、すでに3月18日、小美玉市商工会青年部がサプライズ花火を打ち上げた実績がある。同市商工観光課によると、毎夏恒例の「ふるさとふれあいまつり」でフィナーレ花火を打ち上げてきたが、コロナ禍の3年の中止を経て、「おみたま花火大会(仮称)」として、新たな魅力創出を図るという。 ということで、今回は、花火シーズンを前に、霞ケ浦のほとりの花火大会を「つくば霞ケ浦りんりんロード」の霞ケ浦1周コース沿いに、北浦を加え、土浦市から時計回りにアラウンドする。 土浦市は、1925年に湖畔で開催した第1回土浦全国花火競技大会が最古となるが、その後、会場を桜川河畔に移し、湖畔では小規模な打ち上げが不定期に行われている。 かすみがうら市は、7月下旬の「あゆみ祭り」(歩崎公園)のエンディング花火。行方市は、8月上旬に「サンセットフェスタ IN 天王崎~なめがたの湖上花火~」(天王崎公園)。鉾田市は、8月中旬に「鉾田花火大会」(鉾田川下流)を2年に一度、北浦の北端で開催。 北浦の南端では、「鹿嶋市花火大会」(北浦湖上)が昨年11月下旬、3年ぶりの開催となった。潮来市では、8月中旬の「水郷潮来花火大会」(水郷北斎公園)。稲敷市は8月下旬、「いなしき夏まつり花火大会」を、古渡(ふっと)の入り江に注ぐ小野川沿いで開催している。 花火と自転車のコラボはいかが? 過去の実績を参考に紹介してきたが、本稿のきっかけは「久しぶりの土浦は、『花火の街』から『自転車のまち』に変貌しつつある」という東京在住の写真家のつぶやきを知ったから。初見、少々張り合い抜けしたが、プラス思考に転じ、WIN-WIN(ウインウイン)を構築できないものか瞑想(めいそう)したところ、春の妄想に至った。 土浦の花火を紹介する「花火館」を湖畔に建つ「りんりんポート土浦」に併設・整備して、花火と自転車のコラボはどうだろう。 「花火館」には、先に紹介した各花火大会のコーナーを設けながら、年に一度、リレー形式で「霞ケ浦湖畔一斉打ち上げ」を行う。その際は、土浦港での花火大会の恒例化が前提だが、石岡市、阿見町や美浦村のフルエントリーになれば、なおさらにうれしい。 この「花火館」整備については、昨年3月、土浦商工会議所が土浦市長に提言した「花火のまち土浦の発展に向けて」(2022年3月25日掲載)の柱の1つ。12月の土浦市議会定例会においても、一般質問で「花火ミュージアム」の新設が要望された。 さかのぼること27年前の1996年9月の定例市議会で、当時市議会議員であった安藤市長が「花火博物館の新設」として執行部に提案した経緯がある。 とはいえ、今どきの厳しい財政状況を思えば、公益施設とは言いがたい施設整備など、時代錯誤も甚だしいとしかられそうだ。ましてや前職、いわゆるハコモノ行政からの脱却など行財政改革に携わった身としては大いに心苦しい限りではあるが、エイプリルフール月にあやかって、春の妄想をお許し願いたい。 脱稿後、先の提言書を読み返し、最終ページ最終項の提案にあぜんとした。「りんりんロードの利用実績を踏まえ、霞ケ浦周辺の自治体と連携した湖上での打ち上げや、広域花火大会の可能性を研究されたい」とある。 入稿直前で改稿きかず。妄想でも瞑想でもなく、すべてがコピペの迷走となってしまった、あんぽんたんな提案をご容赦願いたい。本日は、この辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長) <参考>創立75周年記念提言「花火のまち土浦」の発展に向けて:土浦商工会議所(2022年3月)

土浦の「春花火」2連発 ドッドーン 《見上げてごらん!》12

【コラム・小泉裕司】「ただいま霞ケ浦湖畔で打ち上げているのは、花火師研修のための花火です」。3月11日(土)午後6時30分を少し回ったころ、花火画像とともに、このメッセージが土浦市の公式SNSに流れた。 コロナ禍、花火大会の中止が相次ぐ中、花火業界は直接的な打撃を受け、未来を担う人材育成にも赤信号がともり始めるなど、世界最高峰と言われる日本の花火技術の継承が危惧される状況にあった。そこで土浦全国花火競技大会実行委員会では、国の支援制度を活用、昨年、「花火技術後継者育成事業」を起ち上げた。 内容は、後継者育成プログラムに、「花火道」を志す全国32業者95人の花火師が参加、実績豊富な花火師による花火製造と打ち上げ技術のオンライン講習を8月から計5回開催。その成果として、参加者それぞれが製作した4号(直径約12センチ)菊型花火7発、同牡丹花火7発を順次打ち上げ、できばえを確かめたもの。 本日、「振り返り」研修をもって事業は完了。昨年にも増して花火大会の再開が予定される今年、経営危機は脱しつつあるようだが、今回の研修成果が、未来に向けて、持続可能な花火産業構築のきっかけになることを願う。 防波堤2カ所からの対打ち(同時打ち上げ)による間断無き連打1300発は、とても斬新な光景、まさに、初春を彩る「菊」と「牡丹」の品評会のごとし。作品の出来具合はピンキリだったが、これもまた一興。見上げ続けること45分、万年肩こりが、また悪化した。 三浦春馬さんをしのぶHEART花火2023 正真正銘の美青年。品のあるストイックさと才能あふれる輝きで、多くの人を魅了した三浦春馬さんの突然の訃報から今年で3年。今でも、春馬さんに思いを寄せる多くのファンが、生誕の地・土浦を訪れるという。 「HEART花火」プロジェクトは、こうした思いを共有する皆さんが、春馬さんをしのび、4月5日の誕生日を祝って、故郷土浦で花火を打ち上げるイベント。昨年に続き、第2回目の今年は、4月1日に土浦新港で開催する。 土浦市の花火マッチング事業がサポート役となり、山﨑煙火製造所(つくば市)が打ち上げを担当。かかる経費はクラウドファンディングで募集。300人を超える賛同者から寄せられた144万円の支援でまかなうという。春馬さんが土浦の花火に魅了され、故郷の誇りとして大切にされたことは「見上げてごらん!」4(2022年7月17日掲載)のとおり。 彼へのリスペクトを込めて、筆者も些少(さしょう)ながら、今回の募集に参加。当日午後6時、打ち上げに先立って行われるセレモニーで、土浦の花火や春馬さんへの思いを参加者に伝えしてほしいとのオファーが届いた。何時間あっても語り尽くせぬテーマを5分にまとめるなんて、至難の業。千思万考は、当日まで続く。 春真っ盛りの花火を見ながら、主催者の思いを共有しよう。「春馬さんへの思いを込めた花火が少しでも皆様の心を癒やし、さらには、大切な人に思いを巡らせ、平和を祈る…そんな機会にもなってほしい」。本日は、この辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

打ち上げ花火、下から見る? 上から見る? 《見上げてごらん!》11

【コラム・小泉裕司】今回は花火とドローンのお話。各紙は2月8日付で、「第91回土浦全国花火競技大会での無許可ドローン飛行を書類送検」を報じた。土浦署は、日没後に違法にドローンを飛ばしたとして、航空法違反の疑いで、撮影した男性を書類送致した。 その男性は「きれいな花火を空から撮影したかった」と容疑を認めているという。実際、目視されたドローンは3機。以来、土浦署は捜査を継続していたようで、今回、うち1機の摘発に至った。花火愛好家の1人として、頼もしい限りで、今後の抑止効果を期待したい。 記事を読みながら脳裏に浮かんだのは、ドローンが今ほど普及していない2014年、職場の後輩が喜々として、世界で2番目に見られているという米国の花火ショーで撮影したYouTube動画を教えてくれたこと。 打ち上げ花火の中にドローンを突入させて撮影。今にも燃える星が飛び出してきそうな空撮映像は、まるでSF映画に出てくる、星々の間を高速で飛行する宇宙船のよう。 当時、この衝撃映像に対する評価は分かれており、斬新性が評価される一方、多くの人の上を飛行する危険性が指摘されていた。 こうした中、昨今のドローン技術は日進月歩で、産業や公共現場での活躍は周知のとおり。相まって、操縦資格を取得するためのスクールが増加し、ドローン本体も家電量販店で容易に入手可能な環境にある。 筆者が操縦を初体験したときは、子どもの頃初めてリモコンを手にしたワクワク感を思い出すと同時に、モニターの映像は、さも「空を飛ぶ夢」の実現がかなったようだった。 閑話休題。こうして花火会場の上空に一度飛び立ったドローンを中止させるのは、落下による観客の安全を考えると、至難の業となる。実際、昨年訪れた花火大会で何度かドローン飛行を目撃し、花火鑑賞に集中できない不快な思いを経験したが、大会主催者は、さぞ対応に苦慮していたに違いない。 ちなみに、日本花火鑑賞士会が、大会前、土浦の実行委員会事務局に対策を確認したところ、事前の禁止告知以外の具体策は難しいとのことであった。 ドローン技術は表裏一体 一方、大会主催者が国の飛行許可を得て、例えば、昨年2月、霞ヶ浦湖畔で開催した「大曲 土浦夢の競演!!」や「茅ヶ崎サザン芸術花火2018」のように、上空から、会場や観客、花火の俯瞰(ふかん)映像などを撮影し、記録として後日公表する事例もある。 昨年6月の「東北未来芸術花火2022」では、あいにく濃いかすみで地上からは花火の全容を見ることはできなかったが、その後公開されたドローン映像では、雲上で虹色の輝きを放つ花火が確認された。初めて見る幻想的な光景に興奮した。 まして、このたびのトルコ・シリア大地震の被害調査や震源調査へのドローン活用、ウクライナ戦争で明らかになった不条理な軍事使用を思うとき、ドローン技術は表裏一体、まるで「火薬の歴史」のようだ。 ともあれ、打ち上げ花火は、下から見上げることを前提に、「生け花」のごとく、上空、中空、低空を絶妙に組み合わせた夜空を彩る光の芸術。花火師さんが精魂込めて打ち上げる花火作品に集中したいものだ。 本日は、この辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

打ち上げ花火、下から見る? 上から見る? 《見上げてごらん!》11

【コラム・小泉裕司】今回は花火とドローンのお話。各紙は2月8日付で、「第91回土浦全国花火競技大会での無許可ドローン飛行を書類送検」を報じた。土浦署は、日没後に違法にドローンを飛ばしたとして、航空法違反の疑いで、撮影した男性を書類送致した。 その男性は「きれいな花火を空から撮影したかった」と容疑を認めているという。実際、目視されたドローンは3機。以来、土浦署は捜査を継続していたようで、今回、うち1機の摘発に至った。花火愛好家の1人として、頼もしい限りで、今後の抑止効果を期待したい。 記事を読みながら脳裏に浮かんだのは、ドローンが今ほど普及していない2014年、職場の後輩が喜々として、世界で2番目に見られているという米国の花火ショーで撮影したYouTube動画を教えてくれたこと。 打ち上げ花火の中にドローンを突入させて撮影。今にも燃える星が飛び出してきそうな空撮映像は、まるでSF映画に出てくる、星々の間を高速で飛行する宇宙船のよう。 当時、この衝撃映像に対する評価は分かれており、斬新性が評価される一方、多くの人の上を飛行する危険性が指摘されていた。 こうした中、昨今のドローン技術は日進月歩で、産業や公共現場での活躍は周知のとおり。相まって、操縦資格を取得するためのスクールが増加し、ドローン本体も家電量販店で容易に入手可能な環境にある。 筆者が操縦を初体験したときは、子どもの頃初めてリモコンを手にしたワクワク感を思い出すと同時に、モニターの映像は、さも「空を飛ぶ夢」の実現がかなったようだった。 閑話休題。こうして花火会場の上空に一度飛び立ったドローンを中止させるのは、落下による観客の安全を考えると、至難の業となる。実際、昨年訪れた花火大会で何度かドローン飛行を目撃し、花火鑑賞に集中できない不快な思いを経験したが、大会主催者は、さぞ対応に苦慮していたに違いない。 ちなみに、日本花火鑑賞士会が、大会前、土浦の実行委員会事務局に対策を確認したところ、事前の禁止告知以外の具体策は難しいとのことであった。 ドローン技術は表裏一体 一方、大会主催者が国の飛行許可を得て、例えば、昨年2月、霞ヶ浦湖畔で開催した「大曲 土浦夢の競演!!」や「茅ヶ崎サザン芸術花火2018」のように、上空から、会場や観客、花火の俯瞰(ふかん)映像などを撮影し、記録として後日公表する事例もある。 昨年6月の「東北未来芸術花火2022」では、あいにく濃いかすみで地上からは花火の全容を見ることはできなかったが、その後公開されたドローン映像では、雲上で虹色の輝きを放つ花火が確認された。初めて見る幻想的な光景に興奮した。 まして、このたびのトルコ・シリア大地震の被害調査や震源調査へのドローン活用、ウクライナ戦争で明らかになった不条理な軍事使用を思うとき、ドローン技術は表裏一体、まるで「火薬の歴史」のようだ。 ともあれ、打ち上げ花火は、下から見上げることを前提に、「生け花」のごとく、上空、中空、低空を絶妙に組み合わせた夜空を彩る光の芸術。花火師さんが精魂込めて打ち上げる花火作品に集中したいものだ。 本日は、この辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

一年の計は初花火にあり《見上げてごらん!》10

【コラム・小泉裕司】新年を迎え、社会はギアチェンジしたかのように動き始めた。そこで、本コラムも昨年にも増して、「花火のまち土浦」から、打ち上げ花火の魅力をお伝えしていこう。というのが、今年の抱負なり。 さて、1月2日は、箱根駅伝をテレビ観戦しながら、酒浸りの怠惰な1日を過ごすのが、例年の「お楽しみ」だ。ところが今年は、車で遠出して花火を鑑賞するという、思い切った行動を選択した。なぜなら、昨年暮れに「モビリティリゾートもてぎ」(栃木県)の「New Year HANABI」のチケットを、ほぼ完売状態にもかかわらず、運良くレーシングスタンド最上段の席を入手することができたから。 サーキットを舞台に、音楽と融合した芸術性豊かな演出は「劇場型花火」と称され、夏と冬に開催する人気の花火大会。打ち上げは、土浦や大曲など競技大会において数々の受賞歴を持つ老舗「菊屋小幡花火店」(群馬県)。 オリオンまばたく澄んだ夜空に、2尺玉に尺玉、オリジナルのフレッシュグリーンや柿色の八方咲きに千輪花火、ハートやニコちゃんなどの型物、筒から吹き上がる虹色のザラ星(上の写真)など手の込んだ花火の数々を、上、中、低空に見事にコンビネーションしたプログラムは圧巻。 手を伸ばせば届きそうな、目線の高さできらめくスターマイン花火を堪能し、幸福感いっぱいで帰路に就いた。 本来、書き初めや初売りなど、正月の恒例行事は、2日に事始めとして行うと長続きするとされてきたようなので、この日の「初花火」で、今年も「With 花火」の日々が続きそうな予感。遅ればせながら、居間の壁一面に掛かる花火カレンダーに、年間の鑑賞予定を書き込もう。 あしたを生きるためのサプリ 昨年のある週末、水戸市内で野村花火工業が担当した20分ほどの小さな花火大会の直後、となりで観覧していた女性2人のほっこり会話。 「今日は無理につきあわせちゃって、ごめんね」 「うーんん、最高の週末になったね。来週もがんばれそーかも」 花火は、人生に必ずしも必要なものではないのかも知れないが、花火師は、見る人に元気や笑顔、希望を送り届けたいと、こん身の思いを込めて打ち上げる。まさに、あしたを生きるためのサプリメント。 今年もこんなすてきな「花火会話」が全国の花火会場で交わされることを願いながら、本日は、この辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

一年の計は初花火にあり《見上げてごらん!》10

【コラム・小泉裕司】新年を迎え、社会はギアチェンジしたかのように動き始めた。そこで、本コラムも昨年にも増して、「花火のまち土浦」から、打ち上げ花火の魅力をお伝えしていこう。というのが、今年の抱負なり。 さて、1月2日は、箱根駅伝をテレビ観戦しながら、酒浸りの怠惰な1日を過ごすのが、例年の「お楽しみ」だ。ところが今年は、車で遠出して花火を鑑賞するという、思い切った行動を選択した。なぜなら、昨年暮れに「モビリティリゾートもてぎ」(栃木県)の「New Year HANABI」のチケットを、ほぼ完売状態にもかかわらず、運良くレーシングスタンド最上段の席を入手することができたから。 サーキットを舞台に、音楽と融合した芸術性豊かな演出は「劇場型花火」と称され、夏と冬に開催する人気の花火大会。打ち上げは、土浦や大曲など競技大会において数々の受賞歴を持つ老舗「菊屋小幡花火店」(群馬県)。 オリオンまばたく澄んだ夜空に、2尺玉に尺玉、オリジナルのフレッシュグリーンや柿色の八方咲きに千輪花火、ハートやニコちゃんなどの型物、筒から吹き上がる虹色のザラ星(上の写真)など手の込んだ花火の数々を、上、中、低空に見事にコンビネーションしたプログラムは圧巻。 手を伸ばせば届きそうな、目線の高さできらめくスターマイン花火を堪能し、幸福感いっぱいで帰路に就いた。 本来、書き初めや初売りなど、正月の恒例行事は、2日に事始めとして行うと長続きするとされてきたようなので、この日の「初花火」で、今年も「With 花火」の日々が続きそうな予感。遅ればせながら、居間の壁一面に掛かる花火カレンダーに、年間の鑑賞予定を書き込もう。 あしたを生きるためのサプリ 昨年のある週末、水戸市内で野村花火工業が担当した20分ほどの小さな花火大会の直後、となりで観覧していた女性2人のほっこり会話。 「今日は無理につきあわせちゃって、ごめんね」 「うーんん、最高の週末になったね。来週もがんばれそーかも」 花火は、人生に必ずしも必要なものではないのかも知れないが、花火師は、見る人に元気や笑顔、希望を送り届けたいと、こん身の思いを込めて打ち上げる。まさに、あしたを生きるためのサプリメント。 今年もこんなすてきな「花火会話」が全国の花火会場で交わされることを願いながら、本日は、この辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

ブラボーな花火2022から新しい景色が見えた《見上げてごらん!》9

【コラム・小泉裕司】「花火サーフィン」にうつつを抜かしていたら、2022年もいつの間にか、あと2週間。居間の「花火カレンダー」は、最後の1枚が間もなく役目を終える。 今シーズンの「花火初め」は、1、2月に開催された「土浦の花火~後世に伝える匠の技」。毎週末に花火が上がるという、これまで経験したことのないワクワク感いっぱいの花火企画に始まった。その後は、コロナ禍で悪化した慢性煙分依存症の欲求のおもむくまま、GWに秋田県大仙市で開催された「SPRING FESTA大曲の花火」(5月14日掲載)、長岡や大曲、片貝などのリピート観戦、柏崎や亘理町、新常総花火などの初見参を含めて、県内外22の大会を鑑賞。 12月3日、山﨑煙火製造所が担当した「牛久沼花火大会」を間近で堪能し、今年の「花火納め」とした。 結果、1月から12月まで、毎月、花火を鑑賞することができ、画期的でブラボーな1年となった。同時に、夏の風物詩と言われてきた花火大会だが、四季折々の季節感が醸し出す花火の魅力にもまた趣があることを知った。花火大会のオールシーズン化など、新しい時代のあり方を垣間見ることができたのかも知れない。 いずれにしても、進化した高品質な「日本の花火」をあらためて確認し、格別の余韻で年が暮れていく。ちなみに、花火好きが集まるSNS上の「花火観覧数アンケート」によると、50回以上の猛者を「依存症」と言うらしい。9回以下が「一般人」、筆者の22回は「花火マニア」に該当するとのこと。病状は比較的軽症のようで、家族も一安心だろう。 花火鑑賞士in土浦の新たな花火企画 ある全国紙記者が、土浦支局から大仙市の大曲支局に転勤したのを機に、当地で花火鑑賞士の資格を取得した。17年に大曲で再会した際、鑑賞士仲間として、「土浦の花火」をさらに盛り上げるための3つの提案を授かった。 その一つが、花火への「市民の誇り」の醸成だ。彼は両市での取材を通して、市民の花火に対する思い、熱量の違いを目の当たりにしたようだ。この点は、筆者も「土浦の花火」は、市民の誇りにつながる土浦の宝であるとの思いから、かねてより新聞・ラジオ、ネットテレビ局、本コラムなど、様々なメディアへの露出機会をいただきながら、情報発信への取り組みを進めてきた。 特に今年は、3年ぶりの大会開催を機に、長年したためてきた市民参加の企画として、「花火鑑賞講座/土浦の花火の魅力を知ろう!」を実行委員会に提案し、日本花火鑑賞士会や土浦市職員有志のサポートのもと、実現することができた。 講座の幕開けは、石原之壽氏による紙芝居「土浦花火物語」。続いて、土浦市立博物館の野田学芸員による土浦花火の歴史、実行委員会OBである湯原氏の体験談、花火愛好家の穗戸田氏、花火鑑賞士の市川氏と筆者による花火の見方など。盛りだくさんの内容で予定時間をオーバーしたにもかかわらず、ほとんどの参加者から次回開催への希望が届くなど、高評価を頂戴した。今後については、あまり間隔を置かず開催できるよう準備を進めている。 新年まで10日あまり。大掃除やら年賀状書きやら、年末の恒例行事は山積みだが、まずは居間に掛ける花火カレンダーの後任を決めることが、最優先なのだ。本日はこの辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

ブラボーな花火2022から新しい景色が見えた《見上げてごらん!》9

【コラム・小泉裕司】「花火サーフィン」にうつつを抜かしていたら、2022年もいつの間にか、あと2週間。居間の「花火カレンダー」は、最後の1枚が間もなく役目を終える。 今シーズンの「花火初め」は、1、2月に開催された「土浦の花火~後世に伝える匠の技」。毎週末に花火が上がるという、これまで経験したことのないワクワク感いっぱいの花火企画に始まった。その後は、コロナ禍で悪化した慢性煙分依存症の欲求のおもむくまま、GWに秋田県大仙市で開催された「SPRING FESTA大曲の花火」(5月14日掲載)、長岡や大曲、片貝などのリピート観戦、柏崎や亘理町、新常総花火などの初見参を含めて、県内外22の大会を鑑賞。 12月3日、山﨑煙火製造所が担当した「牛久沼花火大会」を間近で堪能し、今年の「花火納め」とした。 結果、1月から12月まで、毎月、花火を鑑賞することができ、画期的でブラボーな1年となった。同時に、夏の風物詩と言われてきた花火大会だが、四季折々の季節感が醸し出す花火の魅力にもまた趣があることを知った。花火大会のオールシーズン化など、新しい時代のあり方を垣間見ることができたのかも知れない。 いずれにしても、進化した高品質な「日本の花火」をあらためて確認し、格別の余韻で年が暮れていく。ちなみに、花火好きが集まるSNS上の「花火観覧数アンケート」によると、50回以上の猛者を「依存症」と言うらしい。9回以下が「一般人」、筆者の22回は「花火マニア」に該当するとのこと。病状は比較的軽症のようで、家族も一安心だろう。 花火鑑賞士in土浦の新たな花火企画 ある全国紙記者が、土浦支局から大仙市の大曲支局に転勤したのを機に、当地で花火鑑賞士の資格を取得した。17年に大曲で再会した際、鑑賞士仲間として、「土浦の花火」をさらに盛り上げるための3つの提案を授かった。 その一つが、花火への「市民の誇り」の醸成だ。彼は両市での取材を通して、市民の花火に対する思い、熱量の違いを目の当たりにしたようだ。この点は、筆者も「土浦の花火」は、市民の誇りにつながる土浦の宝であるとの思いから、かねてより新聞・ラジオ、ネットテレビ局、本コラムなど、様々なメディアへの露出機会をいただきながら、情報発信への取り組みを進めてきた。 特に今年は、3年ぶりの大会開催を機に、長年したためてきた市民参加の企画として、「花火鑑賞講座/土浦の花火の魅力を知ろう!」を実行委員会に提案し、日本花火鑑賞士会や土浦市職員有志のサポートのもと、実現することができた。 講座の幕開けは、石原之壽氏による紙芝居「土浦花火物語」。続いて、土浦市立博物館の野田学芸員による土浦花火の歴史、実行委員会OBである湯原氏の体験談、花火愛好家の穗戸田氏、花火鑑賞士の市川氏と筆者による花火の見方など。盛りだくさんの内容で予定時間をオーバーしたにもかかわらず、ほとんどの参加者から次回開催への希望が届くなど、高評価を頂戴した。今後については、あまり間隔を置かず開催できるよう準備を進めている。 新年まで10日あまり。大掃除やら年賀状書きやら、年末の恒例行事は山積みだが、まずは居間に掛ける花火カレンダーの後任を決めることが、最優先なのだ。本日はこの辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

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